特許第6587624号(P6587624)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587624
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】断層像形成装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20191001BHJP
【FI】
   A61B1/00 526
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-550409(P2016-550409)
(86)(22)【出願日】2015年9月25日
(86)【国際出願番号】JP2015077172
(87)【国際公開番号】WO2016047773
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2018年8月13日
(31)【優先権主張番号】特願2014-197500(P2014-197500)
(32)【優先日】2014年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 真透
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−209061(JP,A)
【文献】 特開2013−034753(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/068323(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置内部で光源から出力された光を測定光と参照光に分割し、イメージング対象物に前記測定光を出射することにより得られた反射光と前記参照光とから得られる干渉光の光強度に基づいて前記イメージング対象物の断面画像を生成する断層像形成装置であって、
前記光強度に基づいて生成される前記イメージング対象物の深さ方向である第1軸の方向の情報を持ったラインデータを第2軸とする方向へ並べた第1の画像を周波数領域へ変換して第2の画像を生成する第1の生成手段と、
前記第2の画像においてフィルタリングすることによりアーチファクトを除去または低減する第1の低減手段と、
前記第1の低減手段により処理された前記第2の画像を空間領域へ逆変換して第3の画像を生成する第2の生成手段と、を備えることを特徴とする断層像形成装置。
【請求項2】
前記第1の生成手段は、フーリエ変換またはコサイン変換またはサイン変換により前記第1の画像を前記第2の画像へ変換することを特徴とする請求項1に記載の断層像形成装置。
【請求項3】
前記第1の低減手段は、前記第2の画像においてゼロ周波数である直流成分の振幅を他の成分に対して相対的に低減させることを特徴とする請求項1または2に記載の断層像形成装置。
【請求項4】
前記第1の低減手段は、前記第2の画像において、前記第1の画像における少なくとも一方の軸方向にゼロ周波数である直流成分の振幅を他の成分に対して相対的に低減することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の断層像形成装置。
【請求項5】
前記第1の低減手段は、前記第2の画像における、前記第1の画像の前記第1軸または前記第2軸に対応する軸方向に所定の幅の領域内にある周波数成分の振幅を他の成分に対して相対的に低減することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の断層像形成装置。
【請求項6】
前記第1の低減手段は、前記第2の画像における、前記第1の画像の前記第1軸または第2軸についての直流成分を中心とした所定の幅の領域内にある周波数成分の振幅を他の成分に対して相対的に低減することを特徴とする請求項4または5に記載の断層像形成装置。
【請求項7】
前記第1の低減手段は、前記直流成分を中心とした所定の幅の両端の振幅を元の値に漸近させる分布を有するフィルタを用いることを特徴とする請求項6に記載の断層像形成装置。
【請求項8】
前記第1の低減手段は、前記直流成分の振幅をゼロ以下にする、またはゼロに漸近させることを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載の断層像形成装置。
【請求項9】
前記第2の生成手段は、さらに、前記第3の画像に対して空間領域でフィルタを作用させる、もしくは閾値処理によりノイズを低減させる手段を備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の断層像形成装置。
【請求項10】
前記第2の生成手段は、さらに、前記第3の画像を周波数領域に変換してフィルタを作用させる、もしくは閾値処理をすることにより、前記第3の画像におけるノイズを低減させる手段を備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の断層像形成装置。
【請求項11】
前記第1の生成手段は、さらに、
前記ラインデータを前記第2軸の方向に並べた元画像の所定領域を選択する選択手段と、
前記所定領域の画像を周波数領域に変換して得られた画像の、前記元画像における前記第2軸の方向についてゼロ周波数である直流成分の振幅を他の成分に対して相対的に低減させる第2の低減手段と、
前記第2の低減手段で処理された画像を空間領域の画像に逆変換して得られた画像で、前記元画像の前記所定領域を置き換える置換手段と、を備え、
前記置換手段により得られた画像を前記第1の画像とすることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の断層像形成装置。
【請求項12】
前記第2の低減手段における前記所定領域の画像は、前記元画像の前記所定領域以外の領域を最低輝度値とした画像であり、
前記置換手段は、前記第2の低減手段で処理された画像を空間領域に逆変換して得られた画像から前記所定領域を抽出して、前記元画像の前記所定領域の画像を置き換えることを特徴とする請求項11に記載の断層像形成装置。
【請求項13】
前記選択手段は、前記元画像の第1軸の最も浅い位置から所定距離内の領域を前記所定領域として選択することを特徴とする請求項11または12に記載の断層像形成装置。
【請求項14】
前記選択手段は、ユーザにより指定された領域を前記所定領域として選択することを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の断層像形成装置。
【請求項15】
前記第1の低減手段によるフィルタリングのうち、少なくとも1つのフィルタリングの後で輝度補正を行うことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の断層像形成装置。
【請求項16】
装置内部で光源から出力された光を測定光と参照光に分割し、イメージング対象物に前記測定光を出射することにより得られた反射光と前記参照光とから得られる干渉光の光強度に基づいて前記イメージング対象物の断面画像を生成する断層像形成装置の制御方法であって、
前記光強度に基づいて生成される前記イメージング対象物の深さ方向である第1軸の方向の情報を持ったラインデータを第2軸とする方向へ並べて第1の画像を周波数領域へ変換して第2の画像を生成する第1の生成工程と、
前記第2の画像においてフィルタリングすることによりアーチファクトを除去または低減する第1の低減工程と、
前記第1の低減工程により処理された前記第2の画像を空間領域へ逆変換して第3の画像を生成する第2の生成工程と、を有することを特徴とする断層像形成装置の制御方法。
【請求項17】
請求項16に記載された制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉断層法を用いて得られた断層像のアーチファクトを低減または除去するための断層像形成装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管の内腔にカテーテルを通して、血管の断層像を撮影する方法として血管内超音波検査(以下、IVUS(intravascular ultrasound))や光干渉断層法(以下、OCT(Optical Coherence Tomography))が知られている。OCTには様々な方式があり、たとえば波長掃引を利用して高速に断層像を撮影可能なものがあるが、以下では、干渉光を利用して断層像の撮影を行う装置を総称してOCTと呼ぶことにする(特許文献1)。
【0003】
OCTの特徴はIVUSと比べて解像度(分解能)が高く、石灰化や血栓などの評価に優れていることである。また、血管内壁の詳細な観察が可能であることから、ステント治療後の評価への適用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/095370号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、血管内にステント等の人工物が存在すると、これに起因して断層像にアーチファクト(ノイズとも言う)が出現してしまう。たとえば、光の反射率が高いステントストラットの表面にOCTの測定光があたると、強い反射光(散乱光)が戻ってくるために、放射状の筋が出現する。このようなアーチファクトは、断層像を用いた診断の妨げになるだけでなく、断層像から3次元再構成下画像を観察する際に視線を遮り、また、ステントストラットを自動検出する処理にも影響を及ぼすことが考えられる。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、断層像においてアーチファクトを低減または除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の一態様による断層像形成装置は以下の構成を備える。すなわち、
装置内部で光源から出力された光を測定光と参照光に分割し、イメージング対象物に前記測定光を出射することにより得られた反射光と前記参照光とから得られる干渉光の光強度に基づいて前記イメージング対象物の断面画像を生成する断層像形成装置であって、
前記光強度に基づいて生成される前記イメージング対象物の深さ方向である第1軸の方向の情報を持ったラインデータを第2軸とする方向へ並べて第1の画像を周波数領域へ変換して第2の画像を生成する第1の生成手段と、
前記第2の画像においてフィルタリングすることによりアーチファクトを除去または低減する第1の低減手段と、
前記第1の低減手段により処理された前記第2の画像を空間領域へ逆変換して第3の画像を生成する第2の生成手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、断層像においてアーチファクトを低減または除去することができる。
【0009】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施の形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
図1】実施形態による光画像診断装置の外観構成を示す図である。
図2】光画像診断装置の機能構成を示す図である。
図3】断面画像の再構成処理を説明するための図である。
図4】実施形態によるアーチファクト低減処理を説明する模式的な図である。
図5】実施形態によるアーチファクト低減処理を説明する模式的な図である。
図6】実施形態によるアーチファクト低減処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1.光画像診断装置の外観構成>
図1は本発明の一実施形態にかかる、OCT(本実施形態では、SS−OCT)を用いた画像診断装置100の外観構成を示す図である。図1に示すように、断層像形成装置としての画像診断装置100は、プローブ101と、スキャナ及びプルバック部102と、操作制御装置103とを備え、スキャナ及びプルバック部102と操作制御装置103とは、コネクタ105を介して、信号線や光ファイバを収容したケーブル104により接続されている。
【0012】
プローブ101は、直接血管内に挿入されるものであり、伝送されてきた光を(測定光)を連続的に血管内に送信するとともに、血管内からの反射光を連続的に受信する光送受信部を備えるイメージングコアを収容するカテーテルが内挿されている。画像診断装置100では、該イメージングコアを用いることで血管内部の状態を測定する。プルバック部102は、プローブ101が着脱可能に取り付けられ、内蔵されたモータを駆動させることでプローブ101に内挿されたカテーテル内のイメージングコアの血管内の軸方向の動作及び回転方向の動作を規定している。また、プルバック部102は、イメージングコア内の光送受信部において受信された反射光を取得し、操作制御装置103に対して送信する。
【0013】
操作制御装置103は、測定を行うにあたり、各種設定値を入力するための機能や、測定により得られた光干渉データを処理し、各種血管像を表示するための機能を備える。操作制御装置103において、111は本体制御部である。この本体制御部111は、イメージングコアからの反射光と、光源からの光を分離することで得られた参照光とを干渉させることで干渉光データを生成するとともに、該干渉光データに基づいてラインデータを生成し、補間処理を経て光干渉に基づく断層像(血管断面画像)を生成する。
【0014】
111−1はプリンタ及びDVDレコーダであり、本体制御部111における処理結果を印刷したり、データとして記憶したりする。112は操作パネルであり、ユーザは該操作パネル112を介して、各種設定値及び指示の入力を行う。113は表示装置としてのLCDモニタであり、本体制御部111において生成された各種断面画像を表示する。114は、ポインティングデバイス(座標入力装置)としてのマウスである。
【0015】
次に、画像診断装置100の機能構成について説明する。図2は、画像診断装置100のブロック構成図である。以下、同図を用いて、波長掃引型のOCT(SS−OCT)の機能構成について説明する。
【0016】
図2において、201は画像診断装置の全体の制御を司る信号処理部であり、マイクロプロセッサをはじめ、いくつかの回路で構成される。210はハードディスクに代表される不揮発性の記憶装置であり、信号処理部201が実行する各種プログラムやデータファイルを格納している。202は信号処理部201内に設けられたメモリ(RAM)である。信号処理部201のマイクロプロセッサ(コンピュータ)がメモリ202に格納されたプログラムを実行することにより、後述するアーチファクトの低減/除去を含む断層像の生成処理を実現する。203は波長掃引光源であり、時間軸に沿って、予め設定された範囲内で変化する波長の光を繰り返し発生する光源である。
【0017】
波長掃引光源203から出力された光は、第1のシングルモードファイバ271の一端に入射され、先端側に向けて伝送される。第1のシングルモードファイバ271は、途中の光ファイバカップラ272において第4のシングルモードファイバ275と光学的に結合されている。光ファイバカップラ272において波長掃引光源203から出力された光は測定光と参照光に分割され、参照光は第4のシングルモードファイバ275へ進む。第1のシングルモードファイバ271に入射され、光ファイバカップラ272より先端側に発した光(測定光)は、コネクタ105を介して、第2のシングルモードファイバ273に導かれる。この第2のシングルモードファイバ273の他端はプルバック部102内の光ロータリージョイント230に接続されている。
【0018】
一方、プローブ101はプルバック部102と接続するためのアダプタ101aを有する。そして、このアダプタ101aによりプローブ101をプルバック部102に接続することで、プローブ101が安定してプルバック部102に保持される。さらに、プローブ101内に回転自在に収容された第3のシングルモードファイバ274の端部が、光ロータリージョイント230に接続される。この結果、第2のシングルモードファイバ273と第3のシングルモードファイバ274が光学的に結合される。第3のシングルモードファイバ274の他方端(プローブ101の先頭部分側)には、光を回転軸に対してほぼ直交する方向に出射するとともに、その反射光を受信する光送受信部を搭載したイメージングコア250が設けられている。
【0019】
上記の結果、波長掃引光源203が発した光は、第1のシングルモードファイバ271、第2のシングルモードファイバ273、第3のシングルモードファイバ274を介して、第3のシングルモードファイバ274の端部に設けられたイメージングコア250に導かれる。イメージングコア250の光送受信部は、この光を、ファイバの軸に略直交する方向に出射して測定光をイメージング対象物に照射するとともに、その反射光を受信し、その受信した反射光が今度は逆に導かれ、操作制御装置103に返される。
【0020】
回転駆動装置240は、イメージングコアおよび第3のシングルモードファイバ274を回転駆動するラジアル走査モータ241、回転駆動の制御に用いられるエンコーダ部242、イメージングコアおよび第3のシングルモードファイバ274を直線駆動(プルバック)するための直線駆動部243を有する。
【0021】
一方、光ファイバカップラ272に結合された第4のシングルモードファイバ275の反対の端部には、参照光の光路長を微調整する光路長可変機構220が設けられている。この光路長可変機構220は、プローブ101を交換した場合など、個々のプローブ101の長さのばらつきを吸収できるよう、その長さのばらつきに相当する光路長を変化させる光路長変更手段として機能する。そのため、第4のシングルモードファイバ275の端部に位置するコリメートレンズ225が、その光軸方向である矢印226で示す方向に移動自在な1軸ステージ224上に設けられている。
【0022】
さらに、1軸ステージ224はオフセットを調整する調整手段としての機能も備えている。例えば、プローブ101の先端が生体組織の表面に密着していない場合でも、1軸ステージにより光路長を微小変化させることにより、生体組織の表面位置からの反射光と干渉させる状態に設定することが可能である。
【0023】
1軸ステージ224で光路長が微調整され、グレーティング221、レンズ222を介してミラー223にて反射された光は再び第4のシングルモードファイバ275に導かれ、光ファイバカップラ272にて、第2のシングルモードファイバ273側から得られた光と混合されて、干渉光としてフォトダイオード204にて受光される。このようにしてフォトダイオード204にて受光された干渉光は光電変換され、アンプ205により増幅された後、復調器206に入力される。この復調器206では干渉した光の信号部分のみを抽出する復調処理を行い、その出力は干渉光信号としてA/D変換器207に入力される。
【0024】
A/D変換器207では、干渉光信号を例えば90MHzで2048ポイント分サンプリングして、1ラインのデジタルデータ(干渉光データ)を生成する。なお、サンプリング周波数を90MHzとしたのは、波長掃引の繰り返し周波数を40kHzにした場合に、波長掃引の周期(25μsec)の90%程度を2048点のデジタルデータとして抽出することを前提としたものであり、特にこれに限定されるものではない。
【0025】
A/D変換器207にて生成されたライン単位の干渉光データは、信号処理部201に入力され、一旦、メモリ202に格納される。そして、信号処理部201では干渉光データをFFT(高速フーリエ変換)により周波数分解して深さ方向のデータ(以下、Aラインデータ)を生成し、これを座標変換することにより、血管内の各位置での光断面画像を構築し、所定のフレームレートでLCDモニタ113に出力する。こうして、反射光と参照光とから得られる干渉光の光強度に基づいてイメージング対象物の断面画像が生成される。信号処理部201は、更に光路長調整用駆動部209、通信部208と接続されている。信号処理部201は光路長調整用駆動部209を介して1軸ステージ224の位置の制御(光路長制御)を行う。
【0026】
通信部208は、いくつかの駆動回路を内蔵するとともに、信号処理部201の制御下にてプルバック部102と通信する。具体的には、プルバック部102内の光ロータリージョイント230による第3のシングルモードファイバ274の回転を行うためのラジアル走査モータ241への駆動信号の供給、ラジアルモータの回転位置を検出するためのエンコーダ部242からの信号受信、並びに、第3のシングルモードファイバ274を所定速度で引っ張るための直線駆動部243への駆動信号の供給である。
【0027】
なお、信号処理部201における上記処理も、所定のプログラムがコンピュータによって実行されることで実現されるものとする。
【0028】
上記構成において、プローブ101を患者の診断対象の血管位置(冠状動脈など)に位置させると、ユーザの操作によりプローブ101の先端に向けて、ガイディングカテーテルなどを通じて透明なフラッシュ液を血管内に放出させる。血液の影響を除外するためである。そして、ユーザがスキャン開始の指示入力を行うと、信号処理部201は、波長掃引光源203を駆動し、ラジアル走査モータ241並びに直線駆動部243を駆動させる(以降、ラジアル走査モータ241と直線駆動部243の駆動による光の照射と受光処理をスキャニングと呼ぶ)。この結果、波長掃引光源203から波長掃引光が、上記のような経路でイメージングコア250に供給される。このとき、プローブ101の先端位置にあるイメージングコア250は回転しながら、回転軸に沿って移動することになるので、イメージングコア250は、回転しながら、なおかつ、血管軸に沿って移動しながら、血管内腔面への光の出射とその反射光の受信を行うことになる。
【0029】
ここで、1枚の断層像(光断面画像)の生成にかかる処理を図3を用いて簡単に説明する。同図はイメージングコア250が位置する血管の内腔面301の断面画像の再構成処理を説明するための図である。イメージングコア250の1回転(360度)する間に、複数回の測定光の送信と受信を行う。1回の光の送受信により、その光を照射した方向の1ラインのデータを得ることができる。従って、1回転の間に、例えば512回の光の送受信を行うことで、回転中心302から放射線状に延びる512個のラインデータを得ることができる。この512個のラインデータは、回転中心302の近傍では密で、回転中心302から離れるにつれて互いに疎になっていく。そこで、この各ラインの空いた空間における画素については、周知の補間処理を行なって生成していき、人間が視覚できる2次元の断面画像を生成することになる。なお、2次元の断面画像の中心位置は、イメージングコア250の回転中心302と一致するが、血管断面の中心位置ではない点に注意されたい。また、イメージングコア250のレンズ表面、カテーテルの表面などで光は反射するので、図示の符号303に示すように、回転中心302に対して同心円がいくつか発生する。
【0030】
次に、以上のようにして得られる断層像におけるアーチファクトの低減処理について、図4図6を参照して説明する。図4図5は、実施形態によるアーチファクト低減処理を説明する模式的な図であり、図6は、信号処理部201のマイクロプロセッサ(コンピュータ)がメモリ202に格納されたプログラムを実行することにより実現される、実施形態によるアーチファクト低減処理を示すフローチャートである。上記構成により、断層像400が得られる場合を説明する。断層像400には、ステントストラットの反射による放射状アーチファクト401が出現している。また、断層像400の中心部には、レンズ表面やカテーテルシースの内表面、外表面等における反射や光学系に起因する同心のリング状アーチファクト402が出現している。本実施形態のアーチファクト除去処理では、このような放射状アーチファクト401を効果的に低減または除去する。
【0031】
断層像400は、図3により説明したように、回転中心302を中心として放射状にAラインデータを配置して得られる画像である。図3により上述したように、Aラインデータは、光干渉断層計によりイメージングコア250から照射される光を360度回転させて得られる断層像を構成する、各照射方向について得られるラインデータである。本実施形態では、そのようなAラインデータを横軸の方向(x軸方向)を回転角度として並べて得られる元画像410を用いてアーチファクトの低減を行う。したがって、まず、ステップS601において、信号処理部201は各照射方向について得られたAラインデータを横軸方向(x軸方向)を回転角度として並べて元画像410を得る。元画像410において縦軸の方向(y軸方向)はAラインデータの方向と一致しており、上辺側が各Aラインデータの回転中心302と一致している。元画像410に示されるように、断層像400における同心のリング状アーチファクト402はx軸方向のライン4021となり、断層像400において放射方向に延びていたアーチファクト401はy軸方向に延びるアーチファクト4011となる。
【0032】
次の、ステップS602〜S606の処理は、断層像400において略同心円上に出現していたレンズ表面やカテーテルシースの像(すなわちライン4021)を消去することを目的としたものである。これにより、後述のアーチファクト4011の除去処理に対するライン4021の影響を低減する。まず、ステップS602において、信号処理部201は、Aラインデータを横軸方向に並べた元画像410の、Aラインデータの回転中心側の所定領域を選択する。この所定領域は、元画像410におけるライン4021の存在する領域(以下この領域をシース領域411という)である。元画像410からのシース領域411の選択(抽出)は、たとえば、ユーザが元画像410を観察しながらシース領域411の境界を指定するようにすればよい。或いは、イメージングコアにおけるレンズ表面からカテーテルシースの内壁、外壁の位置はある程度決まっているので、自動的に、これらカテーテルシースの管壁が含まれるように回転中心からの所定距離内の領域をシース領域411として抽出するようにしてもよい。
【0033】
次に、ステップS602おいて、信号処理部201は、元画像410からシース領域411の画像を切り出し、これにシース領域411以外の画像領域であるシース外領域421と同じ大きさの黒画像412を接続してシース画像413を生成する。なお、シース画像413の生成は、元画像410においてシース領域411以外の領域(上記の所定領域以外の領域であるシース外領域421)を黒(最低輝度値)で塗りつぶすことで取得するようにしてもよい。或いは、シース領域411の画像を切り出して、これをシース画像413として以下の処理に用いるようにしてもよい。
【0034】
次に、ステップS603において、信号処理部201は、空間領域の画像であるシース画像413を周波数領域の画像414へ変換する。空間の画像を周波数領域の画像へ変換する手法としては、2次元のフーリエ変換、コサイン変換、サイン変換等、公知の変換方法を用いることができる。図4に記載の周波数領域の画像414は、2次元フーリエ変換の振幅を対数表示させたものであり、直流成分が画像中心になるようにシフトしたものである。この画像414において、u軸方向は、シース画像413におけるx軸方向の周波数分布であり、v軸方向は、シース画像413におけるy軸方向の周波数分布である。ライン4021のように空間領域の元画像410においてx軸方向に延びる像はx軸方向の周波数成分がゼロまたはその近傍で、主にy軸方向の周波数成分で表される。そのため、ライン4021は、周波数領域の画像414では、u=0付近においてv軸方向に延びる像418となって現れる。
【0035】
ステップS604において、信号処理部201は、x軸方向に延びるシース像を除去または低減する処理を行う。ここでは、画像414においてゼロ周波数である直流成分の振幅を他の成分に対して相対的に低減させるべく、たとえば、以下のような処理を行う。信号処理部201は、画像414において、u軸方向の直流成分(ゼロ周波数成分)であるu=0のラインの一部もしくは全てまたはそのライン付近(−Δu≦u≦Δu)の値をゼロ以下とするまたはゼロに漸近させるフィルタ処理を行い、処理後画像415を生成する。続いて、ステップS605において、信号処理部201は、処理後画像415を空間領域の画像416に戻す処理を行う。たとえば、処理後画像415がフーリエ変換処理による周波数空間の振幅画像であれば、位相画像と併せて処理後画像415にフーリエ逆変換を施すことで空間領域の画像416が得られる。なお、放射状に延びるアーチファクト401がシース領域411内に延びている場合がある。したがって、そのようなアーチファクトも除去するために、横軸方向のゼロ周波数成分(v=0のライン)をゼロ以下、またはゼロに漸近させるようなフィルタリングをさらに行ってもよい。
【0036】
続いて、ステップS606において、信号処理部201は、画像416からシース領域411に対応する領域を画像417として切り出し、元画像410のシース領域411と置き換える。こうして、元画像410からシース画像が除去/低減された画像422が得られる。たとえば、画像416から切り出された画像417と元画像410から得られるシース外領域421の画像とを接続することで、元画像410からシース画像が消去された画像422(部分置換された元画像)が得られる。なお、画像422の生成方法としては、上記に限られるものではなく、たとえば、画像417で元画像410のシース領域411に対応する位置を上書きすることで画像422を生成するようにしてもよい。
【0037】
次に、ステップS607〜S609により、放射状に延びるアーチファクト401(4011)の除去処理を行う。まず、ステップS607において、信号処理部201は、シース画像が除去/低減された画像422(部分置換された元画像)を周波数領域の画像423に変換する。ステップS607の処理はステップS603の処理と同様であり、空間領域の画像を周波数領域の画像へ変換する手法としては、2次元フーリエ変換、コサイン変換、サイン変換等、公知の変換方法を用いることができる。
【0038】
上述したように、アーチファクト401は画像422において縦方向(y軸の方向)に長く延びる像(アーチファクト4011)として現われている。そこで、ステップS608において、信号処理部201は、画像422における縦方向のアーチファクトを除去または低減させる。ここでは、画像423においてゼロ周波数である直流成分の振幅を他の成分に対して相対的に低減させるために、たとえば、以下のような処理を行う。周波数領域の画像423では、画像422において縦方向に延びるアーチファクトはv=0付近においてu軸方向に延びる像426となって現れる。したがって、ステップS608における直流成分の除去、低減の処理では、信号処理部201は、画像422のy軸方向のアーチファクトに対応する直流成分(ゼロ周波数成分)であるv=0のラインの一部もしくは全てまたはそのライン付近(−Δv≦v≦Δv)の値をゼロ以下またはゼロに漸近させるようにフィルタ処理を行って処理後画像424を生成する。
【0039】
なお、イメージングコアにおけるレンズ表面やカテーテルシースの内表面、外表面等における反射や光学系に起因して、断層像400においてリング状のアーチファクトが出現することがある。v=0のラインの処理と同時にu=0もしくは付近の値もフィルタリングされている場合、リング状のアーチファクトも同時に処理されるが、必ずしも同時に処理されるとは限らない。したがって、そのようなアーチファクトも除去するために、u軸方向の直流成分(ゼロ周波数成分)であるu=0のラインの一部もしくは全てまたはそのライン付近(−Δu≦u≦Δu)の値をゼロ以下、またはゼロに漸近させるようにフィルタリングをさらに行ってもよい。また、他のフィルタリングを行ってノイズ除去をしてもよい。
【0040】
次に、ステップS609において、周波数領域の画像である処理後画像424を空間の画像に変換する。たとえば、処理後画像415がフーリエ変換による周波数空間の振幅画像であれば、位相画像と併せて処理後画像415にフーリエ逆変換を施すことで空間領域の画像425が得られる。そして、ステップS610において、信号処理部201は、画像425を座標変換して断層像430を生成する。すなわち、信号処理部201は、画像425を構成する各回転位置(θ)ごとのAラインデータを放射状に並べ換え、ライン間を補間することにより断層像430を生成する。
【0041】
以上のようにしてアーチファクトが除去または低減された断層像430が得られる。しかしながら、上述した周波数領域の画像に対する処理により、断層像430にノイズが生じる場合がある。したがって、ステップS611において、断層像430に対してさらにノイズ除去処理を行う。このノイズ除去処理は、たとえば、空間領域の断層像430に対してガウシアンフィルタ、局所平均フィルタ、メディアンフィルタ等、公知のフィルタを作用させることで実現できる。或いは、輝度閾値と面積閾値を用いた閾値処理を行ってもよい。閾値処理では、断層像430を輝度閾値で二値化(白黒に)した場合に、隣り合う白のピクセルを一つのまとまりとし、その面積が面積閾値以下の場合に、そのまとまりを削除(黒に)するという処理が行われる。なお、輝度閾値としては、たとえば上限輝度値の5〜30%(より好ましくは5〜20%)の値が用いられ、面積閾値としてはたとえば0.006mm(より好ましくは、0.004mm)が用いられる。
【0042】
なお、公知のフィルタ処理と閾値処理を組み合わせてもよく、閾値処理は輝度閾値と面積閾値の一方を用いても両方を用いてもよい。また、空間領域において、公知のフィルタや閾値処理を断層像430に対して作用させたが、これに限らず、座標変換する前の画像425に対して作用させてもよい。また、フィルタ処理と閾値処理の一方を座標変換前に、他方を座標変換後に行ってもよい。
【0043】
また、ステップS611のノイズ除去処理において、断層像430を周波数領域の画像に変換して、周波数領域の画像に所定の処理を行い、処理後の画像を空間領域の画像に戻すことで、ノイズ除去を行ってもよい。周波数領域の画像に対する所定の処理としては、たとえば、ハイパスフィルタ、特に直流成分をゼロ以下にするまたはゼロに漸近させるフィルタやローパスフィルタを用いることがあげられる。また、上述した空間領域での処理と周波数領域での処理を組み合わせてもよい。さらに、周波数領域の画像において上述したような閾値処理を行ってもよい。
【0044】
なお、ステップS604、S608において、周波数領域の振幅画像に対し、縦軸または横軸についての直流成分が並ぶ方向のラインを中心として所定の幅を有する領域内において、その中心をゼロ以下にするまたはゼロに漸近させるとともに、所定の幅(たとえば、−Δu〜Δu、あるいは−Δv〜Δvの幅)の両端を元の値に漸近させる分布を有するフィルタを用いてもよい。
【0045】
また、周波数領域へ変換して得られた画像のフィルタリングにおいては上記したフィルタ処理に限られるものではなく、たとえば、ウィナーフィルタやハイブーストフィルタなどを用いた公知のフィルタ処理を行ってもよい。
【0046】
なお、各種フィルタリングを行っているが、例えば周波数領域で直流成分をゼロにするフィルタリングを行った場合、最終的に生成される断層像430もしくは断層像431は、アーチファクト除去を行わずに生成される画像に比べて暗くなってしまうため、フィルタリングと同時もしくは後に、輝度の補正を行うとよい。そのような輝度補正は、周波数領域で行われてもよいし、空間領域で行われてもよい。また、各フィルタリング処理後に行われてもよいし、最後のフィルタリング処理の後のみに行われてもよく、その回数と手順は問わない。
【0047】
また、輝度補正は、例えばトーンカーブを用いて行えばよい。例えば周波数領域において輝度補正をする場合、振幅画像の最大値を記憶しておき、直流成分にフィルタリングを掛けた後の最大値をフィルタリング前の最大値になるようにトーンカーブを設定すればよい。トーンカーブは、線形に限らず非線形でもよく、さらには原点を通らなくてもよい。
【0048】
また、輝度補正は、空間領域において輝度補正を行う場合も周波数領域と同様に行うことができる。ただし、空間領域における輝度補正では、最大値に限らず、ある注目点の輝度値の変化がゼロに近くなるようにトーンカーブを設定してもよい。この場合、注目点は複数であってもよく、トーンカーブを多項式で最小二乗近似すればよい。注目点は、ステントストラットのような画像上の特徴を検出して設定してもよいし、予め固定されていてもよく、手動で設定してもよい。また、それらの組合せで注目点を設定してもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、元画像410として、1枚の断層像を生成するAラインデータを横軸の方向(x軸方向)を回転角度として並べて得られる画像、すなわち360度分のAラインデータ並べた画像を用いたが、本手法はこれに限られるものではない。すなわち、元画像410を構成するAラインデータは、360度分よりも多くても少なくてもよい。ただし、ステップS610において断層像を作成する際に、1枚の断層像分(360度分)のラインデータに整える必要がある。
【0050】
また、上記実施形態では、血管の内腔で回転しながら血管の断面像を得るOCT/OFDIの場合について述べたが、本手法はこれに限らず、略直線状もしくは略平面上のスキャンや定点上の経時スキャンでもよい。その場合、ステップS610は省略される。
【0051】
以上のように、上記実施形態によれば、光干渉断層計による断層像において生じる放射状のアーチファクトやリング状のアーチファクトが除去あるいは低減され、診断を行いやすい断層像が提供される。また、そのような断層像を用いることにより、ステントストラットの自動検出等をより精度良く行えるようになる。また、上記実施形態では、信号処理部201のマイクロプロセッサ(コンピュータ)がメモリ202に格納されたプログラムを実行することにより、アーチファクトの低減/除去を含む断層像の生成処理を実現し、生成された画像をLCDモニタ113に出力表示している説明をしたが、それに限らず、画像データとして生成処理されていれば良く、画像として表示しなくともプログラムを実行して生成処理を進めてもよい。その場合、アーチファクトの低減/除去が完了した画像のみLCDモニタ113に出力表示することになる。また、アーチファクトの低減/除去が完了した画像もLCDモニタ113に出力表示せずに画像データとして記憶装置210にデータを格納していても良い。すなわち、上記実施形態で説明している画像とは、LCDモニタ113に出力表示される表示データとしての画像と、LCDモニタ113に表示されない非表示データとしてのデータ配列の2つの意味を兼ね備えていることは明らかである。
【0052】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
【0053】
本願は、2014年9月26日提出の日本国特許出願特願2014−197500を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てを、ここに援用する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6