(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
恒温槽付水晶発振器(OCXO;Oven Controlled Crystal Oscillator)は、水晶発振器をオーブン内に収納して一定温度に保持する構成であり、水晶発振器の中でも高い周波数安定度を備えたものである。
オーブンは、温度センサと熱源とを備え、内部を一定温度に保つよう温度制御する。
【0003】
OCXOでは、OCXO専用に設計された振動子を用いており、SCカット又はATカットが代表的である。ATカットの振動子の周波数温度特性は3次関数曲線となり、オーブンによって重根である頂点付近に温度制御されている。
【0004】
しかし、頂点温度は、水晶の切断加工のバラつきにより変化し、OCXOのようにppb(Parts Per Billion;10
-9)オーダーの極めて高い安定度が要求される場合には、加工のバラつきの影響も無視できないものとなっている。
そのため、振動子毎に個々に頂点温度を測定し、温度制御回路の回路定数を調整してオーブンを頂点温度に設定するようになっていた。
【0005】
また、一般的な水晶発振器の周波数調整精度は、±0.1ppm(Parts Per Million;10
-6)程度に調整されるが、OCXOは、より高安定かつ高精度であるため、個別に発振器と温度制御回路の手調整を行う必要があり、調整項目が多く煩雑であった。
調整項目としては、電気的に周波数を変化させる感度(VC感度)、恒温槽設定温度、発振周波数、オーブン補正回路、出力調整回路、温度補正回路等がある。
【0006】
更に、周波数を簡単に変えられる従来技術として、PLL(Phase Locked Loop)回路やDDS(Direct Digital Synthesizer)回路を用いた発振器がある。
しかし、PLL回路やDDS回路を用いた発振器では、デジタル回路特有のノイズが発生し、位相雑音の劣化、ジッタの劣化、不要なスプリアスの発生といった特性の劣化が生じてしまう。
【0007】
[関連技術]
尚、発振器の周波数調節に関する従来の技術としては、特開2012−138890号公報「圧電発振器」(日本電波工業株式会社、特許文献1)、特開2000−31741号公報「発振周波数制御方法、電圧制御発振器、電圧制御圧電発振器調整システムおよび電圧制御圧電発振器調整方法」(セイコーエプソン株式会社、特許文献2)、特開平5−218741号公報「水晶発振器の発振周波数補正方法」(シチズン時計株式会社、特許文献3)がある。
【0008】
特許文献1には、発振回路の入力側に、可変容量ダイオードのカソードを接続し、更に、当該カソードを抵抗を介してポテンショメータの制御電圧電極に接続し、ポテンショメータには、電源電圧がレギュレータを介して印加されるようにして、電源電圧が変動してもダイオードのカソードに一定の電圧を印加して周波数変化を抑制する圧電発振器が記載されている。
【0009】
特許文献2には、可変電圧発生回路が、制御電圧に応じて調整した電源電圧を発振回路に給電し、発振周波数を可変にする圧電発振器が記載されている。
特許文献3には、発振信号を周波数計測器で計測し、計測信号を演算機器で演算し、周波数偏差データをメモリー回路に記憶させて発振周波数を補正する水晶発振器が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の恒温槽付水晶発振器では、温度制御回路及び発振器を個々の製品毎に手調整しなければならず、作業が煩雑であり、また、PLL回路を用いた発振器では、周波数調整は容易であるが位相雑音が劣化してしまうという問題点があった。
【0012】
尚、特許文献1〜3には、デジタル制御ICを設けて、温度制御回路の動作を調整することは記載されていない。
【0013】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、位相雑音特性を劣化させることなく、発振器及び温度制御回路の調整を容易且つ高精度に行って、良好な特性の周波数信号を出力することができる恒温槽付水晶発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、恒温槽付水晶発振器であって、水晶振動子と発振回路とを有する水晶発振器と、電源電圧が一端に接続して発熱するヒータ抵抗と、温度に応じた電圧を一端に出力するサーミスタと、電源電圧が一端に供給され、他端がサーミスタの一端に接続する第1の抵抗と、電源電圧が一端に供給される第2の抵抗と、第2の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地する第3の抵抗と、第1の抵抗の他端とサーミスタの一端との間の電圧が、一方の入力端子に入力されると共に、第2の抵抗の他端と第3の抵抗の一端との間の電圧が、他方の入力端子に入力され、一方の入力端子に入力される電圧と他方の入力端子に入力される電圧との差分を増幅して制御電圧として出力する差動増幅器と、第1の抵抗に並列に設けられ、一端に電源電圧が供給される感温素子と、感温素子の他端に一端が接続し、他端が接地する第4の抵抗とを有する温度制御回路と、感温素子に並列に接続するデジタル可変抵抗と、外部から入力されるデジタル制御信号に基づいて、デジタル可変抵抗の抵抗値を調整する制御部とを有する制御ICとを備えたことを特徴としている。
【0016】
また、本発明は、上記恒温槽付水晶発振器において、水晶発振器が、水晶振動子に基準信号を供給する基準信号端子と、基準信号端子と水晶振動子との間に直列に接続する第5の抵抗と、第5の抵抗と水晶振動子との間に直列に接続する第1の容量素子と、第5の抵抗と第1の容量素子との間に一端が接続し、他端が接地する第2の容量素子とを備え、制御ICが、第1の容量素子と第2の容量素子との間の点に接続する別のデジタル可変抵抗を備え、制御部が、外部から入力されるデジタル制御信号に基づいて、別のデジタル可変抵抗の抵抗値を調整することを特徴としている。
【0017】
また、本発明は、上記恒温槽付水晶発振器において、水晶発振器が、水晶振動子に基準信号を供給する基準信号端子と、基準信号端子と水晶振動子との間に直列に接続する第5の抵抗と、第5の抵抗と水晶振動子との間に直列に接続する第1の容量素子と、第5の抵抗と第1の容量素子との間に一端が接続し、他端が接地する第2の容量素子とを備え、制御ICの外部に、第1の容量素子と第2の容量素子との間の点に接続するバリキャップダイオードを備え、制御部が、外部から入力されるデジタル制御信号に基づいて、バリキャップダイオードの抵抗値を調整することを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、上記恒温槽付水晶発振器において、水晶発振器が、水晶振動子に基準信号を供給する基準信号端子と、基準信号端子と水晶振動子との間に直列に接続する第5の抵抗と、第5の抵抗と水晶振動子との間に直列に接続する第1の容量素子と、第5の抵抗と第1の容量素子との間に一端が接続し、他端が接地する第2の容量素子とを備え、制御ICが、第1の容量素子と第2の容量素子との間の点に接続
し、デジタル信号によって容量値を離散的に制御するキャパシタを備え、制御部が、外部から入力されるデジタル制御信号に基づいて
、キャパシタの容量値を調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水晶振動子と発振回路とを有する水晶発振器と、電源電圧が一端に接続して発熱するヒータ抵抗と、温度に応じた電圧を一端に出力するサーミスタと、電源電圧が一端に供給され、他端がサーミスタの一端に接続する第1の抵抗と、電源電圧が一端に供給される第2の抵抗と、第2の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地する第3の抵抗と、第1の抵抗の他端とサーミスタの一端との間の電圧が、一方の入力端子に入力されると共に、第2の抵抗の他端と第3の抵抗の一端との間の電圧が、他方の入力端子に入力され、一方の入力端子に入力される電圧と他方の入力端子に入力される電圧との差分を増幅して制御電圧として出力する差動増幅器と、第1の抵抗に並列に設けられ、一端に電源電圧が供給される感温素子と、感温素子の他端に一端が接続し、他端が接地する第4の抵抗とを有する温度制御回路と、感温素子に並列に接続するデジタル可変抵抗と、外部から入力されるデジタル制御信号に基づいて、デジタル可変抵抗の抵抗値を調整する制御部とを有する制御ICとを備えた恒温槽付水晶発振器としているので、アナログ発振器を用いることで位相雑音特性を良好とし、デジタル制御により温度制御回路を精度よく容易に調整することができ、温度制御回路の動作を安定させて水晶振動子の頂点温度を保持し、良好な特性で高安定な出力周波数信号を得ることができる効果がある。
【0021】
また、本発明によれば、水晶発振器が、水晶振動子に基準信号を供給する基準信号端子と、基準信号端子と水晶振動子との間に直列に接続する第5の抵抗と、第5の抵抗と水晶振動子との間に直列に接続する第1の容量素子と、第5の抵抗と第1の容量素子との間に一端が接続し、他端が接地する第2の容量素子とを備え、制御ICが、第1の容量素子と第2の容量素子との間の点に接続する別のデジタル可変抵抗を備え、制御部が、外部から入力されるデジタル制御信号に基づいて、別のデジタル可変抵抗の抵抗値を調整する上記恒温槽付水晶発振器としているので、温度制御回路をデジタル制御で調整して、温度制御を安定させると共に、水晶発振器をデジタル制御により調整して、発振周波数を精度よく容易に調整でき、良好な特性で高安定な出力周波数信号を得ることができる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器は、低雑音のアナログ水晶発振器及び温度制御回路に加えて、デジタルポテンショメータと制御部とを有するデジタル制御ICを備え、制御部が、外部から入力されるデジタル制御信号に基づいて、デジタルポテンショメータの抵抗値を調整して、温度制御回路に温度依存特性を補償する電圧を印加するものであり、位相雑音特性を劣化させることなく、デジタル制御により温度制御回路を精度よく容易に調整でき、温度制御回路の動作を安定させて水晶振動子の頂点温度を保持し、高精度且つ高安定な出力周波数信号を得ることができるものである。
【0024】
また、本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器は、更に、デジタル制御ICに別のポテンショメータを備え、制御部が、外部から入力されるデジタル制御信号に基づいて、別のデジタルポテンショメータの抵抗値を調整して、アナログ水晶発振器に出力周波数を調整する電圧を印加するものであり、デジタル制御により発振周波数を精度よく容易に調整でき、高精度且つ高安定な出力周波数信号を得ることができるものである。
【0025】
[実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の回路構成:
図1]
本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の回路構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の回路図である。
尚、
図1は、後述する第2の恒温槽付水晶発振器に相当する回路となっている。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器(本恒温槽付水晶発振器)は、従来と同様のアナログ回路から成る水晶発振器(発振器部)及び温度制御回路に加えて、発振器部及び温度制御回路をデジタル制御するデジタル制御IC20が設けられている点が特徴となっている。
尚、アナログ回路の発振器部を用いることにより、位相雑音特性を良好にすることができるものである。
【0026】
[デジタル制御IC20]
本恒温槽付水晶発振器の特徴部分であるデジタル制御IC20について説明する。
デジタル制御IC20は、温度制御回路及び発振器部に対して、動作を調整する制御信号を出力するものである。
具体的には、デジタル制御IC20は、内部に、制御部とデジタル可変抵抗(デジタルポテンショメータ)とを備え、制御部が、外部から入力されるデジタル信号に基づいて、デジタル可変抵抗の抵抗値を調整し、それに応じた制御信号(制御電圧)を出力する。
デジタル制御IC20の構成については後述する。
【0027】
デジタル制御IC20は、調整対象の素子として2つの素子が接続可能となっており、外部からの制御信号(外部制御信号)を入力する入力端子23と、第1の素子を調整する制御信号を出力する接続端子21(図では「素子1」と記載)と、第2の素子を調整する制御信号を出力する接続端子22(「素子2」と記載)とを備えている。
接続端子21から出力される制御信号を素子1制御信号、接続端子22から出力される制御信号を素子2制御信号と称する。
そして、本恒温槽付水晶発振器では、素子1を発振器部、素子2を温度制御回路として、発振器部及び温度制御回路の調整を精度よく且つ容易に行うようにしている。
【0028】
つまり、本恒温槽付水晶発振器は、アナログの発振器部を用いることで、位相雑音特性を良好にすると共に、従来、煩雑な工程となっていた製品毎の個別調整を、デジタル制御IC20を用いて間接的に行うものである。
【0029】
調整時には、外部から各素子(温度制御回路及び発振器部)に対する調整パラメータの値(具体的には抵抗値)を数値入力することによって、デジタル可変抵抗の抵抗値を変えて温度制御回路及び発振器部を微調整することで、温度制御回路の特性及び恒温槽付水晶発振器の出力周波数を調整して、所望の出力特性とすることができるものである。
これにより、従来のアナログ素子の調整に比べて微調整を可能として出力信号の特性を良好にし、また、調整工程の効率を大幅に向上させることができるものである。
【0030】
[温度制御回路:
図1]
次に、本恒温槽付水晶発振器の温度制御回路について説明する。
本恒温槽付水晶発振器の温度制御回路は、
図1に示すように、主要な構成として、ヒータ抵抗12と、トランジスタ13と、制御回路14と、サーミスタTH1とを備えている。
サーミスタTH1は温度に応じた電圧を一端に出力する温度センサであり、制御回路14はサーミスタTH1の出力に応じて発熱を制御する回路である。
トランジスタ13は、制御回路14からの信号を増幅する。
ヒータ抵抗12及びトランジスタ13は制御回路14からの出力に応じて発熱する発熱素子となっている。
【0031】
温度制御回路における接続について説明する。
ヒータ抵抗12は、一端に電源電圧が印加されて、他端がトランジスタ13のコレクタに接続されている。トランジスタ13のエミッタは接地されている。
サーミスタTH1は、一端に温度に応じた電圧を出力し、他端は接地されている。
また、サーミスタTH1の一端には抵抗R10の一端が接続され、他端に電源電圧が印加されている。
抵抗R11は、一端に電源電圧が印加され、他端は抵抗R12の一端に接続されている。抵抗R12の他端は接地されている。
尚、抵抗R10,R11,R12は、請求項に記載した第1〜第3の抵抗に相当している。
【0032】
制御回路(増幅回路)14は、差動増幅器等で構成され、一方の入力端子にサーミスタTH1と抵抗10の間の電圧が印加され、他方の入力端子に抵抗R11と抵抗R12の間の電圧が印加され、各入力端子に入力される電圧の差分を増幅して、発熱素子への制御電圧として出力する。この制御電圧によって発熱素子が発熱して、オーブン内の温度を一定に保持している。
制御回路14の出力は、トランジスタ13のベースに入力される。
【0033】
そして、本恒温槽付水晶発振器の特徴として、サーミスタTH1と抵抗R10との間に、デジタル制御IC20の接続端子22からの素子2制御信号が印加される構成となっている。
具体的には、温度制御回路の各素子が備える特性(温度傾斜)によって、オーブン内の温度が若干変動してしまうものであるが、デジタル制御IC20からはこの変動を補償(キャンセル)するような制御信号を出力するようにしている。
【0034】
これにより、デジタル制御IC20からの素子2制御信号によって温度制御回路の動作を微調整することができ、オーブン内の温度を水晶振動子の頂点温度に精度よく保つことができるものである。
【0035】
[発振器部:
図1]
次に、発振器部について説明する。
本恒温槽付水晶発振器の発振器部は、
図1に示すように、基本的には従来と同様のアナログの発振器であり、基準信号に基づいて特定の周波数を発振する水晶振動子X1と、水晶振動子X1の出力を増幅する発振回路11とを有している。
端子としては、電源が印加される電源端子Vcc、出力信号が出力される出力端子OUT PUT、グランドに接続されるグランド端子GND、基準信号が入力される基準信号端子VCONTを備えている。
【0036】
そして、基準信号端子VCONTと水晶振動子X1との間に、直列に、抵抗R1と容量素子C2とが設けられ、抵抗R1と容量素子C2との間の点に一端が接続し、他端が接地される容量素子C1が設けられている。
尚、抵抗R1は、請求項に記載した第5の抵抗に相当し、容量素子C2は第1の容量素子に相当し、容量素子C1は第2の容量素子に相当している。
【0037】
そして、本恒温槽付水晶発振器の特徴として、容量素子C1と容量素子C2との間の点にデジタル制御IC20の接続端子21からの素子1制御信号が印加される構成となっている。
デジタル制御IC20からの素子1制御信号によって、発振器部の発振周波数を容易に微調整することができるものである。
【0038】
[第1の恒温槽付水晶発振器の主要部分:
図2]
次に、本発明の第1の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器(第1の恒温槽付水晶発振器)の主要部分について
図2を用いて説明する。
図2は、第1の恒温槽付水晶発振器の主要部分を示す説明図である。尚、主要部分以外の構成は、
図1に示したものと同等である。
第1の恒温槽付水晶発振器は、デジタル制御IC20が温度制御回路を調整するものである。
【0039】
図2に示すように、第1の恒温槽付水晶発振器のデジタル制御IC20は、デジタル可変抵抗24と、制御部25とを備えている。
デジタル可変抵抗24は、制御部25からの指示に従って抵抗値を変えるものであり、例えば、256段階に制御可能となっている。
【0040】
制御部25は、入力端子23からの外部制御信号(図では「制御信号」と記載)に基づいて、デジタル可変抵抗24の抵抗値を制御する。外部制御信号としては、デジタル可変抵抗24の256段階の抵抗値に対応する数値データが入力される。
また、デジタル可変抵抗24の両端は、2つの接続端子22にそれぞれ接続されている。
【0041】
また、
図2に示すように、第1の恒温槽付水晶発振器では、温度制御回路に、新たに感温素子15と抵抗R14とを設けている。
感温素子15は、サーミスタやリニア正温度計数抵抗等で構成され、抵抗R10に並列に設けられ、一端に電源電圧が印加され、他端が抵抗R14の一端に接続されている。抵抗R14の他端は接地されている。
R14の抵抗値は、数kΩ程度としている。
R14は、請求項に記載した第4の抵抗の抵抗に相当している。
【0042】
そして、デジタル制御IC20の素子2接続端子22は、温度制御回路の感温素子15の両端に接続されており、デジタル可変抵抗24が感温素子15に並列に接続される構成となっている。
デジタル可変抵抗24の抵抗値を変えることにより、感温素子15とデジタル可変抵抗24との合成抵抗値を変えることができ、これにより、感温素子15の感度を調整し、温度制御回路の微調整を行うことができるものである。
【0043】
第1の恒温槽付水晶発振器では、温度制御回路の部品点数を増やす必要があるものの、温度制御回路の特性を精度よく調整することができ、高い安定度の温度制御を可能とし、出力周波数信号の安定性を向上させることができるものである。
【0044】
[第2の恒温槽付水晶発振器の主要部分:
図3]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器(第2の恒温槽付水晶発振器)の主要部分について
図3を用いて説明する。
図3は、第2の恒温槽付水晶発振器の主要部分を示す説明図である。
第2の恒温槽付水晶発振器も、デジタル制御IC20が温度制御回路の調整を行うものであり、
図3に示すように、デジタル制御IC20には、デジタル可変抵抗26と、制御部25とが設けられている。
【0045】
デジタル可変抵抗26は、
図2に示したデジタル可変抵抗24と同様のものであるが、一端に電源電圧が印加され、他端が接地されている。
そして、制御部25が、入力端子23からの外部制御信号に基づいてデジタル可変抵抗26の抵抗値を調整して、素子2制御信号を接続端子22に出力するようになっている。
【0046】
第2の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路は、
図1に示した温度制御回路と同様の構成であり、抵抗R10とサーミスタTH1の間の点にデジタル制御IC20の接続端子22からの素子2制御信号が入力されるものである。
これにより、サーミスタTH1からの出力信号を調整して制御回路14に入力することができ、温度制御回路の動作を微調整するものである。
第2の恒温槽付水晶発振器は、第1の恒温槽付水晶発振器に比べて、簡易な構成で温度制御回路の調整を容易に行うことができるものである。
【0047】
[発振器部の調整]
次に、上述した温度制御回路の調整に加えて、発振器部の調整を行う恒温槽付水晶発振器について説明する。
図示は省略するが、後述する第3〜第5の恒温槽付水晶発振器は、発振器部の調整も合わせて行うものである。
【0048】
[第3の恒温槽付水晶発振器]
まず、本発明の第3の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器(第3の恒温槽付水晶発振器)について説明する。
第3の恒温槽付水晶発振器は、上述した温度制御回路の調整に加えて、発振器部における周波数調整を行うものである。
【0049】
第3の恒温槽付水晶発振器は、
図2又は
図3の構成に加えて、デジタル制御IC20の内部に別のデジタル可変抵抗を備え、制御部が、入力端子23からの制御信号に基づいて、別のデジタル可変抵抗の抵抗値を可変することで、素子1制御信号の電圧を調整して接続端子21から出力するものである。
接続端子21からの素子1制御信号は、発振器部の容量素子C2とC1の間の点に入力される。
【0050】
これにより、外部制御信号としてデジタルデータを入力することで、水晶振動子X1への基準信号を容易に且つ精度よく調整でき、所望の周波数信号が得られるものである。
特に、第3の恒温槽付水晶発振器では、温度制御回路と発振器部とを両方調整しているので、温度制御を安定させると共に周波数の調整を精度よく行うことができ、一層良好な特性の出力周波数信号が得られるものである。
【0051】
[第4の恒温槽付水晶発振器]
第4の恒温槽付水晶発振器は、デジタル制御IC20の内部にデジタル可変抵抗を設けるのではなく、デジタル制御ICの外部に抵抗を可変とするバリキャップダイオードを設け、このバリキャップダイオードを制御部が調整するものである。
【0052】
具体的には、バリキャップダイオードは、デジタル制御IC20の接続端子21と、発振器部との間に設けられ、制御部は、入力端子23からの外部制御信号に基づいて、バリキャップダイオードの抵抗値を可変する素子1制御信号を接続端子21から出力する。第4の恒温槽付水晶発振器では、素子1はバリキャップダイオードとなっている。
【0053】
これにより、水晶振動子の基準信号を調整でき、出力周波数の調整を容易に行うことができるものである。
第4の恒温槽付水晶発振器は、安価な構成で、第3の恒温槽付水晶発振器と同様に、温度制御を安定させると共に、周波数調整を容易に行うことができるものである。
【0054】
[第5の恒温槽付水晶発振器]
第5の恒温槽付水晶発振器は、素子1制御信号の電圧を、容量を変化させることで調整するものであり、デジタル制御IC20の内部にデジタルキャパシタを備えている。
そして、制御部が、入力端子23からの外部制御信号に従って、デジタルキャパシタの容量値を調整して素子1制御信号として接続端子21から出力し、水晶振動子の基準信号を調整することができるものである。
これにより、温度制御を安定させると共に、発振周波数の調整を容易に行うことができるものである。
【0055】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器によれば、アナログ回路から成る発振器部と温度制御回路を有し、温度制御回路のサーミスタTH1に接続する抵抗R10に並列に、直列接続の感温素子15と抵抗R14を備え、デジタル制御IC20の制御部25が、入力端子23からの外部制御信号に基づいて、温度制御回路の感温素子15に並列接続するデジタル可変抵抗24の抵抗値を調整して素子2制御信号として出力するようにしているので、アナログ発振器を用いることで、良好な位相雑音特性を備え、デジタル制御により温度制御回路を精度よく容易に調整でき、温度制御回路の動作を安定させて水晶振動子の頂点温度を保持し、高精度且つ高安定な出力周波数信号を得ることができる効果がある。
【0056】
また、本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器によれば、上記構成に加えて更に、デジタル制御IC20に、別のデジタル可変抵抗を備え、制御部25が、入力端子23から入力される外部制御信号に基づいて、別のデジタル可変抵抗の抵抗値を調整して、発振器部の基準信号を調整する素子1制御信号を印加するようにしているので、温度制御を安定させると共に、デジタル制御により発振周波数を精度よく容易に調整でき、高精度且つ高安定な出力周波数信号を得ることができる効果がある。