(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対の脚体が前記床面に固定されるとともに、前記椅子が幅方向に複数並んで設置され、前記一対の脚体の内、隣り合う前記椅子の間の脚体には、配線を挿通可能な開口が形成される請求項1に記載の椅子ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記文献に開示される椅子は、劇場や講堂、待合室等において幅方向に複数並んで設置されるものである。一方、配線接続部及び該配線接続部に至る配線は、椅子毎に設けられるものであるが、この配線を個々に床面から立ち上げて、対応する椅子本体の配線挿通部に直接挿通して配線接続部へ至らしめる構成であると、連結椅子である場合は特に、作業性の面で大きな問題がある。
【0005】
そこで本発明は、椅子本体の適所に設けられる配設接続部に至る配線の設置作業を容易にし、かつ配線を含む電気部品に外乱が至ることを抑制し、さらに美観を良好にすることが可能な椅子ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の椅子ユニットは、椅子の幅方向に離間して床面上に起立する一対の脚体と、前記一対の脚体の間に配置される座体と、を含む椅子本体と、前記椅子本体に設けられて外部の機器を電気的に接続可能とする機器接続部と、前記座体の下方に配置されて前記機器接続部に接続される電気部品と、前記座体の下方で前記一対の脚体の間に渡って設けられて前記電気部品を遮蔽する遮蔽部材と、を備える。
この構成によれば、機器接続部に接続される配線を含む電気部品を、座体の下方の空きスペースを利用して配置することで、椅子周辺の床面上に電気部品が配置されることを抑えることができる。
また、一対の脚体の間の全幅に渡るスペースを、電気部品の配置スペースとして利用することができ、かつ配置される電気部品を遮蔽部材により覆い隠すことができる。
そして、座体の下方で一対の脚体の間に渡るスペースを中継位置として、機器接続部に配線を至らしめることが可能となり、床面から直接、椅子本体の配線挿通部に配線を通す構成と比べて、椅子及び配線の設置作業を容易にすることができる。
また、連結椅子において複数の機器接続部に通線する場合には、座体の下方のスペースには配線の他、電源ユニット(電力変換器)及び各種接続箱(中継端子箱)等が配置されるが、これらの電気部品を容易に配置することが可能となり、設置作業をさらに容易にすることができる。
さらに、座体の下方のスペースを電気部品の配置スペースとして利用しながら、電気部品に着座者の脚が当たる等の外乱から電気部品を保護し、かつ座体下方の見栄え及び清掃性を向上させることができる。
【0007】
また、上記椅子ユニットにおいて、前記椅子本体は、前記座体の後方に配置される背凭れを含み、前記背凭れの下部には、前記床面に接地又は近接するまで延びる後壁部が、前記一対の脚体の間に渡って設けられ、前記後壁部は、前記遮蔽部材とともに前記電気部品を遮蔽する構成でもよい。
この場合、背凭れ下方の後壁部により座体の下方の電気部品を後方から遮蔽し、かつ遮蔽部材により電気部材を前方及び上方から遮蔽することで、椅子の幅方向に延びるトンネル状の部品配置スペースを形成し、電気部品の保護性を高めることができる。また、遮蔽部材に電気部品の後方を遮蔽する部位を追加する構成と比べて、遮蔽部材の複雑な曲げ加工等が不要となり、遮蔽部材の形状を簡素化することができる。
また、上記椅子ユニットにおいて、前記一対の脚体が前記床面に固定されるとともに、前記椅子が幅方向に複数並んで設置され、前記一対の脚体の内、隣り合う前記椅子の間の脚体には、配線を挿通可能な開口が形成される構成でもよい。
この場合、複数の椅子を幅方向に複数並べて設置するにあたり、複数の椅子に跨って配線を設置する場合(複数の機器接続部に通線する場合)にも、隣り合う椅子間の脚体の開口を通じて配線を送ることが可能となり、配線を椅子の幅方向で容易に延ばして設置することができる。また、配線の他、電源ユニット(電力変換器)及び各種接続箱(中継端子箱)等の電気部品も、座体の下方に容易に配置することができる。
また、上記椅子ユニットにおいて、前記一対の脚体の少なくとも一方は、上下方向に延びて配線を挿通可能な第一配置空間を形成する脚内ダクト部材を備え、前記遮蔽部材は、前記床面との間に、前記第一配置空間の下部と連通する第二配置空間を形成する構成でもよい。
この場合、脚体内を上下方向に延びる第一配置空間と、遮蔽部材に覆われて椅子の幅方向に延びる第二配置空間とを通じて、第二配置空間の電気部品から椅子本体の適所に配置される機器接続部まで、容易に配線を設置することができる。
【0008】
また、上記椅子ユニットにおいて、前記遮蔽部材は、前記床面に接地又は近接する下向面を備える構成でもよい。
この場合、遮蔽部材の下端縁のみが接地する場合と比べて、床面の傷付きを抑えることができる。
また、上記椅子ユニットにおいて、前記遮蔽部材を前記椅子本体に対して固定する固定部を備え、前記固定部は、前記座体の後方に配置される背凭れに対して前記遮蔽部材を固定する背側固定部を備える構成でもよい。
この場合、椅子の前側から背側固定部を正面に視認しながら背側固定部へアクセスして遮蔽部材を着脱することができる。
また、上記椅子ユニットにおいて、前記遮蔽部材を前記椅子本体に対して固定する固定部を備え、前記固定部は、前記脚体に対して前記遮蔽部材を固定する脚側固定部を備える構成でもよい。
この場合、椅子の前側から背凭れよりも近い位置にある脚側固定部へアクセスして遮蔽部材を着脱することができる。
また、上記椅子ユニットにおいて、前記固定部は、前記座体の下端よりも下方に配置される構成でもよい。
この場合、座体を取り外すことなく遮蔽部材を着脱して電気部品のメンテナンスを行うことができる。
また、上記椅子ユニットにおいて、前記遮蔽部材は、前記電気部品を上方から遮蔽し、上面を前下がりに傾斜させるとともに前端を接地又は近接させる傾斜部を備える構成でもよい。
この場合、着座者の脚が当たる段差を無くすとともに清掃のし易さを向上させることができる。また、傾斜部上に落下した物品が傾斜によって椅子の前側(手前側)に落ちてくるため、座体下方への落し物が椅子の奥側に入り込むことを抑えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、椅子本体の適所に設けられる配設接続部に至る配線の設置作業を容易にし、かつ配線を含む電気部品に外乱が至ることを抑制し、さらに美観を良好にすることが可能な椅子ユニットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後、左右及び上下の向きは、椅子の座体上で背凭れに背を向けて着座した着座者を基準とする。また、前記着座者の「前方」を図中矢印FRで示し、「上方」を図中矢印UPで示し、「左方」を図中矢印LHで示す。
【0012】
図1〜
図5に示すように、本実施形態の椅子1は、例えば劇場、講堂、ホール、会議場、待合室等において、建物の床面(フロア)Fに固定的に複数設置される。椅子1は、左右方向(幅方向)に複数(図では三脚)並び、これらが一体的に連結されて連結椅子100を構成し、かつこの連結椅子100が前後方向に複数並んで設置される。
【0013】
個々の椅子1は、椅子1の幅方向に離間して床面F上に起立する一対の脚体2と、一対の脚体2の間に配置される跳ね上げ式の座体3と、座体3の後方に配置されて立ち上がる背凭れ4と、各脚体2の上部に設けられる肘掛け5と、を備える。これら脚体2、座体3、背凭れ4及び肘掛け5を含んで、椅子1における着座者の荷重を受ける構造体としての椅子本体6が構成される。
【0014】
図6、
図7を参照し、各脚体2は、椅子1の幅方向と直交するように起立する一対の側板8,9を、幅方向で間隔を空けて対向配置して構成される。以下、一対の側板8,9の内、脚体2の左側に位置するものを第一側板8、脚体2の右側に位置するものを第二側板9と称する。
【0015】
第一側板8は、例えば鋼板に曲げ加工を施して形成される。第一側板8は、例えば側面視で下辺側が狭い逆台形状をなす側面部8aと、側面部8aの上端縁及びからそれぞれ略水平に屈曲して右方に延びる上面部8b及び下面部8cと、上面部8bの右側縁から下方に延びる上内側フランジ8dと、下面部8cの右側縁から上方に屈曲して延びる下内側フランジ8eと、を有する。
【0016】
第二側板9は、第一側板8と同様の鋼板を用いて、第一側板8の側面部8aとほぼ同形状の逆台形状をなす平板状に形成される。第二側板9の上部には、第一側板8の上内側フランジ8dが当接して溶接等により結合される。第二側板9の下部には、第一側板8の下内側フランジ8eが当接して溶接等により結合される。
【0017】
第一側板8の側面部8aの後部と第二側板9の後部との間には、両側板8,9と同様の鋼板で形成される脚内ダクト部材10が挟み込まれる。この脚内ダクト部材10を介して、第一側板8及び第二側板9の後部間が溶接等により結合される。
これら両側板8,9及び脚内ダクト部材10により、脚体2における前方に開放する箱状をなす鋼板製のフレーム体11が構成される。脚内ダクト部材10の詳細は後述する。
【0018】
図1を併せて参照し、フレーム体11における幅方向の外側面11a(第一側板8の左側面及び第二側板9の右側面)には、例えば木製(ベニヤ板や木質材料を含む)又は樹脂製の化粧板12が取り付けられる。フレーム体11の上面には、化粧板12と同様の木製又は樹脂製の肘掛け5が取り付けられる。脚体2の上部は肘掛け5の支持部を構成する。脚体2の上部及び肘掛け5は、使用状態の着座面3aの上方において、左右方向で隣り合う隣席との間の隔壁としても機能する。各脚体2(フレーム体11)は、その下端を床面Fに当接させた状態で、アンカーボルトAN等により床面Fに固定される。
【0019】
座体3は、左右脚体2間で着座面3aを略水平にした使用状態(図中符号3で示す)と、その前側を上方に変位させて着座面3aを起立させた収納状態(図中符号3’で示す)と、の間で回動可能に設けられる。座体3は、着座面3aを形成する座クッション3bと、座クッション3bを支持する不図示の座フレームと、座フレームにおける着座面3aとは反対側の下面3dを覆う下面パネル3cと、を有する。
【0020】
図4を併せて参照し、座体3における使用状態での後側にある基端部は、左右方向に沿う支持軸13を介して左右脚体2の軸支持部14に支持される。座体3は、使用状態での前側にある先端部を上下に変位させるように、支持軸13を中心に回動する。例えば支持軸13の周囲には、座体3を収納状態へ跳ね上げるように付勢する不図示の付勢機構が設けられる。図中符号C1は支持軸13の中心軸線を示す。
【0021】
支持軸13は、例えば角鋼管で形成される。支持軸13の右端部は、第一側板8の左側面に固設される軸支持部14に固定的に支持され、支持軸13の左端部は、第二側板9の右側面に固設される軸支持部14に固定的に支持される。
【0022】
図1、
図4を参照し、背凭れ4は、左右脚体2の後部間で鉛直方向に対して後傾した姿勢で配置される。背凭れ4は、背凭れ面4aを形成する背クッション4bと、背クッション4bを後方から支持する背ベース板18と、を備える。背クッション4bは、着座者の腰部を後方から支持し易いように、背凭れ面4aの上下中間部よりも下側の位置を前方に凸の頂部4cとして形成される。
【0023】
背ベース板18は、前後方向に直交する鉛直面に対して後傾した平面に沿う平板状をなし、正面視で上下に長い長方形状に設けられる。背ベース板18の下部には、床面Fに接地又は近接するまで延びる後壁部18aが、一対の脚体2の間に渡って設けられる。後壁部18aは、座体3の下方に配置される後述の電気部品35を後方から遮蔽する。
図5を参照し、背ベース板18(後壁部18a)の下端部後側には、巾木19aが装着されるとともに、椅子1の後方に臨むコンセント19bが設置される。背ベース板18の上部後側の左右中央には収納式フック19cが設置される。
【0024】
図6を参照し、背ベース板18の左右側部には、椅子1の左右脚体2の後部が、それぞれ一対の連結ブラケット21を介して連結、固定される。連結ブラケット21は、脚体2(フレーム体11)の外側面11aに沿って配置される側面部21aと、側面部21aの後端位置から左右方向に屈曲して背ベース板18の前面に沿って延びる後面部21bと、を有する。側面部21aは、フレーム体11の外側面11aに後述する溶接ボルト10eを用いた締結等により固定され、後面部21bは、背ベース板18の前面に適宜の締結具を用いた締結等により固定される。
【0025】
ここで、
図5を参照し、各椅子1の背ベース板18の両側部は、脚体2の後面の一部又は全部を閉塞するように固定される。これにより、背ベース板18の両側部が、脚内ダクト部材10内の配線挿通空間K2の後方を遮蔽する後方遮蔽部18cとして機能する。なお、後方遮蔽部18cは、左右側板8,9の少なくとも一方の後端部を側方へ折り曲げたり、別部材のカバーを脚体2の後面側に固着した構成としてもよい。
【0026】
図7を併せて参照し、脚体2内の脚内ダクト部材10は、両側板8,9と同様の鋼板を用いて上下方向に延びる帯状に形成される。脚内ダクト部材10は、帯幅方向を左右方向に沿わせて上下方向に延び、側面視で適宜屈曲して形成される。脚内ダクト部材10は、両側板8,9の後縁よりも前方で該後縁と略平行に配置される傾斜延出部10aと、傾斜延出部10aの上端から屈曲して略垂直に上方へ延びる上方延出部10bと、を備える。脚内ダクト部材10の傾斜延出部10a及び上方延出部10bは、両側板8,9間で左右方向と平行に延びる基部を構成する。
【0027】
傾斜延出部10aの左右側縁からは、左右接合フランジ10cがそれぞれ後方に屈曲して延びる。上方延出部10bの左右側縁からは、左右上接合フランジ10dが後方に屈曲して延びる。左右接合フランジ10c及び左右上接合フランジ10dは、それぞれ各側板8,9の内側面に溶接等により結合される。脚内ダクト部材10の左右接合フランジ10c及び左右上接合フランジ10dは、基部の両側における一対の起立部を構成する。これら基部及び一対の起立部により、脚内ダクト部材10の断面形状が後方に開放する門形に形成される。
【0028】
なお、各接合フランジ10c,10dの各側板8,9に対する連結構造として、
図8に示すように、各接合フランジ10c,10dにそれぞれフック状の切り欠き10c1,10d1を形成し、これら各切り欠き10c1,10d1を各側板8,9に固設した複数のボルト等の係止ピン10e1にそれぞれ上方から係止する構成としてもよい。この場合、各接合フランジ10c,10dを各側板8,9に溶接する場合と比べて、脚内ダクト部材10内の配線挿通空間K2のメンテナンス性が高まる。また、脚内ダクト部材10が各側板8,9に固着されない構成であっても、断面門形の脚内ダクト部材10が両側板8,9間に挟まれることで、両側板8,9の暴れ(振動、撓み等)がある程度の範囲に抑えられる。
【0029】
図6、
図7に戻り、左右接合フランジ10c及び左右上接合フランジ10dには、それぞれ脚体2の外側方に向けてネジ軸を突出させる溶接ボルト10eが固設される。各溶接ボルト10eのネジ軸は、各側板8,9を貫通して脚体2の外側方に突出する。各溶接ボルト10eは、連結ブラケット21の側面部21aをフレーム体11の外側面11aに固定可能とする。
脚内ダクト部材10により、両側板8,9間の空間が後方から閉塞されるとともに前方に開放する。脚体2の前部には、物品収納空間K1に前方からアクセス可能とする開口部2aが形成される。
【0030】
図1〜
図5を参照し、連結椅子100において、各椅子1には、左右一側(本実施形態では右側)の脚体2の物品収納空間K1が利用可能に割り当てられる。各椅子1における左右他側(本実施形態では左側)の脚体2は、該左右他側に並ぶ椅子1の物品収納空間K1を形成する。すなわち、各椅子1において、左右一対の脚体2の内の右側のものが、着座者に利用可能に割り当てられる。以下、着座者に利用可能とする脚体2を当該椅子1の箱状脚体2ということがある。
【0031】
連結椅子100の内、最も左右他側(左側)に位置する脚体2は、他の脚体2と同様の構成であるが、例えば脚体2前部の開口部2aを閉塞部材2bによって閉塞することにより、内部空間の利用が制限される。なお、当該脚体2も他の脚体2と同様、開口部2aを開放させて内部空間を利用可能としてもよい。
【0032】
脚内ダクト部材10は、後述する機器接続部30から延びる脚内配線31を挿通するための配線挿通空間K2を、物品収納空間K1と隔てて脚体2内に形成する。
脚内ダクト部材10の下部には、脚体2内かつ物品収納空間K1の下方で前下がりに傾斜して延びる脚内下部カバー部材22が、前方から螺合するボルト22b(
図8参照)等により着脱可能に固定される。
【0033】
ここで、脚体2の下端を床面Fに固定するアンカーボルトANは、第一側板8の下面部8cを貫通して脚体2の内部に突出する。このアンカーボルトANに脚体2内からナットを螺着し締め込むことで、脚体2がその内部から床面Fに固定される。アンカーボルトAN及び下面部8cは、脚体2を床面Fに対して固定する脚体固定部23を構成する。
【0034】
脚体2内において、脚体固定部23は、椅子1の奥行方向奥側(後側)から手前側(前側)に延びる脚内下部カバー部材22により上方から覆われる。この脚内下部カバー部材22により、脚体固定部23の周辺空間と物品収納空間K1とが隔てられる。脚内下部カバー部材22の前下端には、後方へ屈曲する前下フランジ22aが設けられる(
図6、
図7参照)。これにより、脚内下部カバー部材22の前下端に床面Fに当接又は近接する下向面が形成される。
【0035】
図6、
図7を参照し、各椅子1は、天板26を箱状脚体2内に収納可能な可動式のテーブル装置25を備える。
テーブル装置25は、例えば左右方向に沿う第一回動軸27a及び該第一回動軸27aと直交する第二回動軸27bを有する回動機構27を介して、箱状脚体2のフレーム体11の上部に支持される。天板26は、物品収納空間K1に椅子1の幅方向と略直交する姿勢で収納される収納状態と、物品収納空間K1から取り出されて略水平な姿勢で保持される使用状態と、の間で回動可能に支持される。
【0036】
図中符号26は収納状態にある天板26、図中符号26’は収納状態から第一回動軸27a中心に回動して脚体2の前上方に取り出された中間状態にある天板26、図中符号26”は前記中間状態において前後方向に沿うように配置された第二回動軸27b中心に回動して座体3の前上方に略水平に配置された使用状態にある天板26をそれぞれ示す。
【0037】
図1、
図3を併せて参照し、肘掛け5の後部には、外部の機器を電気的に接続可能とする機器接続部30が設けられる。機器接続部30は、例えば電源用の差込プラグを差し込むためのコンセント(プラグ受け)等の配線差込口とされる。配線差込口としては、例えばAC100Vのコンセントの他、LAN(Local Area Network)用、USB(Universal Serial Bus)用等のポート又はジャックといった配線差込口であってもよい。また、配線差込口は一口に限らず複数口であってもよい。さらに、本実施形態の配線差込口は上方に開口する(すなわち上方から差込プラグを差し込む)構成であるが、前後左右かつ下方さらには斜め方向の何れに開口する配線差込口でもよい。また、背凭れ4の後方に開口する配線差込口も有り得る。
【0038】
なお、本実施形態では、連結椅子100の一部の椅子1の肘掛け5のみに機器接続部30を設けているが、全ての椅子1の肘掛け5のみに機器接続部30を設けてもよい。また、肘掛け5に限らず、床面F上方において椅子本体6における着座者がアクセスし易い適所に機器接続部30を設けてもよい。ここで、肘掛け5の後部に機器接続部30を設けると、着座者がアクセスし易くかつ肘掛け5に置いた腕が干渉し難く、さらに肘掛け5上に機器を載置することも可能であるため好ましい。またこのとき、肘掛け5の後方は背凭れ4等で遮蔽されていることが悪戯防止の面で好ましい。
【0039】
図9、
図10を参照し、各椅子1において、座体3の下方には、機器接続部30に接続される電気部品35が配置される。ここで、各椅子1においては、椅子本体6と、機器接続部30及び脚内配線31と、座体3下方の電気部品35と、座体3の下方で一対の脚体2の間に渡って設けられて電気部品35を遮蔽する遮蔽部材40と、を含んで椅子ユニット1Aが構成される。
【0040】
電気部品35は、床面F上で幅方向に横送りされる床上配線36の他、電源ユニット(電力変換器)及び各種接続箱(中継端子箱)等の電気装置37を含む。電気装置37は、床下から延伸される床下配線36a(
図10参照)により通電されるもので、脚内配線31を通じて機器接続部30に至る床上配線36とともに電気部品35を構成する。また、床下配線36aが無い構成(例えば電気装置37がバッテリーである場合等)であってもよい。機器接続部30が通信用である場合、電気装置37はルータ等の通信機器を含む。
【0041】
遮蔽部材40は、床面Fとの間に、脚内ダクト部材10内の配線挿通空間K2(第一配置空間)の下部と連通する電気部品配置空間K3(第二配置空間)を形成する。遮蔽部材40は、座体3の下方で前下がりに傾斜する平板状の傾斜部41を備える。傾斜部41は、電気部品35を上方から覆って前端を床面F上に接地又は近接させるスロープ状に設けられる。これにより、遮蔽部材40の前端から着座者の脚が当たるような段差を無くすとともに、座体3下方の清掃のし易さを向上させる。
【0042】
図6、
図7を併せて参照し、傾斜部41の後縁には、上方に屈曲して背ベース板18の後壁部18aの前面に沿って延びる後上フランジ42が形成される。後上フランジ42は、後壁部18aに締結孔を含んで設けられる締結孔部18bに、適宜の締結具を用いて固定される。後上フランジ42は、後壁部18aの締結孔部18bとともに、遮蔽部材40を背凭れ4に対して固定する背側固定部43を構成する。遮蔽部材40が背凭れ4に固定されることで、背ベース板18で閉塞されない椅子1の前側から遮蔽部材40の着脱作業を行う際、作業者が背側固定部43を正面に目視しながら背側固定部43へアクセス可能となり、遮蔽部材40の着脱作業を容易にする。
【0043】
遮蔽部材40の固定時、傾斜部41の前縁41aは床面Fに当接又は近接し、傾斜部41の両側縁41bは脚体2の内側面に当接又は近接する。これにより、遮蔽部材40の下後方には、傾斜部41、床面F及び後壁部18aに囲まれて左右方向に延びる電気部品配置空間K3が、両脚体2の内側面間に渡って設けられる。電気部品配置空間K3の左右端部は、脚体2内で脚内ダクト部材10に区画されて脚内配線31を挿通可能とする配線挿通空間K2の下部と連通する。これらの空間を通じて、座体3下方の電気部品35から椅子本体6の適所に配置される機器接続部30まで、容易に通線することができる。脚体2の側板には、例えば矩形状の配線挿通孔7aが形成され、化粧板12には、配線挿通孔7aと重なる位置に比較的小径の配線挿通孔12aが形成される。各配線挿通孔7a,12aは、側面視で電気部品配置空間K3と重なる位置に設けられる。これらの配線挿通孔7a,12aを通じて、隣り合う椅子1の電気部品配置空間K3間で床上配線36を送ることが可能となる。図中符号12bは化粧板12における側板の軸支持部14を避ける開口を示す。
【0044】
機器接続部30と電気部品35との間の通線は、椅子本体6を床面Fに設置した状態で行う。このとき、例えば横並びの複数の椅子1の内の一部のみにおいて、当該椅子1の座体3下方の床面F上に、床上配線36とともに電源ユニット等の放熱する電気部品35を配置する。放熱する電気部品35を遮蔽する遮蔽部材40(
図2中右側に符号40’で示す)には、例えば傾斜部41に複数の通気孔40aが形成される。
【0045】
遮蔽部材40を固定する背側固定部43は、座体3の下端よりも下方に配置される。具体的に、遮蔽部材40は、使用状態の座体3の下面3dよりも下方に配置されるとともに、収納状態の座体3の下端3eよりも下方に配置される。これにより、座体3を取り外すことなく遮蔽部材40を着脱可能となる。また、座体3が収納状態でも作業が可能であり、背ベース板18で閉塞されない椅子1の前側から遮蔽部材40の着脱作業を行う際、作業者が背側固定部43に近付き易く作業性がよい。
【0046】
なお、
図9に示すように、遮蔽部材40の傾斜部41の前縁41aから後方に屈曲し、床面Fに接地又は近接する下向面を形成する前下フランジ44aを備えてもよい。この場合、傾斜部41の前縁41aのみが床面Fに当接する場合と比べて、床面Fの傷付きが抑えられる。前下フランジ44aは床面Fに固定してもよい。前下フランジ44a等により遮蔽部材40を床面Fに固定する場合、背側固定部43を無くして遮蔽部材40を椅子本体6に固定しない(椅子本体6から切り離して独立させた)構成としてもよい。
【0047】
また、遮蔽部材40の傾斜部41の側縁41bを脚体2の外側面に固定する脚側固定部44b(図では遮蔽部材40側のフランジのみ示す)を備えてもよい。脚側固定部44bは、適宜の締結具を用いる構成の他、
図8に示す脚内ダクト部材10と同様、遮蔽部材40側のフランジにフック状の切り欠きを複数形成し、これら各切り欠きを脚体2に固設した複数の係止ピンにそれぞれ上方から係止する構成としてもよい。この場合、前記フランジを脚体2に締結する場合と比べて、遮蔽部材40内の電気部品配置空間K3のメンテナンス性が高まる。また、締結具を用いる場合でも、椅子1の前側から背側固定部43よりも近い位置にある脚側固定部44bへアクセスして遮蔽部材40を着脱できるので作業性がよい。
【0048】
以上説明したように、上記実施形態における椅子ユニット1Aは、椅子1の幅方向に離間して床面F上に起立する一対の脚体2と、前記一対の脚体2の間に配置される座体3と、を含む椅子本体6と、椅子本体6に設けられて外部の機器を電気的に接続可能とする機器接続部30と、座体3の下方に配置されて機器接続部30に接続される電気部品35と、座体3の下方で一対の脚体2の間に渡って設けられて電気部品35を遮蔽する遮蔽部材40と、を備えている。
この構成によれば、機器接続部30に接続される配線を含む電気部品35を、座体3の下方の空きスペースを利用して配置することで、椅子1周辺の床面上に電気部品35が配置されることを抑えることができる。
また、一対の脚体2の間の全幅に渡るスペースを、電気部品35の配置スペースとして利用することができ、かつ配置される電気部品35を遮蔽部材40により覆い隠すことができる。
【0049】
そして、座体3の下方で一対の脚体2の間に渡るスペースを中継位置として、機器接続部30に配線を至らしめることが可能となり、床面Fから直接、椅子本体6の配線挿通部に配線を通す構成と比べて、椅子1及び配線の設置作業を容易にすることができる。
また、連結椅子100において複数の機器接続部30に通線する場合には、座体3の下方のスペースには配線の他、電源ユニット(電力変換器)及び各種接続箱(中継端子箱)等が配置されるが、これらの電気部品35を容易に配置することが可能となり、設置作業をさらに容易にすることができる。
さらに、座体3の下方のスペースを電気部品35の配置スペースとして利用しながら、電気部品35に着座者の脚が当たる等の外乱から電気部品35を保護し、かつ座体3下方の見栄え及び清掃性を向上させることができる。
【0050】
また、上記椅子ユニット1Aは、椅子本体6が、座体3の後方に配置される背凭れ4を含み、背凭れ4の下部には、床面Fに接地又は近接するまで延びる後壁部18aが、一対の脚体2の間に渡って設けられ、後壁部18aは、遮蔽部材40とともに電気部品35を遮蔽している。
この構成によれば、背凭れ4下方の後壁部18aにより座体3の下方の電気部品35を後方から遮蔽し、かつ遮蔽部材40により電気部材を前方及び上方から遮蔽することで、椅子1の幅方向に延びるトンネル状の部品配置スペースを形成し、電気部品35の保護性を高めるとともに、隣り合う椅子1間でも容易に通線することができる。
また、複数の椅子1を幅方向に複数並べて設置するにあたり、複数の椅子1に跨って配線を設置する場合(複数の機器接続部30に通線する場合)にも、配線を椅子1の幅方向で容易に延ばして設置することができる。また、配線の他、電源ユニット(電力変換器)及び各種接続箱(中継端子箱)等の電気部品35も、座体3の下方に容易に配置することができる。
【0051】
また、上記椅子ユニット1Aは、脚体2が、上下方向に延びて脚内配線31を挿通可能な配線挿通空間K2を形成する脚内ダクト部材10を備え、遮蔽部材40は、床面Fとの間に、配線挿通空間K2の下部と連通する電気部品配置空間K3を形成している。
この構成によれば、脚体2内を上下方向に延びる配線挿通空間K2と、遮蔽部材40に覆われて椅子1の幅方向に延びる電気部品配置空間K3とを通じて、電気部品配置空間K3の電気部品35から椅子本体6の適所に配置される機器接続部30まで、容易に配線を設置することができる。
また、物品収納空間K1を形成する箱状脚体2の内部に、物品収納空間K1と隔てて配線挿通空間K2を形成する脚内ダクト部材10を設けることで、物品収納空間K1に出し入れされる物品と配線挿通空間K2に挿通される配線との干渉を無くすことができる。これにより、物品との干渉による配線の破損を防止するとともに、物品収納空間K1を可及的に広くすることができる。
【0052】
さらに、箱状脚体2の前部で出し入れされる物品を避けて、箱状脚体2の後部に上下方向に延びる配線挿通空間K2を形成することで、機器接続部30から箱状脚体2内を延びて床面F側に至る配線の設置位置を確定させ、物品収納空間K1を可及的に広くすることができる。
箱状脚体2内に天板26を出し入れ可能とするテーブル装置25を備える構成においては、物品収納空間K1及び天板26の大きさを極力確保しながら、天板26を脚体内に収納するときに天板26と脚内配線31とが干渉することを防止することができる。
【0053】
また、上記椅子ユニット1Aは、脚内ダクト部材10の下部に、箱状脚体2内かつ物品収納空間K1の下方で椅子1の奥行方向に延びる脚内下部カバー部材22が着脱可能に固定され、脚内下部カバー部材22は、箱状脚体2を床面Fに固定する脚体固定部23を上方から覆って物品収納空間K1と隔てている。
この構成によれば、物品収納空間K1側から脚体固定部23にアクセスして箱状脚体2を着脱可能とした上で、脚体固定部23と物品収納空間K1とを隔てて固定部の露出を無くし、物品収納空間K1に出し入れされる物品と固定部との干渉を無くすとともに、見栄えを良好にすることができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、上記実施形態においては、椅子ユニット1Aは椅子1を複数並べて連結した連結椅子100に適用したが、これに限定されず、椅子ユニット1Aは単体の椅子1に適用してもよい。
脚体2の物品収納空間K1は、テーブル装置25に代わり荷物等を収納する構成としてもよい。
機器接続部30としては、コンセント、ポート及びジャック等の配線差込口を例示したが、非接触で外部機器と電気的に接続可能な構成であってもよい。すなわち、電磁誘導作用により外部機器に非接触で給電可能な電力供給部であったり、近距離通信により外部機器と非接触で通信可能な通信部であってもよい。
背ベース板18が床面Fに接地又は近接しない構成、すなわち遮蔽部材40のみで空間を形成する構成でもよい。配線が脚体2内を通る構成に限らず、配線が背ベース板18に設けた通路を通る構成でもよい。
背ベース板18が短く、遮蔽部材40のみで電気部品配置空間K3が形成される場合においては、例えば傾斜部41の前縁41aから後方まで延伸した後にさらに上方へ屈曲して起立する部位を設けるか、あるいは傾斜部41の後上端から下方へ折曲して延伸する部位を設ける等することにより、遮蔽部材40に電気部品配置空間K3の後方を遮蔽する部位を形成することが望ましい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。