(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、射出成形の一方法として、第1の樹脂で構成された1次成形品の周囲に第2の樹脂で構成された2次成形品が配置されてなる二色成形品を射出成形する方法が知られている。
【0003】
「特許文献1」には、このような射出成形を行うための金型として、互いに離れた位置に配置された1次コア側金型および2次コア側金型と、これら1次コア側金型および2次コア側金型の間を通る軸線回りに回転可能に配置された回転部材と、この回転部材に対して1次コア側金型および2次コア側金型と型閉・型開き可能な状態で固定された1対のキャビティ側金型と、を備えた構成が記載されている。
【0004】
この「特許文献1」に記載された金型を用いての二色成形品の射出成形は、次のようにして行われる。
【0005】
すなわち、
図9(a)に示すように、第1のキャビティ側金型5と1次コア側金型6を型閉めすることで形成された第1の空洞s1に第1の樹脂材料を射出して1次成形品1を成形し、次に、1次成形品1が第1のキャビティ側金型5に保持されるように金型5,6を型開きし、回転部材を軸線回りに180度回転して、1次成形品1を保持する第1のキャビティ側金型5と2次コア側金型7を正対させ、(b)に示すように、前記両金型5,7を型閉めすることで形成された第2の空洞s2に第2の樹脂材料を射出して、1次成形品1の周縁部に2次成形品を成形して二色成形品とする。
【0006】
特に、第1のキャビティ側金型5には、型閉め・型開き方向(
図9の左右方向)と交差する方向から第1の空洞s1にプランジャ3aを突出させ得るように構成された出没機構3が配置されており、第1の空洞s1にプランジャ3aの先端部を突出させた形態で1次成形品1を成形し、その後、回転部材を回転させてから二色成形品を取り出すまでの間にプランジャ3aを退去させる、ように構成されている。
【0007】
このため、第1の空洞s1によって成形された1次成形品1は、たとえば、型開きの際、第1のキャビティ側金型5の成形面5aから突出するプランジャ3aによって支持されるので、詳しくは、第1のキャビティ側金型5から1次成形品1が逸脱しようとする方向(
図9(a)の右方向)に対し直交する方向に突出するプランジャ3aの先端部によって支持されるので、1次成形品1が第1のキャビティ側金型5から逸脱しにくい。
【0008】
そして、例えば、1次成形品1を成形した後、金型5,6を型開きした際に、1次成形品1は1次コア側金型6ではなく第1のキャビティ側金型5に確実に保持される。これにより、2次成形品を成形する工程への移行がスムーズとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、「特許文献1」に係る方法では、二色成形品の周縁部には、プランジャ3aを退去させる際に形成された凹部1b(
図9(b)参照)が痕跡として残り、外観性が低下する。特に、二色成形品を自動車用ヘッドランプの前面カバーとして用いる場合は、前面カバーに耐候性,耐久性,耐摩耗性の表面ハードコート処理を施すことが一般的であるが、塗布したハードコート処理液が凹部1bに溜まって白く見え、外観性がいっそう低下する。
【0011】
また、「特許文献1」に係る方法によって、第1の樹脂で構成された1次成形品1の周縁部に第2の樹脂で構成された2次成形品が積層配置されてなる二色成形品を射出成形したところ、1次成形品1の周縁部前面側に2次成形品を構成する樹脂の一部が回り込んだ、いわゆる「色かぶり」が発生した。
【0012】
そこで、この「色かぶり」が発生する原因について発明者が考察したところ、以下のことがわかった。
【0013】
図9(a)に示すように、キャビティ側金型5と2次コア側金型6を型閉めして形成された第1の空洞s1に第1の樹脂材料を射出することで、1次成形品1を成形した後、型開きし、
図9(b)に示すように、1次成形品1を保持するキャビティ側金型5と2次コア側金型7を型閉めして形成された第2の空洞s2に、第2の樹脂材料を射出することで、1次成形品1の周縁部に2次成形品が積層成形されるが、1次成形品1は、キャビティ側金型5と1次コア側金型6によって成形された後、型開きにより大気と接触するなどして冷える過程で収縮する。即ち、1次成形品1を構成する樹脂材料の熱収縮作用によって、周縁部1aが金型5の成形面5aに沿ってその表面積を狭める方向に収縮して成形面5aから剥がれる。そして、周縁部1aと金型5の成形面5a間に隙sが発生した状態で第2の空洞s2に第2の樹脂材料が射出されると、第2の樹脂材料の一部がフランジ状周縁部1aと金型5の成形面5a間の隙間sに侵入した形態で2次成形される。この結果、成形された二色成形品の周縁部に色かぶりが発生する。
【0014】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、二色成形品の周縁部に出没機構の突起部を退去させた痕が凹部として残らず、しかも二色成形品の周縁部に色かぶりが発生しない射出成形方法および金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明は、所定の出没機構を用いることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0016】
すなわち、本願発明に係る射出成形方法は、
1次成形品の周縁部に2次成形品が積層配置されてなる二色成形品を射出成形する方法であって、
キャビティ側金型と1次コア側金型を型閉めすることで形成された第1の空洞に第1の樹脂材料を射出して前記1次成形品を成形し、
次に、前記1次成形品を保持する前記キャビティ側金型と2次コア側金型を型閉めすることで形成された第2の空洞に第2の樹脂材料を射出して、前記1次成形品の周縁部に前記2次成形品を積層成形するに際し、
前記キャビティ側金型に、前記第1の空洞の前記1次成形品の周縁部に対応する部分に少なくとも1つの突起部を突出させ得るように構成された出没機構を配置しておき、
前記突起部が前記第1の空洞の前記1次成形品の周縁部に対応する部分を横断貫通するように突出された形態で前記1次成形品を成形し、
その後、前記第2の空洞に前記第2の樹脂材料を射出して前記2次成形品を積層成形する際に、前記突起部を前記キャビティ側金型の成形面まで退去させる、ことを特徴とする。
【0017】
また、本願発明に係る金型は、
1次成形品の周縁部に2次成形品が積層配置されてなる二色成形品を射出成形するための金型であって、
キャビティ側金型と1次コア側金型で構成され、型閉めすることで形成された第1の空洞に第1の樹脂材料を射出して前記1次成形品を成形する1次成形用金型と、
前記キャビティ側金型と2次コア側金型で構成され、前記1次成形品を保持する前記キャビティ側金型と前記2次コア側金型を型閉めすることで形成された第2の空洞に第2の樹脂材料を射出して、前記1次成形品の周縁部に前記2次成形品を積層成形する2次成形用金型と、
前記キャビティ側金型に配置され、進退動作可能な突起部が前記第1の空洞の前記1次成形品の周縁部に対応する部分に突出して該部分を横断貫通するように構成された出没機構と、を備えてなることを特徴とする。
【0018】
なお、前記「出没機構」の具体的な構成は特に限定されるものではなく、例えば、突起部に相当するプランジャを進退動作させる油圧シリンダ機構やエアシリンダ機構等が採用可能である。
【0019】
(作用) 第1の空洞において成形された1次成形品は、型開きの際、熱収縮により1次コア側金型に貼り付こうとするが、1次コア側金型に貼り付こうとする力よりも、1次成形品の周縁部を構成する樹脂が熱収縮して出没機構の突起部に抱きつく力の方が大きいため、キャビティ側金型に保持される。したがって、1次成形品を成形した後の型開きでは、確実にキャビティ側金型に1次成形品が保持されるので、1次成形品を保持するキャビティ側金型と2次コア側金型を型閉めする次工程への移行がスムーズとなる。
【0020】
また、第1の空洞において成形された1次成形品は、型開きにより大気と触れることで樹脂の熱収縮がいっそう進み、その全体の表面積が小さくなる方向に収縮しようとする。このため、1次成形品を保持するキャビティ側金型と2次コア側金型を型閉めして形成した第2の空洞に第2の樹脂材料を射出するまでの間に、キャビティ側金型の成形面に密着している1次成形品全体がその表面積が縮小する方向に収縮変形し、熱収縮による変位が大きく現れる1次成形品の周縁部がキャビティ側金型の成形面から剥がれて、成形面と1次成形品の周縁部間に「色かぶり」発生の要因となる隙間が発生するおそれがある。
【0021】
然るに、本願発明では、キャビティ側金型の成形面から突出する出没機構の突起部が、熱収縮による変位が大きく現れる1次成形品の周縁部を横断貫通しているため、1次成形品全体の表面積が縮小する方向への熱収縮による変形が効果的に抑制される。即ち、キャビティ側金型の成形面から突出して1次成形品の周縁部を横断貫通する出没機構の突起部が、1次成形品全体の表面積が縮小する方向への熱収縮による変形を抑制する。
【0022】
特に、熱収縮による変形が大きく顕在化する1次成形品の周縁部の変位が確実に抑制されるので、第2の樹脂材料が第2の空洞に射出されて2次成形品の積層成形が開始される直前まで、1次成形品は、その周縁部を含む全体がキャビティ側金型の成形面に密着する形態に保持される。
【0023】
このため、第2の空洞に射出された第2の樹脂材料の一部が1次成形品の周縁部とキャビティ側金型の成形面との間に回り込むという、いわゆる「色かぶり」が発生しない。
【0024】
また、出没機構の突起部を1次成形品の周縁部から抜き出してキャビティ側金型の成形面まで退去させた形態で2次成形品を積層成形する際に、出没機構の突起部の退去痕である貫通孔が1次成形品の周縁部に形成されるが、第2の空洞に射出された第2の樹脂材料の一部がこの貫通孔に充填されて成形される。即ち、1次成形品の周縁部に形成された、突起部の退去痕である貫通孔には、出没機構の突起部先端面を成形面として成形された端面をもつ2次成形品側の凸部が係合一体化される。
【0025】
また、本願発明に係る射出成形方法としては、前記出没機構に設けたセンサにより前記突起部の退去を確認した後に、前記第2の樹脂材料の第2の空洞への射出を行うことが望ましい。例えば、出没機構に設けたリミットスイッチによって突起部の所定の退去量が検出された場合に、第2の空洞に連通するサイドバルブゲートが開くように連係させることが考えられる。
【0026】
(作用) 金型を型閉めして2次成形品を積層成形する際に、出没機構の突起部を退去させるタイミングが遅れると、第2の空洞内に充填されている第2の樹脂材料の充填圧が途中で変化(低下)し、安定した射出成形ができない。また、先端に溶融樹脂を付着させた突起部が退去することで、出没機構のスムーズな駆動(突起部のスムーズな出没動作)を妨げるおそれもある。
【0027】
然るに、本願発明では、出没機構に設けたセンサにより、出没機構の突起部がキャビティ側金型の成形面まで退去したことを確認した上で、第2の樹脂材料が第2の空洞に射出されるので、第2の樹脂材料の充填圧が途中で変化(低下)せず、安定した射出成形ができる。また、先端に溶融樹脂を付着させた突起部が退去して、出没機構のスムーズな駆動(突起部のスムーズな出没動作)を妨げることもない。
【0028】
また、本願発明に係る金型としては、
前記キャビティ側金型に配置された前記出没機構の突起部の先端部は、前記第1の空洞を形成するキャビティ側金型の成形面に倣う形状に形成されている、ことが望ましい。
【0029】
また、本願発明に係る二色成形品は、本願発明に係る方法によって成形された、1次成形品の周縁部に2次成形品が積層配置されてなる二色成形品であって、
前記1次成形品の周縁部には、前記出没機構の突起部を退去させる際に形成された少なくとも1つの貫通孔が設けられ、前記貫通孔には前記1次成形品に積層配置された前記2次成形品の凸部が係合一体化された、ことを特徴とする。
【0030】
(作用) 出没機構の突起部をキャビティ側金型の成形面まで退去させた形態で2次成形品が積層成形されるため、出没機構の突起部を退去させる(1次成形品の周縁部から抜き出す)際に、1次成形品の周縁部には突起部の退去痕である貫通孔が形成されるが、この貫通孔には、2次成形品を構成する第2の樹脂材料が充填一体化されている。即ち、出没機構の突起部先端面を成形面として成形された端面をもつ2次成形品側の凸部が係合一体化されている。
【0031】
そして、出没機構の突起部の先端面が第1の空洞を形成するキャビティ側金型の成形面に倣う形状に形成されているため、第1の空洞を形成するキャビティ側金型の成形面によって成形された1次成形品の貫通孔周縁領域と、出没機構の突起部の先端面によって成形された、貫通孔内に係合一体化された2次成形品側の凸部の端面とが、二色成形品の周縁部の連続する表面を構成する。
【発明の効果】
【0032】
上記構成に示すように、本願発明によれば、1次成形品の周縁部に2次成形品を積層成形する際に、出没機構の突起部をキャビティ側金型の成形面まで退去させるが、周縁部に突起部の退去痕が凹部として残らず、しかも周縁部に色かぶりも発生しない二色成形品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0035】
図1は、本願発明の一実施形態に係る射出成形方法に用いる金型50を示す側断面図である。また、
図2は、本実施形態に係る射出成形方法により射出成形される二色成形品10を示す側断面図である。
【0036】
まず、二色成形品10の構成について説明する。
【0037】
図2に示すように、この二色成形品10は、ヘッドランプ等の車両用灯具の灯具ボディの前面開口部に組み付ける容器状の透光カバーであって、前面部10Aと、この前面部10Aの外周縁から後方へ向けて延びる周面部10Bとを備えている。周面部10Bには、その後端位置から外周側へ向けて延びる所定幅のフランジ部10Baおよびその後面から後方へ突出するシール脚である環状突起部10Bbが形成されている。
【0038】
この二色成形品10は、周面部10Bからフランジ部10Baの裏面側にかけて、1次成形品12と2次成形品14が積層配置された構成となっている。即ち、1次成形品12の周面部12bの前後方向の途中からフランジ部12cにかけた裏面側に、2次成形品14を重ね合わせた構成となっている。その際、1次成形品12は透明の第1の樹脂部材で構成されており、2次成形品14は不透明(具体的には黒色)の第2の樹脂部材で構成されている。
【0039】
また、1次成形品12の周縁部に形成されているフランジ部12cには、周方向に複数の貫通孔12dが形成され、それぞれの貫通孔12dには、裏面側に配置された2次成形品14の凸部14aが係合一体化されている。
【0040】
次に、金型50の構成について説明する。
図1に示すように、この金型50は、いわゆる対向方式の二色成形用金型として構成されている。
【0041】
すなわち、この金型50は、水平方向に延びるX軸上において互いに向き合った状態で配置された1次コア側金型52および2次コア側金型54と、これら1次コア側金型52および2次コア側金型54の間においてX軸と直交して鉛直方向に延びるY軸回りに回転可能に配置された回転部材56と、Y軸に関して互いに背中合わせの状態で回転部材56に固定された同一形状の1対のキャビティ側金型58A、58Bと、1次コア側金型52を支持する可動盤62および2次コア側金型54を支持する固定盤64とを備えている。
【0042】
その際、回転部材56は固定盤64に対してX軸方向に移動可能に構成されており、また、可動盤62は回転部材56に対してX軸方向に移動可能に構成されている。なお、
図1においては、これらの相対移動の方向を矢印で示している。
【0043】
この金型50においては、型閉めにより当接した1次コア側金型52と第1のキャビティ側金型58Aとの間に形成される第1の空洞C1に、可動盤62に支持された加熱シリンダ66から供給される透明の第1の樹脂材料を射出するとともに、型閉めにより当接した2次コア側金型54と第2のキャビティ側金型58Bとの間に一次成形品12を介して形成される第2の空間C2に、固定盤64に支持された加熱シリンダ68から供給される黒色の第2の樹脂材料を射出するようになっている。
【0044】
即ち、第1のキャビティ側金型58Aは、1次コア側金型52と協働して、1次成形品12を成形する一次成形用金型を構成するとともに、回転部材56と一体に180度回転することで、2次コア側金型54と協働して、2次成形品14を成形する2次成形用金型を構成する。一方、回転部材56を介して第1のキャビティ側金型58Aと背中合わせの第2のキャビティ側金型58Bは、1次コア側金型52と協働して、1次成形品12を成形する1次成形用金型を構成するとともに、回転部材56と一体に180度回転することで、2次コア側金型54と協働して、2次成形品14を成形する2次成形用金型を構成する。
【0045】
このように、
図1の左側では、1次成形用金型による1次成形品12の成形が行われると同時に、
図1の右側では、2次成形用金型による2次成形品14の積層成形(二色成形品10の成形)が行われる。
【0046】
また、各キャビティ側金型58A、58Bの複数箇所には、出没機構である、進退動作可能なプランジャ72を備えた油圧シリンダ70が配置されている。その際、これら複数の油圧シリンダ70は、
図7(b)に示すように、そのプランジャ72を、第1の空洞C1を形成する各キャビティ側金型58A、58Bの成形面58a,58bにおける1次成形品12のフランジ部12c対応領域に向けるようにして、成形面58a,58bの周方向に所定間隔をおいて配置されている。これら各油圧シリンダ70は、そのプランジャ72をX軸と平行な方向(型閉め・型開き方向)から第1の空洞C1に突出させ得る構成となっている。
【0047】
なお、キャビティ側金型58Aを用いた1次成形品12の射出成形および二次成形品14の射出成形(二色成形品10の成形)と、キャビティ側金型58Bを用いた1次成形品12の射出成形および二次成形品14の射出成形(二色成形品10の成形)は同じであるので、主として、キャビティ側金型58Aを用いた1次成形品12の射出成形および二次成形品14の射出成形(二色成形品10の成形)について説明し、キャビティ側金型58Bを用いた1次成形品12の射出成形および二次成形品14の射出成形(二色成形品10の成形)についての説明は、省略する。
【0048】
次に、本実施形態に係る射出成形方法について説明する。
図3〜6は、この射出成形方法を示す工程図である。
【0049】
まず、
図3(a)に示すように、1次コア側金型52および2次コア側金型54と1対のキャビティ側金型58A、58Bとを型閉めする。その際、1次成形用金型を構成するキャビティ側金型58Aに配置された各油圧シリンダ70のプランジャ72を、第1の空洞C1の1次成形品12のフランジ部12cに対応する部分を横断貫通するように、第1の空洞C1に突出させる。一方、2次成形用金型を構成するキャビティ側金型58Bに配置された各油圧シリンダ70のプランジャ72は、金型58B,54間の空洞から退去させた状態にしておく。そしてこの状態で、
図3(b)に示すように、加熱シリンダ66から供給される透明の樹脂材料を第1の空洞C1に射出して、1次成形品12を成形する。
【0050】
次に、
図4(c)に示すように、1次コア側金型52および2次コア側金型54と1対のキャビティ側金型58A、58Bとを型開きする。このとき、1次成形品12は、1次成形品12を構成する樹脂の収縮作用によって1次コア側金型52に貼り付こうとするが、この1次成形品12のフランジ部12cには、型閉め・型開き方向と平行な方向から油圧シリンダ70のプランジャ72が貫通係合しているため、金型52,58Aを型開きしたとき、1次成形品12はキャビティ側金型58Aに保持されたまま1次コア側金型52から離脱する。即ち、1次成形品12を構成する樹脂が熱収縮して1次コア側金型52に貼り付こうとする力よりも、1次成形品12のフランジ部12cを構成する樹脂が熱収縮してプランジャ72に抱きつく力の方が大きいため、型開きの際、1次成形品12は、キャビティ側金型58Aに保持される。
【0051】
そしてこの状態で、
図4(d)に示すように、回転部材56をY軸回りに180°回転させる。このとき、キャビティ側金型58Aに保持された1次成形品12には遠心力が作用するが、この1次成形品12のフランジ部12cには、プランジャ72が貫通係合しているため、キャビティ側金型58Aに保持されたままの状態が維持される。即ち、1次成形品12に作用する遠心力よりも、1次成形品12のフランジ部12cを構成する樹脂が熱収縮してプランジャ72に抱きつく力の方が大きいため、回転部材56をY軸回りに180°回転させる際、1次成形品12は、脱落することなく、キャビティ側金型58Aに保持される。
【0052】
次に、
図5(e)に示すように、1次コア側金型52および2次コア側金型54と1対のキャビティ側金型58B、58Aとを型閉めする。そしてこの状態で、キャビティ側金型58Aに配置されている油圧シリンダ70を駆動し、プランジャ72を成形面58a位置まで退去させる(
図7(e),(f)参照)とともに、
図5(f)に示すように、加熱シリンダ68から供給される黒色の樹脂材料を第2の空洞C2に射出する。詳しくは、油圧シリンダ70に内蔵されたリミットスイッチ74によって、プランジャ72の所定量の退去が検出されると、
サイドバルブゲート80を介して、加熱シリンダ68から供給される黒色の樹脂材料が第2の空洞C2に射出されて、2次成形品14が成形される(
図7(f)参照)。そしてこれにより、1次成形品12と2次成形品14とが積層一体化された二色成形品10が完成する。
【0053】
また、
図3(a),(b)に示すように、第1の空洞C1において成形された1次成形品12は、型開き(
図4(c)参照)により大気と触れることで樹脂の熱収縮がいっそう進み、その全体の表面積が縮小する方向に収縮しようとする。このため、
図5(e),(f)に示すように、1次成形品12を保持するキャビティ側金型58Aと2次コア側金型54を型閉めして形成した第2の空洞C2に第2の樹脂材料を射出するまでの間に、キャビティ側金型58Aの成形面58aに密着している1次成形品12全体がその表面積を縮小する方向に収縮変形し、熱収縮による変位が大きく現れる1次成形品12のフランジ部12cがキャビティ側金型58Aの成形面58aから剥がれて、成形面58aとフランジ部12c間に「色かぶり」発生の要因となる隙間が発生するおそれがある。
【0054】
然るに、本実施例では、
図7(e)に拡大して示すように、キャビティ側金型58Aの成形面58aから突出するプランジャ72が、熱収縮による変位が大きく現れる1次成形品12のフランジ部12cを横断貫通しているため、1次成形品12全体の面積を縮小する方向への熱収縮による変形が効果的に抑制される。即ち、キャビティ側金型58Aの成形面58aから突出して1次成形品12のフランジ部12cを横断貫通する油圧シリンダ70のプランジャ72が、1次成形品12全体の面積が縮小する方向への熱収縮による変形を抑制する。
【0055】
特に、油圧シリンダ70のプランジャ72の退避がリミットスイッチ74により検出されると同時に、第2の樹脂材料が第2の空洞C2に射出されることから、第2の樹脂材料が第2の空洞C2に射出されて2次成形品14の積層成形が開始される直前まで、1次成形品12のフランジ部12cを含む全体がキャビティ側金型58Aの成形面58aに密着する形態に保持される。
【0056】
このため、第2の空洞C2に射出された第2の樹脂材料の一部が1次成形品12のフランジ部12cとキャビティ側金型58Aの成形面58aとの間に回り込むという、いわゆる「色かぶり」が発生しない。
【0057】
また、油圧シリンダ70のプランジャ72を退去させた形態で2次成形品14を射出成形する際に、フランジ部12cからプランジャ72を抜き出す際の痕跡、即ちプランジャ72の退去痕である貫通孔12dが1次成形品12のフランジ部12cに形成されるが、
図7(f)に示すように、第2の空洞C2に射出された第2の樹脂材料の一部がこの貫通孔12dに充填されて成形一体化される。したがって、貫通孔12dに2次成形品14側の凸部14aが係合し、貫通孔12dには、黒色の凸部14aの端面1bが露呈する。
【0058】
また、
図7(e)に示すように、油圧シリンダ70のプランジャ72の先端面72aは、第1の空洞C1を形成するキャビティ側金型58Aの成形面58aに倣う形状に形成されるとともに、
図7(f)に示すように、プランジャ72の先端面72aが金型58Aの成形面58aに一致する位置まで、プランジャ72を退去させた形態で、2次成形品14が射出成形される。
【0059】
このため、
図2に示すように、第1の空洞C1を形成するキャビティ側金型58Aの成形面58aによって成形された1次成形品12の貫通孔12d周縁領域12d1と、プランジャ72の先端面72aによって成形された、貫通孔12d内に係合一体化された2次成形品14側の凸部14aの端面14bとが、二色成形品10のフランジ部10Ba(一次成形品12のフランジ部12c)の連続する前面を構成する。
【0060】
最後に、
図6(g)に示すように、1次コア側金型52および2次コア側金型54と1対のキャビティ側金型58B、58Aとを型開きする。このとき、1次成形品12にはプランジャ72が係合していないので、型開きの際、二色成形品10は2次コア側金型54に貼り付いた状態となる。そしてこの状態で、
図6(h)に示すように、二色成形品10を取り出す。この取出しは、図示しない突き押しピンによって2次コア側金型54に貼り付いた二色成形品10を押し出して、図示しない取出し機で掴むことによって行う。
【0061】
このようにして成形された二色成形品10のフランジ部10Ba(透明な1次成形品12のフランジ部12c)の前面側には、
図2に示すように、プランジャ72の退去痕である貫通孔12dが形成され、この貫通孔12dには裏面側に積層配置された黒色の2次成形品14の凸部14aが係合一体化されて、凸部14aの端面14bがフランジ部10Ba(フランジ部12c)の前面と面一に形成されている。
【0062】
そして、フランジ部10Baを含む、1次成形品12と2次成形品14が積層配置された二色成形領域は、表面側の透明な一次成形品12を通して裏面側の2次成形品14の黒色が透けて見えるため、即ち、フランジ部10Baを含む二色成形領域全体が黒く見えるため、フランジ部10Ba(フランジ部12c)に露呈している黒色の凸部14aの端面14bを全く認識できず、外観性に優れる。
【0063】
また、二色成形品10を自動車用ヘッドランプの前面カバーとして用いるために、前面カバー10に耐候性,耐久性,耐摩耗性の表面ハードコート処理を施したとしても、フランジ部10Baの前面に露呈する二次成形品14の凸部14aの端面14bがフランジ部10Baの前面と面一に形成されているので、従来のように、塗布したハードコート処理液が凹部に溜まって白く見えるという、不具合もない。
【0064】
さらに本実施形態においては、射出成形の対象となる二色成形品10が車両用灯具の透光カバーであって、その1次成形品12が透明の樹脂部材で構成されるとともにその2次成形品14が不透明の樹脂部材で構成されているので、1次成形品12は比較的大きくて重いものとなる。このため、回転部材56が回転する際に1次成形品12に作用する遠心力も大きくなり、1次成形品12がキャビティ側金型58Aから離脱しやすくなる。したがって本実施形態の構成を採用することが特に効果的である。
【0065】
上記実施形態においては、油圧シリンダ70に内蔵されたリミットスイッチ74によって、プランジャ72の退去が検出されると、サイドバルブゲート80を介して、黒色の樹脂材料が第2の空洞C2に射出されるように構成されている。したがって、2次成形品14の成形開始前には、確実にプランジャ72が1次成形品12のフランジ部12aから抜き出されて退去している。
【0066】
即ち、金型を型閉めして2次成形品14を積層成形する際に、油圧シリンダ70のプランジャ72を退去させるタイミングが遅れると、第2の樹脂材料の充填圧が途中で変化(低下)し、安定した射出成形ができないとか、先端に溶融樹脂を付着させたプランジャ72が退去することで、油圧シリンダ70のスムーズな駆動(プランジャ72のスムーズな出没動作)を妨げるおそれもある。
【0067】
然るに、本実施例では、プランジャ72が1次成形品12のフランジ部12aから確実に退去した形態をリミットスイッチ74によって確認した上で、第2の樹脂材料が第2の空洞C2に射出されるので、第2の空洞C2に充填された第2の樹脂材料の充填圧が途中で変化(低下)せず、安定した射出成形ができる。また、先端に溶融樹脂を付着させたプランジャ72が退去して、油圧シリンダ70のスムーズな駆動(プランジャ72のスムーズな出没動作)を妨げることもない。
【0068】
また、二色成形品の周縁部における「色かぶり」の発生防止のためには、射出された第2の樹脂材料がプランジャ72にたどり着く前であれば、1次成形品12の周縁部12aからプランジャ72を退去させるタイミングはできるだけ遅いほど有効である。また、第2の樹脂材料の射出圧、流動速度にもよるが、サイドバルブゲートからもっとも近いプランジャ72までの到達時間は、所定時間(例えば、0.5秒)かかる。そこで、
サイドバルブゲート80の開口後、所定時間(例えば、0.5秒)経過時にプランジャ72が退去するように、サイドバルブゲート80の開口動作と油圧シリンダ70の駆動とを連係させるようにしてもよい。
【0069】
上記実施形態においては、各キャビティ側金型58A、58Bの複数箇所に油圧シリンダ70が配置されているものとして説明したが、1箇所にのみ油圧シリンダ70が配置された構成とした場合であっても、1次成形品12の形状によってはキャビティ側金型58A,58Bからの離脱防止を図ることが可能である。
【0070】
上記実施形態においては、各油圧シリンダ70のプランジャ72が、型閉め・型開き方向と平行な方向から第1の空洞C1に突出する構成となっているが、キャビティ側金型58Aからの1次成形品12の離脱防止を図ることが可能な範囲内であれば、型閉め・型開き方向に対して傾斜した方向から第1の空洞C1に突出する構成とすることも可能である。
【0071】
上記実施形態においては、射出成形の対象となる二色成形品10が車両用灯具の透光カバーであるものとして説明したが、それ以外の例えばサンルーフやリアウインドウ等の樹脂成形品を対象とした場合においても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0072】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
図8は、本変形例に係る射出成形方法の概要を示す、
図6(g)と同様の図である。
【0073】
同図に示すように、本変形例においても、射出成形の対象となる二色成形品10の構成は上記実施形態の場合と同様であり、また、その金型150の構成についても、1次コア側金型152および2次コア側金型154ならびに1対のキャビティ側金型158A、158Bの構成自体は上記実施形態の場合と同様であるが、その配置が上記実施形態の場合と異なっている。
【0074】
即ち、この金型150は、いわゆるロータリ方式の二色成形用金型であって、1次コア側金型152および2次コア側金型154が互いに離れた位置において上向きに配置されるとともに、これら1次コア側金型152および2次コア側金型154の間において鉛直方向に延びるY軸回りに回転可能に配置された回転部材156に、同一形状の1対のキャビティ側金型158A、158Bが下向きで配置された構成となっている。そして、1対のキャビティ側金型158A、158Bが回転部材156と共に上下方向に移動することにより、1次コア側金型152および2次コア側金型154と1対のキャビティ側金型158A、158Bとの型閉めおよび型開きが行われるようになっている。
【0075】
詳しくは、第1のキャビティ側金型158Aは、1次コア側金型152と協働して、1次成形品12を成形する1次成形用金型を構成するとともに、回転部材156と一体に180度回転することで、2次コア側金型154と協働して、2次成形品14を成形する1次成形用金型を構成する。一方、第2のキャビティ側金型158Bは、1次コア側金型152と協働して、1次成形品12を成形する1次成形用金型を構成するとともに、回転部材156と一体に180度回転することで、2次コア側金型154と協働して、2次成形品14を成形する二次成形用金型を構成する。
【0076】
そして、キャビティ側金型158A,158Bを1次成形用金型として使用する場合は、各油圧シリンダ170のプランジャ172を第1の成形品12成形用の第1の空洞に突出させた状態で1次成形品12を成形し、一方、キャビティ側金型158A,158Bを2次成形用金型として使用する場合は、各油圧シリンダ170のプランジャ172を金型間の空洞から退去させた形態で、2次成形品14を成形するようになっている。
【0077】
本変形例の構成を採用した場合においても、例えば、1次成形品12の周縁部に、型閉め・型開き方向と平行な方向から油圧シリンダ170のプランジャ172が貫通係合しているため、
図8に示すように、1次コア側金型152とキャビティ側金型158Bとを型開きしたとき、1次成形品12はキャビティ側金型158Bに保持されたまま1次コア側金型152から離脱し、また、回転部材156が回転したときの遠心力や衝撃力によって位置ずれを生じることなく、1次成形品12はキャビティ側金型158Bに保持されたままの状態を維持することとなる。
【0078】
また、本変形例においても、キャビティ側金型158Bの成形面から突出し、1次成形品12のフランジ部12aを横断貫通している油圧シリンダ170のプランジャ172によって、第2の樹脂材料が第2の空洞に射出されて2次成形品の積層成形が開始される直前まで、1次成形品12は、その周縁部12aを含む全体がキャビティ側金型158Bの成形面に密着する形態に保持される。このため、第2の空洞に射出された第2の樹脂材料の一部が1次成形品の周縁部とキャビティ側金型の成形面との間に回り込むという、いわゆる「色かぶり」が発生しない。
【0079】
また、油圧シリンダ170のプランジャ172を退去させた形態で2次成形品14を射出成形する際に、フランジ部12cからプランジャ172を抜き出す際の痕跡である貫通孔12dが1次成形品12のフランジ部12cに形成されるが、2次成形品14を構成する第2の樹脂材料の一部がこの貫通孔12dに充填されて成形一体化される。
【0080】
このため、
図2に示すように、成形された二色成形品10のフランジ部10Ba(1次成形品12のフランジ部12c)に形成された貫通孔12dには、裏面側の2次成形品14側の凸部14bが係合するとともに、1次成形品12の貫通孔12d周縁領域12d1と、貫通孔12dに露呈する凸部14bの端面14aとが、二色成形品10のフランジ部10Ba(一次成形品12のフランジ部12c)の連続する前面を構成する。
【0081】
このように本変形例においても上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0082】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではない。例えば、「出没機構」の具体的な構成は特に限定されるものではなく、油圧シリンダの他にエアシリンダ等が採用可能である等、種々の変更を加えた構成が採用可能である。