(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587938
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】吸音性能が優れた吸音材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/162 20060101AFI20191001BHJP
B60R 13/08 20060101ALI20191001BHJP
D04H 1/4391 20120101ALI20191001BHJP
D04H 1/541 20120101ALI20191001BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
G10K11/162
B60R13/08
D04H1/4391
D04H1/541
G10K11/16 120
【請求項の数】17
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-534388(P2015-534388)
(86)(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公表番号】特表2016-500831(P2016-500831A)
(43)【公表日】2016年1月14日
(86)【国際出願番号】KR2013008630
(87)【国際公開番号】WO2014051351
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年8月4日
【審判番号】不服2018-12053(P2018-12053/J1)
【審判請求日】2018年9月7日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0108764
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(73)【特許権者】
【識別番号】515084960
【氏名又は名称】東レ、ケミカル、コリア、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TORAY CHEMICAL KOREA INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョ、ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ド、ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チ、ホン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、キ、ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ボン、ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョン、ウク
【合議体】
【審判長】
千葉 輝久
【審判官】
須田 勝巳
【審判官】
菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−152670(JP,A)
【文献】
特表2001−513217(JP,A)
【文献】
特開昭54−053150(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0078210(KR,A)
【文献】
特開2000−160485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00-18/04
E04B 1/62- 1/99
G10K11/00-11/162
G10K11/172
G10K11/178-11/34
G10K11/36-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1を満たす多形断面繊維であって、多形断面繊維の縦方向に対する長さ(L)が多形断面繊維の頂点間をつなぐ横方向に対する長さ(W)より長い多形断面繊維;及び
多数の前記多形断面繊維を部分接合させるバインダー繊維;を含む繊維集合体を不織布形態に成形する吸音材の製造方法。
【数1】
(
ここで、A:繊維断面積(μm
2)、P:繊維断面のまわりの長さ(μm)
であり、
前記バインダー繊維は、弾性回復率が50ないし80%である低融点(LM)エラストマーを含み、
前記低融点(LM)エラストマーは、混合比がモル比0.65〜0.80:0.2〜0.35であるテレフタル酸ジメチル(DMT)とイソフタル酸ジメチル(DMI)、または混合比がモル比0.65〜0.80:0.2〜0.35であるテレフタル酸(TPA)とイソフタル酸(IPA)を酸成分(Diacid)に、混合比がモル比0.85〜0.95:0.05〜0.15である1,4−ブタンジオール(1,4−BD)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)をジオール成分(Diol)にして、エステル化及び重合段階を通じて製造され、
前記ポリテトラメチレングリコール(PTMG)の分子量が1500〜2000である)
【請求項2】
前記式1の値が2.6以上を満たす多形断面繊維を含んで製造することを特徴とする、請求項1に記載の吸音材の製造方法。
【請求項3】
前記多形断面繊維は、3棒扁平型、6葉形、8葉形及び波形からなった群から選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の吸音材の製造方法。
【請求項4】
前記多形断面繊維の長さは35ないし65mmであることを特徴とする、請求項1に記載の吸音材の製造方法。
【請求項5】
前記バインダー繊維は、前記低融点(LM)エラストマーを一成分として複合放射した複合繊維であることを特徴とする、請求項1に記載の吸音材の製造方法。
【請求項6】
前記低融点(LM)エラストマーは、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリスチレン系、ポリ塩化ビニル系及びポリウレタン系からなった群から選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の吸音材の製造方法。
【請求項7】
前記多形断面繊維50ないし80重量%及びバインダー繊維20ないし50重量%を含んで製造することを特徴とする、請求項1に記載の吸音材の製造方法。
【請求項8】
前記式1の値が3.0以上を満たす多形断面繊維を含むことを特徴とする、請求項1に記載の吸音材の製造方法。
【請求項9】
下記式1を満たす多形断面繊維であって、多形断面繊維の縦方向に対する長さ(L)が多形断面繊維の頂点間をつなぐ横方向に対する長さ(W)より長い多形断面繊維;及び
多数の前記多形断面繊維を部分接合させるバインダー繊維;を含む吸音材。
【数2】
(
ここで、A:繊維断面積(μm
2)、P:繊維断面のまわりの長さ(μm)
であり、
前記バインダー繊維は、弾性回復率が50ないし80%である低融点(LM)エラストマーを含み、
前記低融点(LM)エラストマーは、混合比がモル比0.65〜0.80:0.2〜0.35であるテレフタル酸ジメチル(DMT)とイソフタル酸ジメチル(DMI)、または混合比がモル比0.65〜0.80:0.2〜0.35であるテレフタル酸(TPA)とイソフタル酸(IPA)を酸成分(Diacid)に、混合比がモル比0.85〜0.95:0.05〜0.15である1,4−ブタンジオール(1,4−BD)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)をジオール成分(Diol)にして、エステル化及び重合段階を通じて製造され、
前記ポリテトラメチレングリコール(PTMG)の分子量が1500〜2000である)
【請求項10】
前記式1の値が2.6以上を満たす多形断面繊維を含むことを特徴とする、請求項9に記載の吸音材。
【請求項11】
前記多形断面繊維は、3棒扁平型、6葉形、8葉形及び波形からなった群から選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項9に記載の吸音材。
【請求項12】
前記多形断面繊維の長さは35ないし65mmであることを特徴とする、請求項9に記載の吸音材。
【請求項13】
前記多形断面繊維の繊度は1.0ないし7.0Deであることを特徴とする、請求項9に記載の吸音材。
【請求項14】
前記バインダー繊維は、前記低融点(LM)エラストマーを一成分として複合放射した複合繊維であることを特徴とする、請求項9記載の吸音材。
【請求項15】
前記低融点(LM)エラストマーは、ポリエステル系、ポリアミド系及び
ポリウレタン系からなった群から選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項9に記載の吸音材。
【請求項16】
前記吸音材は、多形断面繊維50ないし80重量%、及びバインダー繊維20ないし50重量%を含むことを特徴とする、請求項9に記載の吸音材。
【請求項17】
前記式1の値が3.0以上を満たす多形断面繊維を含むことを特徴とする、請求項9に記載の吸音材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音性能が優れた吸音材及びその製造方法に関するもので、より詳細には、自動車部品や車体の内外装材で附着され、外部からの騷音が車両内に流入されることを遮断し、モーター部品を使う電子製品などにも騷音遮断性能を向上させるために使用できる、吸音性能が優れた吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車に流入される騷音は、エンジンで発生した音が車体を通じて流入される騷音と、タイヤと路面との接触時に発生される騷音が車体を通じて流入される騷音に分けられる。このような騷音を改善する方法として、吸音性能を改善することと遮音性能を改善する二つの方法があるが、吸音とは、発生した音響エネルギーが素材の内部経路に沿って伝達されながら熱エネルギーに変換されて消滅することであり、遮音は発生した音響エネルギーが遮蔽物によって反射され、遮断されることである。
【0003】
このような音響の特性によって、通常車両のNVH(Noise、Vibration & Harshness)性能を向上させるために、高級車種では主に高中量、高厚度の吸音材を使用している。しかし、このような吸音材を使う場合、騷音は減少されるが、車両の重量を増加させるので、燃費を阻害する問題がある。
【0004】
また、従来吸音材の問題点を克服するために繊維の厚さを薄くして孔隙率を向上させ、これによって吸音性能は向上させながら繊維集合体の重量を低減させる方法が開発されている。しかし、これもまた所期のNVH性能を向上させるためには繊維集合体の面蜜度を向上しなければならない短所がある。
【0005】
また、不織布形態の繊維集合体を製造するためには、単繊維とバインダー繊維を適切な割合で混合して製造する。バインダー繊維は、普通、内層はレギュラーポリエステル、外層は低融点ポリエステルを複合放射した単繊維が使われている。
【0006】
しかし、このような従来の低融点ポリエステルバインダー繊維を使うと繊維集合体が堅くなるので、音波の伝達によって発生する、マトリックス構造に伝達される震動が充分に減殺できず、主に低周波領域の吸音率が低下される問題があった。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、前記のような問題点を解決するために案出されたもので、本発明の目的は、入射された音響エネルギーの粘性損失と消散経路を極大化することができる広い表面積と空気層を形成して吸音率及び透過損失を向上させ、少ない量の繊維を使用しても優秀な吸音性能を具現することができて軽量化の設計が可能な吸音材及びその製造方法を提供することである。
【0008】
ひいては、繊維の間の十分な結束力を維持できながらも成形性を向上し、反発弾性率が向上されて究極的にはマトリックス内部に伝達される音響エネルギーに対する震動減殺能力が優れた吸音材及びその製造方法を提供することにその目的がある。
【0009】
前述した課題を解決するために、本発明は、下記の式1を満たす多形断面繊維;及び多数の前記多形断面繊維を部分接合させるバインダー繊維;を含む繊維集合体を不織布形態に成形する吸音材の製造方法を提供する。
【数1】
(A:繊維断面積(μm
2)、P:繊維断面のまわりの長さ(μm))
【0010】
本発明の好ましい一実施例によると、前記式1の値が2.6以上を満たす多形断面繊維を含んで製造することができる。
【0011】
本発明の好ましい他の一実施例によると、前記式1の値が3.0以上を満たす多形断面繊維を含んで製造することができる。
【0012】
本発明の好ましい他の一実施例によると、前記多形断面繊維は、六角星状、3棒扁平型、6葉形、8葉形及び波形からなった群から選択されたいずれか一つである。
【0013】
本発明の好ましい他の一実施例によると、前記多形断面繊維の長さは35ないし65mmである。
【0014】
本発明の好ましい他の一実施例によると、前記バインダー繊維は弾性回復率が50ないし80%である低融点(LM)エラストマー(Elastomer)を含み、前記吸音材の反発弾性率は50ないし80%である。
【0015】
本発明の好ましい他の一実施例によると、前記バインダー繊維は前記低融点(LM)エラストマー(Elastomer)を一成分として複合放射した複合繊維である。
【0016】
本発明の好ましい他の一実施例によると、前記低融点(LM)エラストマー(Elastomer)は、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリスチレン系、ポリ塩化ビニル系及びポリウレタン系からなった群から選択されたいずれか一つ以上である。
【0017】
本発明の好ましい他の一実施例によると、前記低融点(LM)エラストマー(Elastomer)は、テレフタル酸ジメチル(Dimethyl Terephthalate:DMT)とイソフタル酸ジメチル(Dimethyl isophthalate:DMI)、または、テレフタル酸(Terephthalic Acid:TPA)とイソフタル酸(Isophthalic Acid:IPA)を酸成分(Diacid)に、 1,4-ブタンジオール(1,4-Butanediol: 1,4-BD)、ポリテトラメチレングリコール(Polytetramethyleneglycol:PTMG)をジオール成分(Diol)にしてエステル化及び重合段階を通じて製造することができる。
【0018】
本発明の好ましい他の一実施例によると、前記多形断面繊維50ないし80重量%、及びバインダー繊維20ないし50重量%を含むことができる。
【0019】
また、本発明は下記の式1を満たす多形断面繊維;及び多数の前記多形断面繊維を部分接合させるバインダー繊維;を含む吸音材を提供する。
【数2】
(A:繊維断面積(μm
2)、P:繊維断面のまわりの長さ(μm))
【0020】
本発明の好ましい一実施例によると、前記式1の値が2.6以上を満たす多形断面繊維を含むことができる。
【0021】
本発明の好ましい他の一実施例によると、前記多形断面繊維は、六角星状、3棒扁平型、6葉形、8葉形及び波形からなった群から選択されたいずれか一つである。
【0022】
本発明の好ましい他の一実施例によると、前記多形断面繊維の長さは35ないし65mmである。
【0023】
本発明の好ましい他の一実施例によると、前記多形断面繊維の繊度は1.0ないし7.0Deである。
【0024】
本発明の好ましい他の一実施例によると、前記バインダー繊維は、弾性回復率が50ないし80%である低融点(LM)エラストマー(Elastomer)を含み、前記吸音材の反発弾性率は50ないし80%である。
【0025】
本発明の好ましい他の一実施例によると、前記バインダー繊維は前記低融点(LM)エラストマー(Elastomer)を一成分として複合放射した複合繊維である。
【0026】
本発明の好ましい他の一実施例によると、前記低融点(LM)エラストマー(Elastomer)は、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリスチレン系、ポリ塩化ビニル系及びポリウレタン系からなった群から選択されたいずれか一つ以上である。
【0027】
本発明の好ましい他の一実施例によると、前記吸音材は多形断面繊維50ないし80重量%及びバインダー繊維20ないし50重量%を含むことができる。
【0028】
本発明の好ましい他の一実施例によると、前記式1の値が3.0以上を満たす多形断面繊維を含むことができる。
【0029】
以下、本発明で使用した用語について説明する。
【0030】
本発明で使った波形多形断面繊維とは、断面の形象が波状をしている繊維を意味し、具体的にその形象は
図5のようである。
【0031】
本発明の吸音性能が優れた吸音材は、入射された音響エネルギーの粘性損失を誘発できるように、広い表面積と空気層を形成して吸音率及び透過損失を向上することができる。また、少ない量の繊維を使って優秀な吸音性能を発現することができて軽量化設計が可能であり、反発弾性を有するバインダー繊維を用いて繊維の間の十分な結束力を維持することができると同時に、繊維構造体に伝達される音響エネルギーの粘性損失を極大化して吸音性能を向上することができる。
【0032】
よって、自動車、汽車、船舶、航空機などの輸送用全般にわたって使われるだけでなく、モーター部品を使う電子製品などにも騷音遮断性能を向上するために使うことができる、吸音性能が優れた吸音材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の好ましい一具現例による吸音材に含まれる六角星状の多形断面繊維である。
【
図2】本発明の好ましい一具現例による吸音材に含まれる3棒扁平型の多形断面繊維である。
【
図3】本発明の好ましい一具現例による吸音材に含まれる6葉形の多形断面繊維である。
【
図4】本発明の好ましい一具現例による吸音材に含まれる8葉形の多形断面繊維である。
【
図5】本発明の好ましい一具現例による吸音材に含まれる波形の多形断面繊維である。
【
図6】本発明の好ましい一具現例による吸音材に含まれる8葉形の多形断面繊維である。
【
図7】本発明の好ましい一具現例による吸音材に含まれる8葉形の多形断面繊維である。
【
図8】本発明の好ましい一具現例による8葉形の多形断面繊維を例えてL、Wを示した図面である。
【0034】
以下、本発明を添付の図面を参考にして、より詳細に説明する。
【0035】
前述したように、従来の繊維構造体吸音材は、孔隙率及び音波消散経路を増大させて吸音性能及び遮音性能を向上するために繊維集合体の面密度及び厚さを増加させるため、車両の重量が大きくなるしかなく、燃費を阻害する問題があった。また、従来の繊維構造体吸音材に使われる低融点ポリエステルバインダー繊維を使用すると、繊維集合体が堅くなるので音波の伝達によって発生する、マトリックス構造に伝達される震動が充分に減殺できず、低周波の吸音率が低下する問題があった。
【0036】
ここで、本発明では、下記式1を満たす多形断面繊維;及び多数の前記多形断面繊維を部分接合させるバインダー繊維;を含む吸音材を提供することで前述した問題の解決を講じた。
【数3】
(A:繊維断面積(μm
2)、P:繊維断面のまわりの長さ(μm))
【0037】
これを通じて、入射された音響エネルギーの粘性損失を誘発できるように、広い表面積と空気層を形成して吸音率及び透過損失を向上することができる。また、少ない量の繊維を使って優れた吸音性能を発現することができて軽量化設計が可能であり、反発弾性を有するバインダー繊維を使って繊維の間の十分な結束力を維持することができると同時に、繊維構造体に伝達される音響エネルギーの粘性損失を極大化させて吸音性能を向上することができる。したがって、自動車、汽車、船舶、航空機などの輸送用全般にわたって使われるだけでなく、モーター部品を使う電子製品などにも騷音遮断性能を向上するために使うことができる、吸音性能が優れた吸音材及びその製造方法を提供することができる。
【0038】
一般的に、音波は特定材料と摩擦すると、粘性損失が生じるようになり、これは音波の機械的エネルギーが熱エネルギーに変換され、結局騷音が減少する結果をもたらす。同じ重量の繊維集合体に入射される音波に対するエネルギー損失率を高めて騷音を減少させるためには、音波の粘性損失が発生する繊維の表面積が増加するほど有利である。
【数4】
(A:繊維断面積(μm
2)、P:繊維断面のまわりの長さ(μm))
【0039】
本発明で使われる多形断面繊維は、前記のように計算されるηの値が1.5以上を満たすもので、既存の繊維構造体の吸音材に使われる繊維に比べて広い表面積が確保され、吸音率及び透過損失を向上することができる。ηの値が1.5未満の場合、繊維表面積が小さいので、効果的に吸音性能を具現するためには、多量の繊維が必要であり、軽量化の設計が不可能な問題がある。ηの値が大きいほど、繊維表面積が広いことを意味するので、より好ましくは、本発明で使われる多形断面繊維は前記ηの値が2.6以上であり、さらに好ましくは3.0ないし7.0である。本発明で使われる多形断面繊維のηの値が 7.0を超過する場合、口琴製作費用の増加、冷却效率向上に関連する設備の入れ替え、固化速度の改善のための高分子改質、生産性低下などによって結果的に製造費用の上昇をもたらす問題が発生することがある。
【0040】
前記ηの値が1.5以上を満たす本発明で使われる多形断面繊維は、六角星状、3棒扁平型、6葉形、8葉形、または波形などの単独または混合形態であり得る。前記波形の場合、ηの値が1.5以上を満たすと波形の中で折られる地点の数、断面の長さと幅などの具体的形象は変わることができる。前記波状の中で折られる地点の数は、断面の長手方向へと方向が変わる地点を意味し、例えば、
図5の波形多形断面繊維は折られる地点の数が4個である。
【0041】
具体的に、
図1は本発明の好ましい一具現例による六角星状の多形断面繊維で、ηの値が1.51であり、
図2は本発明の好ましい一具現例による3棒扁平型の多形断面繊維で、ηの値は1.60である。また、
図3は本発明の好ましい一具現例による6葉形の多形断面繊維で、ηの値は1.93であり、
図4は本発明の好ましい一具現例による8葉形の多形断面繊維で、ηの値は2.50であり、
図5は本発明の好ましい一具現例による波形の多形断面繊維で、ηの値は2.55であり、
図6は本発明の好ましい一具現例による8葉形の多形断面繊維で、ηの値は2.8であり、
図7は本発明の好ましい一具現例による8葉形の多形断面繊維で、ηの値は3.2である。
【0042】
一般の円形断面繊維のηの値は1.0であって、表面積が充分に広くないため吸音率及び透過損失が顕著に落ちるし(比較例1参照)、六角星状、3棒扁平型、6葉形、8葉形または波形形態の多形断面繊維であっても、ηの値が1.5以上を満たさないと音響エネルギーの粘性損失を発生させられる表面積が十分ではないので、本発明の吸音材に使われる多形断面繊維として相応しくない(比較例2ないし5参照)。
【0043】
より好ましくは、本発明で使われる多形断面繊維はL/Wの値が2乃至3である。Lは繊維の縦方向に対する長さのLengthの略字で、Wは頂点と頂点をつなぐ横方向に対する長さのWidthの略字を示す。具体的に、
図8は8葉形多形断面繊維を例えて、L、Wの値を示したもので、8葉形多形断面繊維の断面の場合、長さの長い方向が縦方向とした時、その長さをL、長さが短い3個の模様で頂点の間の距離をWと示すことができる。
【0044】
また、本発明で使われる多形断面繊維は、より好ましくは頂点の数が6乃至8個でもありえる。ただし、前記L/Wまたは頂点の数に特に限定されず、ηの値が1.5以上を満たす多形断面繊維なら好ましい。
【0045】
前記多形断面繊維の長さは35ないし65mmであり、35mm未満の場合は、繊維間の間隙が広くなって繊維集合体への形成及び生産が難しく、過度な孔隙率によって吸音及び遮音性能が低下される問題があり得るし、65mmを超過する場合、繊維間の間隙が狭すぎるようになって孔隙率が低下され、吸音率を低下させることがある。さらに、前記多形断面繊維の繊度は1.0ないし7.0Deであり、繊度が小くなるほど吸音性能の向上には効果的である。多形断面繊維の繊度が1.0De未満の場合、目標とする断面の最適形象を制御することに問題があり得るし、7.0De(denier)を超過する場合、不織布の製造工程上に困難が生じ、繊維集合体に製造された時に吸音性能が低下される問題があり得る。
【0046】
本発明の吸音材に含まれる前記多形断面繊維の材質としては、好ましくはポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate、PET)が使われることができるが、これに特に限定されず、ポリプロピレン(Polypropylene、PP)、レーヨンなど繊維形態で放射されることができて、吸音材として使われることができるポリマーなら好ましく使われる。
【0047】
また、本発明の吸音材は、多数の前記多形断面繊維を部分接合させるバインダー繊維を含む。
【0048】
前記バインダー繊維は、繊維構造体の製造時、通常使われるバインダー繊維を使うことができ、繊維だけでなくパウダーの形で使われることもでき、より好ましくは低融点(LM)エラストマー(Elastomer)を含むことができる。エラストマー(Elastomer)とは、一般的にゴム類のように弾性が優れた高分子材料を言い、つまり、外力を加えて引っぱれば伸びるし、外力を除くと本来の長さに戻る性質を有する高分子を意味する。本発明で使われる好ましい低融点(LM)エラストマー(Elastomer)は、50ないし80%の弾性回復率を示す。弾性回復率が50%未満の場合、繊維集合体が堅くなり、柔軟性が不足して吸音性能が低下されることがあり、80%を超過する場合は、重合物自体の製造費用の上昇だけでなく繊維集合体製造時の加工性が落ちる問題があり得る。
【0049】
従来は、バインダー繊維が溶融され、主繊維を結束させると、繊維集合体が堅くなるので、音波の伝達によって発生する、マトリックス構造に伝達される震動が充分に減殺できず、吸音率が低下される問題があったが、本発明は繊維集合体のバインダー繊維を弾性回復率が50ないし80%である低融点(LM)エラストマー(Elastomer)を含むようにして繊維構造体の反発弾性率(ASTMD3574)を50ないし80%まで増加させ、究極的にはマトリックス内部に伝達される震動減殺能力が向上して吸音率及び透過損失を向上することができる。
【0050】
前記低融点(LM)エラストマー(Elastomer)は、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリスチレン系、ポリ塩化ビニル系、またはポリウレタン系などの単独または混合形態でありえる。
【0051】
また、さらに好ましくは、前記低融点(LM)エラストマー(Elastomer)は、テレフタル酸ジメチル(Dimethyl Terephthalate:DMT)とイソフタル酸ジメチル(Dimethyl isophthalate:DMI)、またはテレフタル酸(Terephthalic Acid:TPA)とイソフタル酸(Isophthalic Acid:IPA)を酸成分(Diacid)に、1,4-ブタンジオール(1,4-Butanediol:1,4-BD)、ポリテトラメチレングリコール(Polytetramethyleneglycol:PTMG)をジオール成分(Diol)にして、エステル化及び重合段階を通じて製造することができる。
【0052】
前記酸成分(Diacid)は、テレフタル酸ジメチル(Dimethyl Terephthalate:DMT)とイソフタル酸ジメチル(Dimethyl isophthalate:DMI)、またはテレフタル酸(Terephthalic Acid:TPA)とイソフタル酸(Isophthalic Acid:IPA)を使うことで、テレフタル酸ジメチル(DMT)とテレフタル酸(TPA)はジオール成分と反応して結晶領域を形成し、イソフタル酸ジメチル(DMI)とイソフタル酸(IPA)はジオール成分と反応して非結晶領域を形成して低融点機能と弾性力を付与する。
【0053】
前記テレフタル酸ジメチル(DMT)とイソフタル酸ジメチル(DMI)の混合比は、モル比0.65〜0.80:0.2〜0.35で製造されることが好ましく、テレフタル酸(TPA)とイソフタル酸(IPA)の混合比もモル比0.65〜0.80:0.2〜0.35で製造されることが好ましい。前記イソフタル酸ジメチル(DMI)とイソフタル酸(IPA)のモル比が前記範囲より少なく使われると弾性回復率が低下されることがあり、低融点機能が表れないこともあり、イソフタル酸ジメチル(DMI)とイソフタル酸(IPA)のモル比が前記範囲より多く使われると物性が低下されることがある。
【0054】
前記ジオール成分(Diol)は、1,4-ブタンジオール(1,4-Butanediol:1,4-BD)、ポリテトラメチレングリコール(Polytetramethyleneglycol:PTMG)を使うことで、1,4-ブタンジオールは酸成分と反応して結晶領域を形成し、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)は酸成分と反応して非結晶領域を形成し、低融点機能と弾性力を付与する。
【0055】
前記1,4-ブタンジオール(1,4-BD)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)の混合比は、モル比0.85〜0.95:0.05〜0.15で製造されることが好ましい。前記ポリテトラメチレングリコール(PTMG)のモル比が前記範囲より少なく使われると弾性回復率が低下されることがあって、低融点機能が表れないこともあるし、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)のモル比が前記範囲より多く使われると、物性が低下されることがある。1,4-ブタンジオール(1,4-BD)は前記範囲内でエチレングリコール(EG)と混合して使うことができる。
【0056】
また、前記ポリテトラメチレングリコール(PTMG)の分子量は、1500〜2000であることを使うことが好ましい。前記ポリテトラメチレングリコール(PTMG)が前記分子量の範囲を超えると、製造される低融点(LM)エラストマー(Elastomer)の弾性力及び物性が使用するに適していないこともある。
【0057】
前記酸成分とジオール成分は、モル比0.9〜1.1:0.9〜1.1で混合して重合されることが好ましい。前記酸成分とジオール成分の中でいずれか一つの成分があまりにも多く混合されると、重合に使われず捨てられることになるので、前記酸成分とジオール成分は似たような量で混合されることが好ましい。
【0058】
前記のように、テレフタル酸ジメチル(DMT)、イソフタル酸ジメチル(DMI)を酸成分(Diacid)に、1,4-ブタンジオール(1,4-BD)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)をジオール成分(Diol)に製造する低融点(LM)エラストマー(Elastomer)は、融点150〜180℃、弾性回復率50〜80%で製造される。
【0059】
また、本発明の吸音材のバインダー繊維は、前記低融点(LM)エラストマー(Elastomer)を一成分にして複合放射した複合繊維である。より好ましくは、シース-コア(sheath-core)型、またはサイドバイサイド(side by side)型の複合繊維であることができ、シース-コア(sheAth-core)型複合繊維を形成する場合、前記低融点(LM)エラストマー(Elastomer)をシース成分に、一般ポリエステルをコア成分にすることができる。一般ポリエステルは、製造単価を下げて、繊維を支持する機能をし、低融点(LM)エラストマー(Elastomer)は弾性力と低融点機能が発現されるようにする。
【0060】
前記低融点(LM)エラストマー(Elastomer)と一般ポリエステルの重量比は、40:60〜60:40で製造されることが好ましい。前記低融点(LM)エラストマー(Elastomer)が重量比40未満に含まれると、弾性力と低融点機能が低下されることがあり、重量比60を超過すると、製造単価が高くなる問題がある。
【0061】
前記吸音材は、多形断面繊維50ないし80重量%、及びバインダー繊維20ないし50重量%を含むことができる。多形断面繊維の含量が50重量%未満の場合には、繊維の表面積が縮小されて最適の吸音及び遮音性能を具現することができないことに対して、多形断面繊維の含量が80重量%を超過すると、相対的にバインダー繊維の含量が20%未満となって、繊維の間の十分な結束力を維持することができなくなって、これにより吸音材を任意の形に成形しにくく、マトリックス構造が強健ではないので、音波の伝達によって発生するマトリックス構造に伝達される震動が充分に減殺されず、低周波の吸音率が低下されることがある。バインダー繊維の含量が20ないし50重量%に増加することによって、反発弾性率(ASTMD3574)は50ないし80%まで増加することになる。
【0062】
このように、吸音性能が優れた多形断面繊維構造体は、下記の式1を満たす多形断面繊維;及び多数の前記多形断面繊維を部分接合させるバインダー繊維;を含む繊維集合体を不織布形態に成形する吸音材の製造方法を通じて製造する。
【数5】
(A:繊維断面積 (μm
2)、P:繊維断面のまわりの長さ(μm))
【0063】
吸音材を製造するためには、前記多形断面繊維とバインダー繊維が含まれた繊維集合体を、ニードルパンチング工程または熱接着工程など、通常の繊維構造体吸音材の製造工程を通じて特定の面蜜度を有する不織布の形態に成形して製造することができる。本発明の吸音材の製造方法に同一に適用される前述の多形断面繊維及びバインダー繊維に対する詳細な説明は、以下省略する。
【0064】
以下、実施例を通じて、本発明をさらに具体的に説明するが、下記実施例によって本発明の範囲が制限されることではなく、これは本発明の理解を助けるためのことに解釈されるべきであろう。
【0065】
実施例1.
ポリエステル素材の6.5De、61mm、強度5.8g/D、伸度40%、クリンプ数 14.2個/inch、8葉形(
図4、η=2.5)多形断面繊維とバインダー繊維であるポリエステル系低融点(LM)エラストマーを含むシース-コア型複合繊維を8:2の重量比になるように混合した後、重量を一定に調節してニードルパンチング工程を経て物理的に交絡した後、通常の熱接着工程を経て厚さ20mm、面密度1600g/m
2の不織布形態の繊維集合体を製造した。製造された吸音材の反発弾性率は55%を示した。
【0066】
前記バインダー繊維のポリエステル系低融点(LM)エラストマーを含むシース-コア型複合繊維は、ポリエステル系低融点(LM)エラストマーをシース成分とし、ポリエステル系低融点(LM)エラストマーは、酸成分としてテレフタル酸75モル%とイソフタル酸25モル%を混合した混合物を使用し、ジオール成分としてポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール8.0モル%、1,4-ブタンジオール92.0モル%を混合した混合物を使って、前記酸成分と前記ジオール成分をモル比1:1で混合し、重合させて製造した。このように製造された低融点(LM)エラストマーは、50℃の融点と1.4の固有粘度及び80%の弾性回復率を有する。コア成分としては、260℃の融点と0.65の固有粘度を有するポリエチレンテレフタレート(PET)を使い、前記ポリエステル系低融点(LM)エラストマーと一般PETを複合放射できる複合放射口琴を利用して放射温度275℃、巻取速度1、000m/minで放射、及び77℃で3.3倍の延伸処理を行い、140℃で最終熱処理して繊度6D、強度3.0g/D、伸度80%、クリンプ数12個/inch、繊維長64mmの複合繊維を製造した。
【0067】
実施例2.
厚さ20mm、面密度1200g/m
2の不織布形態の繊維構造体を製造したことを除いて、実施例1と同様に実施して製造した。
【0068】
実施例3.
六角星状(
図1、η=1.51)の多形断面繊維を使用して吸音材を製造したことを除いて、実施例1と同様に実施して製造した。
【0069】
実施例4.
3棒扁平型(
図2、η=1.60)の多形断面繊維を使用して吸音材を製造したことを除いて、実施例1と同様に実施して製造した。
【0070】
実施例5.
6葉形(
図3、η=1.93)の多形断面繊維を使用して吸音材を製造したことを除いて、実施例1と同様に実施して製造した。
【0071】
実施例6.
波形(
図5、η=2.55)の多形断面繊維を使用して吸音材を製造したことを除いて、実施例1と等しく実施して製造した。
【0072】
実施例7.
8葉形(
図6、η=2.8)の多形断面繊維を使用して吸音材を製造したことを除いて、実施例1と同様に実施して製造した。
【0073】
実施例8.
8葉形(
図7、η=3.2)の多形断面繊維を使用して吸音材を製造したことを除いて、実施例1と同様に実施して製造した。
【0074】
実施例9.
バインダー繊維として低融点PET繊維を使用したことを除いて、実施例1と同様に実施して製造した。製造された吸音材の反発弾性率は30%を示した。
【0075】
比較例1.
円形(η=1.0)の多形断面繊維を使用して吸音材を製造したことを除いて、実施例1と同様に実施して製造した。
【0076】
比較例2.
五角星状(η=1.30)の多形断面繊維を使用して吸音材を製造したことを除いて、実施例1と同様に実施して製造した。
【0077】
比較例3.
波形(η=1.42)の多形断面繊維を使用して吸音材を製造したことを除いて、実施例1と同様に実施して製造した。
【0078】
比較例4.
Y型(η=1.26)の多形断面繊維を使用して吸音材を製造したことを除いて、実施例1と同様に実施して製造した。
【0079】
比較例5.
六角星状(η=1.41)の多形断面繊維を使用して吸音材を製造したことを除いて、実施例1と同様に実施して製造した。
【0080】
<実験例>
前記実施例1ないし9、及び比較例1ないし5によって製造された吸音材の吸音及び遮音性能を評価するために、下記の測定方法に従って実験を行い、その結果を表1ないし2に示した。
【0081】
1. 吸音率
吸音率を測定するためにISO R 354、Alpha Cabin法に適用できる試片としてそれぞれ3枚ずつ製造して吸音係数を測定し、測定された吸音係数の平均値を表1に示した。
【0082】
2. 透過損失
遮音効果を測定するために、透過損失係数の評価装備であるAPAMAT-IIに適用できる試片としてそれぞれ3枚ずつ製造して挿入損失を測定し、測定された挿入損失の平均値を表2に示した。
【0083】
3. 弾性回復率
弾性回復率は、インストロン(Instron)を使用して、厚さ2mm、長さ10cmのダンベル(Dumbbell)状の試料を200%/分の速度で200%伸長した後、5秒待機し、同一速度で回復した後の伸長された長さを測定し、下記式で求めた。
【数6】
【0084】
4. 反発弾性率(Ball Rebound)
一定の高さから試験片に鉄の玉を落とし、反発されて跳ね上がる高さを測定した (JIS K-6301、単位:%)。試験片は、一辺の長さが50mm以上、厚さ50mm以上の正方形に製作し、重さ16g、直径16mmの鋼鉄のボールを500mmの高さから試験片に落下させて最大に反発する高さを測定した後、3つの各々の試験片で1分以内に連続して最小3回以上の反発値を測定し、中央値を反発弾性率(%)とした。
【表1】
【表2】
【0085】
前記表1ないし2から分かるように、実施例1ないし9及び比較例1ないし5の吸音、遮音性能の測定結果を比べることで、繊維の表面積が広くなるほど繊維集合体の吸音及び遮音性能が向上することに示された。
【0086】
具体的に、実施例2と比較例1の性能測定結果を比べることで、本発明の多形多面繊維を用いた吸音材は繊維集合体の面蜜度が低くなるにもかかわらず、一般的に使用される円形断面繊維を用いた繊維吸音材より吸音及び遮音性能が優秀であることが分かる。よって、少ない量の繊維を使って軽量化の設計が可能である。
【0087】
値が1.5以上を満たす実施例1及び2ないし9は、値が1.5未満の比較例1ないし5に比べて吸音率及び透過損失が顕著に優れていることが分かる。六角星状の多形断面繊維を利用したが、値が1.5未満の比較例5も表面積が広くないので、吸音率及び透過損失の面で効果が落ちることを確認できる。
【0088】
また、バインダー繊維として低融点PET繊維を使用した実施例9と、低融点エラストマーを使用した実施例1ないし8の性能測定結果を比べたところ、低融点エラストマーをバインダー繊維として使うことで、反発弾性率55%の柔軟な構造を持つようになり、マトリックス構造に伝達される震動減殺能力の向上によって吸音性能が向上されたことが分かった。