特許第6587866号(P6587866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587866
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】オーバーヘッドドア
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/16 20060101AFI20191001BHJP
   E06B 9/17 20060101ALI20191001BHJP
   E06B 7/22 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   E06B7/16 A
   E06B9/17 Z
   E06B7/22 A
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-166520(P2015-166520)
(22)【出願日】2015年8月26日
(65)【公開番号】特開2017-43947(P2017-43947A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 滋
(72)【発明者】
【氏名】坂本 克広
(72)【発明者】
【氏名】宮田 裕文
【審査官】 土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】 特公平04−033352(JP,B2)
【文献】 実開昭54−132942(JP,U)
【文献】 実開昭55−180873(JP,U)
【文献】 特開平09−303056(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/079576(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/16−24、9/02、9/17、5/00
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外側面部と室内側面部を備えた複数枚のパネルを互いに回動可能に高さ方向に連結してなる扉体と、
室外側から遠い側の第1ガイド面と、室外側に近い側の第2ガイド面と、を備え、各パネルの幅方向両端部に設けたガイドローラが案内されるガイドレールと、
を備えたオーバーヘッドドアにおいて、
全閉状態において、各パネルの室外側面部の幅方向両端部と躯体とは隙間を存して離間対向しており、
前記躯体には、前記隙間において、少なくとも床面から所定高さに亘ってシール手段が設けてあり、
前記ガイドレールの前記第1ガイド面には、全閉状態において、最下位パネルのガイドローラが位置する高さに、凸部が形成されており、全閉状態では、ガイドレールの前記凸部に押圧されるガイドローラを介して最下位パネルが室外側に移動するようになっており、
前記シール手段は、高さ方向に延びる第1シール材と、床面から所定高さに亘って設けられた第2シール材と、を備え、
全閉状態において、前記第1シール材の少なくとも部分は、前記隙間に位置して、前記パネルの室外側面部の幅方向端部に接触しており、
全閉状態において、前記第2シール材は、前記第1シール材と前記躯体との間で圧縮状態にあって、前記隙間の下方部位は、最下位パネルの室外側面部、前記第1シール材、前記第2シール材、前記躯体が重なり合うことで閉塞されており、
全閉状態における前記最下位パネルの室内側への移動は、前記ガイドローラがガイドレールの前記第1ガイド面に形成された前記凸部に当接することで規制されており、前記最下位パネルの室外側面部と前記第1シール材の密着状態及び前記第1シール材と前記第2シール材の密着状態が維持されることで、前記隙間において、前記最下位パネルに対応する部位が密閉される、
オーバーヘッドドア。
【請求項2】
前記最下位パネルは、上側のガイドローラ、下側のガイドローラを備えており、
全閉状態において、前記上側のガイドローラ、および/あるいは、前記下側のガイドローラが位置する高さに凸部が形成されている、
請求項1に記載のオーバーヘッドドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバーヘッドドアに係り、より詳しくは、防水性能を備えたオーバーヘッドドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オーバーヘッドドアは、倉庫やガレージ等の建物の屋外と屋内とを連通する開口部に設置する建具として知られており、風圧力、雨仕舞に配慮した設計となっているが、防水性能(特に水圧を伴った水に対する抵抗力)については考慮されていない。
【0003】
近年、ゲリラ豪雨等による建物内部への浸水が多発するようになり、オーバーヘッドドアにおいても防水性能が要求される場面も増えている。しかしながら、オーバーヘッドドアは、扉体開閉時におけるパネルと躯体との接触を防ぐためにパネルの室外側面部の幅方向両端部と躯体とは隙間を存して離間対向する構造となっており、豪雨等によって屋外側の水位が高くなると、かかる隙間から屋内側への浸水を招いてしまうことになる。
【0004】
特許文献1には、オーバーヘッドドアの止水装置が開示されているが、開口部全閉時に、作動アームによってドアプレスアングルを室外側に押圧して、最下段のドアパネルの下端部及び左右両端部をシール部材に密着させるものであり、止水装置にのみ使用する部材を別途用意しておく必要があり、また、止水構造を得るためには、開口部全閉後に作動アームの操作が必要となる。
【特許文献1】特公平4−33352
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、通常の閉鎖動作における全閉状態と同時に防水性能を発揮するオーバーヘッドドアを提供するものであり、特に、全閉状態の扉体の左右側部における防水構造に特徴を備えたオーバーヘッドドアを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が採用した技術手段は、
室外側面部と室内側面部を備えた複数枚のパネルを互いに回動可能に高さ方向に連結してなる扉体と、
室外側から遠い側の第1ガイド面と、室外側に近い側の第2ガイド面と、を備え、各パネルの幅方向両端部に設けたガイドローラが案内されるガイドレールと、
を備えたオーバーヘッドドアにおいて、
全閉状態において、各パネルの室外側面部の幅方向両端部と躯体とは隙間を存して離間対向しており、
前記躯体には、前記隙間において、少なくとも床面から所定高さに亘ってシール手段が設けてあり、
前記ガイドレールの前記第1ガイド面には、全閉状態において、最下位パネルのガイドローラが位置する高さに、凸部が形成されており、全閉状態では、ガイドレールの前記凸部に押圧されるガイドローラを介して最下位パネルが室外側に移動して前記シール手段が圧縮状態となり、前記最下位パネルに対応する前記隙間が密閉される、
オーバーヘッドドア、である。
【0007】
1つの態様では、前記最下位パネルは、上側のガイドローラ、下側のガイドローラを備えており、
全閉状態において、前記上側のガイドローラ、および/あるいは、前記下側のガイドローラが位置する高さに凸部が形成されている。
後述する実施形態では、前記第1ガイド面には、上側のガイドローラ及び下側のガイドローラにそれぞれ対応して2つの凸部、すなわち、上側の凸部、下側の凸部が形成されている。
【0008】
1つの態様では、前記シール手段は、
高さ方向に延びる第1シール材と、
床面から所定高さに亘って設けられた第2シール材と、
を備え、
全閉状態において、前記第1シール材の少なくとも部分は、前記隙間に位置して、前記パネルの室外側面部の幅方向端部に接触しており、
全閉状態において、前記第2シール材は、前記第1シール材と前記躯体との間で圧縮状態にあって、前記隙間の下方部位は、最下位パネルの室外側面部、前記第1シール材、前記第2シール材、前記躯体が重なり合うことで閉塞されており、前記最下位パネルの室内側への移動は、前記ガイドローラがガイドレールの前記第1ガイド面に形成された前記凸部に当接することで規制されている。
1つの態様では、前記躯体には、前記ガイドレールを支持するように高さ方向に延びる枠体が設けてあり、
前記シール手段は、
前記枠体に設けられ、高さ方向に延びる第1シール材と、
前記隙間において、前記第1シール材と前記枠体の第1辺との間に位置して、床面から所定高さに亘って第1辺に設けられた第2シール材と、
からなる。
1つの態様では、前記第1シール材は、弾性を有するフィン状のシール材であり、例えば、樹脂や硬質ゴムから形成される。
前記第1シール材において、少なくとも各パネルの室外側面部の幅方向両端部と接触する部位は摺動性(滑動性)の高い特性を備えている。
1つの態様では、前記第2シール材は、弾性を有するブロック状のシール材であり、例えば、発泡ゴム、より具体的には、EPDMゴム発泡体から形成される。なお、第2シール材は、シート状の形状でもよく、また、薄肉シートの積層構造であってもよい。
また、第1シール材と第2シール材を接続してもよい。この場合、第1シール材と第2シール材は常に密着状態にある。
【0009】
1つの態様では、前記枠体は、前記躯体に連結される第1辺と、前記第1辺から室内側に向かって延びる第2辺と、を備え、
前記隙間は、前記第1辺と各パネルの室外側面部の幅方向両端部との間に形成されており、
前記第2シール材は前記第1辺に設けてあり、当該第1辺と前記第1シール材との間で、最下位パネルの室外側への押圧力によって圧縮状態にある。
1つの態様では、前記ガイドレールは、前記第2辺に取り付けられる。
後述する実施形態では、前記第2辺は、2部材(支持枠6の第2辺61と支持プレート7)からなり、前記ガイドレールは前記支持プレートに取り付けられる。
【0010】
1つの態様では、前記ガイドレールの第1ガイド面及び第2ガイド面は、下方に向かって室外側に緩やかに傾斜しており、
全閉状態では、前記凸部とガイドレールの傾斜が協働して、最下位パネルのガイドローラを室外側に案内することで、最下位パネルが室外側に移動した状態となって前記第2シール材が圧縮状態となる。
【0011】
1つの態様では、最下位パネルの下端には、幅方向に亘って弾性変形可能なボトム水密部材が設けてあり、全閉状態において、前記ボトム水密部材が弾性変形して床面に密着する。
1つの態様では、前記ボトム水密部材の室外側部位には、前記隙間に面して水密ブロックが設けてあり、全閉状態において、前記ボトム水密部材の弾性変形に伴って、前記水密ブロックが前記第1シールに密着する。
1つの態様では、前記隙間の下方において、床面には、前記第1シール材の下方部位と前記ボトム水密部材との間に位置して、水密ブロックが設けてあり、全閉状態において、前記ボトム水密部材の弾性変形に伴って、前記水密ブロックと前記ボトム水密部材、前記水密ブロックと前記第1シール材が密着状態となる。1つの態様では、前記水密ブロックは前記第2シール材を圧縮した状態で、前記第1シール材に当接させて床面に設けられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、全閉状態において、前記第2シール材は、前記第1シール材と前記躯体との間で圧縮状態にあって、前記隙間において最下位パネルに対応する空間は、前記最下位パネルの室外側面部、前記第1シール材、前記第2シール材、前記躯体が重なり合うことで閉塞され、前記最下位パネルの室外側面部と前記第1シール材の密着状態及び前記第1シール材と前記第2シール材の密着状態が維持され、もって、前記隙間において、前記最下位パネルに対応する部位が密閉される。
全閉状態において、前記最下位パネルの室内側への移動は、前記ガイドローラがガイドレールの前記第1ガイド面に形成された凸部に当接することで規制されており、前記最下位パネルに対応する前記隙間の密閉状態が維持される。
【0013】
本発明では、扉体が全閉状態となると同時に、前記最下位パネルに対応する前記隙間の密閉状態が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】全閉姿勢にあるオーバーヘッドドアを室内側から見た正面図である。
図2】全閉姿勢にあるオーバーヘッドドアの側面図である。
図3】ガイドレールの支持構造及び取付構造を示す図である。
図4】全閉姿勢にあるオーバーヘッドドアの最下位のパネルを含む側面図である。
図5】全閉姿勢にあるオーバーヘッドドアの最下位のパネルにおける横断面図である。
図6図4の部分拡大図である。
図7】全閉姿勢になる直前のオーバーヘッドドアの最下位のパネルを含む側面図である。
図8】全閉姿勢になる直前のオーバーヘッドドアの最下位のパネルにおける横断面図である。
図9】最下位パネルの下端部の他の水密構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は全閉姿勢にあるオーバーヘッドドアを室内側から見た正面図、図2は全閉姿勢にあるオーバーヘッドドアの側面図であり、オーバーヘッドドアの扉体は、横長の長方形状の複数枚のパネル1を、丁番2を介して上下方向に互いに回動可能に連結して構成されている。各パネル1の幅方向両端にはガイドローラ3が回転自在に設けてあり、扉体は、各パネル1の左右のガイドローラ3が左右のガイドレール4にそれぞれ案内されて上昇、下降することで建物開口部を開閉する。
【0016】
ガイドレール4は、開口部の高さ方向に延びる第1部位40と、第1部位40の上方から室内側に向かって後方に延びる湾曲状の第2部位41と、第2部位41の後方から天井CLに沿って後方に延びる第3部位42と、からなる。第1部位40は、下方から上方に向かって室内側へ緩やかに傾斜している。第3部位42は、室内側に向かって上方に緩やかに傾斜している。
【0017】
開口部全閉状態では各パネル1(最上位のパネル1を除く)はガイドレール4の第1部位40に位置することで複数枚のパネル1がほぼ垂直姿勢となって開口部を閉鎖している。開口部全閉状態から、各パネル1がほぼ垂直姿勢から第3部位42に位置するほぼ水平姿勢まで引き上げられ(最下位のパネル1は湾曲部位41に位置する)、扉体が室内側空間の天井CLに沿って横方向に延びた姿勢となって、開口部全開状態となる。
【0018】
開口部の上方には、バランススプリング17を備えた回転軸18が配設されており、回転軸18の両端部に軸支したドラム19に一端をそれぞれ固定した巻き取りワイヤ20の他端を、最下位のパネル1の左右両端にそれぞれ接続して、バランススプリング17の巻き上げ方向の付勢力により全閉姿勢にある扉体を開放方向(上方)に付勢するように構成されている。
【0019】
本実施形態に係るオーバーヘッドドアは電動式であり、電動開閉機構は、開閉機22と、トロリーレール23と、連結アーム24と、を備え、連結アーム24の上端はトロリーレール23上を移動可能となっており、開閉機22による連結アーム24の移動によって最上位パネル1を始動させることで扉体を移動させる。図2において、全開方向への移動時の扉体の移動軌跡を実線1´で示している。なお、上述のオーバーヘッドドアの駆動構成は一例に過ぎないものであり、本発明の内容を限定するものではない。
【0020】
ガイドレール4(第1部位40)は、開口部のほぼ全高に亘って垂直状に延びる支持枠6及び支持プレート7を介して、開口部左右の躯体5の内面50から持ち出し状に支持されている。図3、5、8に示すように、ガイドレール4は、断面視においてほぼC形状を有しており、より具体的には、凹状の第1ガイド面43と、平面状の第2ガイド面44と、第1ガイド面43と第2ガイド面44を繋ぐ側部45と、からなる。図示の態様では、第1ガイド面43が室内側(躯体5の内面50から遠い側)、第2ガイド面44が室外側(躯体5の内面50に近い側)に位置している。
【0021】
支持枠6は、第1辺60と第2辺61とから断面視L形状を備えた長尺部材であり、第1辺60の外面を躯体5の内面50に重ねるようにして躯体5に連結される。第1辺60の躯体5への連結手段は限定されないが、第1辺60の外面と躯体5の内面50との間にシーリング材を設けることで水密構造が形成される。図3に示す態様では、支持枠6の第1辺60の外面にゴム製の弾性部材9´を接着し、躯体5の内面50に圧縮密着させて、図示しない螺子で固定する。弾性部材9´の材料としては、EPDMゴム発泡体が例示され、具体例としてエプトシーラー(登録商標)を挙げることができる。支持枠6の第1辺60の外面を躯体5の内面50に溶接してもよく、この場合には、シーリング材としてコーキング材を設けることで水密構造を形成することができる。
【0022】
第1辺60が躯体5の内面50に連結された状態において、第2辺61は、室内側に向かって躯体5の内面50に対して垂直状に延びている。第2辺61の外面には、支持プレート7が面接触して連結されており、支持プレート7の室内側部位70は、第2辺61の端部を超えて室内側に延びており、室内側部位70の内面には、ガイドレール4の第1部位40の側部45が面接触して螺子71で連結されている。なお、本実施形態ででは、支持枠6と支持プレート7を別個の部材から構成したが、これらを一体形成してもよい。
【0023】
パネル1は、室外側面部10と、室内側面部11と、左右の側面12を備えており、パネル1の幅方向両端部には縦框13が設けてある。縦框13は、断面視ほぼコ字状の板材からなり、パネル1の室外側面部10に密着する第1辺130と、パネル1の室内側面部11に密着する第2辺131と、パネル1の側面12に密着する第3辺132と、からなり、第2辺131の幅寸法は、第1辺130の幅寸法よりも大きい。第1辺130の幅寸法は、扉体の開閉時に(パネル1が開口幅方向にズレ得る)、パネル1の幅方向両端部の室外側に位置する第1辺130が常にシール材8と接触を維持するような寸法となっている。また、第1辺130と第2辺131の幅寸法は同じであってもよい。
【0024】
縦框13の第1辺130及び第3辺132の室外側半部の内面と、パネル1の室外側面部10及び側面12の室外側半部と、の接合面には、シーリング材(図示せず)が設けてある。室外側面部10には、高さ方向に間隔を存して複数の凹部100が幅方向に形成されているが、縦框13の第1辺130と凹部100の隙間にシーリング材(定型、不定形を問わない)を充填することで、この隙間を閉塞してある。
【0025】
図5、8に示すように、パネル1の室外側面部10の幅方向両端部(すなわち、縦框13の第1辺130)は、隙間を存して躯体5の内面50、本実施形態では、支持枠6の第1辺60、に離間対向している。この隙間には、後述するように、建物開口部のほぼ開口高に亘って延びるフィン状のシール材8、最下位パネル1の高さに亘って延びるブロック状(容易に圧縮変形可能)のシール材9が設けられる。
【0026】
最下位のパネル1の室内側面部11の幅方向両端部(すなわち、縦框13の第2辺131)及び側面12(すなわち、縦框13の第3辺132)の下方部位には、これらに当接するように断面視L形状の被連結部材14が設けてある。被連結部材14の第1辺140は、第2辺131に当接し、第2辺141は、第3辺132に当接している。被連結部材14の第2辺141には、ワイヤ連結部21が設けてあり、ワイヤ(図5、8では図示せず)が連結される。
【0027】
被連結部材14の第1辺140には、断面視コ字状のブラケット15が固定されている。ブラケット15は、対向する第1辺150と第2辺151と、第1辺140に接続される第3辺152と、からなり、第1辺150と第2辺151間にローラ軸30が支持されており、ローラ軸30の先端部位は、第2辺151及びパネル1の側面12(縦框13の第3辺132)を越えて延びており、先端にガイドローラ3が回転自在に支持されている。最下位のガイドローラ3及び最上位のガイドローラ(公知の構成なので説明は省略する)を除くガイドローラ3及びローラ軸30は、丁番2に連結されたローラブラケット14´に支持されている。なお、ガイドローラ3の支持構造は、図示の態様に限定されるものではない。
【0028】
ガイドレール4の第1ガイド面43と第2ガイド面44の内面間の距離は、ガイドローラ3の直径よりも大きく、ガイドローラ3は、クリアランス(遊び)を有してガイドレール4に受け入れられている。すなわち、ガイドローラ3が第1ガイド面43の内面に接触している時には、ガイドローラ3と第2ガイド面44の内面との間には隙間が形成されている(図5、8参照)。
【0029】
上述のように、パネル1の室内側面部11の幅方向端部から側面12を越えて突出するローラ軸30に設けたガイドローラ3がガイドレール4の第1部位40に受け入れられた状態でパネル1の室外側面部10(第1辺130)と躯体5の内面50(第1辺60)との間には隙間が形成されているが、ガイドローラ3がガイドレール4の第1部位40の第1ガイド面43に当接することで、室外側で発生した水圧によってパネル1が室内側へ押圧された場合であっても、上記隙間の拡大が規制される。また、上記隙間は、ガイドローラ3とガイドレール4間のクリアランスよりも大きく、ガイドローラ3がガイドレール4の第1部位40の第2ガイド面44に当接した場合であっても、第1辺130が第1辺60に接触することはない。パネル1の側面12(縦框13の第3辺132)と第2辺61との間には空間が形成されており、かかる空間を利用して、ワイヤ(図5、8、10では図示せず)が高さ方向に延びている。
【0030】
支持枠6には、高さ方向に亘って、第1辺60の内面に沿って延びるフィン状のシール材8が設けてある。本実施形態では、シール材8の下端は床面FLに達している。シール材8は、先端側の第1部分80と基端側の第2部分81とから断面視へ字状を有しており、先端は第1辺60の端部に位置しており、基端は断面視L形状の支持枠6の隅部に位置している。支持枠6の第2辺61の内面には、高さ方向に亘ってシール材支持部82が設けてあり、シール材支持部82には、断面視L形状の支持枠6の隅部に位置して被係合溝83が形成されており、シール材8の基端は、被係合溝83に係合されている。本実施形態では、シール材8の基端側を第2辺61に設けたシール材支持部82に支持させたが、シール材8の基端側を第1辺60(例えば、第1辺60に図示しないシール材支持部を設ける)から支持するようにしてもよい。
【0031】
シール材8には、扉体の開閉時及び全閉状態において、パネル1の室外側面部10の幅方向端部、具体的には、縦框13の第1辺130が摺接するようになっており、シール材8は弾性部材から形成されると共に、少なくとも縦框13の第1辺130と接触する部分は摺動性(滑動性)に優れた特性を備えている。シール材8を形成する弾性部材としては、合成樹脂やゴムを例示することができる。
【0032】
支持枠6の第1辺60の先端側には、高さ方向の下方部位において(全閉状態の最下位のパネル1の全高に位置する部位)、弾性部材からなるブロック状のシール材9が設けてある。シール材9の下端は床面FLに達しており、上端は、扉体全閉姿勢における最下位パネル1の上端(縦框13の上端)に達している。パネル1の高さは、想定される水位300mmよりも高いので、床面FLから全閉姿勢にある最下位パネル1の全高に亘って水密構造を形成することによって、少なくとも想定水位には対応できると考えられる。本実施形態では、シール材9の高さ寸法は、最下位パネル1の高さ寸法とほぼ一致しているが、パネルの高さ寸法や想定水位によっては、シール材9は、最下位パネル1の上端を越えて上方に延びていてもよく、あるいは、最下位パネル1の高さ寸法よりも低い高さ寸法であってもよい。すなわち、シール材9の高さ寸法は、想定水位に対して有効な防水機能を発揮できる高さに設定される。
【0033】
図示の態様では、シール材9は所定の厚さを備えた断面視方形状であり、第1面(室外側に近い面)が第1辺60の内面に密着固定されており(例えば、粘着層を介して)、第2面(室外側から遠い面、すなわち、室内側に近い面)には、シール材8の第1部分80の第1面(室外側に近い面)が接触している。第1辺60とシール材8の第1部分80との間にシール材9が挟まれた状態となっている。
【0034】
シール材9を形成する弾性部材の材料としては、半独立気泡構造ないし独立気泡構造を備えた発泡ゴムが例示され、より具体的には、EPDMゴム発泡体(独立気泡体ないし半独立気泡体)が例示され、具体例としてエプトシーラー(登録商標)を挙げることができる。
【0035】
図3に示すように、組み込み前の状態ではシール材9は断面視方形を備えているが、オーバーヘッドドアとして組み込まれた状態では、全閉状態となる前の開閉時においても、ある程度圧縮されている(図8参照)。具体的には、パネル1の室外側面部10の幅方向両端部(縦框13の第1辺130)と躯体5の内面50(支持枠6の第1辺60)との間の隙間には、シール材8の第1部分80及びシール材9が位置しており、シール材9の第1面は第1辺60に接着されており、シール材9の第2面にはシール材8の第1部分80の第1面が密着しており、第1部分80の第2面には縦框13の第1辺130が当接しており、シール材8及びシール材9を押圧している。図8図5、10と対比すれば明らかなように、全閉状態では、シール材9はさらに圧縮されている。
【0036】
ガイドレール4の第1部位40の下方部位、具体的には、全閉状態の扉体の最下位のパネル1の上下のガイドローラ3に対応する高さ位置には、第1ガイド面43の内面に凸部16が設けてある。凸部16は、扉体の開閉時において、ガイドローラ3のスムーズな走行を妨げないような突出寸法及び形状を備えている。凸部16は、応力が作用しても容易に変形することなく、形状を維持できるものであれば、材質は限定されないが、例えば、硬質の樹脂や金属から形成される。また、図示の態様では、凸部16は、一体のブロックから形成されているが、複数枚の薄板を積層して凸部16を形成してもよく、そうすることで薄板の枚数の選択によって凸部16の突出寸法を調整することができる。
【0037】
図示の態様では、凸部16は、上側傾斜面160と、下側傾斜面161と、中央の垂直面162と、を備えている。上側傾斜面160、下側傾斜面161は、パネル1の下降時、上昇時にガイドローラ3が凸部16に乗り上げる、あるいは、乗り越える際の抵抗を低減するガイドスロープとして機能する。なお、下側の凸部16において、下側傾斜面161は無くてもよい。凸部16の形状は、このような側面視台形状の形状に限定されるものではなく、例えば、上側の傾斜面と下側の傾斜面から側面視三角形状の形状であってもよい。
【0038】
全閉姿勢では、図4に示すように、最下位パネル1の上側のガイドローラ3が上側の凸部16の垂直面162に乗り上げて当接しており、下側のガイドローラ3が下側の凸部16の垂直面162に乗り上げて当接しており、凸部16の厚さ分だけ最下位パネル1が室外側に押圧されており、図5に示すように、シール材8の先端部位と第1辺60の先端部位間に挟まれているシール材9が圧縮されて薄肉状となっている。最下位パネル1の室外側面部10の幅方向端部(縦框13の第1辺130)と、シール材8の第1部分80の第2面(室外側から遠い面)が密着状態にあり、シール材8の第1部分80の第1面(室外側に近い面)とシール材9の第2面(室外側から遠い面)が密着状態にある。このようにして、シール材8、9によって、支持枠6の第1辺60と最下位パネル1の室外側面部10の幅方向端部(縦框13の第1辺130)との間の隙間が密閉される。
【0039】
この時、ガイドローラ3の室内側部位は凸部16に当接しているので、室外側から最下位パネル1の室外側面部10に水圧が作用しても、最下位パネル1の室外側面部10(縦框13の第1辺130)と躯体5の内面50(支持枠6の第1辺60)との間の隙間が拡がることがなく、シール材9は圧縮状態を維持したままで水密構造が確保される。同様に、シール材8の先端側部位(第1部分80の第2面)と最下位パネル1の室外側面部10(縦框13の第1辺130)との密着状態、シール材8の先端側部位(第1部分80の第1面)とシール材9の第2面との密着状態が維持され水密構造が確保される。
【0040】
図示の態様では、上側のガイドローラ3、下側のガイドローラ3のそれぞれに対応して上側の凸部16、下側の凸部16を設けたが、上側の凸部16、下側の凸部16のいずれか一方を設けたものでも、上下に凸部16を設けたものに比べてシール材9の圧縮の程度はやや落ちるものの、支持枠6の第1辺60と最下位パネル1の室外側面部10の幅方向端部(縦框13の第1辺130)との間の隙間を密閉して、水密構造を得ることができる。
【0041】
図4、7、9に示すように、最下位のパネル1の下端には弾性変形可能なボトム水密部材25、すなわち、ウェザーストリップが設けてあり、全閉状態では、ボトム水密部材25が弾性変形して床面FLに密接することで、最下位パネル1の下端の水密構造を確保する(実際には、図4、9に示すよりもボトム水密部材25が押圧されて変形する)。ボトム水密部材25は、ゴムや弾性樹脂等の弾性部材から形成される。ボトム水密部材25の形状、構成は、図示のものに限定されない。
【0042】
図9には、最下位パネル1の下端部の他の水密構造を示す。ボトム水密部材25の室外側部位には、ボトム水密部材25の長さ方向両端部において、断面視三角形状の第1水密ブロック26が設けてあり、シール材8の下方部位に対向している。第1水密ブロック26はゴム材等の弾性部材から形成され、例えば、クロロプレンゴムから形成されている。
【0043】
床面FLには、シール材8の下方部位に接触するように断面視三角形状の第2水密ブロック27が設けてある。第2水密ブロック27は、シール材8を介してシール材9の下方部位を圧縮させた状態でシール材8に当接するように設置される。図示の態様では、第2水密ブロック27は、発泡ポリスチレンないし発泡スチロールから形成された本体270と、表面の傾斜面の発泡ゴム(例えば、EPDMゴム発泡体)から形成された弾性層271と、からなる。
【0044】
実際には、全閉状態において、図9に示す形態から、ボトム水密部材25がさらに圧縮変形し、ボトム水密部材25の室外側部位、第1水密ブロック26の傾斜面、第2水密ブロック27の傾斜面(弾性層271)、シール材8の下方部位が適宜密着して水密構造を提供する。第1水密ブロック26の形状は、扉体の開閉を妨げるものでなく、全閉状態で良好な密閉状態を形成できるものであれば、図示の形状に限定されない。第2水密ブロック27の形状は、全閉状態で良好な密閉状態を形成できるものであれば、図示の形状に限定されない。
【符号の説明】
【0045】
1 パネル
3 ガイドローラ
4 ガイドレール
40 第1部位
43 第1ガイド面
44 第2ガイド面
6 支持枠
60 第1辺
8 シール材
9 シール材
13 縦框
130 第1辺
16 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9