(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
複数の送信アンテナから異なる情報を送信する空間多重方式のMIMO通信において、受信機側で送信ストリームを分離検出する方法として、非特許文献1にあるようなZF(Zero Forcing)法やMMSE(Minimum Mean Square Error)法のような空間フィルタを用いる方法があるが、これらは演算が複雑で無いものの十分な性能が得られない。
【0003】
一方、伝送路推定の結果と送信信号の取り得る全ての信号点から最も近いものを選び出すMLD(Maximum Likelihood Detection)復調があるが、高い検出性能は持つものの、アンテナ数や変調多値数が増えると演算規模が指数関数的に増大し、実システムへの適用が困難である。
【0004】
近年、無線通信方式として256QAM(Quadrature Amplitude Modulation)や1024QAMといった超多値数の方式が採用されつつあり、これらに対してMLD適用は現実的なものではないことは自明である。
【0005】
MLDの演算規模削減方法として、代表的なものがSD(Sphere Decoding)法である。SD法では生成された受信候補点(レプリカ)の中から受信点とある距離範囲内の受信候補点を絞り込み、絞り込まれた受信候補点を対象にMLD演算を行う。
【0006】
また、特許文献1では、ZF法あるいはMMSE法により得られた復調結果を硬判定し、その硬判定点とその近傍の点を送信候補点とすることにより、送信候補点及びそれから生成される受信候補点を削減することで、MLD演算を低減している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の手法では、選ばれた送信候補点の中に必ずしも各変調ビットの0,1を持つ送信候補点が入るとは限らず、当該ビットが0である確率と1である確率との比であるビット対数尤度比(以下、LLR(Log Likelihood Ratio))の算出が必ずしもできるとは限らない。LLRが算出できないと、LLRを入力とする誤り訂正復号やLLRを用いるターボ信号処理の適用ができないという問題がある。
【0010】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、多値変調方式にMLDを適用する場合の演算規模の増大を効果的に抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、上記目的を達成するために、複数の送信アンテナから送信された送信信号を複数の受信アンテナで受信して分離する無線通信装置を、以下のように動作させる構成にした。
すなわち、伝送路推定手段が、前記複数の受信アンテナによる受信信号から送受信間の伝送路を推定する。雑音電力推定手段が、前記受信信号から受信雑音電力を推定する。分離手段が、前記伝送路の推定結果と前記受信雑音電力の推定結果とを用いてZF法あるいはMMSE法の線形フィルタにより前記受信信号を分離する。尤度算出手段が、前記分離手段による分離結果と前記送信信号が取り得る複数の信号点の中から選出される基準の信号点との尤度を算出する。第1のビット対数尤度比算出手段が、前記尤度算出手段により算出された尤度を用いてビット対数尤度比を算出する。相互情報量算出手段が、前記第1のビット対数尤度比算出手段により算出されたビット対数尤度比を用いて相互情報量を算出する。選択手段が、前記複数の信号点の中から、前記基準の信号点を構成する変調ビット毎の0との距離及び1との距離が小さい順に、前記相互情報量算出手段により算出された相互情報量に応じた数の信号点を送信候補点として選択する。受信候補点算出手段が、前記伝送路の推定結果と前記送信候補点とを用いて、前記受信信号の候補となる受信候補点を算出する。第2のビット対数尤度比算出手段が、前記受信候補点と前記受信信号と前記受信雑音電力の推定結果とを用いてMLD法によりビット対数尤度比を算出する。
【0012】
以上のように、本発明に係る無線通信装置は、概略的に、送信信号が取り得る複数の信号点の中から選出される基準の信号点に基づいて、受信信号の分離結果に対する尤度、ビット対数尤度比、相互情報量の算出を行い、当該基準の信号点を構成する変調ビット毎の0との距離及び1との距離(ビット尤度)が小さい順に、相互情報量に応じた数の信号点を送信候補点として選択し、送信候補点を用いて受信候補点を算出してMLD演算を行う構成となっている。
【0013】
したがって、本発明に係る無線通信装置によれば、各ビット尤度や相互情報量などに基づいて絞り込んだ送信候補点から受信候補点を算出してMLD演算が行われるため、多値変調方式にMLDを適用する場合の演算規模の増大を効果的に抑制することができる。これにより、超多値数のQAMなどでは非現実的と思われていたMLDを実システムに適用することが可能となる。
【0014】
ここで、本発明に係る無線通信装置は、前記第1のビット対数尤度比算出手段により算出されたビット対数尤度比を入力とし、誤り訂正したビット対数尤度比を出力する誤り訂正手段を備え、前記第2のビット対数尤度比算出手段は、前記誤り訂正手段により出力されたビット対数尤度比を事前ビット対数尤度比とし、前記受信候補点と前記受信信号と前記受信雑音電力推定結果と前記事前ビット対数尤度比とを用いてMLD法によりビット対数尤度比を算出する構成にして、更なる性能向上を図るようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、多値変調方式にMLDを適用する場合の演算規模の増大を効果的に抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る無線通信装置について図面を参照して説明する。
本発明に係る無線通信装置は、データの送受信に複数のアンテナを用いるMIMO方式の無線通信システムを構成する。すなわち、送信側となる他の無線通信装置が、複数の送信アンテナから同一周波数で異なるデータの信号を送信し、受信側となる本発明に係る無線通信装置が、これらの信号を複数の受信アンテナでそれぞれ受信して、送受信間の伝送路特性を用いてデータ復調を行う。
【0018】
図1に本発明の第一の実施形態に係る無線通信装置の機能ブロックの例を示す。第一の実施形態に係る無線通信装置は、伝送路推定部101と、ZF/MMSE係数算出部102と、分離検出部103と、尤度算出部104と、LLR算出部105と、相互情報量算出部106と、送信候補点選択部107と、MLD処理部108とを備える。
【0019】
伝送路推定部101は、複数の受信アンテナによる受信信号を示す受信周波数信号ベクトルYが入力され、受信周波数信号ベクトルY中に含まれる既知信号を用いて送受信間の伝送路を推定し、伝送路推定行列H^をZF/MMSE係数算出部102とMLD処理部108へ出力する。ここで、受信周波数信号ベクトルYはY=[Y
1,…,Y
Nrx]であり、N
rxは受信アンテナ数である。
【0020】
ZF/MMSE係数算出部102は、伝送路推定行列H^とSNR(Signal to Noise Ratio)γを用いてZFもしくはMMSEの規範に則りウェイト行列Wを求め、ウェイト行列Wを分離検出部103へ出力する。ウェイト行列Wは、非特許文献1に記載されるように、ZFであれば、
【数1】
であり、MMSEであれば、
【数2】
で表される線形フィルタである。ここで、σ^
2は受信雑音電力であり、複数の受信アンテナによる受信信号に基づいて雑音電力推定部(不図示)により推定される。また、MMSE後の振幅は、
【数3】
で求められる行列Sの対角成分であり、その対角成分のあるストリームiをS
iとすると、MMSE後のSNR γ
iは、次式となる。
【数4】
MMSE後の雑音電力は、次式となる。
【数5】
【0021】
分離検出部103は、受信周波数信号ベクトルYとウェイト行列Wを用いて分離してストリームベクトルX^を求め、尤度算出部104へ出力する。分離検出は、次式による。
【数6】
ここで、ストリームベクトルX^はX^=[X
1,…,X
Ntx]であり、N
txは送信アンテナ数である。
すなわち、ZF/MMSE係数算出部102及び分離検出部103は、伝送路の推定結果と受信雑音電力の推定結果を用いてZF法あるいはMMSE法の線形フィルタにより受信信号の分離を行う。
以下、MMSE法を用いる場合を例に説明するが、ZF法を用いる場合も同様である。
【0022】
尤度算出部104は、分離検出部103から受信点として入力されたストリームベクトルX^(MMSE出力点)と送信候補点X ̄との尤度(距離)d^
MMSE2を算出し、尤度d^
MMSE2をLLR算出部105と送信候補点選択部107へ出力する。d^
MMSE2の各成分d^
MMSE(m,i)の算出は、例えば、次式による。
【数7】
ここで、mはマッピング点番号でm=1,…,Mであり、Mは当該ストリームiの送信アンテナ番号である。距離(尤度)算出は、送信信号点(シンボル)の候補となり得る全送信候補点を対象とするのではなく、受信点(ストリームベクトルX^)の座標とシンボルマッピングのビット配置から最小限の送信候補点との距離を算出する。
最小限の送信候補点との距離について、一例として、64QAMの最上位ビットb
0について説明する。b
0は、例えば
図2に示すように、Q軸に対して対称に配置される。ここで、受信点(図中の×印)がb
0=1の領域にあるとすると、b
0=0の送信候補点との最小距離は、b
0=0の送信候補点中のQ軸寄りの送信候補点のみについて計算すればよい。なお、受信点が属する領域によって計算対象となる送信候補点(最小限の送信候補点)は一意に決まるので、予め設定しておけばよい。
【0023】
LLR算出部105は、入力された距離尤度d^
MMSE2とMMSE後の雑音電力σ
MMSE2を用いてビットLLR L
MMSEを算出し、相互情報量算出部106へ出力する。σ
MMSE2の各成分をσ
MMSE2(i)として、ビットLLR L
MMSEの各成分L
MMSE(b
m,i)の算出は以下による。
【数8】
ここで、次式の近似式、
【数9】
を用いると、上記(式5)は次式となる。
【数10】
ここで、b
mはb
m=1,…,log
2Mであり、マッピング点番号mの送信候補点を構成するビットのインデックスである。従って、ビットLLRは当該ビットの0との最小距離と1との最小距離の差から求まる。
【0024】
相互情報量算出部106は、入力されたビットLLR L
MMSEを用いて相互情報量I
MMSEEを求め、送信候補点選択部107へ出力する。相互情報量I
MMSEEの各ストリーム成分I
MMSEE(i)の算出は、例えば、次式による。
【数11】
ここで、E[・]は標本平均を表し、p
0、p
1はビット確率であり、それぞれビットLLR L
MMSE(b
m,i)から以下のように求まる。
【数12】
【数13】
【0025】
送信候補点選択部107は、入力された尤度d^
MMSE2と相互情報量I
MMSEEを用いて送信候補点を選択し、選択された送信候補点をMLD処理部108へ出力する。送信候補点の選択方法について説明する。
【0026】
図2に64QAMにおける送信候補点の選択例を示し、
図3に256QAMにおける送信候補点の選択例を示す。
図2及び
図3は、横軸をI(In-Phase)成分とし、縦軸をQ(Quadrature)成分としたIQ平面で送信候補点を表したものであり、×はMMSE出力点(受信点)を示し、○は選択された送信候補点を示し、●は選択されなかった送信候補点を示している。送信候補点はMMSE出力点を対象に各変調ビットの0との距離、1との距離が小さい上位R
dを選択する。R
dは変調方式と相互情報量I
MMSEEの値により決定する。
【0027】
また、R
dにより決まる取り得る送信候補点数は、単純にMMSE出力の近接の送信点数をR
d、各ストリームの送信候補点数をMとする場合、近接送信点とそれを構成する変調ビット(0または1)と対(1または0)となる送信点の数は変調ビット数log
2Mだけ存在するので、最大でR
d(1+log
2M)となる。ここで、最大という表現を使っている理由は、各変調ビットの距離が小さい上位R
d位の点が重複することがあるからである。
図2(64QAMの例)では、(a)にランキングの上位1位までの送信候補点の選出例を示し、(b)に上位2位までの送信候補点の選出例を示してある。また、
図3(256QAMの例)では、(a)にランキングの上位2位までの送信候補点の選出例を示し、(b)に上位3位までの送信候補点の選出例を示してある。
送信候補点の選び方について、64QAMの場合(
図2参照)を例に説明する。ここで、各送信候補点は、I軸及びQ軸の値が−7,−5,−3,−1,1,3,5,7のいずれかをとる座標位置にあるものとする。そして、IQ平面における受信点の座標を(−2.5,2.5)としたとき、各送信候補点との距離は、
図4(a)のようになる。これらの距離を評価基準にして候補点番号を昇順にソートすると、
図4(b)のようになる。このソート結果から、上位R
dの送信候補点を選択すればよい。
【0028】
通常のMLDと本発明によるMLDの計算量を説明する。各ストリームの送信点数をM、送信アンテナの本数をN
txとすると、生成される受信候補点数はM
Ntxとなる。本発明における選出する上位ランキング数をR
dとすると、生成される受信候補点数は(R
d(1+log
2M))
Ntxとなる。ここで、log
2MをM’とすると、支配的な計算量は、通常のMLDは2
NtxM'、本発明のMLDは(R
dM’)
Ntxとなる。
【0029】
MLD処理部108は、入力された送信候補点行列X’と受信周波数信号ベクトルYと伝送路推定行列H^と受信雑音電力σ^
2を用いてLLR L
MLDを求めて出力する。MLD処理部108の詳細について、
図5を用いて説明する。
【0030】
図5に第一の実施形態におけるMLD処理部108の構成例を示す。MLD処理部108は、受信候補点生成部201と、外部LLR算出部202とを備える。
【0031】
受信候補点生成部201は、入力された送信候補点ベクトルX’と伝送路推定行列H^を用いて受信候補点ベクトルr^を生成し、外部LLR算出部202へ出力する。受信候補点ベクトルr^の生成は次式による。
【数14】
ここで、受信候補点ベクトルr^は、受信候補点数をQとしたとき、r^=[r
1^,…,r
Q^]である。
【0032】
外部LLR算出部202は、入力されれた受信候補点ベクトルr^と受信周波数信号ベクトルYと受信雑音電力σ^
2を用いてビットLLR L
e_MLDEを求め、ビットLLR L
e_MLDEを出力する。ビットLLR L
e_MLDEの各成分L
e_MLDE(b
q,j)の算出は、例えば、次式による。
【数15】
ここで、上記(式9)の近似を用いると、次式となる。
【数16】
ここで、インデックスqは受信候補点番号でq=1,…,Qであり、b
qは受信候補点番号qの受信候補点を構成するビットのインデックスである。
【0033】
図6に第一の実施形態におけるシミュレーションによるビット誤り率(BER)特性の一例を示す。
図6は、横軸をCNR[dB]とし、縦軸を平均BERとしたグラフであり、MMSEの値を×、MLD(従来)の値を△、MLD(本発明)の値を○でプロットしている。シミュレーションは2×2MIMO、変調方式は64QAM、アンテナ相関は無相関、準静的フェージングの特性である。図より、本発明を適用したMLDは、通常(従来)のMLDとほぼ同一の性能であることが分かる。
【0034】
以上のように、第一の実施形態に係る無線通信装置は、概略的に、送信信号が取り得る複数の信号点の中から選出される基準の信号点に基づいて、受信信号の分離結果に対する尤度、ビット対数尤度比、相互情報量の算出を行い、当該基準の信号点を構成する変調ビット毎の0との距離及び1との距離(ビット尤度)が小さい順に、相互情報量に応じた数の信号点を送信候補点として選択し、送信候補点を用いて受信候補点を算出してMLD演算を行う構成となっている。
【0035】
より具体的には、第一の実施形態に係る無線通信装置は、以下のように動作する。
すなわち、伝送路推定部101が、複数の受信アンテナによる受信信号から送受信間の伝送路を推定する。雑音電力推定部(不図示)が、受信信号から受信雑音電力を推定する。ZF/MMSE係数算出部102および分離検出部103が、伝送路の推定結果と受信雑音電力の推定結果とを用いてZF法あるいはMMSE法の線形フィルタにより受信信号を分離する。尤度算出部104が、分離検出部103による分離結果と受信信号が取り得る複数の信号点の中から選出される基準の信号点との尤度を算出する。LLR算出部105が、尤度算出部104により算出された尤度を用いてビット対数尤度比を算出する。相互情報量算出部106が、LLR算出部105により算出されたビット対数尤度比を用いて相互情報量を算出する。送信候補点選択部107が、複数の信号点の中から、基準の信号点を構成する変調ビット毎の0との距離及び1との距離が小さい順に、相互情報量算出部106により算出された相互情報量に応じた数の信号点を送信候補点として選択する。受信候補点生成部201が、伝送路の推定結果と送信候補点とを用いて、受信信号の候補となる受信候補点を算出する。外部LLR算出部202が、受信候補点と受信信号と受信雑音電力の推定結果とを用いてMLD法によりビット対数尤度比を算出する。
【0036】
以上の第一の実施形態により、MMSE出力のビット尤度及び相互情報量を用いてMLDの送信候補点を選択し、選択した送信候補点を用いてMLD処理を行うことにより、性能を保持したまま指数関数的に増大するMLDの送信候補点及び受信候補点の数を削減し、実システムへの適用が可能となる。
【0037】
図7に本発明の第二の実施形態に係る無線通信装置の機能ブロックの例を示す。第二の実施形態に係る無線通信装置は、伝送路推定部101と、ZF/MMSE係数算出部102と、分離検出部103と、尤度算出部104と、LLR算出部105と、相互情報量算出部106と、送信候補点選択部107と、デインタリーブ301−1と、誤り訂正復号器302−1と、インタリーブ303と、MLD処理部304と、デインタリーブ301−2と、誤り訂正復号器302−2とを備える。伝送路推定部101と、ZF/MMSE係数算出部102と、分離検出部103と、尤度算出部104と、LLR算出部105と、相互情報量算出部106と、送信候補点選択部107は、第一の実施形態と同一であるので説明は省略する。
【0038】
デインタリーブ301−1は、入力されたLLR L
MMSEは、送信側で所定の順序に並び替えられた系列であり、それを元の順序に戻す処理を行い、元の順序に戻したLLR L
a_MMSEDを誤り訂正復号器302−1へ出力する。本処理は後述するインタリーブ303と対になる処理である。
【0039】
誤り訂正復号器302−1は、入力されたLLR L
a_MMSEDに対して軟入力軟出力の誤り訂正復号を行い、情報ビット系列の復号結果u
MMSE^を出力し、また、復号化ビットLLR系列L
e_MMSEDをインタリーブ303へ出力する。
【0040】
インタリーブ303は、入力されたLLR L
e_MMSEDを所定の順序に並び替え、並び替えた結果であるL
a_MLDEを事前情報LLRとしてMLD処理部304へ出力する。
【0041】
MLD処理部304は、入力された送信候補点行列X’と受信周波数信号ベクトルYと伝送路推定行列H^と受信雑音電力σ^
2と事前情報LLR L
a_MLDEを用いて外部LLR L
e_MLD Eを求めて出力する。MLD処理部304の詳細について、
図8を用いて説明する。
【0042】
図8に第二の実施形態におけるMLD処理部304の構成例を示す。MLD処理部304は、受信候補点生成部201と、外部LLR算出部401とを備える。受信候補点生成部201は第一の実施形態のMLD処理部108のものと同一であるため、説明は省略する。
【0043】
外部LLR算出部401は、入力されれた受信候補点ベクトルr^と受信周波数信号ベクトルYと受信雑音電力σ^
2と事前情報LLR L
a_MLDEを用いて外部LLR L
e_MLDEを求め、出力する。外部LLR L
e_MLDEの各成分L
e_MLDE(b
q,j)の算出は、例えば、次式による。
【数17】
ここで、b
q(r
q^)は受信候補点r
q^を構成する信号点ベクトルのq番目のビット(0または1)である。また、上記(式6)の近似を用いると次式となる。
【数18】
【0044】
デインタリーブ301−2は、入力されたLLR L
e_MLDEは、送信側で所定の順序に並び替えられた系列であり、それを元の順序に戻す処理を行い、元の順序に戻したLLR L
a_MLDDを誤り訂正復号器302−2へ出力する。
【0045】
誤り訂正復号器302−2は、入力されたLLR L
a_MLDDに対して軟入力軟出力の誤り訂正復号を行い、情報ビット系列の復号結果u
MLD^を出力する。
【0046】
以上のように、第二の実施形態に係る無線通信装置では、第一の実施形態に係る無線通信装置を更に改良している。
すなわち、デインタリーブ301−1、誤り訂正復号器302−1、インタリーブ303等の機能部(以下、誤り訂正復号器302−1等)が、LLR算出部105により算出されたビット対数尤度比を入力とし、誤り訂正したビット対数尤度比を出力する。外部LLR算出部202が、誤り訂正復号器302−1等により出力されたビット対数尤度比を事前ビット対数尤度比とし、受信候補点と受信信号と受信雑音電力推定結果と事前ビット対数尤度比とを用いてMLD法によりビット対数尤度比を算出する。
【0047】
以上の第二の実施形態により、MMSE出力のビット尤度及び相互情報量を用いてMLDの送信候補点を選択し、また、MMSE出力から得られるビットLLRに対して軟入力軟出力の誤り訂正復号を行い誤り訂正したビットLLRを求めてそれをMLDの事前LLRとし、選択された送信候補点と事前LLRを用いてMLD処理を行うことにより、第一の実施形態に比べ性能向上が可能となる。
【0048】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。
また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。この出願は、2016年5月26日に出願された日本出願特願2016−105572を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によってここに取り込む。