特許第6587813号(P6587813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱商事ライフサイエンス株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587813
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】香辛料感向上剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/21 20160101AFI20191001BHJP
   A23L 23/00 20160101ALN20191001BHJP
【FI】
   A23L27/21 Z
   !A23L23/00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-37080(P2015-37080)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2016-158507(P2016-158507A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年12月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519127797
【氏名又は名称】三菱商事ライフサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高谷 政宏
(72)【発明者】
【氏名】清水 加代子
(72)【発明者】
【氏名】勝又 忠与次
【審査官】 木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−319110(JP,A)
【文献】 特開2014−057583(JP,A)
【文献】 レシピ豚/02豚ヒレと野菜のカレー炒め,Internet Archive: Wayback Machine[online],2008年10月10日,[retrieved on 2018.10.25], Retrieved from the Internet,URL,https://web.archive.org/web/20081010160458/http://home.c06.itscom.net/maruko/02recipe/05butaniku/02butahirekaree.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00−27/40;27/60
A23L 23/00−25/10;35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール存在下で、糖の含有量が0.1重量%以上であって、アミノ酸の含有量が0.01重量%以上である組成物をpH7.0〜9.0の条件下で75〜120℃、30〜90分間加熱反応させる工程を含む、カレーの香辛料感向上剤の製造方法。
【請求項2】
アルコール存在下で、糖の含有量が0.1重量%以上であって、アミノ酸の含有量が0.01重量%以上である組成物をpH7.0〜9.0の条件下で75〜120℃、30〜90分間加熱反応させて得られる生成物を、香辛料を含有する飲食品に添加することを特徴とする、カレーの香辛料感向上方法。
【請求項3】
アルコール存在下で、糖の含有量が0.1重量%以上であって、アミノ酸の含有量が0.01重量%以上である組成物をpH7.0〜9.0の条件下で75〜120℃、30〜90分間加熱反応させて得られる生成物を、飲食品に添加する工程を含む、飲食品の製造方法。
【請求項4】
アルコール存在下で、糖の含有量が0.1重量%以上であって、アミノ酸の含有量が0.01重量%以上である組成物をpH7.0〜9.0の条件下で75〜120℃、30〜90分間加熱反応させて得られる生成物および香辛料を含有する調味料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香辛料感向上剤、香辛料感の優れた調味料、飲食品の香辛料感を向上させる方法、および香辛料感の向上した飲食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品における香辛料の香りや味、風味の強さを向上させる、すなわち「香辛料感」を強くかつ好ましいものとするためには、香辛料自体もしくはその抽出物、または香料や風味料が一般的に用いられている。これまで、このような香辛料感を向上させる方法として、スクラロースによってハーブ成分であるカルボン又はメントールの香気性を向上させる方法(特許文献1)、スクラロースによって生姜風味を向上させる方法(特許文献2)、アセスルファムカリウムなどのいくつかの高甘味度甘味料の組み合わせによってスパイス感を向上させる方法(特許文献3)、イソ酪酸およびイソ吉草酸を含有する酵母由来物によって香辛料香気を増強する方法(特許文献4)、糖アルコールによって辛みやスパイシー感を増強する方法(特許文献5)、紅茶抽出物によってスパイス感を増強する方法(特許文献6)等が報告されている。
【0003】
また、アルコール(例えば、エタノール)によって香辛料等の辛味が向上することが一般的に知られているが、この効果は熱に弱く、熱履歴の大きくなる工業スケールではアルコールによる辛味の増強効果や全体的な香辛料感の向上効果を得ることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−42021号公報
【特許文献2】特開2000−135066号公報
【特許文献3】特開2013−158302号公報
【特許文献4】特開2010−166886号公報
【特許文献5】特開2008−35799号公報
【特許文献6】特開2006−34146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、香辛料感向上剤、香辛料感の優れた調味料、飲食品の香辛料感を向上させる方法、および香辛料感の向上した飲食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の(1)〜(5)に関する。
(1)アルコール存在下で糖とアミノ酸とを加熱反応させて得られる生成物を含有する香辛料感向上剤。
(2)前記加熱反応が、アルカリ条件下で行われる、(1)に記載の香辛料感向上剤。
(3)前記(1)または(2)の香辛料感向上剤を、香辛料を含有する飲食品に添加することを特徴とする、飲食品の香辛料感向上方法。
(4)前記(1)または(2)の香辛料感向上剤を飲食品に添加する工程を含む、飲食品の製造方法。
(5)前記(1)または(2)の香辛料感向上剤および香辛料を含有することを特徴とする調味料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、飲食品の香辛料感を向上させることができる香辛料感向上剤、香辛料感の優れた調味料、飲食品の香辛料感を向上させる方法、および香辛料感の向上した飲食品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の香辛料感向上剤は、アルコール存在下で糖とアミノ酸とを加熱反応させて得られる生成物を含有する。
【0009】
本明細書において「香辛料感」とは、香辛料やその抽出物または香辛料の香りを再現した香料から感じられる香辛料の香りや味、風味の強さを意味する。
【0010】
本発明において用いるアルコールは、飲食品に使用できるアルコールであれば特に限定はされないが、例えば、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、ペンタノール、2−ペンタノールなどの1価アルコール、プロピレングリコール等の2価アルコール、グリセロール等の3価アルコール、または、糖アルコール等があげられるが、エタノールが好ましい。また、醸造アルコール、ワイン、ビール、日本酒、焼酎、みりん、ウィスキー、ブランデー等の上記アルコールの含有物を用いてもよい。
【0011】
糖としては、例えば、グルコース、フルクトース、キシロース等の単糖類、スクロース、ラクトース、マルトース等の二糖類、ラフィノース、マルトトリオースの三糖類、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖類、デンプン、デキストリン、セルロース、イヌリン等の多糖類があげられる。これらの糖はそのまま用いてもよいし、二糖類以上の糖は分解して用いてもよい。また、糖として、これらの糖を含有する飲食品を用いることができ、当該飲食品はそのまま用いてもよく、または加工して用いてもよい。上記の糖、または糖を含有する飲食品は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
アミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、ヒドロキシプロシン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、オルニチン、シトルリン等があげられるが、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、ロイシンが好ましい。また、アミノ酸は、これらの酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩等の塩であってもよい。アミノ酸は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
また、アミノ酸としては、その含有物を用いてもよい。アミノ酸の含有物としては、ペプチドやタンパク質、酵母エキス、動植物エキス、食肉、魚介類、トウモロコシ、大豆、米、小麦、動植物蛋白加水分解物等があげられる。アミノ酸の含有物を用いる場合、そのまま用いてもよいが、加水分解等により遊離のアミノ酸を増加させて用いることが好ましい。
【0014】
アルコール存在下で糖とアミノ酸との加熱反応を行う際には、糖とアミノ酸とがアルコール中で共存している状況であればよい。たとえば、糖またはその含有物およびアミノ酸またはその含有物を含有する飲食品にアルコールを加えてもよく、逆に糖またはその含有物およびアミノ酸またはその含有物を含有する飲食品をアルコールに加えてもよい。また、当初よりアルコール、糖またはその含有物、およびアミノ酸またはその含有物を含有する飲食品に、必要に応じてアルコール、糖またはその含有物、およびアミノ酸またはその含有物を加えてもよい。当初より糖、アミノ酸、およびアルコールを含有する飲食品としては、例えば、清酒醪、酒粕、みりん醪、みりん粕、醸造調味料、醸造調味料粕等があげられる。
【0015】
糖とアミノ酸とを加熱反応させる際のアルコールの存在量は、アルコール、糖およびアミノ酸を共存させてなる組成物(以下、反応に供する組成物という)の通常0.5〜100重量%であり、好ましくは3〜60重量%、より好ましくは5〜50重量%である。糖およびアミノ酸の反応に供する組成物における含有量は特に限定されないが、反応効率を考慮すると、糖は0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上であり、アミノ酸は0.001重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上である。糖およびアミノ酸の含有量に特に上限はないが、反応効率上、反応に供する組成物中に溶解可能な量であることが好ましい。糖とアミノ酸との存在比に特に限定はないが、通常は1:10〜10:1である。
【0016】
アルコール存在下で糖とアミノ酸とを加熱反応させる際のpHは特に限定はされないが、pH5.0〜9.0、好ましくはpH7.0〜9.0である。pHを調整する必要がある場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の飲食品に許容されるアルカリ、または塩酸、酢酸、乳酸、クエン酸、リン酸等の飲食品に許容される酸を添加することによって調整することができる。
【0017】
また、加熱反応させる温度は60〜140℃、好ましくは75〜120℃であり、加熱反応させる時間は30〜180分間、好ましくは30〜90分間である。
【0018】
また、加熱反応は、本発明の効果の妨げとならない限り、香辛料、ビタミン類、無機塩類、有機酸、乳化剤、増粘剤、香料、油脂類、酸化防止剤、保存料、および機能性素材等の他の食品添加物とともに行ってもよい。
【0019】
上記加熱反応により得られる生成物(以下、本明細書において単に「生成物」と記載する場合がある)は、そのまま本発明の香辛料感向上剤として用いることができるが、必要に応じて濃縮処理、熱風乾燥、蒸気乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等の乾燥処理、分離精製処理、脱色処理等に供して、濃縮物や乾燥物等にしたものを本発明の香辛料感向上剤として用いてもよい。
【0020】
本発明の香辛料感向上剤の形態は、固形状または液状のいずれであってもよい。固形状としては、たとえば、粉末状、顆粒状、ブロック状、カプセル状等があげられる。液状の場合は、溶媒は、水、アルコール(例えば、エタノール)等の有機溶媒、酢酸や液糖等の液状物質のいずれであってもよい。
【0021】
本発明の香辛料感向上剤は、香辛料感向上の妨げとならない限り、前記の他の食品添加物を含有してもよい。他の食品添加物として香辛料を含有する本発明の香辛料感向上剤は、強く、かつ好ましい香辛料感を有する調味料として好適に用いることができる。
【0022】
本発明の調味料に香辛料感向上剤とともに含有させる香辛料は、植物の果実、果皮、花、蕾、樹皮、茎、葉、種子、根、地下茎等、植物体の一部であって、特有の香り、辛味、色調を有し、飲食物に香り付け、消臭、調味、着色等の目的で用いるものであればよい。例えば、ニンニク、ショウガ、ごま、唐辛子、ホースラディシュ、マスタード(芥子)、ケシノミ、ゆず、胡椒、ナツメグ、シナモン、パプリカ、カルダモン、クミン、サフラン、オールスパイス、クローブ、山椒、オレンジピール、ウイキョウ、カンゾウ、フェネグリーク、ディルシード、カショウ、ロングペパー、クレソン、コリアンダーリーフ(香菜)、紫蘇、セロリー、タラゴン、チャイブ、チャービル、ニラ、パセリ、マスタードグリーン(芥子菜)、ミョウガ、ヨモギ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、サボリー、レモングラス、ワサビ葉、山椒の葉等があげられる。
【0023】
本発明の香辛料感向上剤を、香辛料を含有する飲食品に添加することにより、飲食品の香辛料感を向上させることができるほか、その飲食品の有する風味を所望の風味に改善、改質、または向上させたり、所望のレベルに風味を増強したりする効果も期待できる。本発明の香辛料感向上剤の香辛料を含有する飲食品への添加は、飲食品を製造する際に原材料の一部として添加してもよく、飲食品を喫食する際に添加してもよい。
【0024】
香辛料を含有する飲食品に本発明の香辛料感向上剤を添加する方法は、飲食品の香辛料感を向上する方法として好適に用いられる。
【0025】
本発明の香辛料感向上剤の香辛料を含有する飲食品への添加量は特に限定されず、香辛料の種類や量、飲食品の種類や性質に応じて適宜設定すればよいが、例えば、飲食品100重量部中、本発明の香辛料感向上剤を乾燥重量として好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.05〜5重量部添加する。
【0026】
本発明の飲食品の製造方法は、本発明の香辛料感向上剤を飲食品に添加する以外は、当該飲食品の通常の製造方法で行えばよい。本発明の香辛料感向上剤を添加する飲食品は、上記香辛料を含有する飲食品があげられるが、香辛料を含まない飲食品の場合は、別途香辛料を添加してもよい。本発明の飲食品の製造方法により得られる飲食品は、香辛料感が強く、かつ風味の好ましい飲食品である。
【0027】
本発明の飲食品の香辛料感改良方法および飲食品の製造方法は、飲食品に、本発明の香辛料感向上剤を添加する以外にも、飲食品に、糖、アミノ酸および必要に応じてアルコールを逐次添加した後、本発明の香辛料感向上剤の製造における条件に準じて加熱反応させる方法であってもよい。
【0028】
以下に、本発明の内容について実施例を用いて説明する。ただし、本発明の技術範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
下記表1に示す組成に準じて水溶液を調製し、それぞれ反応液1〜3とした。なお、蛋白加水分解物としては、市販のビール酵母の酸加水分解物(MCフードスペシャリティーズ社製。1g中、総アミノ酸を275mg含有する。そのうち約91%が遊離アミノ酸である。)を用いた。
【0030】
【表1】
【0031】
調製した反応液1〜3のpHを、それぞれ水酸化ナトリウムにてpH8に調整し、110℃で60分間加熱反応させて生成物1〜3を得た。当該生成物1〜3を、市販のカレールウ(エスビー食品社製)を用いて調製したカレースープに、それぞれ1重量%となるように添加した。各添加区(試験区1〜3)の香辛料感について、熟練した7名のパネラーにより官能評価を行った。
【0032】
官能評価は、加熱反応生成物を添加しないカレースープをコントロール(無添加区)とし、添加区のコントロール(無添加区)に対する香辛料感を以下に示す3点尺度法にて評価することで行った。
0点:向上していない(コントロールと同程度)
1点:やや向上している
2点:向上している
3点:非常に向上している
【0033】
各パネラーの評点の平均を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
表2に示すとおり、エタノール存在下でグルコースと蛋白加水分解物とを加熱反応させて得られた生成物1および2を添加して得られたカレースープ(試験区1および2)は、無添加区のカレースープに対して有意に香辛料感の向上が認められた。一方、グルコースおよび蛋白加水分解物の使用量の少ない加熱反応物を用いたカレースープ(試験区3)では香辛料感の向上がほとんど認められなかったことから、この効果はアルコール存在下で糖と蛋白質加水分解物中の成分とが加熱反応することにより生じたと言える。
【0036】
(実施例2)
実施例1記載の方法に準じてエタノール存在下でグルコースと蛋白加水分解物とを加熱反応させて得られた生成物中の遊離アミノ酸の分析を行ったところ、加熱反応の前後で遊離アミノ酸の含有量に変化が認められた。遊離アミノ酸の中で減少量の大きかったアミノ酸について、減少量の大きかった順に下記表3に示す。また、減少量の少なかったアミノ酸について、減少量の少ない順に下記表4に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
表3および4記載のアミノ酸を用いて、該表記載の配合量のアミノ酸混合物1および2を調製した。エタノール、D−グルコース、アミノ酸混合物1および2、ならびに水を用いて、下記表5に示す記載の組成に準じて水溶液を調製し、それぞれ反応液4〜7とした。
【0040】
【表5】
【0041】
調製した反応液4〜7のpHをそれぞれ水酸化ナトリウムにてpH8に調整し、110℃で60分間加熱反応させて生成物4〜7を得た。当該生成物4〜7を、実施例1で調製したカレースープにそれぞれ1重量%となるように添加した。各添加区(試験区4〜7)の香辛料感について、実施例1記載の方法に準じて官能評価を、熟練した7名のパネラーにより行った。各パネラーの評点の平均を表6に示す。
【0042】
【表6】
【0043】
表6に示すとおり、エタノール存在下でグルコースとアミノ酸混合物との加熱反応を行って得た生成物を加えたカレースープ(試験区6および7)では無添加区に対して有意に香辛料感が向上していた。特に、エタノール存在下でのグルコースと蛋白加水分解物との加熱反応において加熱反応後に減少量の多かったアミノ酸(アミノ酸混合物1:アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ロイシン、アルギニン)を用いて得た生成物6では、その効果は顕著であった。
【0044】
このことから、実施例1で示した香辛料感の向上効果は、蛋白加水分解物中のアミノ酸が関係していること、さらに該アミノ酸はいずれのアミノ酸であってもよいが、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ロイシン、アルギニンが特に好ましいことが示された。
【0045】
(実施例3)
実施例1で調製した反応液1のpHを、塩酸または水酸化ナトリウムでpH8.0、pH3.0、およびpH5.5の3通りに調整し、それぞれ110℃で60分間加熱反応させて生成物8〜10を得た。当該生成物8〜10を、実施例1で調製したカレースープにそれぞれ1重量%となるように添加した。各添加区(試験区8〜10)の香辛料感について実施例1記載の方法に準じて官能評価を、熟練した7名のパネラーにより行った。各パネラーの評点の平均を表7に示す。
【0046】
【表7】
【0047】
表7に示すとおり、エタノール存在下でのグルコースと蛋白加水分解物との加熱反応は、pH5以上で行うことが好ましいことがわかった。
【0048】
(実施例4)
下記表8に示す組成に準じて水溶液を調製し、それぞれ反応液11〜13とした。なお、各反応液のグルコース濃度およびエタノール濃度は等量となるようにグルコースおよびエタノールの添加量を調整してある。
【0049】
【表8】
【0050】
調製した反応液11〜13のpHをそれぞれ水酸化ナトリウムにてpH8に調整し、110℃で60分間加熱反応させて生成物11〜13を得た。当該生成物11〜13を、実施例1で調製したカレースープにそれぞれ1重量%となるように添加した。各添加区(試験区11〜13)の香辛料感について、実施例1記載の方法に準じて官能評価を、熟練した7名のパネラーにより行った。各パネラーの評点の平均を表9に示す。
【0051】
【表9】
【0052】
表9に示すとおり、アルコールを含有する日本酒、ワインのいずれを用いても香辛料感の向上効果が認められたが、酒粕(エタノール量は調整)を用いた場合、より高い向上効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、香辛料を含む調味料および香辛料感の向上した飲食品の製造・加工分野において利用できる。