特許第6587908号(P6587908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587908
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】プロトンポンプ機能促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/88 20060101AFI20191001BHJP
   A61K 8/97 20170101ALI20191001BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20191001BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20191001BHJP
   A61P 31/02 20060101ALI20191001BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20191001BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20191001BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20191001BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20191001BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20191001BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20191001BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   A61K36/88
   A61K8/97
   A61P43/00 111
   A61P17/00
   A61P17/00 101
   A61P31/02
   A61P31/04
   A61P31/10
   A61P31/12
   A61Q17/00
   A61Q19/00
   A23L33/105
   A23L2/52
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-220123(P2015-220123)
(22)【出願日】2015年11月10日
(65)【公開番号】特開2017-88537(P2017-88537A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩
(72)【発明者】
【氏名】村上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】幅 愛実
(72)【発明者】
【氏名】山羽 宏行
【審査官】 原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−270224(JP,A)
【文献】 特開2001−151685(JP,A)
【文献】 特開2015−124188(JP,A)
【文献】 Indian Journal of Chemistry,2011年,Vol. 50B,pp. 1136-1139
【文献】 IOSR Journal of Environmental Science, Toxicology and Food Technology,2014年,Vol. 8, No. 8, Ver. I,pp. 22-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/88
A23L 2/52
A23L 33/105
A61K 8/97
A61P 17/00
A61P 31/02
A61P 31/04
A61P 31/10
A61P 31/12
A61P 43/00
A61Q 17/00
A61Q 19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハナカンナ水、エタノール、又は水及びエタノールの混合液による抽出物を含有することを特徴とするプロトンポンプ機能促進剤。
【請求項2】
プロトンポンプがナトリウム/水素イオン交換輸送体である請求項1記載の機能促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンナの抽出物を含有することを特徴とするプロトンポンプ機能促進剤、ならびに該プロトンポンプ機能促進剤を含む医薬品、医薬部外品、化粧品及び飲食品等の各種組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
健常な皮膚表面のpHは、通常4.5〜6.0の弱酸性を維持しており、このpH環境は、病原性の細菌、ウィルス、真菌等の発育を阻止する役割を果たしている。何らかの原因により皮膚表面pHのアルカリ化が起こると病原性の細菌、ウィルス、真菌等の増殖による皮膚疾患を発症するリスクが高くなる。例えば、アトピー性皮膚炎患者の皮膚表面pHは、健常人よりも高く、主要な病原性細菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の検出率も高いことが報告されている(非特許文献1)。又、黄色ブドウ球菌は、伝染性膿痂疹、化膿性汗孔周囲炎やせつ等の皮膚疾患を引き起こすことが知られている(非特許文献2)。
【0003】
そこで、皮膚を酸性に保つことによって、細菌類の発育を阻止する目的で用いられる酸性化粧水が開発されている(非特許文献3)。
【0004】
しかしながら上述の化粧水の効果は、一時的であり、効果の持続性に問題があった。
【0005】
又、上記のように黄色ブドウ球菌が皮膚疾患に関与することが明らかとなるにつれ、黄色ブドウ球菌に対して静菌もしくは殺菌作用を有する剤が開発されてきた。かかる剤としては、マンネンタケ子実体傘部抽出物(特許文献1)、クジン抽出物(特許文献2)、カバノアナタケ抽出物(特許文献3)、キトサン誘導体(特許文献4)等が開示されている。
【0006】
しかしながら上記した剤は、ほとんどが黄色ブドウ球菌の静菌又は殺菌を図るもので、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)やミクロコッカス属菌(Micrococcus spec)等の皮膚における常在菌にも静菌又は殺菌作用を及ぼしてしまうため、常在菌叢に変化をきたして、皮膚のホメオスタシスに影響を及ぼし、日和見感染を招く危険性を生じることもあった。
【0007】
皮膚表面pHの弱酸性化には、汗や皮脂に含まれる成分の影響が考えられていたが、近年、表皮ケラチノサイトに存在するプロトンポンプが重要な役割を果たしており、プロトンポンプの一種であるナトリウム/水素イオン交換輸送体(Na/H exchanger:NHE)の機能低下が皮膚表面pHの上昇につながることが明らかにされている(非特許文献4、5)。プロトンポンプの機能低下にともなう皮膚表面pHの上昇は、皮膚における病原性の細菌、ウィルス、真菌等の増殖につながる危険性がある。
【0008】
プロトンポンプの機能を促進することにより、皮膚表面のpHを弱酸性に維持し、病原性の細菌、ウィルス、真菌等の発育を阻止することができる物質の開発が望まれる。
【0009】
カンナは、カンナ(Canna)科カンナ(Canna)属に属する多年草で、地下に根茎(球根)をつくる。カンナには、多くの園芸品種があり、主に鑑賞用に用いられるが、これまで、抗炎症作用(特許文献5)、エストロゲン様作用(特許文献6)、ホルモン補充療法効果促進作用(特許文献7)、皮脂合成抑制作用(特許文献8)があることが知られている。しかしながら、プロトンポンプの機能促進効果については、これまで何ら知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−116162
【特許文献2】特開平8−73364
【特許文献3】特開平10−120589
【特許文献4】特開平10−158305
【特許文献5】特開平4−270224
【特許文献6】特開2007−191452
【特許文献7】特開2011−111390
【特許文献8】特開2015−124188
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】遠藤 薫ら,日本皮膚科学会誌,110(1),19−25(2000)
【非特許文献2】標準皮膚科学,第6版,池田重雄監修,医学書院,368−372(2001)
【非特許文献3】香粧品化学,田村健夫著,日本毛髪科学協会,256−259(1987)
【非特許文献4】Behne MJ et al,J.Biol.Chem.,277(49),47399−47406(2002)
【非特許文献5】Choi EH et al,J.Invest.Dermatol.,127(6),2847−2856(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、プロトンポンプの機能を促進することにより、皮膚表面のpHを弱酸性に維持することにより、病原性の細菌、ウィルス、真菌等の発育を阻止することができる、プロトンポンプ機能促進剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題の解決に向け鋭意検討を行った結果、カンナの抽出物が優れたプロトンポンプ機能促進作用を有すること、それにより皮膚表面のpHを弱酸性に維持することにより、病原性の細菌、ウィルス、真菌等の発育を阻止することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)カンナの抽出物を含有することを特徴とするプロトンポンプ機能促進剤。
(2)プロトンポンプがナトリウム/水素イオン交換輸送体である(1)記載の機能促進剤。
(3)(1)又は(2)記載の剤を含む、皮膚pH調整用外用組成物。
(4)皮膚外用組成物が医薬品又は医薬部外品である、(3)記載の皮膚外用組成物。
(5)皮膚外用組成物が化粧品である、(3)記載の皮膚外用組成物。
(6)(1)又は(2)記載の剤を含む、皮膚pH調整用飲食品。
(7)飲食品が健康食品、機能性食品、特定保健用食品、又は栄養補助食品である、(6)記載の飲食品。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカンナの抽出物は、プロトンポンプ機能促進効果に優れていた。この抽出物を含有することを特徴とするプロトンポンプ機能促進剤は、皮膚表面のpHを弱酸性に維持することにより、病原性の細菌、ウィルス、真菌等の発育を阻止する。又、本発明のプロトンポンプ機能促進剤は、作用が緩和な植物の抽出物を有効成分とすることから、副作用がなく安全性が高い。よって、医薬品、医薬部外品、化粧品、飲食品に安心して使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明でいうカンナには、ハナカンナ(Canna generalis Bailey)、ダンドク(Canna indica L. var. orientalis Hook. fil.)及びその種間雑種あるいは属間雑種等カンナ科に含まれる植物が挙げられ、ハナカンナやその種間雑種等は市販されている品種を、そして、ダンドクは九州等に自生するものを利用することができる。
【0017】
本発明に用いるカンナの抽出物とは、植物体の葉、茎、花、実、根茎等の植物体の一部又は全草から抽出したものである。好ましくは、植物体の根茎から抽出して得られるものが良い。又、抽出には、これらの植物体をそのまま使用してもよく、乾燥、粉砕、細切等の処理を行ってもよい。
【0018】
本発明のカンナの抽出方法は、特に限定されず、例えば、加熱抽出したものであっても良いし、常温又は低温で抽出したものであっても良い。抽出する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコール及び液状多価アルコール等の極性溶媒が良く、特に好ましくは、水、エタノール、1,3−ブチレングリコール及びプロピレングリコールが良い。これらの溶媒は、1種でも2種以上を混合して用いても良い。
【0019】
上記抽出物は抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて濃縮、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭等の処理をして用いても良い。又、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良いし、カラム精製等を行い、有効成分を濃縮したり単離したりしてから用いても良い。本発明で用いるカンナは、天然由来の植物であり、カンナから抽出される成分は、多様な構造の化合物が多数同時に存在する混合物である。したがって、含有する成分の構造又は特性をすべて明らかにすることは困難であり、抽出物として扱うことが好ましい。
【0020】
本発明でいうpH調整とは、皮膚表面のpHを4.0〜6.5、好ましくは、4.5〜6.0の弱酸性に維持することをいう。
【0021】
本発明でいうプロトンポンプとは、哺乳類細胞の膜に存在し、細胞内の水素イオン(H)を細胞外に能動輸送するタンパク質である。又、ナトリウム/水素イオン交換輸送体とは、細胞内の水素イオン(H)と細胞外のナトリウムイオン(Na)を1:1で交換輸送する交換輸送体タンパク質であり、細胞内のイオン濃度や浸透圧の調整に重要な役割を果たしている。
【0022】
本発明における「プロトンポンプ機能促進」とは、表皮ケラチノサイトにおけるプロトンポンプ遺伝子の発現及びそのタンパク質合成の促進をいうが、それに続く細胞内から細胞外へのH輸送の促進をも包含する。
【0023】
表皮ケラチノサイトにおいて、プロトンポンプの一種であるNHEが正常に機能すると細胞内にNaが取り込まれるとともに細胞外にHが輸送される。この細胞外に輸送されたHが皮膚表面pHの弱酸性化に寄与する(Behne MJ et al,J.Biol.Chem.,277(49),47399−47406(2002),Choi EH et al,J.Invest.Dermatol.,127(6),2847−2856(2007))。皮膚表面pHが弱酸性であることは、病原性の細菌、ウィルス、真菌等の発育を阻止する役割を果たしており、皮膚表面pHが上昇した皮膚では、主要な病原性細菌である黄色ブドウ球菌の検出率が高まり、この黄色ブドウ球菌がアトピー性皮膚炎、伝染性膿痂疹、化膿性汗孔周囲炎やせつ等の皮膚疾患に関連する(遠藤 薫ら,日本皮膚科学会誌,110(1),19−25(2000),標準皮膚科学,第6版,池田重雄監修,医学書院,368−372(2001))。したがって、本発明に用いるカンナの抽出物は、プロトンポンプ機能を促進する作用を介して、皮膚表面のpHを弱酸性に維持することにより、病原性の細菌、ウィルス、真菌等の発育を阻止することができる。又、カンナの抽出物は、当該病原性微生物の発育阻止作用を介して、病原性微生物に起因する皮膚疾患、例えば、アトピー性皮膚炎、伝染性膿痂疹、化膿性汗孔周囲炎やせつ等の予防や改善に有用である。
【0024】
本発明のプロトンポンプ機能促進剤を生体内に投与する場合は、そのまま投与することも可能であるが、本発明の効果を損なわない範囲で適当な添加物とともに皮膚外用組成物に含有して提供することが好ましい。本発明の皮膚外用組成物には、医薬品、医薬部外品、化粧品等が含まれる。
【0025】
本発明のプロトンポンプ機能促進剤を医薬品に含有する場合は、薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物と混合し、患部に適用するのに適した製剤形態の各種製剤に製剤化することができる。薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、その剤形、用途に応じて賦形剤、増粘剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、保存剤、分散剤、乳化剤、ゲル化剤、色素、香料等を用いることができる。本発明の医薬品に適した形態は外用製剤であり、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、液剤、貼付剤等が挙げられる。軟膏剤は、均質な半固形状の外用製剤をいい、油脂性軟膏、乳剤性軟膏、水溶性軟膏を含む。ゲル剤は、水不溶性成分の抱水化合物を水性液に懸濁した外用製剤をいう。液剤は、液状の外用製剤をいい、ローション剤、懸濁剤、乳剤、リニメント剤等を含む。
【0026】
本発明のプロトンポンプ機能促進剤を医薬部外品や化粧品に含有する場合は、その剤形は、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、粉末分散系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水−油二層系、又は水−油−粉末三層系等のいずれでもよい。又、当該医薬部外品や化粧品は、プロトンポンプ機能促進剤とともに、皮膚外用組成物において通常使用されている各種成分、添加剤、基剤等をその種類に応じて選択し、適宜配合し、当分野で公知の手法に従って製造することができる。その形態は、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、スプレー状等のいずれであってもよい。配合成分としては、例えば、油脂類(オリーブ油、ヤシ油、月見草油、ホホバ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油等)、ロウ類(ラノリン、ミツロウ、カルナウバロウ等)、炭化水素類(流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、ワセリン等)、脂肪酸類(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等)、高級アルコール類(ミリスチルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等)、エステル類(ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、トリオクタン酸グリセリン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル等)、有機酸類(クエン酸、乳酸、α−ヒドロキシ酢酸、ピロリドンカルボン酸等)、糖類(マルチトール、ソルビトール、キシロビオース、N−アセチル−D−グルコサミン等)、蛋白質及び蛋白質の加水分解物、アミノ酸類及びその塩、ビタミン類、植物・動物抽出成分、種々の界面活性剤、保湿剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、安定化剤、防腐剤、殺菌剤、香料等が挙げられる。
【0027】
医薬部外品や化粧品の種類としては、例えば、化粧水、乳液、ジェル、美容液、一般クリーム、日焼け止めクリーム、パック、マスク、洗顔料、化粧石鹸、ファンデーション、おしろい、浴用剤、ボディローション、ボディシャンプー、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、頭皮用ローション、頭皮用クリーム、ヘアトニック、育毛剤等が挙げられる。
【0028】
本発明の皮膚外用組成物におけるプロトンポンプ機能促進剤の含有量は、表皮ケラチノサイトにおけるプロトンポンプ機能促進作用を発揮できる量である限り特に限定はされないが、例えばカンナの抽出物の乾燥固形物重量として0.00001〜10重量%が好ましく、0.0001〜1重量%がより好ましい。上記の量はあくまで例示であって、組成物の種類や形態、一般的な使用量、効能・効果、及びコスト等を考慮して適宜設定・調整すればよい。
【0029】
又、本発明のプロトンポンプ機能促進剤は、飲食品にも含有できる。本発明において、飲食品とは、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、又は特定保健用食品を含む意味で用いられる。飲食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状のいずれであってもよい。
【0030】
飲食品の種類としては、パン類、麺類、菓子類、乳製品、水産・畜産加工食品、油脂及び油脂加工食品、調味料、各種飲料(清涼飲料、炭酸飲料、美容ドリンク、栄養飲料、果実飲料、乳飲料等)及び該飲料の濃縮原液及び調整用粉末等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0031】
本発明の飲食品は、その種類に応じて通常使用される添加物を適宜含有してもよい。添加物としては、食品衛生上許容されうる添加物であればいずれも使用できるが、例えば、ブドウ糖、ショ糖、果糖、異性化液糖、アスパルテーム、ステビア等の甘味料;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料;デキストリン、澱粉等の賦形剤;結合剤、希釈剤、香料、着色料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
【0032】
本発明の飲食品におけるカンナの抽出物の含有量は、表皮ケラチノサイトにおけるプロトンポンプ機能促進作用を発揮できる量であればよいが、対象飲食品の一般的な摂取量、飲食品の形態、効能・効果、呈味性、嗜好性及びコスト等を考慮して適宜設定すればよい。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を詳細に説明するため、具体的な実施例を挙げて説明する。これらの実施例は効果を具体的に説明するもので、発明の範囲を限定するものではない。実施例中の含有量は重量%である。
【0034】
[実施例1]
カンナの抽出物を以下のとおり製造した。
(製造例1)ハナカンナ根茎の熱水抽出物の調製
ハナカンナ(根茎の乾燥品)100gに精製水を2L加え、90〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してハナカンナ根茎の熱水抽出物1.5gを得た。
【0035】
(製造例2)ハナカンナ根茎の50%エタノール抽出物の調製
ハナカンナ(根茎の乾燥品)100gに50%エタノール水溶液を2L加え、室温で1週間抽出した後、濾過し、その濾液を減圧濃縮し、凍結乾燥してハナカンナ根茎の50%エタノール抽出物1.3gを得た。
【0036】
(製造例3)ハナカンナ根茎のエタノール抽出物の調製
ハナカンナ(根茎の乾燥品)100gにエタノールを2L加え、室温で1週間抽出した後、濾過し、その濾液を減圧濃縮し、凍結乾燥してハナカンナ根茎のエタノール抽出物0.9gを得た。
【0037】
(製造例4)ハナカンナ全草の熱水抽出物の調製
ハナカンナ(全草の乾燥品)100gに精製水を2L加え、90〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してハナカンナ全草の熱水抽出物1.7gを得た。
【0038】
(製造例5)ハナカンナ全草の50%エタノール抽出物の調製
ハナカンナ(全草の乾燥品)100gに50%エタノール水溶液を2L加え、室温で1週間抽出した後、濾過し、その濾液を減圧濃縮し、凍結乾燥してハナカンナ全草の50%エタノール抽出物1.2gを得た。
【0039】
(製造例6)ハナカンナ全草のエタノール抽出物の調製
ハナカンナ(全草の乾燥品)100gにエタノールを2L加え、室温で1週間抽出した後、濾過し、その濾液を減圧濃縮し、凍結乾燥してハナカンナ全草のエタノール抽出物0.7gを得た。
【0040】
[実施例2]
ハナカンナの抽出物の効果の評価実験を次のとおり行った。
(試験例1)ケラチノサイトにおけるプロトンポンプ機能促進効果の評価
実施例1で製造したハナカンナの抽出物(製造例1〜6)のプロトンポンプ機能に及ぼす影響を、NHE1のmRNA発現量を指標に評価した。具体的方法について以下に記載する。
【0041】
ケラチノサイト由来HaCaT細胞を6wellプレートに1wellあたり5×10個播種し、10%FBSを含むDMEM培養液にて、37℃、5%CO条件下で4日間培養した。次に、各試料(最終濃度1、10μg/mL)を添加したDMEM培養液にて、24時間培養した後、総RNAの抽出を行った。細胞からの総RNAの抽出はTRIZOL Reagent(Invitrogen)を用いて行い、総RNA量は分光光度計(NanoDrop)を用いて260nmにおける吸光度により求めた。mRNA発現量の測定は、細胞から抽出した総RNAを基にしてリアルタイムRT−PCR法により行った。リアルタイムRT−PCR法には、SuperScriptIII Platinum Two−Step qRT−PCR Kit with SYBR Green(Invitrogen)を用いた。すなわち、500ngの総RNAを逆転写反応後、PCR反応(95℃:15秒間、60℃:30秒間、40cycles)を行った。その他の操作は定められた方法に従い、NHE1 mRNAの発現量を、内部標準であるβ−アクチン mRNAの発現量に対する割合として求めた。NHE1発現量は、コントロールのNHE1 mRNAの発現量に対する試料添加群のNHE1 mRNAの発現量の比率として算出した。尚、NHE1及びβ−アクチン用のプライマーは、以下に示したものを使用した。
【0042】
NHE1用のプライマーセット
GCCCTGTTAATCATTCCGTC(配列番号1)
CACATGGAAACCTATCTTCATGAG(配列番号2)
β−アクチン用のプライマーセット
CACTCTTCCAGCCTTCCTTCC(配列番号3)
GTGTTGGCGTACAGGTCTTTG(配列番号4)
【0043】
これらの試験結果を表1に示した。その結果、ハナカンナの抽出物(製造例1〜6)の全てに、比較品のダイズの抽出物を上回る顕著なプロトンポンプ機能促進効果が認められた。又、プロトンポンプ機能促進効果は、全草よりも根茎の抽出物の方が、エタノールよりも熱水抽出物の方が高かった。
【0044】
【表1】
【0045】
[実施例3]製品の処方例
製造例1〜6で製造したハナカンナの抽出物を含有した製品の処方例を以下に示す。
【0046】
(処方例1)ローション
処方 含有量(重量%)
1.ハナカンナの抽出物 0.1
2.1,3−ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 0.1
11.精製水 残量
[製造方法]成分1〜6及び11と、成分7〜10をそれぞれ均一に溶解した後、両者を混合し濾過しローションを調製する。
【0047】
(処方例2) クリーム
処方 含有量(重量%)
1.ハナカンナの抽出物 0.1
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
12.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
13.1,3−ブチレングリコール 8.5
14.精製水 残量
[製造方法]成分2〜9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び11〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。次いで、油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、さらに30℃まで冷却して製品とする。
【0048】
(処方例3)乳液
処方 含有量(重量%)
1.ハナカンナの抽出物 0.1
2.スクワラン 5.0
3.オリーブ油 5.0
4.ホホバ油 5.0
5.セタノール 1.5
6.モノステアリン酸グリセリン 2.0
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(20E.O.) 2.0
9.香料 0.1
10.プロピレングリコール 1.0
11.グリセリン 2.0
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.精製水 残量
[製造方法]成分2〜8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び10〜13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分9を加え、さらに30℃まで冷却して製品とする。
【0049】
(処方例4)ゲル剤
処方 含有量(重量%)
1.ハナカンナの抽出物 0.1
2.エタノール 5.0
3.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
4.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.О.) 0.1
5.香料 適量
6.1,3−ブチレングリコール 5.0
7.グリセリン 5.0
8.キサンタンガム 0.1
9.カルボキシビニルポリマー 0.2
10.水酸化カリウム 0.2
11.精製水 残量
[製造方法]成分2〜5と、成分1及び6〜11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合して製品とする。
【0050】
(処方例5)軟膏
処方 含有量(重量%)
1.ハナカンナの抽出物 2.0
2.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
3.モノステアリン酸グリセリン 10.0
4.流動パラフィン 5.0
5.セタノール 6.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
7.プロピレングリコール 10.0
8.精製水 残量
[製造方法]成分2〜5を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び6〜8を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化し、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0051】
(処方例6)パック
処方 含有量(重量%)
1.ハナカンナの抽出物 0.1
2.ポリビニルアルコール 12.0
3.エタノール 5.0
4.1,3−ブチレングリコール 8.0
5.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
6.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.) 0.5
7.クエン酸 0.1
8.クエン酸ナトリウム 0.3
9.香料 適量
10.精製水 残量
[製造方法]成分1〜10を均一に溶解し製品とする。
【0052】
(処方例7)ファンデーション
処方 含有量(重量%)
1.ハナカンナの抽出物 1.0
2.ステアリン酸 2.4
3.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(20E.O.) 1.0
4.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
5.セタノール 1.0
6.液状ラノリン 2.0
7.流動パラフィン 3.0
8.ミリスチン酸イソプロピル 6.5
9.パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
10.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
11.ベントナイト 0.5
12.プロピレングリコール 4.0
13.トリエタノールアミン 1.1
14.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
15.二酸化チタン 8.0
16.タルク 4.0
17.ベンガラ 1.0
18.黄酸化鉄 2.0
19.香料 適量
20.精製水 残量
[製造方法]成分2〜9を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分20に成分10をよく膨潤させ、続いて、成分1及び11〜14を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分15〜18を加え、水相とする。水相を80℃に昇温し、油相に水相を徐々に加え乳化する。その後、撹拌しながら冷却し、45℃で成分19を加え、30℃まで冷却して製品とする。
【0053】
(処方例8)固形石鹸
処方 含有量(重量%)
1.ハナカンナの抽出物 0.1
2.石鹸素地(*) 80.0
3.グリセリン 10.0
4.ソルビトール 1.0
5.エデト酸 0.1
6.酸化チタン 0.1
7.香料 適量
8.精製水 残量
(*)ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムを含む高級脂肪酸ナトリウム混合物
[製造方法]全成分を混合して、ミキサー及びローラーで混練し、プロッダーで圧縮することによって棒状の成型物に型打ちし、次いで、成形物を冷却し、乾燥することによって、製品を得る。
【0054】
(処方例9)ボディ用洗浄料
処方 含有量(重量%)
1.ハナカンナの抽出物 0.2
2.ステアリン酸 10.0
3.パルミチン酸 8.0
4.ミリスチン酸 12.0
5.ラウリン酸 4.0
6.オレイルアルコール 1.5
7.精製ラノリン 1.0
8.ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 1.0
9.グリセリン 10.0
10.水酸化カリウム 6.0
11.香料 適量
12.防腐剤 適量
13.金属イオン封鎖剤 適量
14.精製水 残量
[製造方法]成分2〜5を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分14の適量に成分10を溶解し、油相に添加しケン化を行う。続いて、成分6〜9をケン化物に添加し、室温でさらに成分1、11〜13及び残りの成分14を添加する。
【0055】
(処方例10)ヘアローション
処方 含有量(重量%)
1.ハナカンナの抽出物 0.2
2.ステアリン酸 5.0
3.セチルアルコール 5.0
4.流動パラフィン 2.0
5.グリセリンモノステアレート 1.3
6.ソルビタンモノオレート 1.5
7.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(10E.O.) 0.8
8.グリセリン 6.0
9.防腐剤 適量
10.精製水 残量
[製造方法]成分2〜7を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び8〜10を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化し、かき混ぜながら冷却して製品とする。
【0056】
(処方例11)ヘアトニック
処方 含有量(重量%)
1.ハナカンナの抽出物 2.0
2.95%エタノール 60.0
3.グリセリン 2.0
4.精製水 残量
[製造方法]成分1を2に溶解し、成分3及び4を加え、十分撹拌混合し、製品とする。
【0057】
(処方例12)シャンプー
処方 含有量(重量%)
1.ハナカンナの抽出物 0.1
2.アルキル硫酸トリエタノールアミン 18.0
3.ラウリン酸ジエタノールアミド 3.0
4.メチルセルロース 0.5
5.香料 適量
6.精製水 残量
[製造方法]成分6に成分4を均一に溶解した後、成分1及び2を加え、70〜75℃で加熱溶解した後、成分3を加え、冷却途中に成分5を加え30℃まで冷却し製品とする。
【0058】
(処方例13)浴用剤
処方 含有量(重量%)
1.ハナカンナの抽出物 5.0
2.炭酸水素ナトリウム 50.0
3.黄色202号 適量
4.香料 適量
5.無水硫酸ナトリウム 残量
[製造方法]成分1〜5を均一に混合し製品とする。
【0059】
(処方例14)錠剤
処方 含有量(重量%)
1.ハナカンナの抽出物 1.0
2.乾燥コーンスターチ 25.0
3.カルボキシメチルセルロースカルシウム 24.0
4.微結晶セルロース 40.0
5.ポリビニルピロリドン 7.0
6.タルク 3.0
[製造方法]成分1〜5を混合し、次いで10%の水を結合剤として加えて、押出し造粒後乾燥する。成形した顆粒に成分6を加えて混合し打錠する。1錠0.52gとする。
【0060】
(処方例15)飲料
処方 含有量(重量%)
1.ハナカンナの抽出物 0.1
2.ステビア 0.05
3.リンゴ酸 5.0
4.アスコルビン酸ナトリウム 1.0
5.香料 0.1
6.精製水 残量
[製造方法]成分1〜5を成分6の一部の精製水に撹拌溶解する。次いで、成分6の残りの精製水を加えて混合し、90℃に加熱して50mLのガラス瓶に充填する。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に関わる、カンナの抽出物を含有することを特徴とするプロトンポンプ機能促進剤は、皮膚表面のpHを弱酸性に維持することにより、病原性微生物の発育を阻止する。従って、病原性微生物に起因する皮膚疾患、例えば、アトピー性皮膚炎、伝染性膿痂疹、化膿性汗孔周囲炎やせつ等の予防や改善を目的とした医薬品、医薬部外品、化粧品、及び飲食品の製造分野において利用できる。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]