特許第6587939号(P6587939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6587939-真空乾燥装置及び真空乾燥方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587939
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】真空乾燥装置及び真空乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 5/04 20060101AFI20191001BHJP
   A61L 2/07 20060101ALI20191001BHJP
   F26B 9/06 20060101ALN20191001BHJP
【FI】
   F26B5/04
   A61L2/07
   !F26B9/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-3157(P2016-3157)
(22)【出願日】2016年1月12日
(65)【公開番号】特開2017-125625(P2017-125625A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】原田 正義
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−267186(JP,A)
【文献】 特開2001−120645(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0075030(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 5/04
A61L 2/07
F26B 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に対象物が収容される本体、
対象物が収容された本体の内部空間に蒸気を供給する蒸気供給制御部、
蒸気が供給された後、本体の内部空間に収容された対象物を所定の乾燥時間にわたって、真空乾燥させる真空乾燥制御部、
を備えた真空乾燥装置において、
本体の内部空間に供給された蒸気の乾き度を測定する乾き度測定部を備えており、
真空乾燥制御部は、乾き度測定部が測定した乾き度に基づいて乾燥時間を制御し、
乾き度測定部は、真空乾燥の直前に本体の内部空間に供給された蒸気を対象とし、その乾き度を測定する、
ことを特徴とする真空乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に係る真空乾燥装置において、
真空乾燥制御部は、本体の内部空間を真空にする真空状態と、対象物を加熱する加熱状態とを、複数回繰り返すことによって対象物を真空乾燥させ、真空状態と加熱状態との繰り返し回数を選択することによって乾燥時間を制御する、
ことを特徴とする真空乾燥装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係る真空乾燥装置において、
乾き度測定部は、所定の時間内において変化する蒸気の乾き度を測定し、その平均値を乾き度平均値とし、
真空乾燥制御部は、当該乾き度平均値に基づいて乾燥時間を制御する、
ことを特徴とする真空乾燥装置。
【請求項4】
対象物が収容された本体の内部空間に蒸気を供給し、
蒸気が供給された後、本体の内部空間に収容された対象物を所定の乾燥時間にわたって真空乾燥させる、
ことを備えた真空乾燥方法において、
本体の内部空間に供給された蒸気の乾き度を測定し、
測定した乾き度に基づいて乾燥時間を制御し、
真空乾燥の直前に本体の内部空間に供給された蒸気を対象とし、その乾き度を測定する、
ことを特徴とする真空乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る真空乾燥装置及び真空乾燥方法は、蒸気を供給した後に、対象物を真空乾燥させる真空乾燥装置及び真空乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空乾燥は減圧を行うことによって対象物の水分が蒸発しやすい状況を作り出す乾燥手法であり、大量の対象物や複雑な形状の対象物等の乾燥に適している。
【0003】
真空乾燥の手法を用いる技術として、後記の特許文献に開示されている蒸気滅菌方法に関する装置がある。この装置は、例えば病院の手術用品を滅菌室内に収容し、高温の蒸気を供給して滅菌するものであり、この滅菌工程の後、引き続き滅菌室内で手術用品等を乾燥させるための乾燥工程を行うが、この際に真空乾燥の技術を用いている。乾燥工程では、滅菌室内を減圧して真空状態として手術用品等を乾燥させ、続いて滅菌室内に清浄の熱風を導入して手術用品等を昇温させて乾燥しやすい状態とした後、再度、真空状態とする。この真空状態と熱風の導入を繰り返し行う。
【0004】
そして、この特許文献に開示されている蒸気滅菌方法に関する装置は、滅菌室内の雰囲気温度と導入する熱風の温度との温度差に基づいて手術用品等の乾燥状態を推定し、これに基づいて乾燥の終了時期、すなわち乾燥工程の時間を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開平11−267186
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献に開示されている蒸気滅菌方法においては、滅菌室内の雰囲気温度と導入する熱風の温度との温度差に基づいて手術用品等の乾燥状態を推定し、これに基づいて乾燥工程の時間を制御している。
【0007】
しかし、この乾燥工程に先立って、対象物である手術用品を滅菌するために蒸気を供給する滅菌工程が行われている。このため、対象物の表面には供給された蒸気が凝集して水分が付着している。そして、乾燥はこの水分を除去することに他ならないのであるから、本来、付着した水分量が多い場合には乾燥時間を長く設定する必要があり、逆に付着した水分量が少ない場合には乾燥時間は短く設定すべきである。すなわち、付着した水分量に応じてよって適正な乾燥に要する時間は異なるのであり、上述の特許文献に開示されているように、滅菌室内の雰囲気温度と導入する熱風の温度との温度差に基づいて乾燥工程の時間を制御しても、効率的で十分な乾燥を得ることができないという問題がある。
【0008】
また、対象物の表面に付着する水分量そのものは、蒸気を供給する工程の状況に左右され、その都度異なるため定型的な予測が困難であり、また対象物の表面に付着した水分量を毎回、直接測定しようとすると設備や乾燥作業の負担が大きくなる。
【0009】
そこで本願に係る真空乾燥装置及び真空乾燥方法は、上記の問題を解決することを課題とし、対象物を乾燥させるための適正な乾燥時間を容易かつ確実に把握し、効率的で十分な真空乾燥を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に係る真空乾燥装置は、
内部空間に対象物が収容される本体、
対象物が収容された本体の内部空間に蒸気を供給する蒸気供給制御部、
蒸気が供給された後、本体の内部空間に収容された対象物を所定の乾燥時間にわたって、真空乾燥させる真空乾燥制御部、
を備えた真空乾燥装置において、
本体の内部空間に供給された蒸気の乾き度を測定する乾き度測定部を備えており、
真空乾燥制御部は、乾き度測定部が測定した乾き度に基づいて乾燥時間を制御する、
ことを特徴としている。
【0011】
また、本願に係る真空乾燥方法は、
対象物が収容された本体の内部空間に蒸気を供給し、
蒸気が供給された後、本体の内部空間に収容された対象物を所定の乾燥時間にわたって真空乾燥させる、
ことを備えた真空乾燥方法において、
本体の内部空間に供給された蒸気の乾き度を測定し、
測定した乾き度に基づいて乾燥時間を制御する、
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本願に係る真空乾燥装置及び真空乾燥方法は、本体の内部空間に供給された蒸気の乾き度を測定し、この乾き度に基づいて乾燥時間を決定する。このため、対象物を乾燥させるための適正な乾燥時間を容易かつ確実に把握し、効率的で十分な真空乾燥を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本願に係る真空乾燥装置及び真空乾燥方法の一実施形態である蒸気滅菌装置の全体構成の概要を示す図である。
図2図1に示す蒸気滅菌装置が行う動作の各工程を示す図であり、内釜21の内圧の変化を表した図である。
図3図1に示す蒸気滅菌装置における滅菌工程の際、内釜21に供給した蒸気の乾き度と適正な乾燥時間との関係を示す図である。
図4】本願に係る真空乾燥装置及び真空乾燥方法の第3の実施形態を説明するための図であり、蒸気滅菌装置における滅菌工程の際に内釜21に供給した蒸気の乾き度の変動とその平均値Kaを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願に係る真空乾燥装置及び真空乾燥方法を適用した装置の一実施形態を説明する。本実施形態においては、手術用具等を滅菌するための蒸気滅菌装置に、本願に係る真空乾燥装置及び真空乾燥方法を適用している。
【0015】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る真空乾燥装置及び真空乾燥方法の下記の構成要素に対応している。
オートクレーブ2…本体
内釜21の内部…内部空間
手術用具等…対象物
電磁弁51、ストレーナ69及び減圧弁59を含む蒸気を供給するためのシステム…蒸気供給制御部
電磁弁55、56及び真空ポンプ4を含む真空乾燥のためのシステム…真空乾燥制御部
乾き度計6…乾き度測定部
平均値Ka…乾き度平均値
図2に示す乾燥工程に要する時間…乾燥時間
【0016】
[第1の実施形態]
(装置の全体構成の説明)
図1に、本願に係る真空乾燥装置及び真空乾燥方法の第1の実施形態である蒸気滅菌装置の全体構成の概要を示す。耐圧性機器であるオートクレーブ2は内釜21と外釜22の二重構造を備えており、内釜21と外釜22との間にジャケット部23が形成されている。内釜21の内部空間には、カート等に並べられた滅菌処理の対象物となる手術用具等が収容され(図示せず)、その後オートクレーブ2は密閉される。
【0017】
オートクレーブ2のジャケット部23には、電磁弁51及び固形成分を除去するためのストレーナ69を介し、減圧弁59で減圧された高温・高圧の蒸気が供給される。これによって、内釜21が加熱される。なお、オートクレーブ2の損壊を防止するために安全弁79が設けられている。
【0018】
ジャケット部23に供給された蒸気は、電磁弁52、53を介して内釜21の内部にも供給される。また、内釜21の内部には、フィルター61、ヒーター65を通過した清浄な熱風が電磁弁54を介して送り込まれるようになっている。なお、電磁弁52、53が開いて蒸気が供給されているときは、電磁弁54は閉じて熱風の供給は遮断されている。
【0019】
内釜21及びジャケット部23には供給された蒸気が凝集してドレンが発生するが、このドレンはドレントラップ71、72の作動によって外部に排出される。また、内釜21内の大気圧を超える高圧の蒸気・気体は電磁弁55を介して外部に排出され、大気圧以下になった蒸気・気体は電磁弁56を介して真空ポンプ4によって外部に排出される。
【0020】
本実施形態においては、オートクレーブ2に乾き度計6が設けられている。この乾き度計6は、内釜21内の蒸気の乾き度を計測する。蒸気の乾き度(又は湿り度)とは、蒸気中に占める気相部分(又は液相部分)の重量割合である。
【0021】
(真空乾燥の各工程の説明)
次に、図1に示した蒸気滅菌装置の動作を説明する。この装置の動作は、内釜21の内圧の変化を表した図2に示すように、(1)予熱工程、(2)滅菌工程、(3)排気行程、(4)乾燥工程から構成される。以下に、各工程の概要を説明する。
【0022】
(1)予熱工程
まず、手術用具等の滅菌に先立つ準備的な工程として、予熱工程においてオートクレーブ2の内釜21に収容された手術用具等を加熱する。この工程の目的は、仮に手術用具等を加熱しない状態で滅菌工程に入り高温・高圧の蒸気を供給した場合、その温度差によって手術用具等の表面で蒸気が凝集しドレンが発生して水分が付着してしまうため、これを回避することである。
【0023】
具体的な動作としては、まず電磁弁51を開いてジャケット部23に高温・高圧の蒸気を供給して内釜21を加熱した後、その内部に手術用具等を収容してオートクレーブ2を密閉する。この状態で真空ポンプ4を作動して内釜21内を真空状態とし、続いて電磁弁52、53を開いて内釜21内部に蒸気を供給して手術用具等を加熱する。そして、再度真空ポンプ4を作動して内釜21内を真空状態した後、内釜21内部に蒸気を供給し、この真空状態と蒸気による加熱状態とを複数回繰り返して、手術用具等を細部に至るまで十分に加熱する。
【0024】
(2)滅菌工程及び(3)排気工程
予熱工程が終了した後、滅菌工程に進み手術用具等の滅菌を行う。滅菌工程においては、電磁弁52、53を開いて内釜21内部に高温・高圧の蒸気を供給し、この状態を所定時間維持することによって手術用具等に付着した細菌類等の微生物を殺滅する。滅菌工程が終了した後、電磁弁55を開いて内釜21内の蒸気を外部に排気する。
【0025】
(4)乾燥工程
排気工程の後、続いて乾燥工程に進む。上述の(2)滅菌工程において手術用具等には蒸気が供給されているため、(1)準備工程において手術用具等が十分加熱されていたとしても、滅菌工程を経た手術用具等の表面には少量の水分が付着してしまう。仮に、この水分が付着したままで手術用具等をオートクレーブ2から取り出した場合、空気中の細菌類等の微生物が水分に付着し増殖することによって滅菌処理が無駄になるおそれがある。このため、滅菌工程終了後、引き続きこの乾燥工程に入り、手術用具等を十分に乾燥させる。
【0026】
具体的な動作としては、真空ポンプ4を作動して内釜21内を真空状態とし、手術用具等の表面に付着した水分を蒸発させて真空乾燥を行う。ここで、水分が蒸発する際、その蒸発潜熱によって手術用具等の表面温度が低下するため、乾燥しにくい状態が生じてしまう。このため、内釜21内を真空状態とした後、電磁弁54を開き、フィルター61、ヒーター65を通過した清浄な熱風を内釜21の内部に送り込み、手術用具等の表面を昇温して、乾燥しやすい状態を作り出す。その後、再び真空ポンプ4を作動して真空乾燥を行い、さらに熱風を内釜21に送り込んで昇温する。この真空状態と熱風による昇温状態を複数回繰り返し、手術用具等を乾燥させる。
【0027】
ところで、この乾燥工程の時間が不適正に短い場合、手術用具等の乾燥不良を生じてしまう。逆に、乾燥工程の時間が長すぎる場合、乾燥不良は生じないものの、必要以上の装置の作動は非効率的であり望ましくない。ここで、乾燥は水分を除去することに他ならないのであるから、適正な乾燥時間は対象物である手術用具等に付着した水分量によって異なる。そして、手術用具等に付着する水分量は、供給される蒸気の乾き度に対応しており、乾き度が高い場合は付着する水分量は少なく、乾き度が低い場合は付着する水分量は多くなる。この蒸気の乾き度は、蒸気発生システム(図示せず)の動作状況や周辺大気の湿度等の影響を受けるため、蒸気滅菌装置を作動させる度に変動することがあり一定ではない。
【0028】
このため、本実施形態では、乾燥工程の直前に蒸気が供給された滅菌工程における蒸気を対象とし、その乾き度を乾き度計6が計測して、この乾き度に応じて乾燥工程の時間を制御している。図3は、内釜21の蒸気の乾き度と適正な乾燥時間との関係を示す図であり、このデータは本実施形態における蒸気滅菌装置内のメモリ(図示せず)に予め記憶されている。なお、本実施形態では供給される蒸気の乾き度は、蒸気の供給開始から停止までの間については一定となるように制御されている。
【0029】
例えば、上述の滅菌工程において蒸気が供給された際、滅菌工程における所定のタイミングで乾き度計6は蒸気の乾き度K1を測定する。そして、この乾き度K1に対応する乾燥時間T1を求め、乾燥時間T1が経過した時点で直ちに乾燥工程を終了する。なお、乾燥時間T1が経過した時点で直ちに乾燥工程を終了するのではなく、乾燥時間T1の経過時点が属する真空状態の制御又は昇温状態の制御が終わるのを待って乾燥工程を終了させてもよい。
【0030】
以上のように、本実施形態においては、乾燥工程の直前に、蒸気が供給された滅菌工程における蒸気を対象としてその乾き度を測定している。このため、時間の経過や他の工程の介在による影響を最大限に排除することが可能であり、より正確に乾燥時間を把握し、効率的で十分な真空乾燥を行うことができる。
【0031】
[第2の実施形態]
次に、本願に係る蒸気滅菌装置の真空乾燥装置及び真空乾燥方法の第2の実施形態である蒸気滅菌装置を説明する。上述の第1の実施形態では、図3に示すように乾き度に応じて乾燥時間T1を求めて乾燥工程を終了したが、本実施形態においては乾燥工程における真空状態と熱風による昇温状態との回繰り返し回数を選択することによって乾燥時間を制御する。
【0032】
すなわち、滅菌工程で供給された蒸気の乾き度と、乾燥工程における真空状態と熱風による昇温状態との回繰り返し回数との対応関係を表すデータが蒸気滅菌装置内のメモリ(図示せず)に予め記憶されており、例えば乾き度計6が蒸気の乾き度K1を計測した場合、これに対応する回数として「3回」が選択され、真空状態と熱風による昇温状態とを3回繰り返した時点で乾燥工程を終了する。なお、蒸気滅菌装置の構成やその他の動作は上述の第1の実施形態の場合と同様である。
【0033】
[第3の実施形態]
続いて、本願に係る蒸気滅菌装置の真空乾燥装置及び真空乾燥方法の第3の実施形態である蒸気滅菌装置を説明する。上述の第1の実施形態及び第2の実施形態においては、供給される蒸気の乾き度は、蒸気の供給開始から停止までの間については一定となるように制御されていることを前提とした。しかし、この場合、蒸気の乾き度を一定に保持するための制御システムが必要であり、装置のコストが高くなる。
【0034】
このため、本実施形態では、蒸気の供給開始から停止までの間の乾き度を一定に保持するための制御は行わない。また、乾き度計6は滅菌工程における蒸気の供給開始から停止までの間、継続して蒸気の乾き度を計測する。図4は本実施形態における滅菌工程の際の、内釜21に供給される蒸気の乾き度の変動を示している。蒸気の供給開始から停止までの間の乾き度を一定に保持するための制御を行わない結果、図4に示すように、滅菌工程の際に乾き度計6が計測する乾き度は不規則に変動する。
【0035】
本実施形態においては、図4の乾き度の変動曲線から、測定値の算術平均を平均値Kaとして求める。そして、この平均値Kaを図3に示した乾き度K1として乾燥時間T1を求め、第1の実施形態において示したように乾燥時間T1が経過した時点で直ちに乾燥工程を終了する。また、乾燥時間T1が経過した時点で直ちに乾燥工程を終了するのではなく、乾燥時間T1の経過時点が属する真空状態の制御又は昇温状態の制御が終わるのを待って乾燥工程を終了させてもよい。さらに、第2の実施形態において示したように、真空状態と熱風による昇温状態との回繰り返し回数を選択することによって乾燥時間を制御することもできる。なお、蒸気滅菌装置の構成やその他の動作は上述の第1の実施形態の場合と同様である。
【0036】
本実施形態において示したように、供給される蒸気の乾き度が一定ではなく変動する場合、本願の各実施形態で採用しているような、乾燥工程の直前に、蒸気が供給された滅菌工程における蒸気を対象としてその乾き度を測定し、乾燥時間を制御する技術は特に有効である。すなわち、供給される蒸気の乾き度が一定ではなく変動する状況下において、仮に蒸気の乾き度を測定した後、乾燥工程までの間に、さらに蒸気を供給する他の工程が介在した場合、測定した乾き度に基づいて乾燥時間を制御したとしても、効率的で十分な真空乾燥を実現することは難しい。蒸気の乾き度が一定ではなく変動する上、さらに介在した他の工程における蒸気の影響をも受け、本来必要とされる適正な乾燥時間そのものが変化するからである。
【0037】
以上のように、乾燥工程の直前に、蒸気が供給された滅菌工程における蒸気を対象としてその変動する乾き度を測定し、その平均値Kaを図3に示した乾き度K1として乾燥時間T1を求めて乾燥工程の時間を制御する本実施形態の技術を用いれば、対象物を乾燥させるための適正な乾燥時間をより容易かつ確実に把握し、効率的で十分な真空乾燥を行うことができる。
【0038】
[その他の実施形態等]
上述の各実施形態では、本願に係る真空乾燥装置及び真空乾燥方法を蒸気滅菌装置に適用した例を示したが、これに限定されるものではなく、真空乾燥機能を有しており、乾燥工程先立って(又は同時に)蒸気を供給する工程を備えているものであれば本願に係る真空乾燥装置及び真空乾燥方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
2:オートクレーブ
4:真空ポンプ
6:乾き度計
21:内釜
51,55、56:電磁弁
59:減圧弁
69:ストレーナ
Ka:平均値
図1
図2
図3
図4