特許第6587893号(P6587893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587893
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】シートスライドアジャスタ
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20191001BHJP
【FI】
   B60N2/08
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-201660(P2015-201660)
(22)【出願日】2015年10月12日
(65)【公開番号】特開2017-74801(P2017-74801A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】福田 順
(72)【発明者】
【氏名】井上 勝博
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−120223(JP,A)
【文献】 特開2014−083888(JP,A)
【文献】 特開平10−230762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアレールと、前記ロアレールにスライド可能に設けられ、シートを構成するシートフレームが連結されるアッパーレールと、前記アッパーレールを前記ロアレールに対して適宜のスライド位置でロックするロック機構とを有し、前記シートの前後方向の位置調節を行うためのシートスライドアジャスタであって、
前記ロアレールが、長手方向の両側に、櫛歯状に下方に向けて突出するロック用歯部を有し、
前記ロック機構が、
前記ロアレールの長手方向の両側に位置するロック用歯部にそれぞれ対応して2列で形成された前記ロック用歯部に係合する被係合部を備えたロックプレートと、
前記アッパーレール側に支持され、前記ロックプレートの被係合部を前記ロック用歯部に係合可能に、前記ロックプレートを弾性支持する弾性支持手段を有するロック機構支持部材と
前記ロックプレートにおける前記アッパーレールの長手方向に沿った長手方向端縁部のそれぞれに隣接する位置に配置され、前記ロック機構支持部材に設けた他の弾性支持手段により弾性支持されていると共に、ロック時において、前記ロックプレートの長手方向端縁部のそれぞれに接触し、前記ロックプレートを内方に押圧するくさび部を有するくさび構造体と
を有することを特徴とするシートスライドアジャスタ。
【請求項2】
前記ロックプレートの長手方向端縁部のそれぞれに隣接して配設される前記各くさび構造体が、前記アッパーレールの長手方向に直交する方向に所定間隔をおいて複数のくさび部を有し、前記ロックプレートの各長手方向端縁部に所定間隔をおいて複数箇所で接触する請求項記載のシートスライドアジャスタ。
【請求項3】
前記ロック機構支持部材は、
前記アッパーレール側に固定されるベースプレート部と、
前記ベースプレート部から前記アッパーレールの上壁部方向に突出するロックプレート用ガイド軸と、
前記ロックプレート用ガイド軸を挟んで所定間隔をおいて1対設けられ、前記ベースプレート部から前記アッパーレールの上壁部方向に突出する突出するくさび用ガイド軸と、
前記ロックプレート用ガイド軸に装填され、前記弾性支持手段を構成するロックプレート用スプリングと、
前記各くさび用ガイド軸に装填され、前記他の弾性支持手段を構成するくさび用スプリングと
を有して構成される請求項1又は2記載のシートスライドアジャスタ。
【請求項4】
前記アッパーレールの内側に配設されるアッパーブラケットを備えており、前記ロック機構支持部材の前記ベースプレート部が、前記アッパーブラケットに支持されている請求項記載のシートスライドアジャスタ。
【請求項5】
前記アッパーブラケットが断面略コ字状に形成され、その開口側を前記ロアレール側に向けて配設され、前記ロック機構支持部材の前記ベースプレート部が前記開口側に固定され、前記ロックプレート用ガイド軸及び前記各くさび用ガイド軸の上端部が前記アッパーブラケットの上面部に固定されており、
前記アッパーブラケット及び前記ベースプレート部により形成される略箱状構造が強度部材を構成している請求項記載のシートスライドアジャスタ。
【請求項6】
前記ロックプレート用スプリングよりも、前記くさび用スプリングの伸長時の最上端位置が高くなるように設定され、
前記くさび構造体の各くさび部は、下方に向かうに従って、内方に突出する傾斜面を有し、
ロック時において、前記ロックプレートの長手方向端縁部のそれぞれに、前記くさび部の傾斜面の下方寄りの部位が接する請求項3〜5のいずれか1に記載のシートスライドアジャスタ。
【請求項7】
ロック解除操作部材の操作により下方に変位可能なリリースプレートが、前記ロックプレート及び前記くさび構造体の上側に配設されている請求項1〜6のいずれか1に記載のシートスライドアジャスタ。
【請求項8】
前記ロアレールは、底壁部と、前記底壁部の両側から立ち上がって互いに対向する一対の第1側壁部と、前記各第1側壁部の上縁から互いに内方に曲げられていると共に、対向縁同士が所定間隔離間している一対の上壁部と、前記上壁部の内端縁から下方に曲成された内壁部とを有し、前記内壁部に、櫛歯状に下方に向けて突出する前記ロック用歯部が形成されており、
前記アッパーレールは、上壁部と、前記上壁部の両側から下方に曲げられて互いに対向する一対の第2側壁部と、前記各第2側壁部の下端部から外側上方に折り返される折り返し片とを有し、
前記アッパーレールは、前記各折り返し片を、前記ロアレールの前記各第1側壁部と前記各内壁部との間に位置させて配設され、
前記アッパーレールの前記各折り返し片が、前記各第2側壁部の下端部から外方斜め上方に延びる第1傾斜片部と、前記第1傾斜片部から内方に曲成させた後、再び外方斜め上方に延びる第2傾斜片部とを有し、
前記第1傾斜片部及び前記第2傾斜片部のそれぞれと、それらに対向する前記ロアレールとの間に転動部材が配設され、かつ、
前記第1傾斜片部と前記第2傾斜片部とは、それぞれの外方への仮想延長線が交差する傾斜角度で形成されている請求項1〜のいずれか1に記載のシートスライドアジャスタ。
【請求項9】
前記仮想延長線の交差角度が5〜15度の範囲である請求項記載のシートスライドアジャスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート、特に、自動車、航空機、列車、船舶、バスなどの乗物用シートにおいて用いられるシートスライドアジャスタに関する。
【背景技術】
【0002】
シートスライドアジャスタは、乗物のフロアに取り付けられるロアレールと、該ロアレールに対して摺動可能に設けられ、シートフレームに連結されるアッパーレールとを備えてなる(特許文献1〜2参照)。シートスライドアジャスタには、ロック機構が設けられており、ロックを解除してロアレールの長手方向に対するアッパーレールの相対位置をスライド調整し、所望の位置でロックして使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−109744号公報
【特許文献2】特開2011−79414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2のロック機構は、ロアレールにおいて、上縁部から下方に折り返した内壁部の下縁に、下方に向かって櫛歯状に突出するロック用歯部を形成し、このロック用歯部に、アッパーレール側に支持されるロックプレートに設けた被係合部(特許文献1では、隣接するロック用歯部間の間隙に挿入される爪から構成され、特許文献2では、ロック用歯部が挿入される孔部から構成されている)を係合させることでロック状態とし、ロックプレートを動作させることで両者の係合を解除するようになっている。
【0005】
これらのロアレールのロック用歯部は、通常、長手方向の左右両側に設けられている。しかし、ロックプレートには、特許文献1及び2に示したように、一方の側縁部付近のみに被係合部が形成され、左右いずれか一方のロック用歯部のみに係合する構造である。このため、ロック時において、ロックプレートとロアレールとの間に働く力が、係合している一方側のロック用歯部に偏り、当該ロック用歯部の耐久性に影響がでたり、ロックプレートのガタつきの原因になったりする場合がある。また、近年、軽量化のため、ロアレールやアッパーレールとして使用する鋼材の厚さを薄くすることも検討されているが、それによりロアレールやアッパーレールが多少なりとも撓みやすくなることで、ロックプレートとロック用歯部とのガタつきがより生じやすくなる可能性もある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、ロック時におけるロックプレートとロアレールとの間に働く力の偏りを抑制し、両者の耐久性の向上につなげることができると共に、ロックプレートのガタつきを抑制し、ロアレール等を従来よりも薄い材料で形成しても、高いガタつきの抑制効果を果たすことができ、軽量化にも貢献できるシートスライドアジャスタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のシートスライドアジャスタは、ロアレールと、前記ロアレールにスライド可能に設けられ、シートを構成するシートフレームが連結されるアッパーレールと、前記アッパーレールを前記ロアレールに対して適宜のスライド位置でロックするロック機構とを有し、前記シートの前後方向の位置調節を行うためのシートスライドアジャスタであって、前記ロアレールが、長手方向の両側に、櫛歯状に下方に向けて突出するロック用歯部を有し、前記ロック機構が、前記ロアレールの長手方向の両側に位置するロック用歯部にそれぞれ対応して2列で形成された前記ロック用歯部に係合する被係合部を備えたロックプレートと、前記アッパーレール側に支持され、前記ロックプレートの被係合部を前記ロック用歯部に係合可能に、前記ロックプレートを弾性支持する弾性支持手段を有するロック機構支持部材とを有することを特徴とする。
【0008】
前記ロック機構が、前記ロックプレートにおける前記アッパーレールの長手方向に沿った長手方向端縁部のそれぞれに隣接する位置に配置され、前記ロック機構支持部材に設けた他の弾性支持手段により弾性支持されていると共に、ロック時において、前記ロックプレートの長手方向端縁部のそれぞれに接触し、前記ロックプレートを内方に押圧するくさび部を有するくさび構造体を備えることが好ましい。
前記ロックプレートの長手方向端縁部のそれぞれに隣接して配設される前記各くさび構造体が、前記アッパーレールの長手方向に直交する方向に所定間隔をおいて複数のくさび部を有し、前記ロックプレートの各長手方向端縁部に所定間隔をおいて複数箇所で接触する構成であることが好ましい。
【0009】
前記ロック機構支持部材は、前記アッパーレール側に固定されるベースプレート部と、前記ベースプレート部から前記アッパーレールの上壁部方向に突出するロックプレート用ガイド軸と、前記ロックプレート用ガイド軸を挟んで所定間隔をおいて1対設けられ、前記ベースプレート部から前記アッパーレールの上壁部方向に突出する突出するくさび用ガイド軸と、前記ロックプレート用ガイド軸に装填され、前記弾性支持手段を構成するロックプレート用スプリングと、前記各くさび用ガイド軸に装填され、前記他の弾性支持手段を構成するくさび用スプリングとを有して構成されることが好ましい。
前記アッパーレールの内側に配設されるアッパーブラケットを備えており、前記ロック機構支持部材の前記ベースプレート部が、前記アッパーブラケットに支持されていることが好ましい。
【0010】
前記アッパーブラケットが断面略コ字状に形成され、その開口側を前記ロアレール側に向けて配設され、前記ロック機構支持部材の前記ベースプレート部が前記開口側に固定され、前記ロックプレート用ガイド軸及び前記各くさび用ガイド軸の上端部が前記アッパーブラケットの上面部に固定されており、前記アッパーブラケット及び前記ベースプレート部により形成される略箱状構造が強度部材を構成していることが好ましい。
前記ロックプレート用スプリングよりも、前記くさび用スプリングの伸長時の最上端位置が高くなるように設定され、前記くさび構造体の各くさび部は、下方に向かうに従って、内方に突出する傾斜面を有し、ロック時において、前記ロックプレートの長手方向端縁部のそれぞれに、前記くさび部の傾斜面の下方寄りの部位が接する構成であることが好ましい。
ロック解除操作部材の操作により下方に変位可能なリリースプレートが、前記ロックプレート及び前記くさび構造体の上側に配設されていることが好ましい。
【0011】
前記ロアレールは、底壁部と、前記底壁部の両側から立ち上がって互いに対向する一対の第1側壁部と、前記各第1側壁部の上縁から互いに内方に曲げられていると共に、対向縁同士が所定間隔離間している一対の上壁部と、前記上壁部の内端縁から下方に曲成された内壁部とを有し、前記内壁部に、櫛歯状に下方に向けて突出する前記ロック用歯部が形成されており、前記アッパーレールは、上壁部と、前記上壁部の両側から下方に曲げられて互いに対向する一対の第2側壁部と、前記各第2側壁部の下端部から外側上方に折り返される折り返し片とを有し、前記アッパーレールは、前記各折り返し片を、前記ロアレールの前記各第1側壁部と前記各内壁部との間に位置させて配設され、前記アッパーレールの前記各折り返し片が、前記各第2側壁部の下端部から外方斜め上方に延びる第1傾斜片部と、前記第1傾斜片部から内方に曲成させた後、再び外方斜め上方に延びる第2傾斜片部とを有し、前記第1傾斜片部及び前記第2傾斜片部のそれぞれと、それらに対向する前記ロアレールとの間に転動部材が配設され、かつ、前記第1傾斜片部と前記第2傾斜片部とは、それぞれの外方への仮想延長線が交差する傾斜角度で形成されていることが好ましい。
前記仮想延長線の交差角度が5〜15度の範囲であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシートスライドアジャスタは、ロック機構を構成するロックプレートに長手方向に直交する方向に所定間隔をおいて2列に被係合部が設けられ、ロック時において、ロアレールの両側のロック用歯部に係合する構造である。従って、ロックプレートとロアレールとの間に働く力が、両側のロック用歯部にバランスよく作用し、いずれかに偏ることがないため、それらを構成する部材の耐久性の向上を図ることができる。また、ロックプレートの2列の被係合部が係合するため、ロックプレートのガタつきも生じにくい。
【0013】
また、ロックプレートにおけるアッパーレールの長手方向に沿った長手方向端縁部のそれぞれに作用するくさび部を有するくさび構造体を設けた構成とすることにより、ロック時において、ロックプレートを内方に押圧する力を作用させ、ロックプレートのガタつきをさらに抑制することができる。従って、本発明は、ロアレールの両側のロック用歯部にバランスよく力が作用し、かつ、ロックプレートのガタつきが生じにくい構成であるため、ロアレール等を従来より薄い材料から構成した場合でもガタつき等の抑制効果が高く、シートスライドアジャスタの軽量化に適した構造である。
【0014】
また、本発明におけるロック機構では、ロックプレートを弾性支持していることを特徴とする。すなわち、ロックプレートは、いずれの方向にも若干揺動することができるいわば半浮動の状態で支持されているため、両側のロック用歯部と係合するものでありながら、ロック解除時に両者間に位置ずれがあっても速やかに係合される。さらに、ロックプレートがこのように弾性支持されているため、外力が作用した場合のロックプレート及びロック用歯部に付与される力を弾性支持手段により吸収でき、ロックプレート及びロック用歯部の損傷を抑制することができる。また、くさび構造体も弾性支持手段によって弾性支持することにより、ロックプレートのガタつきを抑制するように保持する機能を発揮しつつ、さらに、くさび構造体の弾性支持手段の弾性によって、外力を吸収できる。ロックプレートは、ロック用歯部と係合する第1のロック手段であるが、くさび構造体は、そのロックプレートを保持してロック用歯部との係合状態を維持するものであり、いわば第2のロック手段として機能する。すなわち、本発明におけるロック機構は、弾性支持により、衝撃を吸収しつつ、2段階のロック手段を機能させ、ロック用歯部への確実なロック機能も果たすことができ、耐久性及びロック作用共に優れた性能を発揮できる。
【0015】
また、ロアレールを、一対の第1側壁部と、第1側壁部の上縁から互いに内方に曲げられている一対の上壁部と、各上壁部の内端縁から下方に曲成された内壁部とを有する構造として、アッパーレールにおいては、一対の第2側壁部の下端部から外側上方に折り返した折り返し片を設け、各折り返し片を、ロアレールの各第1側壁部と各内壁部との間に位置させ、各折り返し片に、外方斜め上方に延びる2つの傾斜片部を設け、2つの傾斜片部とロアレールを構成する壁部との間に、転動部材を配設することが好ましい。そして、2つの傾斜片部は、それぞれを外方に延ばした仮想延長線が所定の角度で交差するような傾斜角度で形成することが好ましい。これにより、アッパーレールの断面方向いずれに力が作用しても、転動部材が各傾斜片部とそれに対向するロアレールの壁部との間でくさび作用を果たすことになるため、アッパーレールのねじり剛性を高めることができ、耐久性、ガタつきの抑制効果等をさらに高め、より薄い材料を用いることが可能となり、さらなる軽量化に資する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)は、本発明の一の実施形態に係るシートスライドアジャスタを示す平面図であり、図1(b)は、側面図であり、図1(c)は、分解斜視図である。
図2図2は、図1のシートスライドアジャスタを後端側から見た背面図である。
図3図3は、要部の分解斜視図である。
図4図4(a)は、断面図の切断位置を示すための背面図であり、図4(b)は、図4(a)のA−A線断面図である。
図5図5(a)は、断面図の切断位置を示すための背面図であり、図5(b)は、図5(a)のB−B線断面図である。
図6図6は、図5(a)のC−C線断面図である。
図7図7(a)は、断面図の切断位置を示すための背面図であり、図7(b)は、図7(a)のD−D線断面図である。
図8図8は、アッパーレールの折り返し片に設けた第1傾斜片部と第2傾斜片部の作用を説明するための図である。
図9図9(a)〜(d)は、ロック状態からロックを解除するまでの作用を説明するための図である。
図10図10(a)〜(c)は、ロック解除状態からロックするまでの作用を説明するための図である。
図11図11(a)〜(f)は、ロック用歯部に対してロックプレートの孔部が滑りながら係合する場合のロック解除状態からロックまでの作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に示した実施形態に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。図1図3に示したように、シートスライドアジャスタ10は、ロアレール11、アッパーレール12及びロック機構15等を有して構成される。シートスライドアジャスタ10は、車体の幅方向に所定間隔をおいて一対配設される。各ロアレール11は車体フロアに固定され、各アッパーレール12にシートの各サイドフレームが連結される。
【0018】
ロアレール11は、底壁部11aと、底壁部11aの両側から立ち上がって互いに対向する一対の側壁部(第1側壁部)11b,11bと、各第1側壁部11b,11bの上縁から互いに内方に曲げられていると共に、対向縁同士が所定間隔離間している一対の上壁部11c,11cと、上壁部11c,11cの内端縁から下方に曲成された内壁部11d,11dを有し、長手方向に直交する幅方向断面で上面開口の略コ字状に形成されている。そして、2つの内壁部11d,11dの各下縁部には、櫛歯状に下方に向けて突出するロック用歯部11e,11eが形成されている。
【0019】
アッパーレール12は、上壁部12aと、上壁部12aの両側から下方に曲げられて互いに対向する一対の側壁部(第2側壁部)12b,12bとを有する、幅方向断面が下面開口の略コ字状に形成されている。また、各第2側壁部12b,12bの下端部から外側上方に折り返される折り返し片12c,12cを有している。そして、アッパーレール12は、各折り返し片12c,12cを、ロアレール11の各側壁部11b,11bに対向するように、該各側壁部11b,11bと各内壁部11d,11dとの間に位置させて配設される(図2参照)。
【0020】
ロアレール11とアッパーレール12との間には、図2及び図8に示したように、転動部材としてのボール14a〜14dが介在され、車体フロアに固定されるロアレール11に対してアッパーレール12が長手方向にスライド可能に設けられる。
【0021】
より詳しくは、図8に示したように、アッパーレール12の各折り返し片12c,12cは、各第2側壁部12b,12bの下端部から外方斜上方に延びる第1傾斜片部12c1と、第1傾斜片部12c1から内方に曲成させた後、再び外方斜上方に延びる第2傾斜片部12c2とを有している。第1傾斜片部12c1及び第2傾斜片部12c2は、それぞれと、それらに対向する前記ロアレールとの間に転動部材が配設され、かつ、それぞれの外方への仮想延長線が交差する傾斜角度で形成されていることが好ましく、両者の交差角度θは、好ましくは5〜15度の範囲である。
【0022】
各第1傾斜片部12c1,12c1は、ロアレール11における底壁部11aと各第1側壁部11b,11bとの境界に位置する湾曲部に対向するように配置され、その間に2つのボール14c,14dが配設される。各第2傾斜片部12c2,12c2は、ロアレール11における各上壁部11c,11cと各内壁部11d,11dとの境界に位置する湾曲部に対向するように配置され、その間に2つのボール14a,14bが配設される。従って、アッパーレール12が図8に示した矢印のように断面方向にねじられた場合は、一方向にねじられると、一方側の第1傾斜片部12c1が外方に変位しようとするため、下方寄りに位置する一方側のボール14cが、一方側の第1傾斜片部12c1と、それに対向する底壁部11a及び一方側の第1壁部11bの境界部との間で、間隙が狭くなる方向に相対的に変位しようとして、くさび作用を果たす。このとき、一方側の第2傾斜片部12c2と、それに対向する一方側の上壁部11c及び内壁部11dとの間の上方側に位置する一方のボール14aも、両者の間隙が狭くなる方向に相対的に変位しようとしてくさび作用を果たす。アッパーレール12が逆方向にねじられると、上記と逆に、下方寄りに位置する他方側のボール14dは、他方側の第1傾斜片部12c1と、それに対向する底壁部11a及び他方側の第1壁部11bの境界部との間で、間隙が狭くなる方向に相対的に変位しようとし、同じく、上方寄りに位置する他方側のボール14bは、他方側の第2傾斜片部12c2と、それに対向する他方側の上壁部11c及び内壁部11dとの間で両者の間隙が狭くなる方向に相対的に変位しようとして、いずれもくさび作用を果たす。
これにより、アッパーレール12のねじり剛性が向上し、アッパーレール12としてより薄い材料を選択することも可能となり、軽量化に貢献できる。
【0023】
次に、本実施形態のシートスライドアジャスタ10に用いられるロック機構15について説明する。このロック機構15は、図1(c)及び図3に示したように、ロックプレート151、ロック機構支持部材152、くさび構造体153,153、リリースプレート154、ロック解除操作部材155等を有して構成され、アッパーブラケット120によって支持される。
【0024】
アッパーブラケット120は、上面部121と、その幅方向各側縁から下方に折り曲げられた一対の側面部122,122を有する幅方向断面で略コ字状に形成され、開口側をロアレール11側に向けて、前記アッパーレール12の内側において、適宜部位をアッパーレール12の上壁部12a、各側壁部12b,12bに溶接等により、好ましくはレーザー溶接により固定される。
【0025】
アッパーブラケット120の各側面部122,122の適宜位置には、窓部122a,122aが貫通形成されており、アッパーレール12の各側壁部12b,12bにも、対応する位置に窓部12b1,12b1が貫通形成されている。ロックプレート151は、平面視で略四角形に形成され、対向する一対の側縁部151a,151aが、いずれも、各側縁部151a,151aに対応するこれらの窓部122a,12b1から外方に突出するように配設される(図2図3参照)。各側縁部151a,151aには、ロアレール11及びアッパーレール12の長手方向に沿って、それぞれ複数の孔部151b,151bが形成されている。この長手方向に隣接する孔部151b,151b間の間隔は、ロアレール11の長手方向に隣接するロック用歯部11e,11e間の間隔と同じになるように形成されると共に、各孔部151b,151bは、ロック用歯部11e,11eが挿入し得る大きさで形成される(図4図7参照)。この孔部151b,151bが、ロック用歯部11e,11eに係合する被係合部となる。
【0026】
なお、ロアレール11に形成されるロック用歯部11e,11eは、図4(b)、図 5(b)、図6及び図7(b)に示したように、下方に向かうほど幅が狭くなる(図4(b)に示した歯元の幅D1よりも歯先の幅D2が狭くなる)テーパ状に形成されていることが好ましい。これにより、ロックプレート151の孔部151b,151b内に、各ロック用歯部11e,11eがロック時において挿入されやすくなる。また、ロック用歯部11e,11eは、このようにその歯先は孔部151b,151bよりも幅が狭い方が侵入しやすいため好ましいが、歯元付近は、孔部151b,151bよりも幅が広くなっていることが好ましい。図4及び図5に示したロック時においてロック用歯部11e,11eと孔部15b,15bとの隙間がなくなり、ガタつきも抑制できる。
【0027】
ロック機構支持部材152は、ベースプレート部152eと、該ベースプレート部152eからアッパーブラケット120の上面部121方向(アッパーレール12の上壁部12a方向)に突出するロックプレート用ガイド軸152aと、アッパーレール12の長手方向に沿って所定間隔をおいて該ロックプレート用ガイド軸152aを挟んで一対設けられ、前記ロックプレート用ガイド軸152aと同方向(アッパーレール12の上壁部12a方向)に突出するくさび用ガイド軸152b,152bを有して構成されている。
【0028】
そして、ロックプレート151、くさび構造体153、リリースプレート154及びロック解除操作部材155を、アッパーブラケット120の上面部121との間に位置させて、ベースプレート部152eがアッパーブラケット120の各側面部122,122の下部付近に溶接等により、好ましくはレーザー溶接により固定される。このような構成とすることにより、すなわち、ベースプレート部152eを設け、ロックプレート用ガイド軸152a及びくさび用ガイド軸152b,152bをこのベースプレート部152eに支持させてアッパーブラケット120に固定することにより、アッパーレール12に各ガイド軸152a,152b等を直接支持させる場合と比較して、それらを支持するための加工穴等を形成したりする必要がなく、アッパーレール12の強度低下をもたらすことがない。また、断面略コ字状のアッパーブラケット120とベースプレート部152eとが一体化される結果、断面略箱状構造となり、外力に対する強度部材として機能する。また、ベースプレート部152eに突設されるロックプレート用ガイド軸152a及びくさび用ガイド軸152b,152bの上端をアッパーブラケット120の上面部121に溶接等により、好ましくはレーザー溶接によって一体化することで、これらが支柱となって、高い強度を発揮する部位となる。そして、ロックプレート151、くさび構造体153、リリースプレート154及びロック解除操作部材155といったロック機構15における可動部が、この断面略箱状構造内に収容されているため、外力等によるそれらの損傷防止機能も高い。
【0029】
ロックプレート151は、ロックプレート用ガイド軸152aを、該ロックプレート151の中心に貫通形成したガイド孔151cに挿通するようにして配設される。また、ロックプレート用ガイド軸152aには、ロックプレート151をアッパーブラケット120の上面部121方向にすなわち上方に付勢するように弾性支持する弾性支持手段であるロックプレート用スプリング152cが装填されている。但し、ロックプレート151のアッパーレール12の長手方向に沿った長さは、1対のくさび用ガイド軸152b,152bには接触しない程度となっている(図3及び図6参照))。また、くさび用ガイド軸152b,152bには、後述するくさび構造体153,153を同じく上方に付勢するように弾性支持する他の弾性支持手段としてのくさび用スプリング152d,152dが装填されている。
【0030】
くさび構造体153,153は、くさび用ガイド軸152b,152bが挿通される挿通孔153a,153aを備えた支持プレート部153b,153bと、該支持プレート部153b,153bを挟んで、アッパーブラケット120の各側面部122,122方向に向かってやや突出して下方に延びるくさび部153c,153cを備えている。くさび部153c,153cは、側面から見て、下方に向かって内方(ロックプレート151に近接する方向)にせり出す傾斜面153d,153dを有している。より具体的には、この傾斜面153d,153d間の距離のうち、最も短い下方寄りの部位間では、ロックプレート151におけるアッパーレール12の長手方向に沿った端縁部(以下、長手方向端縁部)151d,151d間の長さよりも短く形成されている(図4(b)、図5(b)及び図7(b)参照)。従って、ロックプレート151の長手方向端縁部151d,151dに対するくさび部153c,153cの傾斜面153d,153dの接触位置が相対的に下方になると、ロックプレート151の長手方向端縁部151d,151dを側面から見て両側から内方に押圧するくさび作用を発揮する。なお、くさび部153c,153cにおけるアッパーフレーム12の長手方向に沿った外端面153e,153eは、図5(b)及び図6に示したように、アッパーブラケット120の窓部122aの窓枠部に当接して、拡開方向への動きが規制されている。
【0031】
くさび構造体153は、挿通孔153a,153aがくさび用ガイド軸152b,152bに挿通され、くさび用スプリング152d,152dによって上方に付勢されるが、くさび構造体153,153に上記のようなくさび作用を発揮させるため、くさび用スプリング152d,152dは、ロックプレート用スプリング152cよりも伸長時の最上端位置が上方になるように設定されている(図7(b)及び図9図11参照)。これにより、くさび構造体153,153は、ロックプレート151よりも、最下端位置から最上端位置までの変位量が大きくなる。
【0032】
リリースプレート154は、中央挿通孔154aと、該中央挿通孔154aからアッパーレール12の長手方向に沿った方向の所定距離離間した位置に設けられた端部挿通孔154b,154bを有している。リリースプレート154は、ロックプレート151及びくさび構造体153,153の上側であるアッパーブラケット120の上面部121側に配置され、中央挿通孔154aは、ロックプレート151のガイド孔151cに挿通されたロックプレート用ガイド軸152aが挿通され、端部挿通孔154b,154bには、くさび構造体153,153の挿通孔153a,153aを貫通したくさび用ガイド軸152b,152bが挿通される。
【0033】
また、くさび用スプリング152d,152dの伸長時の最上端位置をロックプレート用スプリング152cの伸長時の最上端位置よりも高くするために、リリースプレート154は、ロックプレート用スプリング152cが最も伸長した後、さらに、くさび用スプリング152d,152dによって、ロックプレート151から離間して上方に変位できるように(図9(a)及び図10(c)の状態)、リリースプレート154及び後述のロック解除操作部材155と、アッパーブラケット120の上面部121との隙間の大きさが設定される。
【0034】
ロック解除操作部材155は、所定の長さを有し、アッパーレール12の内側に配設される(図1図3参照)。ロック解除操作部材155は、その前端部155aがアッパーレール12の前端から突出し、この前端部155aに把持部(図示せず)が連結されて、操作者が上下に操作できるようになっている。ロック解除操作部材155は、長手方向中途部を中心として、前端部155aが上下に変位すると、後端部155bが逆方向に変位する。そのため、後端部155bによって、リリースプレート154が下方に押圧されるように設けられている。本実施形態では、図3及び図7(b)に示したように、リリースプレート154とアッパーブラケット120の上面部121との間に後端部155bを配置し、リリースプレート154を後端部155bが下方に押圧できるようになっている。すなわち、後端部155bに、リリースプレート154の前端寄りの端部挿通孔154bと中央挿通孔154aに対応する貫通孔155c,155dが形成されており、この貫通孔155c,155dに一方のくさび用ガイド軸152bとロックプレート用ガイド軸152aがそれぞれ挿通される。従って、後端部155bがこれらのガイド軸152a,152bに沿って下方に変位すると、リリースプレート154を下方に押圧することができる。但し、リリースプレート154を下方に付勢できる限り、両者の連係の仕方は限定されるものではない。
【0035】
なお、ロック解除操作部材155は、上記のように動作するため、長手方向中途部に設けた凸部155eが、アッパーブラケット120の前端部の側面部122,122間に軸支されるように設けられる。このようにして各部材を配置した後、ロックプレート用ガイド軸152a、くさび用ガイド軸152b,152bの各上端面は、上記のように、アッパーブラケット120の上面部121に溶接等により固定される。
【0036】
次に、本実施形態に係るシートスライドアジャスタ10の作用を説明する。まず、ロック状態においては、図4(b)、図5(b)、図7(b)及び図9(a)に示したように、ロアレール11の長手方向両側に形成されたロック用歯部11e,11eに、ロックプレート151の各側縁部151a,151aに形成された孔部151b,151bが係合している。すなわち、ロックプレート151の一方の側縁部151aの孔部151bのみがロアレール11の一方の列のロック用歯部11eに係合しているのではなく、両方の側縁部151a,151aに形成された孔部151b,151bが、ロアレール11の左右両方の列のロック用歯部11e,11eに係合している。従って、ロック時おいて、アッパーレール12又はロアレール11を通じて力が加わった場合、いずれか一方で偏って支えるのではなく、両方の列のロック用歯部11e,11eとロックプレート151の両方の側縁部151a,151aの孔部151b,151bとの係合によって支えられるため、バランスのよい支持ができ、アッパーレール12やロアレール11に繰り返し入力される荷重の分散性に優れ、従来と比較してロック用歯部11e,11eやロックプレート151等の耐久性の向上を図ることができる。また、ロックプレート151のガタつきも、片側のみが係合している従来の構造と比較して抑制できる。
【0037】
さらに、ロック時においては、くさび用スプリング152d,152dによって、リリースプレート154がロックプレート151から所定の距離離間する程度、くさび構造体153,153の位置は上昇しているため、ロックプレート151の長手方向端縁部151d,151dに対し、くさび構造体153,153のくさび部153c,153cの傾斜面153d,153dの接触位置が相対的に下方寄りになっている。それにより、ロックプレート151の長手方向端縁部151d,151dを側面から見て内方に押圧するくさび作用を発揮し、ロックプレート151のガタつきがさらに抑制される。また、くさび構造体153,153は、くさび部153c,153cをそれぞれ複数、本実施形態では2つずつ有し、計4つのくさび部153c,153cが長手方向及び幅方向に所定間隔をおいて作用する。そのため、ロックプレート151の回転方向の動きも抑制でき、ガタつきの抑制効果が極めて高い。
【0038】
また、ロックプレート151がロックプレート用スプリング152cによって弾性支持されていると共に、くさび構造体153,153がくさび用スプリング152d,152dによって弾性支持されている。従って、外力が作用した場合のロックプレート151の孔部151b,151b及びロック用歯部11e,11eに作用する力をロックプレート用スプリング152c及びくさび用スプリング152d,152dにより吸収できる。すなわち、外力が作用してもロックプレート151が若干揺動ないしはきしむような動きをするだけで、噛み合っている部材間、すなわちロックプレート151の孔部151b,151b及びロック用歯部11e,11e間での損傷を抑制できる。また、ロック時においては、上記のように、ロックプレート151の孔部151b,151b及びロック用歯部11e,11e間でロックが機能し、さらに、ロックプレート151とくさび構造体153との間でロックが機能するという2段階でロックが機能するため、高いロック機能を発揮することができる。
【0039】
ロック状態からロック解除する場合には、まず、ロック解除操作部材155の前端部155aを上方に動作させる。これにより、後端部155bが相対的に下方に下がる。後端部155bが下方に変位すると、リリースプレート154を下方に押圧する。ロック時においては、くさび用スプリング152d,152dによって、リリースプレート154がロックプレート151から離間しており(図9(a)の状態)、リリースプレート154が下方に押圧された際には、まず、くさび構造体153,153をくさび用スプリング152d,152dの弾性力に抗して下方に押圧する。それにより、図9(b)に示したように、くさび部153c,153cの傾斜面153d,153dの接触位置が、ロックプレート151の長手方向端縁部151d,151dに対して相対的に上方寄りとなり、くさび効果は弱まっていく。リリースプレート154がさらに下方に低下して、ロックプレート151に当接すると、図9(c)に示したように、リリースプレート154は、くさび構造体153,153と共に、ロックプレート151も、ロックプレート用スプリング152cの弾性力に抗して下方に変位する。所定量下方に変位し、ロックプレート151の孔部151b,151bが、ロアレール11のロック用歯部11e,11eの歯先より離脱すると、図9(d)に示したロック解除状態となる。これにより、アッパーレール12をロアレール11に対して相対的に前後に移動して位置調整を行う。
【0040】
所定の位置調整を行ったならば、ロック解除操作部材155の前端部155aを上方に動作させていた力を解除する。ロック解除操作部材155の後端部155bを相対的に下方に下げていた力がなくなるため、ロックプレート用スプリング152c及びくさび用スプリング152d,152dの弾性力によって、ロックプレート151及びくさび構造体153,153が、ロックプレート用ガイド軸152a、くさび用ガイド軸152b,152bに沿って上昇する。これにより、図10(a)のロック解除状態から、図10(b)に示したように、ロックプレート151の孔部151b,151bに、ロアレール11のロック用歯部11e,11eがその歯先より挿入され、ロックされる。くさび用スプリング152d,152dは、ロックプレート用スプリング152cよりも上方まで伸長するため、ロックプレート用スプリング152cが最も伸長した後も、くさび構造体153,153はリリースプレート154と共に上方に変位する。それにより、図10(c)に示したように、くさび部153c,153cの傾斜面153d,153dの下方寄りの部位で、ロックプレート151の長手方向端縁部151d,151dが接触し、くさび効果が発揮され、上記のようにロックプレート151のガタつきが抑制される。
【0041】
次に、ロック解除時からロックする際に、ロックプレート151の孔部151b,151bと、ロアレール11のロック用歯部11e,11eとの位置関係にずれがある場合の作用について説明する。上記のように、ロックプレート151はロックプレート用スプリング152cによって弾性支持されていると共に、ロック用歯部11e,11eは歯先の幅(D2)が狭くなるように形成され、孔部151b,151bの幅よりも若干狭い。また、ロックプレート151は、ガイド孔151cが1つで、それにロックプレート用ガイド軸152aが挿通されているだけである。そのため、ロックプレート151は、いずれかの方向に僅かながら揺動可能になっている。従って、ロックプレート151の孔部151b,151bと、ロアレール11のロック用歯部11e,11eとの位置関係にずれがある場合には、ロックプレート151が若干横方向等に変位してから孔部151b,151bにロック用歯部11e,11eが挿入されることになる。よって、この場合には、図11(a)のロック解除状態から、図11(b)に示したように、ロックプレート151が横方向等に変位している間は、くさび用スプリング152d,152dによってくさび構造体153,153がリリースプレート154と共に先に上昇する。この際、くさび部153c,153cの傾斜面153d,153dの下方寄りの部位が内方に膨出しているため、ロックプレート151の長手方向端縁部151d,151dにその部位が接触するまで上昇する。その後、ロックプレート151の孔部151b,151bがロック用歯部11e,11eに合致すると、図11(c)に示したように、ロックプレート151がロックプレート用スプリング152cの弾性力によって、リリースプレート154に当接するまで上昇する。このように、ロックプレート151の上昇動作に遅れが生じる場合でも、くさび構造体153のくさび部153c,153cの傾斜面153d,153dに接して規制されながら動作するため、ロックプレート151は安定して上昇動作する。
【0042】
その後は、上記と同様に、ロックプレート151、くさび構造体153,153、リリースプレート154が一緒に上昇し(図11(d),(e)参照)、さらに、ロックプレート用スプリング152cが最も伸長した後は、図11(f)に示したように、くさび構造体153,153とリリースプレート154がさらに上方に変位し、くさび効果が作用する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のシートスライドアジャスタは、上記実施形態で説明したように、観覧席用のシート等でも適用可能であるが、前後調整の頻度の高い自動車、航空機、列車、船舶、バスなどの各種の乗物用シートにおいて特に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0044】
10 シートスライドアジャスタ
11 ロアレール
12 アッパーレール
12a 上壁部
12b 側壁部
120 アッパーブラケット
121 上面部
122 側面部
15 ロック機構
151 ロックプレート
151b 孔部
151d 長手方向端縁部
152 ロック機構支持部材
152a ロックプレート用ガイド軸
152b くさび用ガイド軸
152c ロックプレート用スプリング
152d くさび用スプリング
153 くさび構造体
153c くさび部
153d 傾斜面
154 リリースプレート
155 ロック解除操作部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11