特許第6587841号(P6587841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587841
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】検出装置および測定装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/28 20060101AFI20191001BHJP
【FI】
   H01F38/28
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-123068(P2015-123068)
(22)【出願日】2015年6月18日
(65)【公開番号】特開2017-11035(P2017-11035A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】林 和延
(72)【発明者】
【氏名】依田 元
(72)【発明者】
【氏名】関 憲一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英雄
(72)【発明者】
【氏名】山之内 学
【審査官】 鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−081524(JP,U)
【文献】 特開2015−008194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に挿通孔を有する検出部と、当該検出部の前記挿通孔に挿通された導電体と、前記検出部および前記導電体を支持する支持部と、前記検出部をシールドするシールド部とを備えて前記導電体に電流が流れたときに生じる物理量を検出する検出装置であって、
前記支持部は、絶縁体で形成されると共に内側に挿入された前記導電体を支持する筒状の第1支持体と、絶縁体で形成されると共に当該第1支持体から離間して当該第1支持体の外側に配置された筒状の第2支持体と、絶縁体で形成されると共に前記第2支持体の外側に配置されて前記挿通孔に前記第1支持体を挿通させた状態で当該第2支持体の外側に配設された前記検出部を支持する第3支持体とを備えて構成され、
前記シールド部は、前記支持部の周囲に配設されて前記検出部をシールドする外周シールドと、前記第1支持体と前記第2支持体との間に配設されて前記導電体をシールドする筒状の内周シールドとを備えて構成され、
前記内周シールドは、当該内周シールドにおける先端部から基端部までの全領域が前記第1支持体から所定幅以上に離間した状態で前記第2支持体によって支持されている検出装置。
【請求項2】
前記第1支持体と前記内周シールドとの間が空間の状態に維持されている請求項1記載の検出装置。
【請求項3】
前記第2支持体は、底板と、前記第1支持体から離間して当該第1支持体の外側に位置するように前記底板に立設された外周壁とを備えて構成され、
前記第1支持体の基端部は、前記第2支持体の前記底板に連結されている請求項1または2記載の検出装置。
【請求項4】
前記第1支持体、第2支持体および第3支持体が一体に形成されている請求項1から3のいずれかに記載の検出装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の検出装置と、当該検出装置によって検出された前記物理量に基づいて前記電流を測定する測定部とを備えている測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出部の挿通孔に挿通された導電体に電流が流れたときに生じる物理量を検出する検出装置、およびその検出装置を備えた測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の検出装置として、下記特許文献1において出願人が開示した電流検出部および取付け機構によって構成される装置が知られている。この場合、電流検出部は、環状の磁性体コアと磁性体コアに導線を巻回して形成したコイルとを備えて、中央部に挿通孔を有する環状に構成されている。また、取付け機構は、一対のケースおよび導電体等を備えて構成されている。各ケースは、互いに嵌合可能に構成されて、嵌合状態において電流検出部を収容する。また、各ケースの中央部には、各ケースの嵌合状態において互いに連結されて、各ケースに収容された電流検出部の挿通孔に挿通される筒状部がそれぞれ形成されている。導電体は、柱状に構成されて電流検出部を収容した各ケースにおける筒状部に挿通されて測定対象電流を導通させる。
【0003】
一方、この種の検出装置には、外乱の影響を抑えるために、一般的に、シールドが配設される。この場合、例えば、導電体に加わる同相の電圧による電流検出値に対する影響を抑えるためのシールドの配設方法として、導電体の外周面に絶縁シートを巻き付け、その上にシールドとしての金属シートを巻き付ける方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−8194号公報(第5−6頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の方法でシールドを配設した従来の検出装置には、改善すべき以下の課題がある。すなわち、上記した方法でシールドを配設した電流検出装置では、導電体とシールドとの距離が近いため、両者の間に比較的大きな静電容量が生じ、高周波の電流を検出する際に、この静電容量に起因して、電流を正確に検出することが困難となるおそれがあり、この点の改善が望まれている。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、検出精度を向上させ得る検出装置および測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載の検出装置は、中央部に挿通孔を有する検出部と、当該検出部の前記挿通孔に挿通された導電体と、前記検出部および前記導電体を支持する支持部と、前記検出部をシールドするシールド部とを備えて前記導電体に電流が流れたときに生じる物理量を検出する検出装置であって、前記支持部は、絶縁体で形成されると共に内側に挿入された前記導電体を支持する筒状の第1支持体と、絶縁体で形成されると共に当該第1支持体から離間して当該第1支持体の外側に配置された筒状の第2支持体と、絶縁体で形成されると共に前記第2支持体の外側に配置されて前記挿通孔に前記第1支持体を挿通させた状態で当該第2支持体の外側に配設された前記検出部を支持する第3支持体とを備えて構成され、前記シールド部は、前記支持部の周囲に配設されて前記検出部をシールドする外周シールドと、前記第1支持体と前記第2支持体との間に配設されて前記導電体をシールドする筒状の内周シールドとを備えて構成され、前記内周シールドは、当該内周シールドにおける先端部から基端部までの全領域が前記第1支持体から所定幅以上に離間した状態で前記第2支持体によって支持されている。
【0008】
また、請求項2記載の検出装置は、請求項1記載の検出装置において、前記第1支持体と前記内周シールドとの間が空間の状態に維持されている。
また、請求項3記載の検出装置は、請求項1または2記載の検出装置において、前記第2支持体は、底板と、前記第1支持体から離間して当該第1支持体の外側に位置するように前記底板に立設された外周壁とを備えて構成され、前記第1支持体の基端部は、前記第2支持体の前記底板に連結されている。
また、請求項4記載の検出装置は、請求項1から3のいずれかに記載の検出装置において、前記第1支持体、第2支持体および第3支持体が一体に形成されている。
【0009】
また、請求項記載の測定装置は、請求項1から4のいずれかに記載の検出装置と、当該検出装置によって検出された前記物理量に基づいて前記電流を測定する測定部とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の検出装置、および請求項記載の測定装置によれば、支持部における第1支持体と第2支持体との間に配設された内周シールドを、第1支持体から所定幅以上に離間した状態で第2支持体によって支持するように構成したことにより、第1支持体によって支持されている導電体と内周シールドとを十分に離間させることができる。したがって、この検出装置および測定装置によれば、導電体とシールドとが近接している従来の構成と比較して、導電体と内周シールドとの間の静電容量を十分に小さくすることができるため、高周波の電流を検出する際の静電容量による影響を低減させて、電流の検出精度を十分に向上させることができる。
【0011】
また、請求項2記載の検出装置、および請求項記載の測定装置によれば、第1支持体と内周シールドとの間を空間の状態に維持したことにより、樹脂等の絶縁体で隙間が充填されている構成と比較して、導電体と内周シールドとの間の誘電率を小さくすることができる。したがって、この検出装置および測定装置によれば、導電体と内周シールドとの間の静電容量をさらに小さくすることができる結果、高周波の電流を検出する際の検出精度をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電流測定装置100の構成を示す斜視図である。
図2】電流測定装置100をシールド部1の底板11a側から見た斜視図である。
図3】シールド部1の一部を取り外した電流測定装置100の斜視図である。
図4】電流測定装置100の分解斜視図である。
図5図1におけるX面断面図である。
図6】電流測定装置100の組立方法を説明する第1の説明図である。
図7】電流測定装置100の組立方法を説明する第2の説明図である。
図8】電流測定装置100の組立方法を説明する第3の説明図である。
図9】電流測定装置100の組立方法を説明する第4の説明図である。
図10】電流測定装置100の組立方法を説明する第5の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、検出装置および測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0014】
最初に、測定装置の一例としての図1,2に示す電流測定装置100の構成について説明する。電流測定装置100は、両図および図3に示すように、シールド部1、検出部2、導電体3、支持部4および基板5を備え、導電体3に流れる電流を測定可能に構成されている。この場合、基板5を除く各構成要素によって検出装置が構成される。なお、図3では、シールド部1の一部である第2シールド12を取り外した状態で図示している。
【0015】
シールド部1は、図4に示すように、第1シールド11、第2シールド12および第3シールド13を備えて構成されている。
【0016】
第1シールド11は、例えば、図4に示すように、矩形の底板11a、および底板11aに立設された矩形の側板11bを備えて構成されている。また、第1シールド11は、一例として、導電性を有する板材(例えば、金属板)を折り曲げることによって作製されて、底板11aおよび側板11bが一体に形成されている。
【0017】
第2シールド12は、例えば、図4に示すように、矩形の天板12a、および天板12aの縁部にそれぞれ垂設された矩形の3つの側板12b〜12dを備えて構成されている。また、第2シールド12は、一例として、導電性を有する板材(例えば、金属板)を折り曲げることによって作製されて、天板12aおよび各側板12b〜12dが一体に形成されている。
【0018】
この場合、第1シールド11および第2シールド12は、外周シールドに相当し、図1,5に示すように、互いに連結した状態において、検出部2、導電体3(一部を除く部分)、支持部4(一部を除く部分)および基板5を覆うことが可能となっている。つまり、第1シールド11および第2シールド12は、検出部2を支持した状態の支持部4の周囲に検出部2から離間した状態で配設される。
【0019】
第3シールド13は、内周シールドに相当し、例えば、図4に示すように、導電性を有する材料(例えば、金属)によって円筒状に形成されている。また、第3シールド13は、図5に示すように、導電体3を取り囲んだ状態で検出部2の挿通孔21aに挿通されるようにして、支持部4における後述する第1支持体41と第2支持体42との間に配設されている。この場合、同図に示すように、第3シールド13は、外周面13aが第2支持体42(後述する外周壁62)の内周面42bに当接するように配設されることにより、支持部4における第1支持体41の長さ方向に対して直交する平面に沿った方向への移動(以下、この方向への移動を「支持部4に対する移動」ともいう)が規制されている。また、第3シールド13は、第1支持体41との間に隙間51が生じた状態で配設されるように構成されている。具体的には、第3シールド13は、外径が第2支持体42の内径よりも僅かに小径で、内径が第1支持体41の外径よりも十分に大径に(例えば、第3シールド13の厚みと同じ幅の隙間51が生じる程度の直径に)形成されている。
【0020】
また、第3シールド13は、図1,5に示すように、固定金具14によって第2シールド12の天板12aに固定されている。この場合、固定金具14は、導電性を有する材料で構成されている。このため、第3シールド13は、固定金具14を介して第2シールド12に電気的に接続されている。また、この電流測定装置100では、図5に示すように、第1シールド11と第3シールド13との間に非導電性の支持部4が介在している。このため、この電流測定装置100では、シールド部1(第1シールド11、第2シールド12および第3シールド13)によっては、電流の閉ループが形成されない構造となっている。
【0021】
検出部2は、一例として貫通形の変流器(CT(Current Transformer ))であって、環状の磁性体コアと磁性体コアに導線を巻回して形成したコイル(いずれも図示せず)とを備えて、図3,4に示すように、中央部に挿通孔21aを有する平面視環状(ドーナッツ状)に構成されている。また、検出部2は、図3,6に示すように、挿通孔21aに支持部4の第1支持体41を挿通させた状態で支持部4の第2支持体42の外側に配設されて、支持部4の第3支持体43によって支持されている。
【0022】
この場合、図5に示すように、検出部2は、外周部21cが第3支持体43(後述する外周壁72)の内周面43bに当接し、かつ内周面21bが第2支持体42(後述する外周壁62)の外周面42aから十分に離間するようにして第2支持体42の外側に配設されて、支持部4に対する移動が規制された状態で第3支持体43によって支持されている。また、検出部2は、挿通孔21aに挿通された導電体3に電流(交流電流)が流れたときに生じる磁界(物理量)を検出して検出信号(二次電流)を出力する。
【0023】
導電体3は、導電性を有する材料(例えば、真鍮)を用いて、図4に示すように、円柱状に構成されている。また、図5に示すように、導電体3の基端部3aおよび先端部3bには、ねじ33a,33bをねじ込ませるねじ穴31a,31bが形成されている。また、導電体3は、支持部4における第1支持体41の内側に配設されて、第1支持体41によって支持されている。
【0024】
この場合、導電体3は、図5に示すように、外周面3cが第1支持体41の内周面41bに当接するようにして、第1支持体41の内側に配設されることにより、支持部4に対する移動が規制されている。また、導電体3は、ねじ33a,33bによって基端部3aおよび先端部3bにそれぞれ接続された連結金具32a,32bに連結される図外のケーブル(または、バスバー)を介して図外の測定対象電源に接続される。この構成により、測定対象電源から出力される電流(検出対象電流)はこの導電体3を流れる。
【0025】
支持部4は、図4,5に示すように、第1支持体41、第2支持体42および第3支持体43を備えて構成されている。また、支持部4は、一例として、絶縁性(非導電性)を有する樹脂(絶縁体)を用いた射出成形によって作製されて、第1支持体41、第2支持体42および第3支持体43が一体に形成されている。
【0026】
第1支持体41は、図4,5に示すように、円筒状に形成されて、内側に挿入された(収容した)導電体3を支持する。また、第1支持体41は、図5に示すように、導電体3を収容したときに導電体3の外周面3cが内周面41bに当接するように形成され、支持部4に対する移動を規制した状態で導電体3を支持可能に構成されている。具体的には、第1支持体41は、内径が導電体3の外径よりも僅かに大きくなるように形成されている。
【0027】
第2支持体42は、図5に示すように、底板61および外周壁62を有する有底の円筒状(図4も参照)に形成されて、外周壁62が第1支持体41から離間して第1支持体41の外側に位置するように配置されている。また、図5に示すように、第2支持体42の底板61(基端部42c)には、第1支持体41の基端部41cが連結(接続)されている。この第2支持体42は、図5に示すように、第1支持体41との間に第3シールド13が配設されたときに、第3シールド13の外周面13aが内周面42bに当接し、これによって支持部4に対する移動を規制した状態で導電体3を支持する。
【0028】
第3支持体43は、図5に示すように、第2支持体42の外周壁62に連結(接続)された底板71と、底板71に立設されて第2支持体42から離間して第2支持体42の外側に配置された外周壁72とを備えた有底の円筒状(図4も参照)に形成されている。この場合、外周壁72は、先端部側から基端部側(底板71側)に向かうに従って厚みが厚くなるテーパー状に形成されている。この第3支持体43は、図5に示すように、検出部2が第2支持体42の外側に配設されたときに、検出部2の外周部21cが、外周壁72における上下方向の中間部位において外周壁72の内周面43bに当接し、これによって支持部4に対する移動を規制した状態で検出部2を支持可能に構成されている。具体的には、第3支持体43は、外周壁72の内径が検出部2の外径よりも僅かに大きくなるように形成されている。また、外周壁72の外周面43aには、支持部4をシールド部1に固定するための固定用台座43cが複数(この例では3つ)設けられている。
【0029】
基板5は、図3に示すように、第1シールド11の底板11aに取り付けられている。また、基板5は、CPU等の電子部品が実装されて構成されて、検出部2(検出装置)によって検出された物理量(磁界)に基づいて導電体3に流れる電流の電流値を測定する測定部として機能する。
【0030】
次に、電流測定装置100の組立方法の一例について、図面を参照して説明する。
【0031】
まず、図6に示すように、支持部4における第2支持体42の外側(第2支持体42と第3支持体43との間の環状の領域)に検出部2を配設する。この際に、図5に示すように、検出部2の外周部21cが第3支持体43における外周壁72の内周面43bに当接し、これによって支持部4に対する移動が規制された状態で検出部2が第3支持体43によって支持される。
【0032】
次いで、図7に示すように、支持部4における第1支持体41と第2支持体42との間の環状の領域にシールド部1の第3シールド13を配設する。この際に、図5に示すように、第3シールド13の外周面13aが第2支持体42の内周面42bに当接し、これにより、第3シールド13が、検出部2の挿通孔21aに挿通されて、支持部4に対する移動が規制された状態で第2支持体42によって支持される。また、この状態では、同図に示すように、第3シールド13の内周面13bと第1支持体41の外周面41aとの間に隙間51が生じている。この場合、この電流測定装置100では、隙間51が、空間の状態(隙間51に樹脂等の絶縁体が充填されていない非充填状態)に維持される。
【0033】
続いて、図8に示すように、支持部4の第1支持体41の内側に導電体3を収容(挿入)する。この際に、図5に示すように、導電体3の外周面3cが第1支持体41の内周面41bに当接し、これにより、導電体3が、検出部2の挿通孔21aに挿通されて、支持部4に対する移動が規制された状態で第1支持体41によって支持される。
【0034】
次いで、図9に示すように、第1シールド11における底板11aの上に基板5を載置し、ねじ15を用いて基板5を底板11aに固定する。続いて、同図に示すように、検出部2、導電体3、およびシールド部1の第3シールド13を支持している状態の支持部4を基板5の上に配置する。この際に、基板5に形成されている挿通孔5a(図4参照)および、第1シールド11の底板11aに形成されている挿通孔11c(同図参照)に、支持部4における第1支持体41の基端部41c、および第2支持体42の基端部42cを挿通させて底板11aから突出させる(図2参照)。
【0035】
次いで、図9に示すように、第3支持体43の固定用台座43cの外周面43aに設けられている固定用台座43cを、ねじ15を用いて基板5および底板11aに固定する。続いて、図5に示すように、導電体3の基端部3aにねじ33aを用いて連結金具32aを固定する。
【0036】
次いで、図10に示すように、支持部4(支持部4によって支持されている検出部2)、および基板5を覆うようにして、第1シールド11の上に第2シールド12を配置する。この際に、第2シールド12の天板12aに形成されている挿通孔12eに、支持部4における第1支持体41の先端部41d、および第3シールド13の先端部13cを挿通させて天板12aから突出させる。続いて、ねじ15を用いて第1シールド11と第2シールド12とを連結させる。
【0037】
次いで、図1,5に示すように、第3シールド13の先端部13cに、ねじ15を用いて固定金具14を固定する。続いて、図1に示すように、第2シールド12の天板12aに、ねじ15を用いて固定金具14を固定する。これにより、第2シールド12と第3シールド13とが固定金具14を介して電気的に接続される。
【0038】
次いで、図5に示すように、ねじ33bを用いて、導電体3の先端部3bに連結金具32bを固定する。以上により、電流測定装置100の組み立てが完了する。
【0039】
次に、電流測定装置100を用いて測定対象電流の電流値を測定する方法について、図面を参照して説明する。
【0040】
この電流測定装置100を用いて測定対象電流の電流値を測定する際には、まず、導電体3の基端部3aおよび先端部3bにそれぞれ接続されている連結金具32a,32bに連結されている図外のケーブルを図外の測定対象電源に接続する。この際に、測定対象電源から出力される電流が導電体3を流れる。また、検出部2が、導電体3を電流が流れることによって生じる磁界(物理量)を検出して検出信号(二次電流)を出力する。
【0041】
この場合、この電流測定装置100では、検出部2がシールド部1によってシールドされているため、外乱の影響が十分に低減され、この結果、電流に応じた磁界を検出部2によって正確に検出することが可能となっている。
【0042】
また、この電流測定装置100では、図5に示すように、シールド部1を構成する第3シールド13が、導電体3を支持する第1支持体41との間に隙間51が生じた状態で配設されている。つまり、導電体3と第3シールド13とが十分に離間している。また、この電流測定装置100では、第3シールド13と第1支持体41との間の隙間51に樹脂等の絶縁体が充填されていない非充填状態(空間の状態)に維持されている。
【0043】
ここで、円筒状の第1導電体の周囲に円筒状の絶縁体を挟んで円筒状の第2導電体を同軸に配置した構造体(以下「同軸構造体」ともいう)を想定する。この場合、絶縁体の誘電率を「ε」とし、絶縁体の内径(第1導電体の外径)を「a」とし、絶縁体の外径(第2導電体の内径)を「b」とし、同軸構造体(第1導電体、および第2導電体)の長さを「l」とすると、第1導電体と第2導電体との間の静電容量Cは、次の式(1)で表される。
C=2πεl/ln(b/a)・・・式(1)
上記の式(1)から、第1導電体の外周aに対する第2導電体の内径bの比率(bとaとの差)が大きいほど、つまり、第1導電体と第2導電体とが離間しているほど、静電容量Cが小さくなることが理解される。また、式(1)から、誘電率εが小さいほど、静電容量Cが小さくなることが理解される。
【0044】
電流測定装置100を上記した同軸構造体を当てはめると、電流測定装置100における導電体3が第1導電体に相当し、第3シールド13が第2導電体に相当する。このため、導電体3と第3シールド13とが十分に離間しているこの電流測定装置100では、導電体の外周面に巻き付けた絶縁シートの上にシールドとしての金属シートを巻き付ける従来の構成、つまり導電体とシールドとが近接している構成と比較して、導電体3と第3シールド13との間の静電容量Cを十分に小さくできることが明らである。また、この電流測定装置100では、上記したように、第3シールド13と第1支持体41との間の隙間51が空間の状態に維持される。この場合、空気の誘電率εは、樹脂等の絶縁体の誘電率εよりも小さい。このため、この電流測定装置100では、樹脂等の絶縁体で隙間51が充填されている構成と比較して、導電体3と第3シールド13との間の誘電率εを小さくすることができる結果、静電容量Cをさらに小さくすることが可能となっている。
【0045】
この場合、導電体3と第3シールド13との間の静電容量Cが大きいほど高周波の電流を検出する際の検出精度が低下し、静電容量Cが小さいほど検出精度が向上する。したがって、導電体3と第3シールド13との間の静電容量Cが十分に小さいこの電流測定装置100では、高周波の電流を検出する際の静電容量Cによる影響が低減されて、電流の検出精度を十分に向上させることが可能となっている。
【0046】
一方、基板5は、検出部2から出力され検出信号に基づいて測定対象電流の値を測定して、測定値を示す電気信号を出力する。次いで、基板5から出力された電気信号は、図外の表示装置に送られて、表示装置によって電流の測定値が表示される。また、基板5から出力された電気信号は、図外の記憶装置に送られて、電気信号によって示される電流の測定値が記憶装置によって記憶される。
【0047】
このように、この検出装置および電流測定装置100によれば、支持部4における第1支持体41と第2支持体42との間に配設された第3シールド13を、第1支持体41との間に隙間51が生じた状態で第2支持体42によって支持するように構成したことにより、第1支持体41によって支持されている導電体3と第3シールド13とを十分に離間させることができる。したがって、この検出装置および電流測定装置100によれば、導電体とシールドとが近接している従来の構成と比較して、導電体3と第3シールド13との間の静電容量Cを十分に小さくすることができるため、高周波の電流を検出する際の静電容量Cによる影響を低減させて、電流の検出精度を十分に向上させることができる。
【0048】
また、この検出装置および電流測定装置100によれば、第1支持体41と第3シールド13との間の隙間51を空間の状態に維持したことにより、樹脂等の絶縁体で隙間51が充填されている構成と比較して、導電体3と第3シールド13との間の誘電率εを小さくすることができる。したがって、この検出装置および電流測定装置100によれば、導電体3と第3シールド13との間の静電容量Cをさらに小さくすることができる結果、高周波の電流を検出する際の検出精度をさらに向上させることができる。
【0049】
なお、検出装置および測定装置の構成は、上記の構成に限定されない。例えば、第1支持体41と第3シールド13との間の隙間51を空間の状態に維持する構成例について上記したが、隙間51に樹脂等の絶縁体を充填する構成を採用することもできる。
【0050】
また、第1支持体41、第2支持体42および第3支持体43を一体に形成した支持部4を例に挙げて説明したが、別体に形成した第1支持体41、第2支持体42および第3支持体43を連結して構成した支持部を採用することができる。
【0051】
また、検出部2の外周部21cが支持部4における第3支持体43の内周面43bに当接し、検出部2の内周面21bが支持部4における第2支持体42の外周面42aから離間するように、検出部2を第2支持体42の外側に配設して検出部2を支持する例について上記したが、検出部2の外周部21cが第3支持体43の内周面43bから離間し、かつ検出部2の内周面21bが第2支持体42の外周面42aに当接するように、検出部2を第2支持体42の外側に配設して検出部2を支持する構成を採用することもできる。
【0052】
また、検出部2の外周部21cが第3支持体43の内周面43bから離間し、かつ検出部2の内周面21bが第2支持体42の外周面42aから離間するように、検出部2を第2支持体42の外側に配設する構成を採用することもできる。この場合、検出部2の外周部21cと第3支持体43の内周面43bとの間、および検出部2の内周面21bと第2支持体42の外周面42aとの間の少なくとも一方に充填材(誘電率が小さい充填材が好ましい)を充填することで、検出部2を支持することができる。なお、検出部2の内周面21bを第2支持体42の外周面42aに当接させて検出部2を支持したり、検出部2の内周面21bと第2支持体42の外周面42aとの間に充填材を充填して検出部2を支持したりする構成(つまり、検出部2を支持するのに外周壁72を用いない構成)では、検出部2を支持する底板71を有して外周壁72を有しない第3支持体43を採用することもできる。
【0053】
また、上記したシールド部1とは異なる構成のシールド部を採用することができる。一例として、第1シールド11に代えて、基板5の裏面に形成した導電パターンを用いる構成を採用することができる。また、電流測定装置100の仕様に応じて、第1シールド11および第2シールド12の一方を有しないシールド部を採用することもできる。
【0054】
また、検出装置によって検出された物理量(磁界)に基づいて電流を測定する電流測定装置100に適用した例について上記したが、検出装置によって検出された物理量に基づいて電力や抵抗等の電流以外の被測定量を測定する各種の測定装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 シールド部
2 検出部
3 導電体
4 支持部
5 基板
11 第1シールド
12 第2シールド
13 第3シールド
21a 挿通孔
41 第1支持体
42 第2支持体
43 第3支持体
51 隙間
100 電流測定装置
図1
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