(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587930
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/10 20160101AFI20191001BHJP
G01R 27/26 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
H02J50/10
G01R27/26 L
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-253377(P2015-253377)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-118740(P2017-118740A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年10月19日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年12月1日に、日置電機株式会社がウェブサイト(http://www.incom.co.jp/company/cid_0001063/product/)にて、本件出願の発明者が発明した測定装置の発明に係るワイヤレス給電評価システムについて公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】関 智志路
【審査官】
坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−019869(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/075262(WO,A1)
【文献】
特開2015−126658(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/018334(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R27/00−27/32
H02J50/00−50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触電力伝送用の送電コイルおよび受電コイルを保持可能に構成されると共に当該保持された送電コイルおよび受電コイルの相対的位置が三次元的に変化するように当該送電コイルおよび当該受電コイルを相対的に移動させる移動部と、
前記送電コイルおよび前記受電コイルを接続可能に構成されると共に当該接続された送電コイルおよび受電コイルの接続状態を差動接続状態および和動接続状態のうちの一方の接続状態に選択的に切り替える接続切替部と、
前記接続切替部によって前記差動接続状態に切り替えられたときの前記送電コイルおよび前記受電コイルの差動時合成インダクタンスと前記和動接続状態に切り替えられたときの前記送電コイルおよび前記受電コイルの和動時合成インダクタンスとを測定する測定部と、
前記移動部を制御して前記送電コイルおよび前記受電コイルを相対的に移動させることにより前記相対的位置を予め規定された複数の測定位置に順次移行させつつ、当該複数の測定位置のそれぞれにおいて前記接続切替部および前記測定部を制御して前記差動時合成インダクタンスと前記和動時合成インダクタンスとを測定させると共に当該測定された差動時合成インダクタンスおよび和動時合成インダクタンスに基づいて前記送電コイルおよび前記受電コイル間の相互インダクタンスを算出し、かつ当該算出した相互インダクタンスを当該複数の測定位置のそれぞれに対応させて記憶部に記憶させる処理部とを備えている測定装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記記憶された前記複数の測定位置での前記相互インダクタンスに基づいて、当該複数の測定位置での前記送電コイルおよび前記受電コイル間の伝送効率を測定する請求項1記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触電力伝送装置における送信コイルと受信コイルとの間の相互インダクタンスおよび両コイル間の伝送効率のうちの少なくとも一方を測定する測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の非接触電力伝送装置における送電(送信)コイルと受電(受信)コイルとの間の相互インダクタンスMについては、下記の特許文献1に開示されているように、これら2つのコイルの差動結合時(差動接続時)の合成インダクタンスをLaとし、また和動結合時(和動接続時)の合成インダクタンスをLbとしたときに、相互インダクタンスM=(Lb−La)/4の算出式で算出できることが公知となっている。また、この特許文献1に開示されているように、送電コイルから受電コイルへの電力の伝送効率については、相互インダクタンスM(または、この相互インダクタンスMおよび各コイルのインダクタンスから算出される結合係数k)に大きく依存していることも公知となっている。さらには、特に文献は提示しないが、相互インダクタンスMに基づいてこの伝送効率を算出できることも公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−106170号公報(第4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、送電コイルおよび受電コイルのうちの一方のコイルに対する他方のコイルの伝送効率上の最適な位置を特定すべく、一方のコイルに対する他方のコイルの位置を三次元的に移動させつつ各位置(測定位置)での相互インダクタンスMの測定(さらには、この相互インダクタンスMに基づく伝送効率の算出(測定))を行うことがある。
【0005】
この相互インダクタンスMの測定に際して、一方のコイルに対する他方のコイルの位置を相互インダクタンスMを測定する位置(測定位置)に位置決めする位置決め作業、位置決めされた各コイルを差動接続する差動接続作業、差動接続された各コイルの合成インダクタンスLaを測定する第1合成インダクタンス測定作業、位置決めされた各コイルを和動接続する和動接続作業、および和動接続された各コイルの合成インダクタンスLbを測定する第2合成インダクタンス測定作業の一連の作業を、測定位置の数だけ行う必要があるが、現状では、こられ一連の作業を手作業で行っているため、すべての測定位置における相互インダクタンスMの測定(相互インダクタンスM(または伝送効率)の三次元的な分布データ(三次元データ)の測定)に大変な手間がかかるという解決すべき課題が存在している。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、送電コイルと受電コイルとの間の相互インダクタンスおよび両コイル間の伝送効率のうちの少なくとも一方の測定に要する手間を大幅に低減し得る測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の測定装置は、非接触電力伝送用の送電コイルおよび受電コイルを保持可能に構成されると共に当該保持された送電コイルおよび受電コイルの相対的位置が三次元的に変化するように当該送電コイルおよび当該受電コイルを相対的に移動させる移動部と、前記送電コイルおよび前記受電コイルを接続可能に構成されると共に当該接続された送電コイルおよび受電コイルの接続状態を差動接続状態および和動接続状態のうちの一方の接続状態に選択的に切り替える接続切替部と、前記接続切替部によって前記差動接続状態に切り替えられたときの前記送電コイルおよび前記受電コイルの差動時合成インダクタンスと前記和動接続状態に切り替えられたときの前記送電コイルおよび前記受電コイルの和動時合成インダクタンスとを測定する測定部と、前記移動部を制御して前記送電コイルおよび前記受電コイルを相対的に移動させることにより前記相対的位置を予め規定された複数の測定位置に順次移行させつつ、当該複数の測定位置のそれぞれにおいて前記接続切替部および前記測定部を制御して前記差動時合成インダクタンスと前記和動時合成インダクタンスとを測定させると共に当該測定された差動時合成インダクタンスおよび和動時合成インダクタンスに基づいて前記送電コイルおよび前記受電コイル間の相互インダクタンスを算出し、かつ当該算出した相互インダクタンスを当該複数の測定位置のそれぞれに対応させて記憶部に記憶させる処理部とを備えている。
【0008】
また、請求項2記載の測定装置は、請求項1記載の測定装置において、前記処理部は、前記記憶された前記複数の測定位置での前記相互インダクタンスに基づいて、当該複数の測定位置での前記送電コイルおよび前記受電コイル間の伝送効率を測定する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の測定装置によれば、処理部によって制御されて、送電コイルおよび受電コイルを互いの相対的位置が三次元的に変化するように両コイルを相対的に移動させる移動部と、処理部によって制御されて、両コイルの接続状態を和動接続状態および差動接続状態のうちの一方に選択的に切り替える接続切替部と、処理部によって制御されて、差動接続状態のときの両コイルの合成インダクタンスおよび和動接続状態のときの両コイルの合成インダクタンスを測定する測定部と、各合成インダクタンスに基づいて両コイル間の相互インダクタンスを算出する処理部とを備えたことにより、相互インダクタンスを測定すべき複数の測定位置(送電コイルおよび受電コイル間の複数の相対的位置)を操作部などを用いて記憶部に予め記憶させておくだけで、複数の測定位置での相互インダクタンスを自動的に測定することができるため、この相互インダクタンスの測定に要する時間を大幅に低減することができる。
【0010】
また、請求項2記載の測定装置によれば、処理部が複数の測定位置での相互インダクタンスに基づいて、この複数の測定位置での両コイル間の伝送効率を測定することにより、複数の測定位置での伝送効率についても自動的に測定することができることから、この伝送効率の測定に要する時間についても大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】接続切替部3の構成と、接続切替部3、送電コイル101、受電コイル102および測定部4との接続構成を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0013】
まず、測定装置の一例である
図1に示す測定装置1の構成について説明する。この測定装置1は、非接触電力伝送装置における送電側電極としての送電コイル101および受電側電極としての受電コイル102の相対的位置を三次元的に変化させて、この相対的位置が予め規定された複数の測定位置のそれぞれとなったときの各位置(測定位置)での両コイル101,102間の相互インダクタンスM(および/または伝送効率)を測定する装置であって、移動部2、接続切替部3、測定部4、処理部5、記憶部6および出力部7を備えて構成されている。
【0014】
移動部2は、送電側保持部11、受電側保持部12および移動機構13を備えている。この場合、送電側保持部11は、送電コイル101を保持可能に構成されている。具体的には、送電側保持部11は、送電コイル101を載置可能なテーブル状に形成されると共に、載置された送電コイル101を着脱自在に固定する不図示の固定具とを備えている。
【0015】
受電側保持部12は、受電コイル102を保持可能に構成されている。具体的には、受電側保持部12は、受電コイル102を載置可能なテーブル状に形成されると共に、載置された受電コイル102を着脱自在に固定する不図示の固定具とを備えている。
【0016】
また、送電側保持部11および受電側保持部12は、送電コイル101が発生する磁界(受電コイル102が受ける磁界でもある)に対する影響を低減するため、比透磁率(透磁率)および比誘電率(誘電率)が小さい材料を用いて構成されている。具体的には、この材料として、樹脂(一例として、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABS樹脂等の非晶性樹脂)を用いることができる。また、剛性の確保や製造効率を考慮して、この材料として金属を用いるときには、比透磁率および比誘電率が比較的小さいアルミニウムを用いるのが好ましい。
【0017】
移動機構13は、処理部5によって制御されることで、送電側保持部11および受電側保持部12の相対的位置が三次元的に変化するように送電側保持部11および受電側保持部12を相対的に移動させる。本例では一例として、移動機構13では、送電側保持部11は位置が固定され、受電側保持部12は送電側保持部11に対して平行な状態に維持された状態で、三軸(X軸、Y軸およびZ軸)方向に移動可能に構成されている。この構成により、この移動機構13は、送電側保持部11に対する受電側保持部12の位置(両保持部11,12間の相対的位置)を三次元的に変化させることが可能となっている。この構成により、移動機構13は、送電側保持部11に保持された送電コイル101と受電側保持部12に保持された受電コイル102との間の相対的位置を三次元的に変化させる。
【0018】
なお、移動機構13については、送電側保持部11を上記の位置が固定の構成に代えて、例えば、
図1に示すように、X軸と平行なA軸、Y軸と平行なB軸、およびZ軸と平行なC軸のうちの少なくとも1軸を中心として回転可能な構成としたり、図示はしないが、受電側保持部12をX軸、Y軸およびZ軸のうちの少なくとも1軸を中心として回転可能な構成としたりすることで、送電側保持部11に保持された送電コイル101に対する受電側保持部12に保持された受電コイル102の傾きを任意の角度に変化させ得るようにしてもよい。この構成を採用することにより、移動機構13は、送電コイル101に対する受電コイル102の傾きを任意の角度に規定した状態で、送電コイル101および受電コイル102間の相対的位置を三次元的に変化させることが可能となる。
【0019】
接続切替部3は、送電側保持部11に保持された送電コイル101および受電側保持部12に保持された受電コイル102を接続可能に構成されると共に、処理部5によって制御されることで、この接続された送電コイル101および受電コイル102の接続状態を和動接続状態および差動接続状態のうちの一方の接続状態に選択的に切り替えることが可能となっている。具体的には、接続切替部3は、
図2に示すように、一例として、処理部5によって制御される2つの切替スイッチ21,22を備えている。また、一例として、
図2に示すように、切替スイッチ21は、c接点が配線(引き出し線)23を介して送電コイル101の一端に接続され、a接点が配線(引き出し線)24を介して受電コイル102の一端に接続されている。また、切替スイッチ22は、a接点が配線(引き出し線)25を介して受電コイル102の他端に接続され、c接点が後述するように測定部4に接続されている。また、切替スイッチ21のa接点と切替スイッチ22のb接点とが接続され、切替スイッチ21のb接点と切替スイッチ22のa接点とが接続されている。
【0020】
この構成により、接続切替部3は、各切替スイッチ21,22が
図2において実線で示される状態(c接点がa接点に接続される状態)に切り替えられることで、送電コイル101および受電コイル102の接続状態を差動接続状態に切り替え、一方、各切替スイッチ21,22が
図2において破線で示される状態(c接点がb接点に接続される状態)に切り替えられることで、送電コイル101および受電コイル102の接続状態を和動接続状態に切り替えることが可能となっている。
【0021】
測定部4は、例えば、いわゆるLCRメータなどの測定機器で構成されている。また、測定部4は、
図2に示すように、一方の入力端子(不図示)が、この入力端子に装着されたプローブPL1および送電コイル101の他端に接続された配線(引き出し線)26を介してこの送電コイル101の他端に接続され、他方の入力端子(不図示)が、この入力端子に装着されたプローブPL2を介して切替スイッチ22のc接点に接続されている。この構成により、測定部4は、処理部5によって制御されることで、接続切替部3によって上記したように差動接続状態に切り替えられたときの送電コイル101および受電コイル102の合成インダクタンス(差動時合成インダクタンス)Ldifを測定して出力し、また接続切替部3によって上記したように和動接続状態に切り替えられたときの送電コイル101および受電コイル102の合成インダクタンス(和動時合成インダクタンス)Lsumを測定して出力することが可能となっている。
【0022】
処理部5は、例えば、コンピュータで構成されて、移動部2の移動機構13を制御して、送電側保持部11に保持された送電コイル101と受電側保持部12に保持された受電コイル102を相対的に移動させることにより、送電コイル101と受電コイル102との間の相対的位置を予め規定された複数の測定位置に順次移動させる移動処理を実行する。また、処理部5は、接続切替部3を制御して、送電コイル101および受電コイル102の接続状態を、差動接続状態および和動接続状態のうちの一方の接続状態に選択的に切り替える接続切替処理を実行する。また、処理部5は、測定部4に対する制御を実行して、送電コイル101と受電コイル102との間の合成インダクタンスLdif,Lsumを測定させて出力させると共に、この出力された合成インダクタンスLdif,Lsumを取得する合成インダクタンス取得処理を実行する。また、処理部5は、この取得した合成インダクタンスLdif,Lsumに基づいて送電コイル101および受電コイル102間の相互インダクタンスMを算出する算出処理を実行する。
【0023】
また、処理部5は、送電コイル101と受電コイル102との相対的位置を上記した複数の測定位置のそれぞれにしたときに実行した算出処理で算出された相互インダクタンスMを、上記した複数の測定位置のそれぞれに対応させて記憶部6に記憶させる記憶処理を実行する。この記憶処理によって記憶部6に記憶される情報は、送電コイル101および受電コイル102のうちの一方のコイル(本例では一例として送電コイル101)を固定した状態において、他方のコイル(受電コイル102)を一方のコイルに対して三次元的に各測定位置に移動させたときの各測定位置での相互インダクタンスMの分布を示す情報(つまり、相互インダクタンスMの三次元マップ)である。
【0024】
また、処理部5は、記憶部6に記憶されている各測定位置での相互インダクタンスMを出力部7に出力する出力処理を実行する。
【0025】
記憶部6には、処理部5の動作プログラム(合成インダクタンスLdif,Lsumから相互インダクタンスMを算出するための算出式(M=(Lsum−Ldif)/4)を含む)、および複数の測定位置を示す情報が予め記憶されている。出力部7は、一例として液晶ディスプレイなどの表示装置で構成されて、処理部5から出力される各測定位置での相互インダクタンスMに基づいて、送電コイル101および受電コイル102のうちの一方のコイル(本例では送電コイル101)を基準としたときの相互インダクタンスMの三次元的な分布を画面上に表示させる。なお、出力部7については、表示装置とする構成に代えて、外部装置とデータ通信するインターフェース回路やリムーバブルメディアを装着し得るインターフェース回路とする構成として、このる各測定位置での相互インダクタンスMを外部装置に送信したり、リムーバブルメディアに記憶させたりすることもできる。
【0026】
次に、測定装置1の動作について説明する。なお、送電コイル101および受電コイル102は、
図2に示す接続状態で、接続切替部3および測定部4に接続されているものとする。
【0027】
測定装置1では、処理部5が、まず移動処理を実行する。この移動処理では、処理部5は、記憶部6から複数の測定位置のうちの1つを読み出すと共に、移動機構13を制御することにより、送電側保持部11(つまり、送電側保持部11に保持された送電コイル101)と受電側保持部12(つまり、受電側保持部12に保持された受電コイル102)との相対的位置が、読み出した測定位置となるように、送電側保持部11および受電側保持部12を相対的に移動させる。
【0028】
次いで、処理部5は、接続切替処理および合成インダクタンス取得処理を実行して、現在の測定位置での合成インダクタンスLdif,Lsumを取得する。具体的には、処理部5は、例えば、まず、接続切替部3を制御して送電コイル101および受電コイル102の接続状態を差動接続状態に切り替える接続切替処理を実行し、この状態において測定部4に対する制御を実行して合成インダクタンスLdifを測定させて出力させ、この合成インダクタンスLdifを取得する合成インダクタンス取得処理を実行する。次いで、処理部5は、接続切替部3を制御して送電コイル101および受電コイル102の接続状態を和動接続状態に切り替える接続切替処理を実行し、この状態において測定部4に対する制御を実行して合成インダクタンスLsumを測定させて出力させ、この合成インダクタンスLsumを取得する合成インダクタンス取得処理を実行する。
【0029】
続いて、処理部5は、上記した相互インダクタンスMを算出するための算出式を記憶部6から読み出して、その算出式に従って算出処理を実行して、この取得した合成インダクタンスLdif,Lsumに基づいて送電コイル101および受電コイル102間の相互インダクタンスMを算出する。また、処理部5は、記憶処理を実行して、現在の送電コイル101と受電コイル102との相対的位置(読み出した1つの測定位置)に対応させて、算出した相互インダクタンスMを記憶部6に記憶させる。
【0030】
その後、処理部5は、上記の移動処理、接続切替処理、合成インダクタンス取得処理、算出処理および記憶処理を、記憶部6に記憶されているすべての測定位置について実行する。これにより、すべての測定位置における相互インダクタンスMが記憶部6に記憶される。
【0031】
最後に、処理部5は、出力処理を実行して、記憶部6に記憶されている複数の測定位置における相互インダクタンスMを出力部7に出力する。これにより、この測定装置1では、図示はしないが、表示装置で構成される出力部7の画面上に、送電コイル101を基準としたときの相互インダクタンスMの三次元的な分布が表示される。
【0032】
このように、この測定装置1では、処理部5によって制御されて、送電コイル101および受電コイル102を互いの相対的位置が三次元的に変化するように両コイル101,102を相対的に移動させる移動部2と、処理部5によって制御されて、両コイル101,102の接続状態を和動接続状態および差動接続状態のうちの一方に選択的に切り替える接続切替部3と、処理部5によって制御されて、差動接続状態のときの両コイル101,102の合成インダクタンスLdifおよび和動接続状態のときの両コイル101,102の合成インダクタンスLsumを測定して出力する測定部4と、各合成インダクタンスLdif,Lsumに基づいて両コイル101,102間の相互インダクタンスMを算出する処理部5とを備えている。
【0033】
したがって、この測定装置1によれば、相互インダクタンスMを測定すべき複数の測定位置(送電コイル101および受電コイル102間の複数の相対的位置)を操作部などを用いて記憶部6に予め記憶させておくだけで、複数の測定位置での相互インダクタンスMを自動的に測定することができるため、この相互インダクタンスMの測定に要する時間を大幅に低減することができる。
【0034】
なお、上記の測定装置1において、処理部5が、各測定位置での相互インダクタンスMに基づいて、各測定位置での伝送効率(送電コイル101および受電コイル102間の伝送効率η)を算出して、相互インダクタンスMに代えて伝送効率ηを、または相互インダクタンスMと共に伝送効率ηを各測定位置に対応させて記憶部6に記憶させる構成を採用することもできる。この構成を採用することにより、送電コイル101および受電コイル102間の伝送効率ηの測定に要する時間を大幅に短縮することができる。また、処理部5が、相互インダクタンスM、送電コイル101のインダクタンスL1および受電コイル102のインダクタンスL2(
図2参照)に基づいて、各測定位置での両コイル101,102間の結合係数を算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 測定装置
2 移動部
3 接続切替部
4 測定部
5 処理部
101 送電コイル
102 受電コイル
Ldif 合成インダクタンス(差動時合成インダクタンス)
Lsum 合成インダクタンス(和動時合成インダクタンス)
M 相互インダクタンス