特許第6587917号(P6587917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587917
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】溶融紡糸装置及び糸カバー
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/08 20060101AFI20191001BHJP
【FI】
   D01D5/08 A
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-231454(P2015-231454)
(22)【出願日】2015年11月27日
(65)【公開番号】特開2016-108717(P2016-108717A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2018年5月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-240218(P2014-240218)
(32)【優先日】2014年11月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】乾 俊哉
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−177707(JP,A)
【文献】 実開昭47−019508(JP,U)
【文献】 特開2005−042227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの口金から2以上の糸条を構成する複数のフィラメントを紡出する紡糸部と、
前記紡糸部の下方に配置され、前記紡糸部から紡出された複数のフィラメントを冷却する冷却装置と、
前記冷却装置の下方に配置された糸カバーと、
糸条に対して個別に設けられ、前記糸カバーの下方に配置された糸ガイドと、を備え、
前記糸カバーは、
1つの口金に対応する複数のフィラメントを覆う、鉛直方向に沿って延びた筒状部材を備え、
前記筒状部材の側壁部に、前記筒状部材の下端まで延びた、前記筒状部材の内部空間を走行する複数のフィラメントを糸条毎に糸分けする糸分け作業を行うための開口部が形成され、
前記開口部を開閉するための開閉部材と、
前記筒状部材の径方向において前記筒状部材よりも外側に、前記開閉部材の上端部との間に第1隙間をあけて配置された上側レール部材と、
前記筒状部材の径方向において前記筒状部材よりも外側に、前記開閉部材の下端部との間に第2隙間をあけて配置された下側レール部材と、をさらに備え
前記開閉部材の上端部が、前記第1隙間内に位置し、
前記開閉部材の下端部が、前記第2隙間内に位置し、
前記開閉部材は、前記第1隙間及び前記第2隙間に沿って移動可能に構成されることで、前記筒状部材に対して、前記筒状部材の周方向にスライド可能に構成され、
前記下側レール部材は、前記筒状部材の周方向において、前記開口部が配置されている範囲を避けて配置され、
前記上側レール部材は、前記筒状部材の周方向において、前記開口部が配置されている範囲に位置する部分を有することを特徴とする溶融紡糸装置。
【請求項2】
前記糸カバーを複数備え、
複数の前記糸カバーは、
水平な第1方向に配列されることによって列を形成し、
前記筒状部材の、水平で且つ前記第1方向と直交する第2方向における一方側の側壁部に、前記開口部が形成されていることを特徴とする請求項に記載の溶融紡糸装置。
【請求項3】
前記糸カバーの列が、前記第2方向に2列に配列され、
前記第2方向の前記一方側の前記列を形成する前記糸カバーと、前記第2方向の他方側の前記列を形成する前記糸カバーとが、前記第1方向にずれて配置されていることを特徴とする請求項に記載の溶融紡糸装置。
【請求項4】
前記冷却装置が、前記複数のフィラメントに気体を吹き付けて、前記複数のフィラメントを冷却するものであり、
前記第2方向における前記冷却装置の他方側に、前記冷却装置に前記気体を供給するためのダクトが接続されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の溶融紡糸装置。
【請求項5】
前記筒状部材の内壁面に、前記筒状部材の内部空間を走行する複数のフィラメントを目立たせるための処理が施されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の溶融紡糸装置。
【請求項6】
前記糸条は、マルチフィラメントであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の溶融紡糸装置。
【請求項7】
1つの口金から2以上の糸条を構成する複数のフィラメントを紡出する紡糸部と、
前記紡糸部の下方に配置され、前記紡糸部から紡出された複数のフィラメントを冷却する冷却装置と、糸条に対して個別に設けられ、前記冷却装置の下方に配置された糸ガイドと、を備えた溶融紡糸装置に設けられる糸カバーであって、
前記冷却装置と前記糸ガイドとの間に配置され、1つの口金に対応する複数のフィラメントを覆う、鉛直方向に沿って延びた筒状部材を備え、
前記筒状部材の側壁部に、前記筒状部材の下端まで延びた、前記筒状部材の内部空間を走行する複数のフィラメントを糸条毎に糸分けする糸分け作業を行うための開口部が形成され、
前記開口部を開閉するための開閉部材と、
前記筒状部材の径方向において前記筒状部材よりも外側に、前記開閉部材の上端部との間に第1隙間をあけて配置された上側レール部材と、
前記筒状部材の径方向において前記筒状部材よりも外側に、前記開閉部材の下端部との間に第2隙間をあけて配置された下側レール部材と、をさらに備え
前記開閉部材の上端部が、前記第1隙間内に位置し、
前記開閉部材の下端部が、前記第2隙間内に位置し、
前記開閉部材は、前記第1隙間及び前記第2隙間に沿って移動可能に構成されることで、前記筒状部材に対して、前記筒状部材の周方向にスライド可能に構成され、
前記下側レール部材は、前記筒状部材の周方向において、前記開口部が配置されている範囲を避けて配置され、
前記上側レール部材は、前記筒状部材の周方向において、前記開口部が配置されている範囲に位置する部分を有することを特徴とする糸カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融紡糸装置及び溶融紡糸装置に設けられる糸カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の溶融紡糸装置では、紡糸ビーム(本発明の「紡糸部」に相当)から紡出されたフィラメント群(本発明の「複数のフィラメント」に相当)が、紡糸ビームの下方に配置された冷却装置において、冷却風を吹き付けられることによって冷却される。そして、冷却装置によって冷却されて固化したフィラメント群は、冷却装置の下方に配置された油剤付与装置により油剤が塗布された上で、巻取装置に向けて送られる。また、特許文献1では、冷却装置と油剤付与装置との間に延長筒(本発明の「糸カバー」に相当)が配置されている。冷却装置で冷却風を吹き付けられたフィラメント群は、延長筒内において固化が進行する。このとき、延長筒が設けられていることによって、フィラメント群の周囲において、空気の流れに乱れが生じるのを防止することができる。これにより、糸揺れが防止され、糸品質の低下が防止される。
【0003】
特許文献2には、紡糸ヘッド(本発明の「紡糸部」に相当)の紡糸口金から、2本のマルチフィラメント糸(本発明の「糸条」に相当)を形成する複数のフィラメントが溶融押し出しされ(紡出され)、紡出された複数のフィラメントは、加熱筒、冷却筒を経て、2つの分割給油ガイドにおいて、マルチフィラメント毎に2分割される。分割されたマルチフィラメント糸は、合糸装置において合糸された後に巻き取られる。ここで、特許文献2では、分割されたマルチフィラメント糸を合糸して巻き取っているが、1つの紡糸口金から紡出した複数の糸条を、合糸することなく別々に巻き取って、複数のパッケージを形成することも一般的に行われている(例えば、特開平11−131322号公報等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−74241号公報
【特許文献2】特開平7−243129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献2においても、冷却筒と分割給油ガイドとの間に、特許文献1に記載されているような延長筒を設ければ、冷却筒と分割給油ガイドとの間において、複数のフィラメントの周囲において、空気の流れに乱れが生じるのを防止することができる。しかしながら、この場合には、マルチフィラメント糸毎に2分割されるべき複数のフィラメントが、延長筒内を走行する間に重なって一体となってしまい、複数のフィラメントをマルチフィラメント糸毎に2分割する作業が煩雑になってしまう虞がある。
【0006】
本発明の目的は、1つの口金から紡出された2以上の糸条を構成する複数のフィラメントを、容易に糸条毎に糸分けする糸分け作業を容易に行うことが可能な溶融紡糸装置及び糸カバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る溶融紡糸装置は、1つの口金から2以上の糸条を構成する複数のフィラメントを紡出する紡糸部と、前記紡糸部の下方に配置され、前記紡糸部から紡出された複数のフィラメントを冷却する冷却装置と、前記冷却装置の下方に配置された糸カバーと、糸条に対して個別に設けられ、前記糸カバーの下方に配置された糸ガイドと、を備え、前記糸カバーは、1つの口金に対応する複数のフィラメントを覆う、鉛直方向に沿って延びた筒状部材を備え、前記筒状部材の側壁部に、前記筒状部材の下端まで延びた、前記筒状部材の内部空間を走行する複数のフィラメントを糸条毎に糸分けする糸分け作業を行うための開口部が形成され、前記開口部を開閉するための開閉部材と、前記筒状部材の径方向において前記筒状部材よりも外側に、前記開閉部材の上端部との間に第1隙間をあけて配置された上側レール部材と、前記筒状部材の径方向において前記筒状部材よりも外側に、前記開閉部材の下端部との間に第2隙間をあけて配置された下側レール部材と、をさらに備え、前記開閉部材の上端部が、前記第1隙間内に位置し、前記開閉部材の下端部が、前記第2隙間内に位置し、前記開閉部材は、前記第1隙間及び前記第2隙間に沿って移動可能に構成されることで、前記筒状部材に対して、前記筒状部材の周方向にスライド可能に構成され、前記下側レール部材は、前記筒状部材の周方向において、前記開口部が配置されている範囲を避けて配置され、前記上側レール部材は、前記筒状部材の周方向において、前記開口部が配置されている範囲に位置する部分を有する
【0008】
本発明によると、開口部が開閉部材によって閉鎖された状態では、筒状部材の内部空間を走行する糸条の周囲において、空気の流れに乱れが生じにくく、糸条の糸揺れを防止することができる。ここで、糸揺れが生じると糸条の品質低下につながる。したがって、糸揺れを防止することにより、糸の品質低下を防止することができる。一方、2以上の糸条を構成する複数のフィラメントが1つの筒状部材の内部空間を走行する場合、これら複数のフィラメントを糸条毎に糸分けする糸分け作業が必要となる。本発明によると、開口部が開放された状態では、開口部から、筒状部材の内部空間を走行する複数のフィラメントを視認しつつ、内部空間を走行する複数のフィラメントを糸条毎に糸分けする糸分け作業を行うことができる。これにより、筒状部材内を走行するフィラメントに対する糸分け作業を容易に行うことができる。さらに、本発明では、開口部が、筒状部材の下端まで延びているため、例えば、開口部から筒状部材の内部空間に指や糸掛け補助具等を入れて、複数の糸条を糸分けした後、内部空間に入れた指や糸掛け補助具等を筒状部材よりも下方まで移動させることができる。これにより、糸条毎に糸分けしたフィラメントを、対応する糸ガイドに糸掛けする作業を容易に行うことができる。
また、本発明によると、開閉部材が、筒状部材に対して、筒状部材の周方向にスライド可能に構成されたものであるため、筒状部材の周囲に、開口部の開閉時に開閉部材を移動させるための広いスペースを設ける必要がない。
【0011】
の発明に係る溶融紡糸装置は、第の発明に係る溶融紡糸装置において、前記糸カバーを複数備え、複数の前記糸カバーは、水平な第1方向に配列されることによって列を形成し、前記筒状部材の、水平で且つ前記第1方向と直交する第2方向における一方側の側壁部に、前記開口部が形成されている。
【0012】
本発明によると、開閉部材は、筒状部材に対して、筒状部材の周方向にスライド可能に構成されたものであるため、開口部の開閉時に開閉部材が隣接する糸カバーに干渉することがない。また、複数の糸カバーが第1方向に配列されているのに対して、各糸カバーを構成する筒状部材の、第1方向と直交する第2方向における一方側の側壁部に開口部が形成されているため、これら複数の糸カバーについての糸分け作業を容易に行うことができる。
【0013】
の発明に係る溶融紡糸装置は、第の発明に係る溶融紡糸装置において、前記糸カバーの列が、前記第2方向に2列に配列され、前記第2方向の前記一方側の前記列を形成する前記糸カバーと、前記第2方向の他方側の前記列を形成する前記糸カバーとが、前記第1方向にずれて配置されている。
【0014】
本発明によると、第2方向の一方側の列を形成する糸カバーと、第2方向の他方側の列を形成する糸カバーとが、第2方向から見て重なる場合と比較して、第2方向における糸カバーの列同士の間隔を小さくして、糸カバーを高密度に配置することができる。ここで、第2方向における糸カバーの列同士の間隔を小さくすると、第2方向の他方側の列を形成する糸カバーにおいて、2つの糸カバーの列の間のスペースが小さくなる。しかしながら、本発明では、開閉部材は、筒状部材に対して、筒状部材の周方向にスライド可能に構成されたものであるため、開口部の開閉時に、第2方向の他方側の列を形成する糸カバーの開閉部材が、第2方向の一方側の列を形成する糸カバーに干渉することがない。
【0015】
の発明に係る溶融紡糸装置は、第又は第の発明に係る溶融紡糸装置において、前記冷却装置が、前記複数のフィラメントに気体を吹き付けて、前記複数のフィラメントを冷却するものであり、前記第2方向における前記冷却装置の他方側に、前記冷却装置に前記気体を供給するためのダクトが接続されている。
【0016】
本発明によると、糸カバーの、第2方向におけるダクトが配置されるのと反対側から、糸分け作業を行うことができるので、糸分け作業においてダクトが邪魔になることがない。
【0017】
の発明に係る溶融紡糸装置は、第1〜第のいずれかの発明に係る溶融紡糸装置において、前記筒状部材の内壁面に、前記筒状部材の内部空間を走行する複数のフィラメントを目立たせるための処理が施されている。
【0018】
本発明によると、糸分け作業を行う際に、筒状部材の内部空間を走行する糸条を容易に視認することができる。
【0019】
の発明に係る溶融紡糸装置は、第1〜第のいずれかの発明に係る溶融紡糸装置において、前記糸条は、マルチフィラメントである。
【0020】
糸条がマルチフィラメントである場合には、筒状部材の内部空間を、2以上の糸条を構成する多数のフィラメントが走行することになる。そのため、筒状部材の内部空間を走行するフィラメントを視認できないと、これら多数のフィラメントを糸条ごとに糸分けする糸分け作業が困難となる。本発明では、開口部が開放された状態で、開口部から、筒状部材の内部空間を走行する複数のフィラメントを視認しつつ、内部空間を走行する複数のフィラメントを糸条毎に糸分けする糸分け作業を行うことができる。これにより、糸条がマルチフィラメントである場合でも、筒状部材内を走行する複数のフィラメントに対する糸分け作業を容易に行うことができる。
【0021】
の発明に係る糸カバーは、1つの口金から2以上の糸条を構成する複数のフィラメントを紡出する紡糸部と、前記紡糸部の下方に配置され、前記紡糸部から紡出された複数のフィラメントを冷却する冷却装置と、糸条に対して個別に設けられ、前記冷却装置の下方に配置された糸ガイドと、を備えた溶融紡糸装置に設けられる糸カバーであって、
前記冷却装置と前記糸ガイドとの間に配置され、1つの口金に対応する複数のフィラメントを覆う、鉛直方向に沿って延びた筒状部材を備え、前記筒状部材の側壁部に、前記筒状部材の下端まで延びた、前記筒状部材の内部空間を走行する複数のフィラメントを糸条毎に糸分けする糸分け作業を行うための開口部が形成され、前記開口部を開閉するための開閉部材と、前記筒状部材の径方向において前記筒状部材よりも外側に、前記開閉部材の上端部との間に第1隙間をあけて配置された上側レール部材と、前記筒状部材の径方向において前記筒状部材よりも外側に、前記開閉部材の下端部との間に第2隙間をあけて配置された下側レール部材と、をさらに備え、前記開閉部材の上端部が、前記第1隙間内に位置し、前記開閉部材の下端部が、前記第2隙間内に位置し、前記開閉部材は、前記第1隙間及び前記第2隙間に沿って移動可能に構成されることで、前記筒状部材に対して、前記筒状部材の周方向にスライド可能に構成され、前記下側レール部材は、前記筒状部材の周方向において、前記開口部が配置されている範囲を避けて配置され、前記上側レール部材は、前記筒状部材の周方向において、前記開口部が配置されている範囲に位置する部分を有する
【0022】
本発明によると、開口部が開閉部材によって閉鎖された状態では、筒状部材の内部空間を走行する糸条の周囲において、空気の流れに乱れが生じにくく、糸条の糸揺れを防止することができる。一方、2以上の糸条を構成する複数のフィラメントが1つの筒状部材の内部空間を走行する場合、これら複数のフィラメントを糸条毎に糸分けする糸分け作業が必要となる。本発明によると、開口部が開放された状態では、開口部から、筒状部材の内部空間を走行する複数のフィラメントを視認しつつ、内部空間を走行する複数のフィラメントを糸条毎に糸分けする糸分け作業を行うことができる。これにより、筒状部材内を走行する複数のフィラメントに対する糸分け作業を容易に行うことができる。さらに、本発明では、開口部が、筒状部材の下端まで延びているため、例えば、開口部から筒状部材の内部空間に指や糸掛け補助具等を入れて、複数の糸条を糸分けした後、内部空間に入れた指や糸掛け補助具等を筒状部材よりも下方まで移動させることができる。これにより、糸条毎に糸分けしたフィラメントを、対応する糸ガイドに糸掛けする作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、開口部が開閉部材によって閉鎖された状態では、筒状部材の内部空間を走行する糸条の周囲において、空気の流れに乱れが生じにくく、筒状部材の内部空間を走行する糸条の糸揺れを防止することができる。一方、複数の糸条が1つの筒状部材の内部空間を走行する場合、これら複数の糸条を糸分けする作業が必要となる。本発明によると、開口部が開放された状態では、筒状部材の内部空間を走行する糸条を開口部から視認しつつ、開口部から内部空間を走行する糸条の糸分け作業を行うことができる。これにより、筒状部材内を走行する糸条の糸分け作業を容易に行うことができる。さらに、本発明では、開口部が、筒状部材の下端まで延びているため、例えば、開口部から筒状部材の内部空間に指や糸掛け補助具等を入れて、複数の糸条を糸分けした後、内部空間に入れた指や糸掛け補助具等を筒状部材よりも下方まで移動させることができる。これにより、糸条毎に糸分けしたフィラメントを、対応する糸ガイドに糸掛けする作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態に係る溶融紡糸装置の概略的な構成を示す図である。
図2図1のII−II線断面図である。
図3】(a)が、複数の貫通孔の配置の一例を示す、下方から見た口金の平面図であり、(b)が複数の貫通孔の配置の別の一例を示す、下方から見た口金の平面図である。
図4図1のIV−IV線断面図である。
図5図1の部分拡大図である。
図6】延長筒の斜視図であり、(a)が開口部を閉鎖した状態、(b)が開口部を開放した状態を示している。
図7】(a)が図6(a)のVIIA−VIA線断面図であり、(b)が図6(b)のVIIB−VIIB線断面図である。
図8】(a)が図6(a)のVIIIA−VIIIA線断面図であり、(b)が図6(b)のVIIIB−VIIIB線断面図である。
図9】(a)が変形例2における図7(a)相当の図であり、(b)が変形例2における図7(b)相当の図である。
図10】(a)が変形例3における図7(a)相当の図であり、(b)が変形例3における図7(b)相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0026】
図1図2に示すように、本実施の形態に係る溶融紡糸装置1は、紡糸ビーム2(本願の「紡糸部」)、冷却装置3、複数の延長筒4(本発明の「糸カバー」)、給油ガイド5(本発明の「糸ガイド」)などを備えている。なお、以下では、図1などに示す方向が鉛直方向となっている。
【0027】
紡糸ビーム2は、複数のパックハウジング11を備えている。各パックハウジング11には、紡糸パック12が配置されている。紡糸パック12には、パックハウジング11に接続された図示しないポリマー配管により、ポリエステル等の溶融ポリマーが計量圧送されてくる。紡糸パック12の下端部には、口金13が設けられている。ここで、紡糸ビーム2の複数の口金13は、図1の紙面と直交する水平な配列方向(本発明の「第1方向」)に配列されることにより列を形成している。また、このような口金13の列は、水平で且つ配列方向と直交する前後方向に2列に配列されている。また、上記2列の口金13の列のうち、一方の列を形成する複数の口金13と、他方の列を形成する複数の口金13とは、配列方向にずれて配置されている。
【0028】
口金13には、複数の貫通孔13aが形成されている。複数の貫通孔13aは、配列方向に関して対称に配置されている。例えば、複数の貫通孔13aは、図3(a)に示すように、配列方向及び前後方向に、配列方向に関して対称となるように配列されている。あるいは、複数の貫通孔13aは、図3(b)に示すように、図中に一点鎖線で示した同心円である3つの円C1〜C3上に、配列方向に関して対称となるように配置されていてもよい。紡糸パック12は、溶融ポリマーを、濾過、整流し、口金13に形成された複数の貫通孔13aから2本の糸条Yを構成する複数のフィラメントFとして下向きに紡出する。糸条Yは、複数のフィラメントFから構成されるマルチフィラメントである。このとき、複数の貫通孔13aのうち、図3(a)、(b)の口金13の左半分の貫通孔13aから紡出された複数のフィラメントF、及び、図3(a)、(b)の口金13の右半分の貫通孔13aから紡出された複数のフィラメントFが、それぞれ、1本の糸条Yを構成するフィラメントFとなっている。
【0029】
冷却装置3は、紡糸ビーム2の下方に配置されている。冷却装置3は、紡糸ビーム2から紡出された複数のフィラメントFを冷却して固化させる。延長筒4は、冷却装置3の下方に配置されている。延長筒4は、冷却装置3から出てきた複数のフィラメントFを覆うことによって、複数のフィラメントFの周囲において空気の流れに乱れが生じにくくなるようにして、糸揺れが発生するのを防止するためのものである。なお、冷却装置3及び延長筒4については、後程詳細に説明する。
【0030】
給油ガイド5は、各延長筒4の下方に2つずつ設けられている。給油ガイド5は、各延長筒4に対応する2本の糸条Yに対して個別に設けられたものであり、対応する糸条Yに油剤を付与する。油剤が塗布された糸は、給油ガイド5の下方に配置された図示しない引取装置により処理された後、連続して、図示しない巻取装置によってそれぞれボビンに巻き取られる。
【0031】
次に、冷却装置3の構成について説明する。図1図2図4図5に示すように、冷却装置3は、ダクト21、冷却箱22、複数の冷却筒23等を備えている。冷却装置3は、2本の糸条Yを構成する多数のフィラメントFに対して、その周囲から気体(例えば、空気)を吹き付けて冷却するCIQ(Circular Inflow Quench)冷却方式の冷却装置である。
【0032】
ダクト21は、冷却筒23内にフィラメントFを冷却するための気体を供給するためのものである。ダクト21は、冷却箱22の、前後方向における片側(以下、「奥側」とする)(本発明の「第2方向における他方側」)の側壁部に接続されている。冷却箱22にはダクト21から、フィラメントFを冷却するための気体が供給される。なお、以下では、前後方向の「奥側」と反対側を「手前側」(本発明の「第2方向における一方側」)とする。
【0033】
複数の冷却筒23は、冷却箱22内に収容され、複数の口金13の下方に位置している。これにより、複数の冷却筒23は、配列方向に配列された列を形成する。また、冷却筒23の列は、前後方向に2列に配列され、手前側の列を形成する冷却筒23と、奥側の列を形成する冷却筒23とが、配列方向にずれて配置される。冷却筒23は、図5に示すように、筒体32と、筒状のフィルタ33と、を有する。ダクト21から冷却箱22内に流れ込んだ気体は、筒体32、フィルタ33をこの順に通過して、冷却筒23内の糸走行空間を鉛直方向に通過する2本の糸条Yに対してその周囲から吹き付けられる。
【0034】
筒体32は、複数の孔(開口)が形成されたパンチング板が円筒状に加工されてなる筒状の部材である。冷却筒23の外側から流入する気体が筒体32を通過する際に、その流れが均一化される。
【0035】
フィルタ33は、筒体32よりも気体の通過抵抗が小さくなっている。フィルタ33は、例えば、金網、不織布、焼結材などの多孔質体や積層紙フィルタが円筒状に加工されたものである。筒体32の内側に、筒体32よりも気体の通過抵抗が小さいフィルタ33が配置されていることにより、冷却筒23内の糸走行空間に流れ込む気体の流れが、一層均一化される。
【0036】
そして、上述したように、筒体32及びフィルタ33によって、冷却筒23内の糸走行空間に流れ込む気体の流れを均一にすることで、冷却筒23の糸走行空間を走行する複数のフィラメントFを均一に冷却することが可能となる。これにより、糸斑等を抑制して糸品質を向上させることができる。
【0037】
複数の延長筒4は、複数の冷却筒23の下方に設けられている。これにより、複数の延長筒4は、配列方向に配列された列を形成する。また、延長筒4の列は、前後方向に2列に配列され、手前側の列を形成する延長筒4と、奥側の列を形成する延長筒4とが、配列方向にずれて配置される。
【0038】
延長筒4は、図6図8に示すように、筒状部材41、3つの上側レール部材42、2つの下側レール部材43、開閉部材44などを備えている。筒状部材41は金属材料などからなる円筒状の部材である。また、筒状部材41は、内部空間41aを画定する内壁面41bが黒くなっている(内部空間41aを走行する糸条Yを目立ちやすくする加工が施されている)。内壁面41bは、例えば、黒色アルマイト処理などの黒色化処理を施す、あるいは、樹脂等を塗装することによって黒くすることができる。このとき、内壁面41bのみを黒くしてもよいし、内壁面41bを含む筒状部材41全体を黒くしてもよい。
【0039】
また、筒状部材41の鉛直方向における両端部には、それぞれ、フランジ部46、47が設けられている。フランジ部46、47は、筒状部材41の外周面41cから、筒状部材41の径方向外側に張り出している。また、筒状部材41の、前後方向における手前側(本発明の「第2方向における一方側」)の側壁部には、フランジ部46の直下に位置する部分から、フランジ部47が設けられた筒状部材41の下端まで鉛直方向に延びて、内部空間41aを露出させる開口部41dが形成されている。
【0040】
ここで、筒状部材41は、例えば、直径が85mm程度、鉛直方向の長さが400mm程度の円筒状の部材であるのに対して、開口部41dは、筒状部材41の周方向に、中心角が120°程度の範囲にわたって形成されている。これにより、開口部41dの幅(配列方向の長さ)が72.2mm程度となる。これにより、オペレータは、例えば、開口部41dから筒状部材41の内部空間41aに指を3本程度あるいは糸掛け補助具入れて、後述の糸分け作業を行うことができる。
【0041】
3つの上側レール部材42は、フランジ部46の下面に、筒状部材41の周方向に沿って配列されている。各上側レール部材42は、筒状部材41の外周面41cと、筒状部材41の径方向に隙間48aをあけて配置されている。また、各上側レール部材42は、外周面41cに沿って、例えば、筒状部材41の中心角90°程度の範囲にわたって延びている。また、上側レール部材42の上端部には、筒状部材41の周方向における中央部に、筒状部材41の径方向の外側に張り出した取付部42aが設けられている。上側レール部材42は、取付部42aにおいて、ボルト49aによって、フランジ部46に固定されている。
【0042】
2つの下側レール部材43は、フランジ部47の上面に、開口部41dを避けるように配置されている。各下側レール部材43は、筒状部材41の外周面41cと、筒状部材41の径方向に隙間48bをあけて配置されている。また、各下側レール部材43は、外周面41cに沿って、例えば、筒状部材41の中心角90°程度の範囲にわたって延びている。また、下側レール部材43の下端部には、筒状部材41の周方向における中央部に、筒状部材41の径方向の外側に張り出した取付部43aが設けられている。下側レール部材43は、取付部43aにおいて、ボルト49bによって、フランジ部47に固定されている。
【0043】
開閉部材44は、筒状部材41の外周面41c上に、筒状部材41の周方向に延びているとともに、鉛直方向に筒状部材41のほぼ全長にわたって延びている。また、開閉部材44の上端部は、隙間48a内に位置し、開閉部材44の下端部は、隙間48b内に位置している。すなわち、開閉部材44は、上端部において筒状部材41の外周面41cとレール部材42とに挟まれ、下端部において筒状部材41の外周面41cとレール部材43とに挟まれている。これにより、開閉部材44は、レール部材42、43に案内されることで、外周面41c上を筒状部材41の周方向にスライド可能となっている。すなわち、開閉部材44は、筒状部材41に対して、筒状部材41の周方向にスライド可能となっている。そして、図6(a)、図7(a)に示すように、開閉部材44を開口部41dと完全に重なる位置まで移動させると、開口部41dが開閉部材44に覆われることで閉鎖される。ここで、開閉部材44は、筒状部材41の周方向に、開口部41dよりも長い範囲にわたって延びており、このとき、開口部41dは、開閉部材44によって完全に閉鎖される。一方、図6(b)、図7(b)に示すように、開閉部材44を開口部41dと重ならない位置まで移動させると、開口部41dは開閉部材44に覆われず、開口部41dが開放される。また、開閉部材44の外周面の、上端部近傍の部分及び下端部近傍の部分には、それぞれ、筒状部材41の周方向に延びたリブ44aが形成されており、リブ44aが形成されることで、開閉部材44の強度が確保されている。
【0044】
ここで、本実施の形態では、1つの口金13から、2本の糸条Yを形成する複数のフィラメントFが紡出され、これら複数のフィラメントFが、1つの筒状部材41の内部空間41aを走行する。このとき、異なる糸条Yを形成するフィラメントF同士がくっついてしまうことがある。そのため、本実施の形態では、オペレータが、筒状部材41の内部空間41a内の複数のフィラメントFを、糸条Yごとに糸分けする糸分け作業、及び、糸分けした糸条Yを対応する給油ガイド5に糸掛けする作業が必要となる。このとき、本発明とは異なり、筒状部材41に開口部41dがなく、内部空間41aを走行する糸条Yを視認することができないと、糸分け作業を行うのが困難になる。
【0045】
本実施の形態では、上述したように開閉部材44を開口部41dと重ならない位置まで移動させて、開口部41dを開放すれば、オペレータは、開口部41dを通して内部空間41a内の糸条Yを視認しつつ、開口部41dから内部空間41aに指や糸掛け補助具を入れるなどして、内部空間41a内の複数のフィラメントFを、糸条Yごとに糸分けすることができる。これにより、糸分け作業を容易に行うことができる。また、このとき、糸条Y(フィラメントF)は、通常白っぽい色であるのに対して、内壁面41bの色が黒くなっているため、糸条Yを視認しやすい。
【0046】
さらに、本実施の形態では、開口部41dが筒状部材41の下端まで延びているため、例えば、開口部41dから内部空間41aに指や糸掛け補助具を入れて、糸分け作業を行った後、内部空間41aに入れた指や糸掛け補助具をそのまま筒状部材41よりも下方まで移動させて、給油ガイド5への糸掛け作業を行うことができる。これにより、給油ガイド5への糸掛け作業を容易に行うことができる。
【0047】
また、本実施の形態では、上述したように、複数の延長筒4が、配列方向に配列されることによって列を形成しているのに対して、各延長筒4を構成する筒状部材41の、前後方向における手前側の側壁部に開口部41dが形成されている。これにより、複数の延長筒4の前後方向における手前側から、これら複数の延長筒4についての糸分け作業を行うことができる。
【0048】
また、このとき、冷却箱22の前後方向における奥側にダクト21が接続されているのに対して、各延長筒4を構成する筒状部材41の、前後方向における手前側(ダクト21と反対側)の側壁部に開口部41dが形成されている。したがって、糸分け作業を行う際に、ダクト21が邪魔になることがない。
【0049】
一方、糸分け作業を行わないときには、開閉部材44を開口部41dと完全に重なる位置まで移動させることによって、開口部41dを閉鎖する。すると、冷却装置3と、給油ガイド5との間を走行する複数のフィラメントFの周囲が、全周にわたって筒状部材41と開閉部材44とによって覆われるため、内部空間41aを走行する糸条Yの周囲において、空気の流れに乱れが生じにくい。これにより、フィラメントFの揺れを防止することができる。ここで、フィラメントFに揺れが生じると糸条Yの糸品質の低下につながる。本実施の形態では、上記のように、フィラメントFの揺れを防止することができるため、糸条Yの糸品質の低下を防止することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、開閉部材44が筒状部材41の外周面41c上を、筒状部材41の周方向にスライド可能なものであるため、筒状部材41の周囲に、開口部41dの開閉時に開閉部材44を移動させるための広いスペースが必要ない。
【0051】
ここで、本実施の形態では、上述したように、複数の延長筒4が、配列方向に配列されることによって列を形成している。さらに、延長筒4の列が、前後方向に2列に配列され、手前側の列を形成する延長筒4と、奥側の列を形成する延長筒4とが、配列方向にずれて配置されている。したがって、手前側の列を形成する延長筒4と、奥側の列を形成する延長筒4とが、前後方向から見て重なる場合よりも、前後方向における延長筒4の列同士の間隔を小さくすることができる。ただし、この場合、奥側の延長筒4の列と手前側の延長筒4の列との間のスペースが小さくなる。
【0052】
しかしながら、本実施の形態では、上記のとおり、筒状部材41の周囲に、開口部41dの開閉時に開閉部材44を移動させるための広いスペースが必要ない。したがって、開口部41dの開閉時に、開閉部材44が、配列方向に隣接する延長筒4や、前後方向の手前側の列を形成する延長筒4に干渉することがない。
【0053】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
【0054】
開口部41dの上端の位置は、上述の実施の形態のものには限られない。例えば、開口部41dが、筒状部材41の上端まで延びていてもよい。あるいは、開口部41dの上端が、鉛直方向における筒状部材41の中央部など、上述の実施の形態の場合よりも、筒状部材41の下側の部分に位置していてもよい。
【0055】
また、上述の実施の形態では、開閉部材44は、筒状部材41の外周面41c上を、筒状部材41の周方向にスライド可能なものであったが、これには限られない。例えば、変形例1では、図9(a)、(b)に示すように、開閉部材66が、筒状部材41の内壁面41b上に配置され、筒状部材41の周方向に延びているとともに、鉛直方向に筒状部材41の全長にわたって延びている。また、内壁面41bには、筒状部材41の周方向に沿って延びたガイドレール67が形成され、開閉部材66はガイドレール67に係合している。これにより、開閉部材66は、ガイドレール67に案内されることで、筒状部材41の内壁面41b上を、筒状部材41の周方向にスライド可能となっている。すなわち、開閉部材66は、筒状部材41に対して、筒状部材41の周方向にスライド可能となっている。
【0056】
さらには、開閉部材は、筒状部材41に対して、筒状部材41の周方向にスライド可能なものであることにも限られない。例えば、変形例2では、図10(a)、(b)に示すように、開閉部材71が、片側の端部において、鉛直方向に延びた揺動軸72を中心に揺動自在に支持されている。ここで、揺動軸72は、鉛直方向の両端部が、それぞれ、フランジ部46、47の、開口部41dの縁の近傍の部分に固定されている。この場合には、開閉部材71を、上側から見て反時計回り方向に揺動させれば、図10(a)に示すように、開口部41dを閉鎖することができる。また、開閉部材71を上側から見て時計回り方向に揺動させれば、図10(b)に示すように、開口部41dを開放することができる。ただし、この場合には、筒状部材41の手前側に、開閉部材71を揺動させるための比較的広いスペースが必要となる。
【0057】
また、上述の実施の形態では、複数の延長筒4が配列方向に配列されることによって形成された列が、前後方向に2列に配列され、手前側の列を形成する延長筒4と、奥側の列を形成する延長筒4とが、配列方向にずれて配置されていたが、これには限られない。例えば、複数の延長筒4が、配列方向に沿って1列に配列されていてもよい。なお、これらの場合には、複数の延長筒4の配置に合わせて、複数の口金13及び複数の冷却筒23の配置も変わる。
【0058】
また、上述の実施の形態では、各延長筒4の筒状部材41の、前後方向におけるダクト21と反対側の側壁部に開口部41dが形成されていたが、これには限られない。例えば、各延長筒4の筒状部材41の、前後方向におけるダクト21と同じ側(上述の実施の形態の奥側)の側壁部に開口部41dが形成されていてもよい。あるいは、各延長筒4の筒状部材41の、配列方向における側壁部に開口部41dが形成されていてもよい。
【0059】
また、上述の実施の形態では、筒状部材41の内壁面41bが黒くなっていたが、これには限られない。内壁面41bは、黒以外の糸条Yの色よりも濃い色(例えば、青色等)になっている、模様が形成されている等、糸条Yを目立たせるための別の処理が施されていてもよい。
【0060】
また、上述の実施の形態では、冷却装置3がCIQ冷却方式の冷却装置であったが、これには限られない。冷却装置3は、CIQ冷却方式とは別の方式の冷却装置であってもよい。
【0061】
また、上述の実施の形態では、延長筒4の下方に給油ガイド5が配置されていたが、延長筒4の下方に配置されるのは、フィラメントFに油剤を塗布する給油ガイドとは別の糸ガイドであってもよい。
【0062】
また、上述の実施の形態では、1つの口金13から2本の糸条Yを構成する複数のフィラメントFが紡出されるようになっていたが、これには限られない。1つの口金13から3本以上の糸条Yを構成する複数のフィラメントFが紡出されるようになっていてもよい。
【0063】
また、上述の実施の形態では、糸条Yがマルチフィラメントであったが、これには限られない。糸条Yは、モノフィラメントであってもよい。この場合でも、1つの口金13から紡出される糸条Y(モノフィラメント)の本数が多い場合に、筒状部材41の内部空間41aにおいて糸条Y同士がくっついてしまうことがある。このような場合には、オペレータが、筒状部材41の内部空間41a内の糸条Yの糸分け作業を行う必要がある。このとき、開口部41dを開放した状態で、開口部41dから、筒状部材41の内部空間41a内の糸条Yを視認しつつ、これらの糸条Yの糸分け作業を行うことにより、糸分け作業を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
1 溶融紡糸装置
2 紡糸ビーム
3 冷却装置
4 延長筒
5 給油ガイド
13 口金
21 ダクト
41 筒状部材
41d 開口部
44、66、71 開閉部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10