特許第6587677号(P6587677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6587677魚の生殖におけるニューロキニンBのアンタゴニスト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587677
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】魚の生殖におけるニューロキニンBのアンタゴニスト
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20191007BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20191007BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20191007BHJP
   A61K 38/04 20060101ALI20191007BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20191007BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20191007BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20191007BHJP
   A23K 20/147 20160101ALI20191007BHJP
【FI】
   C07K7/06ZNA
   A61P15/00 171
   A61P5/00
   A61K38/04
   A61P43/00 111
   A61K45/00
   A61P3/00 171
   A23K20/147
【請求項の数】10
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-502269(P2017-502269)
(86)(22)【出願日】2015年7月16日
(65)【公表番号】特表2017-527538(P2017-527538A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】IL2015050739
(87)【国際公開番号】WO2016009439
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2018年6月15日
(31)【優先権主張番号】62/025,618
(32)【優先日】2014年7月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517009578
【氏名又は名称】イッサム リサーチ デベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティー オブ エルサレム リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】レヴァヴィ−シヴァン,ベルタ
(72)【発明者】
【氏名】ギロン,チャイム
【審査官】 堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−017098(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/018097(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/089019(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
A23K
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Succ−Asp−Ile−Phe−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号1)、
Succ−Asp−Phe−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号2)、
Succ−Asp−Ser−Phe−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号3)、
Succ−Asp−Ile−D−Trp−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号4)、
Succ−Asp−D−Trp−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号5)、および
Succ−Asp−Ser−D−Trp−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号6)、
からなる群より選択されるペプチド模倣物であって、Succはスクシニルを表す、ペプチド模倣物。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチド模倣物を含む、組成物。
【請求項3】
少なくとも1種の許容される担体、希釈剤、塩または賦形剤を含む医薬組成物の形態であるか、あるいは少なくとも1種の栄養素、および任意で少なくとも1種の食物添加物、を含む食物組成物の形態である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
頭頂内投与、経口投与、および浸漬による投与からなる群より選択される経路による魚への投与あるいは通常の食物または水の摂取の一部としての魚への投与のために製剤化された、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
魚の生殖または成熟の少なくとも1つのパラメータの阻害に使用するための、請求項1に記載のペプチド模倣物または請求項2〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
魚の生殖または成熟の少なくとも1つのパラメータの阻害は、発情期を遅延させるか排除すること、早発性の発情期を遅延させるか排除すること、性決定を調節すること、性分化を調節すること、産卵、および、生殖と関係のあるホルモン依存的な問題またはプロセスを処置すること、からなる群より選択されるパラメータを含む、請求項5に記載のペプチド模倣物または組成物。
【請求項7】
魚の生殖または成熟の阻害は、処置される魚の重量を増加させる、請求項6に記載のペプチド模倣物または組成物。
【請求項8】
魚は、ティラピア、コイ、サケ、バス、ナマズおよびボラからなる群より選択される、請求項5に記載のペプチド模倣物または組成物。
【請求項9】
前記組成物は、非経口投与、経口投与、および浸漬による投与からなる群より選択される経路により魚に投与される、請求項5に記載のペプチド模倣物または組成物。
【請求項10】
前記食物組成物は、食物または水の摂取の一部として魚に投与される、請求項5に記載のペプチド模倣物または組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は魚の生殖の分野であり、具体的にはニューロキニンB(NKB)およびニューロキニンF(NKF)のアンタゴニストとしての活性を有するペプチド模倣物、ならびに魚の生殖器系の成熟を阻害するか遅延させることにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
生殖機能は、中枢因子および末梢因子からなる複雑なネットワークによって厳密に制御されており、このネットワークにおいて最も重要な因子はGnRHである。最近、ニューロペプチドであるキスペプチン(Kiss1によってコードされる)およびニューロキニンB(NKB、Tac3によってコードされる)が、生殖の異なる段階において重要であるとされた(Navarro VM. Front Endocrinol. 2012;3:48.)。ヒトでの研究により、NKBまたはニューロキニン3受容体(NK3R)をコードする遺伝子における機能喪失型変異は低ゴナドトロピン性性腺機能低下症および不妊症をもたらすことが明らかとなっている。
【0003】
ニューロキニンB(NKB)は、ペプチドのタキキニンファミリーのメンバーである。タキキニン3(tac3)遺伝子またはtac3受容体(NKBR)遺伝子における不活性化変異は、ヒトにおいて思春期の欠如および先天性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症と関連している。これは、NKBがヒトの生殖において重要な役割を担う可能性があることを示唆する。
【0004】
NKBは、下垂体上の受容体を介する直接的作用およびゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)ニューロン上の受容体を介する間接的作用を有する。NKBはそれらの同族受容体に結合し、それらの活性を刺激し、これが次にゴナドトロピン分泌に必須のシグナルをもたらし、その結果として、生殖を支える下流の現象をゲート制御する。NKBは、視床下部−下垂体−性腺軸の重要な調節因子であり、ステロイドホルモンのフィードバックの調節、栄養調節および代謝調節など、広範囲の調節因子の標的である。
【0005】
エネルギー恒常性および生殖は、動物の生涯において最も重要なプロセスであり、密接に関連している。エネルギー恒常性および生殖を適切に調節することは、適応および生存にとって重要である。生殖はエネルギーを大量に消費するプロセスであり、エネルギーバランスのための調節因子と生殖のための調節因子との正確な相互作用が、これらの2つのプロセスの協調制御を可能にする。研究される魚種の大半において、性腺サイズの季節的な変動は、血清成長ホルモン(GH)濃度と負の相関関係にある。例えば、黄体形成ホルモン(LH)濃度が高い場合、性腺サイズの増大に起因して、GH濃度は低く、同時に体の成長が非常に遅い。
【0006】
魚は、非常に多様な生殖戦略を有し、種々の環境的ニッチに見出すことができ、性成熟についての種々のタイミング管理体系(timing regime)を用いる。他の脊椎動物と比較すると、魚は固有の特徴をいくつか有する。下垂体の細胞が混ざり合う四足類とは対照的に、魚では特定の領域に特定の細胞の固有の構成が存在する。魚は、GnRHによるゴナドトロピン産生細胞の調節について二元的様式を有し、これは、神経腺性のコンポーネントおよび神経血管性のコンポーネントの両方を組み合わせる。さらに、異なるニューロペプチドを分泌する異なる神経末端が下垂体を支配する。しかし、魚においてNKBニューロンまたはNKFニューロンが下垂体に投射しているかについては未だに不明である。
【0007】
これまでに、無脊椎動物から哺乳動物に至るまでの広範な種において数多くのタキキニンが同定されている。Tac1は、選択的スプライシングを介してサブスタンスP(SP)およびNKAの両方をコードする。Tac2/Tac3はペプチドNKBを産生し、Tac4はヘモキニン−1をコードする。
【0008】
哺乳動物のタキキニン受容体の3つのクラス(NK1、NK2、およびNK3)が同定されており、これらは、それぞれSP、NKA、およびNKBに対する優先的な結合親和性を有する。哺乳動物のTAC1およびTAC4は、活性を有するニューロペプチドを2種類生じさせるのに対し、TAC3は、1種類のニューロペプチド(すなわちNKB)のみを生じさせる唯一のTACである。
【0009】
最近になって、多くの魚種からタキキニン(tac)遺伝子およびtac受容体遺伝子が同定された(Biran 2012, PNAS 109:10269−10274)。系統発生解析により、魚類のTac3および哺乳動物のニューロキニン遺伝子は一系統から生じていることが示された。種々の魚種の間でNKBをコードする領域に高度な同一性が見出され、全てが共通のC末端配列を有していた。魚類のTac3遺伝子は2種類の推定タキキニンペプチドをコードするが、哺乳動物のオルソログは1種類のみをコードする。ニューロキニンF(NKF)と呼称される、魚の二番目の推定ペプチドは固有であり、試験された魚種の全てにおいて保存されていることが見出されている。
【0010】
ゼブラフィッシュのtac3aのmRNAレベルは、生後数週間の間に徐々に増加し、発情期でピークに達した。ゼブラフィッシュの脳において、tac3aおよびtac3bのmRNAは、生殖に関連する脳の特定領域で観察された(Biran et al., 2008, Biol Reprod 79:776−786)。さらに、1回のNKBaまたはNKFの腹腔内(ip)注射により、成熟した雌のゼブラフィッシュにおいてLHレベルが有意に増加し、tac3a遺伝子およびtac3r遺伝子の両方がエストロゲンによってアップレギュレートされた(Biran et al., 2012;上記のものと同じ文献)。これは、NKB/NKBR系が魚の生殖の神経内分泌による制御に関与する可能性があること、および生殖の神経内分泌による制御におけるNKB系の役割が脊椎動物において進化的に保存されていることを示唆する。
【0011】
ティラピアは、商業的に最も重要な養殖淡水魚の一種となっており、これは、ティラピアの成長能が高く、世代時間が短く、産卵が容易であり、耐病性であるためである。
【0012】
魚の脳によって分泌され生殖に関与する、ニューロキニンB(NKB)およびニューロキニンF(NKF)と称される最近になって同定されたニューロペプチドが、直接的な(下垂体レベルでの特異的受容体の活性化を介する)メカニズムまたは間接的な(脳を介する)メカニズムによって卵胞刺激因子(FSH)およびLHの放出を刺激できることが示された(Biran et al., 2014, Endocrinology 155, 4831−42)。
【0013】
本発明の発明者の一部に属する国際公開第WO2013/018097号は、魚におけるホルモン調節のためのNKBアゴニストおよびNKFアゴニスト、ならびに、具体的には発情期の開始を促進するため、排卵および産卵のタイミングと量を調節するため、生殖の同調または刺激のため、生殖細胞の分化を促進するため、卵黄形成を促進するため、GnRHの誘導のため、キスペプチンの誘導のため、視床下部の神経ホルモンのレベルの増加のため、LHまたはFSHのレベルを増加させるためおよび卵母細胞成熟の誘導のためのNKBアゴニストおよびNKFアゴニストを開示する。
【0014】
G. Drapeau et al(Regul. Peptides, 31, 125, 1990)は、哺乳動物におけるタキキニンNK3受容体の強力なアンタゴニストとして化合物SR142801(Trp,β−Ala−ニューロキニンA,4−10)を開示する。
【0015】
O’Harte, F.(J. Neurochem. 57 (6), 2086−2091, 1991)は、カエルRana ridibunda(ワライガエル)の脳からニューロキニンBと共に単離されたNK1タキキニン受容体アゴニストである、ラナキニン(Ranakinin)と称されるペプチド類似体を開示する。
【0016】
哺乳動物では、いくつかの小分子非ペプチド性NKBアンタゴニストが公知である。例えば、SB−222200(Sarau et al., 2000, J Pharmacol Exp Ther 295:373−381);オサネタント(Osanetant)(SR−142,801)およびタルネタント(talnetant)(SB 223412)(Sarau et al., 1997, J Pharmacol Exp Ther 281:1303−1311)。
【0017】
以前の刊行物は、受精を促進するためおよび成熟にかかる時間を短縮するための魚NKBペプチドアゴニスト、または哺乳動物NK−3アンタゴニストを開示したが、先行刊行物はいずれも、魚におけるNKBアンタゴニストを開示していない。魚における成熟の遅延および生殖パラメータの制御に使用するためのこのようなアンタゴニストの必要性は満たされていない。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、魚においてNKBアンタゴニストによりtac−3受容体の活性を阻害することで成熟および生殖を遅延させるか阻害することができるという発見に基づく。驚くべきことに、NKBペプチドおよびNKFペプチドの配列中の特定のアミノ酸残基の変更が、魚の生殖器系の成熟に対するそれらの活性をアゴニスト性からアンタゴニスト性に変化させるということが見出された。また、NKBアンタゴニストおよびNKFアンタゴニストを用いる、魚の成熟を阻害するためおよび魚におけるホルモン依存的な問題またはプロセスを処置するための方法、ならびに医薬組成物または食物組成物におけるNKBアンタゴニストおよびNKFアンタゴニストの使用も提供される。魚の生殖を阻害するか排除する、末梢で活性を有するペプチド系のNKBアンタゴニストおよびNKFアンタゴニスト(本明細書ではペプチド模倣物と称される)または他のアンタゴニストは、とりわけ、成長速度の増加および性決定における変化をもたらすことができる。
【0019】
一態様によれば、本発明は式I:
−NMeVal−X−Leu−Met−Z(式I)
のペプチド模倣物を提供し、ここで、
ペプチド模倣物は5〜10個のアミノ酸からなり、
は、1〜6個の天然または非天然のアミノ酸残基、および任意でN末端のキャッピング部分または修飾、のストレッチであり、
NMeValは、N−メチル−バリン残基またはN−メチル−D−バリン残基であり、
は、nが2〜6である−NH(CH−CO−であり、
Zは、アミド化、アシル化、還元化またはエステル化されていてよいペプチドのC末端を表す。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0020】
一部の実施形態によれば、Xは、L配置またはD配置の少なくとも1つの芳香族アミノ酸残基を含む。
【0021】
他の実施形態によれば、XはD−Trp残基を含む。
【0022】
一部の実施形態によれば、Xは、少なくとも1つの負電荷(酸性)アミノ酸残基を含む。
【0023】
一部の実施形態によれば、C末端はアミド化されている。
【0024】
一部の実施形態によれば、Xは、2個または3個のアミノ酸およびキャッピングされたN末端からなる。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0025】
一部の実施形態によれば、Xは、芳香族残基と負電荷(酸性)残基とN末端キャッピング部分とを含む2個または3個のアミノ酸残基からなる。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0026】
一部の実施形態によれば、Xは、脂肪族アミノ酸残基および極性非荷電残基から選択される残基を含む。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0027】
一部の実施形態によれば、脂肪族残基は、Ala、Ile、Leuからなる群より選択される。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0028】
一部の実施形態によれば、極性非荷電残基はSerおよびThrから選択される。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0029】
一部の実施形態によれば、Xは、Phe、DPhe、TrpおよびDTrpからなる群より選択される芳香族残基と、GluおよびAspから選択される負電荷(酸性)残基と、スクシニル(Succ)N末端キャッピング部分と、を含む。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0030】
さらに他の実施形態によれば、Xは、PheおよびDTrpから選択される芳香族残基と、Asp残基と、スクシニル(Succ)N末端キャッピング部分と、任意でIleおよびSerから選択される残基と、を含む。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0031】
一部の実施形態によれば、ペプチド模倣物は式II:
−NMeVal−βAla−Leu−Met−NH(式II)
のものであり、式中、Xは、Succ−Asp−Phe、Succ−Asp−DPhe、Succ−Asp−Trp、Succ−Asp−DTrp、Succ−Asp−Ile−Phe、Succ−Asp−Ile−DPhe、Succ−Asp−Ile−Trp、Succ−Asp−Ile−DTrp、Succ−Asp−Ser−Phe、Succ−Asp−Ser−DPhe、Succ−Asp−Ser−Trp、Succ−Asp−Ser−DTrp、Succ−Glu−Phe、Succ−Glu−DPhe、Succ−Glu−Trp、Succ−Glu−DTrp、Succ−Glu−Ile−Phe、Succ−Glu−Ile−DPhe、Succ−Glu−Ile−Trp、Succ−Glu−Ile−DTrp、Succ−Glu−Ser−Phe、Succ−Glu−Ser−DPhe、Succ−Glu−Ser−Trp、およびSucc−Glu−Ser−DTrpからなる群より選択される。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0032】
一部の実施形態によれば、配列番号7に記載される配列を含む5〜10個のアミノ酸残基からなるペプチド模倣物が提供される。
NMeVal−βAla−Leu−Met(配列番号7)
【0033】
一部の実施形態によれば、ペプチド模倣物は、配列番号7の配列と、少なくとも1つの芳香族アミノ酸残基と、少なくとも1つの負電荷アミノ酸残基と、を含む。
【0034】
一部の実施形態によれば、ペプチド模倣物は、配列番号7の配列と、少なくとも1つの芳香族アミノ酸残基と、少なくとも1つの負電荷アミノ酸残基と、脂肪族アミノ酸残基および極性非荷電残基から選択される少なくとも1つの残基と、を含む。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0035】
一部の実施形態によれば、ペプチド模倣物は、キャッピングされたN末端を含む。
【0036】
一部の実施形態によれば、ペプチド模倣物は、アミド化されたC末端を含む。
【0037】
一部の実施形態によれば、ペプチド模倣物は、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸残基、および任意でN末端キャッピング基、からなる。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0038】
一部の実施形態によれば、ペプチド模倣物は、5〜10個のアミノ酸残基、アミド化されたC末端、およびN末端キャッピング部分からなる。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0039】
一部の実施形態によれば、ペプチド模倣物は、配列番号7の配列と、Succ−Asp−Phe、Succ−Asp−DPhe、Succ−Asp−Trp、Succ−Asp−DTrp、Succ−Asp−Ile−Phe、Succ−Asp−Ile−DPhe、Succ−Asp−Ile−Trp、Succ−Asp−Ile−DTrp、Succ−Asp−Ser−Phe、Succ−Asp−Ser−DPhe、Succ−Asp−Ser−Trp、Succ−Asp−Ser−DTrp、Succ−Glu−Phe、Succ−Glu−DPhe、Succ−Glu−Trp、Succ−Glu−DTrp、Succ−Glu−Ile−Phe、Succ−Glu−Ile−DPhe、Succ−Glu−Ile−Trp、Succ−Glu−Ile−DTrp、Succ−Glu−Ser−Phe、Succ−Glu−Ser−DPhe、Succ−Glu−Ser−Trp、およびSucc−Glu−Ser−DTrpからなる群より選択される配列と、を含む6〜7個のアミノ酸残基からなる。
【0040】
一部の実施形態によれば、少なくとも1つのN末端キャッピング部分はジカルボン酸残基である。一部の実施形態によれば、少なくとも1つのN末端キャッピング部分は、スクシニル、オキサリル、マロニル、グルタリル、アジポイル、ピバロイル(pimaloyl)、スベロイル、およびアセチルからなる群より選択される。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0041】
一部の特定の実施形態によれば、ペプチド模倣物は、
Succ−Asp−Ile−Phe−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号1、Ant−1)、
Succ−Asp−Phe−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号2、Ant−2)、
Succ−Asp−Ser−Phe−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号3、Ant−3)、
Succ−Asp−Ile−D−Trp−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号4、Ant−4)、
Succ−Asp−D−Trp−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号5、Ant−5)、および
Succ−Asp−Ser−D−Trp−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号6、Ant−6)、
からなる群より選択され、ここでSuccはスクシニルを表す。
【0042】
以前から公知であるペプチドは本発明から除外されていることが明白に理解されるべきである。
【0043】
一部の実施形態によれば、ペプチド模倣物は透過性亢進部分をさらに含む。細胞内への化合物の透過性を能動的または受動的に促進するか、または亢進する、当技術分野において公知である任意の部分が、本発明によるペプチド模倣物に使用されてよい。透過性亢進部分は直接またはスペーサーもしくはリンカーを介してペプチド部分の任意の位置に連結されてよい。
【0044】
別の態様によれば、本発明は、式Iのペプチド模倣物を含む組成物を提供する。
【0045】
一部の実施形態によれば、式Iのペプチド模倣物を含む組成物は、医薬組成物および食物組成物から選択される。
【0046】
一部の実施形態によれば、組成物は式Iのペプチド模倣物を含み、ここでXはL配置またはD配置の少なくとも1つの芳香族アミノ酸残基を含む。
【0047】
一部の実施形態によれば、組成物は式Iのペプチド模倣物を含み、ここでXはD−Trp残基を含む。
【0048】
一部の実施形態によれば、組成物は式Iのペプチド模倣物を含み、ここでXは少なくとも1つの負電荷(酸性)アミノ酸残基を含む。
【0049】
一部の実施形態によれば、組成物は式Iのペプチド模倣物を含み、ここでC末端はアミド化されている。
【0050】
一部の実施形態によれば、組成物は式Iのペプチド模倣物を含み、ここでXは2個または3個のアミノ酸およびキャッピングされたN末端からなる。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0051】
一部の実施形態によれば、組成物は式Iのペプチド模倣物を含み、ここでXは、芳香族残基と負電荷(酸性)残基とアミド化されたC末端とN末端キャッピング部分とを含む2個または3個のアミノ酸残基からなる。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、組成物は式Iのペプチド模倣物を含み、ここでXは、脂肪族アミノ酸残基および極性非荷電残基から選択される残基を含む。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、組成物は式Iのペプチド模倣物を含み、ここで脂肪族残基は、Ala、Ile、およびLeuからなる群より選択される。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、組成物は式Iのペプチド模倣物を含み、ここで極性非荷電残基はSerおよびThrから選択される。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、組成物は式Iのペプチド模倣物を含み、ここでXは、Phe、DPhe、TrpおよびDTrpからなる群より選択される芳香族残基と、GluおよびAspから選択される負電荷(酸性)残基と、スクシニル(Succ)N末端キャッピング部分と、を含む。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、組成物は式Iのペプチド模倣物を含み、ここでXは、PheおよびDTrpから選択される芳香族残基と、Asp残基と、スクシニル(Succ)N末端キャッピング部分と、任意でIleおよびSerから選択される残基と、を含む。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、式II:
−NMeVal−βAla−Leu−Met−NH(式II)
のペプチド模倣物を含み、式中、Xは、Succ−Asp−Phe、Succ−Asp−DPhe、Succ−Asp−Trp、Succ−Asp−DTrp、Succ−Asp−Ile−Phe、Succ−Asp−Ile−DPhe、Succ−Asp−Ile−Trp、Succ−Asp−Ile−DTrp、Succ−Asp−Ser−Phe、Succ−Asp−Ser−DPhe、Succ−Asp−Ser−Trp、Succ−Asp−Ser−DTrp、Succ−Glu−Phe、Succ−Glu−DPhe、Succ−Glu−Trp、Succ−Glu−DTrp、Succ−Glu−Ile−Phe、Succ−Glu−Ile−DPhe、Succ−Glu−Ile−Trp、Succ−Glu−Ile−DTrp、Succ−Glu−Ser−Phe、Succ−Glu−Ser−DPhe、Succ−Glu−Ser−Trp、およびSucc−Glu−Ser−DTrpからなる群より選択される。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0058】
一部の実施形態によれば、組成物は、配列NMeVal−βAla−Leu−Met(配列番号7)を含む5〜10個のアミノ酸残基からなるペプチド模倣物を含む。
【0059】
一部の実施形態によれば、組成物は、配列番号7の配列と少なくとも1つの芳香族アミノ酸残基と少なくとも1つの負電荷アミノ酸残基とを含むペプチド模倣物を含む。
【0060】
一部の実施形態によれば、組成物は、配列番号7の配列と少なくとも1つの芳香族アミノ酸残基と少なくとも1つの負電荷アミノ酸残基と脂肪族アミノ酸残基および極性非荷電残基から選択される少なくとも1つの残基とを含むペプチド模倣物を含む。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0061】
一部の実施形態によれば、組成物は、キャッピングされたN末端を含むペプチド模倣物を含む。
【0062】
一部の実施形態によれば、組成物は、アミド化されたC末端を含むペプチド模倣物を含む。
【0063】
一部の実施形態によれば、組成物は、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸残基と任意でN末端キャッピング基とからなるペプチド模倣物を含む。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0064】
一部の実施形態によれば、組成物は、5〜10個のアミノ酸残基とアミド化されたC末端とN末端キャッピング部分とからなるペプチド模倣物を含む。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0065】
一部の実施形態によれば、組成物は、配列番号7の配列と、Succ−Asp−Phe、Succ−Asp−DPhe、Succ−Asp−Trp、Succ−Asp−DTrp、Succ−Asp−Ile−Phe、Succ−Asp−Ile−DPhe、Succ−Asp−Ile−Trp、Succ−Asp−Ile−DTrp、Succ−Asp−Ser−Phe、Succ−Asp−Ser−DPhe、Succ−Asp−Ser−Trp、Succ−Asp−Ser−DTrp、Succ−Glu−Phe、Succ−Glu−DPhe、Succ−Glu−Trp、Succ−Glu−DTrp、Succ−Glu−Ile−Phe、Succ−Glu−Ile−DPhe、Succ−Glu−Ile−Trp、Succ−Glu−Ile−DTrp、Succ−Glu−Ser−Phe、Succ−Glu−Ser−DPhe、Succ−Glu−Ser−Trp、およびSucc−Glu−Ser−DTrpからなる群より選択される配列と、を含む6〜7個のアミノ酸残基からなるペプチド模倣物を含む。
【0066】
一部の実施形態によれば、少なくとも1つのN末端キャッピング部分は、スクシニル、オキサリル、マロニル、グルタリル、アジポイル、ピバロイル(pimaloyl)、スベロイル、アセチル、および他のジカルボン酸残基からなる群より選択される。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0067】
一部の特定の実施形態によれば、組成物は、
Succ−Asp−Ile−Phe−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号1、Ant−1)、
Succ−Asp−Phe−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号2、Ant−2)、
Succ−Asp−Ser−Phe−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号3、Ant−3)、
Succ−Asp−Ile−D−Trp−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号4、Ant−4)、
Succ−Asp−D−Trp−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号5、Ant−5)、および
Succ−Asp−Ser−D−Trp−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号6、Ant−6)、
からなる群より選択されるペプチド模倣物を含み、ここでSuccはスクシニルを表す。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0068】
本発明による医薬組成物は、上記で定義されるようなNKBまたはNKFのアンタゴニストであるペプチド模倣物と、任意で、許容される担体、希釈剤、塩または賦形剤と、を含む。
【0069】
本発明による食物組成物は、上記で定義されるようなNKBアンタゴニストであるペプチド模倣物と、任意で食物添加物と、を含む。当技術分野において公知である任意の食物添加物が、本発明による食物組成物に使用されてよい。これには、限定されるものではないが、着色添加物、味付け添加物等が包含される。また、限定されるものではないがタンパク質、炭水化物、脂肪、ミネラル、ビタミン等を含め、栄養素も本発明の食物組成物に含まれてよい。本発明による食物組成物は、活性を有する少なくとも1種のNKBまたはNKFのアンタゴニストに加えて、栄養素および食物添加物を含んでよい。
【0070】
一部の実施形態によれば、食物組成物は、少なくとも1種のNKBまたはNKFのアンタゴニストでコーティングされた食物ペレットを含む。
【0071】
NKBアンタゴニストとしての使用のための上記で定義されるような医薬組成物または食物組成物も本発明の範囲内に属する。
【0072】
本発明によるペプチド模倣物を含む組成物は、非経口投与および経腸投与を含め、当技術分野において公知である任意の様式または経路で魚に投与されてよい。一部の実施形態によれば、非経口投与には、限定されるものではないが、任意のタイプの注射が包含される。一部の実施形態によれば、経腸投与には、限定されるものではないが、経口投与(食物への添加物としての投与を包含する)、浸漬による投与(飲料水への添加物としての投与を包含する)、および胃管栄養法による胃内投与が包含される。
【0073】
一部の実施形態によれば、組成物は、通常の食物または水の摂取の一部として魚に投与される。
【0074】
一部の実施形態によれば、組成物は、鰓に取り込まれる一定量の水の中で魚に投与される。
【0075】
別の態様によれば、本発明は、魚の生殖または成熟の少なくとも1つのパラメータの阻害に使用するためのNKBアンタゴニストを含む組成物も提供する。
【0076】
本発明によるNKBアンタゴニストは、魚類タキキニン3(tac3)受容体に結合してその活性を阻害できる化合物である。また、NKFアンタゴニストもNKBアンタゴニストの定義内に属する。
【0077】
一部の実施形態によれば、魚の生殖または成熟の少なくとも1つのパラメータの阻害に使用するための組成物は、上記で定義されるような式Iのペプチド模倣物、上記で定義されるような式IIのペプチド模倣物、および配列番号7の配列を含む5〜10個のアミノ酸残基のペプチド模倣物からなる群より選択されるペプチド模倣物を含む。
【0078】
一部の実施形態によれば、魚の生殖または成熟の少なくとも1つのパラメータの阻害に使用するための組成物は、
Succ−Asp−Ile−Phe−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号1、Ant−1)、
Succ−Asp−Phe−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号2、Ant−2)、
Succ−Asp−Ser−Phe−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号3、Ant−3)、
Succ−Asp−Ile−D−Trp−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号4、Ant−4)、
Succ−Asp−D−Trp−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号5、Ant−5)、および
Succ−Asp−Ser−D−Trp−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号6、Ant−6)、
からなる群より選択されるペプチド模倣物を含み、ここでSuccはスクシニルを表す。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0079】
他の実施形態によれば、魚の生殖または成熟の少なくとも1つのパラメータの阻害に使用するための組成物は、非ペプチド性NKBアンタゴニストを含む。
【0080】
一部の特定の実施形態によれば、魚の生殖または成熟の少なくとも1つのパラメータの阻害に使用するための組成物は、(S)−(2)−N−(a−エチルベンジル)−3−メチル−2−フェニルキノリン−4−カルボキサミド(SB−222200とも表記される)、(S)−(1)−N−{{3−[1−ベンゾイル−3−(3,4−ジクロロフェニル)ピペリジン−3−イル]プロプ−1−イル}−4−フェニルピペリジン−4−イル}−N−メチルアセトアミド(オサネタントおよびSR−142,801とも表記される)、および(S)−(2)−N−(a−エチルベンジル)−3−ヒドロキシ−2−フェニルキノリン−4−カルボキサミド(タルネタントおよびSB 223412とも表記される)からなる群より選択される非ペプチド性NKBアンタゴニストを含む。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0081】
さらに別の態様によれば、本発明は、魚の生殖または成熟の少なくとも1つのパラメータを阻害する方法であって、NKBアンタゴニストを含む組成物を魚に投与することを含む方法を提供する。
【0082】
一部の実施形態によれば、組成物は、医薬組成物および食物組成物からなる群より選択される。
【0083】
魚類tac3受容体に結合してその活性を阻害できる任意のNKBアンタゴニスト化合物が、この態様に従って使用されてよい。
【0084】
一部の実施形態によれば、方法は、上記で定義されるような式Iのペプチド模倣物、上記で定義されるような式IIのペプチド模倣物、および配列番号7の配列を含む5〜10個のアミノ酸残基のペプチド模倣物からなる群より選択されるペプチド模倣物を含む組成物を魚に投与することを含む。
【0085】
一部の実施形態によれば、組成物は、
Succ−Asp−Ile−Phe−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号1、Ant−1)、
Succ−Asp−Phe−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号2、Ant−2)、
Succ−Asp−Ser−Phe−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号3、Ant−3)、
Succ−Asp−Ile−D−Trp−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号4、Ant−4)、
Succ−Asp−D−Trp−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号5、Ant−5)、および
Succ−Asp−Ser−D−Trp−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号6、Ant−6)、
からなる群より選択されるペプチド模倣物を含み、ここでSuccはスクシニルを表す。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0086】
他の実施形態によれば、組成物は非ペプチド性NKBアンタゴニストを含む。
【0087】
一部の特定の実施形態によれば、組成物は、(S)−(2)−N−(a−エチルベンジル)−3−メチル−2−フェニルキノリン−4−カルボキサミド(SB−222200とも表記される)、(S)−(1)−N−{{3−[1−ベンゾイル−3−(3,4−ジクロロフェニル)ピペリジン−3−イル]プロプ−1−イル}−4−フェニルピペリジン−4−イル}−N−メチルアセトアミド(オサネタントおよびSR−142,801とも表記される)、および(S)−(2)−N−(a−エチルベンジル)−3−ヒドロキシ−2−フェニルキノリン−4−カルボキサミド(タルネタントおよびSB 223412とも表記される)からなる群より選択される非ペプチド性NKBアンタゴニストを含む。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0088】
魚の生殖または成熟の少なくとも1つのパラメータを阻害する方法において投与される、本発明による医薬組成物は、NKBアンタゴニストと、任意で、許容される担体、希釈剤、塩または賦形剤と、を含む。
【0089】
魚の生殖または成熟の少なくとも1つのパラメータを阻害する方法において投与される、本発明による食物組成物は、NKBアンタゴニストと、任意で食物添加物と、を含む。本発明による食物組成物は栄養素を含んでもよく、また、限定されるものではないがタンパク質、炭水化物、脂肪、ミネラル、ビタミン等を含め、食物添加物が本発明の食物組成物に含まれてもよい。
【0090】
魚類の生殖または成熟の少なくとも1つのパラメータの阻害には、限定されるものではないが、一般的には発情期を遅延させるか排除すること、または特に早発性の発情期を遅延させるか排除すること;性(性別)の決定および分化(性が決定された後の性腺の発達のプロセス)ならびに産卵(卵および精子の放出)を調節することが包含される。また、生殖と関係のある、魚におけるホルモン依存的な問題またはプロセスの処置も範囲内に包含される。
【0091】
一部の実施形態によれば、魚類の生殖または成熟の阻害は、処置される魚の重量を増加させる。
【0092】
本発明によれば、魚には、養殖魚、食用魚および観賞魚を含め、任意の綱、亜綱、目、科または属の任意のタイプの魚が包含される。一部の非限定的な実施形態によれば、魚は、ティラピア、コイ、サケ、バス、ナマズおよびボラからなる群より選択される。
【0093】
本発明の方法に従う魚へのNKBアンタゴニストの投与は、限定されるものではないが非経口投与、経口投与および浸漬による投与を含め、当技術分野において公知である任意の様式で実施されてよい。
【0094】
一部の実施形態によれば、NKBアンタゴニストは、食物または水の摂取の一部として魚に投与される。
【0095】
一部の実施形態によれば、化合物は、鰓に取り込まれる一定量の水の中で魚に投与される。
【0096】
本発明のさらなる実施形態および適用可能性の全範囲は、以下で提示される詳細な説明から明らかとなるであろう。しかし、詳細な説明および特定の例は本発明の好ましい実施形態を示すものの、これらは例示として提示されるに過ぎないということが理解されるべきである。これは、本発明の趣旨および範囲に含まれる様々な変更および改変が、この詳細な説明から当業者には明らかとなるためである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1図1Aおよび図1Bは、ティラピアでのシグナル伝達の阻害における6種のペプチド模倣物の効果を示す(図1A:CRE活性化、図1B:SRE活性化)。各アンタゴニストを異なる濃度で1×10−8M(=0.1nM)のNKBと同時に添加した。ティラピアNKBはルシフェラーゼ活性を1.8倍増加させた。様々なポリペプチドによるこの応答の低下が示されている。図1Cは、CRE活性化モデルにおける様々なNKB類似体およびNKF類似体のアゴニスト活性を比較して示す。
図2図2Aおよび図2Bは、ゼブラフィッシュでのシグナル伝達の阻害における6種のペプチド模倣物の効果を示す(図2A:CRE活性化、図2B:SRE活性化)。ゼブラフィッシュNKBはシグナル伝達活性を3倍超増加させた。各アンタゴニストを異なる濃度で1×10−8M(=0.1nM)のNKBと同時に添加した場合のペプチド模倣物の効果を試験した。
図3図3Aおよび図3Bは、ヒトの受容体およびリガンドを陽性対照として用いて、ティラピアtac3rをトランスフェクトしたCOS−7細胞でのCRE−Lucに対するNKBアンタゴニストSB222200の効果を示す。図3A:hNKB、ティラピアNKBまたはティラピアNKFと比較した場合のルシフェラーゼ活性に対する非ペプチド性アンタゴニスト単独の効果。図3B:0.1nMの天然リガンド(NKBまたはNKF)と同時に添加された種々の濃度のアンタゴニストのルシフェラーゼ活性に対する効果。
図4図4Aおよび図4Bは、ヒトの受容体およびリガンドを陽性対照とした場合の、ティラピアtac3rをトランスフェクトしたCOS−7細胞でのCRE−Lucに対するNKBアンタゴニスト(オサネタント(SR−142,801))の効果を表す。図4A:0.1nM(10−8M)のhNKB、ティラピアNKBまたはティラピアNKFと比較した、ルシフェラーゼ活性に対する非ペプチド性アンタゴニスト単独の効果。図4B:0.1nMの天然リガンド(NKBまたはNKF)と同時に添加された種々の濃度のアンタゴニストの効果。
図5図5Aおよび図5Bは、ティラピアにおけるFSH(図5A)およびLH(図5B)の放出に対するSB222200(10、100または500μg/kg体重)のNKBアンタゴニスト活性を試験するインビボでの実験の結果を示す。
図6図6は、対照の魚と対比した、処置された魚の精巣由来の性腺の組織学的観察を表す。魚の精巣は組織化されてシストとなっている。
図7】NKBアンタゴニストSB222200、NKBアンタゴニストAnt−4、または対照を注射された魚の精液量。
図8】14日間にわたってSB222200またはNKBアンタゴニストAnt−4を注射された魚における11−ケトテストステロン(11KT)のレベル。
図9】SB2222000、またはNKBアンタゴニストAnt−6の注射(2週間にわたって48時間ごとに500μg/kg BW、n=1群あたり25匹の魚)に応答する成体雄ティラピアの成長速度。
図10】SB222200またはNKBアンタゴニストAnt−6のいずれかを注射された魚の生殖腺重量指数(GSI)。
図11】27日目の時点での、注射された魚の精巣における増殖細胞核抗原(PCNA)の発現レベル。
図12図12Aおよび図12B:若魚へのアンタゴニストの給餌に応答する成長。図12A:アンタゴニスト有りおよびアンタゴニスト無しの場合の魚の成長速度(グラム)。図12B図12Aの魚の代表的な写真。左側の3匹の魚は対照の魚であり、右側の3匹の魚はアンタゴニストAnt−6を給餌された。
図13図13は、サケtac3rをトランスフェクトしたCOS−7細胞でのCRE−Lucに対するNKBアンタゴニストNo.4およびNo.6の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0098】
本発明は、魚の生殖の阻害剤ならびに魚の成熟および成長を制御するための方法を提供する。本発明は、tac−3リガンドであるNKBおよびNKFのペプチド系アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストによるタキキニン3受容体(tac−3受容体)の活性の阻害に基づく。
【0099】
本発明の一部の実施形態によれば、NKBアンタゴニストは、以下の式:
−X−X−NMeVal−X−Leu−Met−NH
のペプチド系化合物(ペプチド模倣物)であり、式中、
は、任意のアミノ酸または非天然アミノ酸模倣物であるか、あるいは存在せず(アミノ酸無し)、
は、任意のアミノ酸または非天然アミノ酸模倣物であるか、あるいは存在せず(アミノ酸無し)、
は、任意のアミノ酸(好ましくはD芳香族アミノ酸、より好ましくはD−trp)であるか、あるいは存在せず(アミノ酸無し)、
は、n=2〜6である−NH(CH−CO−タイプのスペーサーであるか、あるいはn=1〜6である−(Pro)−タイプのスペーサーである。
【0100】
本発明は、5〜10個のアミノ酸、および任意でN末端キャッピング部分、のペプチド模倣物を提供し、ここでペプチド模倣物は、
(i)式I:X−NMeVal−X−Leu−Met−Zの化合物であって、式中、
は、1〜6個の天然または非天然のアミノ酸残基のストレッチであり、
NMeValは、N−メチル−バリン残基またはN−メチル−D−バリン残基であり、
は、nが2〜6である−NH(CH−CO−であり、
Zは、アミド化、アシル化、還元化またはエステル化されていてよいペプチドのC末端を表す、
化合物、
(ii)式II:X−NMeVal−X−Leu−Met−NHの化合物であって、式中、
は、Succ−Asp−Phe、Succ−Asp−DPhe、Succ−Asp−Trp、Succ−Asp−DTrp、Succ−Asp−Ile−Phe、Succ−Asp−Ile−DPhe、Succ−Asp−Ile−Trp、Succ−Asp−Ile−DTrp、Succ−Asp−Ser−Phe、Succ−Asp−Ser−DPhe、Succ−Asp−Ser−Trp、Succ−Asp−Ser−DTrp、Succ−Glu−Phe、Succ−Glu−DPhe、Succ−Glu−Trp、Succ−Glu−DTrp、Succ−Glu−Ile−Phe、Succ−Glu−Ile−DPhe、Succ−Glu−Ile−Trp、Succ−Glu−Ile−DTrp、Succ−Glu−Ser−Phe、Succ−Glu−Ser−DPhe、Succ−Glu−Ser−Trp、およびSucc−Glu−Ser−DTrpからなる群より選択され、
は、βAlaである、
化合物、および
(iii)配列NMeVal−βAla−Leu−Met(配列番号7)を含む化合物、
からなる群より選択される。
【0101】
本発明によるペプチド模倣物を含む組成物およびそれらの使用のための方法も提供される。
【0102】
一部の特定の実施形態によれば、本発明の組成物は、Ant−1〜Ant−6:
Succ−Asp−Ile−Phe−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号1、Ant−1)、
Succ−Asp−Phe−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号2、Ant−2)、
Succ−Asp−Ser−Phe−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号3、Ant−3)、
Succ−Asp−Ile−D−Trp−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号4、Ant−4)、
Succ−Asp−D−Trp−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号5、Ant−5)、および
Succ−Asp−Ser−D−Trp−N(Me)Val−βAla−Leu−Met−NH(配列番号6、Ant−6)、
からなる群より選択される化合物を活性成分として含む。
【0103】
本発明のペプチドは、好ましくは、当技術分野において公知である従来の合成手法を用いて(例えば、ペプチド模倣物の方法論を含む化学合成手法によって)合成される。これらの方法には、排他的固相合成、部分的固相合成法、フラグメント縮合、古典的溶液合成が包含される。固相ペプチド合成の手順は当技術分野において周知である。当業者は、例えばt−Boc化学法またはFmoc化学法などの標準的な化学法を用いて自動ペプチド合成装置を使用することにより本発明のペプチドのいずれをも合成してよい。合成ペプチドは分取高速液体クロマトグラフィーによって精製でき、その組成はアミノ酸配列決定によって確認できる。ペプチド部分と透過性部分との結合は、当技術分野において公知である任意の方法を用いて固相化学法または溶液相化学法のいずれかにより実施されてよい。本発明の好ましい化合物の一部は、溶液相合成法を用いて便利に調製されてよい。本発明の化合物のような化合物を調製するための当技術分野において公知である他の方法を使用でき、これらの方法は本発明の範囲内に含まれる。
【0104】
本発明によるN末端のキャッピングまたは修飾は、化学的部分を末端アミンに共有結合させることによるペプチド配列の変更を表し、これは電荷、活性および/またはアミノペプチダーゼによる切断に対する安定性の改変をもたらす。
【0105】
透過性亢進部分の非限定的な例としては、脂肪酸、ステロイドおよびかさ高い芳香族または脂肪族の化合物などの疎水性部分;ステロイド、ビタミンおよび糖、天然および非天然のアミノ酸ならびにトランスポーターペプチドなどの、細胞膜受容体または細胞膜担体が存在する可能性のある部分が挙げられる。一部の実施形態によれば、疎水性部分は脂質部分またはアミノ酸部分である。
【0106】
透過性亢進部分は直接またはスペーサーを介してペプチド部分の任意の位置に連結されてよい。特定の実施形態によれば、細胞透過性部分はペプチド部分のアミノ末端に連結される。任意選択の連結用スペーサーは、限定されるものではないがアミン、アミド、カルバメート、チオエーテル、オキシエーテル、スルホンアミド結合等を含む任意の好適な化学基を含む様々な長さおよび立体構造のものであってよい。このようなスペーサーの非限定的な例としては、アミノ酸、スルホンアミド誘導体、アミノチオール誘導体およびアミノアルコール誘導体が挙げられる。
【0107】
本明細書において使用される用語「ペプチド」または「ペプチド系」は、天然の(遺伝学的にコードされた)、非天然の、および/または化学修飾された、アミノ酸残基を包含することを意味し、各残基は、ペプチド結合または非ペプチド結合によって互いに連結されたアミノ末端およびカルボキシ末端を有することを特徴とする。アミノ酸残基は本願の明細書および特許請求の範囲の全体にわたって、当技術分野において一般的に知られているように1文字コードまたは3文字コードのいずれかによって表される。本発明のペプチドおよびペプチド模倣物は、好ましくは、直鎖状形態で利用される。ただし、環化がペプチドの特性を大きく妨げない場合には環状形態のペプチドも利用できることが理解されるであろう。
【0108】
本発明において使用されるアミノ酸は、市販されているか通常の合成法によって入手できるアミノ酸である。特定の残基は、ペプチドへの組み込みに特別な方法を必要とする可能性があり、ペプチド配列に対する逐次合成、分岐的合成または収束合成のアプローチが本発明において有用である。天然コードアミノ酸およびそれらの誘導体は、IUPAC規則に従って3文字コードで表される。指示が無い場合には、L異性体またはD異性体のいずれかが使用されてよい。アミノ酸の前に「D」が記載される場合、D異性体が使用される。
【0109】
当業者に公知であるアミノ酸の保存的置換は本発明の範囲内に属する。保存的アミノ酸置換には、1つのアミノ酸を同じタイプの官能基または側鎖を有する別のアミノ酸(例えば脂肪族、芳香族、正電荷、負電荷)で置き換えることが包含される。これらの置換は、経口でのバイオアベイラビリティ、標的タンパク質に対する親和性、代謝安定性、中枢神経系への浸透、特定の細胞集団への標的化等を向上させる可能性がある。当業者であれば、コードされる配列中の一つのアミノ酸または僅かな割合のアミノ酸を変更、付加または欠失させる、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の配列に対する個々の置換、欠失または付加は、その変更が化学的に類似するアミノ酸によるアミノ酸置換をもたらす「保存的に改変された異型」であると理解するであろう。機能的に類似するアミノ酸を提示する保存的置換の表は当技術分野において周知である。
【0110】
以下は、6つの群に分けるアミノ酸分類の例であり、各群は、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む。
(1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);
(2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
(3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
(4)アルギニン(R)、リジン(K);
(5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
(6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0111】
何らかの形で異なる群(例えば、脂肪族、極性、非極性、親水性、疎水性等)に分ける他の分類も当技術分野において公知であり、本発明による保存的アミノ酸置換のために使用できる。
【0112】
また、ペプチドの塩、類似体、および本発明のペプチドの化学的誘導体も本発明の範囲内に包含される。
【0113】
本明細書において使用される場合、用語「塩」は、カルボキシル基の塩およびペプチド分子のアミノ基またはグアニド基の酸付加塩の両方を指す。カルボキシル基の塩は当技術分野において公知の手段によって形成されてよく、カルボキシル基の塩には無機塩(例えばナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、三価鉄塩または亜鉛塩等)、および有機塩基との塩(例えばトリエタノールアミン、ピペリジン、プロカイン等などのアミンにより形成される塩など)が包含される。酸付加塩には、例えば、鉱酸(例えば酢酸またはシュウ酸など)との塩が包含される。また、塩は本明細書において、ハイドロゲルの形成および/またはカルシウム鉱物の石灰化を促進するためにペプチドの溶液に添加されるイオン性の成分も指す。
【0114】
本明細書において使用される「化学的誘導体」は、遊離カルボキシ基のエステルおよびアミド、遊離アミノ基のアシル誘導体およびアルキル誘導体、遊離ヒドロキシ基のリン酸エステルおよびエーテルなどの通常はペプチド分子の一部ではない1つ以上の化学的部分を含むペプチドを指す。このような修飾は、ペプチドの標的アミノ酸残基を、選択された側鎖または末端の残基と反応できる有機誘導体化剤と反応させることによって分子に導入されてよい。好ましい化学的誘導体には、リン酸化されたペプチド、C末端がアミド化されたペプチド、またはN末端がアセチル化されたペプチドが包含される。
【0115】
本明細書において使用される本発明のペプチドの「官能基誘導体」は、当技術分野において公知の手段によって、残基上の側鎖またはN末端基もしくはC末端基として存在する官能基から調製される可能性のある誘導体を包含し、それらが医薬的に許容されるものである(すなわち、それらがペプチドの活性を損なわず、それを含む組成物に毒性を付与せず、それらの抗原特性に悪影響を及ぼさない)限り本発明に包含される。これらの誘導体としては、例えば、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニアまたは第一級アミンもしくは第二級アミンとの反応により生成されるカルボキシル基のアミド、アシル部分(例えばアルカノイル基または炭素環式アロイル基)との反応により形成されるアミノ酸残基の遊離アミノ基のN−アシル誘導体、あるいはアシル部分との反応により形成される遊離ヒドロキシル基(例えばセリン残基またはトレオニン残基のもの)のO−アシル誘導体が挙げられる。
【0116】
用語「ペプチド類似体」は、1つ以上のアミノ酸の変更または1つ以上のアミド結合の修飾/置換を除けば本発明に従うアミノ酸配列を有する分子を示す。ペプチド類似体は、天然または非天然のアミノ酸残基によるアミノ酸の置換および/または付加、ならびに天然では生じない化学修飾を含む。ペプチド類似体にはペプチドの模倣物が包含される。ペプチドの模倣物または「ペプチド模倣物」は、本発明によるペプチドが少なくとも1つの非コード残基または非ペプチド結合を含むように修飾されているということを意味する。このような修飾としては、例えば、1つ以上の残基のアルキル化(および、より具体的にはメチル化)、非天然アミノ酸の挿入または非天然アミノ酸による天然アミノ酸の置換、他の共有結合によるアミド結合の置き換えが挙げられる。本発明によるペプチド模倣物は任意で、ウレア結合、カルバメート結合、スルホンアミド結合、ヒドラジン結合、または任意の他の共有結合などのアミド置換結合である少なくとも1つの結合を含んでもよい。適切な「類似体」の設計はコンピュータによって補助されてよい。本発明による追加的なペプチド類似体は特定のペプチドまたはペプチド類似体の配列を逆順で含み、すなわち、ペプチド配列においてアミノ酸が、天然タンパク質または活性を有することが特定された特定のペプチドもしくは類似体において出現するアミノ酸の順番とは逆順で連結されている。完全に非ペプチドであるか部分的に非ペプチドであるかにかかわらず、本発明によるペプチド模倣物は、そのペプチド模倣物の基礎となっているペプチド中の基の三次元配置に非常に類似する化学的部分の空間的配置をもたらす。この類似する活性部位構造の結果として、ペプチド模倣物は生体系に対して、ペプチドの生物活性に類似する効果を有する。
【0117】
修飾アミノ酸残基は、そのアミノ酸残基の官能性が保存される限り、または官能性が変化する場合(例えば置換フェニルアラニンによるチロシンの置換)には、その修飾が、修飾残基を含むペプチドの活性を損なわない限り、任意の基または結合が欠失、付加、または異なる基もしくは結合による置換によって修飾されたアミノ酸残基である。
【0118】
本発明による「ペプチドコンジュゲート」は、別の部分(ペプチド性部分または非ペプチド性部分のいずれか)が直接またはリンカーを介して共有結合されている血管促進ペプチド(blood−vessel promoting peptide)の配列を含む分子を表す。
【0119】
用語「リンカー」は、細胞透過性部分とペプチドまたはペプチド模倣物とを共有結合で連結することを目的とする化学的部分、任意のタイプの直接的な化学結合、またはスペーサーを表す。スペーサーは、透過性亢進部分とペプチドとの間に距離を持たせるために使用されてよい。
【0120】
「透過性」は、薬剤または物質が障壁、膜、または皮膚層を通って浸透、充満、または拡散する能力を指す。「細胞透過性」部分または「細胞浸透」部分は、膜を通じた分子の浸透を促進するか向上させることができる、当技術分野において公知である任意の分子を指す。非限定的な例としては、脂質、脂肪酸、ステロイドおよびかさ高い芳香族または脂肪族の化合物などの疎水性部分;ステロイド、ビタミンおよび糖、天然および非天然のアミノ酸、トランスポーターペプチド、ナノ粒子ならびにリポソームなどの、細胞膜受容体または細胞膜担体が存在する可能性のある部分が挙げられる。
【0121】
用語「生理学的に許容される担体」または「希釈剤」または「賦形剤」は、医薬製剤に好適な水性または非水性の流体を指す。さらに、用語「医薬的に許容される担体または賦形剤」は、少なくとも1種の担体または賦形剤を指し、担体および/または賦形剤の混合物を包含する。用語「治療剤」は、患者における疾病、苦痛、疾患または傷害の処置(予防、診断、軽減、または治癒を包含する)に使用されてよい任意の医薬、薬物または予防薬を指す。
【0122】
薬理学
他の考察は別として、本発明の新規の活性成分がペプチド、ペプチド類似体またはペプチド模倣物であるという事実は、その製剤がこれらのタイプの化合物の送達に好適であるということを決定づける。一般的にペプチドは、胃酸または腸内酵素による消化に対して感受性であるために経口投与にはあまり適さないが、代謝的に安定であり且つ経口で生体利用可能なペプチド模倣類似体を設計および提供するために、新規の方法が使用されている。
【0123】
本発明の医薬組成物は、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、関節内投与、病巣内投与、吸入による投与または非経口投与など、任意の好適な手段によって投与されてよく、その投与経路のために特別に製剤化される。組成物は、投与経路に応じて製剤化される。
【0124】
本発明の医薬組成物は、当技術分野において周知のプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、粉砕、微粉砕、糖衣錠作製、粉末化(levigating)、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥のプロセスによって、製造されてよい。
【0125】
従って、本発明に従う使用のための医薬組成物は、医薬的に使用できる製剤への活性化合物の加工を容易にする、賦形剤および助剤を含む1種以上の生理学的に許容される担体を用いる従来の様式で製剤化されてよい。適切な製剤化は、選択された投与経路に依存する。
【0126】
経口で使用できる医薬組成物には、ゼラチン製の押し込み型カプセルならびにゼラチンおよび可塑剤(グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟質密封カプセルが包含される。押し込み型カプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および任意で安定化剤、と混合した活性成分を含んでよい。軟質カプセル中で、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体に活性化合物が溶解または懸濁されていてよい。さらに、安定化剤が添加されてよい。
【0127】
注射のために、本発明の化合物は水溶液中で(好ましくは、ハンクス溶液、リンガー溶液、または生理食塩水緩衝液などの生理学的に適合する緩衝液中で)製剤化されてよい。経粘膜投与のために、透過されるべき障壁に適切な浸透剤が製剤中で使用される。このような浸透剤(例えばポリエチレングリコール)は当技術分野において一般に公知である。
【0128】
糖衣錠のコアには好適なコーティングが施される。この目的のために、濃縮糖溶液が使用されてよく、この濃縮糖溶液は任意でアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含んでもよい。識別のために、または活性化合物の量の種々の組み合わせを明らかにするために、染料または顔料が錠剤または糖衣錠のコーティングに添加されてよい。
【0129】
口腔投与のために、組成物は、従来の様式で製剤化された錠剤またはロゼンジ剤(lozenge)の形態をとってよい。
【0130】
吸入による投与のために、本発明に従う使用のための異型が、好適な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ−テトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用を伴う加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾルスプレーによる供与の形態で便利に送達される。加圧エアロゾルの場合には、計量された量を送達するためのバルブを設けることによって投薬単位が決定されてよい。例えば吸入具または吸入器に使用するためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、ペプチドと好適な粉末基剤(ラクトースまたはデンプンなど)との粉末混合物を含んで製剤化されてよい。
【0131】
非経口投与のための医薬組成物には、水溶性形態の活性成分の水溶液が包含される。さらに、活性化合物の懸濁液が適切な油性注射懸濁液として調製されてよい。好適な天然担体または合成担体が当技術分野において周知である(Pillai et al., Curr. Opin. Chem. Biol. 5, 447, 2001)。任意で、高濃度溶液の調製を可能にするために、化合物の溶解性を増大させる好適な安定化剤または剤を懸濁液が含んでもよい。あるいは、活性成分は、使用前に好適なビヒクル(例えば無菌でパイロジェンフリーの水)を用いて再構成するための粉末形態であってよい。
【0132】
本発明に関連した使用に好適な医薬組成物には、意図される目的を達成するのに有効な量で活性成分が含まれる組成物が包含される。より具体的には、治療上有効な量は、処置されている対象の疾患の症状を予防、緩和または寛解するのに有効な化合物量を意味する。治療上有効な量の決定は、完全に当業者の能力の範囲内に含まれる。
【0133】
本明細書に記載されるペプチドの毒性および治療有効性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって、例えば、対象化合物についてのIC50(50%の阻害をもたらす濃度)およびLD50(試験される動物の50%を死なせる致死量)を決定することによって、決定できる。これらの細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータは、ヒトでの使用のための様々な投与量の製剤化に使用できる。投与量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じて変動する可能性がある。正確な製剤、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択されてよい(例えばFingl, et al., 1975, “The Pharmacological Basis of Therapeutics”, Ch. 1 p.1)。
【0134】
本発明の一部の実施形態によれば、このような医薬組成物の投与のための用量は、約0.1mg/kg体重〜約50mg/kg体重の範囲である。
【0135】
処置されるべき状態の重症度および反応性に応じて、投薬は、数日間〜数週間継続する処置過程または治癒が達成されるか疾患状態の縮小が達成されるまで継続する処置過程での、徐放性組成物の単回投与であってもよい。投与されるべき組成物の量は、当然、処置されている対象、苦痛の重症度、投与の様式、処方する医師の判断、および他の全ての関連要因に依存するであろう。
【0136】
特定の実施形態において、保護用の賦形剤の使用によってペプチドの送達を促進できる。これは、典型的には、ペプチドを組成物と組み合わせてペプチドを酸による加水分解および酵素による加水分解に対して耐性にすること、またはリポソームなどの適切に耐性である担体中にポリペプチドを封入することのいずれかによって達成される。経口送達のためにポリペプチドを保護する手段は、当技術分野において周知である(例えば、治療薬の経口送達のための脂質組成物を記載する米国特許第5,391,377号を参照のこと)。
【0137】
持続放出性タンパク質「パッケージング」システムの使用により、長い血清中半減期を維持できる。このような持続放出性システムは、当業者には周知である。好ましい一実施形態では、タンパク質およびペプチドのためのProLease生分解性ミクロスフェア送達システム(ProLease biodegradable microsphere delivery system)(Tracy, 1998, Biotechnol. Prog. 14, 108; Johnson et al., 1996, Nature Med. 2, 795; Herbert et al., 1998, Pharmaceut. Res. 15, 357)、他の剤を含むか含まない乾燥製剤として配合することができるポリマーマトリックス中にタンパク質を含む生分解性ポリマーミクロスフェアから構成される乾燥粉末。
【0138】
特定の実施形態において、本発明の組成物の剤形には、限定されるものではないが、PLGA系注射用デポーシステムなどの生分解性注射用デポーシステム、非PLGA系注射用デポーシステム、および注射用生分解性ゲルまたは注射用生分解性分散系が包含される。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。本明細書において使用される用語「生分解性」は、周囲の組織液に見出される物質との接触に少なくとも部分的に起因して、または細胞の作用によって、その表面が時間とともに侵食されるか分解する構成要素を指す。具体的には、生分解性の構成要素は、限定されるものではないが、ポリラクチド(例えばポリ(D,L−ラクチド)、すなわちPLA)などの乳酸系ポリマー;ポリグリコリド(PGA)(例えばDurect社のLactel(登録商標))などのグリコール酸系ポリマー;ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(すなわちPLGA)(Boehringer社のResomer(登録商標) RG−504、Resomer(登録商標) RG−502、Resomer(登録商標) RG−504H、Resomer(登録商標) RG−502H、Resomer(登録商標) RG−504S、Resomer(登録商標) RG−502S、Durect社のLactel(登録商標));ポリ(e−カプロラクトン)(すなわちPCL)(Durect社のLactel(登録商標))などのポリカプロラクトン;ポリ酸無水物;ポリ(セバシン酸) SA;ポリ(リシノレイン酸(ricenolic acid)) RA;ポリ(フマル酸)、FA;ポリ(脂肪酸二量体)、FAD;ポリ(テレフタル酸)、TA;ポリ(イソフタル酸)、IPA;ポリ(p−{カルボキシフェノキシ}メタン)、CPM;ポリ(p−{カルボキシフェノキシ}プロパン)、CPP;ポリ(p−{カルボキシフェノキシ}ヘキサン) CPH;ポリアミン、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル{CHDM:シス/トランス−シクロヘキシルジメタノール、HD:1,6−ヘキサンジオール、DETOU:(3,9−ジエチリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロウンデカン)};ポリジオキサノン;ポリヒドロキシブチレート;ポリアルキレンオキサレート;ポリアミド;ポリエステルアミド;ポリウレタン;ポリアセタール;ポリケタール;ポリカーボネート;ポリオルトカーボネート;ポリシロキサン;ポリホスファゼン;スクシネート;ヒアルロン酸;ポリ(リンゴ酸);ポリ(アミノ酸);ポリヒドロキシバレレート;ポリアルキレンスクシネート;ポリビニルピロリドン;ポリスチレン;合成セルロースエステル;ポリアクリル酸;ポリ酪酸;トリブロックコポリマー(PLGA−PEG−PLGA)、トリブロックコポリマー(PEG−PLGA−PEG)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)トリブロックコポリマー(PEO−PPO−PEO)、ポリ吉草酸;ポリエチレングリコール;ポリヒドロキシアルキルセルロース;キチン;キトサン;ポリオルトエステルおよびコポリマー、ターポリマー;コレステロール、レシチンなどの脂質;ポリ(グルタミン酸−コ−エチルグルタメート)等、などのポリマー、またはそれらの混合物である。
【0139】
一部の実施形態において、本発明の組成物は、限定されるものではないが、PLGA、PLA、PGA、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリオルトエステル、ポリアルカン酸無水物、ゼラチン、コラーゲン、酸化セルロース、ポリホスファゼン等から選択される生分解性ポリマーを含む。それぞれの可能性が別個の実施形態を表す。
【0140】
魚用食物組成物
本発明の食物組成物は、従来の特別な魚用食物の一部であってよいか、それと混合されてよい。魚用食物は通常、育成されるタイプの魚のために使用される飼料からなり、タンパク質、油、ビタミンおよび他の添加物を含む。
【0141】
一部の非限定的な例によれば、本発明のアンタゴニスト組成物は、微量の補助剤(ミネラル、ビタミン、および/または微量元素など)と共に約15〜50パーセントのタンパク質またはタンパク質加水分解物、約2〜5パーセントの脂肪、および約3〜10パーセントの粗繊維を含むペレット化固体組成物中に含まれる。
【0142】
本発明のアンタゴニストを含む魚用食物組成物は、当技術分野において公知の方法を用いて調製される。例えば、組成物からペレット(典型的には直径0.5〜20ミリメートル)を作製し、保存および使用の前に乾燥させる。少量のゼラチンを水に溶解させることによってペレットの凝集性を改善できる。水溶性ホエイ粉末がタンパク質含有量の大部分となる場合、好ましくは、水と接触した際のペレットの早期崩壊を防ぐために少量の油または脂肪でペレット表面がコーティングされる。ゼラチン含有組成物を従来の様式で発泡させて、その全体としての密度が水の密度と類似する多孔質ペレットを作製してよい。このようなペレットは水中で浮遊し、比較的長時間にわたって魚が接近しやすいままである。底まで沈むペレットは、多くの魚から見失われる。また、基礎となる組成物に添加物を均一に分散させた後に、得られた混合物からペレットを作製することによって、本発明のアンタゴニストを従来の組成の市販の魚用飼料と混合してもよい。一部の実施形態によれば、食物ペレットは本発明の化合物でコーティングされ、魚への給餌に使用される。
【0143】
本発明を説明するためにその様々な特定の実施形態に関して本発明を記載しているが、このような具体的に開示された実施形態は限定的であるとみなされるべきではない。本明細書における出願人の開示に基づいて、当業者は多くの他の特定の実施形態を想到するであろう。出願人は、添付の特許請求の範囲で定義されるような本発明の趣旨および範囲によってのみ束縛されることを提案する。
【0144】
実施例
以下の実施例は、魚のNKBのアンタゴニストとしての本発明の化合物のインビトロおよびインビボでの活性を実証する。
【0145】
実施例1:ペプチド模倣物の設計および合成
本発明のペプチド模倣物のいくつかは、以下の検討事項に基づいて設計された。
(i)アミノペプチダーゼによる分解を受けやすい末端アミノ基をペプチドが有さないように、Asp残基に結合されるスクシニル(succ)などのキャッピング部分を付加することによりペプチドのN末端を修飾した。これにより、予想外にも、活性ペプチドを11アミノ酸から7アミノ酸に短縮することができた。
(ii)D−TrpによるPhe残基の置き換えは、NK受容体に対するアゴニストの緊密な嵌合を妨げた。これは、ペプチドの活性をアゴニストからアンタゴニストに変化させ、また、エンドペプチダーゼによる分解に対してペプチドを安定化させた。
(iii)生物活性を有する立体構造を安定化させる構造的制約を課して受容体選択性および代謝安定性を付与するために、Val残基をN−メチル化した。これは、エンドペプチダーゼによる分解を防いだ。
(iv)Gly残基をβAla(ベータアラニン)で置き換えた。これは、生物活性を有する立体構造の構造的柔軟性を増加させ、アゴニストのアンタゴニストへの変換を促進した。
(v)カルボキシ末端のカルボキサミド基は、結合および受容体の活性化に必須であり、カルボキシペプチダーゼによる分解を防ぐ。
【0146】
Fmoc活性エステル化学法を適用する自動固相法によってペプチド模倣物を合成した。NMe−Val−ペプチジル−樹脂に対するFmoc−D−Trp−OHのカップリングなど、困難な疎水性アミノ酸のカップリングは、DMF中で5時間HATUを用いて2回実施した。HPLCにより、化合物を≧95%の純度まで精製した。
【0147】
実施例2:インビトロ試験
2種類のシグナル伝達経路が存在し、一方はcAMP/PKA(プロテインキナーゼA)を介してリレーされ、二つ目はCa2+/PKCを介してリレーされる。PKA経路はCRE(cAMP応答エレメント)によって活性化され、PKC経路はSRE(ステロイド応答エレメント)を介して活性化される。
【0148】
PKCシグナル伝達経路とPKAシグナル伝達経路とを区別するために、血清応答エレメント(SRE;Invitrogen)または環状AMP(cAMP)応答エレメント(CRE;Invitrogen)によって転写調節されるLUCを用いて高感度ルシフェラーゼ(LUC)レポーター遺伝子アッセイを利用した。CMVプロモーターの制御下にあるpcDNA3.1発現ベクター(Zeo;Invitrogen)にティラピアのtac3raおよびtac3rb(GenBank accession number:それぞれKF471674およびKF471675)またはゼブラフィッシュのtac3raおよびtac3rb(それぞれJF317292およびJF317293)をクローニングした。
【0149】
一過性のトランスフェクション、細胞の取扱いおよび刺激のプロトコルは、Levavi−Sivan et al., 2005, Mol Cell Endocrinol 236:17−30、Biran et al., 2008(上記のものと同じ文献)、Biran et al., 2012(上記のものと同じ文献)、Biran et al., 2014(上記のものと同じ文献)に概ね従った。簡潔に説明すると、10%FBS、1%グルタミン、100U/mlペニシリン、および100mg/mlストレプトマイシン(Biological Industries)を加えたDMEM中において5%CO下でCOS−7細胞をコンフルエントになるまで増殖させた。pc−tac3ra、pc−tac3rbのいずれか(3μg/プレート)、レポータープラスミド(2μg/プレート)、およびpCMの共トランスフェクション。
【0150】
FuGENE6.0試薬(Roche)を用いてトランスフェクションを実施した。細胞を36時間にわたって血清飢餓状態にし、ビヒクルまたは様々な濃度のヒトNKB、ティラピアNKB、ティラピアNKF、ゼブラフィッシュNKBa、NKBbもしくはゼブラフィッシュNKFのいずれかで6時間刺激した後、回収して解析した。
【0151】
回収した細胞から調製したライセートを、ルシフェラーゼ活性およびβガラクトシダーゼ活性の両方についてアッセイした。以前に説明されているように、試験用プラスミドにより導かれるルシフェラーゼ活性を標準化するための内部標準としてβガラクトシダーゼ活性を使用した。トランスフェクション実験は、3つの独立した別々の組を用いて3連で実施した。
【0152】
使用されたリガンド濃度は1nM〜1μMであった。処置は、独立した3回の実験において4連で実施した。
【0153】
一定濃度の野生型のNKBまたはNKF(ED50に近い応答をもたらすリガンド量(10−8M))と共に、各アンタゴニストを種々の濃度で添加した。非線形回帰一部位競合曲線(a non−linear regression one−site competition curve)に従って、Prism softwareにより結果を解析した。
【0154】
10−8M(=0.1nM)のNKBと同時に各アンタゴニストを種々の濃度で添加した場合のNKBアンタゴニストの効果をティラピアで試験した。ティラピアNKBはルシフェラーゼ活性を1.8倍増加させた。様々なアンタゴニストが、この応答を約60%低下させた(図1A)。SRE応答を用いて同様の結果が得られた(図1B)。対照的に、ティラピアのNKBおよびNKFの類似体(国際公開第WO2013/018097号に開示)は、両方のアッセイにおいてアゴニスト活性を有することが示された(図1CではCREアッセイについて実証されている)。
【0155】
ゼブラフィッシュNKBは、シグナル伝達活性の誘導においてティラピアのペプチドよりも効率的であり、CRE−LUCを3倍超増加させた。10−8M(=0.1nM)のNKBと同時に各アンタゴニストを種々の濃度で添加した場合のNKBアンタゴニストの効果を試験した。様々なアンタゴニストが、この応答を約60%低下させた(図2A)。SRE応答を用いて同様の結果が得られた(図2B)が、NKBアゴニストは阻害性ではなく刺激性であり、図1Cと同様の結果をもたらした。
【0156】
結論として、NKBアンタゴニストである本発明によるペプチド模倣物は、NKBシグナル伝達を阻害できる。
【0157】
実施例3:NKBの非ペプチド性アンタゴニスト
公知のNKB小分子アンタゴニストの効果をインビトロおよびインビボで試験した。化合物は、SB−222200(Sarau et al., 2000、上記のものと同じ文献)、オサネタント(SR−142,801)およびタルネタント(SB 223412(Sarau et al., 1997、上記のものと同じ文献))である。
【0158】
ヒトの受容体およびリガンドを陽性対照として、ティラピアtac3rをトランスフェクトしたCOS−7細胞でのCRE−LUCに対するNKBアンタゴニストSB222200の効果を試験した。
【0159】
図3Aに示されるように、非ペプチド性アンタゴニスト単独ではルシフェラーゼ活性に対して効果を示さなかったが、hNKB、ティラピアNKBまたはティラピアNKFは、0.1nM(=10−8M)にて、ルシフェラーゼ活性をそれぞれ1.7倍および2.3倍増加させた。
【0160】
種々の濃度のアンタゴニストを0.1nMの天然リガンド(NKBまたはNKF)と同時に添加した場合に、典型的な阻害曲線が得られ、これは、ティラピアNKB受容体に対するSB222200のアンタゴニスト能を実証する(図3B)。
【0161】
ヒトの受容体およびリガンドを陽性対照として、ティラピアtac3rをトランスフェクトしたCOS−7細胞でのCRE−LUCに対するNKBアンタゴニスト(オサネタント(SR−142,801))の効果を試験した。非ペプチド性アンタゴニスト単独ではルシフェラーゼ活性に対して効果を示さなかったが、hNKB、ティラピアNKBまたはティラピアNKFは、0.1nM(=10−8M)にて、ルシフェラーゼ活性をそれぞれ2.5倍および1.6倍増加させた(図4A)。しかし、種々の濃度のアンタゴニストを0.1nMの天然リガンド(NKBまたはNKF)と同時に添加した場合に、典型的な阻害曲線が得られ、これは、ティラピアNKB受容体に対するオサネタント(SR−142,801)のアンタゴニスト能を実証する(図4B)。
【0162】
SB222200を、ティラピアにおけるゴナドトロピン放出に対するそのNKBアンタゴニスト活性についてインビボでさらに試験した。性的に成熟したティラピアの雌(0.62±0.22%;n=10/処置)に種々の量のNKB非ペプチド性アンタゴニストSB222200(10、100または500μg/kg体重)を時間0において注射した。注射から1、2、4および8時間後に、これらの魚の尾の血管系から採血した。Aizen et al., 2007(Aizen et al., 2007, Gen Comp Endocrinol, vol. 153, pp 323−332)に従って特異的ELISAを用いてゴナドトロピンであるFSHおよびLHのレベルを決定した。その結果は、対照群では有意な変化が記録されなかった一方で、注射から1時間後には既に始まっている有意な漸減がFSHレベル(図5A)およびLHレベル(図5B)の両方において記録されたことを示す。
【0163】
実施例4:インビボでの実験
インビトロでのトランス活性化アッセイにおいて有効であると示された、選択されたアンタゴニストをインビボで試験する。
【0164】
成体雄ティラピア(体重(BW)90g)に生理食塩水と25%DMSO、SB2222000、またはNKBアンタゴニストAnt−4とを腹腔内注射した(2週間にわたって48時間ごとに500μg/kg BW、n=1群あたり20匹の魚)。注射後2日ごとに魚の尾の血管からヘパリン化した注射器へと採血した。7日目および14日目に、各群5匹の魚を採血し、精液量のために取り出して、組織学のために性腺を採取した。LH、FSHおよび11KTについて血漿を分析した。尾の血管系から血液サンプルを採取し、遠心分離(4℃にて3000rpmで20分間)して血漿サンプルを得た。血漿サンプルは、アッセイするまで−20℃で保存した。FSHおよびLHについては(Aizen et al., 2007, Gen Comp Endocrinol, vol. 153, pp 323−332)に従って、11KT(11−ケトテストステロン、精子形成に関与する魚の主要アンドロゲン)についてはHurvitz et al., 2005(Gen Comp Endocrinol 140:61−73)に従って、ELISAを実施した。
【0165】
図6は、対照の魚と対比した、処置された魚の精巣由来の性腺の組織学的観察を表す。魚の精巣は組織化されてシストとなっている。図で実証されているように、NKBアンタゴニストAnt−4に曝露した魚は、成熟した精子(成熟した精液)を有する部分的に空のシストをより多く含んだ。NKBアンタゴニストを注射した魚の精液量を図7に示す。右から左に:SB222200を注射した魚に由来する精液;対照の魚に由来する精液;NKBアンタゴニスト#4を注射した魚に由来する精液。SB222200またはNKBアンタゴニストAnt−4を注射した魚における11KTのレベルを図8に示す。11KTは、魚の主要アンドロゲンであり、精子形成に関与する。処置期間中に、血漿中の11KTのレベルは、対照の魚については0日から12日にかけて徐々に増加したのに対し、SB222200またはNKBアンタゴニストAnt−4(#4)を注射した魚については、この増加は有意に阻害された。
【0166】
実施例5:インビボでのティラピアの成長
成体雄ティラピア(BW60g)に生理食塩水と25%DMSO、SB2222000、またはNKBアンタゴニストAnt−6とを腹腔内注射した(2週間にわたって48時間ごとに500μg/kg BW、n=1群あたり25匹の魚)。7日ごとに魚の体重を測定した。図9に示されるように、処置が終了してから7日後の21日目に有意な増加が観察された。
【0167】
生殖腺重量指数(GSI)は、性腺重量を総体重に対する割合として算出したものである。注射した魚のGSI値も算出した(図10)。27日目に魚を屠殺し、その精巣から全RNAを抽出した。増殖細胞核抗原(PCNA)は、真核細胞のDNAポリメラーゼδのための因子として働くDNAクランプであり、複製に必須である。27日後の注射した魚の精巣におけるPCNAの遺伝子発現を決定した(図11)。
【0168】
実施例6:ティラピア若魚の給餌
この研究では105日齢のティラピア雌魚を使用した。ペプチド模倣物アンタゴニストでコーティングした魚用ペレットによる給餌を3ヵ月12日齢の時点で開始した。NKBアンタゴニスト(Ant−2、Ant−3、Ant−6)の餌を7.5mg/kg飼料(魚の重量の2%〜3%)で適用した。毎日2回、日中に魚に給餌した。魚の成長速度を決定した。図12Aおよび図12Bに示されるように、NKBアンタゴニストを含む餌を与えられた魚は、対照の魚よりも有意に速く(体重で約25%増)成長した。それらの体内の臓器に変化は観察されなかった(臓器の写真撮影によって決定された)。
【0169】
実施例7:サケでのインビトロ実験
実施例2においてティラピアおよびゼブラフィッシュで実施されたインビトロ実験と同様に、NKB活性の阻害を魚サケで試験した。CMVプロモーターの制御下にあるpcDNA3.1発現ベクター(Zeo;Invitrogen)にサケtac3受容体をクローニングした。FuGENE6.0試薬(Roche)を用いてトランスフェクションを実施した。細胞を36時間にわたって血清飢餓状態にし、ビヒクルまたは様々な濃度のティラピアNKBで6時間刺激した後、回収して解析した。回収した細胞から調製したライセートを、ルシフェラーゼ活性およびβガラクトシダーゼ活性の両方についてアッセイした。試験用プラスミドにより導かれるルシフェラーゼ活性を標準化するための内部標準としてβガラクトシダーゼ活性を使用した。トランスフェクション実験は、3つの独立した別々の組を用いて3連で実施した。使用されたリガンド濃度は1nM〜1μMであった。処置は、独立した3回の実験において4連で実施した。ED50に近い応答をもたらす一定濃度の野生型NKB(10−8M)と共に、各アンタゴニスト(NKB−Ant 4およびNKB−Ant 6)を種々の濃度で添加した。非線形回帰一部位競合曲線に従って、Prism softwareにより結果を解析した。
【0170】
サケtac3をトランスフェクトした場合、NKBはルシフェラーゼ活性を1.8倍増加させた。図13で実証されているように、アンタゴニスト#4および#6はいずれも、この応答を約60%低下させることに成功した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]