(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るハイブリッド式建設機械を実施するための形態の一実施例を図に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明に係るハイブリッド式建設機械の一実施例として挙げたハイブリッド式油圧ショベルの構成を示す図である。
図2は本実施形態に係るハイブリッド式油圧ショベルの要部の構成を説明する図である。
【0014】
本発明に係るハイブリッド式建設機械の一実施形態は、例えば
図1に示すようにハイブリッド式油圧ショベル(以下、便宜的に油圧ショベルと呼ぶ)に適用される。本実施例の油圧ショベルは、走行体100と、走行体100上に旋回フレーム111を介して旋回可能に設けられた旋回体110と、旋回体110の前方に取り付けられ、上下方向に回動して掘削等の作業を行うフロント作業機70とを備えている。フロント作業機70はハイブリッド式建設機械の作業機として備えられる。ハイブリッド式建設機械が例えばダンプトラックの場合は、作業機は荷台で構成される。要するに作業機は、ハイブリッド式建設機械がその役割を果たすために搭載した搭載機器によって構成される。
【0015】
フロント作業機70は、基端が旋回フレーム111に回動可能に取り付けられて上下方向に回動するブーム71と、ブーム71の先端に回動可能に取り付けられたアーム73と、アーム73の先端に回動可能に取り付けられたバケット75とを有している。また、フロント作業機70は、旋回体110とブーム71とを接続し、伸縮することによってブーム71を回動させるブームシリンダ72と、ブーム71とアーム73とを接続し、伸縮することによってアーム73を回動させるアームシリンダ74と、アーム73とバケット75とを接続し、伸縮することによってバケット75を回動させるバケットシリンダ76とを有している。
【0016】
旋回体110は、
図1及び
図2に示すように旋回フレーム111上の前部に設けられた運転室(キャビン)3と、旋回フレーム111上の後部の原動機室112内に設けられた原動機としてのエンジン1と、エンジン1の燃料噴射量を調整するガバナ7と、エンジン1の実回転数を検出する回転数センサ1aと、エンジン1のトルクを検出するエンジントルクセンサ1bと、エンジン1の動力の補助及び発電を行う電動機としてのアシスト発電モータ2とを備えている。アシスト発電モータ2は、エンジン1の駆動軸上に配置され、エンジン1との間でトルクの伝達を行う。
【0017】
また、旋回体110は、アシスト発電モータ2の回転数を制御するインバータ装置9と、インバータ装置9を介してアシスト発電モータ2との間で電力の授受を行う蓄電装置8と、上述したブームシリンダ72、アームシリンダ74及びバケットシリンダ76等の油圧アクチュエータへ供給する作動油の流量及び方向を制御するバルブ装置12とを備えている。
【0018】
旋回体110の原動機室112内には、油圧アクチュエータ72,74,76を駆動するための油圧システム90が配置されている。油圧システム90は、油圧を発生する油圧源となる油圧ポンプ5及びパイロット油圧ポンプ6と、バルブ装置12の操作部にパイロット管路Pを介して接続され、各油圧アクチュエータ72,74,76の所望の動作を可能とする操作装置4とを含んでいる。操作装置4は、運転室3内に設けられており、操作者が把持して操作する操作レバー17を有している。
【0019】
さらに、旋回体110は、油圧ポンプ5の容量を調整するポンプ容量調節装置10と、ガバナ7を調整してエンジン1の回転数を制御すると共に、インバータ装置9を制御してアシスト発電モータ2のトルクを制御する制御装置としてのコントローラ11とを備えている。なお、油圧ポンプ5、油圧アクチュエータ72,74,76及びバルブ装置12によって油圧回路が構成される。上述の回転数センサ1aによって検出されたエンジン1の実回転数、エンジントルクセンサ1bによって検出されたエンジン1のトルク及び操作レバー17の操作量等はコントローラ11に入力される。
【0020】
油圧ポンプ5はアシスト発電モータ2を介してエンジン1に接続されている。油圧ポンプ5及びパイロット油圧ポンプ6はエンジン1及びアシスト発電モータ2の駆動力で動作する。油圧ポンプ5から吐出された作動油はバルブ装置12に供給される。また、パイロット油圧ポンプ6から吐出された作動油は操作装置4に供給される。
【0021】
このとき、運転室3内の操作者が操作レバー17を操作すると、操作装置4は、操作レバー17の操作量に応じた作動油を、パイロット管路Pを介してバルブ装置12の操作部へ供給する。これにより、バルブ装置12内のスプールの位置が作動油によって切換えられ、油圧ポンプ5からバルブ装置12を流通した作動油が油圧アクチュエータ72,74,76へ供給される。これにより、油圧アクチュエータ72,74,76が油圧ポンプ5からバルブ装置12を介して供給された作動油によって駆動される。
【0022】
油圧ポンプ5は、可変容量機構として例えば斜板(図示せず)を有し、この斜板の傾斜角を調整することによって作動油の吐出流量を制御している。以下、油圧ポンプ5を斜板ポンプとして説明するが、作動油の吐出流量を制御する機能を有するものであれば、油圧ポンプ5は斜軸ポンプ等であっても良い。なお、油圧ポンプ5には図示されないが、油圧ポンプ5の吐出圧を検出する吐出圧センサ、油圧ポンプ5の吐出流量を検出する吐出流量センサ及び斜板の傾斜角を計測する傾斜角センサが設けられている。コントローラ11は、これらの各センサから得られた油圧ポンプ5の吐出圧、吐出流量及び斜板の傾斜角を入力して油圧ポンプ5の負荷を演算する。
【0023】
ポンプ容量調節装置10は、コントローラ11から出力される操作信号に基づいて油圧ポンプ5の容量(押しのけ容積)を調節するものである。具体的には、ポンプ容量調節装置10は、斜板を傾転可能に支持するレギュレータ13と、コントローラ11の指令値に応じてレギュレータ13に制御圧を加える電磁比例弁14とを有する。レギュレータ13は、電磁比例弁14から制御圧を受けると、この制御圧によって斜板の傾斜角を変更する。これにより、油圧ポンプ5の容量(押しのけ容積)が調節され、油圧ポンプ5の吸収トルク(入力トルク)を制御することができる。
【0024】
また、エンジン1の排気通路には、エンジン1から排出された排気ガスを浄化する排気ガス浄化システムが設けられている。この排気ガス浄化システムは、還元剤としての尿素から生成されたアンモニアによる排気ガス中の窒素酸化物の還元反応を促進する選択的接触還元触媒(SCR触媒)80と、尿素をエンジン1の排気通路内に添加する還元剤添加装置81と、この還元剤添加装置81へ供給する尿素を蓄える尿素タンク82と、エンジン1の排気音を消音するマフラ(消音機)83とを備えている。従って、エンジン1の排気ガスは、選択的接触還元触媒80で排気ガス中の窒素酸化物を無害な水と窒素に浄化してからマフラ83を介して大気へ放出される。
【0025】
上述したエンジン1、アシスト発電モータ2、インバータ装置9及び蓄電装置8は使用され続けることによって発熱するので、これらの機器の温度上昇を抑えるために、冷却装置を旋回体110内に備えている。また,油圧ポンプ5から吐出される作動油の温度を計測する作動油温検出部60と,油圧ショベル周辺の外気温度を計測する外気温検出部61を旋回体110内に備えている。
【0026】
図3は本発明の一実施例に係るハイブリッド式油圧ショベルの運転室内の操作レバー及び表示装置の構成を説明する図である。
【0027】
図3に示すように、操作レバー17a〜17dは、例えば、運転席18に着座した操作者が把持して車体の動作を手動で操作するものである。これらの各操作レバー17a〜17dの操作信号はコントローラ11へ送信される。
【0028】
操作レバー17aは、運転席18の前方左側に配置されている。操作レバー17aは前方向(矢印A方向)に操作されることにより、走行体100の左側の履帯100aを前方向へ走行させる(左履帯前進)。操作レバー17aは後方向(矢印B方向)に操作されることにより、走行体100の左側の履帯100aを後方向へ走行させる(左履帯後退)。
【0029】
操作レバー17bは、運転席18の前方右側に配置されている。操作レバー17bは前方向(矢印C方向)に操作されることにより、走行体100の右側の履帯100aを前方向へ走行させる(右履帯前進)。操作レバー17bは、後方向(矢印D方向)に操作されることにより、走行体100の右側の履帯100aを後方向へ走行させる(右履帯後退)。
【0030】
操作レバー17cは、運転席18の左側方に配置されている。操作レバー17cは、前方向(矢印E方向)に操作されることにより、旋回装置110aを左に旋回させ(左旋回)、後方向(矢印F方向)に操作されることにより、旋回装置110aを右に旋回させる(右旋回)。また、操作レバー17cは、左方向(矢印G方向)に操作されることにより、アーム73を上方向に回動させ(アーム伸ばし)、右方向(矢印H方向)に操作されることにより、アーム73を下方向に回動させる(アーム曲げ)。
【0031】
操作レバー17dは、運転席18の右側方に配置されている。操作レバー17dは、前方向(矢印I方向)に操作されることにより、ブーム71を下方向に回動させ(ブーム下げ)、後方向(矢印J方向)に操作されることにより、ブーム71を上方向に回動させる(ブーム上げ)。また、操作レバー17dは、左方向(矢印K方向)に操作されることにより、バケット75を下方向に回動させ(バケット掘削)、右方向(矢印L方向)に操作されることにより、バケット75を上方向に回動させる(バケット開放)。
【0032】
なお、運転室3には、操作レバー17a〜17dの操作状態、すなわち操作レバー17a〜17dの位置を検出する操作レバー状態検出部19(
図2参照)が設けられている。
【0033】
表示装置15は、コントローラ11から受信した情報を映し出すモニタ15aと、モニタ15aを操作する操作スイッチ15bとから構成されている。操作スイッチ15bは、モニタ15aの電源をON状態又はOFF状態に切替える電源スイッチ及びこの電源スイッチがON状態のときにモニタ15aに映し出される映像を切替える切替スイッチ等を備えている。
【0034】
運転席18の左側に配置されたゲートロックレバー50は、油圧ショベルの動作の可否を切り替えるレバーである。ゲートロックレバー50を前方に倒すことによりONとなり、操作レバー17を操作しても履帯100a、旋回装置110a、ブーム71、アーム73及びバケット75が動作しない状態となる。このゲートロックレバー50は油圧ショベルの安全装置である。油圧ショベルを動作させるためには、ゲートロックレバー50を後方に倒してOFFとし、操作レバー17を操作する。なお、運転室3には、ゲートロックレバー50の操作状態、すなわちゲートロックレバー50の位置を検出するゲートロックレバー状態検出部51(
図2参照)が設けられている。
【0035】
また、運転室3には、油圧ショベルの動作出力を設定する出力設定部16が設けられている。この出力設定部16は、例えばエンジン回転数を調整して油圧ショベルの動作出力を設定するエンジン回転数調整ダイヤル16aや、エコノミーモードやパワーモードを設定する出力モード設定スイッチ16bから成っている。エンジン回転数調整ダイヤル16aや出力モード設定スイッチ16bは、運転室3内の操作者が作業内容に応じて、車体の動作出力の設定を「小出力」(軽負荷作業を行うのに適した設定)又は「大出力」(高負荷作業を行うのに適した設定)に選択するようになっている。この出力設定部16の状態は,出力設定検出部16A(
図2参照)で検出され,コントローラ11に入力される。
【0036】
ここで、蓄電装置8には電流制限がなく使用できる上限温度があるので、蓄電装置8の温度が過度に高くならないように冷却する必要がある。また、蓄電装置8は低温時に許容出力が低下する。
図4は蓄電装置8の充電率(SOC)と許容出力との関係を蓄電装置8の温度(低温度,中温度,高温度)毎に示す図である。
図4に示すように蓄電装置8は、低温時に許容出力が低下する。従って、許容出力を低下させることなく蓄電装置8を使用するためには、蓄電装置8を所定の温度以上に暖める必要がある。すなわち、蓄電装置8を暖機することにより、蓄電装置8を適切な温度範囲に保つ必要がある。特に、外気の温度が低い冬季における油圧ショベルの始動時等では、蓄電装置8の許容出力を高めるために作業が開始される前に蓄電装置8を予め暖機しておくと良い場合がある。
【0037】
図5は、本発明の一実施例に係る温調装置の構成を示す図である。温調装置20は、蓄電装置8を冷却又は暖機し、蓄電装置8を適切な温度範囲に保つ装置である。
【0038】
図5に示すように、温調装置20は、冷却水等の冷却媒体を蓄電装置8の近傍(熱の授受が可能な位置)に循環させて蓄電装置8を冷却する冷却回路21と、エンジン冷却水等の加温媒体を蓄電装置8の近傍(熱の授受が可能な位置)に循環させて蓄電装置8を暖機する暖機回路25とを含む。
【0039】
冷却回路21は、冷却媒体が内部を流通する液配管22と、この液配管22内で冷却媒体を循環させるポンプ23と、蓄電装置8と冷却媒体との間で熱交換を行う熱交換部材としてのウォータジャケット24と、冷却媒体と外気との間で熱交換を行うバッテリラジエータ26とから構成されている。冷却回路21を構成する各機器は液配管22によって順に環状に接続されている。なお、バッテリラジエータ26には、外気を旋回体110内へ取り込んで冷却媒体等を冷却する送風用のファン27が取り付けられている。
【0040】
暖機回路25は、エンジン1を冷却することによって暖められた加温媒体(エンジン冷却水)が内部を流通する液配管37と、この液配管37内で加温媒体を循環させるポンプ38と、蓄電装置8と加温媒体との間で熱交換を行う熱交換部材としてのウォータジャケット24と、ウォータジャケット24に加温媒体を流すか否かを切り替える制御弁35とから構成されている。暖機回路25を構成する各機器は液配管37によって順に環状に接続されている。また,エンジン1で温められた加温媒体の温度を計測するエンジン冷却水温検出部62を液配管37に備えている。
【0041】
暖機回路25と並列に暖房回路41とエンジン冷却回路42とを備えている。暖房回路41にあるヒータコア40に加温媒体を循環することにより、運転室3内を暖めることができる。エンジン冷却回路42には、加温媒体(エンジン冷却水)と外気との間で熱交換を行うエンジンラジエータ28と、加温媒体(エンジン冷却水)が所定温度以上になった場合に加温媒体をエンジン冷却回路42に循環するサーモスタット39とが設けられている。なお、エンジンラジエータ28には、外気を旋回体110内へ取り込んで加温媒体(エンジン冷却水)を冷却する送風用のファン29が取り付けられている。
【0042】
蓄電装置8は、塵埃や水等の異物が混入して破損することを防ぐために、保護カバー等で覆われるのが好ましい。
【0043】
冷却回路21に備わるポンプ23は電動ポンプであり、コントローラ11によりON/OFF制御される。一方、暖機回路25にあるポンプ38は、エンジン1に直結したポンプでありエンジン1の駆動とともに常に動作している。なお、この暖機回路25にあるポンプ38は、冷却回路21にあるポンプ23と同様に電動ポンプであっても構わない。この場合には、制御弁35を暖機回路25に設置せず、電動ポンプのON/OFFや流量制御によりウォータジャケット24に加温媒体を流すか否かを切り替えるようにすればよい。
【0044】
制御弁35は、ON時に開となるノーマルクローズ弁としており、コントローラ11によりON/OFF制御される。制御弁35は、OFF時には閉となり、加温媒体がウォータジャケット24に循環しない。この場合、蓄電装置8の暖機は行われない。制御弁35は、ON時に開となり、加温媒体がウォータジャケット24に循環する。この場合、蓄電装置8は暖機される。なお、制御弁35は、上記のようにON/OFF弁ではなく、流量を制御できる比例弁であっても良い。
【0045】
蓄電装置8は、例えばウォータジャケット24に沿って直列に配置された複数の電池セル(蓄電セル)30から構成されている。これらの電池セル30は、熱伝導シート36を介してウォータジャケット24に熱結合状態で固定されている。各電池セル30は、角形形状のリチウムイオン二次電池から成っている。ただし、各電池セル30は、他の電池やキャパシタであっても良い。例えば、リチウムイオン二次電池の代わりに、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等を使用しても良い。
【0046】
また、蓄電装置8に流れる電流を計測する電流計測部としての電流センサ31、各電池セル30の電圧を計測する電圧計測部としての電圧センサ32、各電池セル30の上部温度を計測する上部温度計測部としての上部温度センサ33及び各電池セル30の下部温度を計測する下部温度計測部としての下部温度センサ34がそれぞれ取り付けられている。複数のセンサから得られる電圧及び温度はコントローラ11で演算され、各電池セル30の電圧及び温度の計測値から蓄電装置8における電圧及び温度の平均値、最大値及び最小値が算出される。そして、コントローラ11は、電流センサ31によって計測された電流、電圧センサ32によって計測された電圧、上部温度センサ33によって計測された温度及び下部温度センサ34によって計測された温度等に基づいて蓄電装置8の蓄電量を演算する。コントローラ11は、演算した蓄電量に基づいて、蓄電装置8の蓄電量を管理している。また、コントローラ11は、例えば演算した蓄電装置8の蓄電量から充電率(SOC)を算出するようにしている。
【0047】
なお、電圧センサ32、上部温度センサ33及び下部温度センサ34は、
図5に示すように電池セル30の全てに設置しなくてもよく、代表的な点の電圧及び温度を測定できればよい。下部温度センサ34は、電池セル30の下部の温度を測定するために備えるが、設置上の制約から電池セル30近傍のウォータジャケット24に設置してもよい。また、下部温度センサ34は、後述するように電池セル30の上下の温度差を求めるのに使用する。このため,上部温度センサ33を設置した電池セル30に下部温度センサ34を設置することが望ましい。電池セル30の上下の温度差は、電池セル30内部の温度ばらつきとして説明する場合もある。
【0048】
図5では、ファン27とファン29とを別のものとして記載しているが、1つのファンによりバッテリラジエータ26とエンジンラジエータ28とに送風する構成であっても良い。また、ファン27,29は、エンジン1により直接駆動するようにしている。
【0049】
ウォータジャケット24は、薄板状の金属部材により形成されており、冷却媒体と加温媒体を循環させる流路を有する。ウォータジャケット24には、図示されないが、冷却媒体が内部へ流入する冷却媒体入口と、内部に形成され、この冷却媒体入口から流入した冷却媒体を循環させる溝と、この溝を循環した冷却媒体が外部へ流出する冷却媒体出口と、加温媒体が内部へ流入する加温媒体入口と、内部に形成され、この加温媒体入口から流入した加温媒体を循環させる溝と、この溝を循環した加温媒体が外部へ流出する加温媒体出口とを備えている。ウォータジャケット24の内部を循環する冷却媒体と加温媒体とは、熱伝導シート36を介して各電池セル30と熱の授受を行っている。
【0050】
また、ウォータジャケット24は、上述したように金属部材であることから隣接する各電池セル30との間で電位差が存在する。そのため、電池セル30をウォータジャケット24に直接接触させると、大きなショート電流が流れる。電池セル30とウォータジャケット24との間に介在する熱伝導シート36は、このようなショート電流を回避する機能(絶縁機能)を有している。すなわち、熱伝導シート36は、電池セル30とウォータジャケット24とを電気的に絶縁し、かつ、電池セル30とウォータジャケット24との間で熱交換を効率良く行うものである。なお、熱伝導シート36は弾性体から成る。この弾性体として、例えばシリコン樹脂シート、熱伝導の優れたフィラーが充填されているプラスチックシート或いはマイカ等を用いることができる。しかし、これらの材料(部材)と同様の機能を有するものであれば、他のものを用いても良い。
【0051】
上記では、加温媒体としてエンジン1を冷却することによって暖められたエンジン冷却水を用いている。しかし、同様の効果が得られれば他のものであってもよい。例えば、ヒータやアシスト発電モータ2或いはインバータ装置9等の車載機器で暖められた媒体を用いてもよい。
【0052】
図2に示すコントローラ11は、蓄電装置8を冷却又は暖機し、適切な温度範囲に保つ温調装置20の制御装置としての機能を有している。このように本実施例に係る蓄電装置8の暖機運転は、加温媒体により行われる。
【0053】
次に、本実施例に係る温調装置20の運転動作について
図6、
図7及び
図8を参照して説明する。
図6は、本発明の一実施例に係る温調装置の冷却運転の動作を説明するフローチャートである。
図7は、本発明の一実施例に係る温調装置の暖機運転の動作を説明するフローチャートである。
図8は、本発明の一実施例に係る温調装置の暖機運転の制御弁のON/OFF制御の動作を説明するフローチャートである。
【0054】
蓄電装置8の温度調整は、蓄電装置8の熱が伝達された冷却媒体をバッテリラジエータ26により冷却する場合(冷却運転)、およびエンジン排熱に暖められた加温媒体により暖機する場合(暖機運転)がある。温調装置20の動作は蓄電装置8の温度に応じて変化する。
図6、
図7及び
図8の動作は、所定の時間毎に温度、電圧及び電流を計測して、繰り返して行われる。
【0055】
まず、本実施例に係るコントローラ11による蓄電装置8の冷却運転の動作について、
図6に示すフローチャートを用いて説明する。冷却運転は、複数ある上部温度センサ33によって計測された蓄電装置8の最高温度が所定の温度T1より高い場合に行われる。
【0056】
S201において、制御弁35をOFFとし、加温媒体をウォータジャケット24に循環させないようにする。これにより加温媒体の熱が蓄電装置8に伝わらないようになる。次にS202において、ポンプ23をONとし、冷却媒体をウォータジャケット24に循環させる。このとき、蓄電装置8で発生した熱は、ウォータジャケット24内を流通する冷却媒体に伝わる。ウォータジャケット24内で暖められた冷却媒体は、バッテリラジエータ26に供給されて冷却される。なお、蓄電装置8の温度を制御するためには、ポンプ23から吐出される冷却媒体の流量又はファン27によって送風される外気の風量を調整すれば良い。もちろん、冷却媒体の流量及び送風される外気の風量の両方を調整してもよい。
【0057】
具体的には、上部温度センサ33によって計測された蓄電装置8の温度が高い場合には、ポンプ23から吐出される冷却媒体の流量を増加させたり、あるいはファン27により送風される外気の風量を増加させたりすれば良い。一方、上部温度センサ33によって計測された蓄電装置8の温度が低い場合には、ポンプ23から吐出される冷却媒体の流量を減少させたり、あるいはファン27によって送風される外気の風量を減少させたりすれば良い。
【0058】
次に、本実施形態に係るコントローラ11による蓄電装置8の暖機運転の動作について、
図7に示すフローチャートを用いて説明する。暖機運転は、複数ある上部温度センサ33によって計測された蓄電装置8の最低温度が所定の温度T2より低い場合に行われる。この温度T2は、後述する暖機目標温度である。
【0059】
S301において、ポンプ23をOFFにし、冷却媒体をウォータジャケット24に循環させないようにする。これにより、蓄電装置8の熱がウォータジャケット24から冷却媒体へ逃げるのを防ぐことができる。次にS302において、制御弁35のON/OFF制御を行う。なお、制御弁35の制御の詳細は後述する。
【0060】
以上のようにして、温調装置20を運転し、蓄電装置8を冷却又は暖機して適切な温度範囲に保つ。しかし、上部温度センサ33の最低温度がT2以上、かつ、最高温度がT1以下の場合には、冷却運転も暖機運転も行わないことにしている。この場合には、ポンプ23をOFFとし、制御弁35をOFFとする。
【0061】
次に、S302に示す制御弁35のON/OFF制御について、
図8に示すフローチャートを用いて説明する。この制御は、加温媒体をウォータジャケット24に循環するか否かを切り替えるものである。
【0062】
S401において、下部温度センサ34の温度が予め設定された所定温度T3より高いか否かを判定する。S401において電池セル30の下部温度がT3より高いと判定された場合には、S404において制御弁35をOFFとし、加温媒体による暖機運転を停止する。これは、電池セル30の下部が高温になるのを防止するためである。S401において電池セル30の下部温度が所定温度T3以下である場合には、S402において電池セル30の上部と下部の温度差である電池セル内温度差が予め設定された温度に対して高いか低いかを判定する。制御弁35がONであり、S402において電池セル内温度差が第一判定温度T4より低い場合にはS403に移り、制御弁35はONの状態を保つ。制御弁35がONであり、S402において電池セル内温度差が第一判定温度T4以上の場合にはS404において制御弁35をOFFとし、加温媒体による暖機運転を停止する。
【0063】
制御弁35がOFFであり、S402において電池セル内温度差が第二判定温度T5より低い場合にはS403に移り、制御弁35をONにする。制御弁35がOFFであり、S402において電池セル内温度差が第二判定温度T5以上の場合には、S404において制御弁35がOFFの状態を保つ。なお、第一判定温度T4は第二判定温度T5よりも高い温度に設定されている。
【0064】
このように電池セル内温度差により制御弁35のON/OFFを切り替えるのは、電池セル30の内部の温度ばらつきを抑えるためである。電池セル30内の温度ばらつきは、電池セル30に内部抵抗のばらつきを生じさせる。電池セル30は、内部抵抗のばらつきを生じることにより、電流の流れやすい部分と流れにくい部分とに分かれ、電池の劣化を早めるおそれがある。
【0065】
また、S401の判定に用いる電池セル30の下部温度は、複数設置した下部温度センサ34の中での最高温度を用いるのがよい。さらに好ましくは、最も下部温度が高くなるウォータジャケット24の加温媒体入口近傍の温度を測るのがよい。S402の判定に用いる電池セル内温度差は、全ての計測箇所の中での最大のセル内温度差を用いるのがよい。さらに好ましくは、最も電池セル内温度差が大きくなるウォータジャケット24の加温媒体入口近傍の電池セル内温度差を測定するのがよい。このように、ウォータジャケット24の加温媒体入口近傍の電池セル30の上部温度と下部温度とから電池セル内温度差を計測できればよいので,下部温度の計測点を少なくできる。
【0066】
以上のようにして、制御弁35のON/OFF制御を行い、電池セル30の下部が高温になるのを防止し、かつ、電池セル30内部の温度ばらつきを抑制するようにしている。
【0067】
上記の暖機運転を行う低温環境において、油圧ショベルを起動した直後は、蓄電装置8の最低温度と温度T2との差が大きい。従って、速やかに蓄電装置8を暖機する必要がある。一方、油圧ショベルが起動直後の運転ではなく、蓄電装置8の最低温度が一度、所定温度T2に到達した後に再度、蓄電装置8の温度が低下した場合には、蓄電装置8の最低温度と温度T2との差が小さい。そのため、暖機運転を行う場合には、起動直後より比較的早く蓄電装置8の温度を温度T2まで上昇させることが可能である。そこで、油圧ショベル起動直後の蓄電装置8の暖機を暖機運転と呼び、起動直後以外の暖機を暖機維持運転と呼ぶことにする。
【0068】
また、加温媒体による暖機運転により電池セル30内に温度ばらつきが生じやすいのは、
図5に示すように低温の電池セル30の下部を加温媒体により暖めるからである。電池セル30の側部や上部も加温媒体により暖めることができればよいが、蓄電装置8の構造上の制約により困難である。そのため、電池セル30の下部の温度が上部の温度より高くなる。本実施例では、電池セル内温度差が大きく(第一判定温度T4以上に)なると制御弁35をOFFにする。制御弁35がOFFされることにより加温媒体の循環が停止する。制御弁35がOFFされている間に、電池セル30の下部から上部に熱が伝達され、電池セル30の上部の温度が上昇する。このため、電池セル内温度差は小さくなる。さらに、電池セル30の上部の温度が所定温度T2より低い場合には、再度制御弁35をONする。このように制御弁35のON/OFFを繰り返し、電池セル30が所定温度T2に到達して暖機を終了することになる。
【0069】
上記のように蓄電装置8の暖機終了後、油圧ショベルを休止した場合には、再び電池セル30の温度が低下して、電池セル30の暖機(暖機維持運転)を行うことになる。この場合も制御弁35のON/OFFを繰り返すことになる。
【0070】
制御弁35は動作保証回数が決められており、寿命向上のためには可能な限り作動回数を少なくする必要がある。上記では制御弁35としてON/OFF弁を用いているが、代わりに比例弁を用いても同様に流量調整を行う必要がある。また、制御弁35の代りに電動ポンプにした場合であっても流量調整を行うことになる。つまり、制御弁35と同様に比例弁やポンプ等の加温媒体の流量調整を行う機器は、可能な限り作動回数を少なくする必要がある。
【0071】
電磁弁35のON/OFFは、
図8のS402で示したように電池セル30の上部と下部の温度差が予め設定された温度であるか否かにより切り替えられる。
図9は、本発明の一実施例に係り、電池セル内温度差と制御弁のON/OFF信号との関係を説明する図である。
【0072】
電池セル内温度差が第一判定温度T4の到達で制御弁35はONからOFFに切り替え、電池セル内温度差が第二判定温度T5に到達で制御弁をOFFからONに切り替える。第一判定温度T4が高い場合には電池セル内温度差が大きくなるため、蓄電装置8の寿命に影響する。第一判定温度T4と第二判定温度T5の差が小さい場合には、電磁弁35のON/OFF回数が多くなり、かつ、制御弁のON時間が長くなるため、電磁弁35の寿命に影響する。しかし、第一判定温度T4が高く、第一判定温度T4と第二判定温度T5の差が小さい場合には、上記のように制御弁35のON時間が長くなるため、加温媒体から蓄電装置8への伝熱量が多くなり、蓄電装置8を早く暖機することができる。
【0073】
一方、
図10に、第一判定温度T4が低く、第一判定温度T4と第二判定温度T5との差が大きい場合の電池セル内温度差と制御弁35のON/OFF信号とを示す。
図10は、本発明の一実施例に係り、電池セル内温度差と制御弁のON/OFF信号との別の関係を説明する図である。
【0074】
図9に比べ、
図10は制御弁35の作動回数が減り、作動時間も減っていることがわかる。これにより、電池セル内温度差を小さくできるため、蓄電装置8の寿命を向上することができる。また制御弁35の作動回数を減らすことができるので、制御弁35の寿命向上が図れる。しかし、制御弁35のON時間が短くなることにより、加温媒体から蓄電装置8への伝熱量が少なくなり、蓄電装置8の暖機時間が長くなる。そこで、本実施例では車体の状態に応じて第一判定温度と第二判定温度を変えることにした。
【0075】
また、
図4に示すように蓄電装置8は、温度に応じて許容出力が決まる。つまり、車体要求出力以上に蓄電装置8を暖める必要がない。そこで、暖機する蓄電装置8の目標温度を車体要求出力に応じた温度とすることにした。
【0076】
以上のように、本実施例では、車体の状態により、暖機する目標温度を車体要求出力に応じた温度とした。また、車体の状態により制御弁35のON/OFFを切り替える第一判定温度、第二判定温度を変更することにした。すなわち、蓄電装置8を早く暖める場合(暖機優先)と、制御弁35の作動回数を減らす場合(寿命優先)を切り替えることにした。すなわち、本実施例では、暖機を優先する暖機優先モードと、それ以外の暖機モード(通常暖機モード)とを備え、通常暖機モードとして制御弁35の寿命を優先する寿命優先モードを備える。
【0077】
図11に本発明に係る加温媒体の流量調整を行うコントローラ11のブロック図を示す。
図11は、本発明の一実施例に係り、加温媒体の流量調整を行うコントローラを説明する図である。
【0078】
コントローラ11は、車体状態検出部である上部温度センサ33、下部温度センサ34、操作レバー状態検出部19、出力設定検出部16A、作動油温検出部60、外気温検出部61、エンジン冷却水温検出部62、エンジン回転数センサ1aで検出する車体情報である暖機/暖機維持の状態、操作レバーの状態、運転モード設定、作動油温、外気温、エンジン冷却水温、エンジン回転数の入力情報に対して、加温媒体の流量調整方法(制御弁35のON/OFF制御)を変更する。具体的には、これらの車体情報から蓄電装置8を早く暖める場合(暖機優先)と、制御弁35の作動回数を減らす場合(寿命優先)とを判定し、電池セルの暖機目標温度(T2)および電池セル内温度差の判定温度(第一判定温度および第二判定温度)を変更する。加温媒体の流量調整を行う制御弁35は、コントローラ11で設定した電池セル30の暖機目標温度および電池セル内温度差の判定温度に基づき、上述した
図8に示したフローチャートの通りに、電池セル温度及び電池セル内温度差に応じて制御される。
【0079】
電池セル温度は、複数の上部温度センサ33で計測した蓄電装置8の最低温度である。電池セル内温度差は、下部温度センサ34及び上部温度センサ33で計測した電池セルの下部温度から上部温度を引いた値である。
【0080】
暖機/暖機維持の状態には、上記のように車体起動直後の暖機運転の状態、または、それ以外の暖機運転(暖機維持運転)の状態とがある。暖機/暖機維持の状態は、上部温度センサ33で計測した蓄電装置8の最低温度を基に、コントローラ11の暖機運転状態判定部(暖機運転状態検出部)11Aにおける判定により検出する。
【0081】
操作レバーの状態は、操作レバー状態検出部19で検出した信号とゲートロックレバー状態検出部51で検出した信号とで検出される。
【0082】
運転モード設定は、エンジン調整ダイヤル16aと出力モード設定スイッチ16bとからなる出力設定部16の設定を出力設定検出部16Aで検出した信号である。本実施例では、出力設定部16はエンジン(原動機)の回転数を設定するエンジン回転数設定部を構成しており、出力設定検出部16Aはエンジン調整ダイヤル16a及び/又は出力モード設定スイッチ16bによる設定に基づいて設定されるエンジンの設定回転数を検出するエンジン設定回転数検出部を構成する。
【0083】
作動油温は、油圧アクチュエータ72,74,76を駆動する作動油の温度であり、作動油温検出部60で検出する。
【0084】
外気温は、外気温度検出部61で検出する。外気温度検出部61は、例えばエンジンの吸入空気温度センサやエアコンの温度センサであるが、外気温を検出できれば他のものであっても構わない。
【0085】
エンジン冷却水温は、エンジン1の排熱で暖められた加温媒体の温度であり、加温媒体温度検出部でもあるエンジン冷却水温度検出部62で検出する。
【0086】
エンジン回転数は、上述の原動機回転数検出部である回転数センサ1aによって検出された、エンジン1の実回転数である。
【0087】
次に車体状態に応じて、蓄電装置8を早く暖める場合(暖機優先)と、制御弁35の作動回数を減らす場合(寿命優先)との切り替え判定について説明する。
図12は、本発明の一実施例に係り、車体状態に応じた加温媒体の流量調整方法の変更を説明する図である。
【0088】
まず、暖機/暖機維持の状態による判定について説明する。暖機運転の場合には、上述のように車体起動直後の運転であり、蓄電装置8の温度と暖機目標温度との差が大きいため、蓄電装置8を早く暖めたい。そのため、暖機優先とする。一方、暖機維持運転の場合には、蓄電装置8の温度と暖機目標温度との差が小さいため、制御弁35の作動回数を減らす寿命優先にする。
【0089】
次に操作レバーの状態による判定について説明する。ゲートロックレバーがOFFまたは、操作者による操作レバー17の操作が有る場合には、蓄電装置8を早く暖めたいため、暖機優先とする。一方、ゲートロックレバーがON、または、操作者が操作レバー17を動かさず、フロント作業機70の暖機運転をしていない場合には、操作者が油圧ショベルを早く操作しなくてもよいことを意味する。この場合には、暖機時間(暖機に要する時間)は長くてもよい。したがって、制御弁35の作動回数を減らす寿命優先にする。
【0090】
次に運転モード設定の状態による判定について説明する。出力モード設定がパワーモードまたは、エンジン回転数設定が大きい場合には、操作者が高出力を要求している。この場合には、蓄電装置8を早く暖めたい。そのため、暖機優先とする。一方、出力モード設定がエコノミーモード、または、エンジン回転数設定が小さい場合には、操作者が高出力を要求していないことを意味する。この場合には、暖機時間は長くてもよい。したがって、制御弁35の作動回数を減らす寿命優先にする。なお、車体からの蓄電装置8の要求出力に応じて、暖機優先または寿命優先のいずれかを判定してもよい。
【0091】
次に作動油温による判定について説明する。作動油温が高い場合には、フロント作業機70をスムーズに動かせることを意味しており、蓄電装置8に高い出力要求がある。そのため、蓄電装置8を早く暖めるように、暖機優先とする。一方、作動油温が低い場合には、フロント作業機70をスムーズに動かすことができず、蓄電装置8に高い出力要求はない。したがって、制御弁35の作動回数を減らす寿命優先にする。また、蓄電装置8の温度と作動油温の差により判定しても良い。すなわち、蓄電装置8の温度が作動油温より低い場合には、蓄電装置8を早く暖めるように、暖機優先とする。一方、蓄電装置8の温度が作動油温より高い場合には、制御弁35の作動回数を減らす寿命優先にする。
【0092】
次に外気温による判定について説明する。外気温が低い場合には、電池セル30の初期温度が低く、電池セル30やウォータジャケット24等からの放熱量が大きいため、暖機時間(暖機に要する時間)が長くなる。そのため、蓄電装置8を早く暖めるように、暖機優先とする。一方、外気温度が高い場合には、暖機時間が短いため、制御弁35の作動回数を減らす寿命優先にする。上述したように外気温は、暖機時間を長くしたり、短くしたりする車体状態に関係する。このため、吸入空気温度センサやエアコンの温度センサで構成される外気温度検出部61は、車体状態を検出する車体状態検出部の一つを構成する。
【0093】
次にエンジン冷却水温度による判定について説明する。エンジン冷却水温度が高い場合には、蓄電装置8を早く暖めたいため、暖機優先とする。一方、エンジン冷却水温度が低い場合には、暖機時間は長くてもよい。したがって、制御弁35の作動回数を減らす寿命優先にする。
【0094】
次にエンジン回転数による判定について説明する。上記のエンジン回転数設定と異なり、実エンジン回転数である。エンジンの暖機等によりエンジン回転数設定とは異なる回転数となる場合があるため、入力情報の一つとした。エンジン回転数が大きい場合には、高出力を要求しているため,蓄電装置8を早く暖めたい。そのため、暖機優先とする。一方、エンジン回転数が小さい場合には、高出力を要求していないことを意味するため、暖機時間は長くてもよい。したがって、制御弁35の作動回数を減らす寿命優先にする。
【0095】
以上のように、車体状態に応じて蓄電装置8を早く暖める場合(暖機優先)と、制御弁35の作動回数を減らす場合(寿命優先)とを切り替えるようにしている。なお、入力情報である車体情報は
図12に示す全てを用いて判定するものでなくても良く、少なくとも一つを用いて判定する。また、複数の車体状態のうち一つの車体状態に基づく判定が暖機優先の場合には、暖機優先とする。これは、仮にこの判定が誤りであった場合でも、この一回の判定誤りが機器の寿命に及ぼす影響は小さいためである。逆に、この一つの車体状態に基づく暖機優先の判定を無視して寿命優先とした場合、仮にこの寿命優先の判定が誤りであった場合には、暖機運転に時間がかかり油圧ショベルの作業開始が遅くなってしまう。本実施例によれば、誤判定による油圧ショベルの作業開始の遅延を防ぐことができる。
【0096】
上述したように、本実施例では、車体状態検出部(車体情報検出部)として、温度センサ(本実施例では上部温度センサ33)で計測した蓄電装置8の温度(本実施例では最低温度)に基づいて蓄電装置8の暖機運転の状態を判定する暖機運転状態判定部11Aと、ハイブリッド式建設機械を操作する操作レバー17の状態を検出する操作レバー状態検出部19と、ハイブリッド式建設機械の動作の可否を切り替えるゲートロックレバーの状態を検出するゲートロックレバー状態検出部51と、ハイブリッド式建設機械の動作出力設定を検出する出力設定検出部(エンジン設定回転数検出部)16Aと、ハイブリッド式建設機械の作業機を駆動する作動油の温度を検出する作動油温検出部60と、外気温度を検出する外気温度検出部61と、加温媒体の温度を検出する加温媒体温度検出部62と、原動機の回転数を検出する原動機回転数検出部1aとを備える。
【0097】
操作レバー状態検出部19、ゲートロックレバー状態検出部51、出力設定検出部16A、作動油温検出部60、及び原動機回転数検出部1aは、蓄電装置8に要求される出力の高低に関係する車体状態(車体情報)を検出する車体状態検出部(車体情報検出部)である。また暖機運転状態判定部11A、外気温度検出部61、及び加温媒体温度検出部62は、蓄電装置の暖機に要する時間の長短に関係する車体状態(車体情報)を検出する車体状態検出部(車体情報検出部)である。
【0098】
本実施例において、車体状態は、本実施例で説明した、ハイブリッド式建設機械に搭載される種々の搭載機器の状態、動作又は設定を意味する。この場合、搭載機器の状態は、搭載機器が置かれている環境の状態、例えば周囲温度(外気温度)を含む。この意味において、上述した車体状態検出部はハイブリッド式建設機械の搭載機器状態検出部(搭載機器情報検出部)と言ってもよい。
【0099】
本実施例では、上述した車体状態検出部が検出する車体情報(搭載機器情報)に基づいて、コントローラ11が暖機モードを暖機優先モードにするか、それ以外の暖機モードにするかを判定する。すなわち、車体状態検出部が検出する車体情報は、蓄電装置8に対する車体(搭載機器)の要求出力を推定し、暖機モードを判定するために使用される。このために、コントローラ11は、車体の要求出力を推定する車体要求出力推定部(搭載機器要求出力推定部)を構成すると共に、暖機モードを判定する暖機モード判定部を構成する。本実施例では、車体要求出力推定部及び暖機モード判定部を備えることにより、暖機する蓄電装置8の目標温度を車体要求出力に応じた温度とし、必要以上に蓄電装置8を暖めることを抑制することができる。なお、上述した車体の要求出力は、具体的な電力の数値であってもよいし、例えば暖機優先モードを必要とする高出力の要求の有無であってもよい。高出力の要求の有無は、上述した車体状態によって判断される。
【0100】
コントローラ11によって構成される車体要求出力推定部及び暖機モード判定部が推定及び判定を行うための車体情報として、上述した以外の車体情報(搭載機器情報)を用いてもよく、車体情報を取得するために上述した車体状態検出部以外の車体状態検出部(搭載機器状態検出部)を備えてもよい。
【0101】
次に、暖機優先と寿命優先の場合の電池セルの暖機目標温度(T2)および電池セル内温度差の判定温度(第一判定温度および第二判定温度)について説明する。
図13は、本発明の一実施例に係り、暖機優先及び寿命優先の各場合と暖機目標温度との関係を説明する図である。
図14は、本実施の一実施例に係り、暖機優先及び寿命優先の各場合と電池セル内温度差の判定温度との関係を説明する図である。
【0102】
図13に示すように暖機優先の場合には、目標温度を高くして、蓄電装置8が高い出力を出せるようにする。一方、寿命優先の場合には、目標温度を低くして、制御弁35の作動回数を減らすようにする。
図13中の線が制御弁35をONからOFFに切り替える温度を示す。なお、
図13に示すように暖機目標温度は直線状に変化させるものでなくてもよく、同様の効果が得られれば曲線状や階段状に設定してもよい。
【0103】
また、
図14に示すように暖機優先の場合には電池セル内温度差の第一判定温度を高くし、第一判定温度と第二判定温度との差を小さくする。これにより、蓄電装置8を早く暖機でき、高い出力を出せるようになる。一方、寿命優先の場合には電池セル内温度差の第一判定温度を低くし、第一判定温度と第二判定温度との差を大きくする。これにより、電池セル内温度差を小さくでき、制御弁35の作動回数を減らすことができる。なお、
図14に示すように電池セル内温度差の判定温度は直線状に変化させるものでなくてもよく、同様の効果が得られれば曲線状や階段状に設定してもよい。
【0104】
上記のように、暖機優先または寿命優先と判定した場合、暖機目標温度と電池セル内温度差の判定温度の両方を変更しなくても良く、どちらか一方でも構わない。
【0105】
以上のように、本実施例では車体要求出力に応じたバッテリ温度にすることができる。また、蓄電装置8の温度ばらつきを抑えることができる。さらに、加温媒体の流量調整回数を可能な限り少なくすることができ、蓄電装置8や制御弁等の機器の寿命向上を図れる。
【0106】
次に蓄電装置8を複数設置する場合について、
図15を用いて説明する。
図15は、本実施の一実施例に係り、蓄電装置を複数設置する場合のウォータジャケットの冷却回路と暖機回路の接続方法と電池セル内温度差の計測方法を説明する図である。
【0107】
図15に示すように蓄電装置8のウォータジャケット24は、それぞれの冷却媒体および加温媒体の入口温度に差が生じないように並列に接続する。制御弁35は一つ設置することにし、
図8に示したフローチャートに示すように制御弁35を制御する。すなわち、エンジン側から各ウォータジャケット24に向かう配管は分岐しており、この分岐点の上流側に制御弁35が配設されている。また、各ウォータジャケット24からエンジン側に戻る配管は各ウォータジャケット24の下流側で集合されてエンジン側に戻るように構成される。各蓄電装置8に制御弁35を設けないのは、それぞれ独立に暖機/暖機維持運転を行うことなく、各蓄電装置8間の温度差を抑制するためである。また、電池セル内温度差を計測する電池セル30はウォータジャケット24の最も上流の電池セルがよい。
【0108】
電池セル内温度差は各蓄電装置8において計測できるようにしてもよいし、1つの蓄電装置8の電池セル内温度差を計測したものであってもよい。電池セル内温度差を各蓄電装置8で計測する場合には、電池セル内温度差の最大値により制御弁35のON/OFFを制御する。
【0109】
蓄電装置8を複数設置する場合には、以上のようにすることにより、蓄電装置8の温度ばらつきを抑えることができる。
【0110】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり,必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0111】
また、本実施形態に係るハイブリッド式建設機械はハイブリッド式油圧ショベルから成る場合について説明したが、この場合に限らず、ハイブリッド式ホイールローダ等の建設機械であっても良い。