(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6587711
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】キーキャップ、キーボード及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01H 13/14 20060101AFI20191001BHJP
G06F 3/02 20060101ALI20191001BHJP
H01H 3/12 20060101ALI20191001BHJP
H01H 13/705 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
H01H13/14 Z
G06F3/02 400
H01H3/12 A
H01H13/705
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-82869(P2018-82869)
(22)【出願日】2018年4月24日
【審査請求日】2018年4月24日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年1月16日 レノボ コンパル フーチャセンター リミテッドに北村昌宏、堀内光雄、及び堂薗賢がなした発明を実施した製品を出荷した。 平成30年1月19日 レノボ新製品発表会にて北村昌宏、堀内光雄、及び堂薗賢がなした発明を実施した製品を公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】堀内 光雄
(72)【発明者】
【氏名】堂薗 賢
【審査官】
太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−063401(JP,A)
【文献】
特開2006−344607(JP,A)
【文献】
特開平10−214536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00−13/88
G06F 3/02
H01H 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キースイッチのガイド機構に着脱可能に設けられるキーキャップであって、
キー入力される際に押される表面及び前記表面と反対側の裏面を有するキャップ本体部と、
互いに間隙を存して前記キャップ本体部の前記裏面から突出し、前記間隙に前記ガイド機構の係合部が着脱可能に係合される第1係合突起及び第2係合突起と、を備え、
前記キャップ本体部における前記第1係合突起の周辺及び前記第2係合突起の周辺の少なくとも一部に、前記キャップ本体部の他の部分よりも薄肉にされている薄肉部分があり、
前記薄肉部分は、その一部がさらに薄肉化された凹部を前記裏面に有している、キーキャップ。
【請求項2】
前記薄肉部分が前記キャップ本体部における前記第1及び第2係合突起の間にある、請求項1に記載のキーキャップ。
【請求項3】
前記薄肉部分が前記キャップ本体部における、前記第1係合突起の前記間隙とは反対側の部分と、前記第2係合突起の前記間隙とは反対側の部分にある、請求項1又は2に記載のキーキャップ。
【請求項4】
キースイッチのガイド機構に着脱可能に設けられるキーキャップであって、
キー入力される際に押される表面及び前記表面と反対側の裏面を有するキャップ本体部と、
互いに間隙を存して前記キャップ本体部の前記裏面から突出し、前記間隙に前記ガイド機構の係合部が着脱可能に係合される第1係合突起及び第2係合突起と、を備え、
前記キャップ本体部は、第1の厚みを有する基本部分と、第1の厚みより小さい厚みを有する薄肉部分と、で構成され、
前記第1係合突起及び前記第2係合突起とは前記薄肉部分の内側に形成されており、
前記基本部分の厚さに対する前記薄肉部分の厚さの比率が0.8以上である、キーキャップ。
【請求項5】
前記薄肉部分は、その一部がさらに薄肉化された凹部を前記裏面に有している、請求項4に記載のキーキャップ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のキーキャップを複数備えている、キーボード。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載のキーキャップを備えている、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーキャップ、キーボード及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータなどの電子機器は、入力機器の一種として、例えばキースイッチを複数有するキーボードを備えている。例えば、特許文献1に開示されたキースイッチは、ベースプレートと、パンタグラフ型のガイド機構と、キーキャップと、を備え、キーキャップは、爪形の一対の係止部の間にガイド機構の軸部材を回転可能に挟むことによって、ガイド機構に着脱可能に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−81393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子機器の薄型化のニーズを満たすためには、キーキャップの高さを全体として低くする必要がある。この点、例えば特許文献1に開示されたキーキャップの高さを低くすると、一対の係止部の長さが短くなる。このため、一対の係止部の間にガイド機構の軸部材を装着する際に、一対の係止部に大きな負荷がかかり、各係止部に永続的な変形や損傷が生じやすくなる。このような永続的な変形や損傷が生じると、キーキャップがガイド機構から外れてしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、キースイッチのガイド機構からの脱落を抑制することができるキーキャップに関する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るキーキャップは、キースイッチのガイド機構に着脱可能に設けられるキーキャップであって、キー入力される際に押される表面及び表面と反対側の裏面を有するキャップ本体部と、互いに間隙を存してキャップ本体部の裏面から突出し、間隙にガイド機構の係合部が着脱可能に係合される第1係合突起及び第2係合突起と、を備え、キャップ本体部における第1係合突起及び第2係合突起の周辺の少なくとも一部に、キャップ本体部の他の部分よりも薄肉にされている薄肉部分がある。
【0007】
このような態様によれば、キャップ本体部における第1係合突起及び第2係合突起の周辺の薄肉部分に弾性をもたせることができる。これにより、両係合突起の間の間隙にガイド機構の係合部を装着する際に、両係合突起が撓みやすくなる。したがって、キーキャップを薄型化し、第1及び第2係合突起の突出長さを短くする場合であっても、ガイド機構の係合部が装着される際に両係合突起にかかる負荷を低下させることができるので、各係合突起の永続的な変形や損傷を抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のキーキャップ、キーボード及び電子機器によれば、キースイッチのガイド機構からのキーキャップの脱落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るキーキャップを有するキースイッチを備えた電子機器を示す図である。
【
図4】
図1のキーキャップの裏面側を概略的に示す斜視図である。
【
図6】他の実施態様に係るキーキャップについて、
図5と同様の断面図である。
【
図7】他の実施態様に係るキーキャップについて、
図5と同様の断面図である。
【
図8】第2実施形態に係るキーキャップについて、
図5と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、第2実施形態以降において、第1実施形態と同一又は類似の構成要素は、第1実施形態と同一又は類似の符号で表し、詳細な説明を適宜省略する。また、第2実施形態以降の実施形態において得られる効果について、第1実施形態と同様のものについては説明を適宜省略する。各実施形態の図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を実施形態に限定して解するべきではない。
【0011】
各々の図面には、各々の図面相互の関係を明確にし、各部材の位置関係を理解する助けとするために、便宜的にX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向からなる直交座標系を付している。X軸方向は第1方向に相当し、Y軸方向は第2方向に相当し、Z軸方向は第3方向に相当する。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は、それぞれ正方向(矢印の方向)及び負方向(矢印とは反対の方向)を含むものとする。また、図中に示すX軸、Y軸、及びZ軸は、例えばそれぞれ互いに直交するが、それぞれ互いに交差すればこれに限定されるものではなく、互いに90°以外の角度で交差してもよい。
【0012】
<第1実施形態>
図1を参照して、第1実施形態に係るキーキャップを備えた電子機器2について、ノートブック型パーソナルコンピュータを例に説明する。電子機器2では、表示部26及び操作部20が、一対のヒンジ部28、28を支点として、開閉可能に連結されている。
図1に示す開状態の電子機器2では、表示部26は画像を表示パネル24に表示し、操作部20はユーザからの入力を受け付ける。閉状態の電子機器2では、表示部26及び操作部20が重なり、表示部26が操作部20のカバーとして機能する。表示パネル24は、例えば、液晶表示パネルや有機EL表示パネルである。操作部20は、扁平な箱状に形成された筐体21と、筐体21の表示部26側の面に露出したキーボード4と、を備えている。図示を省略しているが、筐体21の内部には、各種の電子部品が収容されている。電子部品は、例えば、電子回路基板、CPUやGPUなどの演算装置、ROM、RAM、HDD又はSDDなどの記憶装置、バッテリなどである。
【0013】
キーボード4は、複数のキースイッチ6を有する入力装置である。複数のキースイッチ6は、例えば、X軸方向及びY軸方向にマトリクス状に配列される。
図1に示す例では、キーボード4は、各々のキースイッチ6の間に隙間が設けられたアイソレーション型キーボードであり、各々のキースイッチ6の周囲の隙間を埋めるコスメティックフレーム22を有している。但し、キーボード4は、アイソレーション型に限定されるものではなく、例えばコスメティックフレーム22が省略されてもよい。
【0014】
図2及び
図3に示すように、各キースイッチ6は、キーキャップ10と、ベースプレート30と、メンブレンスイッチ32と、防水シート34と、ラバードーム40と、ガイド機構50と、を備えている。キーキャップ10は、ユーザによるキー入力を受け付ける。キーキャップ10は、例えば樹脂により形成されている。しかし、キーキャップ10の材質は限定されず、金属により形成されてもよい。
【0015】
ベースプレート30は、キーボード4全体に亘って設けられた板状の部材であり、X軸方向及びY軸方向に延在している。キーボード4における全てのガイド機構50が、1つのベースプレート30に取り付けられる。ベースプレート30には、ガイド機構50を取り付けるための一対の固定部36、36及び一対の固定部38、38が設けられている。メンブレンスイッチ32は、ベースプレート30と同様にキーボード4全体に亘って設けられたシート状の部材であり、ベースプレート30のキーキャップ10側に設けられている。メンブレンスイッチ32は、押圧されたときに接点が閉じる三層構造のスイッチシートであり、キーキャップ10の変位が電気的特性の変化として検出される。防水シート34は、ベースプレート30と同様にキーボード4全体に亘って設けられた膜状の部材であり、ベースプレート30のメンブレンスイッチ32側とは反対側に設けられている。
【0016】
ラバードーム40は、メンブレンスイッチ32とキーキャップ10との間に設けられた弾性部材である。ラバードーム40は、キーキャップ10がユーザにより押し込まれたときにメンブレンスイッチ32を押圧する。また、ラバードーム40は、キーキャップ10がユーザによって加えられていた圧力から解放されたときにキーキャップ10を元の位置に復帰させる。なお、メンブレンスイッチ32を押圧可能であり且つ復元力を有する部材であれば、ラバードーム40の代わりに、例えばスプリングを用いてもよい。
【0017】
ガイド機構50は、ベースプレート30とキーキャップ10との間に設けられ、ベースプレート30に対してキーキャップ10を着脱可能に且つZ軸方向に沿って変位可能に連結している。ガイド機構50は、例えばパンタグラフ型で構成されており、互いに接続された外側枠52及び内側枠54を有する。外側枠52は、Y軸方向に一対の係合部52aをキーキャップ10側に、また、Y軸方向に一対の係合部52bをベースプレート30側に有している。同様に、内側枠54は、Y軸方向に一対の係合部54aをキーキャップ10側に、また、Y軸方向に一対の係合部54bをベースプレート30側に有している。係合部52a、52b、54a及び54bは、例えば、Y軸に沿って延在する軸部として形成することができる。係合部52a及び54aはキーキャップ10に係合される一方、係合部52b及び54bはベースプレート30の固定部36及び38に係合される。このようなガイド機構50の構成により、キーキャップ10が、前後左右方向への変位を規制されながらベースプレート30に対して上下動するように構成されている。具体的には、キーキャップ10がユーザによって押し込まれると、内側枠54が外側枠52に収容されるようにしてガイド機構50が折り畳まれ、キーキャップ10のZ軸の下方向への移動がガイドされる。一方、ユーザによって加えられていた圧力からキーキャップ10が解放されると、外側枠52及び内側枠54が互いに交差するようにしてガイド機構50が展開し、キーキャップ10のZ軸の上方向への移動がガイドされる。
【0018】
図2に示すように、キーキャップ10は、キャップ本体部18と、キャップ本体部18の周縁からベースプレート30側に突出する端部19と、を備えている。キャップ本体部18は、ユーザによってキー入力される際に押される表面10Aと、表面10AとはZ軸方向において反対側にある裏面10Bと、を有する。表面10Aには、印刷や刻印などによって、各々のキースイッチ6の機能を示す文字や記号が付される。
【0019】
図4に示すように、裏面10Bには、ガイド機構50側の一対の係合部52a、52aに対応して、一対の係合ユニット62−1,62−2が設けられている。また、裏面10Bには、ガイド機構50側の一対の係合部54a、54aに対応して、一対の係止片64−1,64−2が設けられている。一対の係合ユニット62−1,62−2は、キャップ本体部18のX軸方向の一方の端部側にて、キャップ本体部18のX軸方向に沿った中心軸に対して線対称に配置されている。同様に、一対の係止片64−1,64−2は、キャップ本体部18のX軸方向の他方の端部側にて、キャップ本体部18のX軸方向に沿った中心軸に対して線対称に配置されている。また、一対の係止片64−1,64−2は、それぞれ、一対の係合ユニット62−1,62−2よりも、Y軸方向において外側に配置されている。係止片64−1,64−2は、裏面10Bから垂直に突出しており、その先端がY軸方向における内側に向いたフック形状を有している。係止片64−1,64−2のそれぞれに、係合部54a及び54aが着脱可能に係合される。
【0020】
図4及び5に示すように、一対の係合ユニット62−1,62−2は、それぞれ、第1係合突起11a及び第2係合突起11bを有している。第1係合突起11a及び第2係合突起11bは、互いに間隙を存して裏面10Bから突出している。この間隙に係合部52aが挿入され、第1係合突起11a及び第2係合突起11bに着脱可能に係合される。第1係合突起11a及び第2係合突起11bは、X軸方向に並んでおり、この間の間隙をZ軸方向に沿った面に対して線対称な形状を有している。具体的には、第1係合突起11a及び第2係合突起11bでは、間隙と反対側の外側部分が裏面10Bから斜め内向きに延在し、また、内側部分が裏面10Bから垂直に延在し且つ根元部分70と先端部分72との間に半円形の開口部74を有している。第1係合突起11aと第2係合突起11bとは、互いに対向する内側部分によって、根元部分70から先端部分72にかけて上記の間隙を画定している。また、第1係合突起11a及び第2係合突起11bでは、先端部分72から根元部分70にかけて全体として幅広に形成されている。つまり、第1係合突起11a及び第2係合突起11bは、先端部分72から根元部分70に向かうにつれ、互いに対向する側とは反対側に広がっている。また、先端部分72は、係合部52aの挿入を受け入れ易いように、内側部分に外向きに傾斜した傾斜面を有している。互いに対向する半円形の開口部74、74によって、挿入された係合部52aが収まる略円筒状の係合受部12が形成されている。
【0021】
ここで、第1係合突起11aと第2係合突起11bとの間の間隙に関して、先端部分72におけるX軸方向に沿った最小の距離L1は、係合受部12におけるX軸方向に沿った距離L2よりも小さい(L1<L2)。一方、係合部52aの直径は、距離L1よりも大きく、距離L2よりも小さい。このような寸法設定により、キーキャップ10のガイド機構50への取り付けの際、係合部52aが第1係合突起11aの先端部分72と第2係合突起11bの先端部分72との間を通るとき、第1係合突起11a及び第2係合突起11bが開く方向に一時的に変形し、これらの間の間隙が押し広げられる。そして、係合部52aが係合受部12に到達すると、第1係合突起11a及び第2係合突起11bが元の形状に戻る。このとき、係合部52aは、自由状態では抜けない程度に係合受部12に保持される。なお、キーキャップ10のガイド機構50からの取り外し時も、第1係合突起11a及び第2係合突起11bが同様に一時的に変形する。
【0022】
次に、キャップ本体部18の厚さについて説明する。キャップ本体部18は、表面10Aと裏面10Bとによって画定される厚みが一様ではなく、係合ユニット62−1,62−2が存在するところとそれ以外のところとで厚みが異なっている。具体的には、厚みの観点では、
図4に示すように、キャップ本体部18は、第1の厚みを有する基本部分13と、第1の厚みより小さい厚みを有する薄肉部分15と、で構成される。参考までに、薄肉部分15について、
図4において網掛けを施している。薄肉部分15は、キャップ本体部18の裏面視、略長方形状であり、その内側に係合ユニット62−1,62−2を包含している。
【0023】
図5に示すように、薄肉部分15は、第1係合突起11a及び第2係合突起11bとの関係において、X軸方向に並ぶ第1外側薄肉部15a、中央薄肉部15b及び第2外側薄肉部15cを有している。第1外側薄肉部15aは、キャップ本体部18における、第1係合突起11aの上記間隙とは反対側の部分である。同様に、第2外側薄肉部15cは、キャップ本体部18における、第2係合突起11bの上記間隙とは反対側の部分である。第1外側薄肉部15aは、第1係合突起11aの根元部分70の外側部分につながる最も薄い部位15a−1と、この部位15a−1から斜めに延びて基本部分13につながる傾斜部位15a−2と、を有している。同様に、第2外側薄肉部15cは、第2係合突起11bの根元部分70の外側部分につながる最も薄い部位15c−1と、この部位15c−1から斜めに延びて基本部分13につながる傾斜部位15c−2と、を有している。中央薄肉部15bは、キャップ本体部18における、第1係合突起11a及び第2係合突起11bの間の部分である。
【0024】
ここで、第1外側薄肉部15aの部位15a−1、第2外側薄肉部15cの部位15c−1及び中央薄肉部15bは、それぞれの厚さが互いに同じとなっている(T15a=T15b=T15c)。これらの厚さは互いに変えることもできるが、その厚さは基本部分13の厚さよりも小さいものとなる(T15a<T13、T15b<T13、T15c<T13)。電子機器2がノートブック型パーソナルコンピュータである場合の一例として、厚さT13が0.55mmであり、厚さT15a、T15b及びT15cが0.45mmであることが挙げられる。なおその場合、基本部分13と薄肉部分15との厚さの差が0.15mm以上であると、成形収縮の大きさの差に起因したヒケが表面10Aに生じる可能性がある。このため、基本部分13に対する薄肉部分15の比率は、好ましくは0.8以上である。
【0025】
以上説明したように、本実施形態のキーキャップ10によれば、キャップ本体部18における第1係合突起11a及び第2係合突起11bの周辺に、キャップ本体部18の他の部分よりも薄肉にされている薄肉部分15がある。詳細には、キャップ本体部18では、第1係合突起11a及び第2係合突起11bの各根元部分70の近傍部が基本部分13よりも薄く形成されている。より詳細には、各根元部分70の外側部分及び内側部分にそれぞれつながるところが、第1外側薄肉部15a、中央薄肉部15b及び第2外側薄肉部15cとして形成されている。
【0026】
このような薄肉の態様を採用することで、キャップ本体部18における第1係合突起11a及び第2係合突起11bの周辺の薄肉部分15に弾性をもたせることができる。これにより、両係合突起11a、11bの間の間隙にガイド機構50の係合部52aを装着する際に、両係合突起11a、11bは先端部分72が開くように撓みやすくなる。したがって、キーキャップ10を薄型化し、第1係合突起11a及び第2係合突起11bの突出長さを短くする場合であっても、ガイド機構50の係合部52aが装着される際に両係合突起11a,11bにかかる負荷を低下させることができるので、両係合突起11a,11bの永続的な変形や損傷を抑制することができる。よって、ガイド機構50からのキーキャップ10の脱落を抑制することができる。
【0027】
他の実施態様においては、第1外側薄肉部15a、第2外側薄肉部15c及び中央薄肉部15bの少なくとも一つを省略することも可能である。例えば、
図6に示すように、第1外側薄肉部15a及び第2外側薄肉部15cを省略し、これらの部分を基本部分13の一部として形成してもよい。あるいは、
図7に示すように、中央薄肉部15bを省略し、この部分を基本部分13の一部として形成してもよい。このように、
図6及び7に示す実施態様のように、キャップ本体部18における第1係合突起11a及び第2係合突起11bの周辺の少なくとも一部に薄肉部分15があってもよい。
【0028】
一方、
図5に示す実施形態のように、キャップ本体部18における第1係合突起11a及び第2係合突起11bの周辺に全体的に薄肉部分15があってもよい。とりわけ、上記のように、第1外側薄肉部15a及び第2外側薄肉部15cに加えて、中央薄肉部15bも形成するとよい。こうすることで、第1係合突起11a及び第2係合突起11bのそれぞれについて、裏面10Bからの高さが大きくなる。これにより、ガイド機構50の係合部52aを装着する際に第1係合突起11a及び第2係合突起11bの各根元部分70に生じる応力を低減することができ、両係合突起11a,11bの永続的変形等に対する対策としてより効果的となる。また、厚さT15a、厚さT15b、及び厚さT15cの大きさを等しくすれば、当該応力をバランスよく低減することができる。
【0029】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0030】
例えば、第1係合突起11a及び第2係合突起11bをそれぞれ有する一対の係合ユニット62−1,62−2の一方を省略することができる。また、第1係合突起11a及び第2係合突起11bは、上述の線対称な形状でなくてもよく、互いに異なる形状を有してもよい。加えて、第1外側薄肉部15a及び第2外側薄肉部15cは、第1係合突起11a及び第2係合突起11bと同様に、線対称の形状でなくてもよい。また、第1外側薄肉部15a及び第2外側薄肉部15cは、それぞれ、傾斜部位15a−2及び15c−2を有しなくてもよい。あるいは、傾斜部位15a−2及び15c−2は、それぞれ、傾きの大きさが徐々に又は不連続に変化してもよいし、曲面状又は階段状であってもよい。ただし、上述した実施形態のように、傾斜部位15a−2及び15c−2を一定の傾きとすることで、例えば樹脂を用いてキーキャップを射出成形する場合に、金型内での樹脂の流動の阻害が抑制されるので、キーキャップ10の歩留りを改善することができる。
【0031】
また、ガイド機構50は、パンタグラフ型以外のガイド機構であってもよいし、係合部52aは、軸部以外の形状、例えば球状であってもよい。電子機器は、ノートブック型パーソナルコンピュータに限らず、携帯電話機、スマートフォン、電子手帳のほか、いわゆるコンバーチブルタブレット型パーソナルコンピュータなどであってもよい。また、キーキャップは、キーボードの様に複数のキースイッチが搭載されたものに用いられるものであってもよいし、単体のキースイッチに用いられるものであってもよい。
【0032】
<第2実施形態>
図8を参照しつつ、第2実施形態に係るキーキャップ210について説明する。第1実施形態と第4実施形態との主な相違点は、第1外側薄肉部15a、中央薄肉部15b及び第2外側薄肉部15cのそれぞれについて、凹部216a、216b、216cを裏面10Bに形成した点である。凹部216a、216b、216cは、裏面210Bに開口する溝状の形状を有しており、第1外側薄肉部15a、中央薄肉部15b及び第2外側薄肉部15cのそれぞれの一部がさらに薄肉化されている。このような第2実施形態によれば、キャップ本体部18における第1係合突起11a及び第2係合突起11bの周辺の薄肉部分15について、より一層弾性をもたし得る。
【0033】
なお、凹部216a、216b、216cの位置は任意に設定することができる。例えば、凹部216a及び216cを第1係合突起11a及び第2係合突起11bの各根元部分70に隣接する位置に設定することができる。また、凹部216bの位置は、X軸方向における中央薄肉部15bの中央部分に設定することができる。他の実施態様においては、凹部216a、216b、216cのうち少なくとも1つを形成する態様であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
2…電子機器、4…キーボード、6…キースイッチ、10…キーキャップ、10A…表面、10B…裏面、11a…第1係合突起、11b…第2係合突起、15…薄肉部分、18…キャップ本体部、50…ガイド機構、52a…係合部、216a、216b、216c…凹部
【要約】
【課題】キーキャップの脱落を抑制する。
【解決手段】キースイッチ6のガイド機構50に着脱可能に設けられるキーキャップ10は、キー入力される際に押される表面10A及び表面10Aと反対側の裏面10Bを有するキャップ本体部18と、互いに間隙を存してキャップ本体部18の裏面10Bから突出し、この間隙にガイド機構50の係合部52aが着脱可能に係合される第1係合突起11a及び第2係合突起11bと、を備える。キャップ本体部18における第1係合突起11a及び第2係合突起11bの周辺の少なくとも一部に、キャップ本体部18よりも他の部分よりも薄肉にされている薄肉部分15がある。
【選択図】
図5