特許第6587578号(P6587578)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6587578コンクリート壁面のひび割れを補修する注入プラグ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587578
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】コンクリート壁面のひび割れを補修する注入プラグ
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20191001BHJP
【FI】
   E04G23/02 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-107106(P2016-107106)
(22)【出願日】2016年5月30日
(65)【公開番号】特開2017-214707(P2017-214707A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2018年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108926
【氏名又は名称】ダイコー化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505052962
【氏名又は名称】日本ポリメント工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515267264
【氏名又は名称】株式会社日本メンテ
(74)【代理人】
【識別番号】100068663
【弁理士】
【氏名又は名称】松波 祥文
(72)【発明者】
【氏名】高見 修
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀幸
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−206347(JP,A)
【文献】 実開平03−105668(JP,U)
【文献】 特開平09−203216(JP,A)
【文献】 特開2002−121902(JP,A)
【文献】 特開平10−110537(JP,A)
【文献】 特開2005−023520(JP,A)
【文献】 米国特許第05881523(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空隙が発生したコンクリート壁面を補修し、つば部によって大径部と小径部に二分され、中心に注入材が通過する注入材通過孔が穿設された略円筒形状の中空シャフトを備え、該中空シャフトの大径部の内部には注入材の逆流を防止する逆流防止機構が形成され、該中空シャフトの小径部には止水ジャバラパッキンを挿入した注入プラグにおいて、前記止水ジャバラパッキンは、熱可塑性樹脂で形成され、テーパー状の角度をもたせたジャバラ部とテーパー状の角度がないストレート部を備え、前記中空シャフトの先端側から挿入し、前記つば部によって停止するように構成され、前記逆流防止機構は、略円筒形状の中空シャフトの大径部の内部に形成され、注入材の逆流を防止する半円形の逆止弁、逆止弁を保持するキャップ、逆止弁をキャップ側に付勢する逆止弁ばねを備え、前記大径部の内部に、前記逆止弁バネ、前記逆止弁の順に挿入し、前記キャップを被せて逆止弁を保持する構成としたことを特徴とするコンクリート壁面のひび割れを補修する注入プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート壁面の内部に生じた剥離空間層やクラックなどの空隙にコンクリート補修剤を注入することによってコンクリート壁面のひび割れを補修する注入プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリート壁面の内部に生じた剥離空間層を補修する方法として、コンクリート壁面のひび割れに沿って、ひび割れ幅に適用するピッチにて穿孔位置をマーキングし、ドリルを用いてマーキング位置に注入孔を穿孔し、補修剤を注入する金属又は樹脂製の注入プラグを注入孔に取り付け、補修剤を注入用ポンプにて圧送充填し、補修剤の十分な硬化を確認後、専用工具で注入プラグを引き抜いて補修する方法が広く周知とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の方法において金属又は樹脂製の注入プラグを注入孔に固定させるには、専用工具を用いて注入孔に固定させていた。また、補修剤が硬化した後で金属又は樹脂製の注入プラグを引き抜くには、同じく専用工具を用いて引き抜いていた。壁面のひび割れが壁全面に及ぶ場合、多くの金属又は樹脂製の注入プラグが必要になり、この金属又は樹脂製の注入プラグを注入孔に固定させる時間、注入孔から引き抜く時間は、多くの時間及び工数が必要となるという難点があった。
【0004】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、コンクリート壁面のひび割れを補修するにあたり、これまでにない注入プラグ及びカートリッジ式注入材を用いることにより、施工時間の短縮と機材の清掃作業を省くこと及び注入量の管理が容易となる注入プラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明によれば、内部に空隙が発生したコンクリート壁面を補修し、つば部によって大径部と小径部に二分され、中心に注入材が通過する注入材通過孔が穿設された略円筒形状の中空シャフトを備え、該中空シャフトの大径部の内部には注入材の逆流を防止する逆流防止機構が形成され、該中空シャフトの小径部には止水ジャバラパッキンを挿入した注入プラグにおいて、前記止水ジャバラパッキンは、幅広い硬度分布を持つ熱可塑性樹脂で形成され、テーパー状の角度をもたせたジャバラ部とテーパー状の角度がないストレート部を備え、前記中空シャフトの先端側から挿入し、前記つば部によって停止するように構成され、前記逆流防止機構は、略円筒形状の中空シャフトの大径部の内部に形成され、注入材の逆流を防止する半円形の逆止弁、逆止弁を保持するキャップ、逆止弁をキャップ側に付勢する逆止弁ばねを備え、前記大径部の内部に、前記逆止弁バネ、前記逆止弁の順に挿入し、前記キャップを被せて逆止弁を保持する構成としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内部に空隙が発生したコンクリート壁面を補修する注入プラグであって、つば部によって大径部と小径部に二分され、中心に注入材が通過する注入材通過孔が穿設された略円筒形状の中空シャフトと、該中空シャフトの大径部の内部には注入材の逆流を防止する逆流防止機構が形成され、該中空シャフトの小径部には止水ジャバラパッキンを挿入したので、注入プラグを注入孔に固定させる時間及び注入孔から引き抜く時間を短くすることができ、施工時間を短縮することができる。
【0010】
また、本発明によれば、止水ジャバラパッキンは、テーパー状の角度をもたせたジャバラ部とテーパー状の角度がないストレート部を備えたので、特別な工具がなくても注入プラグを注入孔に固定させたり、注入孔から引き抜くことができる。
【0011】
また、本発明によれば、逆流防止機構は、略円筒形状の中空シャフトの大径部の内部に形成され、注入材の逆流を防止する半円形の逆止弁と、逆止弁を保持するキャップと、逆止弁をキャップ側に付勢する逆止弁ばね略円筒形状の中空シャフトの一方の大径部の内部に形成され、逆止弁ばねと、半円形の逆止弁と、逆止弁を保持するキャップとからなるので、確実に注入材の逆流を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るコンクリート壁面のひび割れ補修用注入プラグの一実施例を示す外観斜視図である。
図2図1に示す注入プラグの分解断面斜視図である。
図3図1に示す注入プラグの組立構成断面図である。
図4図1に示す注入プラグを用いてコンクリート壁面のひび割れを補修する施工工程図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図1乃至図3を参照しながら説明する。1は内部に空隙が発生したコンクリート壁面のひび割れを補修する注入プラグであり、つば部21によって大径部22と小径部23に二分され中心に注入材が通過する注入材通過孔24が穿設された略円筒形状の中空シャフト2と中空シャフト2の小径部23に挿入して設けられた止水ジャバラパッキン3とによって構成される。
【0015】
止水ジャバラパッキン3は、幅広い硬度分布を持つ熱可塑性樹脂で形成され、テーパー状の角度を持たせたジャバラ部31とテーパー状の角度がないストレート部32とから構成され、中空シャフト2の小径部23の先端側から挿入され、中空シャフト2のつば部21によって停止される。
【0016】
中空シャフト2の大径部22の内部には注入材の逆流を防止する逆流防止機構4が形成される。逆流防止機構4は注入材の逆流を防止する半円形の逆止弁41、逆止弁41を保持するキャップ42、逆止弁41をキャップ42側に付勢する逆止弁バネ43から構成され、大径部22の内部に、逆止弁バネ43、逆止弁41の順に挿入し、キャップ42を被せて逆止弁41を保持する。
【0017】
5は注入プラグ1の中空シャフト2の大径部22のキャップ42側から注入材を注入する際に注入孔の密閉状態を解消するためのエアー抜きピンで、ストッパー51の一方に逆止弁押圧リブ52、他方に操作桁53が形成され、操作桁53を持って中空シャフト2の大径部22のキャップ42側から逆止弁押圧リブ52を挿入して半円形の逆止弁41を押し込みエアーの排出口を形成する。
【0018】
以上のように形成された注入プラグ1を用いてコンクリート壁面のひび割れを補修する補修工法について図4を用いて説明する。注入孔マーキング工程4Aでは、コンクリート壁面のひび割れに沿ってひび割れ幅に適用するピッチにて穿孔位置をマーキングする。本工法ではひび割れ表面からではなく斜め穿孔によりひび割れを貫通する注入孔から注入材を充填する方式である。
【0019】
注入孔穿孔工程4Bでは、マーキングした穿孔位置に直径10.5mmの注入孔を穿孔する。本工法の最大の特徴である水流式ドリルによる斜め穿孔は、ひび割れに対して注入材を確実に注入するために開発された工法であり、注入材を確実に注入するためには補修を必要とする箇所に確実に通じているきれいな注入孔を穿孔することが重要である。本工法における注入孔の穿孔方法は、ドリルを補修の対象となるコンクリート外壁面の法線に対して適宜角度をなすように傾斜させ、注入孔を斜めに交差するように高速で回転する水流式ドリルカッターを用いて穿孔する。角度としては45度が好適である。
【0020】
注入プラグ取付工法4Cでは、斜めに穿孔した注入孔に注入プラグ1を順次挿入する。注入プラグ1の止水ジャバラパッキン3のジャバラ部31はテーパー状の角度を持たせているので穿孔穴に挿入し易く、挿入してからはテーパー状の角度がないストレート部32によりしっかりと固定される。従って挿入するための特別な専用工具を必要とせず、1つの注入プラグ1を挿入するための時間も短縮することができる。
【0021】
ひび割れシール貼付工程4Dでは、注入材充填時の材料流出を防ぐためにひび割れ表面をシール材によりシールする。シール材はカートリッジ式の急結セメント材を使用することにより、施工時間の短縮と機材の清掃作業を省くことができる。また、シール材は注入材の漏出を防ぐ性能が求められるが、充填完了後に撤去が容易で、外観回復性が良いものを選択する。
【0022】
注入材充填工程4Eでは、コンクリート壁面の一番下に挿入された注入プラグから注入材を注入し、その上の注入プラグへ順次移行する。注入材は無機系注入材をカートリッジ式にしているので、その都度材料を計量して練り混ぜていた作業を省略でき、施工時間の短縮と注入量の管理が容易となる。なお、注入材を注入するにあたり、注入プラグ1の中空シャフト2の大径部22のキャップ42側からエアー抜きピン5の操作桁53を持ってエアー抜きピン5を挿入し逆止弁押圧リブ52で半円形の逆止弁41を押し込みエアーの排出口を形成して注入孔の密閉状態を解消する。エアー抜きピン5を挿入しないで注入材を充填すると注入孔が密閉状態となり注入材が注入できない。注入材を注入してからエアー抜きピン5を抜いても逆止弁41により注入材の逆流を防止することができる。注入を開始した後、設置してある上方の注入プラグの頭部から注入材が溢れ出す現象が観測されたら、注入した注入材がその注入プラグが設置されているレベルまで充填されたことがわかるので注入作業を一時中断する。
【0023】
プラグ・シール撤去工程4Fでは、注入材が十分に硬化したことを確認した後、注入プラグ1を注入孔から引き抜く。注入プラグ1の止水ジャバラパッキン3のジャバラ部31はテーパー状の角度を持たせているため抜くときも抜き易く特別な専用工具も使わず、短時間で抜くことができる。注入プラグを撤去した跡は補修モルタル剤で充填するとともにシール材を撤去する。
【0024】
仕上げ工程4Gでは、コンクリート壁面を研掃するとともに必要に応じて吸水防止剤等の塗布を行う。
【0025】
以上説明したように、コンクリート壁面のひび割れを補修するにあたり、これまでにない注入プラグ及びカートリッジ式注入材を開発することにより、施工時間の短縮と機材の清掃作業を省くこと及び注入量の管理が容易となる注入プラグを提供することができる。


【符号の説明】
【0026】
1 注入プラグ
2 中空シャフト
21 つば部
22 大径部
23 小径部
24 注入材通過孔
3 止水ジャバラパッキン
31 ジャバラ部
32 ストレート部
4 逆流防止機構
41 逆止弁
42 キャップ
43 逆止弁バネ
5 エアー抜きピン
51 ストッパー
52 逆止弁押圧リブ
53 操作桁
図1
図2
図3
図4