特許第6587634号(P6587634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6587634切削インサートのグリーン体を製造するための方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587634
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】切削インサートのグリーン体を製造するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 7/00 20060101AFI20191001BHJP
   B30B 11/00 20060101ALI20191001BHJP
   B30B 11/02 20060101ALI20191001BHJP
   B22F 3/035 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   B22F7/00 F
   B30B11/00 R
   B30B11/02 F
   B30B11/02 H
   B22F3/035 F
   B22F3/035 D
   B22F3/035 C
   B22F3/035 Z
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-562791(P2016-562791)
(86)(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公表番号】特表2017-517628(P2017-517628A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】EP2015055877
(87)【国際公開番号】WO2015158492
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2018年1月22日
(31)【優先権主張番号】14164869.1
(32)【優先日】2014年4月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591106875
【氏名又は名称】セコ ツールズ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ステルケンブルフ, ディルク
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−045998(JP,A)
【文献】 特開2005−177835(JP,A)
【文献】 特表2008−528306(JP,A)
【文献】 特表2011−505258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00〜 8/00
B23B 27/00〜29/34
B30B 11/00〜11/34
C22C 1/04〜 1/05
C22C 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末を切削インサートのグリーン体(13)へと圧縮して、切削インサートのグリーン体(13)に、その外周面に分割線(14)を有するバレル形状を付与する方法であって、前記分割線は、前記圧縮がそれに沿って実施されるプレス軸(x)に対して少なくとも部分的に非垂直であり、前記方法は、
−上部ダイパーツ(19、41)と下部ダイパーツ(20)、及び上部パンチ(22)と下部パンチ(23)を含むダイ(18、40)を備える圧縮ツールを提供する工程であって、上部ダイパーツと下部ダイパーツ(19、20;41、20)は、結合するとき、前記圧縮によって成形されるバレル状のグリーン体(13)の外周面の形状を画定する内周面により区切られるダイキャビティ(25)の画定に寄与する工程
を含み、前記方法は更に、
−下部ダイパーツ(20)及び上部ダイパーツ(19、41)の少なくとも一方に、前記圧縮に関連して下部パンチ(23)又は上部パンチ(22)を受けるための、前記ダイキャビティ(25)から延びるプレス穴を設ける工程
を含み、
−前記方法は、
−下部ダイパーツ(20)に、グリーン体(13)の分割線(14)を規定する線に沿って延びる上部内縁(28)を設ける工程、
−上部ダイパーツ(19、41)に、グリーン体(13)の分割線(14)を規定する線に沿って延びる下部内縁(29)を設ける工程、
−上部ダイパーツ(19、41)に、少なくとも一方向に、直線的に延びる上面(30)を設ける工程、
−上部ダイパーツ(19、41)に、上部パンチ(22)がそれを通って前記キャビティに向かって前進することを可能にする前記上面(30)内の上部開口(31)を設ける工程、
−上部ダイパーツ(19、41)を、上部ダイパーツ(19、41)の下部内縁(29)が下部ダイパーツ(20)の上部内縁(28)に近接して配置されるように、下部ダイパーツ(20)の上方に位置決めする工程、
−上部パンチ(22)を、上部ダイパーツ(19、41)の上部開口(31)に対して後退位置に位置決めする工程、
−上部ダイパーツ(19、41)の上面(30)の前記上部開口(31)を通してダイに粉末を充填する工程、
−少なくとも上部パンチ(22)を前記キャビティに向かって前進させることにより粉末を圧縮する工程、
−上部パンチ(22)を後退させる工程、
−上部ダイパーツ(19)を下部ダイパーツ(20)から後退させることによりグリーン体(13)を露出させる工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
粉末充填装置を提供し、同装置を上部ダイパーツ(19、41)の前記上部開口(31)の上に位置決めするか、又は上部ダイパーツ(19、41)の前記上面(30)上において、同装置を、前記上面(30)が直線的に延びる前記方向に摺動させることにより前記位置から移動する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上部ダイパーツ(19、41)が、プレス軸(x)の方向への直線的な動きにより下部ダイパーツ(20)から後退することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
粉末を圧縮することにより切削インサート(13)のグリーン体を製造するための装置であって、互いから分離可能な上部ダイパーツ(19、41)と下部ダイパーツ(20)、及び少なくとも一方がプレス軸(x)に沿ってダイに対して移動可能な上部パンチ(22)と下部パンチ(23)を含むダイ(18、40)を備え、上部ダイパーツと下部ダイパーツ(19、20;41、20)は、結合すると、前記圧縮によって成形されるグリーン体(13)の外周面の形状を画定する内周面によって区切られるダイキャビティ(25)の画定に寄与し、ダイキャビティ(25)の前記内周面は、グリーン体(13)がその外周面上に前記プレス軸(x)に対して少なくとも部分的に非垂直な分割線(14)を有するバレル形状を有するように設計されており、下部ダイパーツ(20)及び上部ダイパーツ(19、41)の少なくとも一方は、下部パンチ(23)又は上部パンチ(22)をそれぞれ受けるための、前記キャビティから延びるプレス穴を有する装置において、
−下部ダイパーツ(20)が、グリーン体(13)の分割線(14)を規定する線に沿って延びる上部内縁(28)を有し、
−上部ダイパーツ(19、41)が、グリーン体(13)の分割線(14)を規定する線に沿って延びる下部内縁(29)を有し、
−上部ダイパーツ(19、41)が、少なくとも一方向に、直線的に延びる上面(30)を有し、且つ
−上部ダイパーツ(19、41)が、上部パンチ(22)がそれを通って前記キャビティに向かって前進することを可能にする前記上面(30)内の上部開口(31)を有する
ことを特徴とする装置。
【請求項5】
下部ダイパーツ(20)が、前記上部内縁(28)によって区切られる上面(44)であって、プレス軸(x)に平行な前記キャビティの中心軸から前記上部内縁(28)の側方方向へ延びる上面(44)を有し、上部ダイパーツ(19、41)が、その前記下部内縁(29)によって区切られる下面(46)であって、前記中心軸から側方方向に延びる下面を有し、ここで、上部ダイパーツと下部ダイパーツ(19、20;41、20)が結合して上部ダイパーツ(19、41)の下部内縁(29)と下部ダイパーツ(20)の上部内縁(28)が互いに近接して配置され、内部キャビティ(25)が画定されるとき、下部ダイパーツ(20)の上面(44)と上部ダイパーツ(19、41)の下面(46)は少なくとも部分的に互いの支持面として接触することを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記上面と下面(44、46)が、対応する延長部を有し、上部ダイパーツと下部ダイパーツ(19、20;41、20)が結合して上部ダイパーツ(19、41)の下部内縁(29)と下部ダイパーツ(20)の上部内縁(28)が互いに近接して配置されて内部キャビティ(25)が画定されるとき、その全領域に沿って互いの支持面として接触することを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
上部ダイパーツ(19、41)の上面(30)が平坦であることを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
上部ダイパーツ(19、41)の上面(30)がプレス軸(x)に垂直な平面内に延びることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
ダイが、上部ダイパーツと下部ダイパーツ(19、20;41、20)が結合するとき、上部ダイパーツと下部ダイパーツ(19、20;41、20)を側方から囲む外側ダイパーツ(21)を備えることを特徴とする、請求項4から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
外側ダイパーツ(21)が、上部ダイパーツ(19、41)が下部ダイパーツ(20)と結合し、装置が前記ダイキャビティ(25)に粉末を充填するように設定されるときに、上部ダイパーツ(19、41)の上面(30)と一致するように配置される上面(32)を有することを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
上部ダイパーツ(19、41)が、外側ダイパーツ(21)に対してプレス軸(x)の方向へ変位可能であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
上部ダイパーツ(19、41)の前記上面(30)の上で、上面(30)が直線的に延びる前記少なくとも一つの方向に摺動し、前記上部ダイパーツ(19、41)の前記上部開口(31)の上の粉末充填位置までを往復するように配置された粉末充填装置(35)を備えることを特徴とする、請求項4から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
上部ダイパーツ(19)が、上部ダイパーツのプレス軸の方向への変位を可能にするアクチュエーターに接続された延長部(36、42)を呈することを特徴とする、請求項4から12のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末を切削インサートのグリーン体へと圧縮して、前記切削インサートに、その外周面上に前記圧縮が実施されるプレス軸に対して少なくとも部分的に非垂直な分割線を有するバレル形状を付与する方法に関し、前記方法は、上部ダイパーツと下部ダイパーツ、及び上部パンチと下部パンチを含むダイを備える圧縮ツールを提供する工程を含み、上部ダイパーツと下部ダイダイパーツは、結合すると、前記圧縮によって成形されるバレル状グリーン体の外周面の形状を画定する内周面によって区切られるダイキャビティの画定に寄与し、前記方法は更に、下部ダイパーツ又は上部ダイパーツに、前記圧縮に関連して下部パンチ又は上部パンチを受けるための、前記キャビティから延びるプレス穴を設ける工程を含む。
【0002】
本発明はまた、粉末を圧縮することにより切削インサートのグリーン体を製造するための装置に関し、前記装置は、互いから分離可能な上部ダイパーツと下部ダイパーツ、及び少なくとも一方がプレス軸に沿ってダイに対して移動可能な上部パンチと下部パンチを含むダイを備え、上部ダイパーツと下部ダイパーツは、結合すると、前記圧縮によって成形されるグリーン体の外周面の形状を画定する内周面によって区切られるダイキャビティの画定に寄与し、ダイキャビティの前記内周面は、グリーン体がその外周面上に前記プレス軸に対して少なくとも部分的に非垂直な分割線を有するバレル形状を有するように設計されており、下部ダイパーツ及び上部ダイパーツの少なくとも一方は、下部パンチ又は上部パンチを受けるための、前記キャビティから延びるプレス穴を有する。
【0003】
本発明は、好ましくはフライス加工、ドリル加工若しくは旋削による、又は同様のチップ成形法による金属の機械加工に使用される切削インサートが、グリーン体へと圧縮され、次いで圧縮されたグリーン体が更に高密度化される焼結工程に供される粉末から製造される技術分野に関する。典型的には、焼結体には次いで、物理蒸着(PVD)又は化学蒸着のような任意の適切な現行技術により、カーバイド、窒化物、炭窒化物、酸化物、又はホウ化物といった適切な耐摩耗コーティングが施される。
【0004】
本明細書において言及される分割線は、その線に沿ってバレル状グリーン体が、グリーン体の中心線から見て放射方向に最大の延長部を呈する線と理解されたい。好ましくは、前記中心線は、プレス軸と平行であり且つ一致する。
【0005】
また、ダイが、上述のダイパーツのみから構成されるものに制限されず、更なるダイパーツを設けることができること、及び上述のダイパーツはその更なるサブパーツに分割可能であることを理解されたい。
【0006】
圧縮された切削インサートのグリーン体は、典型的には、それに基づく切削インサートの製造を完了するために焼結工程に供される。
【背景技術】
【0007】
先行技術によれば、バレル状切削インサートは、上部ダイパーツと下部ダイパーツに分けれらるダイを備える圧縮装置においてバレル状グリーン体を成形することを含む工程を用いて形成することができる。ダイパーツは、外側ダイパーツ又は概ね平坦な上面を有するプレステーブルによって囲まれる。上部ダイパーツと下部ダイパーツは、結合すると、成形されるグリーン体の外周面を画定するチャンバーを画定する。通常、下部ダイパーツは、その下面から前記チャンバーに向かって延びるプレス穴を備え、上部ダイパーツは、その上面から前記チャンバーに向かって延びるプレス穴を備える。更に、上部プレス穴を通ってスライドするように上部パンチが配置され、下部プレス穴を通って摺動するように下部パンチが配置される。圧縮の間、各パンチは、それらの端部が前記チャンバーに到達し、対向するそれらの上面と下面を画定することによりグリーン体の外周面の画定に寄与するように、対応するプレス穴を通って前進する。
【0008】
圧縮工程の前に、上部ダイパーツは後退するか、又は下部ダイパーツに対して後退した位置に保持される。下部パンチは後退するか、又は下部ダイパーツに設けられたプレス穴内の後退位置に保持される。下部ダイパーツの上面は、上部ダイパーツが後退した結果露出する。露出した下部ダイパーツの上面は、取り囲むプレステーブルの上面と整列し、それにより、粉末充填装置位が、プレステーブル及び下部ダイパーツの前記上面上において、下部ダイパーツによって画定された、前記上面内の開口を画定するチャンバの部分に、粉末を導入することが可能な位置まで前進することが可能となる。下部パンチが後退しているので、粉末は、下部ダイパーツのプレス穴の、下部パンチによって占有されていない部分にも導入される。粉末充填工程の完了後、粉末充填装置を後退させ、上部ダイパーツを前進させて下部ダイパーツと係合させる。次いで、下部パンチと上部パンチをそれぞれ、対応するダイパーツの内壁と共に、成形されるグリーン体の形状を画定する位置まで前進させる。最後に、上部パンチと共に、再び上部ダイパーツを後退させ、グリーン体が完全に露出するまで、プレス軸の方向に向かって上方へと下部パンチを更に前進させる。好ましくは、下部パンチは、その上面が下部ダイパーツの上面と整列するまで前進させる。これにより、グリーン体除去装置、例えばロボットアームが、グリーン体を除去することができ、圧縮シーケンスの主工程が終了する。
【0009】
下部ダイパーツの上面は平坦であり、それにより、プレステーブルの上面と整列することができ、且つ粉末充填装置がその上で摺動して下部ダイパーツの前記上面内の開口の上及び周りにしっかりと嵌ることができる。それにより、粉末が下部ダイパーツの上面へと逃げる危険が効率的に抑制される。下部ダイの上面上に残る粉末は、上部ダイパーツと下部ダイパーツ間のシール性に悪影響を与えるため、回避すべきである。
【0010】
しかしながら、上記設計は主に、パンチのプレス軸に対して垂直である及び/又は一平面内にのみ延びる分割線を有するバレル状グリーン体の圧密化に適している。下部ダイパーツの上部内縁は、グリーン体の分割線を規定する線に沿って延び、上部ダイパーツの下部内縁も同様である。分割線が平面以外の広がりを有する場合、下部ダイパーツの上面は、分割線の輪郭に対応する輪郭を有し、平坦でないであろう。この事実は、下部ダイパーツの一部が、外側ダイパーツ又はプレステーブルの上面によって画定される平面から突出するという事実により、粉末充填装置の摺動を困難にする。輪郭が、前記開口の周りの上面の部分が前記上面の残りの部分のレベルを下回る場合、粉末充填の間に粉末が上面のそのような部分に集まることを防ぐことは難しいであろう。このような粉末は、下部ダイパーツと上部ダイパーツの間のシール性に悪影響を有するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、切削インサートのグリーン体を製造するための新規の代替的方法及び装置を提示することであり、この場合、製造されるグリーン体は、面状でない及び/又はプレス軸に垂直でない分割線を有するバレル形状を有し、したがって使用されるダイは、結合すると、グリーン体の外周面を画定する内周面を有する二つのダイパーツを備える。本発明は、分割線が面状でない及び/又はプレス軸に垂直でないという事実にもかかわらず、効率的かつ信頼性の高いダイへの粉末の充填を可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、冒頭に定義した方法であって、
−下部ダイパーツに、グリーン体の分割線を規定する線に沿って延びる上部内縁を設ける工程、
−上部ダイパーツに、グリーン体の分割線を規定する線に沿って延びる下部内縁を設ける工程、
−上部ダイパーツに、少なくとも一方向に、直線的に延びる上面を設ける工程、
−上部ダイパーツに、それを通して上部パンチが前記キャビティへと前進することができる前記上面内の開口を設ける工程、
−上部ダイパーツを、上部ダイパーツの下部内縁が下部ダイパーツの上部内縁に近接して配置されるように、下部ダイパーツの上方に位置決めする工程、
−上部パンチを、上部ダイの上部開口に対して後退位置に位置決めする工程、
−上部ダイパーツの上面の前記上部開口を通してダイに粉末を充填する工程、
−少なくとも上部パンチを前記キャビティに向かって前進させることにより粉末を圧縮する工程、
−上部パンチを後退させる工程、
−上部ダイパーツを下部ダイパーツから後退させることによりグリーン体を露出させる工程
を含むことを特徴とする方法を用いて達成される。
【0013】
グリーン体を露出させて、グリーン体を除去するための装置が到達できるようにするために、上部パンチと上部ダイパーツを下部ダイパーツから後退させる順序は重要でない。圧縮されたグリーン体を完全に露出させるために、下部パンチを、下部ダイパーツを通して更に前進させる。この動きは、圧縮されたグリーン体が、下部ダイパーツの外へと変位する間に二つのパンチの間に保持されるように、上部パンチの後退と同時に行われる。好ましくは、上部ダイパーツは、プレス軸の方向へ下部ダイパーツから分離可能であり、好ましくは、分離は、上部ダイパーツを下部ダイパーツから上方へ後退させることにより行われる。本明細書において使用される用語「近接して」並びに「一致する」は、近接して配置される又は一致する縁又は表面間に物理的接触があることを必ずしも意味しない。しかしながら、好ましくは、このような縁及び表面間のいずれの空間にも粉末が漏れて入り込むことを防止するシール効果が、このような一致性の効果として達成される。
【0014】
好ましくは、前記方法は、粉末充填装置を提供して、それを上部ダイパーツの前記上部開口の上に位置決めする又は上部ダイの前記上面上においてそれを前記表面が直線的に伸びる方向に摺動可能にすることにより前記位置から取り除く工程を含む。これにより、摺動式粉末充填装置が実現される。好ましくは、上部ダイの上面が直線的に延びる方向において、前記表面はプレス軸に垂直方向に延びる。好ましくは、表面は、粉末充填装置に考慮される摺動経路に対応して、前記上部開口から側方にずれた位置から前記開口へと直線的に延びる。
【0015】
別の実施態様によれば、上部ダイパーツは、前記上部ダイパーツ及び下部ダイパーツの少なくとも一方の、プレス軸の方向への直線的運動により、下部ダイパーツから後退させる。
【0016】
本発明の目的は、冒頭の装置であって、
−下部ダイパーツが、グリーン体の分割線を規定する線に沿って延びる上部内縁を有すること、
−上部ダイパーツが、グリーン体の分割線を規定する線に沿って延びる下部内縁を有すること、
−上部ダイパーツが、少なくとも一方向に、直線的に延びる上面を有すること、及び
−上部ダイパーツが、前記上面に、それを通して上部パンチが前記キャビティへと前進することができる開口を有すること
を特徴とする装置によっても達成される。
【0017】
少なくとも一方向に直線的に延びる上部ダイの上面と、同上面内の上部開口とが設けられることで、ダイに粉末を充填する目的で、側方への直線的摺動運動により粉末充填装置を前記開口の上に位置決めすることが可能となる。上部ダイの上面は、面上の側方から同面内の開口に向かう方向へ直線的に延びており、それにより粉末充填装置が、前記直線的に延びる表面に沿って側方から前記開口の上の位置へと摺動することが可能である。直線的に延びる表面は、前記開口の周囲の領域を含む。
【0018】
一実施態様によれば、下部ダイパーツは、前記上部内縁によって区切られる上面であって、プレス軸に平行な前記キャビティの中心軸から前記上部内縁の側方方向へ延びる上面を有し、上部ダイパーツは、その前記下部内縁によって区切られる下面であって、前記中心軸から側方方向に延びる下面を有し、ここで、上部ダイパーツと下部ダイパーツが結合して上部ダイパーツの下部内縁と下部ダイパーツの上部内縁が互いに近接して配置され、内部キャビティが画定されるとき、下部ダイパーツの上面と上部ダイパーツの下面は少なくとも部分的に互いの支持面として接触する。これにより、支持面は、前記上部縁及び下部縁によってそれぞれ画定されるだけでなく、互いに支え合う下部ダイパーツの上面と上部ダイパーツの下面の前記部分によっても画定され、それにより設計の安定性の向上に寄与する。上部縁と下部縁は、場合によっては互いに直接接触しなくてもよく、ダイパーツを互いに対して押し付ける圧縮荷重が存在する場合、このような荷重は、縁ではなく、表面の前記部分によって収容される。このような実施態様は、縁に対する圧縮荷重により生じる縁の損傷を防止するため、更に好ましい。
【0019】
一実施態様によれば、前記上面及び下面は、対応する延長部を有し、上部ダイと下部ダイが結合して上部ダイパーツの下部内縁と下部ダイパーツの上部内縁が近接して配置され、内部キャビティが画定されるとき、その全領域に沿って互いの支持面として接触する。これにより、上部ダイパーツと下部ダイパーツの安定で確固とした係合が促進される。
【0020】
一実施態様によれば、上部ダイパーツの上面は平坦である。これにより、粉末充填装置は、前記上面上における任意の方向への摺動により、上部ダイパーツの上面内の前記開口の上に位置決め可能となる。
【0021】
また別の実施態様によれば、上部ダイパーツの上面は、プレス軸に垂直な平面内に延びる。
【0022】
また別の実施態様によれば、ダイは、上部ダイパーツと下部ダイパーツが結合するとき、それらダイパーツを少なくとも部分的に側方から囲む外側ダイパーツを備える。外側ダイパーツは下部ダイパーツに接続してその一部を形成してもよい。
【0023】
好ましくは、外側ダイパーツは、上部ダイパーツが下部ダイパーツと結合し、装置が前記キャビティに粉末を充填するように設定されるとき、上部ダイパーツの上面に対して近接して配置される上面を有する。換言すれば、上部ダイパーツの上面と外側ダイパーツは、少なくとも部分的に、且つ好ましくは上部ダイパーツの上面が直線的に延びる上記方向に外側ダイパーツの上面が上部ダイパーツの上面と整列するように、整列して互いに近接する。これにより、粉末充填装置は、外側ダイパーツの上面と上部ダイパーツの上面の上を、前記表面のうちの一方から他方へと、前記上面間のレベルの差なく摺動することができる。
【0024】
一実施態様によれば、上部ダイパーツは、外側ダイパーツに対してプレス軸の方向に変位可能である。
【0025】
一実施態様によれば、本発明による装置は、前記上部ダイパーツの上面において、上面が直線的に延びる前記少なくとも一つの方向に、上部ダイの前記上部開口の上の粉末充填位置までを往復するように摺動するように配置された粉末充填装置を備える。
【0026】
一実施態様によれば、上部ダイパーツは、上部ダイパーツのプレス軸の方向への変位を可能にするアクチュエーターに接続される延長部を呈する。この延長部は、上面が直線的に延びる方向に上部ダイパーツの上面内の前記開口までを往復する粉末充填装置の摺動を妨げないように位置決めされる。更に、延長部は、グリーン体がその露出位置にあるときにロボットなどが圧縮されたグリーン体を除去することを妨げないように、位置決め及び設計される。延長部は、上部ダイパーツの上方に位置するアクチュエーターに向かって上方に、又は下部ダイパーツの下方に位置するアクチュエーターに向かって下方に延びることができる。
【0027】
一実施態様によれば、その外周面がダイキャビティの内周面によって画定される切削インサートのグリーン体は、上端、下端、及び前記上端と下端の間の胴部を呈し、胴部は、切削インサートのグリーン体の中心軸から見て少なくとも一つの放射方向に、胴部から切削インサートのグリーン体の上端までの任意の位置及び胴部から切削インサートのグリーン体の下端までの任意の位置に、切削インサートのグリーン体の対応する側方延長部より大きな側方延長部を有する。典型的には、胴部は、切削インサートのグリーン体の最大幅を規定し、切削インサートの幅は胴部から切削インサートの上端及び下端それぞれに向かって次第に小さくなる。胴部は、全放射方向において切削インサート本体の残りより更に側方に延びる必要はないが、胴部が切削インサートのグリーン体の残りより大きな側方延長部を有するセクターが画定されるように、少なくとも一部の放射方向において更に側方に延びる。典型的には、胴部は全放射方向に、即ち360°のセクターについて、切削インサートのグリーン体の残りより大きな側方延長部を有する。側方延長部は、切削インサートのグリーン体の上端から下端まで延びる切削インサートのグリーン体の中心軸を横切る延長部のことをいう。胴部は、本体の周囲に走る線又はゾーンによって画定されてもよい。
【0028】
本発明は、本発明による装置において製造されるグリーン体から成形されることを特徴とする切削インサートにも関する。
【0029】
本発明の更なる構成及び利点は、本発明の実施態様を例示する以下の詳細な説明において開示される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下に、本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
図1図1aは、粉末圧縮位置にある、従来技術による圧縮装置の基本的なパーツを表す概略図である。図1bは、図1aに対応しているが、粉末充填のために設定された位置にある同じ装置を示している。
図2図2aは、その外周面に、少なくとも部分的にプレス軸に対して非垂直な胴部ラインを有するグリーン体が圧縮される場合を示す、圧縮装置のパーツの概略図である。図2bは、図2aにおいて示される場合において圧縮されるバレル状切削インサートのグリーン体の例示的実施態様である。図2cは、図2bに示すグリーン体の上面図である。図2dは、図2b及び2cに示すグリーン体の側面図である。
図3図3a−3iは、本発明による装置の一実施態様を用いて切削インサートのグリーン体を圧縮するための本発明の一実施態様による方法の連続工程を示す一連の断面図である。
図4図4a−4cは、図3a、3f及び3iに対応する、本発明による装置の部分切開斜視図である。
図5図5a−5dは、図3a、3b、3f及び3iに示すものに対応する位置にある、本発明による装置の代替的実施態様を示している。
図6】切削インサートのグリーン体の圧密後の位置にある、図5a−5dに示す実施態様の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、切削インサートのグリーン体へと粉末を圧縮するための先行技術による装置の基本的なパーツの概略図であり、成形される切削インサートのグリーン体は、その両端の間に位置して切削インサートのグリーン体の最大幅を規定する胴部を有するという意味でバレル状である。装置は、上部ダイパーツ2、下部ダイパーツ3及び外側ダイ後退に分けられる、ダイ1を備える。また、公知のように対応するパーツ2、3の押抜きチャネル内に受けられる上部パンチ5と下部パンチ6が備わっている。上部ダイパーツ2と下部ダイパーツ3は、上部パンチ5と下部パンチ6がそれに沿って移動するように配置されるプレス軸x1に垂直な分割線7によって分割される。パンチ5、6は、結合する上部ダイパーツ2と下部ダイパーツ3と、対向するパンチ5、6の端部9、10とによって画定されるキャビティ8中に導入される粉末を圧縮する目的で使用される。好ましくはプレス軸x1と一致して下部ダイパーツ3を通ってキャビティ8中へ延びる、コアピンが配置されてもよい。この場合、このようなコアピンは、切削インサートのグリーン体に中心の穴を生成する目的で配置される。外側ダイ後退は、固定テーブルの類として提供される。パンチ5、6及び上部ダイパーツと下部ダイパーツ2、3はアクチュエーター(図示しない)に接続され、このアクチュエーターにより、個々にプレス軸x1の方向へ移動することが可能である。いずれのパーツを移動可能とするかは当業者の選択による。しかしながら、通常は、下部ダイパーツが固定パーツであり、パンチと上部ダイパーツが可動パーツである。
【0033】
成形される切削インサートのグリーン体の胴部は、成形される切削インサートのグリーン体の中心軸に垂直な平面内に延びるという意味で規則型である。ダイ1によって閉じ込められるとき、グリーン体の中心軸はパンチ5、6の上記プレス軸x1と一致するか、又は同プレス軸と平行である。したがって、上部ダイパーツと下部ダイパーツを分割する面は、プレス軸x1に垂直である。図1bは、下部ダイパーツ3中に粉末を充填するように設定された位置にある、図1aによる装置を示す。上部ダイパーツ2と上部パンチ5は上方に後退しており、図1bには示されておらず、下部ダイパーツ3の平坦な上面11が外側ダイパーツ4の上面12と整列している。この位置において、下部ダイパーツ3に、下部ダイパーツ3が、目標とする切削インサートのグリーン体の成形に必要な粉末の量を受けることを可能にする余分な空間が生成されるように、下部パンチは下方に後退している。分割線7はプレス軸に垂直なので、下部ダイパーツ3の上面11は平坦となることができる。これにより、粉末充填装置は、前記上面11、12上を、下部ダイパーツ3の上面11の上の粉末充填位置へと摺動することができる。
【0034】
図2aは、粉末充填用に設定されている圧縮装置のパーツを示し、少なくとも部分的にプレス軸に対して非垂直な分割線を外周面に有する切削インサートのグリーン体が圧縮される場合を示している。成形される切削インサートのグリーン体は、更に図2b−2dに示され、参照番号13を有する。図示のように、この切削インサートのグリーン体13は、少なくとも部分的に切削インサートのグリーン体の中心軸x2に対して非垂直であるという意味で不規則な分割線14を有する。また、分割線は一平面内のみに延びているわけはない。ダイ1は、中心軸x2が圧縮装置のパンチのプレス軸と一致するか、又は同プレス軸に平行であるように設計される。切削インサートのグリーン体の設計の結果として、下部ダイ16の上面15は一平面内に延びず、波状の広がりを呈する。特定の手段が講じられず、図1bに示したものと同じ原理が粉末充填の間に適用される場合、下部ダイパーツ16は、外側ダイパーツの上面17の上方に突出する障害物を形成し、粉末充填装置がその上で、下部ダイパーツ16の上の充填位置まで摺動することを妨げる。したがって、ダイへの粉末充填は複雑化する。本発明は、図3a−3i、4a−4c及び5a−5dを参照して後述するように、少なくとも部分的に切削インサート本体の中心軸に、したがって前記圧縮に使用される一又は複数のパンチのプレス軸に非垂直な胴部ライン又は分割線を有するバレル状切削インサート本体の圧縮に関する上記問題を解決することを目的とする。
【0035】
図3aは、本発明による圧縮装置の第1の実施態様を示す。図3a−3iは、粉末を切削インサートのグリーン体へと圧縮するための本発明による方法の一実施態様の基本工程を示している。図4a−4cは、図3a、3f、及び3iに対応する位置にある装置を示し、第1実施態様による装置を斜視図において更に説明している。切削インサートのグリーン体は、図2b−2dに開示される本体の形状に対応する形状を有する。したがって、切削インサートのグリーン体は、以降すべて参照番号13で示す。圧縮装置は、上部ダイパーツ19、下部ダイパーツ20及び外側ダイパーツ 21を含むダイ18を備える。外側ダイパーツ21は、ダイパーツというよりはテーブルに近い。しかしながら、外側ダイパーツは上部ダイパーツ及び下部ダイパーツ19、20を支持するという機能を有し、したがってダイ18の一部と定義される。代替的に、外側ダイパーツは、下部ダイパーツ19に接続して下部ダイパーツと単一ユニットを形成してもよい。
【0036】
更に、圧縮装置は上部パンチ22と下部パンチ23を備える。上部パンチ22は、プレス軸xの方向に長手方向に延びて同方向に可動である。下部パンチ23は、上部パンチ22のプレス軸xと一致する(必須ではない)プレス軸の方向に長手方向に延びて同方向に可動である。各パンチ22、23は、対応するアクチュエーター(図示しない)に接続されており、このアクチュエーターによりそれらのプレス軸xの方向への移動が達成される。下部パンチ23を通して、プレス軸xの方向に、コアピン24が延びている。コアピン24は、更なるアクチューター(図示しない)に接続されており、このアクチュエーターによりプレス軸xの方向へ移動する。他に一又は複数のコアピンを設けること、又はコアピンを全く使用しないことも、本発明の範囲内であることを理解されたい。更なるパンチが設けられてもよいこと及び/又は上部パンチと下部パンチが更なるパンチに小分割されてもよいことを理解されたい。
【0037】
下部ダイパーツ20は、圧縮される切削インサートのグリーン体13の最終形状を画定するダイキャビティ25の一部を画定する。また、下部ダイパーツ20は、前記ダイキャビティ25から下部ダイパーツ20の下面まで延びる穴を呈し、この穴を通して下部パンチ23が下部ダイパーツ20中に導入される。穴は、下部パンチ23の外周面に対応する内周面を有し、下部パンチ23がそこを通って前記キャビティ25に向かって前進できる又はそこから後退できる誘導穴を画定する。下部パンチ23の上部端面26は、下部パンチが図3fに示す最終圧縮位置に前進するとき、前記ダイキャビティ25の画定に寄与する。
【0038】
上部ダイパーツ19は、圧縮される切削インサートのグリーン体13の最終形状を画定するダイキャビティ25の別の一部を画定する。ダイキャビティ25は、上部ダイパーツ19が下部ダイパーツ20と結合し、上部パンチ22がその最終圧縮位置まで前進し、且つ下部パンチ23がその最終圧縮位置まで前進した後で、完全に画定される。最終圧縮位置は図3fに示されている。これにより、上部パンチ22の下部端面27も、ダイキャビティ25の画定に寄与する。上部ダイパーツ19と下部ダイパーツ20がダイキャビティ25の側方の境界を画定し、上部パンチ22の下部端面27と下部パンチ23の上部端面26がダイキャビティ25の長手方向、即ちプレス軸x方向の両端面を画定する。
【0039】
圧縮される切削インサートのグリーン体は、図2a−2dを参照して記載したものと同じ幾何学形状を有している。ダイキャビティ25の周囲面をこのような幾何学形状に対応させるために、下部ダイパーツ20は、グリーン体13の分割線14を規定する線に沿って延びる上部内縁28を有し、上部ダイパーツ19は、グリーン体13の分割線14を規定する線に沿って延びる下部内縁29を有する。下部ダイパーツ20は、前記上部内縁28によって区切られる上面44であって、プレス軸xに平行な前記キャビティの中心軸から、前記上部内縁28から外縁45まで側方に延びる上面44を有する(図4c参照)。上部ダイパーツ19は、その前記下部内縁29によって区切られる下面46であって、前記中心軸から外縁47まで放射方向に延びる下面46を有し、ここで、上部ダイパーツと下部ダイパーツ19、20が結合し、上部ダイパーツ19の下部内縁29と下部ダイパーツ20の上部内縁28が近接して配置され、内部キャビティ25が画定されるとき、下部ダイ20の上面44と上部ダイパーツ19の下面46とが少なくとも部分的に互いの支持面として接触する。ここで、上面及び下面44、46は、対応する延長部を有し、上部ダイパーツ19と下部ダイパーツ20が結合して上部ダイパーツ19の下部内縁29と下部ダイパーツ20の上部内縁28が近接して配置され、内部キャビティ25が画定されるとき、その全領域に沿って互いの支持面として接触する。
【0040】
上部ダイパーツ19は、概ね平坦で、プレス軸xに垂直な平面内に延びる上面30を呈する。上部ダイパーツ19の上面30には、開口31が設けられる。開口31は、上部パンチ22がその最終圧縮位置まで前進するとき上部パンチ22を受けるために設けられており、し、パンチがその中を前進する押抜きトンネルの始まりを規定する。外側ダイパーツ21は上面32を備え、この上面は概ね平坦である。外側ダイパーツ21の周囲には、上面34を有するテーブル33も設けられている。必ずしも外側ダイパーツ21とテーブル33の両方が必要でないことに注意されたい。外側ダイパーツ21の機能及び設計によっては、外側ダイパーツはダイパーツというよりはむしろテーブルとみなされる。このような場合、テーブル33のような更なるテーブルが圧縮装置に含まれないということもありうる。
【0041】
粉末充填工程の間にダイキャビティ25へ粉末を充填する目的で、圧縮装置は粉末充填装置35も備える。粉末充填装置35は、上部ダイパーツ19及び外側ダイパーツ21それぞれの上面30、32上で、及び可能であればテーブル33の上面34上で摺動し、上部ダイパーツ19の上面30内の開口31の上の位置との間を往復するように配置される。このような摺動を可能にするために、上部ダイパーツ19及び外側ダイパーツ21それぞれの上面30、32、及び可能であればテーブル33の上面34は、上部ダイパーツ19が粉末充填の準備を整えた位置にあるとき、互いに整列する。この位置は、図3a並びに図4aに示されている。圧縮装置が粉末充填の準備を整えた位置において、上部ダイパーツ19は、上部ダイパーツ19の下部内縁29が下部ダイパーツ20の上部内縁28に近接して配置されるように、下部ダイパーツ20の上に配置される。下部パンチ23は、ダイ18に、十分な量の圧縮粉末を受けることを可能にする目的で、その最終圧縮位置に対して後退位置にある。しかしながら、上部ダイパーツ19の設計、更に正確には上部パンチ22を受けるためにその中に画定される押抜きトンネルの長さ及び幅によっては、下部パンチ23の後退の必要性は異なるであろう。しかしながら、上部パンチ22は、粉末充填装置35が上部ダイパーツ19の上面30内の開口31の上のその粉末充填位置に到達することを可能にする目的で、上部ダイパーツ19の上部開口31に対して後退位置にある。
【0042】
上部ダイパーツ19を、上部ダイパーツ19をプレス軸xの方向に移動させるためのアクチュエーターに簡便に接続させるために、上部ダイパーツ19は、前記上面30の上方に延びる上部延長部36を呈し、前記上部ダイパーツ19の前記上面30とそれに対向するその上部延長部36の下面38の間には空間37があり、前記スペースには側方開口があって、粉末充填装置35は、この開口を通って摺動し、上部ダイパーツ19の上部開口31との間を往復することができる。上部延長部36は、上部ダイパーツをプレス軸xの方向へ移動させるためのアクチュエーター(図示しない)に接続される。本実施態様では、上部延長部36はまた、上部パンチ22を誘導するための押抜きチャネルを画定する。しかしながら、このような押抜きチャネルは、本発明による圧縮装置の任意選択的な構成であることに注意されたい。
【0043】
図3b−3iは、図3a及び4a−4cに示す装置を用いた切削インサートのグリーン体の圧縮の間の連続工程を示す。
【0044】
図3bでは、粉末充填装置35は、上部ダイパーツ19及び外側ダイパーツ21それぞれの表面30及び32上を、上部ダイパーツ19の上面30内の開口31の上のその粉末充填位置まで摺動することにより前進する。粉末は、上部ダイパーツ19及び下部ダイパーツ20の内周と、下部パンチ23の上端26により画定されるダイキャビティ中に充填される。この工程の前に下部パンチ23が未だ後退位置にない場合、キャビティが、その後の最終的圧縮工程(図3f)において切削インサートのグリーン体の幾何学形状を画定することになるダイキャビティ25に対して拡大するように、この工程の間に後退位置に移動させる。ダイキャビティは完全に粉末で充填される。換言すれば、上部粉末レベルが上部ダイパーツ19の上面30と整列する。コアピン24は、ダイキャビティを通って延び、且つその上端が上部ダイパーツ19の上面30と整列する位置に保持される。
【0045】
図3cでは、粉末充填機構35は、以前に前進した方向とは反対方向に摺動することにより粉末充填位置から後退する。
【0046】
図3dでは、続く粉末圧縮工程において粉末の圧縮を開始する又は所望のプレス経路比の生成を開始する前に、上部パンチ22が上部ダイパーツ19中に進入するためのいくらかの空間をつくる目的で、下部パンチ23を更に少しだけ後退させる。
【0047】
図3eでは、上部パンチ22が、上部ダイパーツ19の上面30内の開口31中へと前進する。
【0048】
図3fでは、下部パンチ23が最終圧縮位置へと前進し、上部パンチ22が最終圧縮位置へと前進し、圧縮が実施される。前記最終圧縮位置では、切削インサートのグリーン体13の幾何学形状を画定するダイキャビティ25の外周面が、上部ダイパーツ19及び下部ダイパーツ20の内周と、下部パンチ23の上端26及び上部パンチ22の下端27とによって画定される。圧縮された切削インサートのグリーン体13の分割線14は、上部ダイパーツ19の下部内縁29と下部ダイパーツ20の上部内縁28とによって規定される分割線によって規定される。分割線14は、切削インサートのグリーン体13が最大幅を呈する位置において切削インサートのグリーン体の周りに延びる。
【0049】
図3gでは、上部ダイパーツ19、下部ダイパーツ20、上部パンチ22、下部パンチ23及びコアピン24によって構成されるユニットが、図3fに示される位置から少なくとも圧縮された切削インサートのグリーン体13の上端が外側ダイパーツ21の上面32のレベルの上方に位置するレベルへと上方に移動する。ここで、圧縮された切削インサートのグリーン体13の下端も外側ダイパーツ21の上面32のレベルの上方に位置する。これにより、その後切削インサートのグリーン体13を圧縮マシンから除去することが容易になる。
【0050】
図3hでは、下部ダイ20及びコアピン24が、これらのいずれもが圧縮された切削インサートのグリーン体13と係合しないレベルまで下方に後退する。上部ダイパーツ19は、圧縮された切削インサートのグリーン体13と係合しないように上方に後退し、ここで切削インサートのグリーン体13は完全に露出して、下部パンチ23と上部パンチ22のみにより、それらパンチ間に保持される。
【0051】
図3iでは、上部パンチ22は、上部ダイパーツ19と同様に更に後退しており、圧縮された切削インサートのグリーン体13は下部パンチ23の上端26のみによって支持されている。把持装置を備えたロボットアームなどの除去装置39が、グリーン体13を把持し、下部パンチ23の上のその位置から除去するために配置される。
【0052】
図5a−5dは、本発明による圧縮装置の代替的実施態様の圧縮シーケンス間の異なる工程を示している。図5a−5dに示す圧縮装置は、図3−4に示した同装置とは、上部ダイパーツ41が下部ダイパーツ20の外側側方に延びる下方延長部42を呈するダイ40を有し、且つ上部ダイパーツ41の下部ダイパーツ20との結合位置までの往復が、上部ダイパーツ41の下方延長部42に作用して同延長部をプレス軸xと平行な方向に変位させることにより実現されるという点で異なっている。好ましくは、上部ダイ後退1の下方延長部42は、上部ダイ後退1の運動を実施するためのアクチュエーター(図示しない)に接続される。アクチュエーターは、ダイ40の下に適切に位置している。
【0053】
除去装置39が圧縮された切削インサートのグリーン体13をその圧縮後に除去することを可能にするために、上部ダイ後退1の下方延長部42は側方開口43を含み、この開口は、上部ダイ後退1が下部ダイパーツ20との係合位置から後退し、その結果露出した圧縮されたグリーン体13が前記開口43を通して側方に露出するときに露出する。
【0054】
図6は、切削インサートのグリーン体13の圧縮後の位置にある、図5a−5dに示した実施態様を、斜視図において更に示している。上部パンチ22は後退位置にある。5dに示す位置をとるために、上部ダイパーツは、下部ダイパーツ20との係合位置から上方に後退しなくてはならず、下部パンチ23も、圧縮されたグリーン体13に除去装置が到達可能とするために、下部ダイパーツ20及び外側ダイパーツ21に対して上方に変位しなくてはならない。
図1a-1b】
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図3f
図3g
図3h
図3i
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図5d
図6