(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587794
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】放電制御回路及びバッテリユニット
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20191001BHJP
【FI】
H02J7/02 H
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-198386(P2014-198386)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-73046(P2016-73046A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2016年12月26日
【審判番号】不服2018-4914(P2018-4914/J1)
【審判請求日】2018年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】澤野 峻一
(72)【発明者】
【氏名】生田 勝也
【合議体】
【審判長】
酒井 朋広
【審判官】
佐々木 洋
【審判官】
山田 正文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−197279(JP,A)
【文献】
特開平10−285711(JP,A)
【文献】
特開2008−278688(JP,A)
【文献】
特開2009−44823(JP,A)
【文献】
特開2014−64459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00-7/12, H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の放電制御部を備える放電制御回路であって、
前記放電制御部の各々は、
第1端と、
第2端と、
前記第1端と前記第2端との間に直列に接続され、抵抗値の温度依存性が相互に異なる一対の抵抗素子と、
前記第1端と前記第2端との間に接続されるスイッチ素子と、
前記一対の抵抗素子同士が接続される接続点の電位と所定電位とを比較した結果に基づいて前記スイッチ素子の開閉を制御するスイッチ制御部と
を有し、
隣接して接続される一対の前記放電制御部の一方の前記第2端と、他方の前記第1端とが接続され、
各々の前記放電制御部において、
前記所定電位は前記第2端を基準とした正値であり、
前記一対の抵抗素子のうち、前記第1端側に接続される第1の抵抗素子の抵抗値は第1の温度係数を有し、
前記一対の抵抗素子のうち、前記第2端側に接続される第2の抵抗素子の抵抗値は前記第1の温度係数よりも高い第2の温度係数を有し、
前記スイッチ制御部は、前記接続点の前記電位が前記所定電位を越えることによって、前記スイッチ素子を導通させる、放電制御回路。
【請求項2】
請求項1に記載の放電制御回路であって、
前記所定電位は全ての前記放電制御部で共通である、放電制御回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放電制御回路であって、
前記第1の温度係数は負の温度係数であり、前記第2の温度係数は正の温度係数である、放電制御回路。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の放電制御回路であって、
各々の前記放電制御部は、
前記第1の抵抗素子に対して並列に接続され、前記第1の温度係数よりも高い第3の温度係数を有する第3の抵抗素子
を更に有する、放電制御回路。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の放電制御回路であって、
前記スイッチ制御部は、前記接続点の前記電位が前記所定電位よりも小さな値を下回ることによって、前記スイッチ素子を非導通させる、放電制御回路。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の放電制御回路と、
各々が前記放電制御部に対応して設けられ、互いに直列に接続されたキャパシタの直列接続を有するキャパシタユニットと
を含み、
互いに対応する前記放電制御部と前記キャパシタとは並列に接続される、バッテリユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放電制御回路及びバッテリユニットに関し、例えばキャパシタを用いたサブバッテリ回路を放電する技術に適用される。
【背景技術】
【0002】
近年、燃費を上げるためにハイブリッドカーや電気自動車の開発が進んでいる。ガソリン車においてもアイドリングストップ等を実施し、燃費向上が望まれている。
【0003】
しかしアイドリングストップ等で一旦エンジンが停止すると、オルタネータによるバッテリの充電が行われなくなる。このため、再度エンジンを点火する際には、バッテリ電圧が急激に低下する、「クランキング」と呼ばれる現象が発生する。
【0004】
クランキングが発生してバッテリ電圧が急激に低下すると、自動車のボディECU(電子制御ユニット)が誤って低電圧リセットを掛けてしまう恐れがある。
【0005】
このような事態を回避するため、バッテリとは別に、大容量キャパシタなどのサブバッテリを備え、クランキングに対応する技術が周知である。
【0006】
このサブバッテリは例えば、クランキング対策の他、車両が衝突した際にバッテリが喪失したときの、ドアロック解除用の補助電源としても採用される。
【0007】
サブバッテリで使用されるキャパシタは経年劣化により、静電容量の低下、内部抵抗の上昇が発生する。この経年劣化の進行は一般的にアレニウス則として知られており、環境温度については10℃2倍則に従う。
【0008】
また、キャパシタの劣化の進行には充電電圧も影響を与える。環境温度が一定であれば、充電電圧が低いほど、劣化しにくい。
【0009】
このようなキャパシタを用いたサブバッテリ回路で、キャパシタの劣化を抑制し、環境温度の変化に対応して必要なエネルギーを供給する技術が、下掲の特許文献1に例示されている。
【0010】
具体的には、下掲の特許文献1には、
(i)主電源たるバッテリから補助電源たるキャパシタユニットへの充電:
(ii)キャパシタユニットを構成する複数のキャパシタの一部の充電停止:
(iii)上記(ii)の充電停止、及び充電の再開の判断は、キャパシタユニット近傍の温度に依拠する:
が記載されている。
【0011】
そして上記(i)〜(iii)の制御により、環境温度が高いときにはキャパシタユニットへの充電電圧を低くし、以てキャパシタの劣化を抑えつつキャパシタユニットが給電するエネルギーが確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−5662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献1に紹介された技術では、(ii)で示されるように、一部のキャパシタが充電されるか否かという段階的な制御が行われる。これは(iii)で示される温度に依拠した制御が容易ではない。換言すると充電の停止/再開を設定する温度閾値の設定が難しい。しかも、環境温度が低いときに給電に寄与しないキャパシタが存在することは、キャパシタユニットに設けられたキャパシタを有効に使用できていないことになり、コスト的に不利となる。
【0014】
そこで、本発明は、直列に接続された複数のキャパシタを全て有効に活用しつつ、環境温度に応じてキャパシタユニットが保持する電圧を制御する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様は、直列に接続された複数の放電制御部を備える放電制御回路である。そして前記放電制御部の各々は、第1端と、第2端と、前記第1端と前記第2端との間に直列に接続され、抵抗値の温度依存性が相互に異なる一対の抵抗素子と、前記第1端と前記第2端との間に接続されるスイッチ素子と、前記一対の抵抗素子同士が接続される接続点の電位と所定電位とを比較した結果に基づいて前記スイッチ素子の開閉を制御するスイッチ制御部とを有し、隣接して接続される一対の前記放電制御部の一方の前記第2端と、他方の前記第1端とが接続される。
そして各々の前記放電制御部において、前記所定電位は前記第2端を基準とした正値であり、前記一対の抵抗素子のうち、前記第1端側に接続される第1の抵抗素子の抵抗値は第1の温度係数を有し、前記一対の抵抗素子のうち、前記第2端側に接続される第2の抵抗素子の抵抗値は前記第1の温度係数よりも高い第2の温度係数を有し、前記スイッチ制御部は、前記接続点の前記電位が前記所定電位を越えることによって、前記スイッチ素子を導通させる。
【0016】
第2の態様は、第1の態様にかかる放電制御回路であって、前記所定電位は全ての前記放電制御部で共通である。
【0018】
第
3の態様は、第
1の態様または第2の態様にかかる放電制御回路であって、前記第1の温度係数は負の温度係数であり、前記第2の温度係数は正の温度係数である。
【0019】
第
4の態様は、第
1から第3の態様にかかる放電制御回路
のいずれかであって、各々の前記放電制御部は、前記第1の抵抗素子に対して並列に接続され、前記第1の温度係数よりも高い第3の温度係数を有する第3の抵抗素子を更に有する。
【0020】
第
5の態様は、第
1から第
4の態様にかかる放電制御回路のいずれかであって、前記スイッチ制御部は、前記接続点の前記電位が前記所定電位よりも小さな値を下回ることによって、前記スイッチ素子を非導通させる。
【0021】
第
6の態様は、この発明にかかる放電制御回路の第1から第
5の態様のいずれかと、各々が前記放電制御部に対応して設けられ、互いに直列に接続されたキャパシタの直列接続を有するキャパシタユニットとを含むバッテリユニットであって、互いに対応する前記放電制御部と前記キャパシタとは並列に接続される。
【発明の効果】
【0022】
第1の態様によると、キャパシタユニットを構成して直列に接続される複数のキャパシタの各々に対し、対応する放電制御部の第1端と第2端とを接続することにより、キャパシタの各々の電圧が温度を考慮した電圧に変換されてスイッチ制御部に与えられる。これにより、キャパシタの各々について、温度を考慮した放電が行われ、以てキャパシタユニットが保持する電圧は環境温度に応じて制御される。しかも直列に接続されたキャパシタの全てが利用される。
また、放電制御部の第1端及び第2端を、それぞれ対応するキャパシタの高電位側と低電位側に接続することにより、キャパシタの電圧は環境温度が高いほど低い電圧に変換される。よって、環境温度が高いほど、低いキャパシタの電圧でスイッチ素子が導通し、以てキャパシタ電圧を低く設定できる。
【0023】
第2の態様によると、キャパシタユニットを構成して直列に接続される複数のキャパシタ同士の充電電圧を均等化し、充電電圧の不均一による劣化を抑制する。
【0025】
第
3の態様によると、第
1の態様、第2の態様における第1の抵抗素子と第2の抵抗素子を容易に選定できる。
【0026】
第
4の態様によると、キャパシタの電圧から接続点の電位への変換の、微調整が容易である。
【0027】
第
5の態様によると、キャパシタが充電されるための閾値が、放電されるための閾値よりも小さいので、充放電の不要なチャタリングを防止できる。
【0028】
第
6の態様によると、環境温度に対応して各々のキャパシタの放電が個別に行われるので、キャパシタの劣化を抑制しつつ、全てのキャパシタが利用される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図3】キャパシタ電圧の、環境温度に対する関係を示すグラフである。
【
図5】第2実施形態に係る放電制御部の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係る放電制御回路について説明する。
図1は、放電制御回路5及びその放電対象となるキャパシタユニット4、並びにこれらと接続される要素について示す回路図である。
【0031】
バッテリ1は、例えば車載用のバッテリであり、不図示のオルタネータ等によって充電される。リレー2は例えばイグニッションリレーであり、エンジン点火に伴って導通する。電流制限抵抗3の一端はリレー2を介してバッテリ1の正極に接続されており、他端はキャパシタユニット4の高電位側に接続される。
【0032】
キャパシタユニット4は電流制限抵抗3の他端と、バッテリ1の負極との間に接続されている。換言すれば、バッテリ1、リレー2、電流制限抵抗3はキャパシタユニット4に対して並列に接続されている。なお、
図1ではバッテリ1の負極は接地されている。
【0033】
キャパシタユニット4は互いに直列に接続されたキャパシタ41,42,43を有している。キャパシタ41はキャパシタ42よりも、キャパシタ42はキャパシタ43よりも、それぞれ高電位側に設けられる。キャパシタ41の高電位側端は電流制限抵抗3の他端に接続され、キャパシタ43の低電位側端はバッテリ1の負極に接続される。
【0034】
ここではキャパシタユニット4が有するキャパシタの個数として3個の場合が例示されたが、複数であればその個数は適宜選定できる。
【0035】
放電制御回路5は、直列に接続された複数の放電制御部51,52,53を備える。放電制御部51,52,53は、それぞれキャパシタ41,42,43に対応して備えられる。放電制御回路5において放電制御部は、キャパシタユニット4が有するキャパシタの個数と同じ個数が設けられる。
【0036】
もちろん、放電制御回路5は、キャパシタユニット4が有するキャパシタの個数よりも多くの放電制御部を備えてもよい。しかしキャパシタに対応しない(言ってみれば余剰の)放電制御部は本実施形態の動作とは直接の関連はない。
【0037】
コンバータ6は、例えば昇圧DC/DCコンバータである。例えばコンバータ6は、キャパシタユニット4が保持する電圧を入力し、これを昇圧して負荷7に与える。負荷7は例えばドアロック解除用のモータである。
【0038】
図2は放電制御部51,52,53の各々に採用される放電制御部50の構成を示す回路図である。換言すれば、放電制御部50は放電制御部51,52,53を代表する。
【0039】
放電制御部50は、第1端501と、第2端502と、一対の抵抗素子504,505と、プルアップ抵抗506と、バイアス抵抗507と、スイッチ素子508と、スイッチ制御部503とを有する。
【0040】
隣接して相互に接続される一方である放電制御部51の第2端502と、他方である放電制御部52の第1端501とが接続される。同様にして、放電制御部52の第2端502と、他方である放電制御部53の第1端501とが接続される。
【0041】
第1端501と第2端502は、これらが設けられる放電制御部50と並列に接続されるキャパシタの高電位側端と、低電位側端にそれぞれ接続される。これにより、放電制御部51,52,53と、それぞれに対応するキャパシタ41,42,43とは、相互に並列に接続される。
【0042】
抵抗素子504,505は、第1端501と第2端502との間に直列に接続される。抵抗素子504,505は、抵抗値の温度依存性が相互に異なる。
【0043】
スイッチ素子508は、第1端501と第2端502との間に接続される。
【0044】
スイッチ制御部503は、入力端SENSEと、出力端RESETバー(図面では「RESET」の符号に上線を伴って表記される)と、比較器503aと、電圧源503bと、NMOSトランジスタ503cとを有する。
【0045】
入力端SENSEは抵抗素子504,505同士が接続される接続点に接続される。NMOSトランジスタ503cのソースと、電圧源503bの負極とは第2端502に接続される。
【0046】
比較器503aの非反転入力端は入力端SENSEに、反転入力端は電圧源503bの正極に、それぞれ接続される。比較器503aの出力端は、NMOSトランジスタ503cのゲートに接続される。
【0047】
比較器503aの動作電源は、第1端501と第2端502を介して、当該比較器503aが設けられる放電制御部50と並列に接続されるキャパシタから得られる。例えば放電制御部51の比較器503aの動作電源は、キャパシタ41から得られる。
【0048】
出力端RESETバーにはNMOSトランジスタ503cのドレインが接続される。つまり、スイッチ制御部503の出力段はオープンドレイン形が採用される。
【0049】
スイッチ素子508は例えばNMOSトランジスタ(以下、当該NMOSトランジスタを「NMOSトランジスタ508」とも表記する)であり、そのゲートは出力端RESETバーに接続されつつプルアップ抵抗506を介して第1端501に接続される。NMOSトランジスタ508のドレインはバイアス抵抗507を介して第1端501に接続される。
【0050】
<動作>
抵抗素子504,505は、第1端501と第2端502との間に印加される電圧を分圧して入力端SENSEを介して比較器503aの非反転入力端に与える。つまり抵抗素子504,505は、それらが備えられる放電制御部50に並列に接続されているキャパシタが保持する電圧を、分圧して入力端SENSEへ出力する分圧機能を有する。
【0051】
電圧源503bは所定電位Vrefを比較器503aの反転入力端に与える。比較器503aは、入力端SENSEの電位と所定電位Vrefとを比較した結果に基づいてスイッチ素子508の開閉を制御する。
【0052】
より具体的には、入力端SENSEの電位が所定電位Vrefよりも大きい場合には比較器503aの出力端の電位が低く、NMOSトランジスタ503cがオフする。これにより出力端RESETバーの電位はプルアップ抵抗506を介して引き上げられ、NMOSトランジスタ508がオンする。これにより、バイアス抵抗507、NMOSトランジスタ508の直列接続を介して、第1端501と第2端502とが接続され、放電経路が生じる。
【0053】
入力端SENSEの電位が所定電位Vref以下では比較器503aの出力端の電位が高く、NMOSトランジスタ503cはオンする。これにより、出力端RESETバーの電位はほぼ第2端502の電位まで低下し、NMOSトランジスタ508がオフする。これにより、上記の放電経路は消失する。
【0054】
なお、このプルアップ抵抗506は通常は大きく設定されるので、バイアス抵抗507とNMOSトランジスタ508の直列接続による放電経路ほど放電の機能は高くない。また、NMOSトランジスタ508のオン/オフに拘わらず、第1端501と第2端502とは抵抗素子504,505が接続されているが、これらの抵抗値も大きく設定することにより、バイアス抵抗507とNMOSトランジスタ508の直列接続による放電経路ほよりも、抵抗素子504,505の直列接続の方の放電機能を低くすることができる。
【0055】
リレー2がオンしていれば、バッテリ1によってキャパシタユニット4へと充電電流が供給される。よってオフしているNMOSトランジスタ508を有する放電制御部50に並列に接続されているキャパシタは、その静電容量と抵抗素子504,505の抵抗値との影響を受けた時定数で充電される。
【0056】
スイッチ素子508が導通するときには、当該スイッチ素子508を有する放電制御部50と並列に接続されるキャパシタの両端はほぼ短絡され、当該キャパシタが放電し、その保持する電圧は低下する。
【0057】
キャパシタユニットに設けられた(少なくとも一つの)キャパシタを、これに並列に接続されたスイッチ素子の開閉によって、充放電すること自体は公知であるので、これ以上のスイッチ素子508の動作の詳細な説明は避ける。
【0058】
本実施形態では、抵抗素子504,505は、抵抗値の温度依存性が相互に異なる。よってキャパシタ41,42,43の各々の電圧は温度を考慮した電圧に変換されて、それぞれが対応する放電制御部51,52,53の、スイッチ制御部503に与えられる。これにより、キャパシタ41,42,43の各々について、温度を考慮した放電が行われ、以てキャパシタユニット4が保持する電圧は環境温度に応じて制御される。しかも直列に接続されたキャパシタ41,42,43の全てが利用される。
【0059】
なお、キャパシタ41,42,43同士の充電電圧を均等化し、充電電圧の不均一による劣化を抑制する観点から、所定電位Vrefおよび抵抗素子504,505は全ての放電制御部51,52,53で共通であることが望ましい。
【0060】
上述の構成において所定電位Vrefは第2端502を基準とした正値とする場合について、より具体的に説明する。抵抗素子504,505のうち、第1端501側に接続される抵抗素子504の抵抗値が有する第1の温度係数よりも、第2端502側に接続される抵抗素子505の抵抗値が有する第2の温度係数の方が高い。
【0061】
例えば抵抗素子505は通常の抵抗素子であって、正の温度係数を有する。例えば抵抗素子504は負の温度係数を有するタイプのサーミスタを採用する。
【0062】
負の温度係数を有するタイプのサーミスタでは、その環境温度Tthにおける抵抗値Rthは、基準温度T0における抵抗値R0と、サーミスタ係数Bとを用いて、下式のように示されることが公知である。
【0063】
Rth=R0・exp[B・(1/Tth−1/T0)]
【0064】
但し、記号exp[]は、括弧内の値の指数関数を示す。
【0065】
第1端501及び第2端502は、それぞれ対応するキャパシタの高電位側と低電位側に接続するので、キャパシタの電圧は環境温度が高いほど高い電圧に変換される。よって、環境温度が高いほど、低いキャパシタの電圧でスイッチ素子が導通し、以てキャパシタが保持する電圧を低く設定できる。このように環境温度が高いほど、キャパシタが保持する電圧を低くすることが望ましいのは、上述の通りである。
【0066】
図3は上述の動作によって得られるキャパシタ41,42,43が保持する電圧(キャパシタ電圧)の、環境温度に対する関係を模式的に示すグラフである。当該グラフにおいて、環境温度が上昇するほど、キャパシタ電圧は低下することが示されている。
【0067】
もちろん、第1の温度係数と、第2の温度係数とはその極性が異なることを前提とするものではない。第1の温度係数よりも第2の温度係数の方が高く、入力端SENSEの電位が所定電位Vrefよりも高いときにスイッチ素子508を導通させることができればよい。
【0068】
図4は上述の構成において、抵抗素子504,505をそれぞれ抵抗素子509,510に置換した放電制御部50の変形を部分的に例示している。抵抗素子504,505と類似して、抵抗素子509の抵抗値が有する第1の温度係数よりも、抵抗素子510の抵抗値が有する第2の温度係数の方が高い。但し抵抗素子509は通常の抵抗素子であって、正の温度係数を有する。例えば抵抗素子510は正の温度係数を有するタイプのサーミスタを採用する。
【0069】
このような場合でも、キャパシタの電圧は環境温度が高いほど高い電圧に変換される。よって環境温度が高いほどキャパシタは放電制御部50において放電されやすくなり、キャパシタ電圧を抑制できる。
【0070】
あるいは第1の温度係数よりも第2の温度係数の方が低い構成を採用することもできる。この場合、スイッチ制御部503として他の構成を、たとえば反転入力端と非反転入力端とを入れ替えるなどの適宜の設計変更を行えばよい。
【0071】
{第2実施形態}
図5は放電制御部50のうち、第1実施形態で説明された
図2の構成と相違する点を示す回路図である。
【0072】
第2実施形態では第1実施形態の抵抗素子504に対して、抵抗素子511を並列に接続した点が特徴である。抵抗素子511の抵抗値が有する第3の温度係数は、抵抗素子504の抵抗値が有する第1の温度係数よりも高い。
【0073】
このようにすれば、キャパシタ電圧から、抵抗素子504,511と抵抗素子505とを接続する接続点の電位への変換の、微調整が容易となる。
【0074】
{変形}
スイッチ制御部503は、入力端SENSEの電位が所定電位Vrefよりも小さな値を下回ることによって、スイッチ素子508を非導通させることが望ましい。これにより、キャパシタが充電されるための閾値が、放電されるための閾値よりも小さくなる。よって充放電における不要なチャタリングを防止できる。
【0075】
より具体的には、例えば比較器503aにはヒステリシスコンパレータが用いられることが望ましい。
【0076】
なお、上記各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0077】
例えば、上述の放電制御回路5と、各々が放電制御部51,52,53に対応して設けられ、互いに直列に接続されたキャパシタ41,42,43の直列接続を有するキャパシタユニット4とを纏めてバッテリユニットとして把握することもできる。ここで互いに対応する放電制御部51,52,53とキャパシタ41,42,43とは並列に接続される。
【0078】
当該バッテリユニットによると、環境温度に対応して各々のキャパシタ41,42,43の放電が個別に行われるので、これらの劣化を抑制しつつ、全てのキャパシタ41,42,43が利用される。
【0079】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0080】
4 キャパシタユニット
41,42,43 キャパシタ
5 放電制御回路
50,51,52,53 放電制御部
501 第1端
502 第2端
503 スイッチ制御部
504,505,509,510,511 抵抗素子
508 スイッチ素子