(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
150℃における、前記10%伸長時応力Xが3〜150(N/2.5cm)であり、前記10%伸長時応力Yが2〜150(N/2.5cm)である請求項1〜5の何れか1項に記載の加飾用積層シート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る加飾用積層シート、加飾用成形体及び加飾成形体の一実施形態について図面を参照して詳しく説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の加飾用積層シート10の模式断面図である。加飾用積層シート10は、100〜180℃の範囲から選ばれる成形温度で成形され、且つ、加飾用成形体は被加飾成形体に一体化されるものであり、被加飾成形体に一体化される側になる第1の繊維構造体を含む繊維基材層1と、成形体の加飾面になる第2の繊維構造体を含む繊維加飾層2と、繊維基材層1と繊維加飾層2とを接着する接着剤層3とを備える。また、第1の繊維構造体と第2の繊維構造体とは、成形温度において、第1の繊維構造体の10%伸長時応力をX(N/2.5cm)、第2の繊維構造体の10%伸長時応力をY(N/2.5cm)とした場合に、Y/Xが0.4〜2.5の範囲に含まれる。
【0017】
繊維基材層の形成に用いられる第1の繊維構造体としては、不織布,織物,編物等が用いられるが、不織布、とくには、成形時に伸びやすく、また、インモールド成形を行う場合には、繊維加飾層に溶融樹脂を浸透させにくくすることにより高い繊維感を維持させることができる点から極細繊維の不織布がとくに好ましく用いられる。以下、代表例として極細繊維の不織布について詳しく説明する。
【0018】
極細繊維を形成する樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),変性ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリトリメチレンテレフタレート(PTT),ポリトリエチレンテレフタレート,ポリヘキサメチレンテレフタレート,ポリプロピレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂;ポリ乳酸,ポリエチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリヒドロキシブチレート−ポリヒドロキシバリレート共重合体等の脂肪族ポリエステル系樹脂;ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド610,ポリアミド10,ポリアミド11,ポリアミド12、ポリアミド6−12等のポリアミド系樹脂;ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリブテン,ポリメチルペンテン,塩素系ポリオレフィン,エチレン酢酸ビニル共重合体,スチレンエチレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;エチレン単位を25〜70モル%含有する変性ポリビニルアルコール等から形成される変性ポリビニルアルコール系樹脂;及び、ポリウレタン系エラストマー,ポリアミド系エラストマー,ポリエステル系エラストマーなどの結晶性エラストマーが挙げられる。これらの中では、ガラス転移温度(Tg)が100〜120℃、さらには105〜115℃であるような変性PETが成形温度で軟化し、軟化したときには容易に延伸する点から好ましい。Tgが高すぎる場合には、繊維の延伸性が低下して賦形性が低下する傾向があり、Tgが低すぎる場合には、軟化しすぎて固化に時間がかかる傾向がある。なお、Tgが100〜120℃のPETとしては、芳香族PETの構成単位に直鎖の構造を乱す共重合成分を構成単位として含有する変性PET、特に、イソフタル酸,フタル酸,5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の非対称型芳香族カルボン酸や、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸を共重合成分として所定割合で含有する変性PETが好ましい。さらに具体的には、モノマー成分としてイソフタル酸単位を2〜12モル%含有する変性PETが好ましい。なお、Tgは、例えば、動的粘弾性測定装置(例えば、レオロジ社製FTレオスペクトラDDVIV)を用いて、幅5mm、長さ30mmの試験片を間隔20mmのチャック間に固定して、測定領域30〜250℃、昇温速度3℃/min、歪み5μm/20mm、測定周波数10Hzの条件で動的粘弾性挙動を測定することにより得られる。
【0019】
極細繊維の繊度としては、1dtex以下、さらには0.5dtex以下、とくには0.1dtex以下であり、0.01dtex以上、さらには0.05dtex以上、とくには0.07dtex以上であることが好ましい。極細繊維の繊度が高すぎる場合には、加飾用積層シートを成形する場合に、加熱による軟化時の延伸性が低下して、型形状を正確に転写しにくくなり、賦形性が低下する傾向がある。また、繊度が低すぎる場合には不織布の工業的な生産性が低下するとともに、インモールド成形する場合には、繊維間の空隙が小さくなることにより射出された樹脂が繊維間の空隙に侵入しにくくなって基材層との接着強力が低下する傾向がある。
【0020】
また、極細繊維の繊維長は特に限定されないが、長繊維であることが見掛け密度を高めやすい点からとくに好ましい。ここで、長繊維とは、所定の長さで切断処理された短繊維ではないことを意味する。長繊維の長さとしては、100mm以上、さらには、200mm以上であることが、極細繊維の繊維密度を充分に高めることができる点から好ましい。極細繊維の長さが短すぎる場合には、繊維の高密度化が困難になる傾向がある。上限は、特に限定されないが、例えば、連続的に紡糸された数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長であってもよい。また、これらの繊維は単独ではなく数種の繊維が混合されたものでもよい。
【0021】
また、極細繊維の不織布は、その内部空隙に含浸付与された高分子弾性体を含有することが好ましい。このような高分子弾性体の具体例としては、例えば、ポリウレタン、アクリロニトリルエラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー等が挙げられる。これらの中では、ポリウレタン、とくには、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート/エーテル系ポリウレタンが好ましい。また、ポリウレタンとしては、架橋された非発泡ポリウレタンが、加飾用成形体を成形する場合に金型から離型した後の弾性回復による変形を抑制し、その結果、深絞り形状の加飾用成形体を成形する場合にもくっきりとしたシャープな輪郭を賦形することができる点から好ましい。
【0022】
不織布中の高分子弾性体の含有割合は極細繊維との合計量に対して5〜40質量%、さらには、8〜35質量%、とくには12〜30質量%の範囲であることが賦形性に優れる点から好ましい。
【0023】
極細繊維の不織布の見掛け密度は0.45〜0.70g/cm
3、とくには0.50〜0.65g/cm
3であることが好ましい。極細繊維の不織布が、このような見掛け密度を有する場合には形態安定性と賦形性とのバランスにも優れる。なお、極細繊維の不織布の見掛け密度は、例えば、JISL10968.4.2(1999)に記載された方法で測定した目付の値を、JISL1096に準じて荷重240gf/cm
2で測定した厚さの値で割って求めることができる。
【0024】
極細繊維は、海島型複合繊維のような極細繊維形成型繊維を経て形成されるような、複数本の極細繊維の繊維束として存在することが好ましい。具体的には、例えば、5〜1000本、さらには5〜200本、とくには10〜50本、ことには10〜30本の極細繊維が繊維束として存在していることが好ましい。このように極細繊維が繊維束を形成して存在することにより、極細繊維の不織布の見掛け密度を高めることができる。
【0025】
極細繊維の不織布の厚さは特に限定されないが、250〜950μm、さらには250〜750μm、とくには300〜550μm程度であることが加飾成形体が厚くなりすぎない点から好ましい。
【0026】
加飾成形体の加飾面となる繊維加飾層に用いられる第2の繊維構造体としては、例えば、平織組織,斜文織組織,朱子織組織等の織物、レース編み,メリヤス編み等の編物、フェルト、不織布、合成皮革、人工皮革等のような繊維構造体が挙げられる。第2の繊維構造体の厚さは特に限定されず使用用途に応じて選択されるが、一般に100〜5000μm程度であることが好ましい。
【0027】
第2の繊維構造体を形成する繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),変性ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリトリメチレンテレフタレート(PTT),ポリトリエチレンテレフタレート,ポリヘキサメチレンテレフタレート,ポリプロピレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂;ポリ乳酸,ポリエチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリヒドロキシブチレート−ポリヒドロキシバリレート共重合体等の脂肪族ポリエステル系樹脂;ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド610,ポリアミド10,ポリアミド11,ポリアミド12、ポリアミド6−12等のポリアミド系樹脂;ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリブテン,ポリメチルペンテン,塩素系ポリオレフィン,エチレン酢酸ビニル共重合体,スチレンエチレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;エチレン単位を25〜70モル%含有する変性ポリビニルアルコール等から形成される変性ポリビニルアルコール系樹脂;及び、ポリウレタン系エラストマー,ポリアミド系エラストマー,ポリエステル系エラストマーなどの結晶性エラストマーが挙げられる。これらの中では、ガラス転移温度(Tg)が100〜120℃、さらには105〜115℃であるような変性PETが成形温度で軟化し、軟化したときには容易に延伸する点から好ましい。
【0028】
本実施形態の加飾用積層シートは、繊維基材層を形成する第1繊維構造体と繊維加飾層を形成する第2繊維構造体とが、成形温度において、第1繊維構造体の10%伸長時応力をX(N/2.5cm)、第2繊維構造体の10%伸長時応力をY(N/2.5cm)とした場合に、Y/Xが0.4〜2.5の範囲に含まれる。
【0029】
繊維構造体の成形温度における10%伸長時応力は、繊維構造体を成形温度に加熱した状態で、JISL1096「一般織物試験方法」の6.12「引張り強度試験」に準じて、25mm幅、長さ200mmの長方形の試験片を、掴み間隔50mmとなるよう取り付けて応力−歪み曲線(SSカーブ)を測定し、得られた応力−歪み曲線から10%伸長したときの応力として読み取ることができる。なお、繊維構造体には、繊維の流れる方向のMD方向(タテ方向)とそれに直交するCD方向(ヨコ方向)があるが、本実施形態においては、MD方向で測定した10%伸長時応力を基準とする。このようなMD方向は、通常、各方向にサンプリングして測定した場合の最大値を示す方向である。
【0030】
本実施形態の加飾用積層シートは、100〜180℃の範囲から選ばれる成形温度(設定最高温度)において、繊維基材層を形成する第1繊維構造体の10%伸長時応力をX(N/2.5cm)、繊維加飾層を形成する第2繊維構造体の10%伸長時応力をY(N/2.5cm)とした場合に、Y/Xが0.4〜2.5の範囲であり、好ましくは、0.8〜1.5の範囲である。このように第1繊維構造体と第2繊維構造体とが、Y/Xが0.4〜2.5の範囲に含まれるような加飾用積層シートによれば、繊維加飾層の変形が繊維基材層の変形に良好に追随することにより賦形性、特に、深絞り形状のような賦形が難しい形状における賦形性にも優れ、また、加飾面の剥離やシワの発生も抑制される。Y/Xが0.4未満の場合には、加飾用積層シートが成形される際に繊維加飾層の変形が繊維基材層の変形に追随しにくくなり、また、2.5を超える場合には、繊維基材層の変形が繊維加飾層の変形に追随しにくくなる。
【0031】
本実施形態の加飾用積層シートの製造に用いられる繊維基材層を形成する第1繊維構造体の成形温度における10%伸長時応力の具体例としては、例えば150℃における10%伸長時応力X(N/2.5cm)としては、3〜150N/2.5cm、さらには5〜100N/2.5cm、とくには7〜50N/2.5cm、ことには7〜30N/2.5cmであることが賦形性に優れる点から好ましい。第1繊維構造体の成形温度における10%伸長時応力が小さすぎる場合には、例えば、深絞りタイプの型や複雑な形状の型で成形する場合に加飾用積層シートが破れやすくなる傾向があり、大きすぎる場合には、成形時に深い絞りあるいは複雑な形状の部分で賦形性が低下する傾向がある。
【0032】
また、本実施形態の加飾用積層シートの製造に用いられる繊維加飾層を形成する第2繊維構造体の成形温度における10%伸長時応力の具体例としては、例えば150℃における10%伸長時応力Y(N/2.5cm)としては、2〜150N/2.5cm、さらには5〜100N/2.5cm、とくには10〜70N/2.5cm、ことには15〜50N/2.5cmであることが賦形性に優れる点から好ましい。成形温度における第2繊維構造体の10%伸長時応力が小さすぎる場合には、例えば、表面にタックが表れて複雑な形状の型で成形する場合に離型性が低下したり、表面に傷がつきやすくなったりする傾向があり、大きすぎる場合には深絞りタイプの型や複雑な形状の型で成形する場合に伸びにくくなる部分が生じ、賦形性が低下する傾向がある。
【0033】
なお、成形温度における各繊維構造体の10%伸長時応力は、繊維構造体を形成する繊維の種類、延伸度、繊度等の繊維特性を適宜調整することや、不織布の絡合状態や見掛け密度、織物の織目やパターン、編物の編みパターン等の繊維構造体の構造を調整することや、これらを組み合わせることにより所定の値が得られるように調整することができる。具体的には、例えば、繊維のTgや軟化温度が高い場合や繊度が高い(または延伸度が低い)場合には成形温度における10%伸長時応力も高くなる傾向がある。また、絡合状態が緻密で見掛け密度が高い不織布や織目が緻密な織物も成形温度における10%伸長時応力が高くなる傾向がある。一方、繊維のTgや軟化温度が低い場合,繊度が低い(または延伸度が高い)場合、絡合状態が粗で見掛け密度が低い不織布やトリコットやメリヤスのような伸縮性に富んだ編物の場合には成形温度における10%伸長時応力も低くなる傾向がある。
【0034】
繊維基材層を形成する第1繊維構造体と繊維加飾層を形成する第2繊維構造体との好ましい組み合わせとしては、例えば、第1繊維構造体として150℃における10%伸長時応力が5〜15N/2.5cm程度になる、繊度0.5dtex以下でTg100〜110℃のポリエステル極細繊維の絡合体を含む不織布と、第2繊維構造体として150℃における10%伸長時応力が12.5〜30N/2.5cm程度になる、繊度1dtex以上でTg100〜120℃のポリエステル繊維の平織物や、150℃における10%伸長時応力が5〜20N/2.5cm程度の各種繊維のトリコット生地やメリヤス生地が挙げられる。
【0035】
本実施形態の加飾用積層シートは、第1繊維構造体と第2繊維構造体とを接着剤で接着することにより製造される。第1繊維構造体と第2繊維構造体とを接着する接着剤としては、成形温度よりも高い軟化温度、好ましくは成形温度よりも10度以上高い軟化温度を有する接着剤を用いることが好ましい。このような接着剤としては、例えば、硬化性を有し、比較的高い軟化温度を有するような各種接着剤が用いられる。このような接着剤の具体例としては、例えば、軟化温度が150〜250℃程度のポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤が挙げられる。また、水分で硬化するホットメルト型湿分硬化ポリウレタン接着剤がとくに好ましい。
【0036】
ホットメルト型湿分硬化ポリウレタン接着剤は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマーを主成分として含有する、熱溶融性と湿分硬化性とを備えたポリウレタン形成成分である。ホットメルト型湿分硬化ポリウレタン接着剤が有する熱溶融性は、常温では固体ないしは塗布が困難な程度の粘稠性を有する性質であるが、加熱溶融することにより塗布が可能な粘度になり、冷却により再固化して接着性を発現するものである。このように、ホットメルト型湿分硬化ポリウレタン接着剤は、加熱溶融することにより繊維構造体や離型紙に塗布され、塗布された後、冷却されることにより再固化する。
【0037】
また、ホットメルト型湿分硬化ポリウレタン接着剤が有する湿分(湿気)硬化性は、ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基末端と湿気(水)が反応してウレタン結合や尿素結合を形成する硬化反応による。また、形成されたウレタン結合や尿素結合は、さらに系内に存在するイソシアネート基と反応することによる架橋反応にもよる。そして、このような硬化反応及び架橋反応を経て、ウレタンプレポリマーが高分子量化して硬化する。ホットメルト型湿分硬化ポリウレタンが有する湿分硬化反応は、短時間で生じる冷却固化とは対照的に、比較的長い時間、具体的には例えば、20〜50時間程度掛けて完全硬化する。
【0038】
形成される接着剤層は、ドット状、ライン状、パンチング状等のように通気性を有するような不連続または厚みが不均質(具体的には10%以上、さらには20%以上の厚み差を有する複数の領域を有する)になるように形成された層であることが好ましい。接着剤層が均質な連続層である場合には、繊維基材層と繊維加飾層とが全面で均質に接着されるために、繊維基材層の変形に繊維加飾層の変形が追随しにくくなる傾向がある。一方、不連続または不均質な厚みの領域を有する接着剤層は、接着剤が塗布されていない部分や薄い部分において、繊維加飾層の変形が繊維基材層の変形に良好に追随することに寄与する。このような、不連続または厚みが不均質な接着剤層は、例えば、ホットメルト型湿分硬化ポリウレタン接着剤のような加熱により溶融するホットメルト型の硬化性接着剤を用い、ドット状等の表面を有するグラビアロールを用いて溶融させた接着剤を繊維構造体や離型紙に塗布するような方法により形成することができる。接着剤層の厚さは特に限定されないが、例えば30〜150μm程度であることが好ましい。
【0039】
加飾用積層シートの製造方法は、例えば、第1繊維構造体または第2繊維構造体のいずれか一方の繊維構造体にグラビアロール等を用いて接着剤を塗布し、他の一方の繊維構造体を塗布された接着剤に重ねることにより、第1繊維構造体、接着剤、第2繊維構造体からなる積重体を形成し、積重体をプレスした後、接着剤を硬化させるような方法が挙げられる。ここで、ドット状、ライン状、パンチング状等のような不連続な模様を有するように刻印されたグラビアロールを用いて接着剤を塗布することにより、不連続または厚みが不均質な接着剤層を形成することができる。
【0040】
このようにして得られた加飾用積層シートは、真空圧空成形等により立体形状を有する加飾用成形体に成形される。
【0041】
次に、加飾用積層シートの成形の一例として、加飾用積層シート10を用いて真空圧空成形により加飾用成形体を製造する方法について
図2を参照して説明する。なお、加飾用成形体を得るための成形方法としては真空圧空成形の代わりに、真空成形,圧空成形,または熱プレス成形等の成形方法を用いてもよい。
【0042】
はじめに、
図2(a)に示すように、加飾用積層シート10の繊維加飾層2側に、通気性のない熱可塑性樹脂シート11を載置して積重体12を形成する。熱可塑性樹脂シート11は真空圧空成形において加飾用積層シート10に気密性を付与するために用いられる。
【0043】
熱可塑性樹脂シートは真空圧空成形の際に加熱により賦形可能に軟化し、また、ピンホール等のない気密を維持でき、後の工程で選択的に剥離可能なシートまたはフィルムであればとくに限定なく用いられる。このような熱可塑性樹脂シートを形成する熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂等の非晶性の熱可塑性樹脂や、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂等の融点の低い結晶性の熱可塑性樹脂が挙げられる。なお、(メタ)アクリル系は、メタクリル系またはアクリル系を意味する。これらの中では、(メタ)アクリル系樹脂、とくには、アクリルゴム,ニトリルゴム,イソプレンゴム等のエラストマー成分またはエラストマー単位を含有する(メタ)アクリル系樹脂が賦形性に優れるとともに、剥離性にも優れる点から好ましい。
【0044】
エラストマー単位を含有する(メタ)アクリル系樹脂としては、エラストマー単位を共重合したもの(例えば、(株)クラレ製の商品名クラリティ)や、エラストマー成分をアクリル樹脂中に分散させたもの(例えば、住友化学工業(株)製の商品名テクノロイ)等が市販品として入手しうる。
【0045】
熱可塑性樹脂シートの厚さとしては、10〜300μm、さらには15〜200μm、とくには30〜100μm程度であることが好ましい。熱可塑性樹脂シートが厚すぎる場合には賦形性が低下する傾向がある。また、熱可塑性樹脂シートが薄すぎる場合には、繊維基材から熱可塑性樹脂シートを剥離することが困難になる傾向がある。
【0046】
熱可塑性樹脂シートは、繊維構造体を形成する繊維よりも軟化しやすいことが賦形性に優れる点からとくに好ましい。
【0047】
積重体12は、
図2(a)に示すように、ヒーターHで加熱されて軟化される。ヒーターHによる加熱温度は、積重体12を真空圧空成形機Mの成形型M1に沿った形に変形させうるような温度であって、完全溶融させないような、100〜180℃の範囲、好ましくは130〜160℃の範囲から選ばれる成形温度である。このような成形温度を選択することにより、特性バランスに優れた繊維構造体を選択することができる。成形温度が100℃未満の場合には耐熱性に優れた繊維構造体を成形することが困難になり、180℃を超える場合には、特性バランスのよい繊維構造体を選択することが困難になる。
【0048】
加熱されて軟化された積重体12は、
図2(b)に示すように真空圧空成形機Mで真空圧空成形される。具体的には、
図2(c)に示すように、軟化された積重体12に真空圧空成形機Mの成形型M1を密着させ、積重体12と成形型M1との間の空気を成形型M1に形成された真空孔vから真空ポンプで排気することにより積重体12を成形型M1に吸着させて大気圧で密着させた後、賦形された積重体12を冷却して固化させる。
【0049】
そして、
図2(d)に示すように、真空孔vから空気を供給することにより、成形型M1から熱可塑性樹脂シート付加飾用成形体13を離型する。そして、
図2(e)に示すように、熱可塑性樹脂シート付加飾用成形体13の不要な部分14をトリミングして除去する。
【0050】
そして、
図2(f)に示すように、熱可塑性樹脂シート付加飾用成形体13から熱可塑性樹脂シート11を剥離することにより、加飾用成形体15が得られる。熱可塑性樹脂シート11の剥離方法は、特に限定されず、手で剥離したり、専用の剥離設備を用いて剥離する等、特に限定されない。
【0051】
このようにして得られた加飾用成形体は被加飾成形体に一体化されて、繊維素材からなる加飾面を備える加飾成形体とされる。加飾用成形体を被加飾成形体に一体化する方法としては、加飾用成形体をプリフォーム成形体として用い、加飾用成形体の繊維基材層の側に成形体を一体化させるインモールド成形や、加飾用成形体の繊維基材層の側に接着剤を介して予め成形された被加飾成形体に接着するような方法が挙げられる。本実施形態においては、代表例として、インモールド成形により、加飾用成形体15を被加飾成形体に一体化して加飾成形体を製造する方法について
図3を参照して説明する。
【0052】
図3(a)に示すように、金型17は、キャビティ部Cを備える可動側金型17aと、固定側金型17bとを備える。また、可動側金型17aと固定側金型17bとの間にはストリッパプレート17cが配置されている。はじめに、加飾用成形体15をキャビティ部Cに配置する。
【0053】
キャビティ部Cに加飾用成形体15を配置する方法は特に限定されないが、位置決めのために加飾用成形体15はキャビティ部Cに固定されていることが好ましい。加飾用成形体15がキャビティ部Cに固定されていない場合、次工程での射出成形時に、射出樹脂の流動に伴って加飾用成形体15がキャビティ部Cの中で位置ズレをおこすおそれがある。加飾用成形体15をキャビティ部Cに固定する方法の具体例としては、例えば、可動側金型の表面に粘着剤で固定する方法や、加飾用成形体15の形状に含まれる孔部や凹部をその形状に一致する可動側金型のコアにはめ込んで固定するような方法が挙げられる。
【0054】
そして、
図3(b)に示すように、射出成形によりキャビティ部C内に溶融樹脂21aを射出することにより、加飾用成形体15を表面で一体化した加飾成形体であるインモールド成形体を成形する。詳しくは可動側金型17aと固定側金型17bとを型締めし、射出成形機16のシリンダ18をノズルNが固定側金型17bのスプルーブッシュ17fに接触するまで前進させて、射出成形機のシリンダ18内で溶融された溶融樹脂21aをスクリュー19で射出することにより、金型17内に溶融樹脂21aを射出して射出成形する。射出された溶融樹脂21aは、金型17内の樹脂流路Rを流れてキャビティC内に流入し、充填される。このとき、繊維基材層1に溶融樹脂21aが適度に浸透するために、射出成形により成形される被加飾成形体である射出成形体21が投錨効果による高い接着性を維持するように加飾用成形体15と一体化される。
【0055】
インモールド成形で成形される射出成形体を形成するための樹脂としては、ABS系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、各種ポリアミド系樹脂のような各種熱可塑性樹脂が特に限定なく用いられ、用途に応じて適宜選択される。例えば、携帯電話、モバイル機器、家電製品等の筐体に用いる樹脂としては、ABS系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等の耐衝撃性に優れた樹脂が好ましく用いられる。
【0056】
射出成形条件は、射出する樹脂の融点および溶融粘度、成形体の形状、および樹脂厚みに応じて流動末端部まで樹脂流動が可能な条件(樹脂温度、金型温度、射出圧力、射出速度、射出後の保持圧力、冷却時間)が適宜選択される。
【0057】
そして、射出終了後、
図3(c)に示すように、溶融樹脂21aが冷却されて被加飾成形体である射出成形体21が形成され、射出成形体21に加飾用成形体15が一体化された加飾成形体20が成形される。そして、金型17を型開きすることにより、可動側金型17aと固定側金型17bとが隔離されて、
図3(d)に示すように、ランナー22及び加飾成形体20が取り出される。このようにして、加飾用成形体15の繊維基材層1の側に射出成形体21を一体化させた加飾成形体20が得られる。
【0058】
このようにして得られた加飾成形体は、繊維素材からなる意匠性に優れた加飾面を有する。このような加飾成形体は、携帯電話やスマートフォン、各種モバイル機器,家電製品等の筐体や、車両,航空機等の内装部品、建材,家具等の外装部材として好ましく用いられる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0060】
はじめに、本実施例で用いた繊維構造体の詳細について説明する。
〈不織布A〉
不織布Aはスパンボンド法で得られた長繊維の海島型複合繊維の繊維絡合体から海成分を除去することにより得られた次のような不織布である。不織布Aは、繊度0.08dtexの極細繊維の繊維束(平均25本/束)を絡合させた繊維絡合体と、含浸付与された架橋された非発泡ポリウレタンを含む、見掛け密度0.53g/cm
3、目付310g/m
2の不織布である。なお、極細繊維はTg110℃のイソフタル酸変性PETからなり、非発泡ポリウレタン/繊維絡合体の質量比は12/88であった。
〈不織布B〉
不織布Bは、見掛け密度0.40g/cm
3、目付95g/cm
2の抄紙系不織布(阿波製紙(株)製のPY−100−60)である。
〈平織物C〉
平織物Cは、Tg110℃のイソフタル酸変性PETの低延伸倍率(相対延伸倍率1倍)の繊度34dtexのレギュラー繊維を経糸及び緯糸に使用して平織した、見掛け密度0.69g/cm
3、目付140g/m
2の平織物である。
〈平織物D〉
平織物Dは、Tg120℃のPETの低延伸倍率(相対延伸倍率1倍)の繊度33dtexのレギュラー繊維を経糸及び緯糸に使用して平織した、見掛け密度0.68g/cm
3、目付135g/m
2の平織物である。
〈平織物E〉
平織物Eは、Tg120℃のPETの高延伸倍率(相対延伸倍率3倍)の繊度21dtexのレギュラー繊維を経糸及び緯糸に使用して平織した、見掛け密度0.71g/cm
3、目付145g/m
2の平織物である。
〈トリコットF〉
トリコットFは、Tg110℃のイソフタル酸変性PETの低延伸倍率(相対延伸倍率1倍)の繊度34dtexのレギュラー繊維をメリヤス経編みした、見掛け密度0.24g/cm
3、目付285g/m
2のトリコットである。
〈トリコットG〉
トリコットGは、Tg120℃のPETの低延伸倍率(相対延伸倍率1倍)の繊度
33dtexのレギュラー繊維をメリヤス経編みした、見掛け密度0.19g/cm
3、
目付250g/m
2のトリコットである。
〈トリコットH〉
トリコットHは、Tg120℃のPETの高延伸倍率(相対延伸倍率3倍)の繊度21dtexのレギュラー繊維をメリヤス経編みした、見掛け密度0.21g/cm
3、目付290g/m
2のトリコットである。
【0061】
また、本実施例で用いた接着剤についてまとめて説明する。
〈接着剤I〉
接着剤Iは、硬化後の軟化温度が175℃である、ホットメルト型湿分硬化ポリウレタン接着剤(DIC(株)製のホットメルト型湿分硬化ポリウレタン)である。
〈接着剤J〉
接着剤Jは、硬化後の軟化温度が85℃である、メチルエチルケトンに溶解されたポリビニルブチラール(PVB)系樹脂((株)クラレ製商品名「モビタール」)である。
【0062】
また、本実施例で用いた繊維構造体の成形温度における10%伸長時応力の評価方法及びその結果を以下にまとめて示す。
【0063】
(繊維構造体の成形温度における10%伸長時応力の測定)
【0064】
各繊維構造体から、25mm幅、長さ200mmのMD方向の長方形の試験片を切り出した。そして、150℃に設定された加熱槽を備えた引張試験機の上下のチャックに掴み間隔50mmとなるように試験片を把持させ、JISL1096「一般織物試験方法」の6.12「引張り強度試験」に準じて、5cm/minの引張速度でS−S曲線を測定した。得られたS−S曲線から10%伸長したときの応力を読み取った。値は、試験片
5個の平均値である。測定結果のS−S曲線を
図4に、また、150℃における10%伸長時応力を下記表1に示す。なお、
図4の(b)は
図4(a)の縦軸のスケールを拡大した図である。
【0065】
【表1】
【0066】
[実施例1]
繊維基材層となる不織布Aの一面に、目付35g/m
2になるように接着剤Iをドット状に塗布することにより接着剤層を形成した。具体的には、はじめに、第1の送り出しリールから不織布Aを1m/分の速度で連続して送り出し、巻き取りリールにより巻き取るラインを形成した。そして、樹脂フィーダー中に収容された110℃で溶融された接着剤Iをライン途中に設けられた表面温度50℃に設定されたグラビアロールを用いて、不織布Aの一面に塗布した。なお、グラビアロールの表面には多数のドット状の凹凸が刻印されていた。そして、グラビアロールの下流に設けられた第2の送り出しリールから繊維加飾層となる平織物Cを送り出し、接着剤Iが一面に塗布された不織布Aに平織物Cを積層して積重体を形成し、さらに下流に設けられたプレスロールで積重体をプレスすることにより、不織布Aと平織物Cとを接着剤Iを介して仮接着した。そして、仮接着された積層体を温度40℃、相対湿度60%の条件で35時間熟成することにより、接着剤Iを湿気硬化させた。このようにして実施例1の加飾用積層シートを得た。
【0067】
そして、得られた加飾用積層シートを用いて、
図5に示すような2種類の三次元形状の成形体を成形するためのキャビティ―を有する金型を用いて加飾用成形体(プリフォーム成形体)を成形した。成形体の具体的な形状は、
図5(a)に示すような、底面から外表面までの高さが7mmになるスマートフォン用カバーを想定した浅絞りの皿状成形体(I)と、
図5(b)に示すような、直径200mm、高さ100mmの深絞りの半球状成形体(II)と、を選択した。各プリフォーム成形の成形は、次のように行った。
【0068】
加飾用積層シートの加飾面となる平織物Cの側の表面に厚さ75μmの透明アクリルシート(住友化学工業(株)製の商品名テクノロイ、Tg=103℃)を載置して積重体を形成した。そして、積重体を150℃になるような温度に赤外線ヒーターで加熱し、各形状の金型で所定の圧力で真空圧空成形した。真空圧空成形により、積重体を形成する透明アクリルシートの表面と加飾用積層シートの繊維加飾層とが熱圧着された熱可塑性樹脂シート付加飾用成形体が得られた。そして、熱可塑性樹脂シート付加飾用成形体から透明アクリルシートを選択的に剥離することにより、各形状の加飾用成形体が得られた。そして、成形性を以下の評価方法に従って評価した。
【0069】
(成形性)
各加飾用成形体を目視により観察し、成形性を以下の基準で判定した。
A:型どおりに正確に賦形されており、層間の剥離もシワの発生も見られなかった。
B:層間の剥離はなかったが、角部等で丸みを帯びるように不正確に賦形されていた又はシワが発生していた。
C:層間の剥離が発生した場所があった。
【0070】
そして、得られた各加飾用成形体をプリフォーム成形体として用いてインモールド成形を行った。具体的には、各形状の加飾用成形体に対応するインモールド成形用金型を準備した。そして加飾用成形体の形状に対応する何れかの金型を射出成形機に搭載し、繊維表面層が可動側金型の表面に面するように、インモールド成形用金型のキャビティの凹部に配置した。そして、樹脂温度235℃、金型温度30〜50℃の条件でABS樹脂を射出成形した。このようにしてインモールド成形することにより総肉厚3mmの各形状の加飾成形体を得た。そして、以下の評価方法に従って評価した。
【0071】
(加飾成形体の表面外観)
各加飾成形体の表面外観を以下の基準で目視により判定した。
A:シワ及び剥離の発生がなかった。
B:シワが発生していた。
C:剥離が発生していた。
【0072】
【表2】
【0073】
[実施例2]
実施例1において、繊維加飾層となる平織物Cを用いる代わりに平織物Dを用いた以外は同様にして真空圧空成形を行って加飾用成形体を得、さらに、インモールド成形を行うことにより加飾成形体を得た。そして、得られた加飾用成形体及び加飾成形体を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0074】
[実施例3]
実施例1において、繊維加飾層となる平織物Cを用いる代わりにトリコットFを用いた以外は同様にして真空圧空成形を行って加飾用成形体を得、さらに、インモールド成形を行うことにより加飾成形体を得た。そして、得られた加飾用成形体及び加飾成形体を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0075】
[実施例4]
実施例1において、繊維加飾層となる平織物Cを用いる代わりにトリコットGを用いた以外は同様にして真空圧空成形を行って加飾用成形体を得、さらに、インモールド成形を行うことにより加飾成形体を得た。そして、得られた加飾用成形体及び加飾成形体を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0076】
[実施例5]
実施例1において、繊維加飾層となる平織物Cを用いる代わりにトリコットHを用いた以外は同様にして真空圧空成形を行って加飾用成形体を得、さらに、インモールド成形を行うことにより加飾成形体を得た。そして、得られた加飾用成形体及び加飾成形体を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0077】
[実施例6]
実施例1において、繊維加飾層となる平織物Cを用いる代わりに不織布Aを用いた以外は同様にして真空圧空成形を行って加飾用成形体を得、さらに、インモールド成形を行うことにより加飾成形体を得た。そして、得られた加飾用成形体及び加飾成形体を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0078】
[実施例7]
実施例1において、繊維基材層として不織布Aの代わりに不織布Bを用い、繊維加飾層となる平織物Cを用いる代わりに不織布Bを用いた以外は同様にして真空圧空成形を行って加飾用成形体を得、さらに、インモールド成形を行うことにより加飾成形体を得た。そして、得られた加飾用成形体及び加飾成形体を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0079】
[実施例8]
離型紙上に接着剤層を形成するための接着剤Jのメタノール溶液(固形分濃度15%)を300μmのクリアランスを取ってナイフコーターで塗布し、溶剤を乾燥した後、繊維基材層となる不織布Aを貼り合わせた。そして、離型紙を剥離し、接着剤層の表面に平織物Cを重ねて、さらに、90℃に加熱したプレスロールで積重体をプレスすることにより、不織布Aと平織物Cとを接着剤Jを介して接着した。このようにして比較例2の加飾用積層シートを得た。そして、実施例1と同様にして、加飾用積層シートの真空圧空成形を行い、さらに、インモールド成形を行うことにより加飾成形体を得た。そして、得られた加飾成形体を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0080】
[実施例9]
実施例1において、表面に多数のドット状の凹凸が刻印されていたグラビアロールを用いて接着剤Iを塗布する代わりに、表面が平滑なグラビアロールを用いて接着剤Iを塗布した以外は同様にして加飾用積層シートを得た。そして、実施例1と同様にして、加飾用積層シートの真空圧空成形を行い、さらに、インモールド成形を行うことにより加飾成形体を得た。そして、得られた加飾成形体を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0081】
[比較例1]
実施例1において、繊維基材層として不織布Aの代わりに不織布Bを用いた以外は同様にして真空圧空成形を行って加飾用成形体を得、さらに、インモールド成形を行うことにより加飾成形体を得た。そして、得られた加飾用成形体及び加飾成形体を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0082】
[比較例2]
実施例2において、繊維基材層として不織布Aの代わりに不織布Bを用いた以外は同様にして真空圧空成形を行って加飾用成形体を得、さらに、インモールド成形を行うことにより加飾成形体を得た。そして、得られた加飾用成形体及び加飾成形体を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0083】
[比較例3]
実施例1において、繊維加飾層となる平織物Cを用いる代わりに不織布Bを用いた以外は同様にして真空圧空成形を行って加飾用成形体を得、さらに、インモールド成形を行うことにより加飾成形体を得た。そして、得られた加飾用成形体及び加飾成形体を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0084】
[比較例4]
実施例1において、繊維加飾層となる平織物Cを用いる代わりに平織物Eを用いた以外は同様にして真空圧空成形を行って加飾用成形体を得、さらに、インモールド成形を行うことにより加飾成形体を得た。そして、得られた加飾用成形体及び加飾成形体を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0085】
表1を参照すれば、本件発明に係るY/Xが0.4〜2.5の範囲である実施例1〜9で得られた加飾用積層シートは何れも成形性に優れており、それを用いた加飾成形体にも剥離等が見られず、優れた外観を保持していた。一方、Y/Xが高すぎるまたは低すぎる比較例1〜4で得られた加飾用積層シートは、成形性がわるく、それを用いた加飾成形体にも剥離等が見られた。