(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587498
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】充電スタンド
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20191001BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20191001BHJP
B60L 53/00 20190101ALN20191001BHJP
【FI】
H02J7/00 301B
H01M10/44 Q
!B60L53/00
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-209268(P2015-209268)
(22)【出願日】2015年10月23日
(65)【公開番号】特開2017-85710(P2017-85710A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芦川 真也
【審査官】
阿部 陽
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−029437(JP,A)
【文献】
特開2013−062994(JP,A)
【文献】
特開2012−205473(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0320921(US,A1)
【文献】
中国実用新案第200969381(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00−7/12;7/34−7/36
H01M 10/44
B60L 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状に形成されたケーススタンドと、
前記ケーススタンド内に配設される充電装置と、
前記充電装置に対して少なくとも前記充電装置の固定面を覆うように固定されると共に、前記ケーススタンドの内壁に取付けられる遮熱板と、
を備え、
前記遮熱板が、前記ケーススタンドの内壁及び前記充電装置の固定面の少なくとも何れか一方に対してスペースを有するように配置されていることを特徴とする充電スタンド。
【請求項2】
前記遮熱板が、
前記充電装置の固定面に固定される平板部と、
前記充電装置の固定面に連続する側面の少なくとも一面を覆うように前記平板部の側縁から延設された側板部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の充電スタンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車等に搭載されたバッテリを充電するための充電スタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータの駆動力で走行可能な電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の車両の普及に伴い、この車両に搭載されたバッテリへ充電する車両用充電装置の普及が求められている。
このような車両用充電装置は、住戸の車庫(駐車スペース)などに設置されるが、例えば車庫の壁面等に固定されて設置されたり、車庫の地面に立設されたスタンド本体の収容スペース内に設置されたりしている。
【0003】
ところで、上述のようなスタンド本体は野外に設置されているため、気温の上昇とともにスタンド本体内の雰囲気温度も上昇する。スタンド本体内に収容された車両用充電装置が正常に動作するためには、スタンド本体内の雰囲気温度がこの車両用充電装置における電気機器の使用温度範囲(例えば、マイナス10℃〜40℃)内であることが必要となる。そこで、スタンド本体内の雰囲気温度の上昇に伴う不具合の発生を抑制した充電スタンドが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
図7に示した従来の充電スタンドは、箱状に形成されて野外に設置されるスタンド本体501と、スタンド本体501内に配設されるコンセントユニット510と、スタンド本体501内の雰囲気温度の上昇を抑制するためにスタンド本体501の外側に設置された遮光部材506と、を備えている。
遮光部材506は、前面及び下面が開口する長尺状の箱形に形成され、スタンド本体501の前面が前面開口から外部に臨ませるようにしてスタンド本体501をその内側に収納している。
【0005】
そこで、遮光部材506によって太陽光が遮られるため、スタンド本体501内の温度上昇、ひいてはコンセントユニット510の筐体内の温度上昇が抑制される。その結果、コンセントユニット510内の電気機器が使用温度範囲の上限を超える温度環境下で使用されることが抑えられ、電気機器の誤動作や故障、並びに短寿命化を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−95426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のようにスタンド本体501の外側に設置されてこれを覆う遮光部材506は、充電スタンドの意匠性を損なうとともに、大型化することにより製造コストが高くなるという問題がある。また、スタンド本体501内の雰囲気温度の上昇を抑制するための温度上昇抑制手段として送風装置や冷却装置も提案されているが、これら装置をスタンド本体501に設けた場合には、更に製造コストが高くなってしまう。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、意匠性を損なうことなく、温度上昇に伴う充電装置の不具合の発生を抑制した安価な充電スタンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係る充電スタンドは、下記構成を特徴としている。
(1) 箱状に形成されたケーススタンドと、前記ケーススタンド内に配設される充電装置と、前記充電装置に対して少なくとも前記充電装置の固定面を覆うように固定されると共に、前記ケーススタンドの内壁に取付けられる遮熱板と、を備え
、前記遮熱板が、前記ケーススタンドの内壁及び前記充電装置の固定面の少なくとも何れか一方に対してスペースを有するように配置されていることを特徴とする充電スタンド。
【0010】
上記(1)の構成の充電スタンドによれば、太陽光により熱せられたケーススタンドから充電装置の固定面に向けて放射された輻射熱が、遮熱板により遮られる。そこで、充電装置の温度上昇が抑制される。その結果、充電装置が使用温度範囲の上限を超える温度環境下で使用することが抑えられ、これらの充電装置の誤動作や故障、並びに短寿命化を防ぐことができる。即ち、上記構成の充電スタンドでは、ケーススタンド内の充電装置の温度の上昇に伴う不具合の発生を抑制することができる。
また、遮熱板は、充電装置の固定面を覆う必要最小限の大きさとすることができるので、製造コストを抑えることができる。また、ケーススタンドの内壁に取付けられる遮熱板は、ケーススタンドの意匠性を損なうことがない。
また、上記(1)の構成の充電スタンドによれば、ケーススタンドの内壁又は充電装置の固定面との間に設けられたスペースの空気層が、ケーススタンドから遮熱板又は遮熱板から充電装置への熱伝導を抑制すると共に、遮熱板に沿ってスペースの空気を対流させることができる。そこで、充電装置の温度上昇が更に抑制される。
【0013】
(
2) 前記遮熱板が、前記充電装置の固定面に固定される平板部と、前記充電装置の固定面に連続する側面の少なくとも一面を覆うように前記平板部の側縁から延設された側板部と、を有することを特徴とする上記(1
)に記載の充電スタンド。
【0014】
上記(
2)の構成の充電スタンドによれば、ケーススタンドから充電装置の側面に向けて放射された輻射熱が、遮熱板の側板部により遮られる。そこで、充電装置の温度上昇が更に抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、意匠性を損なうことなく、温度上昇に伴う充電装置の不具合の発生を抑制した安価な充電スタンドを提供できる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る充電スタンドの斜視図である。
【
図2】
図1に示した充電スタンドから充電装置を外した状態を示す斜視図である。
【
図3】(a)は
図2に示したケーススタンドの正面図、(b)は(a)のA−A断面矢視図である。
【
図4】
図2に示したケーススタンドの分解斜視図である。
【
図5】(a)〜(c)は
図4に示した遮熱板の正面図、縦断面図及び背面図である。
【
図6】
図1に示した充電スタンドの要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る充電スタンド1の斜視図である。
本実施形態に係る充電スタンド1は、
図1に示すように、電気自動車を駐車する地面に立設されるケーススタンド11と、ケーススタンド11内に配設される車両用充電装置(充電装置)21と、車両用充電装置21とケーススタンド11との間に設けられる遮熱板31と、を備えている。この充電スタンド1は、車両用充電装置21を住戸の車庫(駐車スペース)などに設置するものである。
【0019】
車両用充電装置21は、装置本体23と、充電用ケーブル43と、充電用コネクタ41とを有している。この車両用充電装置21は、電動モータの駆動力で走行可能な電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の車両に搭載されたバッテリへ充電する充電装置である。
【0020】
装置本体23は、充電器を内蔵しており、前面には、充電状態等を表示するモニタ部29を有している。充電用ケーブル43は、装置本体23の下部から延出しており、充電用コネクタ41は、充電用ケーブル43の先端に設けられている。充電用コネクタ41は、車両に設けられたコネクタに対して着脱可能とされている。充電用ケーブル43は、車両のコネクタが車両用充電装置21から遠く離れた位置に配置された場合であっても、車両のコネクタに充電用コネクタ41を接続することができるように、かなりの余裕を持った長さを有している。そこで、充電用ケーブル43は、装置本体23の下部に設けられたフック27に巻回した状態で係止されることで保持されている。
【0021】
装置本体23は、コネクタ保持部25を有しており、このコネクタ保持部25に充電用コネクタ41が保持される。車両のバッテリへの充電時には、充電用コネクタ41を装置本体23のコネクタ保持部25から取り外して車両のコネクタへ接続する。車両のバッテリへの充電終了後は、充電用コネクタ41を車両のコネクタから外して装置本体23のコネクタ保持部25に保持させる。
【0022】
車両用充電装置21では、充電用コネクタ41を車両のコネクタに接続した状態で、装置本体23の充電器から充電用ケーブル43を介して車両側へ給電される。これにより、車両のバッテリが充電される。
【0023】
本実施形態に係るケーススタンド11は、
図2〜
図4に示すように、長手方向に沿って長円形の開口16が切欠き形成された略円筒形のケース本体13と、ケース本体13の上端開口を塞ぐ円形の上板14と、ケース本体13の下端開口に取付けられる土台61と、開口16に対応してケース本体13内に取付けられる内壁15とを組み立てることで、略円柱形の箱状に形成されている。
【0024】
上板14と内壁15は、ケース本体13に溶接される。内壁15は、車両用充電装置21が取付けられる長尺矩形板状の背板部17と、略半円板状の底板部19とが一体に形成されている。
背板部17の上部には、車両用充電装置21に接続される電源用ケーブルを通したPF管とアース線とを引き出すための電源用ケーブル通線口20と、作業用穴18とが開口している。更に、背板部17の前面には、遮熱板31を介して車両用充電装置21を固定するための複数のブラケット55が溶接されている。背板部17のブラケット55には、後述する遮熱板31がリベット56により固定される。
【0025】
土台61は、円環部63のアンカー取付穴67を貫通したアンカーボルトにナットを螺合することで、図示しないコンクリート基礎に設置される。この際、土台61の内側には、電源用ケーブルを通したPF管とアース線が予め通される。
そして、ケース本体13にPF管とアース線を通した後、固定した土台61にケース本体13を被せ、ケース本体13の土台取付穴12と土台61のケース取付穴65を貫通したボルト71を用いてケース本体13をコンクリート基礎に固定する。
【0026】
本実施形態に係る遮熱板31は、
図4及び
図5に示すように、充電装置21の固定面である装置本体23の背面26に固定される矩形状の平板部33と、背面26に連続する側面である装置本体23の上面を覆うように平板部33の上縁から延設された側板部である天板35と、背面26に連続する側面である装置本体23の左右側面を覆うように平板部33の左右縁から延設された側板部である一対の側板37と、を有する。
【0027】
但し、充電スタンド1が壁際に設置される場合等においては、太陽光の照射向きが限定される。そこで、遮熱板の側板部は、必ずしも装置本体23の上面及び左右側面を全部覆う必要はなく、太陽光が照射される少なくとも装置本体23の一面を覆う側板部のみが平板部33の側縁から延設されてもよい。更に、本発明の遮熱板は、充電装置21に対して少なくとも充電装置21の背面26を覆うように固定されていれば、比較的表面性が大きい背面26に向けて放射された輻射熱を遮ることで、充電装置21の温度上昇を効果的に抑えることができる。
【0028】
なお、遮熱板31としては、アルミ板等のように輻射熱を反射する金属板を用いたり、遮熱塗料を塗布した金属板を用いたりすることができる。また、熱伝導性のよくないプラスチックやセラミック等の断熱材を用いたりすることもできる。勿論、これら遮熱材と断熱材を組み合わせて用いることもできる。
【0029】
平板部33には、PF管とアース線とを引き出すための作業用穴39と、リベット56が挿通される固定穴32とが開口している。更に、平板部33の前面には、車両用充電装置21を固定するための複数のブラケット51,53が溶接されている。
【0030】
遮熱板31は、固定穴32を貫通したリベット56によって、背板部17のブラケット55に固定される。そこで、ブラケット55に固定された遮熱板31は、
図6に示すように、ケーススタンド11の内壁15における背板部17に対してスペースS1を有するように配置される。
【0031】
また、遮熱板31のブラケット51には、装置本体23の背面26に設けた固定用穴を貫通した固定用ねじによって車両用充電装置21が固定される。また、ブラケット53には、装置本体23と伴にフック27の固定金具が固定される。そこで、ブラケット51,53を介して車両用充電装置21が固定された遮熱板31は、
図6に示すように、車両用充電装置21における装置本体23の背面26に対してスペースS2を有するように配置される。
【0032】
上述した本実施形態の充電スタンド1によれば、太陽光により熱せられたケーススタンド11から充電装置21の背面26に向けて放射された輻射熱が、遮熱板31により遮られる。そこで、充電装置21の温度上昇が抑制される。その結果、充電装置21が使用温度範囲の上限を超える温度環境下で使用することが抑えられ、これらの充電装置21の誤動作や故障、並びに短寿命化を防ぐことができる。即ち、本実施形態の充電スタンド1では、ケーススタンド11内の充電装置21の温度の上昇に伴う不具合の発生を抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態の遮熱板31は、充電装置21の背面26と上面及び左右側面とを覆う必要最小限の大きさとすることができるので、
図7に示した従来の遮光部材506に比べて小型化して製造コストを抑えることができる。また、ケーススタンド11の内壁15に取付けられる遮熱板31は、ケーススタンド11の外方からは見えにくいので、ケーススタンド11の意匠性を損なうことがない。
【0034】
更に、本実施形態の充電スタンド1によれば、ケーススタンド11の内壁15及び充電装置21の背面26との間に設けられたスペースS1,S2の空気層が、ケーススタンド11から遮熱板31及び遮熱板31から充電装置21への熱伝導を抑制すると共に、遮熱板31に沿ってスペースS1,S2の空気を対流させることができる。そこで、充電装置21の温度上昇が更に抑制される。
【0035】
また、本実施形態の充電スタンド1によれば、ケーススタンド11から充電装置21の上面及び左右側面に向けて放射された輻射熱が、遮熱板31の天板35及び側板37により遮られる。そこで、充電装置21の温度上昇が更に抑制される。
【0036】
従って、本実施形態の充電スタンド1によれば、意匠性を損なうことなく、温度上昇に伴う充電装置21の不具合の発生を抑制した安価な充電スタンドを提供できる。
【0037】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0038】
例えば、上記実施形態に係る充電スタンド1は、ケーススタンド11の前面が開口16により開放されているが、開口16を開閉自在に塞ぐ開閉扉が設けられても良い。
また、上記実施形態のケーススタンド11は、略円筒形のケース本体13により略円柱形の箱状に形成されているが、角柱形等の種々の箱状に形成できることは云うまでもない。
【0039】
更に、上記実施形態に係るケーススタンド11は、ケース本体13が略円柱形の箱状に形成されているため、遮熱板31を取り付けるための背板部17を有する内壁15をケース本体13と別体に構成したが、ケース本体が略角柱形の箱状に形成されて遮熱板31を直接取り付けることができる場合には、内壁をケース本体と一体に構成することもできる。
【0040】
ここで、上述した本発明に係る充電スタンドの実施形態の特徴をそれぞれ以下に簡潔に纏めて列記する。
[1] 箱状に形成されたケーススタンド(11)と、
前記ケーススタンド内に配設される充電装置(21)と、
前記充電装置に対して少なくとも前記充電装置の固定面(背面26)を覆うように固定されると共に、前記ケーススタンドの内壁(15)に取付けられる遮熱板(31)と、
を備えたことを特徴とする充電スタンド(1)。
[2] 前記遮熱板が、前記ケーススタンドの内壁及び前記充電装置の固定面の少なくとも何れか一方に対してスペース(S1,S2)を有するように配置されていることを特徴とする上記[1]に記載の充電スタンド。
[3] 前記遮熱板が、前記充電装置の固定面に固定される平板部(33)と、前記充電装置の固定面に連続する側面の少なくとも一面を覆うように前記平板部の側縁から延設された側板部(天板35、側板37)と、を有することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の充電スタンド。
【符号の説明】
【0041】
1 充電スタンド
11 ケーススタンド
15 内壁
21 車両用充電装置(充電装置)
26 背面(固定面)
31 遮熱板