(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記限定部は、前記計測部の計測方向を変更する変更部を備え、前記変更部を用いて前記計測部の計測方向を前記予測接近位置に向けることで前記計測範囲を限定する請求項1又は2に記載の建設機械の干渉防止装置。
前記作業装置は、前記運転室に対して揺動可能に取り付けられたブームと、前記ブームに対して揺動可能に取り付けられたアームと、前記アームに対して揺動可能に取り付けられたアタッチメントとを備え、
前記取得部は、前記ブーム、前記アーム、及び前記アタッチメントの回動角の少なくとも1つを前記姿勢情報として取得する請求項1〜11のいずれか1項に記載の建設機械の干渉防止装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、複数の超音波センサを同時に放射すると、超音波センサ同士が干渉し合うので、障害物の距離を正確に検知できないという問題がある。そこで、複数の超音波センサから超音波を時分割で放射させて障害物の距離を計測することが考えられる。しかし、超音波は光のように高速ではないので、複数の超音波センサの1フレームあたりの計測時間が長くなるという問題がある。
【0008】
これに対して、ステレオ画像や赤外線画像を使って画素単位で障害物の距離を計測する距離センサが公知である。そこで、これらの距離センサを用いて障害物の干渉の有無を検知することも考えられる。
【0009】
しかし、このような距離センサでは最接近ポイントの探索処理や、測距精度を上げるためのフィルタ処理といった画像処理が必要となるので、処理負荷が大きく、処理時間がかかるという問題がある。
【0010】
また、干渉危険領域の一部の領域にしか存在していない障害物の接近を判断するために、距離センサを用いて干渉危険領域の全域を常に監視することは無駄であり、処理時間を短縮する上で更なる改善の余地がある。
【0011】
本発明の目的は、障害物の干渉危険領域への干渉の有無を短時間で検知できる建設機械の干渉防止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様による建設機械の干渉防止装置は、姿勢が変更可能な作業装置と運転室とを備える建設機械の干渉防止装置であって、
前記運転室の前面に取り付けられ、自身から前記運転室の前方に位置する物体までの距離を計測する計測部と、
前記計測部によって計測された距離を用いて、前記作業装置又は前記作業装置の把持物である障害物による前記運転室への干渉の危険性を判定する干渉判定部と、
前記干渉判定部により前記干渉の危険性が有ると判定された場合、乗車者へ警告及び前記建設機械の動作制限の少なくとも一方を行う干渉防止部と、
前記作業装置の姿勢を示す姿勢情報を取得する取得部と、
前記姿勢情報を用いて、前記運転室から前記障害物までのの接近位置を予測する予測部と、
前記予測部により予測された予測接近位置に従って前記計測部による計測範囲を限定する限定部とを備え、
前記干渉判定部は、前記限定部により限定された計測範囲において前記計測された前記物体の距離を用いて、前記干渉の危険性を判定する。
【0013】
作業装置の姿勢が分かれば、その姿勢から作業装置又は作業装置の把持物である障害物の位置をある程度予想できる。本構成では、作業装置の姿勢を示す姿勢情報を用いて、運転室から障害物までの接近位置が予測され、予測された予測接近位置に従って計測部による計測範囲が限定されている。そのため、無駄な計測動作を省くことができ、障害物の干渉危険領域への干渉の有無を短時間で検知できる。更に、限定された計測範囲に処理範囲が絞られているので、検知精度を高めることができると同時に消費電力の抑制も可能となる。
【0014】
上記態様において、前記計測部は複数の計測センサを備え、
前記限定部は、前記複数の計測センサの中から前記予測接近位置が計測可能な計測センサを選択することで前記計測範囲を限定してもよい。
【0015】
干渉危険領域の全域をカバーするために、計測部を複数の計測センサで構成した場合、これらの計測センサが同時に距離計測を行うと、計測波同士が干渉し、計測精度が悪化することがある。特に、赤外線を照射し反射光を受光する計測センサで複数の計測センサを構成した場合、赤外線同士の干渉が問題となる。本態様では、複数の計測センサの中から予測接近位置が計測可能な計測センサを選択することで計測範囲が限定されている。よって、障害物の検知に最も有効な計測センサを選択することができ、計測精度の増大及び消費電力の削減を図ることができる。
【0016】
上記態様において、前記限定部は、前記計測部の計測方向を変更する変更部を備え、前記変更部を用いて前記計測部の計測方向を前記予測接近位置に向けることで前記計測範囲を限定してもよい。
【0017】
本態様では、予測接近位置に向けて計測部の計測方向を変更することで計測範囲が限定されているので、複数の計測部を設けなくても、予測接近位置付近の物体を計測部に計測させることができる。なお、計測部の計測方向の変更は、例えばアクチュエータを用いることで容易に実現できる。
【0018】
上記態様において、前記計測部は、カメラを備え、
前記限定部は、前記カメラが取得する画像を示すデータから、前記予測接近位置を含む領域を抽出することで前記計測範囲を限定してもよい。
【0019】
本態様では、カメラが取得する画像を示すデータから、予測接近位置を含む領域を抽出することで計測範囲が限定されているので、処理対象が絞られ、処理時間を短縮できる。
【0020】
上記態様において、前記計測部は、赤外線を照射する光源と、前記赤外線の反射光を受光するカメラとを備える距離センサで構成されてもよい。
【0021】
赤外線を照射する光源と、赤外線の反射光を受光するカメラとを備える距離センサは、近年、コンシューマゲーム向けの入力インターフェースとして実用化が進んでおり、信頼性が高い。本態様ではこのような距離センサが採用されているので、信頼性の高い距離計測を実現できる。
【0022】
上記態様において、前記計測部はステレオカメラを備える距離センサで構成されてもよい。
【0023】
ステレオカメラを備える距離センサは、近年、車載用途などで実用化が進んでおり、信頼性が高い。本態様では、このような距離センサが採用されているので、信頼性の高い距離計測を実現できる。
【0024】
上記態様において、前記計測部は、前記運転室の近傍に予め設定された干渉危険領域の全域が計測可能となるように前記運転室に設置された複数の距離センサを備え、
前記干渉判定部は、前記限定部により限定された計測範囲において、前記複数の距離センサが計測した距離を用いて前記干渉の危険性を判定してもよい。
【0025】
運転室前面は広い領域であり、更に運転室の上面まで干渉危険領域と考えると、超音波センサやミリ波センサ等の計測範囲の狭い距離センサを1つ設けただけでは干渉危険領域の全域をカバーしきれない。本態様では、運転室の近傍に予め設定された干渉危険領域の全域が計測可能となるように運転室に複数の距離センサが設置されている。そのため、複数の距離センサは死角無く干渉危険領域の全域を計測できる。また、本態様では、限定部により限定された計測範囲において、複数の距離センサが計測した距離を用いて干渉の危険性が判定されている。そのため、無駄な計測動作を省くことができ、障害物の干渉危険領域への干渉の有無を短時間で検知できる。更に、限定された計測範囲に処理範囲が絞られているので、検知精度を高めることができると同時に消費電力の抑制も可能となる。
【0026】
上記態様において、前記限定部は、前記複数の距離センサの中から前記予測接近位置が計測可能な1以上の距離センサを選択することで前記計測範囲を限定し、
前記干渉判定部は、前記選択された1以上の距離センサが計測した距離を用いて前記干渉の危険性を判定してもよい。
【0027】
本態様では、複数の計測センサの中から予測接近位置が計測可能な計測センサを選択することで計測範囲が限定されている。よって、障害物の検知に最も有効な計測センサを選択することができ、計測精度の増大及び消費電力の削減を図ることができる。
【0028】
上記態様において、前記限定部は、前記複数の距離センサの全体の指向性が前記予測接近位置を向くように前記複数の距離センサのそれぞれから放射される計測波の位相を制御することで前記計測範囲を限定してもよい。
【0029】
本態様では、複数の距離センサのそれぞれから放射される計測波の位相を制御することで、複数の距離センサの全体の指向性を任意の方向に設定可能となる。そのため、少ない距離センサで干渉危険領域の全域を計測できる。更に、予測接近位置を向くように複数の距離センサのそれぞれから放射される計測波の位相を制御することで、干渉危険領域への障害物の干渉の有無をピンポイントで判定でき、処理の高速化を図ることができる。
【0030】
上記態様において、前記複数の距離センサは、2次元のアレイ状に配置されてもよい。
【0031】
本態様では、複数の距離センサは2次元のアレイ状に配置されているので、複数の距離センサの全体の指向性を縦方向と横方向とを組み合わせた任意の方向に向けることが可能となり、運転室の前面や上部などに設定された2次元の干渉危険領域の全域をカバーできる。
【0032】
上記態様において、前記干渉判定部は、前記限定部により限定された計測範囲において、前記複数の距離センサが計測した距離のうちの最小距離を用いて前記干渉の危険性を判定してもよい。
【0033】
この構成によれば、限定部により限定された計測範囲において、複数の距離センサが計測した距離のうちの最小距離を用いて干渉の危険性が判定されているので、障害物の最接近位置が干渉危険領域に侵入したか否かを正確に判定できる。
【0034】
上記態様において、前記複数の距離センサは、前記運転室の前面及び上面のうちの少なくとも一方に設置された格子状の部材上に配置された超音波センサで構成されてもよい。
【0035】
一般的に超音波センサでは超音波が放射方向を中心に同心円状に広がるため、超音波センサ同士を近接させると、超音波同士が干渉してしまう。そこで、干渉危険領域の全域をカバーするためには超音波センサ同士をある一定の距離以上確保して配置する必要がある。本態様では、複数の超音波センサは運転室の前面及び上面のうちの少なくとも一方に配置された格子状の部材上に配置されているので、一定以上確保して超音波センサ同士を配置できる。
【0036】
前記格子状の部材は、フロントガード及びヘッドガードの少なくともいずれか一方であってもよい。
【0037】
鉄骨切断機、コンクリート圧砕機、解体用つかみ機などの建設機械では、安全確保のため防護設備として運転室前面を防護するためのフロントガードや運転席上面を防護するためのヘッドガードが備えられている。これらの部材を利用して超音波センサをフロントガード、ヘッドガード上に格子状に配置することにより、超音波センサを取り付けるために専用の部材を設けることが不要となり、オペレータの視界が防護設備以上に悪化されることがなくなる。
【0038】
上記態様において、前記作業装置は、前記運転室に対して揺動可能に取り付けられたブームと、前記ブームに対して揺動可能に取り付けられたアームと、前記アームに対して揺動可能に取り付けられたアタッチメントとを備え、
前記取得部は、前記ブーム、前記アーム、及び前記アタッチメントの回動角の少なくとも1つを前記姿勢情報として取得してもよい。
【0039】
ブーム、アーム、及びアタッチメントの回動角の少なくとも1つが分かれば、障害物の位置をある程度予測できる。本態様では、これらの回動角が姿勢情報として取得されているので、予測接近位置をある程度の精度で予測できる。
【0040】
上記態様において、前記予測部は、前記アームの先端又は前記アタッチメントの先端と前記運転室との距離を前記接近位置として予測してもよい。
【0041】
アームの先端又はアタッチメントの先端の位置が分かれば、運転室に最も近い障害物の位置(最接近位置)をある程度予測できる。本態様では、アームの先端又はアタッチメントの先端と運転室との距離が接近位置として予測されているので、最接近位置を厳密に予測する場合に比べて、処理負荷を軽減しつつ、最接近位置をある程度正確に検知できる。
【発明の効果】
【0042】
本発明では、作業装置の姿勢を示す姿勢情報を用いて、障害物の運転室への接近位置が予測され、予測された予測接近位置に従って計測部による計測範囲が限定されている。そのため、無駄な計測動作を省くことができ、障害物の干渉危険領域への干渉の有無を短時間で検知できる。更に、限定された計測範囲に処理範囲が絞られているので、検知精度を高めることができると同時に消費電力の抑制も可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0045】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における干渉防止装置が適用された建設機械1の外観図である。ここでは、建設機械1としてハイブリッドショベルを例に挙げるが、これ以外のショベルカー、クレーン等の建設機械に干渉防止装置は適用されてもよい。以下、運転室31の前側の方向を前方と記述し、運転室31の後側の方向を後方と記述し、運転室31の上側の方向を上方と記述し、運転室31の下側の方向を下方と記述する。また、前方と後方とを総称して前後方向と記述し、上方と下方とを総称して上下方向と記述する。また、運転室31から前方を見て左側の方向を左方と記述し、右方向を右方と記述する。また、左方と右方とを総称して左右方向と記述する。
【0046】
建設機械1は、クローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられ、姿勢が変更可能な作業装置4とを備えている。
【0047】
作業装置4は、上部旋回体3に対して起伏可能に取り付けられたブーム15と、ブーム15の先端部に対して揺動可能に取り付けられたアーム16と、アーム16の先端部に対して揺動可能に取り付けられたアタッチメント17とを備えている。
【0048】
上部旋回体3は、箱体で構成され、オペレータが搭乗する運転室31を備える。運転室31において、前方側の面を前面31a、上方側の面を上面31cと記述する。なお、
図1の例では、前面31aと上面31cとの間には、後方に向かうにつれて徐々に高さが高くなる傾斜面31bが設けられている。
【0049】
運転室31の前方には、前方側から順に警告領域D1及び自動運転領域D2が設定されている。警告領域D1は、障害物が侵入した場合、障害物が運転室31に接近しており、危険が迫っていることをオペレータに報知したり、作業装置4の動作を制限させたりするための領域である。自動運転領域D2は、障害物が侵入した場合、作業装置4の動作を自動停止或いは制限させるための領域である。なお、警告領域D1は干渉危険領域の一例に該当する。
【0050】
警告領域D1は、境界面L1と境界面L2とによって区画される。境界面L1は、前面31aを臨む境界面L11と傾斜面31bを臨む境界面L12とで構成される。境界面L11は、前面31aから前方に距離d11離れた位置において、前面31aと平行に設定された平面である。境界面L12は、境界面L11の上端K1から上側に設定され、傾斜面31bと距離d11離れて設定された平面である。
【0051】
自動運転領域D2は、境界面L2と前面31a及び傾斜面31bとで区画される。境界面L2は、前面31aを臨む境界面L21と傾斜面31bを臨む境界面L22とで構成される。境界面L21は、前面31aから前方に距離d12(<d11)離れた位置において、前面31aと平行に設定された平面である。境界面L22は、境界面L21の上端K2から上側に設定され、傾斜面31bと距離d12離れて設定された平面である。上端K1の高さは、上端K2よりも高い位置に設定されている。
【0052】
なお、警告領域D1及び自動運転領域D2の最上端は、例えば、計測センサ111の計測範囲C111の上端C111_aの近傍に設けられている。また、警告領域D1及び自動運転領域D2の最下端は、例えば、運転室31の下部の前方に設けられている。また、警告領域D1及び自動運転領域D2の左右方向の幅は、例えば、前面31aの左右方向の幅或いはその幅に多少のマージンを設けた幅に設定されている。但し、これらは、一例であり、警告領域D1及び自動運転領域D2の最上端、最下端、及び左右方向の幅は規定されていなくてもよい。また、警告領域D1及び自動運転領域D2の最上端は、運転室31の上面31cの後方端まで延長されてもよい。以下、警告領域D1及び自動運転領域D2が設定されている3次元の座標系を建設機械1の座標系と記述する。
【0053】
前面31aには、上端に計測センサ111が設けられ、下端に計測センサ112が設けられている。計測センサ111,112は、それぞれ、左右方向視において扇状の計測範囲C111,C112を持つ。計測センサ111,112は、計測範囲C111,C112が少なくとも境界面L2の全域をカバーできるように、前面31aにおいて上下方向に離間して設置されている。これにより、警告領域D1において計測センサ111,112の死角が発生せず、障害物が自動運転領域D2に侵入するまでに建設機械1は、オペレータに警告を発することが可能となる。
【0054】
建設機械1は、更に、角度センサ101,102,103を備える。角度センサ101は、ブーム15の回転支点に設けられ、ブーム15の回転角度を計測する。角度センサ102は、アーム16の回転支点に設けられ、アーム16の回転角度を計測する。角度センサ103は、アタッチメント17の回転支点に設けられ、アタッチメント17の回転角度を計測する。
【0055】
図2は、実施の形態1における建設機械1のシステム構成の一例を示すブロック図である。建設機械1は、エンジン210と、エンジン210の出力軸に連結された油圧ポンプ250及び発電電動機220と、油圧ポンプ250から油圧シリンダ281,282,283に対する作動油の給排を制御するコントロールバルブ260と、発電電動機220により発電された電力を充電可能な蓄電装置240と、蓄電装置240と発電電動機220との電力の変換を行うインバータ230と、作業装置4の姿勢を変更するためのオペレータによる操作を受け付ける操作レバー270とを備えている。
【0056】
油圧ポンプ250は、エンジン210の動力により作動して、作動油を吐出する。油圧ポンプ250から吐出された作動油は、コントロールバルブ260によって流量制御された状態で、油圧シリンダ281,282,283に導かれる。
【0057】
操作レバー270は、操作量を示す信号をコントローラ270に出力する。コントロールバルブ260は、コントローラ270の制御の下、操作レバー270の操作量に応じた開度に弁の開度を設定する。
【0058】
油圧シリンダ281は、作動油の供給を受けて伸縮することにより、上部旋回体3に対してブーム15を起伏させる。油圧シリンダ282は、作動油の供給を受けて伸縮することにより、ブーム15に対してアーム16を揺動させる。油圧シリンダ283は、作動油の供給を受けて伸縮することにより、アーム16に対してアタッチメント17揺動させる。
【0059】
発電電動機220は、エンジン210の動力を電力に変換する発電機としての構成と、蓄電装置240が蓄える電力を動力に変換する電動機としての構成とを備えている。
図2の例では、発電電動機220は例えば三相モータで構成されているが、これは一例であり、単相モータで構成されていてもよい。
【0060】
蓄電装置240は、例えば、リチウムイオンバッテリ、ニッケル水素バッテリ、電気二重層キャパシタ、及び鉛バッテリといった種々の二次電池で構成される。
【0061】
インバータ230は、コントローラ120の制御の下、発電電動機220の発電機としての作動と、発電電動機220の電動機としての作動との切り換えを制御する。また、インバータ230は、コントローラ120の制御の下、発電電動機220に対する電流及び発電電動機220のトルクを制御する。
図2の例では、インバータ230は例えば、3相インバータで構成されているが、これは一例であり単相インバータで構成されていてもよい。
【0062】
更に、建設機械1は、取得部100、計測部110、及びコントローラ120を備える。
【0063】
取得部100は、
図1で説明した角度センサ101,102,102を備え、作業装置4の姿勢を示す姿勢情報を取得する。ここでは、ブーム15の回転角度、アーム16の回転角度、及びアタッチメント17の回転角度が姿勢情報に該当する。
【0064】
計測部110は、
図1で説明した計測センサ111,112を備え、自身から、運転室31の周囲に位置する物体までの距離を計測する。本実施の形態では、計測センサ111,112としては、例えば、赤外線を照射する光源と、赤外線及び可視光が受光可能なカメラと、カメラが撮像した画像データを処理するプロセッサとを備える深度センサで構成されている。
【0065】
計測センサ111,112は、例えば、一定の時間毎(例えば30fps)で赤外線を照射し、赤外線を照射してから反射光を受信するまでの時間を画素単位で計測することでセンサ面から物体までの距離分布を計測する。
【0066】
赤外線を照射する深度センサは、距離計測手段として近年実用化例が増えてきており、ゲームなどでゼスチャ入力を行うための入力インターフェースとして活用されている。また、建設機械1は夜間に使用されることもあるので、赤外線を用いた深度センサは建設機械1にとって有用である。なお、赤外線を照射する深度センサにおいては、上記のように赤外線を照射してから反射光を受信するまでの時間を計測する方式はToF(Time of flight)方式として知られている。その他、深度センサとしては、特定パターンを照射した際の反射光の受光パターンから距離を計測するパターン照射方式が知られており、このパターン照射方式の深度センサが採用されてもよい。建設機械1は屋外で作業することが多いため、太陽光との干渉に強いレーザー走査ToF方式の深度センサが採用されてもよい。
【0067】
ここでは、計測センサ111,112として深度センサを用いたが、本発明はこれに限定されず、深度センサに比べて比較的安価なステレオカメラで構成されてもよい。この場合、計測センサ111,112は、例えば、ステレオカメラと、ステレオカメラを構成する各カメラで撮像された複数枚の画像データから物体までの距離分布を算出するプロセッサとで構成される。
【0068】
なお、本実施の形態では、計測センサ111,112は上記のものに限定されず、取り付け位置や角度から運転室31から物体までの距離が計算できる計測センサであれば、どのよう計測センサが採用されてもよい。例えば、非特許文献1で解説されている計測センサが採用されてもよい。
【0069】
コントローラ120は、例えば、マイクロコントローラ等のプロセッサ及びプログラム等を記憶する記憶装置で構成されている。そして、コントローラ120は、予測部121、限定部122、干渉判定部123、及び干渉防止部124を備えている。予測部121〜干渉防止部124は、専用のハードウェア回路で構成されてもよいし、CPUがプログラムを実行することで実現されてもよい。
【0070】
予測部121は、角度センサ101〜103で計測された姿勢情報を用いて、運転室31から障害物までの接近位置を予測する。以下、予測部121が予測した接近位置を予測接近位置と記述する。障害物としては、作業装置4又は作業装置4の把持物が該当するが、以下の説明では、アーム16の先端やアタッチメント17の先端が該当するものとして説明する。なお、作業装置4の把持物を障害物とする場合、予測部121は、アームの先端から後方向に向けて所定のオフセット距離だけ離れた位置を予測接近位置として採用すればよい。オフセット距離としては、想定される把持物の大きさが考慮された予め定められた値が採用されればよい。
【0071】
アタッチメント17がユーザーによって変更されている場合や、アタッチメント17が把持物を把持している場合、計算した予測接近位置が運転室31に干渉するとは限らない。よって、本実施の形態では、予測接近位置は、障害物のおよその位置を推定するための参考情報として活用する。つまり、算出した予測接近位置周辺の計測センサを有効とし、算出した予測接近位置から離れた計測センサは無効と判定するために予測接近位置は利用される。
【0072】
図3は、予測部121が予測接近位置を算出する処理の説明図である。
図3において、ブーム15、アーム16、及びアタッチメント17は説明を簡略化するために直線で示されている。ブーム15、アーム16、及びアタッチメント17の長さは既知である。また、運転室31の前面31aと角度センサ101との前後方向の距離dαも既知である。よって、ブーム15の前面31aに対する回転角度θ1、アーム16のブーム15に対する回転角度θ2、及びアタッチメント17のアーム16に対する回転角度θ3が分かれば、三角関数を用いることで、予測接近位置P1の高度dy及び深度dzを算出できる。ここで、高度dyとは、例えば、前後方向と平行な基準面SEから予測接近位置P1までの上下方向の距離を指し、深度dzとは、例えば、前面31aから予測接近位置P1までの前後方向の距離を指す。
図3の例では、角度センサ101を通るように基準面SEが設定されているが、これは一例である。なお、
図3の例では、建設機械1の座標系は、前面31aが前後方向の原点に設定され、基準面SEが上下方向の原点に設定され、前面31aの左右方向の中心が左右方向の限定に設定されている。
【0073】
なお、
図3の点線で示す姿勢をアタッチメント17がとる場合、アタッチメント17の先端P2よりもアーム16の先端P1’の方が、前面31aに近くなる。この場合、予測部121は、アタッチメント17の先端ではなくアーム16の先端P1’を予測接近位置P1として算出してもよい。
【0074】
ここで、アタッチメント17の姿勢が上下方向に対して前方に向いていれば、アーム16の先端P1’がアタッチメント17の先端P2よりも前面31aに近くなる。そこで、予測部122は、回転角度θ1〜θ3の大きさから、アタッチメント17の姿勢が上下方向に対して前方に向いているか否かを判定し、前方に向いていれば、アーム16の先端P1’を予測接近位置P1として算出し、後方に向いていれば、アタッチメント17の先端を予測接近位置P1として算出してもよい。
【0075】
或いは、予測接近位置P1は、計測範囲を限定するために用いられるので、厳密に予測される必要はなく、おおよその位置が特定できればよい。そこで、予測部121は、アーム16の先端P1’を予測接近位置P1として算出してもよい。この場合、予測部121は、回転角度θ3を用いずに、予測接近位置P1を算出できる。或いは、予測部121は、ブーム15の先端を予測接近位置P1として算出してもよい。この場合、予測部121は、回転角度θ3,θ2を用いずに予測接近位置P1を算出できる。
【0076】
図2に参照を戻す。限定部122は、予測部121により予測された予測接近位置P1に従って計測部110による計測範囲を限定する。
【0077】
本実施の形態では、限定部122は、計測センサ111,112の中から予測接近位置P1が計測可能な計測センサを有効計測センサとして選択することで計測範囲を限定する。例えば、
図1を参照して、限定部122は、予測接近位置P1と計測範囲C111の中心線C111_bとの距離を算出すると共に、予測接近位置P1と計測範囲C112の中心線C112_bとの距離を算出し、距離が短い方の中心線を計測範囲とする計測センサを有効計測センサとして選択すればよい。これにより、障害物の検知に最も有効な計測センサを選択することができ、処理時間の短縮させると共に計測精度の増大及び消費電力の削減を図ることができる。
【0078】
干渉判定部123は、計測部110によって計測された物体の距離を用いて、障害物による運転室31への干渉の危険性を判定する。ここで、干渉判定部123は、有効計測センサで計測された物体の深度が警告領域D1或いは自動運転領域D2に侵入しているか否かにより、障害物による干渉の危険性を判定する。
【0079】
具体的には、干渉判定部123は、有効計測センサで計測された計測データ示す深度のうち最小の深度を障害物の深度として検知する。この場合、干渉判定部123は、前面31aから境界面L1までの距離d11と、前面31aから境界面L2までの距離d12とを予め記憶しておけばよい。そして、干渉判定部123は、有効計測センサで計測された最小の深度を、有効計測センサの座標系から建設機械1の座標系に変換し、変換した深度が警告領域D1或いは自動運転領域D2に侵入しているか否かを判定すればよい。
【0080】
或いは、干渉判定部123は、深度に加えて、検知された物体の高さを考慮して、干渉の危険性を判定してもよい。この場合、干渉判定部123は、距離d11,d12に加えて、更に境界面L1の最上端、上端K1、及び最下端の高さと、境界面L2の最上端、上端K1、及び最下端の高さとを予め記憶しておけばよい。そして、干渉判定部123は、有効計測センサが計測した深度のうち最小の深度を示す座標を、有効計測センサの座標系から建設機械1の座標系に変換し、変換した座標が警告領域D1或いは自動運転領域D2に侵入しているか否かを判定すればよい。
【0081】
干渉防止部124は、干渉判定部123により干渉の危険性が有ると判定された場合、オペレータへ警告及び作業装置4の動作制限の少なくともいずれか一方を行う。具体的には、干渉判定部123により、障害物が警告領域D1に位置すると判定された場合、干渉防止部124は、ブザー130を鳴動させる。
【0082】
また、干渉判定部123により、障害物が自動運転領域D2に位置すると判定された場合、干渉防止部124は、作業装置4を減速させる或いは自動停止させることで、作業装置4の動作を制限する。
【0083】
この場合、干渉防止部124は、操作レバー270の操作量に応じて設定されるコントロールバルブ260の弁の開度を作業装置4を減速させるように方向に補正することで、作業装置4を減速させればよい。更にこの場合、干渉防止部124は、障害物の深度が運転室31に近づくにつれて作業装置4の減速量を増大させてもよい。
【0084】
ブザー130は、例えば運転室31内に設けられ、干渉防止部124の制御の下、鳴動する。
【0085】
なお、
図2において、コントロールバルブ260は、コントローラ120を介して操作レバー270の操作量が伝達されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、操作レバー270及びコントロールバルブ260間に電磁弁を設け、この電磁弁が操作レバー270の出力する圧力を減圧し、減圧した圧力でコントロールバルブ260の弁の開度を制御する態様が採用されてもよい。
【0086】
図4は、実施の形態1における建設機械1の動作を示すフローチャートである。まず、オペレータにより操作レバー270が操作されると(S401でYES)、予測部121は、角度センサ101〜103が計測した回転角度θ1〜θ2を用いて予測接近位置P1を算出する(S402)。一方、操作レバー270が操作されなければ(S401でNO)、処理はS401に戻される。
【0087】
次に、限定部122は、予測接近位置P1に基づいて有効計測センサを選択する(S403)。次に、限定部122は、有効計測センサが計測した計測データが示す物体の深度を計測する(S404)。
【0088】
次に、干渉判定部123が、計測した物体の深度が警告領域D1に侵入したと判定すると(S405でYES)、干渉防止部124は、障害物が警告領域D1に侵入したと判定し、ブザー130を鳴動させて警告する(S406)。一方、干渉判定部123は、計測した物体の深度が警告領域D1に侵入していないと判定すると(S405でNO)、障害物が警告領域D1に侵入していないと判定し、処理をS401に戻す。
【0089】
次に、干渉判定部123が、計測した物体の深度が自動運転領域D2に侵入していると判定すると(S407でYES)、干渉防止部124は、障害物が自動運転領域D2に侵入したと判定し、作業装置4の動作を制限させる(S408)。S408が終了すると、処理はS401に戻される。一方、干渉判定部123は、計測した物体の深度が自動運転領域D2に侵入していないと判定すると(S407でNO)、障害物が自動運転領域D2に侵入していないと判定し、処理をS401に戻す。
【0090】
なお、上記フローチャートでは、障害物が警告領域D1に侵入したと判定した場合、警告のみが行われているが、作業装置4が減速されてもよい。そして、障害物が自動運転領域D2に侵入したと判定した場合、干渉防止部124は、作業装置4を自動停止させてもよい。或いは、障害物が警告領域D1に侵入したと判定した場合、操作レバー270の操作量に拘わらず、干渉防止部124は、自動運転領域D2内に障害物が侵入しないように作業装置4の動作を制限してもよい。
【0091】
このように、実施の形態1では、作業装置4の姿勢を示す姿勢情報を用いて、障害物の運転室31への接近位置が予測され、予測された予測接近位置P1に従って計測部110による計測範囲が限定されている。そのため、無駄な計測動作を省くことができ、障害物の警告領域D1への干渉の有無を短時間で検知できる。更に、限定された計測範囲に処理範囲が絞られているので、検知精度を高めることができると同時に消費電力の抑制も可能となる。
【0092】
なお、
図1では、複数の計測センサが設けられているが、警告領域D1及び自動運転領域D2をカバーできるのであれば、計測センサの個数は1つであってもよい。
【0093】
(実施の形態2)
実施の形態2の建設機械1は、予測接近位置P1に計測センサの計測範囲を向けることを特徴とする。
図5は、実施の形態2における建設機械1の外観図である。実施の形態2では、計測センサ111は1つである。計測センサ111にはアクチュエータ110aが取り付けられている。アクチュエータ110aは、計測センサ111と前面31aとの仰角を変更させる方向(矢印YAに示す方向)に計測センサ111回転させ、計測センサ111の計測範囲C111を予測接近位置P1に位置決めする。これにより1つの計測センサ111で計測できる範囲が格段に大きくなり、警告領域D1の全域をカバーするために無駄な計測センサを追加せずに済む。
【0094】
図6は、実施の形態2における建設機械1のシステム構成の一例を示すブロック図である。
図6において、
図2との相違点は、計測部110から計測センサ112が省かれ、アクチュエータ110aが設けられている点にある。それ以外は、
図2と同じである。
【0095】
限定部122は、予測部121により算出された予測接近位置P1が計測センサ111の計測範囲C111に含まれるように、計測センサ111を回転させる。
図5を参照して、例えば、図示する位置に予測接近位置P1が算出されたとすると、限定部122は、アクチュエータ110aを制御して、中心線C111_bが予測接近位置P1と交差するように計測センサ111を回転させる。
【0096】
図7は、実施の形態2における建設機械1の処理を示すフローチャートである。なお、本フローチャートにおいて、
図4のフローチャートと同じ処理には同じ符号が付されている。
【0097】
S402に続くS701では、限定部122は、アクチュエータ110aを制御して、予測接近位置P1に向かうように計測センサ111の計測範囲C111の方向を変更する(S701)。
【0098】
次に、計測センサ111は、変更された計測範囲C111において物体の深度を計測する(S702)。以降、
図4と同じ処理が繰り返される。
【0099】
このように、実施の形態2による建設機械1では、予測接近位置P1に向けて計測センサ111の計測範囲C111が変更されているので、複数の計測センサを設けなくても、予測接近位置P1付近の物体を計測センサ111に計測させることができる。
【0100】
なお、
図5では、計測センサ111の個数を1つとしたが、警告領域D1が大きく1つの計測センサ111では、警告領域D1の全域をカバーできない場合、計測センサを複数設けてもよい。この場合、各計測センサにアクチュエータ110aを設け、各計測センサの計測範囲を個別に変更できるようにすればよい。
【0101】
(実施の形態3)
実施の形態3の建設機械1は、実施の形態1において、有効計測センサが計測データとして取得した距離画像データから、予測接近位置P1を含む一部の領域を抽出し、抽出した領域内において物体の深度を検知することを特徴とする。
【0102】
図8は、実施の形態3において、有効計測センサが取得した距離画像データG1の一例を示す図である。距離画像データG1には、運転室31の前面31a側から見たアーム16とアタッチメント17との画像が含まれている。
【0103】
そして、図示する位置に予測接近位置P1が位置したとすると、限定部122は、距離画像データG1において、予測接近位置P1を中心に処理領域D80を設定し、距離画像データG1から処理領域D80を抽出する。この場合、限定部122は、予測接近位置P1の座標系を建設機械1の座標系から有効計測センサの座標系に変換することで距離画像データG1内に予測接近位置P1をプロットすればよい。
【0104】
ここで、予測接近位置P1は、
図3に示されるように、深度dzと高度dyの2成分のデータなので、左右方向の位置が分からない。したがって、限定部122は、予測接近位置P1の左右方向の位置を、作業装置4と運転室31との相対的な位置関係から予め定められた位置に設定すればよい。或いは、作業装置4が左右方向に傾倒可能に構成されているのであれば、作業装置4の左右方向の回転角度を角度センサで計測させ、予測部121に予測接近位置P1の左右方向の位置を算出させてもよい。
【0105】
なお、処理領域D80は、アタッチメント17の種類や把持物などが考慮された予め定められたサイズが採用される。この場合、限定部122は、アタッチメント17の種類に応じて処理領域D80の大きさを変更してもよい。なお、限定部122は、アタッチメント17の種類をオペレータにより入力させることで、認識すればよい。
【0106】
図9は、実施の形態3における建設機械1の処理を示すフローチャートである。なお、本フローチャートにおいて、
図4のフローチャートと同じ処理には同じ符号が付されている。
【0107】
S403に続くS901では、限定部122は、有効計測センサが計測した距離画像データから処理領域D80を抽出する。次に、干渉判定部123は、処理領域D80内の深度のうち最小の深度を障害物の深度として検知する(S902)。以降、
図4と同じ処理が繰り返される。
【0108】
このように、実施の形態3の建設機械1では、計測センサが取得する距離画像データG1から、予測接近位置P1を含む処理領域D80を抽出することで計測範囲が限定されているので、処理対象が絞られ、処理時間を短縮できる。
【0109】
なお、実施の形態3は、実施の形態2に適用されてもよい。この場合、計測範囲C111が予測接近位置P1を向くように位置決めされた計測センサ111が計測した距離画像データG1内から処理領域D80が抽出されることになる。
【0110】
(実施の形態4)
実施の形態4は、少なくとも警告領域D1がカバーできるように複数配置された超音波センサを用いることを特徴とする。
【0111】
図10は、実施の形態4における建設機械1の外観図である。運転室31の前面31aには上下方向に3つの超音波センサ310が配置されている。
図11は、実施の形態4における建設機械1の上方視の図である。運転室31の前面31aには、左右方向3つの超音波センサ310が配置されている。
【0112】
このように本実施の形態では、3行×3列=9個の超音波センサ310が運転室31の前面31aにアレイ状に配置されている。
【0113】
ここでは、超音波センサ310が採用されているが、物体との距離を計測できるセンサであれば、ミリ波や電波や光などの計測波を照射して物体との距離を計測するセンサが採用されてもよい。
【0114】
超音波センサ310は、実施の形態1で示した深度センサのように深度の分布を計測することはできず、計測範囲E310内で最も接近している物体の深度しか計測できない。そのため、超音波センサ310は、前面31aに接近している物体であっても、斜め前方に位置する物体は、センサ面からの距離が長くなるので、深度を大きく計測してしまう。そのため、超音波センサ310の計測範囲E310を広角に設定できない。
【0115】
運転室31の前面31aは、例えば、縦2m程度×横1m程度であり広範囲である。よって、1つの超音波センサ310では警告領域D1の全域をカバーできない。そこで、
図10では、複数の超音波センサ310が設けられている。
【0116】
具体的には、
図10、
図11に示すように、超音波センサ310は、計測範囲E310が少なくとも境界面L2の全域をカバーできるように上下方向及び左右方向に離間して配置されている。これにより、警告領域D1において超音波センサ310の死角が発生せず、障害物が自動運転領域D2に侵入するまでに建設機械1は、オペレータに警告を発することが可能となる。
【0117】
図12は、実施の形態4における建設機械1のシステム構成を示すブロック図である。
図12において、
図2との相違点は、計測部110が計測センサ111,112ではなく、複数の超音波センサ310で構成されている点にある。
【0118】
超音波センサ310は、例えば、一定時間毎(例えば数十msec程度毎)に超音波を放射し、放射してから反射波を受信するまでの時間を計測し、音速×時間/2の演算を行うことで、物体までの距離を計測する。
【0119】
限定部122は、超音波センサ310の中から、予測接近位置P1が計測可能な1以上の超音波センサ310を有効計測センサとして選択することで計測範囲を限定する。例えば、
図10を参照して、限定部122は、左右方向視(側面視)において、計測範囲E310に予測接近位置P1が含まれる1以上の超音波センサ310を有効超音波センサとして選択する。或いは、限定部122は、予測接近位置P1と各超音波センサ310との距離を求め、求めた距離が閾値以下の超音波センサ310を有効超音波センサとして選択してもよい。ここで、閾値としては、例えば、超音波センサ310の計測範囲E310が予測接近位置P1を含むことが見込まれる予め定められた値が採用されればよい。
【0120】
また、
図11を参照して、限定部122は、上方視において、計測範囲E310に予測接近位置P1が含まれる1以上の超音波センサ310を有効超音波センサとして設定する。なお、予測接近位置P1は、深度dzと高度dyとの2成分データであるので、限定部122は、運転室31と作業装置4との相対的な位置関係から予め定められた位置を予測接近位置P1の左右方向の位置として設定してもよいし、作業装置4が左右方向に回転するのであれば、その回転角度から予測接近位置P1の左右方向の位置を設定してもよい。
【0121】
図12を参照し、干渉判定部123は、限定部122により選択された有効計測センサで計測された深度のうち、最小の深度を障害物の深度として検知する。そして、干渉判定部123は、検知した最小の深度が警告領域D1或いは自動運転領域D2内に侵入していれば、干渉の危険性があると判定すればよい。
【0122】
図13は、実施の形態4による建設機械1の処理を示すフローチャートである。なお、本フローチャートにおいて、
図4のフローチャートと同じ処理には同じ符号が付されている。
【0123】
S402に続くS1301では、限定部122は、予測接近位置P1に基づいて有効超音波センサを選択する。次に、有効超音波センサは、物体の深度を計測する(S1302)。次に、干渉判定部123は、有効超音波センサが計測した深度のうち最小の深度を特定する(S1303)。
【0124】
次に、干渉判定部123により特定した最小の深度が警告領域D1に侵入していると判定されれば(S1304でYES)、干渉防止部124は、ブザー130を鳴動させて警告する(S406)。また、干渉判定部123により特定した最小の深度が自動運転領域D2に侵入していると判定されれば(S1305でYES)、干渉防止部124は、作業装置4の動作を制限する(S408)。なお、S1304でNO、S1305でNOの場合、処理はS401に戻される。
【0125】
このように実施の形態4の建設機械1では、警告領域D1の全域が計測可能となるように運転室31に複数の超音波センサ310が設置されている。そのため、複数の超音波センサ310は死角無く警告領域D1の全域を計測できる。また、本態様では、有効超音波センサが計測した深度を用いて干渉の危険性が判定されている。そのため、無駄な計測動作を省くことができる。
【0126】
(実施の形態5)
実施の形態5は、予測接近位置P1に超音波センサアレイの指向性が向くように各超音波センサが放射する超音波の位相を制御することを特徴とする。
【0127】
図14は、実施の形態5における建設機械1の外観図である。
図14に示すように超音波センサアレイ1710は、前面31aの上部に設けられている。超音波センサアレイ1710は、
図18に示されるように、送信側アレイ1711と受信側アレイ1712とを備える。送信側アレイ1711には、超音波を放射する送信素子310Sが所定行×所定列でアレイ状に配列されている。受信側アレイ1712には、超音波を受信する受信素子310Rが所定行×所定列でアレイ状に配列されている。ここで、送信側アレイ1711に配置された送信素子310Sと受信側アレイ1712に配置された受信素子310Rは、同一行同一列の送信素子310S及び受信素子310R同士が一対一に対応している。また、1つの送信素子310Sとそれに対応する1つの受信素子310Rとで1つの超音波センサ310が構成される。
【0128】
図15は、実施の形態5における建設機械1のシステム構成を示すブロック図である。
図15において、
図2との相違点は、計測部110が計測センサ111,112に代えて超音波センサアレイ1710,1720を備えている点にある。それ以外は、同じである。
【0129】
なお、
図15では、2つの超音波センサアレイ1710,1720が設けられているが、
図14に示すように1つの超音波センサアレイ1710で構成した場合、超音波センサアレイ1720は不要となる。
【0130】
図16は、実施の形態5における超音波センサの制御を説明する図である。
図14では超音波センサアレイ1710は運転室31の前面31aの上部の1か所にしか配置されていないが、各超音波センサ310から放射される超音波の位相を制御することで超音波センサアレイ1710の全体の指向性を変更できる。
図16では、説明を簡略化するために、3つの超音波センサ311,312,313で超音波センサアレイ1710が構成されているとして説明する。
【0131】
図16のセクション(a)では、超音波センサ311〜313は、同位相で超音波を放射している。この場合、超音波センサアレイ1710のセンサ面S1600に対して90度の方向A1の超音波成分W1〜W3の位相が揃うので、この方向A1における超音波成分W1〜W3が強め合う。その結果、超音波センサアレイ1710からは方向A1に最大の強度を持つ超音波が放射される。
【0132】
一方、セクション(b)では、方向A1に対して角度θyだけ上側の方向A2において、超音波成分W1〜W3の位相が揃うように、上から2番目の超音波センサ312と上から3番目の超音波センサ313とは超音波センサ311に対する位相がずらされている。これにより、方向A2の超音波成分W1〜W3が強め合い、超音波センサアレイ1710からは方向A2に最大の強度をもつ超音波が放射される。
【0133】
ここで、1番目の超音波センサ310に対して上からn(nは2以上の整数)番目の超音波センサ310の位相のずれをα(n)(rad)とおくと、α(n)は式(1)で表される。
【0134】
α(n)=2π(n−1)・d・sinθy/λ (1)
但し、dは超音波センサ310間の距離をメートル単位で表し、λは超音波センサから放射される超音波の波長をメートル単位で表したものである。
【0135】
そこで、本実施の形態では、限定部122は、式(1)に基づいて各超音波センサ310の位相のずれを制御することで、超音波センサアレイ1710全体での超音波の指向性を調整し、計測範囲を限定する。
【0136】
図14を用いて具体的に説明すると、図示する予測接近位置P1は、前後方向に対する角度がθyであったとする。この場合、限定部122は、1行目の超音波センサ310の位相に対して2行目以降の各行の超音波センサ310の位相のずれを以下のように設定する。
【0137】
すなわち、限定部122は、2行目の超音波センサ310について、位相のずれα(2)を、α(2)=2π・1・d・sinθy/λと設定し、3行目の超音波センサ310について、位相のずれα(3)を、α(3)=2π・2・d・sinθy/λに設定し、・・・、n行目の超音波センサ310について、位相のずれα(n)を、α(n)=2π(n−1)・d・sinθy/λに設定する。これにより、超音波センサアレイ1710から予測接近位置P1の方向に強度の高い超音波が放射され、計測範囲を効率良く限定できる。
【0138】
図17は、実施の形態5における建設機械1の動作を示すフローチャートである。なお、本フローチャートにおいて、
図13のフローチャートと同じ処理には同じ符号が付されている。
【0139】
S402に続くS1701では、限定部122は、超音波センサアレイ1710の指向性が予測接近位置P1に向くように、式(1)を用いて超音波センサ310の位相のずれを調整する。
【0140】
次に、超音波センサアレイ1710は、物体の深度を計測する(S1702)。ここでは、超音波センサアレイ1710を構成する超音波センサ310のそれぞれにより物体の深度が計測される。
【0141】
次に、干渉判定部123は、各超音波センサ310で計測された深度の中から最小の深度を障害物の深度として特定する(S1703)。以降、
図13のフローチャートと同じ処理が繰り返される。
【0142】
次に、実施の形態5の変形例1について説明する。
図18は、実施の形態5の変形例1における超音波センサアレイの配置を示す図である。変形例1では、超音波センサアレイ1710に加えて超音波センサアレイ1720が設けられている点を特徴とする。
【0143】
前面31aはフロントガラス1703で覆われているがフロントガラス1703上に超音波センサアレイ1710,1720を配置すると、作業者の視界を遮ることとなり操作性が悪化する。そこで、フロントガラス1703を覆う上ピラー1705に超音波センサアレイ1710は配置され、下ピラー1706に超音波センサアレイ1720は配置されている。
【0144】
超音波センサアレイ1720は、超音波センサアレイ1710と同様、送信側アレイ1721及び受信側アレイ1722を備えている。送信側アレイ1721及び受信側アレイ1722は送信側アレイ1711及び受信側アレイ1712と同一構成なので説明を省略する。
【0145】
図19は、実施の形態5の変形例1における建設機械1の外観図である。
図19に示すように、変形例1では、前面31aの上部に設けられた超音波センサアレイ1710に加えて、前面の下部に超音波センサアレイ1720が配置されている。したがって、超音波センサアレイ1710、1720全体での計測範囲をより拡大できる。
【0146】
変形例1において、限定部122は、超音波センサアレイ1710,1720の中から予測接近位置P1に対する距離が近い方の超音波センサアレイを選択し、選択した超音波センサアレイの指向性を予測接近位置P1に向けてもよい。これにより、物体の深度をより正確に検知できる。
【0147】
次に、実施の形態5の変形例2について説明する。
図20は、実施の形態5の変形例2における建設機械1の上方視の図である。変形例2は、超音波センサアレイ1710の指向性を上下方向に加えて左右方向にも変更させる点を特徴とする。
【0148】
例えば、予測接近位置P1が、超音波センサアレイ1710のセンサ面S1600から、前後方向を基準としたときの左右方向の角度がθxの方向A3にあったとする。この場合、限定部122は、超音波センサアレイ1710の指向性が方向A3を向くように、各超音波センサ310の位相のずれを調整する。なお、超音波センサアレイ1710の指向性を方向A3に向ける位相のずれの制御は、
図16において、超音波センサ311〜313が左右方向に配列されていると考えれば容易に推測できる。
【0149】
具体的には、式(1)のθyをθxに置き換える。そして、限定部122は、1列目の超音波センサ310の位相に対して2列目以降の各列の超音波センサ310の位相のずれを以下のように設定する。
【0150】
すなわち、限定部122は、2列目の超音波センサ310について、位相のずれα(2)を、α(2)=2π・1・d・sinθx/λと設定し、3列目の超音波センサ310について、位相のずれα(3)を、α(3)=2π・2・d・sinθx/λと設定し、・・・、n列目の超音波センサ310について、位相のずれα(n)をα(n)=2π(n−1)・d・sinθx/λと設定する。これにより、超音波センサアレイ1710から予測接近位置P1の方向に強度の高い超音波が放射され、計測範囲を効率良く限定できる。
【0151】
更に、変形例2では、左右方向と上下方向とを組み合わせた方向に超音波センサアレイ1710の指向性を向けることも可能である。
【0152】
例えば、超音波センサアレイ1710のセンサ面S1600から前後方向を基準としたときの上下方向の角度がθyの方向A2(
図14参照)と、センサ面1600から前後方向を基準としたときの左右方向の角度がθxの方向A3(
図20参照)とをベクトル加算した方向に予測接近位置P1があったとする。
【0153】
この場合、限定部122は、まず、1行j列目の超音波センサ310について、1行1列目の超音波センサ310に対する位相のずれα(j)を、α(j)=2π(j−1)・d・sinθx/λに設定する。そして、限定部122は、i行j列目の超音波センサ310について、1行j列目の超音波センサ310に対する位相のずれα(i)を、α(i)=2π(i−1)・d・sinθy/λに設定する。
【0154】
これにより方向A2と方向A3とをベクトル加算した方向に超音波センサアレイ1710の指向性を向けることができる。なお、変形例2は変形例1と組み合わされても良い。
【0155】
(実施の形態6)
実施の形態6は、実施の形態4に示す複数の超音波センサ310が配置された建設機械1において超音波センサ310を上面格子部材及び前面格子部材に取り付けた点を特徴とする。なお、本実施の形態において実施の形態1〜5と同一のものは同一の符号を付して説明を省略する。
【0156】
図21は、実施の形態6における建設機械1の外観図である。建設機械1の運転室31の前面31a及び上面31cには、それぞれ、前面格子部材2102及び上面格子部材2101が配置されている。超音波センサ310は、前面格子部材2102及び上面格子部材2102に配置されている。
【0157】
超音波センサ310は、運転室31の前面31aや上面31cへの障害物の干渉を事前に検知するために、数十msの間隔で超音波を発しながらその反射波を受信することで物体までの距離を計測する。
【0158】
図22は、超音波センサ310の指向性を示す図である。超音波センサ310の指向性の指標は半値角βによって表される。半値角βは、音響レベル(音の強さ)が最大の角度を基準として、角度をずらしていったときに、音響レベルが最大値の1/2に減衰する角度を示す。半値角βが広すぎると運転室31から物体までの距離の誤差が大きくなり好ましくない。そのため、超音波センサ310の半値角βは小さい方が好ましい。この場合、1つの超音波センサ310だけでは、警告領域D1の全域をカバーできないので、複数の超音波センサ310を用いるのが現実的である。
【0159】
そこで、本実施の形態6では、
図23に示すように上面格子部材2101及び前面格子部材2102を運転室31の前面31a及び上面31cに配置し、上面格子部材2101及び前面格子部材2102に複数の超音波センサ310を配置した。
【0160】
図23は、上面格子部材2101及び前面格子部材2102の配置例を示した図である。
図23に示すように、上面格子部材2101は、上面31cの全域を覆うように上面31cの上方に設けられた格子状の部材である。前面格子部材2102は、前面31aの全域を覆うように前面31aの前方に設けられた格子状の部材である。具体的には、上面格子部材2101及び前面格子部材2102は、複数の縦棒2111と複数の横棒2112とが格子状に組み合わされて構成されている。
【0161】
図24は、超音波センサ310の配置パターン1を示した図である。配置パターン1では、縦棒2111及び横棒2112が交差する部分に超音波センサ310が配置されている。
【0162】
なお、超音波センサ310の半値角βに基づいて、少なくとも警告領域D1への物体の検知をカバーできる範囲を検討し、上面格子部材2101及び前面格子部材2102の格子の間隔や形状は決定されればよい。
【0163】
図25は、超音波センサ310の配置パターン2を示した図である。ここで、横棒2112が行に対応し、縦棒2111が列に対応し、横棒2112と縦棒2111との交点が行及び列で表されると考える。配置パターン2では、奇数行においては、奇数列の交点に超音波センサ310が配置され、偶数行においては、偶数列の交点に超音波センサ310が配置されている。
【0164】
図26は、超音波センサ310の配置パターン3を示した図である。配置パターン3では、上面格子部材2101及び前面格子部材は2102は、格子がひし形である。具体的には、上面格子部材2101及び前面格子部材2102は四角形の枠体2601と、枠体2601の内部にひし形の格子が形成されるように組み込まれた複数の棒体2602とで構成されている。そして、格子の各交点に超音波センサ310が配置されている。
【0165】
図27は、実施の形態6において、建設機械1に取り付けられた超音波センサ310が超音波を放射している様子を示した図である。
【0166】
図27に示すように、超音波センサ310は、計測範囲2201が少なくとも境界面L2上の全域をカバーできるように格子状に配置されている。警告領域D1において超音波センサ310の死角が発生せず、障害物が自動運転領域D2に侵入するまでに建設機械1は、オペレータに警告を発することが可能となる。
【0167】
鉄骨切断機、コンクリート圧砕機、及び解体用つかみ機といったアタッチメントを装着する建設機械では、安全確保のため防護設備としてフロントガード(運転室前面を防護)やヘッドガード(運転席上面を防護)する設備が備えられていることが多い。
【0168】
超音波センサ310を配置するために専用の部材を建設機械1に取り付けてもよいが、もともと建設機械1が防護設備として備えているフロントガード、ヘッドガードを有効に活用すれば、専用の部材が不要となる。
【0169】
そこで、本実施の形態では、フロントガードとして前面格子部材2102、ヘッドガードとして上面格子部材2101を採用し、両部材の上に超音波センサ310を配置した。これにより、オペレータの視界が防護設備以上に悪化させることなくなる。その結果、本実施の形態では、建設機械1の余計な重量増大やコストの上昇を防ぐことができる。
【0170】
図28は、実施の形態6における建設機械1が計測範囲を限定している様子を示す図である。実施の形態4と同様にして予測接近位置P1が算出されている。そして、限定部122は、実施の形態4と同様、予測接近位置P1を計測範囲2201に含む超音波センサ310を有効超音波センサとして選択する。
【0171】
図28の例では前面格子部材2102に取り付けられた超音波センサ310のうち、上から1行目と2行目に位置する超音波センサ310の計測範囲2201に予測接近位置P1が位置していた。そのため、限定部122は、上から1行目と2行目に位置する超音波センサ310を有効超音波センサとして選択する。そして、干渉判定部123は、有効超音波センサで計測された深度のうち、最小の深度を障害物の深度と検知すればよい。そして、実施の形態4と同様にして、干渉の危険性が判定される。