(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているような可動ピンをコイルバネで押圧する構成の検査プローブは、繰り返し使用した場合においても可動ピンと端子金具とを確実に接触させるために、コイルバネによる可動ピンを押圧する力を、当該コイルバネの劣化(バネ力の低下等)などを考慮して、可動ピンと端子金具との間の導通を確保するために最低限必要な力より大きく設定することが求められ、そのため、端子金具の変形や損傷を抑制する点で改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、導通検査対象の変形や損傷をより効果的に抑制することができる導通検査治具、導通検査装置及び導通検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、導通検査対象の導通検査に用いられる導通検査治具であって、前記導通検査対象を保持する治具本体と、端部から空気を吹き出す配管と、前記配管からの空気を受ける空気受け部と、前記空気受け部により受けた空気の圧力により前記導通検査対象に近づいて接触するピン本体と、前記空気受け部から前記空気の吹き出し方向と逆方向に向かって立設する立壁と、を有する導通ピンと、前記立壁を押圧して前記配管に前記立壁を押し付ける押圧部材と、を備え、前記押圧部材には、前記立壁に接触する導電性の接触部と、配線に接続される接続部と、前記接触部及び前記接続部間を接続する導電パターンと、が形成されていることを特徴とする導通検査治具である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、前記押圧部材には、前記立壁及び前記配管を通す通し穴が複数設けられ、前記複数の通し穴の内側面が前記立壁に接触する接触部となることを特徴とする請求項1に記載の導通検査治具である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、複数の前記通し穴を1列に並べた通し穴列が、2列隣接して並べて設けられ、複数の前記接続部を1列に並べた接続部列が、前記通し穴列にそれぞれ対応して2列隣接して並べて設けられ、前記押圧部材には、前記接続部列から離れた側の通し穴列を構成する複数の通し穴から多くても隣接する2個の通し穴を除いた通し穴にそれぞれ対応してスルーホールが設けられ、前記導電パターンは、前記押圧部材の一面に形成され、前記接続部列に近い側の通し穴列と当該通し穴列に対応する前記接続部列との間を直接接続する第1の導電パターン部と、前記押圧部材の一面に形成され、前記スルーホールと当該スルーホールに対応する前記通し穴との間を接続する第2の導電パターン部と、前記押圧部材の他面に形成され、前記スルーホールと当該スルーホールに接続された前記通し穴に対応する前記接続部との間を接続する第3の導電パターン部と、を有していることを特徴とする請求項2に記載の導通検査治具である。
【0011】
請求項4記載の発明は、導通検査対象の導通検査に用いられる導通検査装置であって、請求項1〜3何れか1項に記載の導通検査治具と、前記導通ピンを通じて前記導通検査対象の導通を判定する導通判定手段と、を備えたことを特徴とする導通検査装置である。
【0012】
請求項5記載の発明は、導通検査対象の導通検査を行う導通検査方法であって、請求項1〜3のうち何れか1項に記載の導通検査治具を用い、当該導通検査治具の前記治具本体に、前記導通検査対象を保持させる保持工程と、前記配管に空気を送り込む空気制御工程と、前記押圧部材により前記導通ピンの立壁を押圧して、当該立壁を配管に押し付ける押圧工程と、前記導通ピンを通じて前記導通検査対象の導通を判定する導通判定工程と、を備えていることを特徴とする導通検査方法である。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように請求項1、4、5記載の発明によれば、導通ピンを空気の圧力により導通検査対象に近づけて接触させる。このようにしたことから、空気の圧力を用いることで、毎回の導通検査において導通ピンと導通検査対象との間の導通を確保するために最低限必要な力で当該導通ピンを導通検査対象に接触させることができる。そのため、導通検査対象の変形や損傷を効果的に抑制することができる。また、コイルバネのように劣化がないことから、常に一定の力で導通ピンを導通検査対象に接触させることができ、そのため、一定の品質を保つことができる。
【0014】
また、押圧部材により導通ピンの立壁が、配管に押し付けられている。このため、導通ピンの姿勢が配管の吹き出し方向に沿うように矯正されるため、導通ピンと導通検査対象との接触の安定性を図ることができる。
【0015】
また、押圧部材には、立壁に接触する導電性の接触部と、配線に接続される接続部と、前記接触部及び前記接続部間を接続する導電パターンと、が形成されている。これにより、配線が、導通ピンを押圧する押圧部材を介して導通ピンと接続するため、より精度の高い導通検査を行うことができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、1つの押圧部材で、複数の導通ピンの立壁を押圧することができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、スルーホールを設けることにより、簡単に、2列の通し穴列及び2列の接続部列を接続する導電パターンを設けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る導通検査装置について、
図1〜
図10を参照して説明する。
【0020】
本実施形態の導通検査装置1は、例えば、
図1に示すように、水平に設置された検査台K上に配索された車両用のワイヤハーネス101(導通検査対象)の導通検査に用いられる。このワイヤハーネス101は、複数の電線102(
図2)を束ねたワイヤハーネス本体106と、ワイヤハーネス本体106の端末に設けられたコネクタ105と、を有している。ワイヤハーネス本体106は、幹線101aとこの幹線101aから分岐した分岐線101bとを有している。
【0021】
コネクタ105は、
図2に示すように、ワイヤハーネス本体106を構成する複数の電線102それぞれの端末に設けられた複数の端子金具103と、これら複数の端子金具103を収容するコネクタハウジング104と、を有している。コネクタ105は、車両に搭載された電子機器等に接続される。
【0022】
図1に示すように、導通検査装置1は、導通検査治具10と、空気制御手段としての空気制御部30と、導通判定手段としての導通判定部40と、を備えている。
【0023】
導通検査治具10は、
図2に示すように、治具本体としての検査治具本体11と、複数の配管12と、複数の導通ピン13と、押圧部材としての基板14と、基板14を駆動するソレノイド15と、を備えている。
【0024】
検査治具本体11は、上述したコネクタ105を保持するためのものであり、例えば、電気絶縁性を有する合成樹脂などを材料として用いて構成されている。検査治具本体11は、矩形板状の第1基台111と、矩形箱状の第2基台112と、第1基台111の四角と第2基台112とを繋ぐ4本の脚部113と、を備えている。検査治具本体11は、第1基台111が検査台K上に載置されるように設けられる。
【0025】
第1基台111は、
図2〜
図6に示すように、矩形板状の板部111aと、板部111aから上方に立設するコネクタ嵌合部111bと、板部111aから下方に立設するピンガイド111cと、を有している。コネクタ嵌合部111bは、上方が開口した四角筒状に設けられ、上述したコネクタ105(即ち、コネクタハウジング104)を挿入嵌合可能に形成されている。上方の開口からコネクタ105をコネクタ嵌合部111b内に挿入すると、コネクタ105が板部111aに突き当たって保持される。
【0026】
板部111aにおいてコネクタ嵌合部111bに囲まれた部分には、鉛直方向に貫通する複数のピン挿通孔111dが設けられている。各ピン挿通孔111dは、コネクタ嵌合部111b内に挿入されたコネクタハウジング104に収容された各端子金具103に対応した位置に配置されている。このピン挿通孔111dから後述する導通ピン13のピン本体13bが、コネクタ嵌合部111b内に突没自在に挿入される。
【0027】
また、ピンガイド111cは、ピン挿通孔111dの周縁部から下方に向かって立設した円筒状に設けられている。各ピンガイド111cは、後述する導通ピン13のピン本体13bの剛性よりも高い剛性を有した円筒である。この円筒状のピンガイド111cを通ってピン挿通孔111dに導通ピン13のピン本体13bを挿入することにより、ピンガイド111cは、ピン本体13bの傾きを防止できる。
【0028】
図2に示すように、第1基台111と第2基台112との間の空間におけるコネクタ嵌合部111bの直下の部分には、第2基台112から第1基台111へと向けて、複数の配管12が立設されている。箱状の第2基台112の天井壁112aには、配管12を通す配管貫通孔112bが設けられている。各配管12は、その一端が空気の吹き出し口12aとなっており、上記の配管貫通孔112bを通って、第2基台112の内部から、吹き出し口12aが第1基台111へと向かうように立設されている。本実施形態では、配管12は、空気の吹出し方向が上方になるように配置されている。また、各配管12の他端側は、第2基台112の内部から不図示の延出孔を通って第2基台112の外部に延出して、後述の弁ユニット33に接続されている。
【0029】
複数の導通ピン13は、例えば、銅合金などの導電性の材料を用いて構成されており、
図3〜
図6に示すように、それぞれが空気受け部13aと、ピン本体13bと、立壁としての周壁13cと、を一体に有している。空気受け部13aは、配管12からの空気を受けるためにピン本体13bよりも径が大きい円板状に設けられている。また、空気受け部13aの外径は、上述したピンガイド111cの外径よりわずかに大きくなっている。これにより、各導通ピン13の上方への移動は、それぞれの対応するピンガイド111cに空気受け部13aが当接したところで規制される。
【0030】
ピン本体13bは、空気受け部13aの中央から上方に立設した円柱状に設けられ、その先端が空気受け部13aにより受けた空気の圧力により端子金具103に近づいて接触する。ピン本体13bの径は、φ0.3mm程度まで細径化されている。また、このピン本体13bの径は、ピンガイド111cの内径及びピン挿通孔111dの径よりわずかに小さな径である。
【0031】
周壁13cは、空気受け部13aの周縁から下方(空気の吹き出し方向と逆方向)に向かって立設している。周壁13cは、下方に開口が設けられた円筒状に設けられ、この開口から配管12の吹き出し口12aが周壁13c内に挿入される。
【0032】
基板14には、
図3〜
図8に示すように、導通ピン13の周壁13c及び配管12の一端を通す通し穴14a
1,1〜14a
1,11、14a
2,1〜14a
2,11(以下、通し穴14aと略記することもある)が複数設けられている。上記ソレノイド15によって基板14と平行方向(吹き出し方向と交差する方向)に基板14を押圧すると
図10に示すように通し穴14aの内側面が周壁13cを押圧して配管12を周壁13cに押し付ける。この基板14には、
図7及び
図8に示すように、周壁13cと接触する導電性の接触部S(
図10)と、配線L(
図2)に各々接続される接続部14b
1,1〜14b
1,11、14b
2,1〜14b
2,11(以下、接続部14bと略記することもある)と、接触部S及び接続部14b間を接続する導通パターン14cと、が形成されている。本実施形態では、
図10に示すように、通し穴14aの内側面が周壁13cと接触する接触部Sとなり、通し穴14aの内側面にプリントなどにより導電性の接触部Sを設けている。配線Lは、後述する導通判定部40に接続されている。
【0033】
複数の通し穴14a
1,1〜14a
1,11、14a
2,1〜14a
2,11は、各導通ピン13に対応して設けられている。即ち、複数の通し穴14a
1,1〜14a
1,11、14a
2,1〜14a
2,11は、コネクタ105の端子金具103と各々対向するように設けられている。本実施形態では、例えば11個の通し穴14a
1,1〜14a
1,11を1列に並べた通し穴列14a
1と、11個の通し穴14a
2,1〜14a
2,11を1列に並べた通し穴列14a
2と、の2列が隣接して並べて設けられている。
【0034】
接続部14b
1,1〜14b
1,11、14b
2,1〜14b
2,11は、基板14上にプリントされて設けられ、それぞれに配線Lの端部が半田などにより接続されている。基板14上には、11個の接続部14b
1,1〜14b
1,11を1列に並べた接続部列14b
1と、11個の接続部14b
2,1〜14b
2,11を1列に並べた接続部列14b
2と、の2列が隣接して並べて設けられている。上述した2列の通し穴列14a
1、14a
2、2列の接続部列14b
1、14b
2は、行方向が基板14の長手方向に沿うように、列方向が基板14の短手方向に沿うようにそれぞれ形成されている。そして、長手方向一方側に通し穴列14a
1、14a
2が設けられ、長手方向他方側に接続部列14b
1、14b
2が設けられている。
【0035】
そして、長手方向一方側同士の通し穴列14a
1と、接続部列14b
1と、が対応して設けられ、長手方向他方側同士の通し穴列14a
2と接続部列14b
2と、が対応して設けられている。通し穴列14a
1、14a
2と接続部列14b
1、14b
2とは長手方向に互いに離間して配置され、互いに平行に設けられている。
【0036】
導電パターン14cは、同じ行、同じ列の通し穴14a
1,1〜14a
1,11、14a
2,1〜14a
2,11の内側面に設けた接触部Sと接続部14b
1,1〜14b
1,11、14b
2,1〜14b
2,11とが接続するように、基板14上にプリントなどにより設けられている。このため、基板14には、スルーホール14d
1,1〜14d
1,5、14d
1,8〜14d
1,11(以下、スルーホール14dと略記することもある)が設けられている。スルーホール14d
1,1〜14d
1,5、14d
1,8〜14d
1,11は、接続部列14b
1、14b
2から離れた側の通し穴列14a
1を構成する複数の通し穴14a
1,1〜14a
1,11から隣接する2個の通し穴14a
1,6、14a
1,7(本実施形態では略中央の2つだが隣接していればどこでもよい。)を除いた通し穴14a
1,1〜14a
1,5、14a
1,8〜14a
1,11にそれぞれ対応して設けられている。
【0037】
なお、本実施形態では、通し穴列14a
1を構成する複数の通し穴14a
1,1〜14a
1,11のうち隣接する2個の通し穴14a
1,6、14a
1,7に対応するスルーホールは設けていないが、これに限ったものではない。通し穴列14a
1を構成する複数の通し穴14a
1,1〜14a
1,11のうち1つに対応するスルーホールを設けなくてもよいし、全ての通し穴14a
1,1〜14a
1,11に対応するスルーホールを設けてもよい。
【0038】
各スルーホール14d
1,1〜14d
1,5、14d
1,8〜14d
1,11は、対応する通し穴14a
1,1〜14a
1,5、14a
1,8〜14a
1,11よりも接続部列14b
1、14b
2から離れた側に設けられている。スルーホール14d
1,1〜14d
1,5、14d
1,8〜14d
1,11は、対応する通し穴14a
1,1〜14a
1,5、14a
1,8〜14a
1,11との距離が通し穴列14a
1の中央に近づくに従って近くなるように設けられている。
【0039】
導電パターン14cは、第1〜第4の導電パターン部14c
1〜14c
4を有している。第1の導電パターン部14c
1は、
図7(B)に示すように、基板14の下面(一面)に形成され接続部列14b
1、14b
2に近い側の通し穴14a
2,1〜14a
2,11の内側面に形成された接触部Sと、当該通し穴14a
2,1〜14a
2,11に対応する接続部14b
2,1〜14b
2,11と、の間をそれぞれ直接接続するようにライン状に設けられている。第2の導電パターン部14c
2は、基板14の下面に形成され、通し穴14a
1,1〜14a
1,5、14a
1,8〜14a
1,11の内側面に形成された接触部Sと、当該通し穴14a
1,1〜14a
1,5、14a
1,8〜14a
1,11に対応するスルーホール14d
1,1〜14d
1,5、14d
1,8〜14d
1,11との間を接続するようにライン状に設けられている。
【0040】
第3の導電パターン部14c
3は、
図7(A)に示すように、基板14の上面(他面)に形成され、スルーホール14d
1,1〜14d
1,5、14d
1,8〜14d
1,11と当該スルーホール14d
1,1〜14d
1,5、14d
1,8〜14d
1,11に接続された通し穴14a
1,1〜14a
1,5、14a
1,8〜14a
1,11に対応する接続部14b
1,1〜14a
1,5、14a
1,8〜14a
1,11との間を接続するようにライン状に設けられている。
【0041】
第4の導電パターン部14c
4は、基板14の上面(他面)に形成され、通し穴14a
1,6、14a
1,7の内側面に形成された接触部Sと、当該通し穴14a
1,6、14a
1,7に対応する接続部14b
1,6、14a
1,7と、を接続する。通し穴14a
1,6と接続部14b
1,6とを接続する第4の導電パターン14c
4は、通し穴14a
1,1〜14a
1,6の外側を通って接続部14b
1,6に接続される。通し穴14a
1,7と接続部14b
1,7とを接続する第4の導電パターン14c
4は、通し穴14a
1,7〜14a
1,11の外側を通って接続部14b
1,7に接続される。第3の導電パターン部14c
3は、第4の導電パターン部14c
4よりも外側に形成されている。第3の導電パターン部14c
3は、通し穴列14a
1のうち両端に近い通し穴14a
1,1〜14a
1,5、14a
1,8〜14a
1,11に対応するものほど外側に形成される。
【0042】
上述した基板14は、導通判定部40により制御される駆動手段としてのソレノイド15によって図中長手方向に移動される。基板14は手動により移動されてもよい。
【0043】
空気制御部30は、
図1に示すように、コンプレッサ31と、レギュレータ32と、弁ユニット33と、を有している。
【0044】
コンプレッサ31は、空気を取り込んで圧縮する圧縮部31aと、圧縮部31aによって圧縮された空気を蓄えるタンク31bと、を有している。レギュレータ32は、配管35を通じてタンク31bと接続されており、タンク31bからの空気の圧力を所定値に減圧する。弁ユニット33は、配管36を通じてレギュレータ32と接続されており、レギュレータ32からの空気を供給及び遮断する弁装置(図示なし)と、弁装置の下流に設けられ各導通ピンに空気を分配する分配部(図示なし)と、を有している。弁ユニット33の分配部と各導通検査治具10とは、配管12で接続されている。
【0045】
配管12の端部は、
図3〜
図6に示すように、ピン挿通孔111dの貫通方向に沿って配置され、当該ピン挿通孔111dに通された各導通ピン13の周壁13c内に挿入されている。これにより、配管12の吹き出し口12aからは、上方に向けて空気が吹き出される。また、配管12は、その外径が、導通ピン13の周壁13cの内径より小さく形成されている。これにより、配管12の吹き出し口12aからの空気の吹き出しがない状態においては、導通ピン13は重力により下方に落ちて配管12に空気受け部13aが突き当り、ピン本体13bの先端がピン挿通孔111d内に没入する(
図3、
図4)。そして、配管12の吹き出し口12aから空気が吹き出された状態(空気の圧力が加えられた状態)においては、導通ピン13は上方に、空気受け部13aがピンガイド111cに当接するまで移動してピン本体13bの先端がピン挿通孔111dから突出する(
図5、
図6)。ピン挿通孔111dから突出したピン本体13bの先端が、コネクタハウジング104内に進入して端子金具103に近づいて接触する。配管12は、第2基台112の天井壁112aの配管貫通孔112bを貫通した状態で、この天井壁112aに固定されている。このように、配管12は、導通ピン13における空気受け部13aに空気を吹き出して導通ピン13を移動させることで、端子金具103(即ち、導通検査対象としてのワイヤハーネス101)と導通ピン13とを非接触状態から接触状態に切り換える。
【0046】
導通判定部40は、例えば、パーソナルコンピュータなどで構成されており、上述したコンプレッサ31、レギュレータ32、弁ユニット33及びソレノイド15に対し制御信号を送信可能に接続されている。導通判定部40は、導通検査に際して、コンプレッサ31における空気の圧縮の開始及び終了を制御し、レギュレータ32の減圧値を設定し、弁ユニット33による空気の供給及び遮断を制御する。また、導通判定部40は、導通検査に際して、ソレノイド15を制御して、基板14を動かして導通ピン13の周壁13cを配管12に押し付ける。
【0047】
上述したように各基板14の設けた接続部14b
1,1〜14b
1,11、14b
2,1〜14b
2,11には、導通判定部40へと至る配線Lの一端が接続されている。このため、導通ピン13におけるピン本体13bの先端が端子金具103に接触すると、導通判定部40は、配線L、接続部14b
1,1〜14b
1,11、14b
2,1〜14b
2,11、導通パターン14c、通し穴14a
1,1〜14a
1,11〜14a
2,1〜14a
2,11の内側面に設けた接触部S及び導通ピン13を通じて、端子金具103が取り付けられた電線102の導通を判定する。
【0048】
次に、上述した導通検査装置1で行われる導通検査方法について以下に説明する。
【0049】
まず、
図1に示されているように、導通検査対象となるワイヤハーネス101を検査台Kに配索し、ワイヤハーネス101の端末に設けられたコネクタ105のコネクタハウジング104を、対応する導通検査治具10の検査治具本体11に保持させる(保持工程)。これにより、端子金具103付きの電線102が導通検査対象として検査治具本体11に保持される。
図1において、ワイヤハーネス101は、幹線101aの端部及び分岐線101bの端部に設けられたコネクタ105が、導通検査治具10に保持されている。また、当該ワイヤハーネス101における図示しない他のコネクタ105についても同様に図示しない導通検査治具10に嵌合されている。この状態において、導通検査治具10の各導通ピン13は、コネクタ105における対応する各端子金具103に接触していない(
図3及び
図4)。
【0050】
またこのとき、各導通ピン13の周壁13cは、通し穴14a
1,1〜14a
1,11、14a
2,1〜14a
2,11と同軸となる位置に基板14が位置付けられている。この状態において、各導通ピン13は、通し穴14a
1,1〜14a
1,11、14a
2,1〜14a
2,11の内側面に形成された接触部Sに接触していない。
【0051】
次に、導通判定部40は、制御信号を送信して、コンプレッサ31による空気の圧縮を開始し、レギュレータ32における減圧値を設定する。このとき、レギュレータ32の減圧値としては、導通ピン13が上方に移動してその先端が端子金具103に接し、導通ピン13と端子金具103との間の導通を確保するために最低限必要な力で押し付けられて接触する値が設定される。
【0052】
それから、導通判定部40は、制御信号を送信して、弁ユニット33の弁装置を開いて配管12の吹き出し口12aから空気を吹き出させる(空気制御工程)。これにより、吹き出された空気の圧力により各導通ピン13が上方に移動してピン挿通孔111dからそれぞれのピン本体13bの先端を突出させ、各ピン本体13bが対応する各端子金具103と導通を確保するために最低限必要な力で押し付けられて接触する(
図5及び
図6)。
【0053】
このとき、導通ピン13は、配管12の吹き出し口12aや基板14にゆるく支持されているので、
図9(a)、(b)に模式的に示すように、軸心が吹き出し方向に対して傾斜してその姿勢が崩れてしまい、そのため、この姿勢のままでは導通ピン13と端子金具103や基板14との接触が不確実であり、導通検査用の電流が正常に流れない恐れがある。
【0054】
そこで、次に、導通判定部40は、制御信号を送信して、ソレノイド15により基板14の駆動を開始させ、基板14により導通ピン13の周壁13cを押圧して配管12に導通ピン13の周壁13cを押し付ける(押圧工程)。これにより、
図10(a)、(b)に示すように、導通ピン13の軸心が吹き出し方向に沿うようにその姿勢が修正される。
【0055】
これにより、導通ピン13が端子金具103に確実に接触する。また、導通ピン13が基板14に設けた通し穴14a
1,1〜14a
1,11、14a
2,1〜14a
2,11の内側面に形成された接触部Sに確実に接触する。そして、端子金具103が、導通ピン13、基板14上に形成された接触部S、導通パターン14c、接続部14b、配線Lを通じて導通判定部40に電気的に接続される。
【0056】
次に、導通判定部40は、ワイヤハーネス101の複数の電線102のうちの一の電線102を選択し、この一の電線102の両端末の端子金具103に正常(即ち、誤配線等がない)であれば接触される一対の導通ピン13間に通電する。そして、導通判定部40は、それら一対の導通ピン13間に電流が流れるか否かを判断することにより導通を判定する(導通判定工程)。また、これら一対の導通ピン13とこれら以外の他の導通ピン13との導通を検査して電線102間の短絡や誤配線の有無を判定してもよい。
【0057】
導通判定部40は、ワイヤハーネス101の複数の電線102の全てについて上記と同様に導通を検査する。導通判定部40は、全ての導通検査が終了すると、制御信号を送信して、ソレノイド15を駆動して基板14を導通ピン13の周壁13cから離す。その後、導通判定部40は、弁ユニット33の弁装置を閉じて配管12の吹き出し口12aからの空気の吹き出しを停止する。これにより、各導通ピン13は落下して、空気受け部13aが配管12の吹き出し口12aに突き当り、当該配管12によって保持される(
図3及び
図4)。また、導通判定部40は、制御信号を送信して、コンプレッサ31による空気の圧縮を停止して、導通検査を終了する。
【0058】
上述した実施形態によれば、導通ピン13を空気の圧力により端子金具103に近づいて接触させる。このようにしたことから、空気の圧力を用いることで、毎回の導通検査において導通ピン13と端子金具103との間の導通を確保するために最低限必要な力で当該導通ピン13を端子金具103に近づいて接触させることができる。そのため、端子金具103の変形や損傷を効果的に抑制することができる。また、コイルバネのように劣化がないことから、常に一定の力で導通ピン13を端子金具103に接触させることができ、そのため、一定の品質を保つことができる。
【0059】
また、上述した実施形態によれば、基板14により導通ピン13の周壁13cが、配管12の端部に押し付けられている。このため、導通ピン13の姿勢が配管12の吹き出し方向に沿うように矯正されるため、導通ピン13と端子金具103との接触の安定性を図ることができる。
【0060】
また、上述した実施形態によれば、基板14には、周壁13cに接触する接触部Sと、配線Lに接続される接続部14bと、の間に導電パターン14cが形成されている。これにより、導通ピン13を押圧する基板14を介して導通ピン13と接続することができるため、より精度の高い導通検査を行うことができる。
【0061】
また、上述した実施形態によれば、基板14には、周壁13c及び配管12の端部を通す通し穴14aが複数設けられ、複数の通し穴14aの内側面が周壁13cに接触する接触部Sとなる。これにより、1つの基板14で、複数の導通ピン13の周壁13cを押圧することができる。
【0062】
また、上述した実施形態によれば、スルーホール14dを設けることにより、簡単に、2列の通し穴列14a
1、14a
2を、2列の接続部列14b
1、14b
2に接続する導電パターン14cを設けることができる。
【0063】
なお、上述した実施形態によれば、押圧部材として周壁13c及び配管12の端部を通す通し穴14aが複数設けられた基板14であり、複数の通し穴14aの内側面が立壁に接触する接触部Sとしていたが、これに限定されるものではなく、導通ピン13と配管12の端部とが確実に接触するように導通ピン13を押圧して配管12の端部に押し付けることができるものであれば、その構成は任意である。
【0064】
また、上述した実施形態によれば、基板14には、スルーホール14dを設けていたが、これに限ったものではない。通し穴14a同士の間隔が広かったり、通し穴14aの数が少ない場合には、スルーホール14dを設けなくても、通し穴14aとそれに対応する接続部14bとを導電パターン14cで直接接続するようにしてもよい。
【0065】
また、上述した実施形態によれば、重力により導通ピン13を落下させることにより導通ピン13を端子金具103から引き離す構成であったが、これに限定するものではなく、例えば、配管12の端部から空気を吸い込むことにより、導通ピン13を引き付けて端子金具103から引き離す構成としてもよい。
【0066】
また、上述した実施形態では、検査治具本体11がコネクタ105(即ち、コネクタハウジング104)を保持することにより、間接的に端子金具103を保持する構成であったが、これに限定されるものではなく、例えば、端子金具103がコネクタハウジング104に収容されない構成としたワイヤハーネスにおいて、端子金具103を直接保持するように検査治具本体11を構成してもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、導通ピン13の立壁として円筒状の周壁13cに設けていたが、これに限ったものではない。立壁としては、導通ピン13の空気受け部13aから下方に立設していればよく、例えば空気受け部13aから下方に立設した一対の立壁片から構成されていてもよい。
【0068】
また、上述した実施形態では、電線102の両端末に設けられた端子金具103のそれぞれに、上記導通検査治具10の導通ピン13を接触させるものであったが、これに限定されるものではない。例えば、電線102の一方の端末に設けられた端子金具103に当該導通ピン13を接触させて、他方の端末に設けられた端子金具103には、他の構成の導通ピン13を接触させる構成などとしてもよい。
【0069】
また、上述した実施形態では、端子金具103とピン本体13bとが上下方向に対向して接触していたが、これに限ったものではない。本実施形態のように、相手コネクタの端子金具と接続する筒状の端子接続部を有する端子金具103であれば、ピン本体13bを筒状の端子接続部内に挿入して、端子接続部の内面に接触(即ち端子金具103とピン本体13bが水平方向に対向して接触)するようにしてもよい。
【0070】
また、上述した実施形態では、ピン本体13bは、空気受け部13aから突出するように設けていたが、これに限ったものではないピン本体13bは、一端が空気受け部13aよりも上方に立設するように他端が周壁13cに固定されるようにしてもよい。
【0071】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。