【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施形態について
図1乃至
図3を参照しながら説明する。1は内部に空隙が発生したコンクリート壁面のひび割れを補修する注入プラグであり、つば部21によって大径部22と小径部23に二分され中心に注入材が通過する注入材通過孔24が穿設された略円筒形状の中空シャフト2と中空シャフト2の小径部23に挿入して設けられた止水ジャバラパッキン3とによって構成される。
【0015】
止水ジャバラパッキン3は、幅広い硬度分布を持つ熱可塑性樹脂で形成され、テーパー状の角度を持たせたジャバラ部31とテーパー状の角度がないストレート部32とから構成され、中空シャフト2の小径部23の先端側から挿入され、中空シャフト2のつば部21によって停止される。
【0016】
中空シャフト2の大径部22の内部には注入材の逆流を防止する逆流防止機構4が形成される。逆流防止機構4は注入材の逆流を防止する半円形の逆止弁41、逆止弁41を保持するキャップ42、逆止弁41をキャップ42側に付勢する逆止弁バネ43から構成され、大径部22の内部に、逆止弁バネ43、逆止弁41の順に挿入し、キャップ42を被せて逆止弁41を保持する。
【0017】
5は注入プラグ1の中空シャフト2の大径部22のキャップ42側から注入材を注入する際に注入孔の密閉状態を解消するためのエアー抜きピンで、ストッパー51の一方に逆止弁押圧リブ52、他方に操作桁53が形成され、操作桁53を持って中空シャフト2の大径部22のキャップ42側から逆止弁押圧リブ52を挿入して半円形の逆止弁41を押し込みエアーの排出口を形成する。
【0018】
以上のように形成された注入プラグ1を用いてコンクリート壁面のひび割れを補修する補修工法について
図4を用いて説明する。注入孔マーキング工程4Aでは、コンクリート壁面のひび割れに沿ってひび割れ幅に適用するピッチにて穿孔位置をマーキングする。本工法ではひび割れ表面からではなく斜め穿孔によりひび割れを貫通する注入孔から注入材を充填する方式である。
【0019】
注入孔穿孔工程4Bでは、マーキングした穿孔位置に直径10.5mmの注入孔を穿孔する。本工法の最大の特徴である水流式ドリルによる斜め穿孔は、ひび割れに対して注入材を確実に注入するために開発された工法であり、注入材を確実に注入するためには補修を必要とする箇所に確実に通じているきれいな注入孔を穿孔することが重要である。本工法における注入孔の穿孔方法は、ドリルを補修の対象となるコンクリート外壁面の法線に対して適宜角度をなすように傾斜させ、注入孔を斜めに交差するように高速で回転する水流式ドリルカッターを用いて穿孔する。角度としては45度が好適である。
【0020】
注入プラグ取付工法4Cでは、斜めに穿孔した注入孔に注入プラグ1を順次挿入する。注入プラグ1の止水ジャバラパッキン3のジャバラ部31はテーパー状の角度を持たせているので穿孔穴に挿入し易く、挿入してからはテーパー状の角度がないストレート部32によりしっかりと固定される。従って挿入するための特別な専用工具を必要とせず、1つの注入プラグ1を挿入するための時間も短縮することができる。
【0021】
ひび割れシール貼付工程4Dでは、注入材充填時の材料流出を防ぐためにひび割れ表面をシール材によりシールする。シール材はカートリッジ式の急結セメント材を使用することにより、施工時間の短縮と機材の清掃作業を省くことができる。また、シール材は注入材の漏出を防ぐ性能が求められるが、充填完了後に撤去が容易で、外観回復性が良いものを選択する。
【0022】
注入材充填工程4Eでは、コンクリート壁面の一番下に挿入された注入プラグから注入材を注入し、その上の注入プラグへ順次移行する。注入材は無機系注入材をカートリッジ式にしているので、その都度材料を計量して練り混ぜていた作業を省略でき、施工時間の短縮と注入量の管理が容易となる。なお、注入材を注入するにあたり、注入プラグ1の中空シャフト2の大径部22のキャップ42側からエアー抜きピン5の操作桁53を持ってエアー抜きピン5を挿入し逆止弁押圧リブ52で半円形の逆止弁41を押し込みエアーの排出口を形成して注入孔の密閉状態を解消する。エアー抜きピン5を挿入しないで注入材を充填すると注入孔が密閉状態となり注入材が注入できない。注入材を注入してからエアー抜きピン5を抜いても逆止弁41により注入材の逆流を防止することができる。注入を開始した後、設置してある上方の注入プラグの頭部から注入材が溢れ出す現象が観測されたら、注入した注入材がその注入プラグが設置されているレベルまで充填されたことがわかるので注入作業を一時中断する。
【0023】
プラグ・シール撤去工程4Fでは、注入材が十分に硬化したことを確認した後、注入プラグ1を注入孔から引き抜く。注入プラグ1の止水ジャバラパッキン3のジャバラ部31はテーパー状の角度を持たせているため抜くときも抜き易く特別な専用工具も使わず、短時間で抜くことができる。注入プラグを撤去した跡は補修モルタル剤で充填するとともにシール材を撤去する。
【0024】
仕上げ工程4Gでは、コンクリート壁面を研掃するとともに必要に応じて吸水防止剤等の塗布を行う。
【0025】
以上説明したように、コンクリート壁面のひび割れを補修するにあたり、これまでにない注入プラグ及びカートリッジ式注入材を開発することにより、施工時間の短縮と機材の清掃作業を省くこと及び注入量の管理が容易となる注入プラグを提供することができる。