(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に開示された印刷装置では、筐体内への液体の浸入量が多くなると、排水処理に時間がかかって排水が間に合わずに内部で水が漏れてしまう可能性がある。筐体の外部への排水量を多くするためには、排水口を大きくして短時間で排水できるようにすることが考えられる。ところが、排水口を大きくしすぎると、排水口から異物が進入したり、デザイン性の制約が大きくなったりする問題がある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、排水口の大型化を抑制しながら、筐体内での浸水を抑制することができるサーマルプリンタおよびサーマルプリンタに用いられる印字ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るサーマルプリンタは、プラテンローラを備えるプラテンユニットおよびヘッドユニットを有する印字ユニットが筐体に収容されたサーマルプリンタであって、携行時の姿勢として想定された想定携行姿勢で、前記筐体に浸入した液体を滞留させる滞留部を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るサーマルプリンタは、想定携行姿勢とされた状態で筐体に浸入した液体を滞留させる滞留部を備えている。このため、排水口を大きくすることにより、筐体からの液体が排出を短時間で済ませるようにしなくとも、滞留部が設けられているので、筐体内での浸水を抑制することができる。したがって、排水口の大型化を抑制しながら、筐体内での浸水を抑制することができる。
【0010】
本発明に係るサーマルプリンタは、前記筐体に浸入した液体を前記滞留部に案内する流通路が形成されているものであってもよい。
【0011】
本発明に係るサーマルプリンタでは、筐体に浸入した液体を滞留部に案内する流通路が形成されている。このため、筐体に浸入した液体を滞留部で滞留させやすくすることができる。したがって、より好適に排水口の大型化を抑制しながら、筐体内での浸水を抑制することができる。
【0012】
本発明に係るサーマルプリンタは、前記流通路には、前記滞留部側が低くなる傾斜が形成されているものであってもよい。
【0013】
本発明に係るサーマルプリンタでは、流通路に滞留部側が低くなる傾斜が形成されている。このため、筐体内に浸入した液体をさらに確実に滞留部に案内することができる。
【0014】
本発明に係るサーマルプリンタは、前記印字ユニットによって印字される記録紙を排出する排出口が前記筐体に形成されており、前記滞留部は、前記排出口よりも重力方向下方に設けられているものであってもよい。
【0015】
本発明に係るサーマルプリンタでは、想定携行姿勢とされた状態で、滞留部が排出口よりも重力方向下方に設けられている。このため、排出口から浸入した液体を確実に滞留部に集めることができる。
【0016】
本発明に係るサーマルプリンタは、前記記録紙を収容する収容部が形成され、前記収容部を開閉する開閉カバーを枢支するヒンジ構造が形成されており、前記滞留部に滞留する液体を排出する排液口が前記ヒンジ構造に形成されているものであってもよい。
【0017】
本発明に係るサーマルプリンタでは、滞留部に滞留する液体を排出する排液口が、開閉カバーを枢支するヒンジ構造に形成されている。このため、筐体内の液体を排出するための排液口を別途形成する必要がなく、製造の負担を軽減することができる。特に、ヒンジ構造を構成する際に生じる開口は、小さな開口となることが多いので、排液口の大型化の抑制に寄与することができる。
【0018】
本発明に係るサーマルプリンタは、前記プラテンユニットは、前記プラテンローラを支持するプラテンフレームを備えており、前記滞留部が、前記プラテンユニットと一体的に形成されているものであってもよい。
【0019】
本発明に係るサーマルプリンタでは、プラテンローラを支持するプラテンフレームを備えており、このプラテンフレームと滞留部とが一体的に形成されている。このため、プラテンフレームと滞留部とまとめて形成できるので、製造工程の簡略化に寄与することができる。
【0020】
本発明に係るサーマルプリンタは、前記滞留部に滞留する液体を前記筐体に形成された排液口に案内する流通部が形成されているものであってもよい。
【0021】
本発明に係るサーマルプリンタでは、滞留部に滞留する液体を筐体に形成された排液口に案内する流通部が形成されている。このため、滞留部に滞留する液体が排液口に到達するまでに、滞留部や流通部から外れた筐体の内部に対する液体の浸入を抑制することができる。
【0022】
本発明に係る印字ユニットは、上記のサーマルプリンタに用いられる印字ユニットであってもよい。
【0023】
この構成によれば、上記のサーマルプリンタに用いた際に、サーマルプリンタの排水口の大型化を抑制しながら、筐体内での浸水を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るサーマルプリンタおよびサーマルプリンタに用いられる印字ユニットによれば、排水口の大型化を抑制しながら、筐体内での浸水を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は、サーマルプリンタ1におけるペーパーカバー3が閉位置の状態を示す斜視図である。
図2は、ペーパーカバーが開位置の状態を示す斜視図である。なお、以下の説明では、発明を理解し易くするために、適宜構成部品の一部を省略したり、形状を単純化したり、縮尺を変更したりする等、図示を簡略化している。また、図中において、FRは前方を、LHは左方を、UPは上方をそれぞれ示す。また、
図3〜
図9においては、各構成部品の構造の説明にあたり、サーマルプリンタ1におけるペーパーカバー3を閉じた状態の向きで各構成部品を示している。また、サーマルプリンタ1は、使用者に携行されて使用されることがあり、その上下方向が定まらないことがあるが、本実施形態では、サーマルプリンタ1が
図1に示す前後上下左右方向を向いた状態を携行時の姿勢として想定された想定携行姿勢とし、この想定携行姿勢にあるサーマルプリンタ1について説明する。
【0028】
図1、
図2に示すように、サーマルプリンタ1は、筐体であるケーシング2を備えている。ケーシング2は、開口部2aを有している。また、サーマルプリンタ1は、開口部2aを開閉する開閉カバーであるペーパーカバー3を備えている。ペーパーカバー3は、ケーシング2に回動可能に支持されている。さらに、サーマルプリンタ1は、ケーシング2に収容された印字ユニット4を備えている。
【0029】
ケーシング2は、ポリカーボネート等の樹脂材料や金属材料からなり、その上部は前壁10を有する直方体状に形成される一方、下部は前方に向けて開口する開口部2aを有する箱型形状に形成されている。ケーシング2の前壁10における上部には、サーマルプリンタ1の各種操作を行う操作部11が配設されている。操作部11としては、電源スイッチやFEEDスイッチ等の各種機能スイッチ12が配設されるとともに、機能スイッチ12に隣接して電源スイッチのON/OFFの情報を知らせるPOWERランプや、サーマルプリンタ1のエラー等を知らせるERRORランプ等の各種ランプ13が配設されている。また、ケーシング2の前壁10と側壁15との間には、ペーパーカバー3のオープンボタン18が設けられている。
【0030】
ケーシング2の下部には、開口部2aを通してロール紙Rが収容されるロール紙収容部21が画成されている。ロール紙収容部21は、ロール紙Rを保持するガイドプレート22を備え、このガイドプレート22とペーパーカバー3の内面との間でロール紙Rを覆うように保持している。ガイドプレート22は、左右方向から見た断面視で弧状とされ、その内周面にロール紙Rの外周面が接触した状態でロール紙Rを保持するとともに、ロール紙Rから引き出された記録紙Pを印字ユニット4まで案内する。なお、本実施形態で用いられる記録紙Pは、感熱紙であって、各種ラベルや、レシート、チケットの印刷等に好適に使用される。この記録紙Pは、ロール状に巻回されることで、中空孔を有するロール紙Rを構成している。そして、印字ユニット4は、記録紙Pのうち、ロール紙Rから引き出された部分に対して印刷を行う。
【0031】
ペーパーカバー3は、ポリカーボネート等の樹脂材料からなり、ペーパーカバー3の下方には、ペーパーカバー3を枢支する図示しないヒンジ構造が形成されている。ペーパーカバー3は、ヒンジ構造によりケーシング2に対して回動可能にされる。ヒンジ構造は、ケーシングに設けられたヒンジシャフトと、ペーパーカバー3に設けられたヒンジ板が回動可能に支持されて形成されている。また、ペーパーカバー3は、その上端が後述するプラテンユニット32を介してケーシング2に係止可能に構成されている。そして、オープンボタン18を押下することにより、ケーシング2とペーパーカバー3との係止が解除され、ペーパーカバー3が
図1に示す閉位置から
図2に示す開位置へ回動する。また、ペーパーカバー3の閉位置において、ペーパーカバー3の上端縁とケーシング2の前壁10における下端縁との間に形成された隙間は、印字ユニット4によって印字される記録紙Pが排出される排出口24を構成している。
【0032】
排出口24の開口縁には、排出口24から排出される記録紙Pを切断する切断刃25が配設されている。切断刃25は、ケーシング2の前壁10における下端縁(開口縁のうち、上側に位置する部分)、及びペーパーカバー3の上端縁にそれぞれ一体で形成され、記録紙Pを切断刃25に向けて引き倒すことにより、記録紙Pが切断される。
【0033】
また、ケーシング2における裏側上部には、ストラップやフックが取り付け可能とされている。使用者等がサーマルプリンタ1を携行する場合などには、ストラップを首や肩に掛けたり、フックを腰ベルトに取り付けたりなどしてサーマルプリンタ1を携行することが多くなると想定される。このため、
図1に示す前後上下左右方向を向いた状態が、サーマルプリンタの想定携行状態となる。
【0034】
印字ユニット4は、ケーシング2の前壁10における下端部に設けられたヘッドユニット31と、ペーパーカバー3の上端部に設けられ、ペーパーカバー3の開閉操作に伴いヘッドユニット31に対して着脱可能に組み合わされるプラテンユニット32と、を備えている。
図2に示すように、プラテンユニット32は、ペーパーカバー3に取り付けられるプラテンフレーム35と、プラテンフレーム35に回転可能に支持されたプラテンローラ36と、を備えている。
【0035】
図3は、印字ユニット4のプラテンユニット32を上方から見た斜視図である。
図4は、プラテンユニット32を後方から見た背面図である。プラテンローラ36は、
図3に示すように、左右方向に沿って延びるプラテン軸41と、プラテン軸41に外装されたゴム等からなるローラ本体42と、を備えている。プラテン軸41の両端部には、プラテン軸41を回転可能に支持する軸受43がそれぞれ外装されている。各軸受43は、プラテンフレーム35(
図2参照)に保持され、これら軸受43を介してプラテンローラ36がプラテンフレーム35に回転可能に支持されている。
【0036】
プラテン軸41の右側端部には、プラテン用ギヤ45が装着されている。また、ヘッドユニット31には、このプラテン用ギヤ45に組み合わされる図示しない輪列機構および輪列機構に接続されたモータが設けられている。プラテン用ギヤ45は、プラテンユニット32とヘッドユニット31とが組み合わされたとき、ヘッドユニット31側に設けられた輪列機構に噛合して、モータの回転駆動力をプラテンローラ36に伝達する。また、プラテンユニット32とヘッドユニット31とが組み合わされたとき、プラテンローラ36の外周面にヘッドユニット31におけるサーマルヘッドが圧接される。
【0037】
図5は、プラテンユニット32を左方から見た側面図である。
図6は、
図4のA−A線に沿う断面図である。
図7は、
図5のB−B線に沿う断面図である。
図8は、左排水構造の斜視図である。
図3〜
図7に示すように、プラテンユニット32におけるプラテンフレーム35の左方には、左排水構造60がプラテンフレーム35と一体的に設けられている。また、
図4、7に示すように、プラテンフレーム35の右方には、右排水構造70がプラテンフレーム35と一体的に設けられている。
【0038】
また、
図7に示すように、プラテンフレーム35の前方には、ケーシング2に浸入した液体を滞留部に案内する流通路80が形成されている。排水構造60,70は、流通路80の重力方向下方に設けられている。さらにいえば、排水構造60,70は、液体の浸入経路となる可能性がある排出口24よりも重力方向下方に設けられている。
【0039】
さらに、流通路80は、ロール紙Rが収容されるロール紙収容部21の重力方向上方に設けられている。排出口24は、ロール紙収容部21の重力方向上方に形成されており、排出口24から浸入した液体は下方に落下する。このとき、ロール紙収容部21の重力方向上方に流通路80が設けられていることにより、流通路80によって液体の落下を阻止し、ロール紙収容部21に対する液体の浸入を抑制している。
【0040】
排水構造60,70は、流通路80の重力方向下方に設けられている。さらにいえば、排水構造60,70は、液体の浸入経路となる可能性がある排出口24よりも重力方向下方に設けられている。
図3、6〜8に示すように、左排水構造60には、ケーシング2に浸入した液体を滞留させる滞留部となる滞留槽61が形成されている。滞留槽61は、平面視した形状が略矩形の滞留槽底部61Aと、滞留槽底部61Aの各辺から立ち上がる4つの滞留槽側壁部61Bとに囲まれて形成されている。また、滞留槽61の上方面は滞留槽開口部とされており、流通路80から案内される水など液体が滞留槽開口部から滞留槽61に流入し、液体は滞留槽61に一時的に滞留可能とされている。滞留槽底部61Aは、傾斜面とされており、その傾斜面の最下端位置には、小径孔62が形成されている。
【0041】
小径孔62は、滞留槽61の重力方向下方に形成されており、滞留槽61に滞留する液体を流通させる。小径孔62は小径であり、開口面積が小さいことから、単位時間当たりに通過可能となる液体の流量は制限される。このため、流通路80から導入された液体が滞留槽61に滞留することが生じやすくなる。
【0042】
小径孔62の重力方向下方には、液体誘導領域63が形成されている。液体誘導領域63は、外側壁63Aと、内側壁63Bと、底部63Cと、背面部63Dとによって囲まれている。また、外側壁63A、内側壁63B、底部63Cの前方面には、ペーパーカバー3が当接している。こうして、液体誘導領域63は、外側壁63A、内側壁63B、底部63C、背面部63D、およびペーパーカバー3に囲まれて形成されている。
【0043】
さらに、液体誘導領域63における底部63Cには、排出孔64が形成されている。排出孔64の開口面積は、滞留槽61の滞留槽底部61Aに形成された小径孔62の開口面積よりも大きくされている。また、液体誘導領域63は、滞留槽61に対して高さ方向の長さが長いものの、底面積が小さくされている。そのため、両者の容積を比較すると、滞留槽61の容積は、液体誘導領域63の容積よりも大きくされている。
【0044】
また、液体誘導領域63における内側壁63Bのさらに内側には、隔絶壁65が設けられている。隔絶壁65の内側には、ロール紙Rが配設されている。隔絶壁65は、隔絶壁65の外側からの液体の浸入を阻止する。このため、ロール紙Rにおける縁部の濡れを抑制している。さらに、液体誘導領域63を形成する底部63Cの下方には、ボス67が設けられている。左排水構造60は、プラテンフレーム35と共通する樹脂材料で形成され、プラテンフレーム35と左排水構造60は共通の金型を用いて一体成型されている。このため、プラテンフレーム35と滞留槽61、プラテンフレーム35と液体流動領域63などは一体的に形成されている。
【0045】
図7に示すように、右排水構造70は、左排水構造60の構造と形状はやや異なるが、おおよそ共通する構造をなしている。右排水構造70は、滞留槽底部71Aと滞留槽側壁部71Bとに囲まれた滞留槽71を備えており、滞留槽底部71Aには小径孔72が形成されている。
【0046】
また、滞留槽71の重力方向下方には、外側壁73Aと、内側壁73Bと、底部73Cと、背面部73Dとによって囲まれて液体誘導領域73が形成されており、底部73Cには、排出孔74が形成されている。さらに、内側壁73Bの内側には、隔絶壁75が設けられており、底部73Cの下方には、ボス77が形成されている。右排水構造70も左排水構造60と同様、プラテンフレーム35と共通する樹脂材料で形成され、プラテンフレーム35と右排水構造70は共通の金型を用いて一体成型されている。このため、プラテンフレーム35と滞留槽71、プラテンフレーム35と液体流動領域73などは一体的に形成されている。
【0047】
また、流通路80は、左流通路81および右流通路82を備えて構成される。左右流通路81,82は、プラテンローラ36におけるプラテン軸41の直下に形成されており、サーマルプリンタ1の左右方向中央位置よりも左に左流通路81が形成され、右に右流通路82が形成されている。なお、流通路80の前面側には、ペーパーカバー3が配置されており、ペーパーカバー3が左右流通路81,82の一側の壁面を構成している。
【0048】
流通路80は、その長手方向中央部が重力方向の最も高い位置に配置されており、左流通路81は、その右端部が重力方向の最も高い位置に配置され、左端部が重力方向の最も低い位置に配置されている。また、右流通路82は、その左端部が重力方向の最も高い位置に配置され、右端部が重力方向の最も低い位置に配置されている。このため、左右流通路81,82には、それぞれ滞留槽側の方が非滞留槽側よりも低くなる傾斜が形成されている。
【0049】
また、左流通路81の左端部(外側端部)には、左案内路83が形成されている。左案内路83は、重力方向に沿って形成されており、その上端部が左流通路81につながり、下端部が滞留槽61につながっている。このため、左流通路81を流通した液体は、左案内路83を介して滞留槽61に案内される。左案内路83の前後位置(左案内路83を正面視した場合には、左案内路83の左右位置)には、重力方向に沿ったガイド壁83A,83Bが形成されている。
【0050】
また、右流通路81の右端部(外側端部)には、左案内路83と同様の右案内路が形成されている。右案内路は、重力方向に沿って形成されており、その上端部が右流通路82につながり、下端部が滞留槽71につながっている。このため、左流通路81を流通した液体は、右案内路を介して滞留槽71に案内される。右案内路の前後位置(右案内路を正面視した場合には、右案内路の左右位置)には、左案内路83と同様、重力方向に沿ったガイド壁が形成されている。
【0051】
次に、本実施形態に係るサーマルプリンタ1のケーシング2内に浸入した液体の排出工程およびサーマルプリンタ1の作用効果について説明する。本実施形態に係るサーマルプリンタ1では、ケーシング2の内部に液体が浸入し、例えばロール紙Rを濡らすと、記録紙Pに対する悪影響などが出る。このような事態を避けるためには、ケーシング2の内部に浸入した液体をロール紙Rに近づけないことが好適である。
【0052】
図1に示す排出口24から浸入した液体の多くは、流通路80の左流通路81を通って左排水構造60に案内されるか、右流通路82を通って右排水構造70に案内される。ここで、左流通路81を通って左排水構造60に案内された液体の典型的な移動工程について、
図9を参照して説明する。
【0053】
左流通路81を通って左排水構造60に案内された液体は、左案内路83を通って左排水構造60における滞留槽61に移動する。滞留槽61では、左流通路81から移動した液体が滞留しているが、滞留槽底部61Aに形成された小径孔62から液体誘導領域63に少しずつ液体が移動する。
【0054】
液体誘導領域63に移動した液体は、液体誘導領域63内を重力方向下方に移動し、底部63Cに形成された排出孔64から排出される。排出孔64から排出された液体は、ボス67を伝って重力方向下方に移動し、ケーシング2の最下端に形成されたヒンジ構造における隙間(排液口)からケーシング2の外部に排出される。
【0055】
ケーシング2内に対する液体の浸入経路を想定すると、ケーシング2に形成された開口部が考えられ、具体的には、記録紙Pを排出する排出口24やケーシング2の下方に形成されたヒンジ構造の隙間などが考えられる。このうち、サーマルプリンタ1の想定携行姿勢を考慮すると、ヒンジ構造はサーマルプリンタ1の重力方向下方に位置することから、液体が浸入する開口とはなりにくいと考えられ、記録紙Pを排出する排出口24が液体の浸入口となりやすいと考えられる。特に、サーマルプリンタ1を屋外で携行する場合には、雨風にさらされることもあり、このような場合には、雨水などが排出口24から浸入するケースが想定される。
【0056】
本実施形態に係るサーマルプリンタ1では、排出口24の重力方向下方位置に流通路80が形成されている。このため、排出口24から浸入した液体は、流通路80に流れる。流通路80は、左流通路81および右流通路82を備えており、サーマルプリンタ1の左右方向中央位置よりも左に左流通路81が形成され、右に右流通路82が形成されている。このため、排出口24から浸入した液体が左排水構造60または右排水構造70の一方に偏ることを抑制できる。したがって、左右排水構造60,70における滞留槽61,71における液体の滞留容量を有効活用することができる。
【0057】
また、左右流通路81,82には、それぞれ滞留槽側の方が非滞留槽側よりも重力方向下側となる傾斜が形成されている。このため、流通路80に流れ込んだ液体を滞留槽61,7のいずれかの側に誘導することができる。さらに、左流通路81の左端部(外側端部)には、左案内路83が形成されている。このため、左流通路81を通過した液体を左排水構造60における滞留槽61に確実に案内することができる。同様に、右流通路82の右端部(外側端部)には、右案内路84が形成されている。このため、右流通路82を通過した液体を右排水構造70における滞留槽71に確実に案内することができる。
【0058】
さらに、滞留槽61,71は、排出口24の重力方向下方に設けられている。このため、排出口24から浸入した液体は、重力によって下降し、流通路80を介して滞留槽61,71まで案内される。したがって、排出口24から浸入した液体を滞留槽61,71まで効率よく案内することができる。
【0059】
また、滞留槽61は、所定の容積を有しており、ある程度の液体を滞留させる構造となっている。滞留槽61の容積は、流通路80の容積よりも大きく、液体誘導領域63の容積よりも大きくされている。また、例えば滞留槽61の上端の高さ位置まで液体誘導領域63の上端の高さを高くしたとしても、滞留槽61の容積の方が液体誘導領域63の容積よりも大きくなるようにされている。この点は、右排水構造における滞留槽71について、流通路80および液体誘導領域73との関係と共通する。このように、大きな容積を有する滞留槽61が形成されていることにより、ケーシング2の内側に浸入した液体をある程度の量まで滞留槽61で滞留させることができる。したがって、ケーシング2からの液体が排出を短時間で済ませるようにしなくとも、ケーシング2内での例えばロール紙収容部21(
図2参照)などに対する浸水を抑制することができる。よって、排水口の大型化を抑制しながら、ケーシング2内での浸水を抑制することができる。なお、ケーシング2内に浸入した液体は、流通路80、排水構造60(70)、および液体誘導領域63の排水経路を介してヒンジ構造に形成された排液口からケーシング2の外部に排出される。ケーシング2内での浸水とは、この排水経路を外れてケーシング2の内部に浸水することを意味している。
【0060】
さらに、液体誘導領域63の底部63Cに形成された排出孔64の開口面積は、滞留槽61の滞留槽底部61Aに形成された小径孔62の開口面積よりも小さくされている。このため、小径孔62を通過して液体誘導領域63に浸入した液体を、液体誘導領域63に滞留する機会が少ないまま、排出孔64から排出することができる。
【0061】
また、滞留槽61に滞留していた液体は、液体誘導領域63を介して重力方向下方に案内され、底部63Cに形成された排出孔64から排出される。液体誘導領域63は、外側壁63A、内側壁63B、底部63C、背面部63D、さらにはペーパーカバー3で囲まれている。このため、ロール紙収容部21に対する液体に浸入を抑制することができ、ロール紙Rが濡れる事態を抑制することができる。さらに、液体誘導領域63とロール紙収容部21との間には、隔絶壁65が形成されている。このため、ロール紙収容部21に対する液体の浸入をより好適に抑制することができる。
【0062】
さらに、液体誘導領域63の底部63Cに形成された排出孔64の下方にはボス67が形成されている。このため、排出孔64から排出された液体は、ボス67を伝って重力方向下方に整然と移動する。したがって、排出孔64から排出された液体が、ケーシング2内で飛び散るなどの状態を抑制することができる。
【0063】
また、ケーシング2に浸入した液体をケーシング2の外側に排出する排液口がペーパーカバー3を枢支するヒンジ構造に形成されている。このため、ケーシング2内の液体を排出するための排液口をヒンジ構造以外に別途形成する必要がなく、製造の負担を軽減することができる。特に、ヒンジ構造における開口は、小さな開口とされている。このため、排液口の大型化の抑制に寄与することができる。
【0064】
さらに、プラテンユニット32におけるプラテンフレーム35と左排水構造60および右排水構造70は一体的に形成されている。このため、プラテンフレーム35と排水構造60,70をまとめて形成できるので、製造工程の簡略化に寄与することができる。しかも、プラテンフレーム35と排水構造60,70は、樹脂によって一体成型されている。このため、例えば排水構造60,70をケーシング2に設ける場合などと比較して、滞留槽61,71を含めた排水構造を形成するための金型設計の自由度を高くすることができる。その結果、成型コストの抑制に寄与することができる。
【0065】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0066】
例えば、上記の実施形態では、滞留槽61に液体が流入する入口となる滞留槽開口部が滞留槽61の上方面に形成されているが、他の位置に形成されていてもよく、例えば滞留槽61の側面の上方位置に形成されていてもよい。また、上記の実施形態では、滞留槽61における滞留槽開口部が開放された状態とされているが、滞留槽開口部を封鎖する蓋体が設けられていてもよい。蓋体が設けられていることにより、滞留槽61に滞留する液体の滞留槽開口部からの流出を防止することができる。
【0067】
さらに、上記の実施形態では、流通路80の左右両方に、それぞれ排水構造60,70が配置されているが、いずれか一方に排水構造が配置されているようにしてもよい。また、排水構造が流通路80の左右位置に配置されているが、その他の位置、例えば流通路80の前後位置に配置されていてもよい。さらには、前後左右のそれぞれに排水構造が配置されていてもよい。
【0068】
また、小径孔62は滞留槽底部61Aに形成されているが、その他の位置に形成されていてもよく、例えば、滞留槽側壁部61Bの重力方向下方位置に形成されていてもよい。また、液体誘導領域63の底部63Cに排出孔64が形成されているが、他の位置に形成されていてもよく、例えば、内側壁63Bまたは背面部63Dの重力方向下方位置に形成されていてもよい。
【0069】
また、上記の実施形態では、液体誘導領域63,73の内側に隔絶壁65,75を設けているが、隔絶壁65,75を設けないようにしてもよい。ただし、この場合には、ロール紙収容部21に対する液体の浸入を阻止する液体浸入阻止構造を形成するようにしてもよい。