(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
図1及び
図2を参照して、本発明の第1実施形態であるリチウムイオン電池について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態であるリチウムイオン電池が適用されたスマートウォッチの一例を示す斜視図、
図2は
図1のB−B及びC−C矢視断面図である。
【0015】
本実施形態のリチウムイオン電池Lは、
図1に示すように、情報処理能力を有する装着型電子機器であるスマートウォッチWのバンド部を構成する構造体1の内部に収納されている。
図2に詳細を示すように、構造体1の内部には縦断面及び横断面とも略台形の空洞が形成されており、この空洞が内部空間1aとされる。
【0016】
より詳細には、構造体1には、略全体にわたって内部に空洞が形成され、この空洞が内部空間1aとされるとともに、
図2(a)に示すように、この内部空間1a内には、平板状のセパレータ4が、その両端部が構造体1内に固定されることで内部空間1a内に固定され、これにより、内部空間1aが正極室2及び負極室3に区分されている。このセパレータ4は、
図2(b)に示すように、バンドである構造体1の長手方向(
図2(b)において左下から右上に向かう方向)に沿って延在されている。
【0017】
正極室2には、
図2(a)に示すように、内部空間1aの曲面に沿うような、端部を
図2(a)において下方に折曲した形状の正極集電体7が配置され、また、負極室3には、同様に
図2(a)に示すように、内部空間1aの内面に沿うような平板状の負極集電体8が配置され、さらに、これら正極集電体7及び負極集電体8が内部空間1a内に配置された状態で、正極活物質5及び負極活物質6が正極室2及び負極室3に充填されることで、本実施形態のリチウムイオン電池Lが形成されている。
【0018】
なお、正極活物質5及び負極活物質6の充填に当たっては、例えばセパレータ4の位置で構造体1を上下に二分割して、上下それぞれの空隙に正極活物質5及び負極活物質6を充填した後でこれら正極活物質5及び負極活物質6の間にセパレータ4を挟み、減圧下で二分割した構造体1の両端部を溶着等により固定すればよい。
【0019】
ここで、
図2(b)に示すように、正極集電体7は、バンドである構造体1の長手方向に沿っても、内部空間1aの曲面に沿うような、周期的に下方に折曲された形状に形成されている。
【0020】
ここで、本明細書において、「充填された」とは、正極活物質粒子及び負極活物質粒子が正極室2及び負極室3にそれぞれ収納されている状態を意味し、好ましくは、この正極活物質粒子及び負極活物質粒子と電解質とが正極室2及び負極室3にそれぞれ収納されている状態を意味する。さらに好ましくは、正極活物質粒子及び負極活物質粒子と電解質とが混合された状態を意味する。
【0021】
本発明において正極室2及び負極室3に正極活物質と電解液とを含む正極電極組成物及び負極活物質と電解液とを含む負極電極組成物が充填された状態にするには、粉体状の正極活物質粒子及び負極活物質粒子を直接正極室2及び負極室3にそれぞれに入れてもよく、正極活物質又は負極活物質粒子と非水溶媒とを含むスラリーを正極室2及び負極室3にそれぞれ入れてもよく、正極活物質又は負極活物質粒子と電解液とを含む正極電極組成物のスラリー及び負極電極組成物のスラリーを正極室2及び負極室3にそれぞれ入れることで行ってもよい。粉体状の正極活物質及び負極活物質粒子を直接正極室2及び負極室3に入れた場合、その後電解液を入れることで正極室2及び負極室3のそれぞれに正極電極組成物及び負極電極組成物が充填される。
【0022】
正極活物質又は負極活物質粒子と非水溶媒とを含むスラリー状物質を正極室2及び負極室3にそれぞれ入れた場合、その後加圧又は減圧して活物質粒子と非水溶媒とを分離可能な膜を透過させて非水溶媒を除去し、さらに電解液を入れることで正極室2及び負極室3のそれぞれに正極電極組成物及び負極電極組成物が充填される。正極活物質又は負極活物質粒子と電解液とを含むスラリー状の正極電極組成物及び負極電極組成物を正極室2及び負極室3にそれぞれ入れた場合、さらに加圧又は減圧して活物質粒子と電解液とを分離可能な膜を透過させて電解液の一部を除去して正極電極組成物及び負極電極組成にそれぞれ含まれる正極活物質及び負極活物質の含有量を高める工程を行っても良い。
【0023】
活物質粒子と非水溶媒又は電解液とを分離可能な膜としては、活物質粒子と非水溶剤溶媒又は電解液とを分離可能な膜であれば制限はないが、集電体及び/又はセパレータとして設けられた膜であることが好ましい。
【0024】
正極、負極活物質粒子を正極室2及び負極室3に充填する際には、構造体1に振動、衝撃を与えることで、正極、負極活物質粒子を正極室2及び負極室3に均一に充填することが好ましい。
【0025】
また、正極、負極活物質粒子と電解液又は非水溶媒とを混合した物質は、通常スラリー状であるが、正極、負極活物質粒子と電解液との重量比によってはゲル状物質や粉体に近い物質になることもある。
【0026】
そして、構造体1内を減圧脱気した後、この構造体1の開口部をシール部材等を用いて封止することにより、本発明のリチウムイオン電池Lの一例を製造することができる。
【0027】
正極活物質5を構成する正極活物質粒子としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2及びLiMn
2O
4)、遷移金属酸化物(例えばMnO
2及びV
2O
5)、遷移金属硫化物(例えばMoS
2及びTiS
2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン及びポリカルバゾール)等が挙げられる。
【0028】
また、負極活物質6を構成する負極活物質粒子としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)、炭素繊維、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリキノリン等)、スズ、シリコン、及び金属合金(例えばリチウム−スズ合金、リチウム−シリコン合金、リチウム−アルミニウム合金及びリチウム−アルミニウム−マンガン合金等)、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLi
4Ti
5O
12等)等が挙げられる。
【0029】
本発明の電池においては、正極、負極活物質粒子が、表面の少なくとも一部が被覆用樹脂及び導電助剤を含む被覆剤で被覆されてなる被覆活物質粒子であることが好ましい。
【0030】
被覆剤は被覆用樹脂を含んでおり、正極活物質粒子の周囲が被覆剤で被覆されていると、電極の体積変化が緩和され、電極の膨脹を抑制することができる。被覆用樹脂の例としては、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート等が挙げられる。これらの中ではビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂が好ましい。
【0031】
導電助剤としては、導電性を有する材料から選択される。
【0032】
具体的には、金属[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)、単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブ等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0033】
これらの導電助剤は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物が用いられてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、金、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電助剤とは、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)をメッキ等でコーティングしたものでもよい。
【0034】
導電助剤として導電性繊維を用いることも可能である。導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。
【0035】
被覆活物質粒子は、例えば、活物質粒子を万能混合機に入れて30〜500rpmで撹拌した状態で、被覆用樹脂を含む樹脂溶液を1〜90分かけて滴下混合し、さらに導電助剤を混合し、撹拌したまま50〜200℃に昇温し、0.007〜0.04MPaまで減圧した後に10〜150分保持することにより得ることができる。
【0036】
正極室2及び負極室3に正極電極組成物及び負極電極組成物が充填された状態する工程において、正極活物質及び負極活物質粒子をそれぞれ含むスラリー状物質は、電解液を含む電解液スラリーであるか、非水溶媒を含む溶媒スラリーであることが好ましい。
【0037】
電解液としては、リチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有する電解液を使用することができる。
【0038】
電解質としては、通常の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6及びLiClO
4等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2及びLiC(CF
3SO
2)
3等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiPF
6である。
【0039】
非水溶媒としては、通常の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。
【0040】
非水溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
非水溶媒の内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステルであり、より好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルであり、さらに好ましいのは環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合液である。特に好ましいのはプロピレンカーボネート(PC)、またはエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合液である。
【0042】
スラリー状物質は、活物質粒子並びに導電助剤を電解液又は非水溶媒の重量に基づいて10〜60重量%の濃度で分散してスラリー化することにより調製することが好ましい。
【0043】
セパレータ4としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等、ポリオレフィン製の微多孔膜フィルム、多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンとの多層フィルム、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等が挙げられる。
【0044】
集電体7、8としては、金属集電体や樹脂集電体を用いることができる。金属集電体としては、公知の金属集電体を用いることができる。たとえば、金属集電体は、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン、およびこれらの一種以上を含む合金、ならびにステンレス合金からなる群から選択される一種以上からなると好ましい。金属集電体は薄板または金属箔から形成されてもよいし、基材の表面にスパッタリング、電着、塗布等の手法により金属層を形成してもよい。
【0045】
樹脂集電体を構成する高分子材料は、導電性高分子であってもよいし、導電性を有さない高分子であってもよい。
【0046】
高分子材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0047】
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0048】
また、樹脂集電体は、導電性の高分子材料を含む樹脂集電体の導電性を向上させる目的、あるいは、導電性を有さない高分子材料を含む樹脂集電体に導電性を付与する目的から、導電性フィラーを含んでいると好ましい。導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択される。好ましくは、集電体内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが好ましい。具体的には、カーボン材料、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、アンチモン、チタン、ニッケルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、ステンレス(SUS)等のこれらの合金材が用いられてもよい。耐食性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン材料、ニッケル、より好ましくはカーボン材料である。また、これらの導電性フィラーは、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに、上記で示される金属をメッキ等でコーティングしたものであってもよい。
【0049】
樹脂集電体の具体例としては、ポリプロピレンに導電性フィラーとしてアセチレンブラックを5〜20部分散させた後、熱プレス機で圧延したものが挙げられる。また、その厚みも特に制限されず、公知のものと同様、あるいは適宜変更して適用することができる。
【0050】
シール部材を構成する材料としては、集電体7、8との接着性を有し、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、高分子材料、特に熱硬化性樹脂が好ましい。具体的には、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフッ化ビニデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0051】
また、バンド部を構成する構造体1は、金属、プラスチック、硬質ゴム等で形成され、少なくともその長手方向に沿った撓みを許容する可撓性を有している。
【0052】
本実施形態のリチウムイオン電池Lは、一例として、
図1に示すように、図略の導電部を介して、スマートウォッチWのディスプレイ付き装着型電子機器の機器本体である本体部Mを駆動するための電源電池として用いられる。これにより、本実施形態の装着型電子機器が構築される。
【0053】
従って、本実施形態のリチウムイオン電池Lによれば、装着型電子機器であるスマートウォッチWに設けられた内部空間を有効利用することの可能なリチウムイオン電池Lを実現することができる。
【0054】
また、本実施形態のリチウムイオン電池Lは、スマートウォッチWに適用したものであり、機械式または電子式ムーブメントではなく、時刻が表示されている表示面をタッチしたりすることにより、スマホと同様な機能を、同じ感覚で操作することができる。
【0055】
ここで、スマートウォッチWは、外形が従来の機械式または電気式時計の形状をしているものの、このスマートウォッチWを駆動する電池は数日程度しか持たないのが実情であり、従って、より長時間の使用を可能にする電池構造が強く求められているところである。
【0056】
さらに、本実施形態のリチウムイオン電池Lにおいては、機能部品であるバンド部(構造体1)を、電池としても使用可能とすることができ、これにより、より長時間のスマートウォッチWの使用が可能となる。
【0057】
また、本実施形態のリチウムイオン電池Lでは、仮にスマートウォッチWのバンド部である構造体1が、スマートウォッチWの着用時にたわんだとしても、リチウムイオン電池Lとしての特性に問題を生じる可能性が極めて小さい、という利点がある。すなわち、本実施形態のリチウムイオン電池Lは、従来のリチウムイオン電池のように正極活物質及び負極活物質に熱処理してこれら正極活物質及び負極活物質を乾燥させていないので、電池全体がたわんだ際に正極または負極活物質が集電体から剥離してリチウムイオン電池Lとしての特性に問題を生じる事態を招く可能性が極めて小さい。加えて、スマートウォッチWを装着することにより構造体1が長手方向に撓んだとしても、リチウムイオン電池Lは電源電圧を供給し続けることができる。
【0058】
(第2実施形態)
次に、
図3及び
図4を参照して、本発明の第2実施形態であるリチウムイオン電池について説明する。
図3は、本発明の第2実施形態であるリチウムイオン電池が収納された状態の一例を示す斜視図、
図4は
図3に示すスマートウォッチを長手方向中央で切断した横断面図である。
【0059】
本実施形態のリチウムイオン電池Lも、
図3及び
図4に示すように、第1実施形態とは異なる例のスマートウォッチWの機器本体(ベゼル)である構造体1の内部に収納されている。
図4に詳細を示すように、構造体1の図中上面に凹部1gが形成され、この凹部1gにはスマートウォッチWのディスプレイ付き本体部Mが配置されているとともに、この構造体1の内部には空洞が形成されており、この空洞が内部空間1aとされる。
【0060】
より詳細には、構造体1の内部には空洞が形成され、この空洞が蓋10により下方から封止されることで内部空間1aとされるとともに、
図4に示すように、この内部空間1a内には、平板状のセパレータ4が、その周縁部がリング状または円筒状のシール部材9を介して構造体1内に固定されることで内部空間1a内に固定され、これにより、内部空間1aが正極室2及び負極室3に区分されている。
【0061】
正極室2には、
図4に示すように、内部空間1aの曲面に沿うような、中央部が凹部1gに沿って折曲され、さらに端部が
図4において下方に折曲された形状の正極集電体7が配置され、また、負極室3には、同様に
図4に示すように、構造体1を有する面のうち、装着型電子機器の使用者の腕に接する面(
図4において下面)に形成された平面視略円形の凸部1hに沿って中央部が折曲された形状の負極集電体8が配置され、さらに、これら正極集電体7及び負極集電体8が内部空間1a内に配置された状態で、正極活物質5及び負極活物質6が正極室2及び負極室3に充填されることで、本実施形態のリチウムイオン電池Lが形成されている。
【0062】
なお、正極活物質5及び負極活物質6の充填に当たっては、
図4において構造体1を上下逆に置き、内部空間1aに所定量の正極活物質5を充填し、この正極活物質5を平らに均した後でこの正極活物質5の上にセパレータ4を配置し、セパレータ4の端部をシール部材9で固定した後、負極活物質6をその中央をやや盛り上げるように充填し、この状態で蓋10をはめて封止すればよい。
【0063】
なお、セパレータ4、正極及び負極活物質5、6、正極及び負極集電体7、8及びシール部材9の具体的構成は、上述の第1実施形態で説明したとおりであるので、ここでの説明は簡略化する。
【0064】
本実施形態のリチウムイオン電池Lは、一例として、
図3に示すように、図略の導電部を介して、スマートウォッチWのディスプレイ付き本体部Mを駆動するための電源電池として用いられる。これにより、本実施形態の装着型電子機器が構築される。
【0065】
従って、本実施形態のリチウムイオン電池Lによっても、装着型電子機器であるスマートウォッチWに設けられた収納空間を有効利用することの可能なリチウムイオン電池Lを実現することができる。
【0066】
また、本実施形態のリチウムイオン電池Lは、上述の第1実施形態と同様にスマートウォッチWに適用したものであり、機械式または電子式ムーブメントではなく、時刻が表示されている表示面をタッチしたりすることにより、スマホと同様な機能を、同じ感覚で操作することができる。
【0067】
さらに、本実施形態のリチウムイオン電池Lは、スマートウォッチWの機器本体の構造体1であるベゼル内面を最大限使用してリチウムイオン電池Lを形成したので、より長時間のスマートウォッチWの使用が可能となる。すなわち、本実施形態によれば、フレームや構造体等の機能部品等の内面に電池を設けることによって、電池としての機能を持たせることを可能とした。
【0068】
(変形例)
なお、本発明のリチウムイオン電池及び装着型電子機器は、その細部が上述の各実施形態に限定されず、種々の変形例が可能である。一例として、上述の各実施形態では、スマートウォッチWのバンド部及び機器本体を構成する構造体1のいずれかにリチウムイオン電池Lを設けたが、バンド部及び機器本体を構成する構造体1のいずれにもリチウムイオン電池Lを設けてもよい。本発明によるリチウムイオン電池の外形形状は任意の形状から適宜選択されればよく、特段の限定はない。
【0069】
また、本発明のリチウムイオン電池Lが設けられる装着型電子機器は、上述の一実施形態のようなスマートウォッチWに限定されず、種々の変形例が可能である。
【0070】
一方、セパレータ4の形状にも特段の限定はないが、上述の各実施形態のように平板状に形成することでセパレータ4の製造工程等の簡略化を図ることができる。また、正極集電体7及び負極集電体8の形状にも特段の限定はないが、上述の実施形態のように、リチウムイオン電池を構成する構造体1の内面に沿って正極及び負極集電体7、8を設けることで、正極室2及び負極室3に充填される正極電極組成物及び負極電極組成物の容量を高めることができて好ましい。さらに言えば、少なくとも正極及び負極集電体7、8とセパレータ4との間が等間隔でない部分を有することで、構造体1内部の収納空間をより有効利用することが可能となる。
【実施例】
【0071】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
【0072】
(被覆用樹脂溶液の作製)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコに、酢酸エチル83部とメタノール17部とを仕込み68℃に昇温した。次いで、メタクリル酸242.8部、メチルメタクリレート97.1部、2−エチルヘキシルメタクリレート242.8部、酢酸エチル52.1部及びメタノール10.7部を配合したモノマー配合液と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.263部を酢酸エチル34.2部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで4時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.583部を酢酸エチル26部に溶解した開始剤溶液を滴下ロートを用いて2時間かけて連続的に追加した。さらに、沸点で重合を4時間継続した。溶媒を除去し、樹脂582部を得た後、イソプロパノールを1,360部加えて、樹脂濃度30重量%のビニル樹脂からなる被覆用樹脂溶液を得た。
【0073】
(被覆正極活物質粒子の作製)
LiCoO
2粉末[日本化学工業(株)製 セルシードC−8G]96重量部を万能混合機に入れ、室温、150rpmで撹拌した状態で、被覆用樹脂溶液(樹脂固形分濃度30重量%)を樹脂固形分として2重量部になるように60分かけて滴下混合し、さらに30分撹拌した。
【0074】
次いで、撹拌した状態でアセチレンブラック[電気化学工業(株)製 デンカブラック(登録商標)]2重量部を3回に分けて混合し、30分撹拌したままで70℃に昇温し、100mmHgまで減圧し30分保持した。上記操作により被覆正極活物質粒子を得た。
【0075】
(被覆負極活物質粒子の作製)
難黒鉛化性炭素[(株)クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン製 カーボトロン(登録商標)PS(F)]90重量部を万能混合機に入れ、室温、150rpmで撹拌した状態で、被覆用樹脂溶液(樹脂固形分濃度30重量%)を樹脂固形分として5重量部になるように60分かけて滴下混合し、さらに30分撹拌した。
【0076】
次いで、撹拌した状態でアセチレンブラック[電気化学工業(株)製 デンカブラック(登録商標)]5重量部を3回に分けて混合し、30分撹拌したままで70℃に昇温し、0.01MPaまで減圧し30分保持した。上記操作により被覆負極活物質粒子を得た。
【0077】
(電解液の作製)
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(体積比率1:1)に、LiPF
6を1mol/Lの割合で溶解させてリチウムイオン電池用電解液を作製した。
【0078】
(正極被覆活物質スラリーの製造)
被覆正極活物質67重量部、炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S−243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm]1重量部、上記電解液32重量部を混合して、正極被覆活物質スラリーを作製した。
【0079】
(負極被覆活物質スラリーの製造)
被覆負極活物質粒子52重量部、正極被覆活物質スラリーの製造で使用したものと同じ炭素繊維1重量部、上記電解液47重量部を混合して、負極被覆活物質スラリーを作製した。
【0080】
(リチウムイオン電池の製造その1)
正極用集電体を敷いて正極活物質スラリーを注入して正極活物質層を形成した。続いて、セパレータを敷いて負極活物質スラリーを注入して負極活物質層を形成した。続いて負極用集電体をかぶせた後、構造体(ケース)とともに接着剤で封止した。
【0081】
電池としての動作を確認するため、集電体からのリード部分に充放電試験機を接続し、充放電試験を実施した。充放電が可能であり、リチウムイオン二次電池として機能することを確認した。
【0082】
(リチウムイオン電池の製造その2)
下部が封止された略円錐台形の構造体(ケース)の内部をセパレータで区切り正極室と負極室を形成し、それぞれの内壁に正極用集電体と負極用集電体を設けた。続いて、正極室と負極室に、粉末状の正極活物質及び負極活物質と電解質とからなる正極活物質スラリー及び負極活物質スラリーをそれぞれ入れて充填した後、構造体の上部を封止した。
【0083】
電池としての動作を確認するため、集電体からのリード部分に充放電試験機を接続し、充放電試験を実施した。この場合も、充放電が可能であり、リチウムイオン二次電池として機能することを確認した。