【実施例】
【0073】
[第1実施例]
サンプル1〜18に係る蛍光体微粒子について、XRDパターンを確認し、さらに、サンプル1〜18に係る蛍光体微粒子に各種励起波長の光を照射して測定した蛍光スペクトルの発光強度を確認した。また、原料へのFe、Crの添加による内部量子効率の影響を確認した。
【0074】
(サンプル1)
Ba及びSnを含む原料をプラズマ合成によって反応させてサンプル1に係る蛍光体微粒子を作製した。このサンプル1では、原料(Sn)1モルに対してFeを5.000モル%添加して蛍光体微粒子を作製した。プラズマ合成におけるFeのカチオンの添加方法は、以下のようにして実施した。すなわち、原料(Sn)1モルに対して指定モル比になるように、Fe(NO
3)
3・9H
2Oをエタノールに添加溶解させ、このエタノール溶液を用いて、上記のBaCO
3粉末とSnO
2粉末の粉砕混合を実施した。
【0075】
(サンプル2)
Feを原料(Sn)1モルに対して1.000モル%添加したこと以外は、サンプル1と同様にして、サンプル2に係る蛍光体微粒子を作製した。
【0076】
(サンプル3)
Feを原料(Sn)1モルに対して0.500モル%添加したこと以外は、サンプル1と同様にして、サンプル3に係る蛍光体微粒子を作製した。
【0077】
(サンプル4)
Feを原料(Sn)1モルに対して0.100モル%添加したこと以外は、サンプル1と同様にして、サンプル4に係る蛍光体微粒子を作製した。
【0078】
(サンプル5)
Feを原料(Sn)1モルに対して0.050モル%添加したこと以外は、サンプル1と同様にして、サンプル5に係る蛍光体微粒子を作製した。
【0079】
(サンプル6)
Feを原料(Sn)1モルに対して0.010モル%添加したこと以外は、サンプル1と同様にして、サンプル6に係る蛍光体微粒子を作製した。
【0080】
(サンプル7)
Ba及びSnを含む原料をプラズマ合成によって反応させてサンプル7に係る蛍光体微粒子を作製した。このサンプル7では、原料(Sn)1モルに対してCrを1.000モル%添加して蛍光体微粒子を作製した。プラズマ合成におけるCrのカチオンの添加方法は、以下のようにして実施した。すなわち、原料(Sn)1モルに対して指定モル比になるように、CrCl
3・6H
2Oをエタノールに添加溶解させ、このエタノール溶液を用いて、上記のBaCO
3粉末とSnO
2粉末の粉砕混合を実施した。
【0081】
(サンプル8)
Crを原料(Sn)1モルに対して0.100モル%添加したこと以外は、サンプル7と同様にして、サンプル8に係る蛍光体微粒子を作製した。
【0082】
(サンプル9)
Crを原料(Sn)1モルに対して0.050モル%添加したこと以外は、サンプル7と同様にして、サンプル9に係る蛍光体微粒子を作製した。
【0083】
(サンプル10)
Crを原料(Sn)1モルに対して0.010モル%添加したこと以外は、サンプル7と同様にして、サンプル10に係る蛍光体微粒子を作製した。
【0084】
(サンプル11)
Crを原料(Sn)1モルに対して0.005モル%添加したこと以外は、サンプル7と同様にして、サンプル11に係る蛍光体微粒子を作製した。
【0085】
(サンプル12)
Crを原料(Sn)1モルに対して0.001モル%添加したこと以外は、サンプル7と同様にして、サンプル12に係る蛍光体微粒子を作製した。
【0086】
(サンプル13)
Ba及びSnを含む原料をプラズマ合成によって反応させてサンプル13に係る蛍光体微粒子を作製した。このサンプル13では、原料(Sn)1モルに対してNiを1.000モル%添加して蛍光体微粒子を作製した。プラズマ合成におけるNiのカチオンの添加方法は、以下のようにして実施した。すなわち、原料(Sn)1モルに対して指定モル比になるように、Ni(NO
3)
2・6H
2Oをエタノールに添加溶解させ、このエタノール溶液を用いて、上記のBaCO
3粉末とSnO
2粉末の粉砕混合を実施した。
【0087】
(サンプル14)
Niを原料(Sn)1モルに対して0.100モル%添加したこと以外は、サンプル13と同様にして、サンプル14に係る蛍光体微粒子を作製した。
【0088】
(サンプル15)
Niを原料(Sn)1モルに対して0.050モル%添加したこと以外は、サンプル13と同様にして、サンプル15に係る蛍光体微粒子を作製した。
【0089】
(サンプル16)
Niを原料(Sn)1モルに対して0.010モル%添加したこと以外は、サンプル13と同様にして、サンプル16に係る蛍光体微粒子を作製した。
【0090】
(サンプル17)
Niを原料(Sn)1モルに対して0.005モル%添加したこと以外は、サンプル13と同様にして、サンプル17に係る蛍光体微粒子を作製した。
【0091】
(サンプル18)
Niを原料(Sn)1モルに対して0.001モル%添加したこと以外は、サンプル13と同様にして、サンプル18に係る蛍光体微粒子を作製した。
【0092】
サンプル1〜18の内訳、Fe、Cr及びNiの含有量、並びに内部量子効率について、下記表1、表2及び表3に示す。なお、サンプル1〜18のうち、高濃度域のサンプル1〜4、7〜9、13〜15は測定値を用い、低濃度域のサンプル5、6、10〜12、16〜18は推定値を用いた。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
<評価:XRDパターン及びTEM微構造>
(サンプル1)
代表的に、サンプル1に係る蛍光体微粒子のXRDパターンを
図7Aに示す。このXRDパターンは、立方晶BaSnO
3のXRDパターンとほぼ一致した。さらに、サンプル1に係る蛍光体微粒子のTEM微構造を
図7Bに示す。
図7Bからわかるように、粒子径が10〜40nm程度の蛍光体微粒子の生成が確認された。
【0097】
(サンプル2〜18)
サンプル2〜18についても、サンプル1と同様の結果(
図7A及び
図7B参照)を得た。
【0098】
<評価:Feの含有量>
(サンプル1)
Feの含有量は、得られた蛍光X線スペクトルからFP法に基づいたノンスタンダード分析による半定量分析結果では、0.80000質量%であった。
【0099】
(サンプル2〜4)
サンプル2、3及び4のFeの含有量は、0.20000質量%、0.04000質量%及び0.02000質量%であった。
【0100】
(サンプル5)
Feの含有量が蛍光X線スペクトルからFP法による検出限界以下であったため、次のようにして、Fe含有量を推定した。すなわち、
図8Aに示すように、x軸に原料1モルに対するFeの添加量(モル%)、y軸にFe含有量(質量%)をとり、サンプル1〜4のプロットから最小二乗法にて直線の式を求めた。そして、この直線の式(y=0.1608x,R
2=0.992)から、サンプル5のFeの添加量に対応するFeの含有量を求めた。その結果、Feの含有量は0.00804質量%であった。
【0101】
(サンプル6)
Feの含有量は、上述した直線の式とサンプル6のFeの添加量に基づいて求めた。その結果、Feの含有量は0.00161質量%であった。
【0102】
<評価:Crの含有量>
(サンプル7)
Crの含有量は、得られた蛍光X線スペクトルからFP法に基づいたノンスタンダード分析による半定量分析結果では、0.12000質量%であった。
【0103】
(サンプル8及び9)
サンプル8及び9のCrの含有量は、0.02000質量%及び0.01000質量%であった。
【0104】
(サンプル10)
Crの含有量が蛍光X線スペクトルからFP法による検出限界以下であったため、次のようにして、Cr含有量を推定した。すなわち、
図8Bに示すように、x軸に原料1モルに対するCrの添加量(モル%)、y軸にCr含有量(質量%)をとり、サンプル7〜9のプロットから最小二乗法にて直線の式を求めた。そして、この直線の式(y=0.121x,R
2=0.9893)から、サンプル10のCrの添加量に対応するCrの含有量を求めた。その結果、Crの含有量は0.00121質量%であった。
【0105】
(サンプル11)
Crの含有量は、上述した直線の式とサンプル11のCrの添加量に基づいて求めた。その結果、Crの含有量は0.00061質量%であった。
【0106】
(サンプル12)
Crの含有量は、上述した直線の式とサンプル12のCrの添加量に基づいて求めた。その結果、Crの含有量は0.00012質量%であった。
【0107】
<評価:Niの含有量>
(サンプル13)
Niの含有量は、得られた蛍光X線スペクトルからFP法に基づいたノンスタンダード分析による半定量分析結果では、0.22000質量%であった。
【0108】
(サンプル14及び15)
サンプル14及び15のNiの含有量は、0.02000質量%及び0.01000質量%であった。
【0109】
(サンプル16)
Niの含有量が蛍光X線スペクトルからFP法による検出限界以下であったため、次のようにして、Ni含有量を推定した。すなわち、
図9に示すように、x軸に原料1モルに対するNiの添加量(モル%)、y軸にNi含有量(質量%)をとり、サンプル13〜15のプロットから最小二乗法にて直線の式を求めた。そして、この直線の式(y=0.2198x,R
2=0.9998)から、サンプル16のNiの添加量に対応するNiの含有量を求めた。その結果、Niの含有量は0.00220質量%であった。
【0110】
(サンプル17)
Niの含有量は、上述した直線の式とサンプル17のNiの添加量に基づいて求めた。その結果、Niの含有量は0.00110質量%であった。
【0111】
(サンプル18)
Niの含有量は、上述した直線の式とサンプル18のNiの添加量に基づいて求めた。その結果、Niの含有量は0.00022質量%であった。
【0112】
<評価:内部量子効率>
(サンプル1)
サンプル1に係る蛍光体微粒子による試料(サンプル1に係る試料(SPECIMEN))について、分光蛍光光度計(日本分光社製、FP−8600)、φ60mm積分球を用いて内部量子効率を測定した。この内部量子効率の測定においては、サンプル1に係る試料に向けて励起光を照射した。励起光の波長を360nmとした。
【0113】
この内部量子効率の測定において、
図10に示すように、波長360nmの励起光に対して、中心波長がほぼ900nmの蛍光スペクトルピークが見られた。これは、後述するサンプル2〜18においても同様であった。
【0114】
そして、測定の結果、サンプル1に係る試料の内部量子効率は1%であった。
【0115】
(サンプル2〜6)
サンプル1と同様にして、サンプル2〜6に係る蛍光体微粒子による試料について、それぞれ内部量子効率を測定したところ、サンプル2は3%、サンプル3は14%、サンプル4は38%、サンプル5は48%、サンプル6は51%であった。
【0116】
(サンプル7〜12)
サンプル1と同様にして、サンプル7〜12に係る蛍光体微粒子による試料について、それぞれ内部量子効率を測定したところ、サンプル7は1%、サンプル8は1%、サンプル9は6%、サンプル10は36%、サンプル11は49%、サンプル12は51%であった。
【0117】
<評価:原料(Ba+Sn)1モルに対するFe、Cr及びNiの含有量>
先ず、サンプル1〜18の結果に基づいて、Fe含有量、Cr含有量及びNi含有量に対する内部量子効率の変化をプロットした。その結果を
図11に示す。
図11において、「●」で示すプロットがFe含有量に対応し、「◆」で示すプロットがCr含有量に対応し、「▲」で示すプロットがNi含有量に対応する。
【0118】
図11中、曲線Lfeは、Fe含有量に対する内部量子効率の変化を示す特性曲線であり、曲線Lcrは、Cr含有量に対する内部量子効率の変化を示す特性曲線であり、曲線Lniは、Ni含有量に対する内部量子効率の変化を示す特性曲線である。
【0119】
そして、特性曲線Lfe、Lcr及びLniから、最高性能の内部量子効率として50%、出力向上の効果を実現することができるレベルとして必要な内部量子効率として10%を設定した。さらに、上述の50%と10%の中間レベルである30%も設定した。
【0120】
さらに、特性曲線Lfeから、上述した3種類の性能に基づく内部量子効率に対応するFe含有量についての3段階のしきい値を読み取り、同様に、特性曲線Lcrから、Cr含有量についての3段階のしきい値を読み取った。また、特性曲線Lniから、Ni含有量についての3段階のしきい値を読み取った。その結果を下記表4に示す。
【0121】
【表4】
【0122】
また、上述した
図8Aに示す直線の式(y=0.1608x,R
2=0.992)から、Fe含有量についての3段階のしきい値に対応するFeの添加量(仕込みモル比)を求めた。
【0123】
上述した
図8Bに示す直線の式(y=0.121x,R
2=0.9893)から、Cr含有量についての3段階のしきい値に対応するCrの添加量(仕込みモル比)を求めた。
【0124】
上述した
図9に示す直線の式(y=0.2198x,R
2=0.9998)から、Ni含有量についての3段階のしきい値に対応するNiの添加量(仕込みモル比)を求めた。これらの結果を下記表5に示す。
【0125】
【表5】
【0126】
表5から、内部量子効率を向上させるには、蛍光体微粒子の組成でみた場合、Feが0.0700質量%以下、好ましくは0.0300質量%以下、さらに好ましくは0.0050質量%以下であることがわかる。仕込み濃度では、原料(Sn)1モルに対してFeが0.435モル%以下、好ましくは0.187モル%以下、さらに好ましくは0.031モル%以下であることがわかる。
【0127】
同様に、蛍光体微粒子の組成でみた場合、Crが0.0050質量%以下、好ましくは0.0020質量%以下、さらに好ましくは0.0004質量%以下であることがわかる。仕込み濃度では、原料(Sn)1モルに対してCrが0.041モル%以下、好ましくは0.017モル%以下、さらに好ましくは0.003モル%以下であることがわかる。
【0128】
同様に、蛍光体微粒子の組成でみた場合、Niが0.0200質量%以下、好ましくは0.0040質量%以下、さらに好ましくは0.0007質量%以下であることがわかる。仕込み濃度では、原料(Sn)1モルに対してNiが0.091モル%以下、好ましくは0.018モル%以下、さらに好ましくは0.003モル%以下であることがわかる。
【0129】
[第2実施例](太陽電池)
比較例1〜4、実施例1〜10について、発電量の違いを確認した。また、比較例2〜4、実施例1〜10について、比較例1に対する発電量の向上分を確認した。
【0130】
(実施例1)
実施例1は、
図6に示す太陽電池80と同様の構成を有する。すなわち、平面状に配列された複数の発電セル82と、これら発電セル82を被覆するように形成された封止層84と、封止層84上に積層されたガラス86と、ガラス86の表面に成膜された波長変換膜54とを有する。そして、波長変換膜54に含まれる蛍光体微粒子を以下のようにして作製した。すなわち、Ba及びSnを含む原料をプラズマ合成によって反応させ、上述したサンプル3と同様に、原料(Sn)1モルに対してFeを0.500モル%添加して作製した。蛍光体微粒子のFeの含有量は0.04000質量%である。
【0131】
(実施例2)
実施例2は、波長変換膜54に含まれる蛍光体微粒子を、上述したサンプル6と同様に、原料(Sn)1モルに対してFeを0.010モル%添加して作製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る太陽電池を作製した。蛍光体微粒子のFeの含有量は0.00161質量%である。
【0132】
(実施例3)
実施例3は、波長変換膜54に含まれる蛍光体微粒子を、上述したサンプル10と同様に、原料(Sn)1モルに対してCrを0.010モル%添加して作製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る太陽電池を作製した。蛍光体微粒子のCrの含有量は0.00121質量%である。
【0133】
(実施例4)
実施例4は、波長変換膜54に含まれる蛍光体微粒子を、上述したサンプル12と同様に、原料(Sn)1モルに対してCrを0.001モル%添加して作製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る太陽電池を作製した。蛍光体微粒子のCrの含有量は0.00012質量%である。
【0134】
(実施例5)
実施例5は、波長変換膜54に含まれる蛍光体微粒子を、上述したサンプル16と同様に、原料(Sn)1モルに対してNiを0.010モル%添加して作製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例5に係る太陽電池を作製した。蛍光体微粒子のNiの含有量は0.00220質量%である。
【0135】
(実施例6)
実施例6は、波長変換膜54に含まれる蛍光体微粒子を、上述したサンプル18と同様に、原料(Sn)1モルに対してNiを0.001モル%添加して作製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例6に係る太陽電池を作製した。蛍光体微粒子のNiの含有量は0.00022質量%である。
【0136】
(実施例7)
実施例7は、波長変換膜54に含まれる蛍光体微粒子を以下のようにして作製した点以外は実施例1と同様にして実施例7に係る太陽電池を作製した。すなわち、Ba及びSnを含む原料をプラズマ合成によって反応させ、原料(Sn)1モルに対してFe、Cr及びNiを添加しないで蛍光体微粒子を作製した。
【0137】
(実施例8)
実施例8は、波長変換膜54に含まれる蛍光体微粒子を以下のようにして作製した点以外は実施例1と同様にして実施例8に係る太陽電池を作製した。すなわち、Ba及びSnを含む原料をマイクロ波水熱合成によって反応させ、原料(Sn)1モルに対してFe、Cr及びNiを添加しないで蛍光体微粒子を作製した。
【0138】
(実施例9)
実施例9は、波長変換膜54に含まれる蛍光体微粒子を以下のようにして作製した点以外は実施例1と同様にして実施例9に係る太陽電池を作製した。すなわち、Ba及びSnを含む原料をチタン合金製容器を用いた超臨界水熱合成によって反応させ、原料(Sn)1モルに対してFe、Cr及びNiを添加しないで蛍光体微粒子を作製した。
【0139】
(実施例10)
実施例10は、波長変換膜54に含まれる蛍光体微粒子を以下のようにして作製した点以外は実施例1と同様にして実施例10に係る太陽電池を作製した。すなわち、Ba及びSnを含む原料を噴霧熱分解合成によって反応させ、原料(Sn)1モルに対してFe、Cr及びNiを添加しないで蛍光体微粒子を作製した。
【0140】
(比較例1)
比較例1は、
図12に示すように、平面状に配列された複数の発電セル82と、これら発電セル82上に積層された封止層84と、封止層84上に積層されたガラス86とを有する。
【0141】
(比較例2)
比較例2は、波長変換膜54に含まれる蛍光体微粒子を、上述したサンプル2と同様に、原料(Sn)1モルに対してFeを1.000モル%添加して作製したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2に係る太陽電池を作製した。蛍光体微粒子のFeの含有量は0.20000質量%である。
【0142】
(比較例3)
比較例3は、波長変換膜54に含まれる蛍光体微粒子を、上述したサンプル9と同様に、原料(Sn)1モルに対してCrを0.050モル%添加して作製したこと以外は、実施例1と同様にして比較例3に係る太陽電池を作製した。蛍光体微粒子のCrの含有量は0.01000質量%である。
【0143】
(比較例4)
比較例4は、波長変換膜54に含まれる蛍光体微粒子を、上述したサンプル14と同様に、原料(Sn)1モルに対してNiを0.100モル%添加して作製したこと以外は、実施例1と同様にして比較例4に係る太陽電池を作製した。蛍光体微粒子のNiの含有量は0.02000質量%である。
【0144】
(評価)
比較例1〜4、実施例1〜10の内訳、内部量子効率及び発電量(mW/cm
2)、並びに比較例2〜4、実施例1〜10の出力向上分(%)を下記表6に示す。向上分は、例えば実施例1では、(実施例1の発電量−比較例1の発電量)/比較例1の発電量で算出した。なお、下記表6の蛍光体微粒子の製法の項目において、プラズマ合成を用いた場合は「プラズマ」と表記し、マイクロ波水熱合成を用いた場合は「マイクロ波水熱」と表記した。また、チタン合金製容器を用いた超臨界水熱合成を用いた場合は「超臨界水熱」と表記し、噴霧熱分解合成を用いた場合は「噴霧熱分解」と表記した。
【0145】
【表6】
【0146】
比較例1、3及び4の発電量は共に12.20(mW/cm
2)であった。比較例2は比較例1と比して発電量が低かった。これに対して、実施例1〜10の発電量はいずれも比較例1よりも向上していた。特に、例えば実施例1及び2からわかるように、波長変換膜54に含まれる蛍光体微粒子へのFeの添加量が少ないほど発電量が高かった。これは、Cr、Niについても同様であり(実施例3〜6参照)、波長変換膜54に含まれる蛍光体微粒子へのCr、Niの添加量が少ないほど発電量が高かった。
【0147】
実施例7〜10から、蛍光体微粒子の製造過程において、Fe、Cr及びNiが添加されなければ、さらに発電量が向上することがわかる。また、実施例7〜10の結果から、蛍光体粒子の製造方法として、プラズマ合成と噴霧熱分解合成が最も優れており、その次にマイクロ波水熱合成、その次にチタン合金製容器を用いた超臨界水熱合成が優れていることがわかる。
【0148】
なお、本発明に係る蛍光体微粒子、蛍光体微粒子の製造方法、蛍光体薄膜、波長変換膜、波長変換デバイス及び太陽電池は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。