特許第6587598号(P6587598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587598
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】電圧検出用端子の保持構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20191001BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20191001BHJP
   H01M 2/20 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   H01M2/10 M
   H01M10/48 PZHV
   H01M2/20 A
   H01M2/20 Z
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-225111(P2016-225111)
(22)【出願日】2016年11月18日
(65)【公開番号】特開2018-81875(P2018-81875A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2018年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 泰孝
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/047477(WO,A1)
【文献】 特開2014−049235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 2/20
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単電池で構成された電池集合体の各単電池を互いに電気的に接続する複数のバスバーが収容される絶縁樹脂製の電線配索体におけるバスバー保持部に、前記単電池の電圧を測定するための電圧検出用端子が保持される電圧検出用端子の保持構造であって、
前記電圧検出用端子は、
前記バスバーに接続される電気接続部と、
電線が接続される電線接続部と、
前記電気接続部と前記電線接続部との間に設けられ、前記電線接続部に接続された前記電線の端末における軸線に沿う方向の移動が規制されるとともに前記軸線に垂直な方向の変位及び前記軸線回りの回転が許容された状態で前記バスバー保持部に仮固定される仮固定部と、を備え、
前記バスバー保持部は、山形に形成された底壁の頂部が矩形板状の前記バスバーの長手方向中央部を支持することにより、前記バスバーを前記軸線に平行な軸線の回りに揺動可能に支持していることを特徴とする電圧検出用端子の保持構造。
【請求項2】
前記仮固定部は、前記バスバー保持部の溝に挿入されて前記軸線に沿う方向の移動が規制される端子突片を有し、
前記バスバー保持部は、前記電気接続部から離間した位置において前記溝に対する反挿入方向への前記電気接続部の移動を規制する端子抑え部を有することを特徴とする請求項1に記載の電圧検出用端子の保持構造。
【請求項3】
複数の単電池で構成された電池集合体の各単電池を互いに電気的に接続する複数のバスバーが収容される絶縁樹脂製の電線配索体におけるバスバー保持部に、前記単電池の電圧を測定するための電圧検出用端子が保持される電圧検出用端子の保持構造であって、
前記電圧検出用端子は、
前記バスバーに接続される電気接続部と、
電線が接続される電線接続部と、
前記電気接続部と前記電線接続部との間に設けられ、前記電線接続部に接続された前記電線の端末における軸線に沿う方向の移動が規制されるとともに前記軸線に垂直な方向の変位及び前記軸線回りの回転が許容された状態で前記バスバー保持部に仮固定される仮固定部と、を備え、
前記仮固定部は、前記バスバー保持部の溝に挿入されて前記軸線に沿う方向の移動が規制される端子突片を有し、
前記バスバー保持部は、前記電気接続部から離間した位置において前記溝に対する反挿入方向への前記電気接続部の移動を規制する端子抑え部を有し、
前記仮固定部は、前記バスバー保持部に当接して前記電線の引っ張り方向の移動を規制するため断面クランク状に形成された前記電圧検出用端子の立ち上がり壁を有し、前記端子突片が前記立ち上がり壁の側縁に突設されたことを特徴とする電圧検出用端子の保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧検出用端子の保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両においてモータを駆動するための電力変換装置に接続される車載用の電池パックでは、多数の電池セルの正極端子と負極端子が隣り合うように交互に逆向きに重ね合わされて横並びに配置されて電池モジュールが構成されている。そして、隣り合う電池セルの電極端子間をバスバーなどの接続部材で接続することにより、複数の電池セルが直列や並列に接続されるようになっている。
上記構成の電池モジュールを組み立てる際には、複数箇所の電極端子間をバスバーで接続する必要がある。そこで、接続する電極端子間の数に応じて、バスバーを絶縁樹脂製の電線配索体におけるバスバー収容部(バスバー保持部)に収容したバスバーモジュールが用いられている。
【0003】
ところで、複数の電池セルを直列や並列に接続する場合、電池セル間において電池電圧などの電池特性が不均一であると、電池の劣化や破損を招く可能性がある。そこで、車載用の電池パックにおいては、各電池セル間の電圧に異常が生じる前に充電、放電を中止するため、各バスバーには、電池セルの電圧を検知するための電圧検出線が取付けられている。
従来のバスバーモジュールにおいては、電圧検出線は、被覆電線の先端を皮剥ぎして心線(導体)に丸型端子を圧着し、その丸型端子を電池セルの電極端子に嵌合して、電極端子にバスバーと共にナットで共締めする構造が採用されていた(例えば、特許文献1等参照)。
【0004】
図7に示すように、従来のバスバーモジュール501は、複数のバスバー521を個々に収容固定するバスバー収容部503を複数有した絶縁樹脂製の電線配索体510を備えている。電線配索体510には、バスバー収容部503と電線配索部505とが一体に形成されている。
バスバー521は、バスバー収容部503に収容固定された上で隣り合う電池を直列に接続することができるように形成されている。バスバー521は、円形状に貫通する一対の電池接続穴523を有する。
【0005】
バスバー収容部503は、外形が長方形となる底壁502と、この底壁502の端部に連続する枠形状の周壁504とを有する。
周壁504は、バスバー521の外形に合わせて配置形成される。バスバー長手方向に平行な一対の長側壁には、係止ランス509がそれぞれ形成される。この一対の係止ランス509は、バスバー収容部503内に収容されたバスバー521を収容固定する。また、バスバー521は、この外形部分が底壁502に受け止められるとともに、バスバー収容部503の周壁504により囲まれてガタ付なく保持された状態に固定される。
【0006】
更に、バスバー収容部503には、単電池の電圧を測定するための電圧検出用端子531が保持される。電圧検出用端子531は、電極端子(図示略)を通すことのできる孔535を有している。この電圧検出用端子531の保持構造は、電圧検出用端子531における電気接続部533の凸部537を周壁504の凹部515に差し込み、電気接続部533の側縁を周壁504の係止ランス511に係止して仮固定している。また、電圧検出用端子531の位置決めは、周壁504に突設した位置決めリブ513が電気接続部533の側縁に当接することで行われる。
【0007】
電圧検出用端子531に一端が接続された電圧検出線Wは、バスバー収容部503の並び方向に沿った一側縁に設けられた電線配索部505に収容され、他端が図示しない電圧検出回路に接続される。電線配索部505は、連結部507を介して各バスバー収容部503に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−18499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来の電圧検出用端子531の保持構成では、電圧検出用端子531をバスバー収容部503に保持させる際の組付け性がよくないという問題があった。即ち、電圧検出用端子531をバスバー収容部503に保持させる際には、図7に示したように、電気接続部533の一方の側縁から突出した凸部537を周壁504の凹部515に向けて斜めに差し込んだ後、電気接続部533の他方の側縁を底壁502側に回動させることで、電気接続部533の側縁を周壁504に設けた係止ランス511に係止させて仮固定している。そのため、電気接続部533の凸部537を周壁504の凹部515に差し込む方向と、電気接続部533の側縁を周壁504の係止ランス511に係止させる方向とが異なり、組付け性が低下してしまう。これに加え、電圧検出用端子531は、バスバー521が変位した場合、バスバー521に対して電気接続部533が離れる不具合がある。
【0010】
また、周壁504に突設した位置決めリブ513が電気接続部533の側縁に当接することで、電圧検出用端子531の位置決めが行われる。そのため、各バスバー収容部503には周壁504が必要となり、電線配索体510が大型化し、製造コストが高くなると共に重量が重くなる傾向があった。また、周壁504の位置決めリブ513に側縁を当接させなければならない電圧検出用端子531の電気接続部533は、バスバー521との電気的接続に必要な必要最小限の大きさより大きくなってしまうという問題もある。
【0011】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、バスバー保持部に対する電圧検出用端子の位置決め等を確実にしつつ無駄な部分を削減し、電線配索体を小型・軽量化して製造コストを低減できる電圧検出用端子の保持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 複数の単電池で構成された電池集合体の各単電池を互いに電気的に接続する複数のバスバーが収容される絶縁樹脂製の電線配索体におけるバスバー保持部に、前記単電池の電圧を測定するための電圧検出用端子が保持される電圧検出用端子の保持構造であって、前記電圧検出用端子は、前記バスバーに接続される電気接続部と、電線が接続される電線接続部と、前記電気接続部と前記電線接続部との間に設けられ、前記電線接続部に接続された前記電線の端末における軸線に沿う方向の移動が規制されるとともに前記軸線に垂直な方向の変位及び前記軸線回りの回転が許容された状態で前記バスバー保持部に仮固定される仮固定部と、を備え、前記バスバー保持部は、山形に形成された底壁の頂部が矩形板状の前記バスバーの長手方向中央部を支持することにより、前記バスバーを前記軸線に平行な軸線の回りに揺動可能に支持していることを特徴とする電圧検出用端子の保持構造。
【0013】
上記(1)の構成の電圧検出用端子の保持構造によれば、電圧検出用端子の仮固定部がバスバー保持部に仮固定されるので、バスバーを囲む周壁に電圧検出用端子を仮固定するための固定部を設ける必要がなくなる。そこで、電線配索体の周壁を省略することができ、電線配索体の小型化が可能となる。
また、電圧検出用端子は、電気接続部の側縁を周壁に仮固定させる必要がなくなるので、電気接続部をバスバーとの電気的接続に必要な必要最小限の大きさとして小型化できる。
更に、電圧検出用端子の仮固定部は、電線の端末における軸線に沿う方向の移動が規制されながら、軸線に垂直な方向の変位及び軸線回りの回転が許容される。仮固定部は、電気接続部がバスバーに対して軸線に沿う方向では確実に位置決めされつつ、軸線に垂直な方向のバスバーの変位及び軸線回りのバスバーの回転に追従が可能となる。そこで、電圧検出用端子は、バスバーの変位を吸収して、バスバーに対して常に電気接続部を良好な接触状態に維持できる。
【0014】
(2) 前記仮固定部は、前記バスバー保持部の溝に挿入されて前記軸線に沿う方向の移動が規制される端子突片を有し、前記バスバー保持部は、前記電気接続部から離間した位置において前記溝に対する反挿入方向への前記電気接続部の移動を規制する端子抑え部を有することを特徴とする上記(1)に記載の電圧検出用端子の保持構造。
【0015】
上記(2)の構成の電圧検出用端子の保持構造によれば、電圧検出用端子の仮固定部に設けた端子突片が、バスバー保持部の溝に挿入されることで、電線の端末における軸線に沿う方向の電圧検出用端子の仮固定位置が正確に位置決めされる。
また、電圧検出用端子は、端子突片の溝に対する挿入方向と、バスバー保持部に設けた端子抑え部への係合作業とが同一方向となるため、組付け作業性が向上して製造コストを抑えることができる。端子抑え部は、電気接続部から離間した位置において溝に対する反挿入方向への電気接続部の移動を規制するので、バスバーの軸線に垂直な方向の変位及び軸線回りの回転に追従する仮固定部に対して干渉することはない。
【0016】
(3) 複数の単電池で構成された電池集合体の各単電池を互いに電気的に接続する複数のバスバーが収容される絶縁樹脂製の電線配索体におけるバスバー保持部に、前記単電池の電圧を測定するための電圧検出用端子が保持される電圧検出用端子の保持構造であって、前記電圧検出用端子は、前記バスバーに接続される電気接続部と、電線が接続される電線接続部と、前記電気接続部と前記電線接続部との間に設けられ、前記電線接続部に接続された前記電線の端末における軸線に沿う方向の移動が規制されるとともに前記軸線に垂直な方向の変位及び前記軸線回りの回転が許容された状態で前記バスバー保持部に仮固定される仮固定部と、を備え、前記仮固定部は、前記バスバー保持部の溝に挿入されて前記軸線に沿う方向の移動が規制される端子突片を有し、前記バスバー保持部は、前記電気接続部から離間した位置において前記溝に対する反挿入方向への前記電気接続部の移動を規制する端子抑え部を有し、前記仮固定部は、前記バスバー保持部に当接して前記電線の引っ張り方向の移動を規制するため断面クランク状に形成された前記電圧検出用端子の立ち上がり壁を有し、前記端子突片が前記立ち上がり壁の側縁に突設されたことを特徴とする圧検出用端子の保持構造。
【0017】
上記(3)の構成の電圧検出用端子の保持構造によれば、電圧検出用端子の仮固定部に設けられる立ち上がり壁と端子突片とが、電線の端末における軸線に垂直な面となって、バスバー保持部に当接する。そこで、電圧検出用端子は、大きな面積で仮固定部がバスバー保持部に支持され、電線の引っ張り方向の強度を大きく確保できる。また、電線の引っ張り方向と反対方向の移動も、端子突片が面で溝に当接され、端子突片の端縁がバスバー保持部に当接されるのに比べ、同方向の移動規制強度を大きくできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電圧検出用端子の保持構造によれば、バスバー保持部に対する電圧検出用端子の位置決め等を確実にしつつ無駄な部分を削減し、電線配索体を小型・軽量化して製造コストを低減できる。
【0019】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る電圧検出用端子の保持構造を備えたバスバーモジュールを電池集合体に取り付ける直前の状態を示す部分斜視図である。
図2図1に示したバスバーモジュールの要部拡大分解斜視図である。
図3図1に示したバスバー保持部に保持された電圧検出用端子の斜視図である。
図4図3の平面図である。
図5図4のA−A断面図である。
図6図5におけるバスバー保持部を矢印T方向から見た図であり、(A)は時計回りに揺動するバスバーに対して良好な接触状態を維持する電圧検出用端子、(B)は非揺動時のバスバーに対して良好な接触状態の電圧検出用端子、(C)は反時計回りに揺動するバスバーに対して良好な接触状態を維持する電圧検出用端子を示す。
図7】従来のバスバー及びバスバー収容部を備えたバスバーモジュールの要部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の電圧検出用端子11の保持構造を備えたバスバーモジュール100は、複数の単電池13で構成された電池集合体15に取り付けられ、電動モータを用いて走行する電気自動車や、エンジンと電動モータとを併用して走行するハイブリッド自動車などの電動モータに、電池集合体15からの電力を供給する。
【0022】
図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態に係るバスバーモジュール100は、電池集合体15の各単電池13を互いに電気的に接続する複数のバスバー17と、複数のバスバー17の表面にそれぞれ溶接接続される電圧検出用端子11が接続された電圧検出線(電線)Wと、絶縁樹脂製の電線配索体19と、を備える。なお、本明細書において、X軸、Y軸、Z軸の方向は、図1に示した矢印の方向に従うものとする。
【0023】
電池集合体15は、複数の単電池13と、これら複数の単電池13を互いに重ねて固定する部材(図示せず)と、を有している。それぞれの単電池13は、直方体状の電池本体と、この電池本体の上面の一端及び他端からそれぞれ突出した電極端子である一対のプラス端子21及びマイナス端子23と、を有している。プラス端子21及びマイナス端子23は、導電性の金属により上面が矩形の凸状に形成されている。電池集合体15は、複数の単電池13が、プラス端子21とマイナス端子23が隣り合うように、交互に逆向きに重ね合わされている。電池集合体15は、プラス端子21とマイナス端子23をバスバー17で連結することにより、単電池13と隣接する単電池13との直列接続回路が形成され、高圧直流電圧が得られる。
【0024】
本実施形態に係るバスバー17は、図2に示すように、導電性の金属板にプレス加工が施されるなどして得られるものである。バスバー17は、矩形板状の長手方向中央部を稜線25として山折りして形成される。バスバー17は、隣接する単電池13に跨って載置される。この際、隣接する単電池13に高低が生じている場合、バスバー17は、稜線25を中心に揺動する(図6参照)。これにより、バスバー17は、隣接する単電池13に高低が生じていても必ず長手方向両端が一対のプラス端子21及びマイナス端子23に接触するように構成されている。
【0025】
バスバー17の周縁部(対向する長辺部)には、係合部27が一対形成されている。係合部27は半円状の切欠き形状を有する。係合部27には、後述するバスバー保持部29の第1突起31と第2突起33が嵌合される。
【0026】
バスバー17は、長手方向両端部分がそれぞれプラス端子21及びマイナス端子23に溶接接続されることで、単電池13に電気的に接続固定される。勿論、本発明に係るバスバー17は、ボルト状に形成されたプラス端子21及びマイナス端子23にナット(図示せず)が螺合されて固定される場合には、バスバー17には一対の端子孔が形成される。
【0027】
本実施形態に係る電線配索体19は、バスバー17が保持されて複数の単電池13の並び方向に並んで設けられる複数のバスバー保持部29と、複数の電圧検出線Wを複数の単電池13の重なり方向に沿って収容する電線配索部35と、バスバー保持部29と電線配索部35とを連結する連結部37と、を有する。電線配索体19は、電線配索部35の長手方向に沿って等間隔に配置された複数の連結部37の先端側に設けられたバスバー保持部29が、櫛歯に配置されて絶縁樹脂により一体成形されている。個々のバスバー17は、電線配索体19のバスバー保持部29に保持される。
【0028】
バスバー保持部29は、バスバー17の長手方向中央部(稜線25の近傍)を支持する矩形板状の底壁39と、底壁39の外縁の一部(一側縁)に連なって立設される隔壁41と、隔壁41に設けられるバスバー係止部43と、バスバー17の稜線25に沿う方向の両端で底壁39に立設される第1突起31及び第2突起33と、を有する。
【0029】
バスバー係止部43は、バスバー17の一側縁を電線配索体19に係止するため隔壁41に設けられ、底壁側に小さく突出する爪状突起が先端に形成された係止ランスである。このバスバー係止部43は、底壁39の位置に合わせて配置形成され、底壁39から壁高さ方向にバスバー17の厚み分以上離れた位置に爪状突起が配置形成される。即ち、バスバー係止部43は、底壁39に対する爪状突起の高さ寸法が、電圧検出用端子11の電気接続部45から所定距離浮上するクリアランスを有して設定される。
【0030】
また、底壁39は、第1突起31及び第2突起33を挟んで両側がX軸に沿う方向に下り傾斜となる山形に形成される(図6参照)。底壁39は、隣接する単電池13に高低差が無く、バスバー17が水平に載置されると、第1突起31及び第2突起33の立設される頂部47が稜線25の裏側部分(谷折り部分)を支持する。つまり、底壁39は、頂部47でバスバー17を、図6の時計回りU、半径回りDに揺動可能に載置している。
【0031】
底壁39に対するバスバー係止部43の爪状突起の高さ寸法が設定されることで、バスバー17が傾いた際のバスバー係止部43の爪状突起に対するバスバー17の一側縁におけるかかり代が確保されるので、バスバー17は変位が許容されつつ、バスバー保持部29から外れることがない。
【0032】
このようなバスバー保持構造によれば、底壁39に対するバスバー係止部43の爪状突起の高さ寸法を設定するだけで、バスバー17を電線配索体19に保持することができる。
そこで、電線配索体19にはバスバー17を囲む周壁が必要なく、小型化が可能となっている。また、バスバー17を底壁39に当接するまで挿入する際に挿入抵抗となるバスバー係止部43が1つしかないため、従来に比べてバスバー17の挿入力が低減されている。
【0033】
更に、底壁39に立設した第1突起31と第2突起33は、図2に示すように、バスバー17の対向する長辺部に形成された一対の係合部27にそれぞれ係合される。第1突起31は、底壁39の先端縁側に立設されており、底壁39の基端側に立設された第2突起33は、隔壁41と一体に形成されている。一対の係合部27が第1突起31と第2突起33に係合したバスバー17は、稜線25の中央で且つ底壁39に垂直な軸(Y軸)を中心とする回転が規制され、位置決めが確実にされる。
【0034】
隔壁41の上端に連なる連結部37には、電圧検出線Wの一端に接続された電圧検出用端子11が配置される。連結部37は、対向する一対の側壁49,51により、電圧検出用端子11の電線接続部53を収容する収容空間を形成している。
【0035】
ところで、隔壁41は、図3に示すように、Z軸方向に所定の厚みを有することで、直方体に形成される。そして、隔壁41には、連結部37の側壁49,51に挟まれた収容空間に通じる端子収容凹部55が形成される。端子収容凹部55は、隔壁41の上端面で端子挿入開口となって開放している。また、隔壁41は、バスバー側の側面が、電圧検出用端子11の電気接続部45をバスバー上に導出する電気接続部導出口57となって開放する。
【0036】
隔壁41には、連結部37と端子収容凹部55との間に、X軸方向に切り込まれる溝59が形成される。本実施形態では、溝59は、端子収容凹部55を挟みX軸方向の両側に切り込み形成される。この各溝59には、後述する電圧検出用端子11の端子突片61が溝開口から挿入される。つまり、電圧検出線Wに接続された電圧検出用端子11は、連結部37、溝59、端子収容凹部55に各部分が収容されて、電気接続部45がバスバー17上に配置される。
【0037】
端子収容凹部55の対向するそれぞれの凹部内壁面には、対向する凹部内壁面に向かって小さく突出する爪状突起が先端に形成された係止ランスである端子抑え部63が形成される。端子抑え部63は、連結部37に収容した電圧検出用端子11の電気接続部45の浮き上りを抑え、収容作業性を高めるためのものである。ここで、端子抑え部63は、先端に形成された爪状突起が電気接続部45との間に、電気接続部45が浮上可能なクリアランスを有して形成される。即ち、バスバー保持部29は、電気接続部45から離間した位置において溝59に対する反挿入方向への電気接続部45の移動を規制する端子抑え部63を有している。
【0038】
本実施形態の電圧検出用端子11は、図2に示すように、立ち上がり壁65を有して、断面クランク状に形成されている。この立ち上がり壁65は、端子収容凹部55の一対の凹部内壁面に挟まれる凹部奥側壁面67(図5参照)に当接する。電圧検出用端子11は、立ち上がり壁65が、凹部奥側壁面67に当接することにより、電線の引っ張り方向(Z軸に沿いバスバー17から離反する方向)の移動が規制される。
【0039】
電圧検出用端子11は、電線接続部53と、電気接続部45と、仮固定部69と、を有する。
電線接続部53は、電圧検出線Wが接続される。電線接続部53は、電圧検出線Wの端末における絶縁被覆を剥いて露出させた心線を圧着する導体圧着部71と、絶縁被覆の上から電線端末を圧着する被覆圧着部73とを有する。
電気接続部45は、矩形平板状に形成され、レーザ溶接等によりバスバー17の上面に溶接接続される。
【0040】
仮固定部69は、電気接続部45と電線接続部53との間に設けられる。仮固定部69は、一対の端子突片61を有する。端子突片61は、バスバー保持部29の溝59に挿入され、電線接続部53に接続された電圧検出線Wの端末における軸線に沿う方向(Z軸に沿う方向)の移動が規制される。本実施形態において、端子突片61は、立ち上がり壁65の側縁にX軸方向に突設されている。
【0041】
そこで、電圧検出用端子11は、仮固定部69がバスバー保持部29に対して、端子突片61及び立ち上がり壁65によりZ軸方向に位置決めされると共に、端子抑え部63により抜け止めされた仮固定状態となる。
【0042】
仮固定部69の溝59は、図4に示すように、端子突片61の張出先端との間に、若干の隙間75を有している。また、図5に示すように、仮固定部69の端子収容凹部55は、凹部底壁77と電気接続部45との間に隙間79を有している。また、仮固定部69の凹部奥側壁面67は、上端と電圧検出用端子11との間に、隙間81を有している。更に、連結部37は、連結部底壁83と電線接続部53との間に、隙間85を有している。
【0043】
従って、電圧検出用端子11は、図5に示すように、電気接続部45がバスバー17に接触した状態で、立ち上がり壁65のみが凹部奥側壁面67に当接する。これにより、電圧検出用端子11は、仮固定部69が、電線接続部53に接続された電圧検出線Wの端末における軸線に沿う方向の移動が規制されるとともに、軸線(Z軸)に垂直な方向(XY方向)の変位及び軸線(Z軸)回りの回転(図6に示す矢印U方向、矢印D方向の揺動)が許容された状態でバスバー保持部29に仮固定される。
【0044】
電線配索部35は、矩形板状の配索部底壁87と、配索部底壁87の幅方向に相対する両縁部から垂直に立設した一対の配索部側壁89、配索部側壁91と、からなる断面略U字状の樋形状に形成されている。
電線配索部35は、バスバー保持部29の並び方向に沿った一側縁に設けられ、連結部37を介して各バスバー保持部29に接続されている。そこで、電線配索部35は、各連結部37から導出される電圧検出線Wを単電池13の重なり方向に沿って配索する配索空間となる。
【0045】
なお、電線配索部35には、配索部側壁89、配索部側壁91の上端縁に電線抑え部を一体に形成してもよい。また、上方開口を塞ぐように矩形板状の蓋部が被せられてもよい。蓋部は、両縁部(長辺部)のうち一方の縁部の一部がヒンジを介して、電線配索部35の一方の配索部側壁89に回動可能に連設される。
【0046】
電線配索部35の配索空間に配索される電線としての電圧検出線Wは、導体である心線を絶縁被覆で被覆した被覆電線である。電圧検出線Wは、その一端において、電圧検出用端子11の電線接続部53に圧着されている。電圧検出線Wの他端は、図示しない電圧検出回路に接続される。
なお、本発明に係る電線は、本実施形態の被覆電線に限らず、導体である単線を絶縁被覆で被覆したものや、フラットケーブルなど種々の電線を用いることができる。
【0047】
次に、上記した構成の作用を説明する。
本実施形態に係る電圧検出用端子11の保持構造では、電圧検出用端子11の仮固定部69がバスバー保持部29に仮固定されるので、バスバー17を囲む周壁に電圧検出用端子11を仮固定するための固定部を設ける必要がなくなる。そこで、電線配索体19の周壁を省略することができ、電線配索体19の小型化が可能となる。
また、電圧検出用端子11は、電気接続部45の側縁を周壁に仮固定させる必要がなくなるので、電気接続部45をバスバー17との電気的接続に必要な必要最小限の大きさとして小型化できる。
【0048】
更に、電圧検出用端子11の仮固定部69は、電圧検出線Wの端末における軸線に沿う方向(図5の矢印T方向)の移動が規制されながら、軸線に垂直な方向の変位及び軸線回りの回転が許容される。仮固定部69は、電気接続部45がバスバー17に対して軸線に沿う方向では確実に位置決めされつつ、軸線に垂直な方向のバスバー17の変位及び軸線回りのバスバー17の回転(図6の矢印U方向、矢印D方向)に追従が可能となる。そこで、電圧検出用端子11は、バスバー17の変位を吸収して、バスバー17に対して常に電気接続部45を良好な接触状態に維持できる。
【0049】
これにより、例えば、電線配索体19のバスバー保持部29に保持されバスバー17とプラス端子21及びマイナス端子23との溶接作業時に、電圧検出用端子11の電気接続部45とバスバー17との溶接作業を同時に行う場合には、バスバー17が隣接する単電池13の高低差によって傾いた状態であっても、電気接続部45はバスバー17に対して良好な接触状態を維持することができる。そこで、電圧検出用端子11を高品質でバスバー17に溶接することができる。
【0050】
また、電線配索体19のバスバー保持部29に保持されバスバー17に、電圧検出用端子11の電気接続部45を予め溶接接続した状態で、バスバー17とプラス端子21及びマイナス端子23との溶接作業を行う場合には、隣接する単電池13の高低差によってバスバー17が傾いた場合であっても、仮固定部69がバスバー保持部29に仮固定された電圧検出用端子11は追従して傾くことができる。そこで、バスバー17とプラス端子21及びマイナス端子23との溶接作業時に、電気接続部45とバスバー17の溶接接続部に負荷が掛かることはない。そこで、電圧検出用端子11の電気接続部45は、バスバー17に対して良好な接触状態を維持できる。
【0051】
また、この電圧検出用端子11の保持構造では、電圧検出用端子11の仮固定部69に設けた端子突片61が、バスバー保持部29の溝59に挿入されることで、電圧検出線Wの端末における軸線に沿う方向の電圧検出用端子11の仮固定位置を正確に位置決めできる。電圧検出用端子11は、端子突片61の溝59に対する挿入方向と、バスバー保持部29に設けた端子抑え部63への係合作業とが同一方向となるため、組付け作業性が向上して製造コストを抑えることができる。端子抑え部63は、電気接続部45から離間した位置において溝59に対する反挿入方向への電気接続部45の移動を規制するので、バスバー17の軸線に垂直な方向の変位及び軸線回りの回転に追従する仮固定部69に対して干渉することはない。
【0052】
更に、この電圧検出用端子11の保持構造では、電圧検出用端子11の仮固定部69に設けられる立ち上がり壁65と端子突片61とが、電圧検出線Wの端末における軸線に垂直な面となって、バスバー保持部29に当接する。そこで、電圧検出用端子11は、大きな面積で仮固定部69がバスバー保持部29に支持され、電圧検出線Wの引っ張り方向の強度を大きく確保できる。また、電圧検出線Wの引っ張り方向と反対方向の移動も、端子突片61が面で溝59に当接され、端子突片61の端縁がバスバー保持部29に当接されるのに比べ、同方向の移動規制強度を大きくできる。
【0053】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0054】
例えば、上記の構成例では、電圧検出用端子を断面クランク状に形成したが、電圧検出用端子は、矩形板状に形成してもよい。この場合、端子突片は、電気接続部の両側から突出させて設けることができる。また、上記の構成例では、一対の端子突片を設けたが、端子突片は、一つであってもよい。
【0055】
従って、本実施形態に係る電圧検出用端子11の保持構造によれば、バスバー保持部29に対する電圧検出用端子11の位置決め等を確実にしつつ無駄な部分を削減し、電線配索体19を小型・軽量化して製造コストを低減できる。
更に、本実施形態に係る電圧検出用端子11の保持構造によれば、電圧検出用端子11は、バスバー17の変位を吸収して、バスバー17に対して常に電気接続部45を良好な接触状態に維持できる。
【0056】
ここで、上述した本発明に係る電圧検出用端子の保持構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下に簡潔に纏めて列記する。
[1] 複数の単電池(13)で構成された電池集合体(15)の各単電池を互いに電気的に接続する複数のバスバー(17)が収容される絶縁樹脂製の電線配索体(19)におけるバスバー保持部(29)に、前記単電池の電圧を測定するための電圧検出用端子(11)が保持される電圧検出用端子の保持構造であって、
前記電圧検出用端子は、
前記バスバーに接続される電気接続部(45)と、
電線(電圧検出線W)が接続される電線接続部(53)と、
前記電気接続部と前記電線接続部との間に設けられ、前記電線接続部に接続された前記電線の端末における軸線に沿う方向の移動が規制されるとともに前記軸線に垂直な方向の変位及び前記軸線回りの回転が許容された状態で前記バスバー保持部に仮固定される仮固定部(69)と、
を備えることを特徴とする電圧検出用端子の保持構造。
[2] 前記仮固定部(69)は、前記バスバー保持部(29)の溝(59)に挿入されて前記軸線に沿う方向の移動が規制される端子突片(61)を有し、
前記バスバー保持部は、前記電気接続部(45)から離間した位置において前記溝に対する反挿入方向への前記電気接続部の移動を規制する端子抑え部(63)を有することを特徴とする上記[1]に記載の電圧検出用端子の保持構造。
[3] 前記仮固定部(69)は、前記バスバー保持部(29)に当接して前記電線(電圧検出線W)の引っ張り方向の移動を規制するため断面クランク状に形成された前記電圧検出用端子(11)の立ち上がり壁(65)を有し、前記端子突片(61)が前記立ち上がり壁の側縁に突設されたことを特徴とする上記[2]に記載の電圧検出用端子の保持構造。
【0057】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0058】
11…電圧検出用端子
13…単電池
15…電池集合体
17…バスバー
19…電線配索体
29…バスバー保持部
45…電気接続部
53…電線接続部
59…溝
61…端子突片
63…端子抑え部
65…立ち上がり壁
69…仮固定部
W…電圧検出線(電線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7