(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
接着剤組成物を調製する工程であって、前記接着剤組成物は6.5と8の間のpHを持ち、10から99モル%のビニルアミンモノマーと、90から1モル%のN−ビニルホルムアミドモノマーとを含む、1つ以上のビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーを含む工程と、
STP条件下で前記ポリマーを乾燥状態のポリビニルアルコールと接触させる工程と、
前記ポリビニルアルコールが完全に溶解して溶液となるまで、前記ポリビニルアルコールおよび前記ポリマーを、90から95℃の間の温度に保つ工程と、
前記接着剤組成物をクレーピングシリンダに塗布する工程と、
ペーパーウェブを前記クレーピングシリンダに押しつけて、前記ペーパーウェブを前記クレーピングシリンダに付着させる工程と、
ドクターブレードを用いて前記ペーパーウェブを前記クレーピングシリンダから掻き取る工程と、
を含む、ペーパーウェブのクレーピング方法。
前記接着剤組成物が、可塑剤、湿潤剤、酸化安定剤、無機リン酸塩、有機リン酸塩、剥離剤、潤滑剤、防食剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、少なくとも1つの追加試剤を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
不活性蛍光トレーサーを前記接着剤組成物に加える工程と、前記クレーピングシリンダ上の蛍光を検出して前記ポリマーの量を求める工程と、を更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記ポリマーを、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ビニルアルコール含有ポリマー、酢酸ビニル含有ポリマー、ポリアミノアミド、ポリアミド、ポリアミン、架橋したポリアミノアミド、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、グリオキシル化ポリアクリルアミド、ポリアクリラート、ポリメタクリル酸メチル、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリエーテル、ビニルアミン/アクリルアミド共重合体、ビニルアミン/アクリラート共重合体、ポリビニルピロリドン、合成タンパク質、天然タンパク質、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、別のポリマーと架橋させる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
前記架橋を、エピハロヒドリン、ジアルデヒド、ジグリシジルエーテル、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる架橋剤を用いて行う、請求項6に記載の方法。
前記ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ビニルアルコール含有ポリマー、酢酸ビニル含有ポリマー、ポリアミノアミド、ポリアミド、ポリアミン、架橋したポリアミノアミド、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、グリオキシル化ポリアクリルアミド、ポリアクリラート、ポリメタクリル酸メチル、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリエーテル、ビニルアミン/アクリルアミド共重合体、ビニルアミン/アクリラート共重合体、ポリビニルピロリドン、合成タンパク質、天然タンパク質、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる要素を更に含む共重合体である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
前記接着剤組成物は、2つ以上のビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーの混合物を含み、前記ポリマーの少なくとも1つは低分子量ポリマーであり、前記ポリマーの少なくとも1つは高分子量ポリマーである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
前記接着剤組成物は、2つ以上のビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーの混合物を含み、前記ポリマーの少なくとも1つは第1ポリマーであって、2,000から200万のMwを持ち、前記ポリマーの少なくとも1つは第2ポリマーであって、1,000から20万のMwを持ち、前記第1ポリマーのMwは前記第2ポリマーのMwより大きい、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
前記第1ポリマーが液状ポリマーであり、且つ、前記第2ポリマーが固形ポリマーであるか、或いは、前記第1ポリマーが固形ポリマーであり、且つ、前記第2ポリマーが液状ポリマーである、請求項11に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
優れたヤンキーコーティングは、効率良くクレーピングを行えるよう良好な接着性を持ち、更に、均一で耐久性のある、柔らかい薄膜を形成しなければならない。コーティングの均一性は、製造されるシートの品質に影響する、一定したクレーピングのためだけでなく、ヤンキー表面を均等に覆ってシリンダとブレードの速すぎる摩耗を防ぐためにも非常に重要である。耐久性は、ヤンキー表面、特に、圧力ロールニップでコーティングがどれほど安定であるかを示す特性である。コーティングが洗い落とされ易いとヤンキーシリンダを保護できず、クレーピングブレードが過度に摩耗してしまう。コーティングが硬いとブレードに振動(chatter)が起き、これによりブレードの摩耗や不均一なクレーピングが生じる。柔らかいが耐久性のあるコーティングが望まれる。
【0005】
エピクロロヒドリンで架橋したポリアミノアミド(PAE)は、商業的に最も広く用いられている接着剤である。品質等級とクレーピング条件に応じて、様々な分子量を持つPAE樹脂、および/または、調節剤(剥離油、界面活性剤、湿潤剤、リン酸塩(phosphates)など)の組み合わせを用いて、コーティングの接着性、耐久性、柔軟性を適度に調節することができる。しかし、PAE樹脂の適用性は万能ではなく、必ずしも全てのティッシュ等級と条件で有効であるとは限らない。PAE接着剤の直面する最も一般的な問題は、ヤンキードライヤー上に堆積する傾向であり、しばしば“ハード”コーティングと呼ばれる。これはブレードの振動を招き、シートにピック(picks)や穴を生じて、シートを破断させ、装置が停止してしまう。更に、最新のPAE接着剤中のエピクロロヒドリン(epi)およびエピクロロヒドリン副生物の量は非常に少ないが、選択肢があるならば、本産業において非エピクロロヒドリン接着剤の使用が望ましいと考える。しかし、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリエーテルなどの他の非エピクロロヒドリン代替物にもコーティング性に関して欠陥があり、コーティングの耐久性、柔軟性、接着性、均一性が最適の組み合わせとなるものがない。従って、より改善されたクレーピング接着剤組成物が求められている。
【0006】
この章に述べられている技術は、文中に言及されている全ての特許、出版物、その他の情報が、本発明に対して“先行技術”であると(そのように明確に指定されている場合を除き)承認しようとするものではない。更に、この章は、ある調査が成されており、あるいは、37CFR規則1.56(a)に定義されるような関連情報が存在することを意味していると解釈すべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも1つの実施形態は、ペーパーウェブのクレーピング方法に関するものである。この方法は、a)接着剤組成物を調製する工程と、b)接着剤組成物をクレーピングシリンダに塗布する工程と、c)ペーパーウェブをクレーピングシリンダに押しつけて、ペーパーウェブをクレーピングシリンダに付着させる工程と、d)ドクターブレードを用いてペーパーウェブをクレーピングシリンダから掻き取る工程と、を含み、接着剤組成物は6.5と8の間のpHを持ち、約10から約99モル%のビニルアミンモノマーと、約90から約1モル%のN−ビニルホルムアミドモノマーとを含む、1つ以上のビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーを含んでいて、このポリマーをハロゲン化有機酸と反応させて、有機酸のカルボキシル炭素をポリマーのアミノ窒素に共有結合させる。
【0008】
ペーパーウェブをシリンダに押しつける前に、TADベルト上で予備乾燥および運搬しても良い。本組成物のpHは7と7.5の間であっても良い。ポリマーの引きはがし粘着力(peel force adhesion)は、ハロゲン化酸と反応させていない同種のポリマーよりも少なくとも20%大きくても良い。この組成物は、可塑剤、湿潤剤、酸化安定剤、無機リン酸塩、有機リン酸塩、剥離剤、潤滑剤、防食剤、およびこれらの組み合わせから成る群より選ばれる、少なくとも1つの追加試剤を更に含んでいる。この方法は、不活性蛍光トレーサーを組成物に加える工程と、クレーピングシリンダ上の蛍光を検出して、シリンダに実際に付着している、ポリマー、および/または、1つ以上の追加試剤の量を求める工程と、を更に含んでいても良い。
【0009】
本ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ビニルアルコール含有(bearing)ポリマー、酢酸ビニル含有ポリマー、ポリアミノアミド、ポリアミド、ポリアミン、架橋したポリアミノアミド、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、グリオキシル化ポリアクリルアミド、ポリアクリラート、ポリメタクリル酸メチル、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリエーテル、ビニルアミン/アクリルアミド共重合体、ビニルアミン/アクリラート共重合体、ポリビニルピロリドン、合成タンパク質、天然タンパク質、およびこれらの組み合わせから成る群より選ばれる、別のポリマーと架橋させても良い。架橋は、エピハロヒドリン、ジアルデヒド、ジグリシジルエーテル、およびこれらの組み合わせから成る群より選ばれる架橋剤を用いて行うことができる。
【0010】
本ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ビニルアルコール含有ポリマー、酢酸ビニル含有ポリマー、ポリアミノアミド、ポリアミド、ポリアミン、架橋したポリアミノアミド、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、グリオキシル化ポリアクリルアミド、ポリアクリラート、ポリメタクリル酸メチル、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリエーテル、ビニルアミン/アクリルアミド共重合体、ビニルアミン/アクリラート共重合体、ポリビニルピロリドン、合成タンパク質、天然タンパク質、およびこれらの組み合わせから成る群より選ばれる、別のポリマーの置換基単位を更に含む共重合体であっても良い。
【0011】
本組成物は、2つ以上のビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーの混合物を含んでいても良く、ポリマーの少なくとも1つは低分子量ポリマーであり、ポリマーの少なくとも1つは高分子量ポリマーである。あるいは、2つ以上のビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーの混合物を含んでいても良く、ポリマーの少なくとも1つは2,000から200万のM
Wを持ち、ポリマーの少なくとも1つは1,000から20万のM
Wを持つ。
【0012】
接着剤組成物をクレーピングシリンダに塗布する工程の前に、本方法は、次の追加工程、i)STP条件下で、本ポリマーをポリビニルアルコールと接触させる工程と、ii)ポリビニルアルコールが完全に溶解して溶液となるまで、ポリビニルアルコールとポリマーを、90から95℃の間の温度に保つ工程と、を含んでいても良い。
【0013】
本発明の少なくとも1つの実施形態は、
接着剤組成物を調製する工程と、
接着剤組成物をクレーピングシリンダに塗布する工程と、
ペーパーウェブをクレーピングシリンダに押しつけて、ペーパーウェブをクレーピングシリンダに付着させる工程と、
ドクターブレードを用いてペーパーウェブをクレーピングシリンダから掻き取る工程と、
に関するものであり、接着剤組成物は6.5と8の間のpHを持ち、1つのポリマーを含んでいて、このポリマーの構成単位は次の構造で示され、
【化1】
このとき、このポリマーは、マイケル付加の反応生成物以外のものである。
【0014】
本発明の少なくとも1つの実施形態は、ある組成物の製造法に関するものであり、この方法は、乾燥ポリビニルアルコールを準備する工程と、請求項1の、水性ビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーを準備する工程と、STP条件下で、または、80℃未満の温度で、ポリビニルアルコールとポリマーを接触させる工程と、ポリビニルアルコールが完全に溶解して溶液となるまで、ポリビニルアルコールとポリマーを、90から95℃の間の温度に保つ工程と、溶液を80℃以下まで放冷する工程と、を含む。この方法は、溶液を放冷する工程の後、水溶性ポリオール、調節剤、ポリグリセロール、防腐剤、機能性添加剤、水、およびこれらの組み合わせから成る群より選ばれる、少なくとも1つの品目を加える工程を更に含んでいても良い。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願で使用する用語、特に請求項をどのように解釈すべきかを定めるため、以下の定義を行う。このように定義を行うのは利便性のためだけであって、この定義を特定のカテゴリーに限定しようとするものではない。
【0016】
“嵩高さ”は、ティッシュペーパーウェブの密度の逆を意味し、一般に、cm
3/gの単位で表される。これは、ティッシュペーパーウェブの客観的および知覚的性能の重要な部分である。一般に嵩高いと布のような吸収し易さが感じられる。クレーピングによってティッシュペーパーウェブの嵩高さがある程度与えられる。
【0017】
“共重合させた”は、少なくとも2つの異なる種類の置換基単位を含む、明確なポリマー鎖を形成することを意味し、交互共重合体、周期的共重合体、統計的共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、ターポリマー、ステレオブロック共重合体、グラフト共重合体など(但し、これらに限定しない)が挙げられる。
【0018】
“架橋した”は、置換基単位から成る、少なくとも1つの明確なポリマー鎖が、別の置換基単位から成る明確なポリマー鎖と化学結合していることを意味する。
【0019】
“クレープ構造”は、クレーピング処理を行った紙製品上に存在する、襞および条を意味する。
【0020】
“ドクターブレード”は、装置のある部品上に置かれた材料をその部品から取り去るよう、この装置部品に隣接して置かれたブレードを意味する。ドクターブレードは、様々な目的のため様々な産業で広く用いられており、例えば、ある工程の際に装置部品から材料を取り除くために用いられる。材料の例としては、ティッシュウェブ、ペーパーウェブ、接着剤、残留堆積物、ピッチ、およびこれらの組み合わせ(但し、これらに限定しない)が挙げられる。装置の例としては、ドラム、プレート、ヤンキードライヤー、ロール(但し、これらに限定しない)が挙げられる。ドクターブレードは、製紙、不織布製造、たばこ産業において、また、印刷、被覆、および接着剤工程で広く用いられる。ある例では、ドクターブレードが、このブレードを使用する少なくとも1つの目的を反映した名称で呼ばれている。
【0021】
“繊維”は、その見掛けの幅に対して著しく大きい見掛けの長さを持つ、細長い微粒子を意味する。より詳細には、文中で使用する“繊維”は、製紙工程に適した繊維を指す。
【0022】
“高分子量ポリマー”は、重量平均分子量が20万以上のポリマーを意味する。
【0023】
“湿潤剤”は、水に対して親和性があり、材料の水分含量を安定化する作用を持つ物質を意味し、湿潤剤は、湿気による水分含量の変動を狭い範囲に保つ。湿潤剤としては、米国特許第8,101,045号に記載されているような、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ポリグリセロールなどの、低分子量水溶性ポリオール(但し、これらに限定しない)が挙げられる。
【0024】
“低分子量ポリマー”は、重量平均分子量が約1000から約20万のポリマーを意味する。
【0025】
“反応によって改質する”は、化学反応によって2つ以上の物質が互いに共有結合することを意味する。
【0026】
“紙製品またはペーパーシート”は、伝統的に、必ずしもではないがセルロース繊維を含む、製紙工程で製造された繊維構造を持つ最終製品を意味する。このような最終製品の例としては、化粧紙、トイレットペーパー、食卓用ナプキン、コピー紙、印刷用紙、筆記用紙、ノート用紙、新聞紙、板紙、ポスター用紙、ボンド紙、ボール紙など(但し、これらに限定しない)が挙げられる。
【0027】
“製紙工程”は、原料を紙製品に変換するための1つ以上の工程を意味し、これには、パルプ化、蒸解、精製、乾燥、カレンダー加工、プレス、クレーピング、脱水、漂白などの(但し、これらに限定しない)、1つ以上の工程が含まれる。
【0028】
“ポリアルキレンポリアミン”は、2つの第1級アミン(−NH
2)基と少なくとも1つの第2級アミン基を含み、アミノ窒素原子がアルキレン基で互いに繋がっていて、同じ炭素原子に2つの窒素原子が結合していない有機化合物である。ポリアルキレンポリアミンとしては、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)、ジプロピレントリアミンなどが挙げられる。
【0029】
“可塑剤”は、材料に加えるとその材料の柔軟性と加工性を高め、その結果、しばしばその材料のガラス転移温度が低下する物質を意味する。
【0030】
“PVA”は、ポリ(ビニルアミン/ビニルホルムアミド)を意味する。
【0031】
“PVOH”は、ポリビニルアルコールを意味する。
【0032】
“剥離剤”は、それと接触する他の組成物の接着性を小さくする組成物を意味し、しばしば界面活性剤を含んでおり、油系でも非油系でも良い。
【0033】
文中で用いられる“シート制御”とは、高速において制御不能に陥る、ウェブの振動、乱れ、縁部フリッピング(edge flipping)、フラッタ、ウィービングが無いことを指す。
【0034】
“柔軟性”は、消費者がある製品を手に取り、肌を擦り、あるいは手中で揉んだときに感じる触感を意味する。この触感は、多くの物理的特性の組み合わせから得られる。当業者は、一般に、柔軟性に関連する最も重要な物理的特性の1つが、その製品の原料となるペーパーウェブの剛さであると考えている。剛さはまた、ウェブの強さに直接影響を受けると一般的に考えられている。
【0035】
“強さ”は、製品とそれを構成するウェブが物理的完全性を保ち、使用条件下で引き裂き、破裂、破砕に耐える能力を意味する。
【0036】
“STP”は、標準温度および圧力を意味し、これは水の凍結温度および海面での大気圧に近い。STPは、0℃(華氏32度または273ケルビン)、1atm(101.335kPa、14.7PSI、760mmHg、760Torr、圧力計表示で1Barとも示される)である。
【0037】
“ティッシュペーパーウェブ、ペーパーウェブ、ウェブ、ペーパーシート、シート、紙製品”は全て、水性紙料を製造する工程と、この紙料を、フードリニアワイヤなどの多孔性の面上に堆積する工程と、重力、真空式排水、または蒸発法(例えば、TAD)のいずれかで、紙料から水を除く工程と、を含む方法で製造した紙のシートを意味する。この方法の最終工程で、a)接着剤組成物をクレーピングシリンダ表面に塗布する工程と、b)セルロースウェブをクレーピングシリンダに付着させる工程と、c)付着したウェブを、ドクターブレードを用いてクレーピングシリンダから掻き取る工程と、を含むクレーピング処理によって、紙に所望のテクスチャー特性を与える。
【0038】
ティッシュウェブは、様々な種類の天然および合成繊維、例えば、木材パルプ(化学パルプおよび機械パルプ)、植物繊維、再生繊維、合成繊維(ポリプロピレンなど)を含むことができる。ティッシュウェブは更に、カオリン粘土、二酸化チタン、および/または、炭酸カルシウムなどの微粒子充填剤を含んでいても良い。
【0039】
“TAD”は、通気乾燥工程を意味し、この工程では、成形したペーパーシートを織物または別の材質のベルトで運搬し、このベルトに熱い空気を通して乾燥を行う。この工程により、シートの嵩高さと柔軟性を保ったまま、これを乾燥させることができる。
【0040】
上記の定義または本願の別の部分に述べられている記述が、一般に用いられている、辞書中での、あるいは、本願に引用して援用する文献中に述べられている意味(明示的または暗示的)と矛盾する場合、本願および請求項の用語は、特に、本願の定義または記述に従って解釈されるものであり、一般的な定義、辞書の定義、あるいは、援用による定義には従わないものとする。上記の観点から、ある用語が辞書によって解釈される場合にのみ理解可能である場合、この用語が、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, 第5版(2005), (Wiley, John & Sons, Inc.出版)に定義されているならば、請求項中でこの用語がどのように定義されるかは、この定義が規制すべきである。
【0041】
本発明の少なくとも1つの実施形態は、ポリ(ビニルアミン/ビニルホルムアミド)を含む組成物を用いてペーパーウェブをクレーピングシリンダに付着させる、紙製品のクレーピング方法に関する。少なくとも1つの実施形態において、この組成物は約6.5から約8のpHを持つ。
【0042】
少なくとも1つの実施形態では、ティッシュペーパーの嵩高さと柔軟性を更に高めるため、クレーピングシリンダに貼り付ける前に、ウェブをTADベルト上で予備乾燥する。TAD装置は、米国特許第3,994,771号、米国特許第4,102,737号、米国特許第4,529,480号、米国特許第5,048,589号、米国特許第3,301,746号、米国特許第3,905,863号に記載されている。TADでウェブを予備乾燥するため、本組成物は一層効果的となる。本発明に記載の方法および組成物を用いることで、TAD工程におけるヤンキーへのティッシュシートの接着性を高めることができる。TAD予備乾燥シートの水分含量が低く、ヤンキー表面の温度が高いと、ヤンキー接着剤が良好に機能するには難しい状況となる。この熱く乾燥した条件では、接着性が失われるおそれがある。結果として、このような条件で使用する場合、先行技術の組成物は役に立たない。しかし、本発明の組成物は、この困難な条件下において改良された性能を示す。
【0043】
少なくとも1つの実施形態では、遊離基生成条件下でN−ビニルホルムアミドを重合後、酸または塩基でアミド基の一部をアミン基に加水分解して、ビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーを調製する。加水分解剤の化学量論量を調節することで、所望のビニルアミン/ビニルホルムアミド比を持ったビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーが調製可能である。少なくとも1つの実施形態では、米国特許第5,374,334号およびその参考文献に記載の方法に従って、ビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーを調製する。ビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーの塩水溶液中における安定した分散液を調製する少なくとも1つの方法が、米国特許第6,426,383号および米国特許第6,894,110号に記載されている。ビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーは、ニュージャージー州マウントオリーブ、BASFより、Lupaminの商標名で市販もされている。
【0044】
ビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーのpHは、酸を加えて、6.5〜8の望ましい範囲に調整できる。代表的な酸としては、硫酸、塩酸、リン酸、ギ酸、酢酸などが挙げられる。ある実施形態において、酸は硫酸およびギ酸より選ばれる。
【0045】
ある実施形態において、ビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーは、約10万から約50万ドルトンの重量平均分子量を持つ。
【0046】
ある実施形態において、ビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーは、約20から約80モル%のビニルアミンモノマーと、約80から約20モル%のN−ビニルホルムアミドモノマーとから成る。
【0047】
ある実施形態において、ビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマー組成物は、約7から約7.5のpHを持つ。
【0048】
ある実施形態において、ビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーは、約30万から約40万ドルトンの重量平均分子量を持つ。
【0049】
少なくとも1つの実施形態において、本発明は、約6.5から約8のpHを持ち、約10から約99モル%のビニルアミンモノマーと、約90から約1モル%のN−ビニルホルムアミドモノマーから成る、1つ以上のビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーを含むポリマー組成物であり、このとき、ビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーは、ポリマー活性成分に対して約1から約10%の1つ以上の架橋剤と反応させ、この架橋剤は、少なくとも1つのエポキシド基を含み、ハロゲンを含んでいない。
【0050】
少なくとも1つの実施形態において、本組成物は、PVAポリマーと、別のPVAポリマー、および/または、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ビニルアルコール含有ポリマー、酢酸ビニル含有ポリマー、ポリアミノアミド、ポリアミド、ポリアミン、架橋したポリアミノアミド、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、グリオキシル化ポリアクリルアミド、ポリアクリラート、ポリメタクリル酸メチル、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリエーテル、ビニルアミン/アクリルアミド共重合体、ビニルアミン/アクリラート共重合体、ポリビニルピロリドン、合成タンパク質、天然タンパク質、およびこれらの組み合わせから成る群より選ばれるポリマーとの混合物を含む。少なくとも1つの実施形態において、この混合物は、少なくとも1つの高分子量ポリマーと、1つの低分子量ポリマーを含む。
【0051】
少なくとも1つの実施形態において、PVAポリマー、および/または、先に挙げた1つ以上の別のポリマーは、粉末、固体の塊、削った細片、粉砕物、薄片、成形品、凝固物、およびこれらの組み合わせなど(但し、これらに限定しない)の乾燥状態の場合に混合する。少なくとも1つの実施形態において、PVAポリマー、および/または、先に挙げた1つ以上の別のポリマーは、溶液、分散液、エマルション、懸濁液、およびこれらの組み合わせなど(但し、これらに限定しない)の液状の場合に混合する。少なくとも1つの実施形態において、この混合物は、液状のPVOHと混合した液状のPVA、液状のPVOHと混合した乾燥状態のPVA、乾燥状態のPVOHと混合した液状のPVA、乾燥PVOHと混合した乾燥状態のPVA、およびこれらの組み合わせの1つ以上を含む。
【0052】
少なくとも1つの実施形態において、本組成物は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ビニルアルコール含有ポリマー、酢酸ビニル含有ポリマー、ポリアミノアミド、ポリアミド、ポリアミン、架橋したポリアミノアミド、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、グリオキシル化ポリアクリルアミド、ポリアクリラート、ポリメタクリル酸メチル、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリエーテル、ビニルアミン/アクリルアミド共重合体、ビニルアミン/アクリラート共重合体、ポリビニルピロリドン、合成タンパク質、天然タンパク質、およびこれらの組み合わせから成る群より選ばれる、別のポリマーで架橋したPVAポリマーを含む。
【0053】
少なくとも1つの実施形態において、架橋は、エピハロヒドリン、ジアルデヒド、ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシラートトリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、イソシアヌル酸トリス(2,3−エポキシプロピル)など、およびこれらの組み合わせから成る群より選ばれる架橋剤を用いて行う。
【0054】
少なくとも1つの実施形態において、架橋剤との反応は、ビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーの水溶液と望ましい量の架橋剤とを約20℃から約100℃の温度に加熱して行う。
【0055】
少なくとも1つの実施形態において、架橋剤と反応させたビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーは、約30から約99モル%のビニルアミンモノマーと、約70から約1モル%のN−ビニルホルムアミドモノマーとから成る。
【0056】
少なくとも1つの実施形態において、架橋剤と反応させたビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーは、約85から約95モル%のビニルアミンモノマーと、約15から約5モル%のN−ビニルホルムアミドモノマーとから成る。
【0057】
少なくとも1つの実施形態において、架橋剤と反応させたビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーは、約1万から約10万ドルトンの重量平均分子量を持つ。
【0058】
少なくとも1つの実施形態において、架橋剤と反応させたビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーは、約3万から約6万ドルトンの分子量を持つ。
【0059】
少なくとも1つの実施形態において、架橋剤は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)およびトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMPTE)より選ばれる。
【0060】
少なくとも1つの実施形態において、本組成物は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ビニルアルコール含有ポリマー、酢酸ビニル含有ポリマー、ポリアミノアミド、ポリアミド、ポリアミン、架橋したポリアミノアミド、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、グリオキシル化ポリアクリルアミド、ポリアクリラート、ポリメタクリル酸メチル、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリエーテル、ビニルアミン/アクリルアミド共重合体、ビニルアミン/アクリラート共重合体、ポリビニルピロリドン、合成タンパク質、天然タンパク質、およびこれらの組み合わせから成る群より選ばれる、別のポリマーの置換基単位を更に含む共重合体である、PVAポリマーを含む。
【0061】
少なくとも1つの実施形態において、本組成物は、可塑剤、湿潤剤、酸化安定剤、無機リン酸塩、有機リン酸塩、剥離剤、潤滑剤、防食剤、およびこれらの組み合わせから成る群より選ばれる追加試剤を含む。
【0062】
少なくとも1つの実施形態において、本組成物は蛍光トレース剤を含む。これにより、組成物に加えた追加試剤が、実際にクレーピングシリンダに付いているかどうか、またその量を求めることができる。蛍光トレース剤の使用は、a)既知量の不活性蛍光トレーサーを既知量のPVAおよび/または追加試剤に加える工程と、b)試剤をクレーピングシリンダに塗布する工程と、c)蛍光光度計を用いて、前記クレーピングシリンダ上の前記不活性蛍光トレーサーの蛍光信号を測定する工程と、d)前記不活性蛍光トレーサーの蛍光信号を用いて、前記クレーピングシリンダ上に存在する不活性蛍光トレーサーの量を求める工程と、e)前記クレーピングシリンダ上に存在する不活性蛍光トレーサーの量を、クレーピングシリンダ上のPVAおよび/または試剤の量と相関させる工程と、f)クレーピングシリンダ上のPVAおよび/または試剤の量を、前記クレーピングシリンダ上に存在するはずの試剤の所望量と比較する工程と、必要に応じて、g)前記不活性蛍光トレーサーの測定した蛍光信号に基づいて、前記クレーピングシリンダ上に存在する試剤の量を調節する工程と、を含む。少なくとも1つの実施形態において、蛍光トレース剤は、米国特許第7,048,826号に記載されている種類のものであり、および/または、この特許に記載されている方法に従って使用する。
【0063】
文中で使用されている用語“不活性”の意味は、不活性蛍光トレーサーが、クレーピング材料中の他の化学物質、または、前記クレーピングシリンダの金属表面によって、感知できるほどに、または有意に影響を受けないことである。“感知できるほどに、または有意に影響を受けない”の意味するものを定量化すると、この記述は、表面に1つ以上のクレーピング組成物を載せたクレーピングシリンダでの一般的な条件下で、不活性蛍光化合物の蛍光信号の変動が10%以下であることを意味する。
【0064】
適当な不活性蛍光トレーサーとしては、1,5−ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム塩(1,5−NDSA)、2−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、5−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸、4−アミノ−3−ヒドロキシル−1−ナフタレンスルホン酸、6−アミノ−4−ヒドロキシル−2−ナフタレンスルホン酸、7−アミノ−1,3−ナフタレンジスルホン酸、カリウム塩、4−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、5−ジメチルアミノ−1−ナフタレンスルホン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、二カリウム塩、2−アントラセンスルホン酸、ナトリウム塩、キノリン(CAS登録番号 91−22−5)、ヨウ化1−エチルキナリジニウム、ジベンゾフランスルホン酸、Brilliant Acid Yellow 8G(CAS登録番号 2391−30−2、即ち、Lissamine Yellow FF、Acid Yellow 7)、cresyl violet acetate(CAS登録番号 10510−54−0)、Safranine O(CAS登録番号 477−73−6)、バソフェナントロリンジスルホン酸二ナトリウム塩(CAS登録番号 52746−49−3)、Titan Yellow(CAS登録番号 1829−00−1、即ち、Thiazole Yellow G)、Celestine Blue(CAS登録番号 1562−90−9)、Sandoz CW(CAS登録番号 56509−06−9、即ち、Flu. Bright, 235)、Sandoz CD(CAS登録番号 16470−24−9、即ち、Flu. Bright. 220)、Sandoz TH-40(CAS登録番号 32694−95−4)、Tinopal 5BM-GX(CAS登録番号 169762−28−1)、Keyfluor White ST(CAS登録番号 144470−48−4、即ち、Flu. Bright. 28)、Phorwite CL(CAS登録番号 12270−53−0、即ち、Flu. Bright. 191)、Phorwite BKL(CAS登録番号 61968−72−7、即ち、Flu. Bright. 200)、Leucophor BSB(CAS登録番号 68444−86−0、即ち、Leucophor AP、Flu. Bright. 230)、Leucophor BMB(CAS登録番号 16470-24-9、即ち、Leucophor U、Flu. Bright. 290)、Keyfluor White CN(CAS登録番号 16470−24−9)、Tinopol DCS(CAS登録番号 205265−33−4)、1−アミノ−4−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−7−ナフタレンスルホン酸、アミノ−2,5−ベンゼンジスルホン酸、1,3,6,8−ピレンテトラスルホン酸、四ナトリウム塩、8−ヒドロキシ−1,3,6−ピレントリスルホン酸、三ナトリウム塩(即ち、Pyranine)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、ビス−N−メチルアクリジニウム(即ち、Lucigenin)、2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール、フルオレセイン(CAS登録番号 2321−07−5、即ち、Acid Yellow 73、Uranine)、スルホローダミンB(CAS登録番号 3520−42−1、即ち、Acid Red 52)、ローダミンWT(CAS登録番号 37299−86−8)、レザズリン(CAS登録番号 550−82−3)、Rhodalux(CAS登録番号 550−82−3)、Anthrasol Green IB(CAS登録番号 2538−84−3、即ち、Solubilized Vat Dye)、Acridine Orange(CAS登録番号 65−61−2)、Phorwite BHC 766(CAS登録番号 52237−03−3)、Tinopal CBS-X(CAS登録番号 27344−41−8)、Tinopal RBS 200、Pylaklor White S-15A(CAS登録番号 6416−68−8)、およびこれらのアンモニウム、カリウム、およびナトリウム塩(但し、これらに限定しない)が挙げられる。
【0065】
どの不活性蛍光トレーサーを使うかは、蛍光トレーサーとPVAまたは試剤との適合性による。最適な不活性蛍光トレーサーの選定法は、PVAまたは特定の試剤を被覆したクレーピングシリンダ上に存在するどのような蛍光信号も検出する蛍光光度計を用いるものである。次に、不活性蛍光トレーサーをPVAまたは試剤に加え、PVAまたは試剤を置いたクレーピングシリンダ上のその蛍光信号を蛍光光度計を用いて検出する。バックグラウンドの蛍光のため、または、PVAまたは試剤自体の蛍光信号による妨害のため、不活性蛍光トレーサーの蛍光信号を検出できない場合には、より多くの不活性蛍光トレーサーを用いるか、その試剤またはPVAに使用するための、別の不活性蛍光トレーサーを選択することができる。別の不活性蛍光トレーサーは、その励起および発光波長が、バックグラウンド蛍光信号および試剤の蛍光信号の波長と異なるものを選択する。少なくとも1つの実施形態において、本件で主張する発明での使用に適した蛍光光度計は、使用する不活性蛍光トレーサーからの蛍光信号(放射光)を検出および測定可能なものである。
【0066】
少なくとも1つの実施形態では、次のスキームに従った反応によってPVAを改質する。
【化2】
【0067】
ハロゲン化有機酸のカルボニル炭素がポリマーのアミノ窒素成分に共有結合する反応によって、ハロゲン化有機酸でポリマーを改質する。少なくとも1つの実施形態において、このポリマーは、米国特許第7,902,312号に記載の少なくとも1つの構造を持つ。少なくとも1つの実施形態において、このポリマーは上記の構造を持ち、マイケル付加またはハロゲン化有機酸改質以外の反応で生成する。
【0068】
従来、ハロゲン化有機酸は、アミン含有ポリマー(例えば、米国特許第3,640,841号に記載のものなど)に使われているが、次の反応スキームに示すように、第2級アミン基にプロトンが付加してカチオンができるだけのイオン錯体反応である。つまり、先行技術ではイオン反応を示しているだけであり、本発明の共有結合反応ではない。
【化3】
【0069】
ある実施形態において、約5/95から約95/5の重量比の、本発明の、1つ以上のビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーと、ポリアミノアミド、ポリアルキレンポリアミン、ポリ(ビニルアルコール/酢酸ビニル)、ポリエチレンイミン、およびポリビニルアミン共重合体から成る群より選ばれる、1つ以上のポリマーとを、ポリマー活性成分に対して約1から約10%の、本件に記載の1つ以上の架橋剤と反応させる。
【0070】
ポリアミノアミドは、一般に、1つ以上の有機ジカルボン酸誘導体と、1つ以上のポリアルキレンポリアミンとを、長鎖ポリアミドの生成に適した条件下、望ましくは、約130℃以上の温度で、水またはアルコール副生物を除きながら数時間、重縮合させて生成する。生成するポリアミノアミドは、典型的に、約500から約50万ドルトンの重量平均分子量を持ち、ポリマーのブルックフィールド(Brookfield)粘度は、50%溶液、25℃で、約100cPより高くなる。重合終了時に水を加えて、ポリマー水溶液とする。
【0071】
少なくとも1つの実施形態では、ポリアルキレンポリアミンの第1級アミノ基のほぼ全てと反応するには十分な量であるが、第2級アミノ基のかなりの割合(または殆ど)と反応するには不十分な量の有機酸誘導体を使用する。有機ジカルボン酸誘導体/ポリアルキレンポリアミンのモル比は、望ましくは、約0.9/1.0から約1.0/0.9の間である。
【0072】
“有機ジカルボン酸誘導体”には、脂肪族および芳香族ジカルボン酸と、その対応する酸塩化物、無水物、エステル、およびこれらの混合物が含まれる。エステルは、望ましくは、C
1〜C
3脂肪族エステルである。生成するポリアミノアミドが水溶性または水分散性となるよう、有機ジカルボン酸誘導体を選ぶ。
【0073】
代表的な有機ジカルボン酸およびその誘導体としては、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸ジメチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジイソプロピル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸エチルメチル(methyl, ethyl adipate)、セバシン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、ナフタレンジカルボン酸ジメチル、二塩基エステル(dibasic esters)(DBE)、ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル、塩化スクシニル、二塩化グルタリル、塩化アジポイル、塩化セバコイル、塩化フタロイル、塩化イソフタロイル、塩化テレフタロイル、ナフタレンジカルボキシラート、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、1,8−ナフタル酸無水物などが挙げられる。DBE−2二塩基エステル、アジピン酸、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチルが好ましい。
【0074】
ポリ(ビニルアルコール/酢酸ビニル)は、欧州特許第0942008号およびその参考文献に述べられているように、酢酸ビニルモノマーをラジカル重合し、次に、"Polyvinyl alcohol",C.A. Finch編, John Wiley & Sons, New York, 1973, pp. 91-120 に述べられているように、酸または塩基で加水分解して調製しても良い。ポリ(ビニルアルコール/酢酸ビニル)は、例えば、テキサス州ダラス、Sekisui Specialty Chemicalsより、Celvolの商標名で、また、デラウェア州ウィルミントン、E.I. DuPont de Nemours & Companyより、Elvanolの商標名で市販もされている。
【0075】
ある実施形態において、ポリ(ビニルアルコール/酢酸ビニル)は、約13,000から約186,000ドルトンの重量平均分子量を持ち、約87から99.5モル%のビニルアルコール単位と、約13から約0.5モル%の酢酸ビニル単位から成る。
【0076】
ある実施形態において、ポリ(ビニルアルコール/酢酸ビニル)は、約3万から約6万ドルトンの重量平均分子量を持ち、約87から89モル%のビニルアルコール単位と、約13から約11モル%の酢酸ビニル単位から成る。
【0077】
ポリビニルアミンは、米国特許第5,374,334号およびその参考文献に述べられているように、ポリ(N−ビニルホルムアミド)を加水分解して調製しても良い。本発明の方法および組成物に有用なポリビニルアミンは、典型的に、約5,000から約50万ドルトンの分子量を持つ。ある実施形態において、ポリビニルアミンは、約1万から約10万ドルトンの重量平均分子量を持つ。
【0078】
ポリエチレンイミンは、米国特許第2,182,306号および米国特許第3,251,778号に述べられているように、エチレンイミンの重合によって調製しても良い。ポリエチレンイミンは、例えば、ニュージャージー州マウントオリーブ、BASFより、Lupasolの商標名で市販もされている。本発明の方法および組成物に有用なポリエチレンイミンは、典型的に、約1,000から約100万の重量平均分子量を持つ。
【0079】
ある実施形態では、式 X−R−CO
2M (式中、Xは、F、Cl、Br、またはIであり、Rは、アルキルまたはアルキルアリールであり、Mは、H、あるいは、アルカリまたはアルカリ土類金属、またはアンモニウム対イオン、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウムなど)で表される、1つ以上のハロゲン化有機酸との反応により、ビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマー、および/または、架橋したビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーを改質する。アルキル基は、直鎖でも分枝でも良く、典型的に、1から約6の炭素原子を含む。アリール基は一般にフェニルであり、必要に応じて1つ以上のハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、またはヒドロキシル基で置換されている。
【0080】
代表的なハロゲン化有機酸としては、クロロ酢酸、4−(クロロメチル)安息香酸、2−クロロプロピオン酸、3−クロロプロピオン酸、ブロモ酢酸、2−ブロモ酪酸、3−ブロモ酪酸、4−ブロモ酪酸、α−ブロモイソ酪酸など、およびこれらの塩が挙げられる。
【0081】
ある実施形態において、ハロゲン化酸は、クロロ酢酸またはその塩である。
【0082】
ある実施形態において、本発明の接着剤組成物は、1つ以上の水溶性ポリオールを更に含む。
【0083】
文中で用いられている“ポリオール”とは、アルキレン基と、約6個までのヒドロキシル基から成る、単純な水溶性ポリオールを指し、アルキレン基には、必要に応じて、1つ以上のOまたはNH基が挟まれている。代表的な水溶性ポリオールとしては、グリセロール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ソルビトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロールなどが挙げられる。
【0084】
ある実施形態において、ポリオールは、グリセロール、エチレングリコール、ソルビトール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエタノールアミンより選ばれる。
【0085】
少なくとも1つの実施形態において、ポリオールはグリセロールである。少なくとも1つの実施形態において、ポリオールの少なくとも1つは、米国特許出願第12/652,059号、および/または、米国特許第8,101,045号に記載されているポリオール類より選ばれた1つ以上のポリオール、およびこれらの組み合わせである。
【0086】
乾燥ポリマーベースでのビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーに対する水溶性ポリオールの量は、典型的に、約5から95質量%の範囲である。ある実施形態では、約10から75質量%の水溶性ポリオールの使用が望ましい。当然のことながら、全ての水溶性ポリオールが同じ結果をもたらすわけではない。ある例では、使用する温度、使用する特定のビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマー、その他の変数に応じて、使用すべき最適の水溶性ポリオールと、ビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーと共に使用すべき特定の量を求めるため、日常的な実験が必要と考えられる。
【0087】
本発明の接着剤組成物は通常、希釈水溶液としてクレーピングシリンダ表面に塗布する。ある実施形態において、この水溶液には、約0.01から約10.0質量%の本発明のポリマーが含まれる。別の実施形態において、本発明のポリマーは、約0.05から約5.0質量%の濃度で、水溶液に含まれている。別の実施形態では、本発明のポリマーは、約0.1から約1.0質量%の濃度で、水溶液に含まれる。クレーピング接着剤に詳しい者ならば、混合物中の水の割合がこのように大きい理由の1つが、クレーピングシリンダ上に接着剤のごく薄い層を設けるだけで良いことであり、ある実施形態では、スプレーブームを用いて極めて簡単にこれを行えることが理解されよう。
【0088】
上記のスプレー塗布は、様々な手段、例えば、二重または三重に被覆するよう設計されたスプレーブームを使用することにより、スプレーブームを規則的に振動させることにより、また、良く混ぜ合わせて分離しないようにするため、希釈したクレーピング組成物をスプレーブームの放出口から再循環させることにより、更に改善しても良い。
【0089】
ある実施形態では、ポリマー接着剤と共に、これも水溶液状の剥離剤をヤンキードライヤーに塗布する。剥離剤は、ヤンキードライヤー表面と、ヤンキードライヤーからティッシュペーパーをクレープするために使用するドクターブレードとの間に潤滑性を与える。剥離剤はまた、クレーピング工程の際、ティッシュペーパーを接着剤から剥離させる。代表的な剥離剤としては、ナフテン油、パラフィン油、植物油、鉱油、または合成潤滑油から成る剥離油や、乳化性界面活性剤が挙げられる。安定した水性分散液を生成するため、剥離剤には通常、脂肪酸、アルコキシル化アルコール、アルコキシル化脂肪酸などの、1つ以上の界面活性剤を配合する。剥離剤は、接着剤組成物の前または後に、クレーピングシリンダに塗布しても良く、あるいは、クレーピングシリンダに塗布するための接着剤に配合しても良い。
【0090】
本発明の接着剤組成物を、ティッシュまたはタオルの柔軟性を高めるため当技術で用いられている機能性添加剤と組み合わせて使用しても良い。代表的な機能性添加剤としては、約12から約22の炭素原子を含む脂肪鎖を備えた有機第4級塩、例えば、ジアルキルイミダゾリニウム第4級塩、ジアルキルジアミドアミン第4級塩、モノアルキルトリメチルアンモニウム第4級塩、ジアルキルジメチルアンモニウム第4級塩、トリアルキルモノメチルアンモニウム第4級塩、エトキシル化第4級塩、ジアルキルおよびトリアルキルエステル第4級塩などが挙げられる。その他の適当な機能性添加剤としては、ポリシロキサン、第4級シリコーン、有機反応性ポリシロキサン、アミノ官能化ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0091】
ある実施形態では、クレーピングシリンダに塗布するための本発明の接着剤組成物に機能性添加剤を配合する。
【0092】
ある実施形態において、機能性添加剤は、ジアルキルイミダゾリニウム第4級塩および第4級シリコーンより選ばれる。
【実施例】
【0093】
以上述べた事柄は、以下の実施例を参照すると更に良く理解されよう。この実施例は説明を目的として示されており、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0094】
ティッシュクレーピング用の安定かつ有用な製品を製造するため、ポリビニルアルコールとビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーとを混合して、実験を行った。代表的な例として、800〜1000rpmでかき混ぜながら、136.36gのポリマーB(米国特許出願公開第2007/0000631号の表Iに記載)と、98.64gの脱イオン水とを含む溶液を調製した。かき混ぜ続けながら、15gの乾燥(粉末)Celvol 523 ポリビニルアルコール(Sekisui Specialty Chemicals製)を混合物に加えた。混合物を90〜95℃に加熱し、Celvol 523 が完全に溶けるまでこの温度に保った。溶液を室温まで放冷した。この時点で、追加成分をクレーピング配合物に加えることができる。追加成分としては、請求項12〜14(米国特許出願公開第2007/0000631号)に記載の水溶性ポリオール、米国特許第8,101,045号に記載のポリグリセロールなどの調節剤、防腐剤、(米国特許出願公開第2007/0000631号の)[0049]に記載の機能性添加剤、希釈のため加える水が挙げられる。
【0095】
このようにして調製した混合物は、分離性に関して非常に安定であることが証明されている。例えば、ビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーの水溶液を、予め溶解させた液相のPVOH(Celvol 523)と混ぜ合わせた混合物は、2日以内に分離した。本発明の教示に従って、ビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーの水溶液に乾燥PVOHを溶解して混合物を調製すると、この混合物は9ヶ月以上も安定なままである。
【0096】
更に、本発明に従って調製した、ビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーとPVOHの混合物は、クレーピング用として改善された接着性を示す。米国特許出願公開第2007/0000631号の実施例6に記載の方法に従い、TAD工程からの様々なシート水分を模倣するように綿布の水分含量を制御しながら、引きはがし粘着力を試験した。正規化した引きはがし粘着力値が高いほど、接着性が向上したことを示している。表1から、本発明の混合物は、2つの別々のポリマー溶液を混合したものに比べ、常に引きはがし粘着力値が高いことが分かる。更に、布の水分含量が下がっても接着力は保たれ、これは、ヤンキーと接する際のシート水分が従来のクレーピング方法よりも少ないTAD工程において有利である。
【0097】
【表1】
【0098】
異なる分子量と加水分解度を持つビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーの混合物を評価するため、更に実験を行った。再度、混合物を評価して、クレープした(creped)TAD工程に一般的な低水分条件下での混合物の有効性を求めた。表2に示すPVAm Aは300kD(SEC/MALLSで測定)の重量平均分子量(Mw)を持ち、PVAm Bは73kDのMwを持つ。更に、PVAm Aは30%の加水分解度を持ち、PVAm Bは70%の加水分解度を持つ。加水分解度は、加水分解によってビニルアミン基に変化した、ポリマー中のビニルホルムアミド基の数を示していることに留意すべきである。
【0099】
表2の引きはがし粘着力データは、異なるMwと加水分解度を持つビニルアミン/N−ビニルホルムアミドポリマーのどのような混合物を用いれば、異なるクレーピング工程における接着性を最大にできるかを示している。例えば、ヤンキーに到達するシートの水分が少ない(表2の、水分含量14%を参照)TAD工程では、Mwが小さく加水分解度の高いPVAm BをPVAm Aに混ぜ合わせると接着力が大きくなる。
【0100】
【表2】
【0101】
本発明は多くの様々な形に具体化できるが、文中では、本発明の特定の望ましい実施形態を詳細に述べた。本明細書は本発明の原理の例証であり、説明した特定の実施形態に本発明を限定するものではない。全ての特許、特許出願、学術論文、その他文中に言及されている参考文献は、その内容を本件に引用して援用する。更に、本発明は、文中に記載、および/または、本件に含まれる様々な実施形態の一部または全てのあらゆる可能な組み合わせを包含する。更に、本発明は、文中に記載、および/または、本件に含まれる様々な実施形態のいずれかまたは一部を明確に除いた、あらゆる可能な組み合わせも包含する。
【0102】
上記の開示内容は説明のためであって、網羅的なものではない。この記述は、多くの変更および代替案を当業者に提案すると考えられる。これらの代替案および変更は全て請求項の範囲に含まれるものとする。請求項において、用語“含む”は、“含む(但し、これらに限定しない)”を意味する。当業者ならば、文中に述べられている具体的な実施形態と同等の別のものも容認できよう。これらの同等物も請求項に包含されるものとする。
【0103】
文中に示されている全ての範囲およびパラメータは、それに含まれる部分的な範囲の全てと、両端点の間の全ての数を包含するものとする。例えば、“1から10”と述べられている範囲は、最小値の1と最大値の10の間(それらを含む)の部分的な範囲の全て、つまり、最小値の1以上で始まり(例えば、1から6.1)、最大値の10以下で終わる(例えば、2.3から9.4、3から8、4から7)、全ての部分的な範囲であって、最終的に、この範囲内に含まれるそれぞれの数1、2、3、4、5、6、7、8、9、10を含むと考えるべきである。別途規定されていない限り、文中の全ての割合、比、比率は重量比である。
【0104】
本発明の望ましい、またそれに代わる実施形態の記述は以上である。当業者ならば、文中に述べられている具体的な実施形態と同等の別のものも容認できよう。これらの同等物も添付の請求項に包含されるものとする。