特許第6587811号(P6587811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6587811-熱剥離型粘着シート 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587811
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】熱剥離型粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20191001BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20191001BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20191001BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20191001BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J133/14
   C09J11/08
   C09J11/06
   B32B27/20 Z
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-33882(P2015-33882)
(22)【出願日】2015年2月24日
(65)【公開番号】特開2016-155919(P2016-155919A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年12月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】平山 高正
(72)【発明者】
【氏名】下川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西尾 昭徳
【審査官】 山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−297498(JP,A)
【文献】 特開2012−149182(JP,A)
【文献】 特開2008−274163(JP,A)
【文献】 特開2015−17179(JP,A)
【文献】 特開2005−23286(JP,A)
【文献】 特開平10−316954(JP,A)
【文献】 特開2015−021082(JP,A)
【文献】 特開2007−246848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の粘着剤層と、基材と、第2の粘着剤層とをこの順に備え、
該第1の粘着剤層が、(メタ)アクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤と熱膨張性微小球とを含み、
該(メタ)アクリル系ポリマーが、炭素数が2以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位と、OH基を有する(メタ)アクリル系モノマー由来の構成単位とを含み、
該(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、側鎖アルキル基の炭素(C)とOH基とのモル比(C/OH)が、55〜80であり、
該(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が、10万〜300万である、
熱剥離型粘着シート。
【請求項2】
前記第2の粘着剤層が、前記熱膨張性微小球を含む、請求項1に記載の熱剥離型粘着シート。
【請求項3】
前記第1の粘着剤層および/または第2の粘着剤層の中心線平均表面粗さRaが、1μm以下である、請求項1または2に記載の熱剥離型粘着シート。
【請求項4】
前記第1の粘着剤層および/または第2の粘着剤層に対する水の接触角が、85°〜115°である、請求項1から3のいずれかに記載の熱剥離型粘着シート。
【請求項5】
前記第1の粘着剤層が、粘着付与剤を含み、該粘着付与剤の含有割合が、該第1の粘着剤層100重量部に対して、40重量部以下である、請求項1から4のいずれかに記載の熱剥離型粘着シート。
【請求項6】
前記第2の粘着剤層が、粘着付与剤を含み、該粘着付与剤の含有割合が、該第2の粘着剤層100重量部に対して、40重量部以下である、請求項1から5のいずれかに記載の熱剥離型粘着シート。
【請求項7】
前記第1の粘着剤層および/または第2の粘着剤層のゲル分率が、50%以上である、請求項1から6のいずれかに記載の熱剥離型粘着シート。
【請求項8】
前記第1の粘着剤層側をポリエチレンテレフタレートフィルムに貼着した際の23℃における粘着力が、1N/20mm以上である、請求項1から7のいずれかに記載の熱剥離型粘着シート。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の熱剥離型粘着シートを用いて製造された、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱剥離型粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子装置に備えられる基板を製造する際、保護のために基板材料に粘着シートを貼り付けるということが行われている(例えば、特許文献1)。例えば、基板材料としての銅箔をエッチングする際、銅箔の非処理面へのエッチング液の付着を防止するために、銅箔に粘着シートが貼り付けられる。また、ガラス基板をフッ酸等の酸により表面研磨する際にも、非処理面に粘着シートが貼り付けられる。このような用途の粘着シートにおいては、粘着シートの粘着剤層、粘着剤層と他の層との界面等に薬液が浸入すると、侵入した薬液が、薬液処理後の後工程におけるアウトガスの要因となったり、粘着剤層中の添加材料が変質する要因となる。例えば、特許文献1にも記載されているような、再剥離性発現のために添加される熱膨張性微小球(発泡剤)を含む粘着剤層においては、酸性またはアルカリ性の薬液によって該発泡剤が化学的に変質して発泡機能が消失するという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−019915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、薬液が浸入し難い粘着剤層を備える、加熱剥離型の粘着シート(熱剥離型粘着シート)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の熱剥離型粘着シートは、第1の粘着剤層と、基材と、第2の粘着剤層とをこの順に備え、該第1の粘着剤層が、(メタ)アクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤と熱膨張性微小球とを含み、該(メタ)アクリル系ポリマーが、炭素数が2以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位と、OH基を有する(メタ)アクリル系モノマー由来の構成単位とを含み、該(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、側鎖アルキル基の炭素(C)とOH基とのモル比(C/OH)が、40〜150である。
1つの実施形態においては、上記第2の粘着剤層が、上記熱膨張性微小球を含む。
1つの実施形態においては、上記第1の粘着剤層および/または第2の粘着剤層の中心線平均表面粗さRaが、1μm以下である。
1つの実施形態においては、上記第1の粘着剤層および/または第2の粘着剤層に対する水の接触角が、85°〜115°である。
1つの実施形態においては、上記第1の粘着剤層が、粘着付与剤を含み、該粘着付与剤の含有割合が、該第1の粘着剤層100重量部に対して、40重量部以下である。
1つの実施形態においては、上記第2の粘着剤層が、粘着付与剤を含み、該粘着付与剤の含有割合が、該第2の粘着剤層100重量部に対して、40重量部以下である。
1つの実施形態においては、上記第1の粘着剤層および/または第2の粘着剤層のゲル分率が、50%以上である。
1つの実施形態においては、上記第1の粘着剤層側をポリエチレンテレフタレートフィルムに貼着した際の23℃における粘着力が、1N/20mm以上である。
本発明の別の局面によれば、電子部品が提供される。この電子部品は、上記熱剥離型粘着シートを用いて製造される。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、炭素数が2以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位と、OH基を有する(メタ)アクリル系モノマー由来の構成単位とを含む(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む粘着剤層を形成し、該(メタ)アクリル系ポリマーにおける、側鎖アルキル基の炭素(C)とOH基とのモル比(C/OH)を特定範囲とすることにより、薬液が浸入し難く、かつ、粘着力に優れる粘着剤層を備える熱剥離型粘着シートを提供することができる。また、本発明の粘着シートは、熱膨張性微小球を含む粘着剤層を備えるため、加熱により優れた剥離性を発現する。さらに、本発明においては、上記粘着剤層に薬液が浸入しがたいため、酸性またはアルカリ性の薬液にさらされるような用途(例えば、エッチング時の保護用途)においても、熱膨張性微小球の機能が損なわれず、粘着性と剥離性とが高度に両立した熱剥離型粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態による熱剥離型粘着シートの概略断面図である。
図2】本発明の別の実施形態による熱剥離型粘着シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.熱剥離型粘着シートの全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による熱剥離型粘着シートの概略断面図である。熱剥離型粘着シート100は、第1の粘着剤層10と、基材20と、第2の粘着剤層30とをこの順に備える。第1の粘着剤層10は、熱膨張性微小球を含む。熱膨張性微小球は、加熱により膨張または発泡するため、該熱膨張性微小球を含む粘着剤層は加熱により粘着力が低下する。本発明の熱剥離型粘着シートは、熱膨張性微小球を含む粘着剤層を備えることにより、両面に被着体を貼着した場合であっても、加熱することにより該被着体を容易に剥離することができ、該被着体の破損を防ぐことができる。なお、熱膨張性微小球は、第2の粘着剤層にも含まれ得る。
【0009】
図2は、本発明の別の実施形態による熱剥離型粘着シートの概略断面図である。この熱剥離型粘着シート200は、弾性層40をさらに備える。弾性層40は、第1の粘着剤層10または第2の粘着剤層30に隣接して設けられ得る。好ましくは、弾性層40は、熱膨張性微小球を含む粘着剤層に隣接して設けられる。1つの実施形態においては、図示例のように第1の粘着剤層10と基材20との間に設けられる。弾性層を備えることにより、凹凸面を有する被着体に対する追従性が向上する。また、弾性層を、熱膨張性微小球を含む粘着剤層に隣接して設ければ、剥離時に加熱した際の粘着剤層の面方向の変形(膨張)が拘束され、厚み方向の変形が優先される。その結果、剥離性が向上する。
【0010】
図示していないが、本発明の熱剥離型粘着シートは、使用に供するまでの間、粘着面を保護する目的で、粘着剤層の外側に剥離ライナーが設けられていてもよい。
【0011】
本発明の熱剥離型粘着シートの第1の粘着剤層側をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに貼着した際の23℃における粘着力は、好ましくは1N/20mm以上であり、より好ましくは3N/20mm〜20N/20mmであり、さらに好ましくは4N/20mm〜10N/20mmである。このような範囲であれば、仮保護用の粘着シートとして、有用な熱剥離型粘着シートを得ることができる。本明細書において粘着力とは、JIS Z 0237:2000に準じた方法により測定した粘着力をいう。具体的な測定方法は、後述する。なお、本発明の熱剥離型粘着シートは、加熱により粘着力が低下する粘着シートであるが、上記「23℃における粘着力」とは、粘着力を低下させる前の粘着力をいう。
【0012】
B.第1の粘着剤層
上記第1の粘着剤層は、ベースポリマーとしての(メタ)アクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤Iと熱膨張性微小球とを含む。
【0013】
B−1.アクリル系粘着剤I
<(メタ)アクリル系ポリマー>
上記アクリル系粘着剤Iに含まれる(メタ)アクリル系ポリマーとしては、炭素数が2以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)と、OH基を有する(メタ)アクリル系モノマー(b)とをモノマー成分として得られたポリマーが用いられる。
【0014】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)の具体例としては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0015】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)が有するアルキル基の炭素数は、上記のとおり2以上であり、好ましくは4以上であり、より好ましくは4〜20であり、さらに好ましくは6〜18である。このようなアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を用いることにより、薬液(例えば、酸性またはアルカリ性の薬液)が浸入し難い粘着剤層を形成することができる。
【0016】
OH基を有する(メタ)アクリル系モノマー(b)の具体例としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル系モノマー(b)として、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを用いてもよい。(メタ)アクリル系モノマー(b)は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0017】
上記アクリル系粘着剤Iに含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性、架橋性等の改質を目的として、必要に応じて、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)および/または(メタ)アクリル系モノマー(b)と共重合可能な他のモノマーに対応する構成単位を含んでいてもよい。このようなモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸メチル;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等の(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクルロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子等を有するアクリル酸エステル系モノマー;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等の多官能モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。これらの単量体成分は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
上記アクリル系粘着剤Iに含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、炭素数が2以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)と、OH基を有する(メタ)アクリル系モノマー(b)と、必要に応じて用いられる他のモノマー(c)とを、任意の適切な重合方法により、重合して得られる。このようにして得られた(メタ)アクリル系ポリマーは、炭素数が2以上(好ましくは4以上、より好ましくは4〜20、さらに好ましくは6〜18)のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位Aと、OH基を有する(メタ)アクリル系モノマー由来の構成単位Bとを含む。すなわち、上記(メタ)アクリル系ポリマーは、側鎖に炭素数が2以上のアルキル基を有する構成単位Aと、OH基を有する構成単位Bとを含む。
【0019】
構成単位Aと構成単位Bとを含む(メタ)アクリル系ポリマーの含有割合は、アクリル系粘着剤I中の固形分100重量部に対して、好ましくは50重量部〜100重量部であり、より好ましくは60重量部〜98重量部であり、さらに好ましくは65重量部〜90重量部である。
【0020】
炭素数が2以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位Aの含有割合は、上記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、好ましくは70重量部〜98重量部であり、より好ましくは80重量部〜95重量部であり、さらに好ましくは85重量部〜95重量部である。
【0021】
OH基を有する(メタ)アクリル系モノマー由来の構成単位Bの含有割合は、上記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、好ましくは1重量部〜30重量部であり、より好ましくは2重量部〜20重量部であり、さらに好ましくは3重量部〜10重量部である。
【0022】
上記アクリル系粘着剤Iに含まれる(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、側鎖アルキル基の炭素(C)とOH基とのモル比(C/OH)は、好ましくは40〜150であり、より好ましくは42〜120であり、さらに好ましくは50〜100であり、特に好ましくは55〜80であり、最も好ましくは55〜75である。なお、上記モル比(C/OH)は、側鎖アルキル基を有する構成単位を形成するモノマー(すなわち、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)、任意で用いられる(メタ)アクリル酸メチル)の配合量、分子量および側鎖アルキル基の数、ならびに、OH基を有する(メタ)アクリル系モノマー(b)の配合量、分子量およびOH基の数から求められる。例えば、側鎖アルキル基を有する構成単位を形成するモノマーとして、モノマーa、モノマーaおよびモノマーaを用い、(メタ)アクリル系モノマー(b)として、モノマーb、モノマーbを用いた場合、上記モル比(C/OH)は、下記式(1)で求めることができる。
【数1】
【0023】
本発明においては、ベースポリマーとしての(メタ)アクリル系ポリマーに、炭素数が2以上のアルキル基を所定量含ませることにより、粘着剤層の極性を低下させて、薬液(例えば、酸性またはアルカリ性の薬液)の浸入を防止することができる。一方、粘着剤層の極性が低すぎると、十分な粘着力が得られないが、本発明においては、上記(メタ)アクリル系ポリマーがOH基をさらに含み、かつ、側鎖アルキル基の炭素(C)とOH基とのモル比(C/OH)が上記範囲であることにより、粘着性を維持しつつ、粘着剤層への薬液の浸入を防止することができる。所定量のOH基を含有することにより優れた粘着性を発現し得る上記粘着剤層を備える本発明の熱剥離型粘着シートは、該粘着シートと被着体との界面への薬液侵入も有効に防止することができる。薬液侵入を防止すれば、粘着剤の劣化を抑制できるので、優れた粘着性を維持することができる。また、粘着剤層中の熱膨張性微小球の薬液による変質を抑制できるので、酸性またはアルカリ性の薬液中で使用された場合にも、熱剥離性が損なわれない。さらに、上記(メタ)アクリル系ポリマーから構成される粘着剤は、熱膨張性微小球の膨張または発泡を阻害し難い。これらの効果を奏する上記熱剥離型粘着シートは、エッチング処理工程等の、酸性またはアルカリ性の薬液を用いる工程における保護シートとして好適に用いられ得る。
【0024】
上記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(溶媒:THF)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定した値)は、ポリスチレン換算で、好ましくは10万〜300万であり、より好ましくは20万〜250万であり、さらに好ましくは30万〜200万である。
【0025】
<添加剤>
上記アクリル系粘着剤Iは、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。該添加剤としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤(例えば、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤)、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0026】
上記粘着付与剤としては、任意の適切な粘着付与剤が用いられる。粘着付与剤としては、例えば、粘着付与樹脂が用いられる。粘着付与樹脂の具体例としては、ロジン系粘着付与樹脂(例えば、未変性ロジン、変性ロジン、ロジンフェノール系樹脂、ロジンエステル系樹脂など)、テルペン系粘着付与樹脂(例えば、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂)、炭化水素系粘着付与樹脂(例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂(例えば、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂など)、脂肪族・芳香族系石油樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂など)、フェノール系粘着付与樹脂(例えば、アルキルフェノール系樹脂、キシレンホルムアルデヒド系樹脂、レゾール、ノボラックなど)、ケトン系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂などが挙げられる。なかでも好ましくは、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂または炭化水素系粘着付与樹脂(スチレン系樹脂など)である。粘着付与剤は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記粘着付与剤は市販品を用いてもよい。市販品の粘着付与剤の具体例としては、ヤスハラケミカル社製の商品名「YSポリスターS145」、「マイティエースK140」、荒川化学社製の商品名「タマノル901」等のテルペンフェノール樹脂;住友ベークライト社製の商品名「スミライトレジン PR−12603」、荒川化学社製の商品名「タマノル361」等のロジンフェノール樹脂;荒川化学社製の商品名「タマノル1010R」、「タマノル200N」等のアルキルフェノール樹脂;荒川化学社製の商品名「アルコンP−140」等の脂環族系飽和炭化水素樹脂等が挙げられる。
【0028】
上記粘着付与剤の添加量は、粘着剤層100重量部に対して、好ましくは40重量部以下であり、より好ましくは30重量部以下であり、さらに好ましくは25重量部以下であり、さらに好ましくは15重量部〜25重量部である。このような範囲であれば、粘着力および凹凸追従性に優れる粘着剤層を形成することができる。凹凸追従性に優れる粘着剤層を形成すれば、粘着剤層と被着体との間への薬液侵入が顕著に防止される。
【0029】
上記粘着付与剤の水酸基価は、好ましくは10mgKOH/g以上であり、より好ましくは40mgKOH/g〜400mgKOH/gである。このような範囲であれば、粘着性と薬液侵入の防止とが両立されて、本発明の効果が顕著となる。
【0030】
上記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。なかでも好ましくは、イソシアネート系架橋剤またはエポキシ系架橋剤である。
【0031】
上記イソシアネート系架橋剤の具体例としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロン ジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物;等が挙げられる。イソシアネート系架橋剤の含有量は、所望とする粘着力に応じて、任意の適切な量に設定され得、アクリル系粘着剤I中のベースポリマー(すなわち、(メタ)アクリル系ポリマー)100重量部に対して、代表的には0.1重量部〜20重量部であり、より好ましくは0.5重量部〜10重量部である。
【0032】
前記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト1600」)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト1500NP」)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト40E」)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト70P」)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製、商品名「エピオールE−400」)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製、商品名「エピオールP−200」)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX−611」)、グリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX−314」)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX−512」)、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテル、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂等が挙げられる。エポキシ系架橋剤の含有量は、所望とする粘着力に応じて、任意の適切な量に設定され得、ベースポリマー100重量部に対して、代表的には0.01重量部〜10重量部であり、より好ましくは0.03重量部〜5重量部である。
【0033】
B−2.熱膨張性微小球
熱膨張性微小球とは、加熱により膨張または発泡し得る微小球である。該熱膨張性微小球を含む粘着剤層を有する熱剥離型粘着シートは、加熱により、貼着面に凹凸が生じて粘着力が低下するため、粘着力を要する場面では十分な粘着力を有し、かつ、剥離を要する場面での剥離性に優れる。上記のとおり、本発明においては、酸性またはアルカリ性の薬液にさらされても、熱膨張性微小球が変質し難く、熱膨張性微小球としての上記機能を十分に発現させることができる。
【0034】
上記熱膨張性微小球の含有割合は、所望とする粘着力の低下性等に応じて適切に設定し得る。熱膨張性微小球の含有割合は、アクリル系粘着剤I中の上記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば1重量部〜150重量部、好ましくは10重量部〜130重量部、さらに好ましくは25重量部〜100重量部である。
【0035】
上記熱膨張性微小球としては、任意の適切な熱膨張性微小球を用いることができる。上記熱膨張性微小球としては、例えば、加熱により容易に膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球が用いられ得る。このような熱膨張性微小球は、任意の適切な方法、例えば、コアセルベーション法、界面重合法等により製造できる。
【0036】
加熱により容易に膨張する物質としては、例えば、プロパン、プロピレン、ブテン、ノルマルブタン、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、メタンのハロゲン化物、テトラアルキルシラン等の低沸点液体;熱分解によりガス化するアゾジカルボンアミド;等が挙げられる。
【0037】
上記殻を構成する物質としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のカルボン酸単量体;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレンモノマー;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等のアミド単量体;等から構成されるポリマーが挙げられる。これらの単量体から構成されるポリマーは、ホモポリマーであってもよく、コポリマーであってもよい。該コポリマーとしては、例えば、塩化ビニリデン−メタクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−メタクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−メタクリロニトリル−イタコン酸共重合体等が挙げられる。
【0038】
上記熱膨張性微小球として、無機系発泡剤または有機系発泡剤を用いてもよい。無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水酸化ホウ素ナトリウム、各種アジド類等が挙げられる。また、有機系発泡剤としては、例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等の塩フッ化アルカン系化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ系化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3´−ジスルホニルヒドラジド、4,4´−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)等のヒドラジン系化合物;p−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4´−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物;5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾール等のトリアゾール系化合物;N,N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N´−ジメチル−N,N´−ジニトロソテレフタルアミド;等のN−ニトロソ系化合物などが挙げられる。
【0039】
上記熱膨張性微小球は市販品を用いてもよい。市販品の熱膨張性微小球の具体例としては、松本油脂製薬社製の商品名「マツモトマイクロスフェアー」(グレード:F−30、F−30D、F−36D、F−36LV、F−50、F−50D、F−65、F−65D、FN−100SS、FN−100SSD、FN−180SS、FN−180SSD、F−190D、F−260D、F−2800D)、日本フィライト社製の商品名「エクスパンセル」(グレード:053−40、031−40、920−40、909−80、930−120)、呉羽化学工業社製「ダイフォーム」(グレード:H750、H850、H1100、S2320D、S2640D、M330、M430、M520)、積水化学工業社製「アドバンセル」(グレード:EML101、EMH204、EHM301、EHM302、EHM303、EM304、EHM401、EM403、EM501)等が挙げられる。
【0040】
上記熱膨張性微小球の加熱前の粒子径は、好ましくは0.5μm〜80μmであり、より好ましくは5μm〜45μmであり、さらに好ましくは10μm〜20μmであり、特に好ましくは10μm〜15μmである。よって、上記熱膨張性微小球の加熱前の粒子サイズを平均粒子径で言えば、好ましくは6μm〜45μmであり、より好ましくは15μm〜35μmである。上記の粒子径と平均粒子径はレーザー散乱法における粒度分布測定法によって求められる値である。
【0041】
上記熱膨張性微小球は、体積膨張率が好ましくは5倍以上、より好ましくは7倍以上、さらに好ましくは10倍以上となるまで破裂しない適度な強度を有することが好ましい。このような熱膨張性微小球を用いる場合、加熱処理により粘着力を効率よく低下させることができる。
【0042】
B−3.第1の粘着剤層の特性等
上記第1の粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm〜100μmであり、より好ましくは5μm〜80μmであり、特に好ましくは10μm〜50μmである。上記のとおり、第1の粘着剤層は、熱膨張性微小球を含む層である。したがって、第1の粘着剤層の厚みは、第1の粘着剤層の厚み方向断面を観察した際の、第1の粘着剤層の外側面(基材とは反対側の面)と、基材に最も近い熱膨張性微小球の最内側端までの距離をいう。
【0043】
上記第1の粘着剤層の厚みと、該第1の粘着剤層に含まれる熱膨張性微小球の平均粒子径との差(厚み−平均粒子径)は、好ましくは8μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは15μm以上であり、特に好ましくは20μm以上であり、最も好ましくは25μm〜100μmである。このような範囲であれば、第1の粘着剤層が適切な表面粗さを有し、第1の粘着剤層と被着体との界面に、薬液が浸入し難い熱剥離型粘着シートを得ることができる。
【0044】
上記第1の粘着剤層の25℃におけるナノインデンテーション法による弾性率は、好ましくは0.01MPa〜50MPaであり、より好ましくは0.1MPa〜10MPaであり、特に好ましくは0.5MPa〜5MPaである。粘着剤層の弾性率が上記範囲であれば、粘着性、切断性および段差追従性に優れる熱剥離型粘着シートを得ることができる。ナノインデンテーション法による弾性率とは、圧子を試料に押し込んだときの、圧子への負荷荷重と押し込み深さとを負荷時、除荷時にわたり連続的に測定し、得られた負荷荷重−押し込み深さ曲線から求められる弾性率をいう。本明細書において、ナノインデンテーション法による弾性率とは、測定条件を荷重:1mN、負荷・除荷速度:0.1mN/s、保持時間:1sとして上記のように測定した弾性率をいう。
【0045】
上記第1の粘着剤層の弾性率は、該粘着剤層中の粘着剤を構成するベースポリマーの組成等により調整することができる。また、第1の粘着剤層に添加剤を添加して弾性率を調整してもよい。例えば、第1の粘着剤層にビーズを含有させれば、該粘着剤層の弾性率を上げることができる。ビーズとしては、例えば、ガラスビーズ、樹脂ビーズ等が挙げられる。ビーズの平均粒径は、例えば0.01μm〜50μmである。ビーズの添加量は、粘着剤層全体100重量部に対して、例えば10重量部〜200重量部、好ましくは20重量部〜100重量部である。
【0046】
上記第1の粘着剤層の貼着面の中心線平均表面粗さRaは、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは0.01μm〜1μmであり、さらに好ましくは0.03μm〜0.8μmであり、特に好ましくは0.06μm〜0.6μmである。このような範囲であれば、第1の粘着剤層と被着体との界面に、薬液が浸入し難い熱剥離型粘着シートを得ることができる。表面粗さRaは、JIS B 0601に準じて測定される。
【0047】
上記第1の粘着剤層に対する水の接触角は、好ましくは85°〜115°であり、より好ましくは87°〜115°であり、特に好ましくは90°〜115°である。水の接触角が115°より大きい場合、すなわち、粘着剤層の疎水性が高い場合、十分な粘着特性が得られないおそれがある。一方、水の接触角が85°より小さい場合、すなわち、粘着剤層の疎水性が低すぎる場合、粘着剤層と被着体との界面に薬液が浸入するおそれがある。
【0048】
上記第1の粘着剤層のゲル分率は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは52%〜99%であり、さらに好ましくは55%〜99%である。このような範囲であれば、粘着剤層への薬液侵入を防止することができる。粘着剤層のゲル分率は、粘着剤を構成するベースポリマーの組成、架橋剤の種類および含有量、粘着付与剤の種類および含有量等を制御して調整することができる。ゲル分率の測定方法は、後述する。
【0049】
C.第2の粘着剤層
C−1.粘着剤
上記第2の粘着剤層は、任意の適切な粘着剤を含む。第2の粘着剤層に含まれる粘着剤としては、密着性の観点、また、第2の粘着剤層が熱膨張微小球を含む場合には、加熱時に熱膨張性微小球の膨張または発泡を拘束しない観点から、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系粘着剤、活性エネルギー線硬化型粘着剤等が挙げられる。また、上記粘着剤は、融点が約200℃以下の熱溶融性樹脂が配合されたクリ−プ特性改良型粘着剤であってもよい。クリープ特性改良型粘着剤の詳細は、特開昭56−61468号公報、特開昭63−17981号公報等に記載されている。上記の粘着剤のなかでも、アクリル系粘着剤またはゴム系粘着剤が好ましく用いられ得る。なお、上記粘着剤は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0050】
第2の粘着剤層に含まれるアクリル系粘着剤としては、任意の適切なアクリル系粘着剤が用いられ得る。例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤等が挙げられる。1つの実施形態においては、上記B項で説明したアクリル系粘着剤Iが用いられる。
【0051】
上記ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム;ポリイソプレンゴム、スチレン・ブタジエン(SB)ゴム、スチレン・イソプレン(SI)ゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)ゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレン、これらの変性体等の合成ゴム;等をベースポリマーとするゴム系粘着剤が挙げられる。
【0052】
上記第2の粘着剤層に含まれる粘着剤として、活性エネルギー線の照射により硬化(高弾性率化)し得る活性エネルギー線硬化型粘着剤を用いてもよい。活性エネルギー線硬化型粘着剤を用いれば、貼り付け時には低弾性で柔軟性が高く取り扱い性に優れ、剥離を要する場面においては、活性エネルギー線を照射することにより粘着力を低下させ得る熱剥離型粘着シートを得ることができる。活性エネルギー線としては、例えば、ガンマ線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)、ラジオ波、アルファ線、ベータ線、電子線、プラズマ流、電離線、粒子線等が挙げられる。
【0053】
上記活性エネルギー線硬化型粘着剤を構成する樹脂材料としては、例えば、紫外線硬化システム(加藤清視著、総合技術センター発行、(1989))、光硬化技術(技術情報協会編(2000))、特開2003−292916号公報、特許4151850号等に記載されている樹脂材料が挙げられる。より具体的には、母剤となるポリマーと活性エネルギー線反応性化合物(モノマーまたはオリゴマー)とを含む樹脂材料(R1)、活性エネルギー線反応性ポリマーを含む樹脂材料(R2)等が挙げられる。
【0054】
上記母剤となるポリマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソブチレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、ニトリルゴム(NBR)等のゴム系ポリマー;シリコーン系ポリマー;アクリル系ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーは、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0055】
上記活性エネルギー線反応性化合物としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、アセチレン基等の炭素−炭素多重結合を有する官能基を有する光反応性のモノマーまたはオリゴマーが挙げられる。該光反応性のモノマーまたはオリゴマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有化合物;該(メタ)アクリロイル基含有化合物の2〜5量体;等が挙げられる。
【0056】
また、上記活性エネルギー線反応性化合物として、エポキシ化ブタジエン、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、ビニルシロキサン等のモノマー;または該モノマーから構成されるオリゴマーを用いてもよい。これらの化合物を含む樹脂材料(R1)は、紫外線、電子線等の高エネルギー線により硬化することができる。
【0057】
さらに、上記活性エネルギー線反応性化合物として、オニウム塩等の有機塩類と、分子内に複数の複素環を有する化合物との混合物を用いてもよい。該混合物は、活性エネルギー線(例えば、紫外線、電子線)の照射により有機塩が開裂してイオンを生成し、これが開始種となって複素環の開環反応を引き起こして3次元網目構造を形成し得る。上記有機塩類としては、例えば、ヨードニウム塩、フォスフォニウム塩、アンチモニウム塩、スルホニウム塩、ボレート塩等が挙げられる。上記分子内に複数の複素環を有する化合物における複素環としては、オキシラン、オキセタン、オキソラン、チイラン、アジリジン等が挙げられる。
【0058】
さらに、上記活性エネルギー線反応性化合物として、オニウム塩等の有機塩類と、分子内に複数の複素環を有する化合物との混合物を用いてもよい。該混合物は、活性エネルギー線(例えば、紫外線、電子線)の照射により有機塩が開裂してイオンを生成し、これが開始種となって複素環の開環反応を引き起こして3次元網目構造を形成し得る。上記有機塩類としては、例えば、ヨードニウム塩、フォスフォニウム塩、アンチモニウム塩、スルホニウム塩、ボレート塩等が挙げられる。上記分子内に複数の複素環を有する化合物における複素環としては、オキシラン、オキセタン、オキソラン、チイラン、アジリジン等が挙げられる。
【0059】
上記母剤となるポリマーと活性エネルギー線反応性化合物とを含む樹脂材料(R1)において、活性エネルギー線反応性化合物の含有割合は、母剤となるポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜500重量部であり、より好ましくは1重量部〜300重量部であり、さらに好ましくは10重量部〜200重量部である。
【0060】
上記母剤となるポリマーと活性エネルギー線反応性化合物とを含む樹脂材料(R1)は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、活性エネルギー線重合開始剤、活性エネルギー線重合促進剤、架橋剤、可塑剤、加硫剤等が挙げられる。活性エネルギー線重合開始剤としては、用いる活性エネルギー線の種類に応じて、任意の適切な開始剤が用いられ得る。活性エネルギー線重合開始剤は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。母剤となるポリマーと活性エネルギー線反応性化合物とを含む樹脂材料(R1)において、活性エネルギー線重合開始剤の含有割合は、母剤となるポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜10重量部であり、より好ましくは1重量部〜5重量部である。
【0061】
上記活性エネルギー線反応性ポリマーとしては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、アセチレン基等の炭素−炭素多重結合を有する官能基を有するポリマーが挙げられる。活性エネルギー線反応性官能基を有するポリマーの具体例としては、多官能(メタ)アクリレートから構成されるポリマー;光カチオン重合型ポリマー;ポリビニルシンナマート等のシンナモイル基含有ポリマー;ジアゾ化されたアミノノボラック樹脂;ポリアクリルアミド;等が挙げられる。また、活性エネルギー線反応性ポリマーを含む樹脂材料(R2)として、アリル基を有する活性エネルギー線反応性ポリマーとチオール基を有する化合物との混合物を用いることもできる。なお、活性エネルギー線照射による硬化の前(例えば、熱剥離型粘着シートを貼り付ける際)に、実用可能な硬さ(粘度)を有する粘着剤層前駆体を形成し得る限り、活性エネルギー線反応性官能基を有するポリマーの他、活性エネルギー線反応性官能基を有するオリゴマーを用いることもできる。
【0062】
上記活性エネルギー線反応性ポリマーを含む樹脂材料(R2)は、上記活性エネルギー線反応性化合物(モノマーまたはオリゴマー)をさらに含んでいてもよい。また、上記活性エネルギー線反応性ポリマーを含む樹脂材料(R2)は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。添加剤の具体例は、母剤となるポリマーと活性エネルギー線反応性化合物とを含む樹脂材料(R1)に含まれ得る添加剤と同様である。活性エネルギー線反応性ポリマーを含む樹脂材料(R2)において、活性エネルギー線重合開始剤の含有割合は、活性エネルギー線反応性ポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜10重量部であり、より好ましくは1重量部〜5重量部である。
【0063】
上記第2の粘着剤層に含まれる粘着剤は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。用いられる添加剤の例としては、上記B−1項で説明した添加剤が挙げられる。また、添加剤(粘着付与剤、架橋剤等)の添加量も、B−1項で説明した添加量であることが好ましい。したがって、1つの実施形態においては、第2の粘着剤層は、粘着付与剤を含み得、該粘着付与剤の含有割合は、粘着剤層100重量部に対して、好ましくは40重量部以下であり、より好ましくは30重量部以下であり、さらに好ましくは25重量部以下であり、さらに好ましくは3重量部〜25重量部である。
【0064】
C−2.熱膨張性微小球
1つの実施形態においては、上記第2の粘着剤層は、B−2項で説明した熱膨張性微小球をさらに含む。第2の粘着剤層においても、熱膨張性微小球の含有割合は、第2の粘着剤層を形成する粘着剤中のベースポリマー100重量部に対して、例えば1重量部〜150重量部、好ましくは10重量部〜130重量部、さらに好ましくは25重量部〜100重量部である。
【0065】
C−3.第2の粘着剤層の特性等
上記第2の粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm〜100μmであり、より好ましくは5μm〜80μmであり、特に好ましくは10μm〜50μmである。第2の粘着剤層が熱膨張性微小球を含む場合、第2の粘着剤層の厚みは、第1の粘着剤層の厚みと同様に、第2の粘着剤層の厚み方向断面を観察した際の、第2の粘着剤層の外側面(基材とは反対側の面)と、基材に最も近い熱膨張性微小球の最内側端までの距離とする。
【0066】
第2の粘着剤層が熱膨張性微小球を含む場合、第2の粘着剤層の厚みと、該第2の粘着剤層に含まれる熱膨張性微小球の平均粒子径との差(厚み−平均粒子径)は、好ましくは8μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは15μm以上であり、特に好ましくは25μm以上であり、最も好ましくは25μm〜100μmである。
【0067】
上記第2の粘着剤層の25℃におけるナノインデンテーション法による弾性率は、好ましくは0.01MPa〜50MPaであり、より好ましくは0.1MPa〜10MPaであり、特に好ましくは0.5MPa〜5MPaである。
【0068】
上記第2の粘着剤層の貼着面の中心線平均表面粗さRaは、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは0.01μm〜1μmであり、さらに好ましくは0.03μm〜0.8μmであり、特に好ましくは0.06μm〜0.6μmである。
【0069】
上記第2の粘着剤層に対する水の接触角は、好ましくは85°〜115°であり、より好ましくは87°〜115°であり、特に好ましくは90°〜115°である。
【0070】
上記第2の粘着剤層のゲル分率は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは52%〜99%であり、さらに好ましくは55%〜99%である。このような範囲であれば、粘着剤層への薬液侵入を防止することができる。
【0071】
D.基材
上記基材としては、例えば、樹脂シート、不織布、紙、金属箔、織布、ゴムシート、発泡シート等が挙げられる。また、これらの積層体(特に、樹脂シートを含む積層体)から構成される基材、または、これら複数の材料を原料とした複合基材を用いてもよい。樹脂シートを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、フッ素系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ウレタンアクリレート、アクリル系樹脂(好ましくはUV硬化型のアクリル系樹脂)等が挙げられる。なかでも、耐酸性の観点から、PET、PEN、PEまたはPPが好ましく用いられ得る。不織布としては、マニラ麻を含む不織布等の耐熱性を有する天然繊維による不織布;ポリプロピレン樹脂不織布、ポリエチレン樹脂不織布、エステル系樹脂不織布等の合成樹脂不織布等が挙げられる。
【0072】
上記基材は、25℃におけるナノインデンテーション法による弾性率が、10MPa〜10GPaであることが好ましい。基材の25℃におけるナノインデンテーション法による弾性率は、より好ましくは100MPa〜5GPaであり、特に好ましくは500MPa〜5GPaである。このような範囲であれば、切断性、および貼り合わせ時の取り扱い性に優れる熱剥離型粘着シートを得ることができる。
【0073】
上記基材の厚みは、好ましくは1μm〜1000μmであり、より好ましくは2μm〜250μmであり、特に好ましくは10μm〜100μmである。このような範囲であれば、切断性、および貼り合わせ時の取り扱い性に優れる熱剥離型粘着シートを得ることができる。
【0074】
上記基材は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理、有機コーティング材料によるコーティング処理等が挙げられる。このような表面処理を行えば、粘着剤層と基材との密着性を高め、粘着剤層と基材との界面への薬液侵入を抑制することができる。特に、有機コーティング材料によるコーティング処理は、加熱剥離時に粘着剤層の投錨破壊が抑制され得ることから好ましい。
【0075】
上記有機コーティング材料としては、例えば、プラスチックハードコート材料II(CMC出版、(2004))に記載される材料が挙げられる。好ましくはウレタン系ポリマー、より好ましくはポリアクリルウレタン、ポリエステルウレタンまたはこれらの前駆体が用いられる。基材への塗工が簡便であり、かつ、工業的に多種のものが選択でき安価に入手できるからである。該ウレタン系ポリマーは、例えば、イソシアナートモノマーとアルコール性水酸基含有モノマー(例えば、水酸基含有アクリル化合物又は水酸基含有エステル化合物)との反応混合物からなるポリマーである。有機コーティング材料は、任意の添加剤として、ポリアミンなどの鎖延長剤、老化防止剤、酸化安定剤等を含んでいてもよい。有機コーティング層の厚みは特に限定されないが、例えば、0.1μm〜10μm程度が適しており、0.1μm〜5μm程度が好ましく、0.5μm〜5μm程度がより好ましい。有機コーティング材料として、荒川化学工業社製アラコートシリーズ(例えば、商品名「AP2500E」と硬化剤である商品名「CL2500」の組み合わせ)、大日精化社製の商品名「NB300」、商品名「HRカラー」等の市販品を用いてもよい。
【0076】
E.弾性層
上記のとおり、本発明の熱剥離型粘着シートは、弾性層をさらに備えていてもよい。
【0077】
上記弾性層は、ベースポリマーを含み、該ベースポリマーとしては、粘着性のポリマーが用いられ得る。弾性層を構成するベースポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー:天然ゴム、合成ゴム(例えば、ニトリル系、ジエン系、アクリル系)等のゴム系ポリマー;ポリオレフィン系、ポリエステル系等の熱可塑性エラストマー;ビニルアルキルエーテル系ポリマー;シリコーン系ポリマー;ポリエステル系ポリマー;ポリアミド系ポリマー;ウレタン系ポリマー;スチレン−ジエンブロック共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリウレタン系ポリマー;ポリブタジエン;軟質ポリ塩化ビニル;放射線硬化型ポリマー等が挙げられる。上記弾性層を構成するベースポリマーは、上記粘着剤層(第1の粘着剤層および/または第2の粘着剤層)を形成するベースポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよい。上記弾性層は、上記ベースポリマーから形成される発泡フィルムであってもよい。該発泡フィルムは、任意の適切な方法により得ることができる。なお、弾性層と第1の粘着剤層(および熱膨張性微小球を含む第2の粘着剤層)とは、熱膨張性微小球の有無(弾性層は熱膨張性微小球を含まない)で区別することができる。
【0078】
弾性層を構成するベースポリマーとしての(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)である。該(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体としては、炭素数が20以下の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。また、上記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体成分に対応する単位を含んでいてもよい。このような単量体成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イコタン酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、N−メチロ−ルアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、スチレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン、ビニルエーテル等が挙げられる。
【0079】
上記弾性層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。該添加剤としては、例えば、架橋剤、加硫剤、粘着付与剤、可塑剤、柔軟剤、充填剤、老化防止剤等が挙げられる。ベースポリマーとして、ポリ塩化ビニル等の硬質樹脂を用いる場合、可塑剤および/また柔軟剤を併用して、所望の弾性を有する弾性層を形成することが好ましい。
【0080】
上記弾性層の厚みは、好ましくは3μm〜200μmであり、より好ましくは5μm〜100μmである。このような範囲であれば、弾性層の上記機能を十分に発揮させることができる。
【0081】
上記弾性層の25℃における引っ張り弾性率は、好ましくは100Mpa未満であり、より好ましくは0.1MPa〜50MPaであり、さらに好ましくは0.1MPa〜10MPaである。このような範囲であれば、弾性層の上記機能を十分に発揮させることができる。
【0082】
F.熱剥離型粘着シートの製造方法
本発明の熱剥離型粘着シートは、任意の適切な方法により製造することができる。本発明の熱剥離型粘着シートは、例えば、基材の一方の面に、直接、第1の粘着剤層形成用組成物を塗工し、基材の他方の面に、第2の粘着剤層形成用組成物を塗工する方法、任意の適切な基体上に塗工して形成された塗工層を基材に転写して、第1の粘着剤層および第2の粘着剤層を形成する方法等が挙げられる。また、熱膨張性微小球を含む粘着剤層は、粘着剤を含む組成物により粘着剤塗工層を形成した後、該粘着剤塗工層に熱膨張性微小球を振りかけた後、ラミネーター等を用いて、該熱膨張性微小球を該塗工層中に埋め込んで、形成してもよい。
【0083】
上記第1の粘着剤層形成用組成物は、上記アクリル系粘着剤Iおよび上記熱膨張性微小球を含み、必要に応じて任意の適切な溶媒を含む。上記第2の粘着剤層形成用組成物は、任意の適切な粘着剤を含み、必要に応じて、上記熱膨張性微小球および/または任意の適切な溶媒を含む。
【0084】
上記熱剥離型粘着シートが、上記弾性層を有する場合、該弾性層および該弾性層に隣接する粘着剤層は、例えば、基材上に、弾性層形成用組成物を塗工し、次いで、粘着剤層形成用組成物を塗工して形成することができる。例えば、基材上に、弾性層を形成する材料(ベースポリマー、添加剤等)を含む弾性層形成用組成物を塗工し、次いで、弾性層形成用組成物の塗工層上に第1の粘着剤形成用組成物を塗工することにより、基材側から順に、弾性層および第1の粘着剤層を形成させることができる。
【0085】
上記各組成物の塗工方法としては、任意の適切な塗工方法が採用され得る。例えば、塗布した後に乾燥して各層を形成することができる。塗布方法としては、例えば、例えば、マルチコーター、ダイコーター、グラビアコーター、アプリケーター等を用いた塗布方法が挙げられる。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。加熱乾燥する場合の加熱温度は、乾燥対象となる物質の特性に応じて、任意の適切な温度に設定され得る。
【0086】
G.用途
本発明の熱剥離型粘着シートは、電子部品を製造する際の保護シートとして好適に用いられ得る。特に、電子部品を酸性またはアルカリ性の薬液を用いて処理(例えば、エッチング処理)する際に、該電子部品を保護するための保護シートとして好適に用いられ得る。
【0087】
本発明の熱剥離型粘着シートは、両面粘着シートであり、該粘着シートの両面に被処理物としての電子部品を貼着して、該電子部品を処理工程に供することにより、該電子部品の反りを防止することができる。また、このようにして処理工程を行うことにより、生産効率の向上を図ることができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0089】
[製造例1]アクリル系粘着剤I(i)の調製
(メタ)アクリル系ポリマー(アクリル酸ブチル(BA)とアクリル酸(AA)の共重合体、BA由来の構成単位:AA由来の構成単位(重量比)=95:5)100重量部と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)0.6重量部と、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名「YSポリスターT130」)30重量部とを混合して、アクリル系粘着剤I(i)を調製した。
【0090】
[製造例2〜9]アクリル系粘着剤I(ii)〜(ix)の調製
表1に示す(メタ)アクリル系ポリマー、架橋剤および粘着付与樹脂を、表1に示す配合量で混合して、アクリル系粘着剤I(ii)〜(ix)を調製した。
テトラッドX:エポキシ系架橋剤;三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドX」
コロネートL:イソシアネート系架橋剤;日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」
スーパーエステルA−75:ロジン系粘着付与樹脂;荒川化学工業社製、商品名「スーパーエステルA−75」
タマノル200:アルキルフェノール系粘着付与樹脂;荒川化学工業社製、商品名「タマノル200」
【表1】
【0091】
[実施例1]
製造例1で得られたアクリル系粘着剤I(i)130.6重量部と、熱膨張性微小球(松本油脂製薬社製、商品名「マツモトマイクロスフェアー F−50D」)25重量部と、および、トルエン210重量部とを混合して、粘着剤層形成用組成物(i)を調製した。
この粘着剤層形成用組成物(i)を、基材としてのPETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーS10」、厚み:100μm)の両面に塗工して、厚み40μmの第1の粘着剤層および第2の粘着剤層を形成した。
上記の操作により、第1の粘着剤層(40μm)と、基材(100μm)と、第2の粘着剤層(40μm)とをこの順に備える熱剥離型粘着シートを得た。
【0092】
[実施例2]
製造例1で得られたアクリル系粘着剤I(i)130.6重量部と、熱膨張性微小球(松本油脂製薬社製、商品名「マツモトマイクロスフェアー F−48D」)30重量部と、トルエン210重量部とを混合して、粘着剤層形成用組成物(ii)を調製した。
また、弾性層形成用組成物(i)として、アクリル系粘着剤I(i)130.6重量部とトルエン210重量部との混合物を準備した。また、弾性層形成用組成物(ii)として、製造例2で得られたアクリル系粘着剤I(ii)130.1重量部とトルエン210重量部との混合物を準備した。
基材としてのポリエステルフィルム(三菱樹脂社製、商品名「ダイヤホイル」、厚み:50μm)の片面に、弾性層形成用組成物(i)と粘着剤層形成組成物(ii)とをこの順に塗工して、弾性層(厚み:20μm)および第1の粘着剤層(厚み:40μm)を形成した。さらに、該基材のもう一方の面に、弾性層形成用組成物(ii)と粘着剤層形成組成物(ii)とをこの順に塗工して、弾性層(厚み:20μm)および第2の粘着剤層(20μm)を形成した。
上記の操作により、第1の粘着剤層(40μm)と、弾性層(20μm)と、基材(50μm)と、弾性層(20μm)と、第2の粘着剤層(20μm)とをこの順に備える熱剥離型粘着シートを得た。
【0093】
[実施例3]
製造例3で得られたアクリル系粘着剤(iii)151重量部と、熱膨張性微小球(松本油脂製薬社製、商品名「マツモトマイクロスフェアー FN−100SD」)40重量部と、トルエン210重量部とを混合して、粘着剤層形成用組成物(iii)を調製した。
また、弾性層形成用組成物(iii)として、製造例4で得られたアクリル系粘着剤I(iv)101重量部とトルエン210重量部との混合物を準備した。
基材としてのPETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーS10」、厚み:100μm)の片面に、弾性層形成用組成物(iii)と粘着剤層形成組成物(iii)とをこの順に塗工して、弾性層(厚み:30μm)および第1の粘着剤層(厚み:30μm)を形成した。さらに、該基材のもう一方の面に、弾性層形成用組成物(iii)と粘着剤層形成組成物(iii)とをこの順に塗工して、弾性層(厚み:15μm)および第2の粘着剤層(厚み:20μm)を形成した。
上記の操作により、第1の粘着剤層(30μm)と、弾性層(30μm)と、基材(100μm)と、弾性層(15μm)と、第2の粘着剤層(20μm)とをこの順に備える熱剥離型粘着シートを得た。
【0094】
[実施例4]
製造例5で得られたアクリル系粘着剤(v)122重量部と、熱膨張性微小球(日本フィライト社製、商品名「エクスパンセル 909−DU80」)30重量部と、トルエン210重量部とを混合して、粘着剤層形成用組成物(iv)を調製した。
また、弾性層形成用組成物(iv)として、製造例6で得られたアクリル系粘着剤I(vi)112重量部とトルエン210重量部との混合物を準備した。
基材としてのPETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーS10」、厚み:50μm)の片面に、弾性層形成用組成物(iv)と粘着剤層形成組成物(iv)とをこの順に塗工して、弾性層(厚み:25μm)および第1の粘着剤層(厚み:50μm)を形成した。さらに、該基材のもう一方の面に、弾性層形成用組成物(iv)と粘着剤層形成組成物(iv)とをこの順に塗工して、弾性層(厚み:20μm)および第2の粘着剤層(厚み:30μm)を形成した。
上記の操作により、第1の粘着剤層(50μm)と、弾性層(25μm)と、基材(50μm)と、弾性層(20μm)と、第2の粘着剤層(30μm)とをこの順に備える熱剥離型粘着シートを得た。
【0095】
[比較例1]
製造例7で得られたアクリル系粘着剤I(vii)140.7重量部と、熱膨張性微小球(松本油脂製薬社製、商品名「マツモトマイクロスフェアー F−50D」)25重量部と、および、トルエン210重量部とを混合して、粘着剤層形成用組成物(v)を調製した。
この粘着剤層形成用組成物(v)を、基材としてのPETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーS10」、厚み:100μm)の両面に塗工して、厚み45μmの第1の粘着剤層および第2の粘着剤層を形成した。
上記の操作により、第1の粘着剤層(45μm)と、基材(100μm)と、第2の粘着剤層(45μm)とをこの順に備える熱剥離型粘着シートを得た。
【0096】
[比較例2]
製造例8で得られたアクリル系粘着剤I(viii)127重量部と、熱膨張性微小球(日本フィライト社製、商品名「エクスパンセル 909−DU80」)30重量部と、トルエン210重量部とを混合して、粘着剤層形成用組成物(vi)を調製した。
また、弾性層形成用組成物(vi)として、製造例9で得られたアクリル系粘着剤I(ix)117重量部とトルエン210重量部との混合物を準備した。
基材としてのPETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーS10」、厚み:100μm)の片面に、弾性層形成用組成物(vi)と粘着剤層形成組成物(vi)とをこの順に塗工して、弾性層(厚み:20μm)および第1の粘着剤層(厚み:40μm)を形成した。さらに、該基材のもう一方の面に、粘着剤層形成組成物(vi)を塗工して、第2の粘着剤層(40μm)を形成した。
上記の操作により、第1の粘着剤層(40μm)と、弾性層(20μm)と、基材(100μm)と、第2の粘着剤層(40μm)とをこの順に備える熱剥離型粘着シートを得た。
【0097】
[評価]
実施例および比較例で得られた熱剥離型粘着シートを下記の評価に供した。結果を表2に示す。
(1)中心線平均表面粗さRa
第1の粘着剤層側の中心線平均表面粗さRaをJIS B 0601に準じて測定した。具体的には、光学式表面粗さ計(Veeco Metrogy Group社製、商品名「Wyko NT9100」)を用いて、測定条件を以下のようにして測定した。縦、横それぞれ5回測定して得られた測定値の平均を表2に示す。
(評価条件)
サンプル寸法:50mm×50mm
測定範囲:2.534mm×1.901mm
測定モード:VSL
対物レンズ:2.5倍
内部レンズ:1.0倍
(2)接触角
接触角計(協和界面社製、商品名「CX−A型」)を用いて、23℃/50%RH環境下、純水を第1の粘着剤層の表面に2μl滴下し、滴下して5秒後に液滴の接触角を測定した。5回測定して得られた測定値の平均を表2に示す。
(3)ゲル分率
第1の樹脂層からサンプリングした評価用サンプル0.1gを、メッシュ状シートで包み、トルエン50ml中、室温下で1週間静置して、該サンプルにトルエンを浸漬させた。その後、トルエン不溶分を取り出し、70℃で2時間かけて乾燥させた後、乾燥後のトルエン不溶分を秤量した。
トルエン浸漬前のサンプル重量とトルエン不溶分の重量とから、次式により樹脂層のゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=[(トルエン不溶分の重量)/(トルエン浸漬前のサンプル重量)]×100
(4)粘着力測定方法
熱剥離型粘着シートを幅:20mm、長さ:140mmのサイズに切断し、第1の粘着剤層上に、被着体としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ルミラーS−10」東レ社製;厚さ:25μm、幅:20mm)を、JIS Z 0237(2000年)に準じ、温度:23±2℃および湿度:65±5%RHの雰囲気下で、2kgのローラーを1往復させて圧着して貼り合わせた。次いで、被着体付きの熱剥離型粘着シートを、23℃に設定された恒温槽付き引張試験機(島津製作所社製、商品名「島津オートグラフAG−120kN」)にセットし、30分間放置する。放置後、23℃の温度下で、被着体を、剥離角度:180°、剥離速度(引張速度):300mm/minの条件で、熱剥離型粘着シートから引き剥がした時の荷重を測定し、その際の最大荷重(測定初期のピークトップを除いた荷重の最大値)を求め、この最大荷重を第1の粘着剤層の粘着力(N/20mm)とした。
(5)薬液侵入評価
熱剥離型粘着シートを50mm×50mmのサイズに切断し、第1の粘着剤層側にシリコンウエハを配置し、第2の粘着剤層側にガラス板(厚み:1mm)を配置して、温度60℃、圧力0.5MPa、時間3分間の条件で、これらを圧着して評価用サンプルを作製した。その後、温度40℃、濃度60重量%の硝酸溶液に、該評価用サンプルを、10分間浸漬した。浸漬後、第1の粘着剤層側における薬液侵入量を、粘着シート端部からの液侵入距離により評価した。
(6)加熱剥離性
上記(5)薬液侵入評価と同様にして評価用サンプルを作製した。該評価用サンプルを、130℃で1分間加熱した。加熱後のシリコンウエハの剥離状況を目視にて確認した。表2中、粘着剤層の粘着力が失われシリコンウエハが剥離していた場合を○、粘着剤層が粘着力を有しシリコンウエハが剥離していなかった場合を×とする。
【0098】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の熱剥離型粘着シートは、エッチング液等の処理液に供される電子部品の保護テープとして好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0100】
10 第1の粘着剤層
20 基材
30 第2の粘着剤層
40 弾性層
100、200 熱剥離型粘着シート
図1
図2