特許第6587929号(P6587929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587929
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20191001BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20191001BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20191001BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20191001BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20191001BHJP
   H01M 4/74 20060101ALI20191001BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   H01M10/052
   H01M10/0568
   H01M10/0569
   H01M4/13
   H01M4/62 Z
   H01M4/74 A
   H01M4/74 C
   H01M4/66 A
【請求項の数】8
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-251208(P2015-251208)
(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2017-117617(P2017-117617A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】三浦 研
【審査官】 福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−153700(JP,A)
【文献】 特開平09−022700(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/107716(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/128676(WO,A1)
【文献】 特開2015−065053(JP,A)
【文献】 特開2002−075457(JP,A)
【文献】 特開2011−150958(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/126256(WO,A1)
【文献】 特開2013−101770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 10/36−10/39
H01M 4/00−4/62
H01M 4/64−4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、少なくとも支持塩と有機溶媒とを含む非水電解質と、が収納容器内に収容されてなる非水電解質二次電池であって、
前記正極は、さらに、導電助剤として黒鉛を含有するとともに、金属製の第1網状集電体を介して正極集電体と電気的に接続されており、
前記非水電解質は、支持塩として、少なくともリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を含み、且つ、前記有機溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)及びジメトキシエタン(DME)を、体積比で{PC:EC:DME}={0.5〜1.5:0.5〜1.5:1〜3}の範囲で含有することを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
さらに、前記負極が金属製の第2網状集電体を介して負極集電体と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記正極に、前記第1網状集電体の少なくとも一部が埋め込まれており、さらに、前記負極に、前記第2網状集電体の少なくとも一部が埋め込まれていることを特徴とする請求項2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記第1網状集電体及び前記第2網状集電体が、ニッケル材料、アルミニウム材料又はステンレス鋼材料からなることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記第1網状集電体及び前記第2網状集電体が、エキスパンドメタル、平織金網及び綾織金網の内の何れかであることを特徴とする請求項2〜請求項4の何れか一項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記正極は、導電助剤として黒鉛を4質量%以上で含有することを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記負極は、さらに、導電助剤として黒鉛を20質量%以上で含有することを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項8】
記非水電解質は、前記支持塩として、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を、前記非水電解質の全量に対して10〜23質量%の範囲で含むことを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池は、密封された収納容器内に、正極及び負極からなる一対の分極性電極と、この正極と負極の間に介在されたセパレータと、正極及び負極と電気的に接続される集電体と、正極、負極及びセパレータに含浸され、支持塩及び有機溶媒等の非水溶媒を含む非水電解質とを備えるものである。このような非水電解質二次電池は、エネルギー密度が高く軽量であることから、電子機器の電源部、発電装置の発電量の変動を吸収する蓄電部などに利用されている。
【0003】
また、負極活物質としてシリコン酸化物(SiO)を含む負極を用いた非水電解質二次電池は、高い放電容量が得られることから、特に、コイン型(ボタン型)等の小型の非水電解質二次電池として用いられている。このようなコイン型の非水電解質二次電池は、高電圧、高エネルギー密度で充放電特性に優れるとともに、サイクル寿命が長く信頼性が高いことが知られている。そのため、このようなコイン型の非水電解質二次電池は、従来から、例えば、携帯電話、PDA、携帯用ゲーム機、デジタルカメラ等の各種小型電子機器において、半導体メモリのバックアップ用電源やリアルタイムクロック機能のバックアップ用電源等として利用されている。また、近年では、コイン型の非水電解質二次電池は、新たな用途として、Bluetooth(登録商標)等の通信機器におけるメイン電源への適用が期待されている。一方、このようなメイン電源等の用途においては、従来の半導体メモリやリアルタイムクロックなどのバックアップ電源に比べて、さらに大電流での放電特性が求められる。
【0004】
上記のような、非水電解質二次電池の放電電流特性を向上させる手段として、従来から、ステンレス等の金属からなる金網を介して電極と集電体とを接続することで、電極と集電体との間の接触面積を増大させ、接触抵抗(内部抵抗)を低減する技術が採用されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
また、従来は、正極や負極において、黒鉛等からなる導電助剤を活物質と混合して用いる構成を採用することで、非水電解質二次電池の内部抵抗を低減する技術も採用されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−320787号公報
【特許文献2】特開2008−071612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2に記載の技術が採用された非水電解質二次電池においても、上記の小型電子機器に用いられた場合に要求される放電特性に対して、必ずしも充分な値を得ることができなかった。特に、コイン型等、サイズが小さな非水電解質二次電池のように放電電流が1〜数mA程度である場合において、非水電解質二次電池を長期間にわたって使用した場合等に、充分な放電特性が得られなくなるという問題があった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、特に、放電電流が1〜数mA程度の領域である小型のコインセル等において優れた放電特性が得ることが可能な非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行い、特に、放電電流が1〜数mA程度の領域である小型の非水電解質二次電池において、充分な放電特性を確保するための実験を繰り返した。この結果、まず、正極に含まれる導電助剤の材料を最適化するとともに、正極と集電体との間に金属製の網状集電体を介在させたうえで、さらに、非水電解質に含まれる支持塩としてリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を採用することにより、従来に比べて放電電流が上昇した、放電電流の大きな小型のコインセル等において、充分な放電電流及び電圧を維持した状態で長時間の放電が可能になることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明の非水電解質二次電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、少なくとも支持塩と有機溶媒とを含む非水電解質と、が収納容器内に収容されてなる非水電解質二次電池であって、前記正極は、さらに、導電助剤として黒鉛を含有するとともに、金属製の第1網状集電体を介して正極集電体と電気的に接続されており、前記非水電解質は、支持塩として、少なくともリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を含み、且つ、前記有機溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)及びジメトキシエタン(DME)を、体積比で{PC:EC:DME}={0.5〜1.5:0.5〜1.5:1〜3}の範囲で含有することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、まず、正極において、正極活物質とともに、導電助剤である黒鉛が含有されていることにより、この黒鉛は比表面積が大きいことから、正極内における拡散抵抗が低減される。
また、正極が、第1網状集電体を介して正極集電体と電気的に接続されていることにより、正極と第1網状集電体との間、及び、第1網状集電体と正極集電体との間の接触面積が増加するので、接触抵抗が低減される。
また、非水電解質に用いられる支持塩をLiFSIとすることにより、このLiFSIは分子径が小さいので、拡散抵抗が小さくなることから電荷の移動が速くなり、導電性が向上する。
また、非水電解質を構成する有機溶媒として、まず、誘電率が高く、支持塩の溶解性が高い、環状カーボネート溶媒であるPC及びECを用いることにより、大きな放電容量を得ることが可能となる。また、PC及びECは、沸点が高いことから、例えば、高温環境下で使用又は保管した場合であっても揮発し難い非水電解質が得られる。
また、有機溶媒として、ECよりも融点が低いPCを、ECと混合して用いることにより、特に低温における放電特性を向上させることが可能となる。
また、有機溶媒として、融点の低い、鎖状エーテル溶媒であるDMEを用いることにより、上記同様、低温における放電特性が向上する。また、DMEは低粘度なので、非水電解質の導電性が向上する。さらに、DMEは、Liイオンに溶媒和することにより、非水電解質二次電池として、さらに大きな放電容量が得られる。
従って、電池の内部抵抗を顕著に低減することができ、特に、放電電流が1〜数mA程度の領域である小型の非水電解質二次電池において、充分な放電電流及び電圧を維持した状態で長時間の放電が可能になり、優れた放電特性が得られる。
【0012】
また、本発明の非水電解質二次電池は、上記構成において、さらに、前記負極が金属製の第2網状集電体を介して負極集電体と電気的に接続されていることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、また、正極及び負極が、それぞれ、網状集電体を介して各集電体と電気的に接続されていることにより、各電極と各網状集電体との間、及び、各網状集電体と各集電体との間の接触面積が増加するので、接触抵抗が顕著に低減される。従って、特に、従来に比べて放電電流が上昇した、放電電流が比較的大きな小型の非水電解質二次電池において、より優れた放電特性が得られる。
【0014】
また、本発明の非水電解質二次電池は、上記構成において、前記正極に、前記第1網状集電体の少なくとも一部が埋め込まれており、さらに、前記負極に、前記第2網状集電体の少なくとも一部が埋め込まれていることがより好ましい。
【0015】
本発明によれば、正極や負極に網状集電体の少なくとも一部が埋め込まれていることで、各電極と網状集電体との間の接触面積が大幅に増加し、接触抵抗が顕著に低減される。従って、特に、従来に比べて放電電流が上昇した、放電電流が比較的大きな小型の非水電解質二次電池において、より優れた放電特性が得られる。
【0016】
また、本発明の非水電解質二次電池は、上記構成において、前記第1網状集電体及び前記第2網状集電体が、ニッケル材料、アルミニウム材料又はステンレス鋼材料からなることがより好ましい。
【0017】
本発明によれば、第1網状集電体及び第2網状集電体として上記材料のものを用いることにより、各電極と各網状集電体との間、及び、各網状集電体と各集電体との間の接触抵抗が低減される。従って、上記同様、従来に比べて放電電流が上昇した、放電電流が比較的大きな小型の非水電解質二次電池において、より優れた放電特性が得られる。
【0018】
また、本発明の非水電解質二次電池は、上記構成において、前記第1網状集電体及び前記第2網状集電体が、エキスパンドメタル、平織金網及び綾織金網の内の何れかであることがより好ましい。
【0019】
本発明によれば、第1網状集電体及び第2網状集電体として上記形状のものを用いることにより、各電極と各網状集電体との間、及び、各網状集電体と各集電体との間の接触面積がさらに増加するので、接触抵抗がさらに低減される。従って、上記同様、従来に比べて放電電流が上昇した、放電電流が比較的大きな小型の非水電解質二次電池において、より優れた放電特性が得られる。
【0020】
また、本発明の非水電解質二次電池は、上記構成において、前記正極が、導電助剤として黒鉛を4質量%以上で含有することがより好ましい。
【0021】
本発明によれば、正極が黒鉛を上記範囲で含有することにより、正極内における拡散抵抗がより効果的に低減される。従って、従来に比べて放電電流が上昇した、放電電流が比較的大きな小型の非水電解質二次電池において、より優れた放電特性が得られる。
【0022】
また、本発明の非水電解質二次電池は、上記構成において、前記負極が、さらに、導電助剤として黒鉛を20質量%以上で含有していてもよい。
【0023】
本発明によれば、正極と同様に、負極が黒鉛を上記範囲で含有することにより、負極内における拡散抵抗が低減される。従って、上記同様、従来に比べて放電電流が上昇した、放電電流が比較的大きな小型の非水電解質二次電池において、より優れた放電特性が得られる。
【0024】
また、本発明の非水電解質二次電池は、上記構成において、前記非水電解質が、前記支持塩として、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を、前記非水電解質の全量に対して10〜23質量%の範囲で含むことがより好ましい。
【0025】
本発明によれば、非水電解質中におけるLiFSIの含有量を上記範囲に制限することにより、上記のような、拡散抵抗が小さくなって導電性が向上する効果がより顕著に得られるので、放電特性が従来に比べて上昇した、放電電流が比較的大きな小型の非水電解質二次電池において、さらに優れた放電特性を得ることが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の非水電解質二次電池によれば、上述のように、正極に含まれる導電助剤の材料を最適化し、また、正極と正極集電体とを金属製の第1網状集電体を介して電気的に接続したうえで、さらに、非水電解質に含まれる支持塩としてLiFSIを採用することにより、電池全体の放電末期における内部抵抗が低減される。
これにより、特に、放電電流が1〜数mA程度の領域である小型の非水電解質二次電池において、充分な放電電流及び電圧を維持した状態で長時間の放電が可能になり、優れた放電特性が得られる。
従って、コイン型等の小型の非水電解質二次電池が適用される各種小型電子機器において求められる放電特性を充分に満足でき、機器特性の向上が可能な非水電解質二次電池を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の実施形態であるコイン型(ボタン型)に構成された非水電解質二次電池を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態であるコイン型に構成された非水電解質二次電池の実施例についで説明する図であり、放電電流が1mAである場合の放電時間と放電電圧との関係を示すグラフである。
図3図3は、本発明の実施形態であるコイン型に構成された非水電解質二次電池の実施例についで説明する図であり、放電電流が3mAである場合の放電時間と放電電圧との関係を示すグラフである。
図4図4は、本発明の実施形態であるコイン型に構成された非水電解質二次電池の実施例についで説明する図であり、放電電流が5mAである場合の放電時間と放電電圧との関係を示すグラフである。
図5図5は、本発明の実施形態であるコイン型に構成された非水電解質二次電池の実施例についで説明する図であり、放電電流が7mAである場合の放電時間と放電電圧との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の非水電解質二次電池の実施形態を挙げ、その各構成について図1を参照しながら詳述する。なお、本発明で説明する非水電解質二次電池は、具体的には、正極または負極として用いる活物質と非水電解質とが容器内に収容されてなるものであるが、本発明に係る構成は、例えば、リチウムイオンキャパシタ等の電気化学セルにも応用可能なものである。
【0031】
<非水電解質二次電池>
図1に示す本実施形態の非水電解質二次電池1は、いわゆるコイン(ボタン)型の電池である。この非水電解質二次電池1は、収納容器2内に、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質を含む正極10と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含む負極20と、正極10と負極20との間に配置されたセパレータ30と、少なくとも支持塩及び有機溶媒を含む非水電解質50とを備える。
【0032】
より具体的には、非水電解質二次電池1は、有底円筒状の正極缶12と、正極缶12の開口部12aにガスケット40を介在して固定され、正極缶12との間に収容空間を形成する有蓋円筒状(ハット状)の負極缶22とを有し、正極缶12の開口部12aの周縁を内側、即ち負極缶22側にかしめることで収容空間を密封する収納容器2を備える。
【0033】
収納容器2によって密封された収容空間には、正極缶12側に設けられる正極10と、負極缶22側に設けられる負極20とがセパレータ30を介して対向配置され、さらに、非水電解質50が充填されている。また、図1に示す例においては、負極20とセパレータ30との間にリチウムフォイル60が介装されている。
また、図1に示すように、ガスケット40は、正極缶12の内周面に沿って狭入されるとともに、セパレータ30の外周と接続され、セパレータ30を保持している。
また、正極10、負極20及びセパレータ30には、収納容器2内に充填された非水電解質50が含浸している。
【0034】
図1に示す例の非水電解質二次電池1においては、正極10が、正極集電体14を介して正極缶12の内面に電気的に接続され、負極20が、負極集電体24を介して負極缶22の内面に電気的に接続されている。なお、本実施形態においては、図1に例示するような正極集電体14及び負極集電体24を備えた非水電解質二次電池1を例に挙げて説明しているが、これには限定されず、例えば、正極缶12が正極集電体を兼ねるとともに、負極缶22が負極集電体を兼ねた構成を採用しても構わない。
【0035】
本実施形態の非水電解質二次電池1は、上記のように概略構成されることにより、正極10と負極20の一方から他方へリチウムイオンが移動することで、電荷を蓄積(充電)したり電荷を放出(放電)したりすることができるものである。
【0036】
そして、本実施形態の非水電解質二次電池1は、正極10が、正極活物質に加え、さらに、導電助剤として黒鉛を含有する。また、非水電解質二次電池1は、図1に例示するように、正極10が金属製の第1網状集電体11を介して正極集電体14と電気的に接続されている。さらに、非水電解質二次電池1は、非水電解質50が、支持塩として、少なくともリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を含み、概略構成される。
【0037】
本発明者は、各種小型電子機器に使用される、放電電流が1〜数mA程度の領域である小型の非水電解質二次電池の放電特性を向上させるため、鋭意検討を行った。この結果、特に、「正極20に含まれる導電助剤の材料を最適化すること」、「正極と正極集電体との間に金属製の第1網状集電体を介在させること」、及び「非水電解質に含まれる支持塩としてリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を用いること」を各々組み合わせた構成を採用することで、放電電流が低めである小型のコインセル等において、充分な放電電流及び電圧を維持した状態で長時間の放電が可能になることを見出し、以下に詳述するような本発明を完成させたものである。
【0038】
[正極缶及び負極缶]
本実施形態において、収納容器2を構成する正極缶12は、上述したように、有底円筒状に構成され、平面視で円形の開口部12aを有する。このような正極缶12の材質としては、従来公知のものを何ら制限無く用いることができ、例えば、SUS329J4L等のステンレス鋼が挙げられる。
【0039】
また、負極缶22は、上述したように、有蓋円筒状(ハット状)に構成され、その先端部22aが、開口部12aから正極缶12に入り込むように構成される。このような負極缶22の材質としては、正極缶12の材質と同様、従来公知のステンレス鋼が挙げられ、例えば、SUS304−BA等を用いることができる。また、負極缶22には、例えば、ステンレス鋼に銅やニッケル等を圧接してなるクラッド材を用いることもできる。
【0040】
図1に示すように、正極缶12と負極缶22とは、ガスケット40を介在させた状態で、正極缶12の開口部12aの周縁を負極缶22側にかしめることで固定され、非水電解質二次電池1を、収容空間が形成された状態で密封保持する。このため、正極缶12の最大内径は、負極缶22の最大外径よりも大きい寸法とされている。
【0041】
なお、正極缶12や負極缶22に用いられる金属板材の板厚は、一般に0.1〜0.3mm程度であり、例えば、正極缶12や負極缶22の全体における平均板厚で0.20mm程度として構成することができる。
【0042】
また、図1及び図2に示す例においては、負極缶22の先端部22aが折り返し形状とされているが、これには限定されず、例えば、金属板材の端面が先端部22aとされた、折り返し形状を有しない形状においても、本発明を適用することが可能である。
【0043】
また、本実施形態で詳述する構成を適用することが可能な非水電解質二次電池としては、例えば、コイン型非水電解質二次電池の一般的なサイズである920サイズ(外径φ9mm×高さ2.0mm)の他、各種サイズ、特に小型のサイズの電池を挙げることができる。
【0044】
[ガスケット]
ガスケット40は、図1に示すように、正極缶12の内周面に沿って円環状に形成され、その環状溝41の内部に負極缶22の先端部22aが配置される。
また、ガスケット40は、例えば、その材質が、熱変形温度が230℃以上の樹脂であることが好ましい。ガスケット40に用いる樹脂材料の熱変形温度が230℃以上であれば、非水電解質二次電池1を高温環境下で使用又は保管した場合や、非水電解質二次電池1の使用中における発熱が生じた場合でも、ガスケットが著しく変形して非水電解質50が漏出するのを防止できる。
【0045】
このようなガスケット40の材質としては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、液晶ポリマー(LCP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルニトリル樹脂(PEN)、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂等のプラスチック樹脂が挙げられる。これらの中でも、ガスケット40にポリプロピレン樹脂を用いることが、高温環境下における使用や保管時にガスケットが著しく変形するのを防止でき、非水電解質二次電池の封止性がさらに向上する観点から好ましい。
【0046】
また、ガスケット40には、上記材料にガラス繊維、マイカウイスカー、セラミック微粉末等を、30質量%以下の添加量で添加したものも好適に用いることができる。このような材質を用いることで、高温によってガスケットが著しく変形し、非水電解質50が漏出するのを防止できる。
【0047】
また、ガスケット40の環状溝の内側面には、さらに、シール剤を塗布してもよい。このようなシール剤としては、アスファルト、エポキシ樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチルゴム系接着剤等を用いることができる。また、シール剤は、環状溝41の内部に塗布した後、乾燥させて用いる。
【0048】
なお、ガスケット40は、正極缶12と負極缶22との間に挟まれ、その少なくとも一部が圧縮された状態となるが、この際の圧縮率は特に限定されず、非水電解質二次電池1の内部を確実に封止でき、且つ、ガスケット40に破断が生じない範囲とすればよい。
【0049】
[非水電解質]
本発明の非水電解質二次電池1は、非水電解質50として、少なくとも有機溶媒及び支持塩を含むものを用いる。そして、本実施形態で説明する非水電解質50は、支持塩として、少なくともリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を含む。
通常、非水電解質二次電池に用いられる非水電解質は、支持塩を有機溶媒等の非水溶媒に溶解させたものからなり、非水電解質50に求められる耐熱性や粘度等を勘案して、その特性が決定される。
【0050】
一般に、非水電解質二次電池の非水電解質に含有される支持塩としては、非水電解質に支持塩として添加される公知のLi化合物、具体的には、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)又はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)等が挙げられる。本発明の非水電解質二次電池1においては、非水電解質50に用いられる支持塩として、LiFSIを含むものを採用する。このように、非水電解質50が、支持塩として分子径の小さなLiFSIを含むことで、非水電解質50中における拡散抵抗が小さくなることから電荷の移動が速くなり、導電性が向上する作用が得られる。
【0051】
そして、本発明においては、非水電解質50中に支持塩としてLiFSIを含むとともに、詳細を後述するように、正極10に含まれる導電助剤として黒鉛を所定量以上で含み、さらに、正極10と正極集電体14との間に金属製の第1網状集電体11を介在させることにより、電池全体の放電末期における内部抵抗が顕著に低減される。これにより、特に、放電電流が1〜数mA程度である小型の非水電解質二次電池において、充分な放電電流及び電圧を維持した状態で長時間の放電が可能になる。
【0052】
なお、非水電解質50中の支持塩の含有量は、支持塩の種類と、後述の正極活物質の種類とを勘案して決定できる。本発明においては、非水電解質50中におけるLiFSIの含有量を、非水電解質50の全量に対して10〜23質量%の範囲とすることがより好ましい。非水電解質50中におけるLiFSIの含有量を上記範囲に制限することにより、上記のような、拡散抵抗が小さくなって導電性が向上する効果がより顕著に得られる。従って、放電特性が従来に比べて上昇した、放電電流が比較的大きな、コイン型等の小型の非水電解質二次電池において、さらに優れた放電特性を得ることが可能になる。
【0053】
また、非水電解質50中におけるLiFSIの含有量を上記範囲とすることにより、放電初期の電圧降下を抑制することができ、さらに、低温環境下における放電特性も改善でき、幅広い温度範囲において十分な放電容量が得られる。
また、非水電解質50中におけるLiFSIの含有量は、上記効果が顕著に得られる観点から、非水電解質50の全量に対して13〜21質量%の範囲とすることがより好ましい。
【0054】
なお、非水電解質50中の支持塩濃度が上記範囲の上限を超えると、放電容量が得られ難くなり、上記の下限を下回った場合には、内部抵抗が大きく上昇してしまう場合も考えられる。このため、非水電解質50中の支持塩(LiFSI)の濃度は、高過ぎても、あるいは低過ぎても、電池特性に悪影響を及ぼすおそれがあることから、上記範囲とすることが好ましい。
【0055】
本発明に係る非水電解質二次電池1においては、非水電解質50に用いる有機溶媒としては、例えば、環状カーボネート溶媒であるPC、EC、及び、鎖状エーテル溶媒であるDMEを、適正範囲とされた混合比で含有してなる混合溶媒とすることができる。
非水電解質50に用いる有機溶媒の組成を最適化することにより、放電電流が1〜数mA程度の領域である小型の非水電解質二次電池1においても充分な放電特性を確保することが可能となり、さらに、低温環境下も含めた幅広い温度範囲において十分な放電容量を維持可能な非水電解質二次電池1が実現できる。
【0056】
一般に、有機溶媒を含有する非水電解質を非水電解質二次電池に使用した場合、リチウム塩の溶解性が乏しいことから導電性の温度依存性が大きくなり、常温下における特性に較べて、低温下における特性が大きく低下するという問題がある。一方、低温特性を向上させるために、例えば、鎖状炭酸エステルである非対称構造のエチルメチルカーボネートや酢酸エステル類を非水電解質の有機溶媒に用いた場合には、逆に、高温下における非水電解質二次電池としての特性が低下するという問題がある。また、エチルメチルカーボネート等の有機溶媒を非水電解質に用いた場合でも、やはり、リチウム塩の溶解性が乏しく、低温特性を向上させるのには限界がある。
【0057】
そこで、本発明においては、非水電解質50を構成する有機溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)及びジメトキシエタン(DME)を、適正な範囲で含有するものを使用する。
具体的には、まず、環状カーボネート溶媒として、誘電率が高く、支持塩の溶解性が高いPC及びECを用いることにより、大きな放電容量を得ることが可能となる。また、PC及びECは、沸点が高いことから、仮に高温環境下で使用又は保管した場合であっても揮発し難い非水電解質が得られる。
また、環状カーボネート溶媒として、ECよりも融点が低いPCを、ECと混合して用いることにより、低温特性を向上させることが可能となる。
また、鎖状エーテル溶媒として、融点の低いDMEを用いることにより、低温特性が向上する。また、DMEは低粘度なので、非水電解質の電気伝導性が向上する。さらに、DMEは、Liイオンに溶媒和することにより、非水電解質二次電池として大きな放電容量が得られる。
【0058】
環状カーボネート溶媒は、下記(化学式1)で表される構造を有してなり、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、トリフロロエチレンカーボネート(TFPC)、クロロエチレンカーボネート(ClEC)、トリフロロエチレンカーボネート(TFEC)、ジフロロエチレンカーボネート(DFEC)、ビニレンカーボネート(VEC)等が挙げられる。本発明に係る非水電解質二次電池1においては、特に、負極20上への電極上の皮膜形成の容易性や、低温特性の向上、並びに、高温下における容量維持率の向上を考慮した場合、下記(化学式1)で表される構造の環状カーボネート溶媒として、PC及びECの2種類を用いる。
【0059】
【化1】
【0060】
但し、上記(化学式1)中において、R1、R2、R3、R4は、水素、フッ素、塩素、炭素数1〜3のアルキル基、フッ素化されたアルキル基の何れかを表す。また、上記(化学式1)中におけるR1、R2、R3、R4は、それぞれ同一であっても、異なっていても良い。
【0061】
上述したように、非水電解質50に用いる有機溶媒に、環状カーボネート溶媒として、誘電率が高く、支持塩の溶解性が高いPC及びECを用いることにより、大きな放電容量を得ることが可能となる。また、PC及びECは沸点が高いことから、高温環境下で使用又は保管した場合でも揮発し難い非水電解質が得られる。さらに、環状カーボネート溶媒として、ECよりも融点が低いPCを、ECと混合して用いることにより、優れた低温特性が得られる。
【0062】
鎖状エーテル溶媒は、下記(化学式2)で表される構造を有してなり、例えば、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)等が挙げられる。本実施形態においては、特に、導電率向上の観点に加え、さらに、常温下における容量を確保しながら低温特性を向上させる観点から、下記(化学式2)で表される構造の鎖状エーテル溶媒として、リチウムイオンと溶媒和しやすいDMEを用いる。
【0063】
【化2】
【0064】
但し、上記(化学式2)中において、R5、R6は、水素、フッ素、塩素、炭素数1〜3のアルキル基、フッ素化されたアルキル基の何れかを表す。また、R5、R6はそれぞれ同一であっても、異なっていても良い。
【0065】
上述したように、非水電解質50に用いる有機溶媒に、鎖状エーテル溶媒として融点の低いDMEを用いることで低温特性が向上する。また、DMEは低粘度であることから、非水電解質の電気伝導性が向上する。さらに、DMEは、Liイオンに溶媒和することから、非水電解質二次電池として大きな放電容量が得られる。
【0066】
本発明においては、非水電解質50の溶媒中における各有機溶媒の配合比率を、体積比で{PC:EC:DME}=0.5〜1.5:0.5〜1.5:1〜3の範囲に設定することが好ましい。また、溶媒中における配合比率は、体積比で0.8〜1.2:0.8〜1.2:1.5〜2.5の範囲であることがさらに好ましく、概ね{PC:EC:DME}={1:1:2}であることが最も好ましい。
有機溶媒の配合比率が上記範囲であると、上述したような、高温下あるいは常温での容量維持率を損なうことなく、低温特性を改善できる効果が顕著に得られる。
【0067】
より詳細には、環状カーボネート溶媒であるプロピレンカーボネート(PC)の配合比率が上記範囲の下限以上であれば、ECよりも融点が低いPCと、ECとを混合して用いることで低温特性を向上できる効果が顕著に得られる。
一方、PCは、ECに較べて誘電率が低いことから支持塩の濃度を高められないため、含有量が多過ぎると大きな放電容量が得られ難くなる可能性があることから、その配合比率を上記範囲の上限以下に制限することが好ましい。
【0068】
また、有機溶媒中において、環状カーボネート溶媒であるエチレンカーボネート(EC)の配合比率が上記範囲の下限以上であれば、非水電解質50の誘電率及び支持塩の溶解性が高められ、非水電解質二次電池としての大きな放電容量を得ることが可能となる。
一方、ECは、粘度が高いことから電気伝導性に乏しく、また、融点が高いことから、含有量が多過ぎると低温特性が低下する可能性があるため、その配合比率を上記範囲の上限以下に制限することが好ましい。
さらに、有機溶媒中におけるECの配合比率を上記範囲とすることにより、低温環境下における内部抵抗の上昇を抑制することが可能となる。
【0069】
また、有機溶媒中において、鎖状エーテル溶媒であるジメトキシエタン(DME)の配合比率を上記範囲の下限以上とすれば、融点の低いDMEが所定量以上で有機溶媒中に含まれることにより、低温特性を向上できる効果が得られる。また、DMEは粘度が低いことから、電気伝導性が向上するとともに、Liイオンに溶媒和することによって大きな放電容量を得ることが可能となる。
一方、DMEは誘電率が低いことから支持塩の濃度を高められないため、含有量が多過ぎると大きな放電容量が得られ難くなる可能性があることから、その配合比率を上記範囲の上限以下に制限することが好ましい。
さらに、有機溶媒中におけるDMEの配合比率を上記範囲とすることにより、放電初期の電圧降下を抑制することが可能となる。
【0070】
本発明においては、まず、非水電解質50に含有される支持塩としてLiFSIを採用し、さらに、後述するように、正極10に含まれる導電助剤の材料及び含有量を最適化するとともに、正極10と正極集電体13との間に金属製の第1網状集電体11を介在させた構成を採用することで、電池全体の放電末期における内部抵抗が顕著に低減されるので、特に、放電電流が1〜数mA程度の領域である小型の非水電解質二次電池1においても充分な放電特性が得られる。
【0071】
さらに、本発明においては、非水電解質50に用いる有機溶媒を上記組成とすることにより、特に、−30〜−40℃の低温環境下において非水電解質の粘性が上昇するのを防止し、電荷の移動が妨げられるのを抑制できる。これにより、低温環境下も含めた幅広い温度範囲において十分な放電容量を維持可能で、さらに、放電電流が1〜数mA程度の領域である小型の非水電解質二次電池1においても充分な放電特性を確保することが可能となる。
【0072】
[正極]
本発明の非水電解質二次電池1に用いられる正極10は、例えば、リチウムマンガン酸化物からなる正極活物質を含有するとともに、導電助剤として黒鉛を含有してなる。また、正極10としては、上記の正極活物質及び導電助剤(黒鉛)に加え、さらに、バインダ(結着剤)としてポリアクリル酸等を混合したものを用いることができる。
【0073】
正極10に含まれる正極活物質としては、特に限定されず、例えば、スピネル型結晶構造であるLiMnや、LiMn12等のリチウムマンガン酸化物が挙げられる。このようなリチウムマンガン酸化物のうち、特に、Li1+xCoMn2−x−y(0≦x≦0.33、0<y≦0.2)のように、Mnの一部がCoに置換されたものが好ましい。このように、リチウムマンガン酸化物にCoやNi等の遷移金属元素を添加し、その一部が遷移金属元素によって置換された正極活物質を用いることで、放電特性がさらに向上する効果が得られる。
【0074】
本実施形態では、正極10に上記組成のリチウムマンガン酸化物からなる正極活物質を用いることで、特に低温環境下における放電特性が向上し、幅広い温度範囲において十分な放電容量が得られる効果が顕著となり、さらに、放電電流が1〜数mA程度の領域である小型の非水電解質二次電池1においても充分な放電特性が得られる。
また、本実施形態では、正極活物質として、上記のリチウムマンガン酸化物のうちの1種のみならず、複数を含有していても構わない。
【0075】
また、上記材料からなる粒状の正極活物質を用いる場合、その粒子径(D50)は、特に限定されず、例えば、0.1〜100μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。
正極活物質の粒子径(D50)が、上記好ましい範囲の下限値未満であると、非水電解質二次電池が高温に曝された際に反応性が高まるために扱いにくくなり、また、上限値を超えると、放電レートが低下するおそれがある。
なお、本発明における「正極活物質の粒子径(D50)」とは、レーザー回折法を用いて測定される粒子径であってメジアン径を意味する。
【0076】
正極10中の正極活物質の含有量は、非水電解質二次電池1に要求される放電容量等を勘案して決定され、50〜95質量%が好ましい。正極活物質の含有量が、上記好ましい範囲の下限値以上であれば、充分な放電容量が得られやすく、好ましい上限値以下であれば、正極10を成形しやすい。
【0077】
上述したように、本発明の非水電解質二次電池1に備えられる正極10は、導電助剤(以下、正極10に用いられる導電助剤を「正極導電助剤」ということがある)として、黒鉛を4質量%以上で含有してなる。
【0078】
正極導電助剤に用いる黒鉛としては、特に限定されないが、例えば、比表面積が240m/g以上であるものが好ましい。このように、特に、比表面積が大きな黒鉛を用いることにより、正極10内の拡散抵抗が低減される。
また、正極導電助剤に用いる黒鉛の粒子径(D50)としては、10μm以下であるものが好ましい。このように、特に、上記の比表面積及び粒子径を有する黒鉛を正極導電助剤に用いることにより、導電性を向上させ、放電特性を大幅に向上させることが可能となる。
【0079】
本発明では、正極10において、上記の正極活物質とともに、導電助剤として黒鉛が含有されていることにより、比表面積が比較的大きな黒鉛の作用によって正極10内の拡散抵抗が低減される。これにより、内部抵抗が低減されるので、特に、放電電流が1〜数mA程度の領域である小型の非水電解質二次電池1においても充分な放電特性を確保できる。
【0080】
なお、正極10中の黒鉛の含有量は、特に限定されないが、正極10内における拡散抵抗を効果的に低減させて充分な導電性が得られ、且つ、正極10をペレット状に成形する際の成形性が向上する観点から、4質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。一方、正極10中の黒鉛含有量の上限値は、放電容量が充分に得られやすい観点から、40質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
【0081】
また、本発明においては、正極導電助剤として、上記の黒鉛に加え、さらに、カーボンブラックを含有していてもよい。このようなカーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の炭素質材料が挙げられる。黒鉛に加えて正極導電助剤として用いられるカーボンブラックは、上記のうちの1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
本発明においては、正極10が、黒鉛に加えて、さらにカーボンブラックを含有することで、上記のような、各電極内における拡散抵抗が低減される作用がより顕著に得られるので、放電特性が従来に比べて上昇した、放電電流が比較的大きな小型の非水電解質二次電池において、さらに優れた放電特性を得ることが可能になる。
【0083】
なお、正極10中の正極導電助剤として、黒鉛に加えて上記のカーボンブラックを含有する場合には、これらの合計含有量で、黒鉛を単独で含む場合と同様、上記範囲内とすることが好ましい。
【0084】
正極10は、バインダ(以下、正極10に用いられるバインダを「正極バインダ」ということがある。)を含有してもよい。
正極バインダとしては、従来公知の物質を用いることができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられ、中でも、ポリアクリル酸が好ましく、架橋型のポリアクリル酸がより好ましい。
また、正極バインダは、上記のうちの1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、正極バインダにポリアクリル酸を用いる場合には、ポリアクリル酸を、予め、pH3〜10に調整しておくことが好ましい。この場合のpHの調整には、例えば、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物や水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物を用いることができる。
正極10中の正極バインダの含有量は、例えば、1〜20質量%とすることができる。
【0085】
正極10の大きさは、非水電解質二次電池1の大きさに応じて決定される。
また、正極10の厚さも、非水電解質二次電池1の大きさに応じて決定され、非水電解質二次電池1が、各種電子機器向けのバックアップ用のコイン型のものであれば、例えば、300〜1000μm程度とされる。
【0086】
正極10は、従来公知の製造方法により製造できる。
例えば、正極10の製造方法としては、正極活物質及び正極導電助剤に加え、必要に応じて正極バインダを混合して正極合剤とし、この正極合剤を任意の形状に加圧成形する方法が挙げられる。
上記の加圧成形時の圧力は、正極導電助剤の種類等を勘案して決定され、例えば0.2〜5ton/cmとすることができる。
【0087】
[第1網状集電体(正極用)]
本発明の非水電解質二次電池1は、正極10と後述の正極集電体14との間に金属製の第1網状集電体11が配置されている。即ち、非水電解質二次電池1は、正極10が、第1網状集電体11を介して正極集電体14と電気的に接続されている。また、本発明の非水電解質二次電池1においては、図1に示す例のように、負極20も、金属製の第2網状集電体21を介して負極集電体24と電気的に接続されるように構成することができる。
本発明においては、正極10が、第1網状集電体11を介して正極集電体14と電気的に接続されることで、正極10と第1網状集電体11との間、及び、第1網状集電体11と正極集電体14との間の接触面積が増加して接触抵抗が低減し、これに伴って電池の内部抵抗が低減される効果が得られる。
【0088】
第1網状集電体11の材質は、一般に電極等に用いられている金属材料であれば、特に限定されないが、例えば、ニッケル材料、アルミニウム材料又はステンレス鋼材料からなることがより好ましい。第1網状集電体11を上記材料から構成することにより、正極10と第1網状集電体11との間、及び、第1網状集電体11と正極集電体14との間の接触抵抗が効果的に低減される。
【0089】
また、第1網状集電体11の形状としても、特に限定されないが、例えば、エキスパンドメタル、平織金網及び綾織金網の内の何れかであることがより好ましい。第1網状集電体11として、上記形状のものを採用することにより、正極10と第1網状集電体11との間、及び、第1網状集電体11と正極集電体14との間の接触面積がさらに増加するので、これらの間の接触抵抗がより一層低減され、電池の内部抵抗が低減される効果が顕著に得られる。
【0090】
なお、第1網状集電体11としてエキスパンドメタルを採用した場合には、そのメッシュ寸法が、LWD2.5(mm)×SWD1.4(mm)以下で、板厚が0.09mm以上のものを用いることが、正極(正極活物質)10と第1網状集電体11との接触面積が大きく確保できる点から好ましい。
【0091】
さらに、本発明の非水電解質二次電池1においては、図1中においては詳細な図示を省略しているが、正極10に対して、第1網状集電体11の少なくとも一部が埋め込まれていることがより好ましい。ここで、本実施形態で説明する、「正極10に第1網状集電体11の少なくとも一部が埋め込まれている」とは、例えば、正極10と第1網状集電体11とを一体成形によって形成するか、あるいは、正極10と第1網状集電体11とを圧接させることにより、第1網状集電体11の一部が正極10をなすペレットの中に入り込んだ状態のことをいう。
【0092】
このように、正極10に第1網状集電体11の少なくとも一部が埋め込まれている構成を採用した場合には、正極10と第1網状集電体11との間の接触面積が大幅に増加し、接触抵抗が顕著に低減されるので、電池の内部抵抗が低減される効果がより顕著に得られる。
【0093】
本発明の非水電解質二次電池1においては、正極10が第1網状集電体11を介して正極集電体14と電気的に接続され、さらに、後述するように、負極20が第2網状集電体21を介して負極集電体24と電気的に接続された構成を採用した場合には、各電極と各網状集電体との間、及び、各網状集電体と各集電体との間の接触面積が増加するので、接触抵抗をより低減でき、内部抵抗も顕著に低減する。従って、特に、放電電流が1〜数mA程度の領域である小型の非水電解質二次電池に本発明を適用した場合においても、充分な放電特性を確保できる。
【0094】
[正極集電体]
正極集電体14としては、従来公知のものを用いることができ、炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤等が挙げられる。
【0095】
[負極]
本実施形態で用いられる負極20は、特に限定されないが、例えば、負極活物質として、表面の少なくとも一部が炭素で被覆されたSiO(0<x≦2)を含むものを用いることができる。また、負極20としては、上記の負極活物質に加え、さらに、適当なバインダと、結着剤としてポリアクリル酸を、導電助剤として黒鉛等を混合したものを用いることができる。
【0096】
負極20に用いられる負極活物質としては、SiO又はSiO、即ち、上記のSiO(0<x≦2)で表されるシリコン酸化物からなるものである。負極活物質に上記組成のシリコン酸化物を用いることで、非水電解質二次電池1を高電圧で使用することが可能になるとともに、サイクル特性が向上する。
また、負極20は、負極活物質として、上記のSiO(0<x≦2)に加え、さらに、炭素、Li−Al等の合金系負極、Si、WO及びWOのうちの少なくとも何れかを含有していてもよい。
【0097】
負極20に、負極活物質として上記材料を用いることで、充放電サイクルにおける非水電解質50と負極20との反応が抑制され、容量の減少を防止できる。また、炭素で被覆されたSiOx(0<x≦2)からなる負極活物質は、充放電によって粒子が膨潤と収縮を繰り返した場合でも、導電性の低下が抑制される。これにより、負極20の導電性が、充放電を繰り返した場合でも維持されることから、サイクル特性が向上する効果が得られる。
【0098】
さらに、負極20は、表面の少なくとも一部が炭素(C)で被覆されたSiO(0<x≦2)からなる負極活物質を含む構成を採用することで、負極20の導電性が向上し、低温環境下における内部抵抗の上昇が抑制される。これにより、放電初期における電圧降下が抑制され、放電特性をより安定化させることが可能となる。なお、上記の負極活物質は、SiO(0<x≦2)からなる粒子の表面の少なくとも一部が炭素によって被覆されていればよいが、表面全体が被覆されていることが、上記効果が顕著に得られる点から好ましい。
【0099】
なお、本発明において、非水電解質50を上記組成としたうえで、表面が炭素で被覆されたSiO(0<x≦2)からなる負極活物質を含む負極20を採用した場合には、特に、−30〜−40℃の低温環境下における放電特性を改善できるので、幅広い温度範囲において優れた充放電特性が得られる非水電解質二次電池1が実現できる。
【0100】
なお、SiO(0<x≦2)の粒子表面を炭素で被覆する方法としては、特に限定されないが、例えば、メタンやアセチレン等の有機物が含まれるガスを用いた物理蒸着法(PVD)や、化学蒸着法(CVD)等の方法を挙げることができる。
【0101】
負極活物質として上記材料を用いる場合、その粒子径(D50)は、特に限定されず、例えば、0.1〜30μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。負極活物質の粒子径(D50)が、上記好ましい範囲の下限値未満であると、例えば、非水電解質二次電池が高温に曝された際に反応性が高まるために扱いにくくなり、また、上限値を超えると、放電レートが低下するおそれがある。
【0102】
なお、本実施形態においては、負極20に用いる負極活物質として、上記のような、SiO(0<x≦2)の粒子表面が炭素で被覆されたものを例に挙げて説明しているが、これには限定されず、炭素被覆が施されていないSiO(0<x≦2)の粒子を用いることも可能である。
【0103】
なお、本実施形態においては、負極20中の負極活物質が、リチウム(Li)とSiO(0<x≦2)とを含み、これらのモル比(Li/SiO)が3.7〜4.9の範囲であることがより好ましい。このように、負極活物質をリチウム(Li)とSiOとから構成し、これらのモル比を上記範囲とすることにより、充電異常等を防止できる効果が得られる。また、非水電解質二次電池1を高温環境下で長期間にわたって使用又は保管した場合においても、放電容量が低下することがなく、保存特性が向上する効果が得られる。
【0104】
上記のモル比(Li/SiO)が3.7未満だと、Liが少な過ぎることから、高温環境下で長期間にわたって使用又は保管した後にLi不足となり、放電容量が低下する。
一方、上記のモル比(Li/SiO)が4.9を超えると、Liが多過ぎることから、充電異常が発生する可能性がある。また、金属LiがSiOに取り込まれずに残存することから、抵抗が上昇して放電容量が低下する可能性がある。
【0105】
さらに、本実施形態においては、上記範囲とされたモル比(Li/SiO)を、上述した正極10に含まれる正極活物質の種類に応じて、さらに適正な範囲を選択して設定することがより好ましい。例えば、正極活物質にチタン酸リチウムを用いた場合には、負極活物質中における上記のモル比(Li/SiO)を4.0〜4.7の範囲とすることがより好ましい。また、正極活物質にリチウムマンガン酸化物を用いた場合には、負極活物質中における上記のモル比(Li/SiO)を3.9〜4.9の範囲とすることがより好ましい。このように、負極活物質のモル比(Li/SiO)を、正極活物質の種類に応じた範囲で設定することにより、上述したような、初期抵抗の上昇を抑制して充電異常等を防止できる効果や、高温環境下で長期間にわたる使用又は保管の後も放電容量が低下することがなく、保存特性が向上する効果がより顕著に得られる。
【0106】
負極20中の負極活物質の含有量は、非水電解質二次電池1に要求される放電容量等を勘案して決定され、例えば、50質量%以上が好ましく、60〜80質量%がより好ましい。
負極20において、上記材料からなる負極活物質の含有量が、上記好ましい範囲の下限値以上であれば、充分な放電容量が得られやすく、また、上限値以下であれば、負極20の成形加工が容易になる。
【0107】
負極20は、導電助剤(以下、負極20に用いられる導電助剤を「負極導電助剤」ということがある)を含有してもよい。負極導電助剤としては、正極導電助剤と同様、黒鉛を用いることができる。また、負極20が、さらに、導電助剤として黒鉛を含む場合、その含有量は、負極20中において20質量%以上であることが好ましい。このように、負極20が、正極10と同様に、黒鉛を上記範囲で含有することにより、負極20内における拡散抵抗が低減される。従って、上記同様、従来に比べて放電電流が上昇した、放電電流の大きな小型の非水電解質二次電池1において、より優れた放電特性が得られる。
【0108】
負極導電助剤に用いる黒鉛としても、特に限定されないが、正極導電助剤と同様、例えば、比表面積が240m/g以上であるものが好ましい。負極20においても、正極10の場合と同様、上記の負極活物質とともに、導電助剤として黒鉛が20質量%以上で含有されていることで、比表面積が大きな黒鉛の作用によって負極20内の拡散抵抗が低減される。これにより、内部抵抗が低減されるので、特に、放電電流が1〜数mA程度の領域である小型の非水電解質二次電池1においても充分な放電特性を確保できる効果が得られる。
【0109】
なお、負極20中の黒鉛の含有量は、充分な導電性が得られ、且つ、正極10をペレット状に成形する際の成形性が向上する観点からは20質量%以上であることが好ましいが、放電容量が充分に得られる観点から、40質量%以下であることが好ましい。
【0110】
また、正極10の場合と同様、負極20においても、負極導電助剤として、黒鉛に加えてカーボンブラックを含有することで、負極20内における拡散抵抗が低減される作用がより顕著に得られる。このようなカーボンブラックとしても、正極10の場合と同様のものを用いることができる。また、負極20が、導電助剤として、黒鉛に加えてカーボンブラックを含有する場合の含有量も、上記同様、これらの合計含有量で、黒鉛を単独で含むケースと同様の範囲内とすることができる。
【0111】
本発明においては、正極10が黒鉛を適量で含有することに加え、さらに、負極20も適量で黒鉛を含有することで、上記のような、各電極内における拡散抵抗が低減される作用がより顕著に得られるので、従来に比べて放電電流が上昇した、放電電流の大きな小型の非水電解質二次電池において、さらに優れた放電特性を得ることが可能になる。
【0112】
負極20は、バインダ(以下、負極20に用いられるバインダを「負極バインダ」ということがある)を含有してもよい。
負極バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等が挙げられ、中でも、ポリアクリル酸が好ましく、架橋型のポリアクリル酸がより好ましい。
また、負極バインダは、上記のうちの1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、負極バインダにポリアクリル酸を用いる場合には、ポリアクリル酸を、予め、pH3〜10に調整しておくことが好ましい。この場合のpHの調整には、例えば、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物や水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物を用いることができる。
負極20中の負極バインダの含有量は、例えば1〜20質量%とされる。
【0113】
なお、負極20の大きさ、厚さについては、正極10の大きさ、厚さと同様とすることができる。
また、図1に示す非水電解質二次電池1においては、負極20の表面、即ち、負極20と後述のセパレータ30との間に、リチウムフォイル60を設けた構成を採用している。
【0114】
負極20を製造する方法としては、例えば、負極活物質として上記材料を用い、必要に応じて黒鉛等の負極導電助剤、及び/又は、負極バインダとを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤を任意の形状に加圧成形する方法を採用することができる。
この場合の加圧成形時の圧力は、負極導電助剤の種類等を勘案して決定され、例えば0.2〜5ton/cmとすることができる。
【0115】
[第2網状集電体(負極用)]
本発明の非水電解質二次電池1は、上記の正極10側に配置される第1網状集電体11の場合と同様、負極20と後述の負極集電体24との間に金属製の第2網状集電体21が配置された構成を採用した場合には、負極20が、第2網状集電体21を介して負極集電体24と電気的に接続される。非水電解質二次電池1は、第1網状集電体11に加えて、さらに、第2網状集電体21を備えた構成を採用することで、負極20と第2網状集電体21との間、及び、第2網状集電体21と負極集電体24との間の接触面積が増加して接触抵抗が低減し、これに伴って内部抵抗が顕著に低減される効果が期待できる。
【0116】
第2網状集電体21の材質としては、正極用の第1網状集電体11と同様、特に限定されないが、ニッケル材料、アルミニウム材料又はステンレス鋼材料を用いることで、負極20と第2網状集電体21との間、及び、第2網状集電体21と正極集電体24との間の接触抵抗が効果的に低減される。
【0117】
また、第2網状集電体21の形状としても、上記同様、エキスパンドメタル、平織金網及び綾織金網の内の何れかを採用することができ、また、そのメッシュ寸法等も同様のものを採用することができる。
【0118】
さらに、負極用の第2網状集電体21においても、図1中では詳細な図示を省略しているが、負極20に対して、第2網状集電体21の少なくとも一部が埋め込まれていることがより好ましい。このように、負極20に第2網状集電体21の少なくとも一部が埋め込まれていることで、負極20と第2網状集電体21との間の接触面積が大幅に増加して接触抵抗が顕著に低減され、内部抵抗が顕著に低減される効果が期待できる。
【0119】
本発明においては、上述したように、正極及び負極の何れもが、各集電体に対して網状集電体を介して電気的に接続された構成を採用した場合には、各電極と各網状集電体との間、及び、各網状集電体と各集電体との間の接触面積が増加して接触抵抗が低減し、内部抵抗も顕著に低減する。従って、放電電流が1〜数mA程度の領域である小型の非水電解質二次電池に本発明を適用した場合においても、充分な放電特性の確保が期待できる。
【0120】
[負極集電体]
【0121】
また、負極集電体24は、正極集電体14と同様の材料、即ち、炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤等、従来公知のものを用いて構成することができる。
【0122】
[セパレータ]
セパレータ30は、正極10と負極20との間に介在され、大きなイオン透過度を有するとともに耐熱性に優れ、かつ、所定の機械的強度を有する絶縁膜が用いられる。
セパレータ30としては、従来から非水電解質二次電池のセパレータに用いられ、上記特性を満たす材質からなるものを何ら制限無く適用でき、例えば、アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、鉛ガラス等のガラス、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド、ポリイミド(PI)、アラミド、セルロース、フッ素樹脂、セラミックス等の樹脂からなる不織布や繊維等が挙げられる。セパレータ30としては、上記の中でも、ガラス繊維からなる不織布を用いることがより好ましい。ガラス繊維は、機械強度に優れるとともに、大きなイオン透過度を有するため、内部抵抗を低減して放電容量の向上を図ることが可能となる。
セパレータ30の厚さは、非水電解質二次電池1の大きさや、セパレータ30の材質等を勘案して決定され、例えば5〜300μm程度とすることができる。
【0123】
<非水電解質二次電池のその他の形態>
本実施形態においては、非水電解質二次電池の一実施形態として、ステンレス鋼製の正極缶とステンレス鋼製の負極缶とを用い、これらをかしめた収納容器を備えるコイン型構造の非水電解質二次電池を、好ましい形態の一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、セラミックス製の容器本体の開口部が、金属製の封口部材を用いたシーム溶接等の加熱処理によってセラミックス製の蓋体で封止された構造の非水電解質二次電池であってもよい。
【0124】
さらに、本発明に係る構成は、例えば、リチウムイオンキャパシタ等の電気化学セルにも応用可能である。
【0125】
<非水電解質二次電池の用途>
本実施形態の非水電解質二次電池1は、上述したように、特に、放電電流が1〜数mA程度の領域である小型の非水電解質二次電池を構成した場合に優れた放電特性が得られるものなので、例えば、携帯電話、PDA、携帯用ゲーム機、デジタルカメラ等の各種小型電子機器において、半導体メモリのバックアップ用電源やリアルタイムクロック機能のバックアップ用の電源に好適に用いられる。
【0126】
<作用効果>
以上説明したように、本発明の実施形態である非水電解質二次電池1によれば、正極10に含まれる導電助剤の材料を最適化し、また、正極10と正極集電体14とを金属製の第1網状集電体11を介して電気的に接続したうえで、さらに、非水電解質50に含まれる支持塩としてLiFSIを採用することにより、電池全体の放電末期における内部抵抗が低減される。
これにより、特に、放電電流が1〜数mA程度の領域である小型の非水電解質二次電池1において、充分な放電電流及び電圧を維持した状態で長時間の放電が可能になり、優れた放電特性が得られる。
従って、コイン型等の小型の非水電解質二次電池1が適用される各種小型電子機器において求められる放電特性を充分に満足でき、機器特性の向上が可能な非水電解質二次電池1を提供することが可能になる。
【実施例】
【0127】
次に、実施例及び比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は、本実施例によってその範囲が制限されるものではなく、本発明に係る非水電解質二次電池は、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0128】
<非水電解質二次電池の作製>
[実験例1,2]
実験例1,2においては、電気化学セルとして、コイン型の非水電解質二次電池を作製し、支持塩の材料を変更した場合の放電特性を測定した(図1の非水電解質二次電池を参照)。
【0129】
即ち、実験例1,2では、まず、以下に示す組成の非水電解質を調整し、さらに、正極活物質としてLi1.14Co0.06Mn1.80、負極活物質として表面全体が炭素で被覆されたSiOを用いて非水電解質二次電池を作製した。本実施例では、図1に示す断面図において、外形が9.5mm、厚さが2.0mmのコイン型(920サイズ)の非水電解質二次電池(リチウム二次電池)を作製した。
【0130】
(非水電解質の調整)
まず、下記の配合比率(体積%)に従って有機溶媒を調整し、この有機溶媒に支持塩を溶解させることで非水電解質を調整した。この際、有機溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、及び、ジメトキシエタン(DME)を、体積比で{PC:EC:DME}={1:1:2}の割合で混合することで、混合溶媒を調整した。次いで、得られた混合溶媒に、支持塩として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)(実験例1)、又は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)(実験例2)を、モル濃度が、それぞれ1mol/Lとなるように溶解させることで非水電解質を得た。なお、このときの非水電解質50中におけるLiTFSI及びLiFSIの重量比は、それぞれ29.4%及び14.9%で換算される。
【0131】
(電池の作製)
正極として、まず、市販のリチウムマンガン酸化物(Li1.14Co0.06Mn1.80)に、導電助剤として、下記表1に示す粒度(D50)及び比表面積を有する黒鉛(サンプルA)を、バインダ(結着剤)としてポリアクリル酸を、リチウムマンガン酸化物:黒鉛:ポリアクリル酸=95:4:1(質量比)の割合で混合して正極合剤とした。
次いで、得られた正極合剤98.6mgを、2ton/cmの加圧力で加圧成形し、直径8.9mmの円盤形ペレットに加圧成形した。
【0132】
次に、得られたペレット(正極)を、ステンレス鋼(SUS329J4L:t=0.20mm)製の正極缶の内面に、炭素を含む導電性樹脂接着剤を用いて接着し、これらを一体化して正極ユニットを得た。その後、この正極ユニットを、大気中で120℃・11時間の条件で減圧加熱乾燥した。
そして、そして、正極ユニットにおける正極缶の開口部の内側面にシール剤を塗布した。
【0133】
次に、負極として、まず、表面全体に炭素(C)が形成されたSiO粉末を準備し、これを負極活物質とした。そして、この負極活物質に、導電助剤として、下記表1に示す粒度(D50)及び比表面積を有する黒鉛(サンプルA)を、結着剤としてポリアクリル酸を、75:20:5(質量比)の割合で混合して負極合剤とした。
次いで、得られた負極合剤15.1mgを、2ton/cm加圧力で加圧成形し、直径6.7mmの円盤形ペレットに加圧成形した。
【0134】
次に、得られたペレット(負極)を、ステンレス鋼(SUS304−BA:t=0.20mm)製の負極缶の内面に、炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤を用いて接着し、これらを一体化して負極ユニットを得た。その後、この負極ユニットを、大気中で160℃・11時間の条件で減圧加熱乾燥した。
そして、ペレット状の負極上に、さらに、直径6.1mm、厚さ0.38mmに打ち抜いたリチウムフォイルを圧着し、リチウム−負極積層電極とした。
【0135】
上述したように、本実施例においては、図1中に示すような正極集電体14及び負極集電体24を設けず、正極缶に正極集電体の機能を持たせるとともに、負極缶に負極集電体の機能を持たせた構成として、非水電解質二次電池を作製した。
【0136】
次に、ガラス繊維からなる不織布を乾燥させた後、直径7mmの円盤型に打ち抜いてセパレータとした。そして、このセパレータを負極上に圧着されたリチウムフォイル上に載置し、負極缶の開口部に、ポリプロピレン製のガスケットを配置した。
【0137】
次に、正極缶及び負極缶に、上記手順で調整した非水電解質を、電池1個あたりの合計で40μL充填した。
【0138】
次に、セパレータが正極に当接するように、負極ユニットを正極ユニットにかしめた。そして、正極缶の開口部を嵌合することで正極缶と負極缶とを密封した後、25℃で7日間静置して、下記表2に示すような各例の非水電解質二次電池を得た。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
[実験例3〜6]
実験例3〜6においては、上記同様、電気化学セルとしてコイン型の非水電解質二次電池を作製し、正極に用いられる導電助剤の材料を変更した場合の放電特性を測定した。
【0142】
即ち、実験例3〜7では、正極に含有される導電助剤を、表1に示す粒度(D50)及び比表面積を有する黒鉛(サンプルA〜E)とした点以外は、上記の実験例2と同様の手順で、下記表3に示すようなコイン型(920サイズ)の非水電解質二次電池を作製した。
【0143】
【表3】
【0144】
[実験例7〜9]
実験例7〜9においては、上記同様、電気化学セルとしてコイン型の非水電解質二次電池を作製し、下記表4中に示すように、正極と正極集電体(正極缶)との間、及び、負極と負極集電体(負極缶)との間に、金属製の網状集電体を設置した場合及び設置しなかった場合の放電特性を測定した。
【0145】
即ち、実験例7〜9では、網状集電体の金属材料として、材質がステンレス鋼(SUS430)、形状がエキスパンドメタル、厚みが0.08mmのものを準備し、平面視で各電極と同サイズに加工した後、これを、各電極と正極缶又は負極缶の内底との間に介在させた状態で減圧加熱乾燥を行うことにより、各電極と各集電体(正極缶又は負極缶)との間に、適宜、網状集電体を介在させた点以外は、上記の実験例2と同様の手順で、コイン型(920サイズ)の非水電解質二次電池を作製した。
実験例7:正極−正極集電体間;あり,負極−負極集電体間;あり
実験例8:正極−正極集電体間;あり,負極−負極集電体間;なし
実験例9:正極−正極集電体間;なし,負極−負極集電体間;あり
【0146】
【表4】
【0147】
[実験例10〜13]
実験例10〜13においては、上記同様、電気化学セルとしてコイン型の非水電解質二次電池を作製し、正極と正極集電体(正極缶)との間に介在させた網状集電体の金属材料を変更した場合の放電特性を測定した。
【0148】
即ち、実験例10〜13では、正極と正極集電体(正極缶)との間に介在させた網状集電体の金属材料を、下記表5,7及び以下の説明に示すような材料に変更した点以外は、上記の実験例8と同様の手順で、コイン型(920サイズ)の非水電解質二次電池を作製した。なお、実験例10〜13では、負極側には網状集電体を設けていない非水電解質二次電池を作製した。
実験例10:正極−正極集電体間の網状集電体;3Ni7−3/0(厚さ3mil(0.08mm),ニッケル,ストランド幅7mil,エキスパンドメタル)
実験例11:正極−正極集電体間の網状集電体;5Ni7−4/0(厚さ4mil(0.13mm),ニッケル,ストランド幅7mil,エキスパンドメタル)
実験例12:正極−正極集電体間の網状集電体;純Ni(線形φ5.5μm、180メッシュ)
実験例13:正極−正極集電体間の網状集電体;4Al8−4/0(厚さ4mil(0.13mm),アルミニウム,ストランド幅8mil,エキスパンドメタル)
【0149】
【表5】
【0150】
[実験例14]
実験例14においては、上記同様、電気化学セルとしてコイン型の非水電解質二次電池を作製し、導電助剤の材料、及び、網状集電体の有無を変更した場合の放電特性を測定した。
【0151】
即ち、実験例14では、正極に含有される導電助剤を、表1及び下記表6、並びに以下の説明に示すような材料及び含有量としたうえで、さらに、網状集電体の金属材料として、材質がニッケル、形状がエキスパンド、厚みが0.13mmのものを準備し、平面視で各電極と同サイズに加工した後、これを、各電極と正極缶又は負極缶の内底との間に介在させた状態で減圧加熱乾燥を行うことで、正極と正極集電体(正極缶)との間に、適宜、網状集電体を介在させた点以外は、上記の実験例2と同様の手順で、コイン型(920サイズ)の非水電解質二次電池を作製した。
ここで、実験例14の非水電解質二次電池は、正極に含まれる導電助剤の材料及び含有量、正極と正極集電体との間への網状集電体の配置、非水電解質に含まれる支持塩の材料が、本発明で規定する範囲とされた「実施例」である。
実験例14:導電助剤;黒鉛(サンプルD)
正極−正極集電体間の網状集電体;5Ni7−4/0
【0152】
【表6】
【0153】
【表7】
【0154】
<評価方法>
上記手順で得られた上記各実験例の非水電解質二次電池に対して、以下に説明するような評価試験を実施した。
【0155】
[内部抵抗試験]
上記手順で得られた各実験例の非水電解質二次電池の内部抵抗を、市販のLCRメーターを用い、R機能により、交流1kHzにおける値を測定した。この際、常温(25℃)環境下の温度条件で各例の非水電解質二次電池の内部抵抗を測定し、結果を表2〜表6に示した。
【0156】
[放電電流特性試験]
上記手順で得られた各実験例の非水電解質二次電池に対して、以下に説明するような放電電流特性試験を行うことにより、放電特性を評価した。
【0157】
具体的には、まず、得られた非水電解質二次電池を、25℃の環境下、定電流1mA,3mA,5mA,及び7mAの放電電流で電圧1.0Vになるまで放電し、次いで、25℃の環境下、電圧3.1Vで72時間印加した。その後、25℃の環境下、定電流1mA,3mA,5mA,及び7mAの放電電流で電圧2.0V及び1.0Vになるまで放電した際の放電時間を測定し、この時間を常温(RT)下における各電流値での放電時間(sec)として、結果を表2〜表6に示した。
【0158】
また、表2においては、実験例1に対する実験例2の放電時間の変化率(%)、表3においては、実験例2に対する実験例3〜6の放電時間の変化率(%)、表4においては、実験例2に対する実験例7〜9の放電時間の変化率(%)、表5においては、実験例2に対する実験例10〜13の放電時間の変化率(%)、表6においては、実験例2に対する実験例14の放電時間の変化率(%)も示した。なお、表2〜表6においては、実験例1、又は、実験例2の放電時間を100(%)とした場合の変化率(%)を示している。
【0159】
また、これらの各実験例のうち、実験例1(支持塩:LiTFSI、導電助剤:黒鉛(サンプルA)、網状集電体:なし)、実験例2(支持塩:LiFSI、導電助剤:黒鉛(サンプルA)、網状集電体:なし)、実験例5(支持塩:LiFSI、導電助剤:黒鉛(サンプルD)、網状集電体:なし)、実験例11(支持塩:LiFSI、導電助剤:黒鉛(サンプルA)、網状集電体:正極側)及び実験例14(支持塩:LiFSI、導電助剤:黒鉛(サンプルD),網状集電体:正極側)における、放電時間と電圧との関係を、放電電流(1mA,3mA,5mA,及び7mA)毎に、図2図5のグラフに示した。
【0160】
[評価結果]
まず、表2(及び表3〜6)中に示した実験例2のように、非水電解質に含まれる支持塩にLiFSIを用いることで、支持塩にLiTFSIを用いた実験例1に比べ、1〜7mA程度の電流領域における3.1V〜1.0Vの放電時間が最大で10%前後長くなり、放電特性が向上していることがわかる。
【0161】
また、表3中に示した実験例5では、正極中における導電助剤として表1中に示したサンプルDからなる黒鉛を含むことにより、例えば、導電助剤としてサンプルAを用いた実験例2に比べ、1〜7mA程度の電流領域における3.1V〜1.0Vの放電時間が最大で37%長くなっている。また、実験例5は、導電助剤に表1中に示したサンプルBを用いた実験例3や、サンプルCを用いた実験例4、また、サンプルEを用いた実験例6等に比べても放電時間が延びており、放電特性が向上していることがわかる。
【0162】
また、表4中に示した実験例7,8では、正極と正極集電体との間にステンレス材料(SUS430)からなる網状集電体を備え、実験例7では、さらに負極と負極集電体との間にも同様の材料からなる網状集電体を備えている。実験例7,8においては、何れの電極側にも網状集電体が備えられていない実験例2に比べて、1〜7mA程度の電流領域における3.1V〜1.0Vの放電時間が最大で37%(実験例7)又は66%(実験例8)で長くなっており、放電特性が向上していることがわかる。また、実験例7,8では、負極と負極集電体との間にのみ、網状集電体が備えられた実験例9に比べても、1〜7mA程度の電流領域における3.1V〜1.0Vの放電時間が大幅に長くなっていることが確認できる。
【0163】
また、表5中に示した実験例11では、正極側に配置される網状集電体としてニッケル材料(5Ni7−4/0)からなるものを用いているので、何れの電極側にも網状集電体が備えられていない実験例2に比べて、1〜7mA程度の電流領域における3.1V〜1.0Vの放電時間が最大で32%延びており、放電特性が向上していることがわかる。また、実験例11は、正極側に3Ni7−3/0からなる網状集電体を備えた実験例10や、純Niからなる網状集電体を備えた実験例12に比べても、1〜7mA程度の電流領域における3.1V〜1.0Vの放電時間が長い値を示している。これは、実験例11で用いた網状集電体は、実験例10等に比べて厚みが大きいためと考えられる。
【0164】
表6中に示した実験例14は、正極中における導電助剤として黒鉛を4質量%含み、また、正極と正極集電体との間に5Ni7−4/0からなる網状集電体を備え、さらに、非水電解質中に含まれる支持塩がLiFSIである、本発明の請求項1で規定する構成を備えてなる実施例である。この実験例14は、導電助剤に黒鉛を用いるとともに、何れの電極側にも網状集電体を備えていない実験例2に比べて、1〜7mA程度の電流領域における3.1V〜1.0Vの放電時間が最大で135%延びており、放電特性が顕著に向上していることがわかる。
【0165】
以上説明した各実験例における結果より、本発明の請求項1で規定するように、正極中が導電助剤として黒鉛を含み、正極と正極集電体とが網状集電体を介して電気的に接続され、さらに、非水電解質に含まれる支持塩としてLiFSIを用いるという、各条件を組み合わせた構成を採用することにより、特に、放電電流が1〜数mA程度の領域である小型の非水電解質二次電池を構成した場合に優れた放電特性が得られることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明の非水電解質二次電池は、上述したように、特に、放電電流が1〜数mA程度の領域である小型の非水電解質二次電池を構成した場合に優れた放電特性が得られるものである。従って、本発明の非水電解質二次電池は、例えば、携帯電話、PDA、携帯用ゲーム機、デジタルカメラ等の各種小型電子機器において、半導体メモリのバックアップ用電源やリアルタイムクロック機能のバックアップ用電源等に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0167】
1…非水電解質二次電池
2…収納容器
10…正極
11…第1網状集電体(正極用の網状集電体)
12…正極缶
12a…開口部
14…正極集電体
20…負極
21…第2網状集電体(負極用の網状集電体)
22…負極缶
22a…先端部
24…負極集電体
30…セパレータ
40…ガスケット
41…環状溝
50…非水電解質
60…リチウムフォイル
図1
図2
図3
図4
図5