(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。本実施形態の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである(本実施形態ではφ300mm)。熱処理装置1に搬入される前の半導体ウェハーWには不純物が注入されており、熱処理装置1による加熱処理によって注入された不純物の活性化処理が実行される。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0018】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。ハロゲン加熱部4とチャンバー6との間にはルーバー21および遮光部材25が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0019】
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0020】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0021】
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。
【0022】
チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。また、反射リング68,69の内周面は電解ニッケルメッキによって鏡面とされている。
【0023】
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0024】
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガス(本実施形態では窒素ガス(N
2))を供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は窒素ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、窒素ガス供給源85から緩衝空間82に窒素ガスが送給される。緩衝空間82に流入した窒素ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。なお、処理ガスは窒素ガスに限定されるものではなく、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)などの不活性ガス、または、酸素(O
2)、水素(H
2)、塩素(Cl
2)、塩化水素(HCl)、オゾン(O
3)、アンモニア(NH
3)などの反応性ガスであっても良い。
【0025】
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、窒素ガス供給源85および排気部190は、熱処理装置1に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置1が設置される工場のユーティリティであっても良い。
【0026】
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してチャンバー6内の気体が排気される。
【0027】
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0028】
基台リング71は円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(
図1参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
【0029】
サセプタ74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。
図3は、サセプタ74の平面図である。また、
図4は、サセプタ74の断面図である。サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の基板支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
【0030】
保持プレート75の上面周縁部にガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。例えば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしても良い。
【0031】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm〜φ280mm(本実施形態ではφ280mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
【0032】
図2に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0033】
チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0034】
また、半導体ウェハーWは複数の基板支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。基板支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0035】
また、
図2および
図3に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、放射温度計120(
図1参照)がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、放射温度計120が開口部78を介してサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射された光を受光し、別置のディテクタによってその半導体ウェハーWの温度が測定される。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0036】
図5は、移載機構10の平面図である。また、
図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(
図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(
図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0037】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(
図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0038】
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0039】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0040】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0041】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0042】
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する光照射部である。
【0043】
図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。第1実施形態では、保持部7に保持された円板形状の半導体ウェハーWの主面(つまり、直径300mmの円)よりも広い領域に複数のハロゲンランプHLが配置されている。また、当該半導体ウェハーWの主面のうち下面と対向する光源領域に複数のハロゲンランプHLが配置されている。
【0044】
図1および
図7に示すように、第1実施形態では、40本のハロゲンランプHLが上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い上段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりも保持部7から遠い下段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0045】
また、
図7に示すように、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0046】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0047】
また、
図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、光源領域における中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、光源領域の中央部よりも周縁部からの照度が強くなり、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0048】
また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(
図1)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
【0049】
ハロゲン加熱部4と保持部7との間にルーバー21および遮光部材25が設けられている。
図8は、ルーバー21の斜視図である。ルーバー21は上下に開放端を有する円筒形状(無底円筒形状)の部材である。ルーバー21は、ハロゲン加熱部4のハロゲンランプHLから出射される光に対して不透明な材質にて形成されており、例えば石英ガラスに微細な気泡を多数内包させた不透明石英にて形成されている。ルーバー21のサイズはチャンバー6およびハロゲン加熱部4の配置構成に応じた適宜のものとすることができる。ルーバー21の円筒の外径はハロゲンランプHLが配置される光源領域よりも小さければ良く、例えば第1実施形態ではルーバー21の外径を半導体ウェハーWの直径と同じ300mmとし、内径を294mmとしている。また、ルーバー21の高さは、例えば15mm〜25mmとすれば良い(第1実施形態では16mmとしている)。
【0050】
図1に示すように、ハロゲン加熱部4の筐体41の上端にはルーバーステージ22が設けられている。ルーバーステージ22は、ハロゲンランプHLから出射される光に対して透明な石英ガラスにて形成された平板状部材である。このルーバーステージ22の上面にルーバー21が設置される。ルーバー21は、その円筒の中心軸CXが保持部7に保持された半導体ウェハーWの中心を通るように設けられる。ハロゲン加熱部4の複数のハロゲンランプHLは、保持部7に保持された半導体ウェハーWの下面と対向する領域に配列されている。よって、ルーバー21の中心軸CXは、複数のハロゲンランプHLの配列の中心をも通ることとなる。
【0051】
このように不透明石英にて形成された円筒形状のルーバー21をハロゲン加熱部4とチャンバー6との間に設けることにより、複数のハロゲンランプHLから光照射を行ったときに、ルーバー21よりも外側に設けられたハロゲンランプHLから半導体ウェハーWの中心部近傍を含む内側領域(周縁部よりも内側の領域)に向かう光が不透明なルーバー21の壁面によって遮光される。その一方、ルーバー21よりも外側に設けられたハロゲンランプHLから半導体ウェハーWの周縁部に向かう光は遮光されない。その結果、ルーバー21を設けることにより、ハロゲン加熱部4から半導体ウェハーWの周縁部に向かう光はほとんど減少しないのに対して、内側領域へと向かう光が減少し、内側領域の加熱が弱まることとなり、温度低下の生じ易い半導体ウェハーWの周縁部が相対的に強く加熱されることとなる。
【0052】
ところが、単にルーバー21のみをハロゲン加熱部4の上方に設置しただけでは、複数のハロゲンランプHLによる光照射加熱時に半導体ウェハーWの周縁部よりも若干内側の領域が逆に高温になるという新たな問題が生じることが判明した。
図16は、ルーバー21のみを設置した場合における半導体ウェハーWの面内温度分布を示す図である。単にルーバー21のみを設置して複数のハロゲンランプHLから光照射を行うと、同図に示すように、半導体ウェハーWの周縁部よりも若干内側に他の領域よりも高温になる過熱領域(ホットスポット)99が現出する。例えば、半導体ウェハーWの直径が300mmであれば、半導体ウェハーWの面内の半径約117mm近傍に過熱領域99が現出する。つまり、過熱領域99の形状は直径約235mmの円弧状となる。
【0053】
そこで本発明は、このような円弧上の過熱領域99を解消するべく、ハロゲン加熱部4と保持部7との間にルーバー21に加えて遮光部材25を設けている。
図9は、第1実施形態におけるルーバー21および遮光部材25の全体外観を示す斜視図である。円筒形状のルーバー21の上端にリングステージ24が設置される。リングステージ24は、ハロゲンランプHLから出射される光に対して透明な石英ガラスにて形成された円板状部材である。リングステージ24の直径はルーバー21の外径(本実施形態では300mm)と同じである。また、リングステージ24の板厚は2mm〜3mmである。
【0054】
そのリングステージ24の上面に遮光部材25が載置される。すなわち、ルーバー21の上に設けられた石英板であるリングステージ24の上にさらに遮光部材25が載置される。遮光部材25は、円環平板形状の遮光リングから一部が欠損した形状を有する。具体的には、遮光部材25は、円環形状の遮光リングの径方向両端部の2箇所に切り欠き29を形成した形状を有する。遮光部材25のリング部分の外径は、円筒形状のルーバー21の内径よりも小さく、例えば280mmである。よって、遮光部材25の外形サイズはルーバー21の内側のサイズよりも小さい。また、遮光部材25のリング部分の内径は例えば260mmであり、遮光部材25の板厚は例えば2mmである。
【0055】
遮光部材25は、ハロゲン加熱部4のハロゲンランプHLから出射される光に対して不透明な材質にて形成されており、例えば石英ガラスに微細な気泡を多数内包させた不透明石英にて形成されている。すなわち、ルーバー21と遮光部材25とは同じ材質にて形成されている。
【0056】
また、ルーバー21の中心軸CXは遮光部材25のリング部分の中心軸と一致する。従って、遮光部材25も、そのリング部分の中心軸が保持部7に保持された半導体ウェハーWの中心を通るように設けられることとなる。
【0057】
図1に戻り、制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
【0058】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0059】
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板である。その不純物の活性化が熱処理装置1によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行される。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0060】
まず、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89,192が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0061】
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からもチャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理装置1における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
【0062】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介してイオン注入後の半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0063】
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面として保持部7に保持される。複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0064】
半導体ウェハーWが石英にて形成された保持部7のサセプタ74によって水平姿勢にて下方より保持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成されたルーバーステージ22、リングステージ24、下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0065】
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が放射温度計120によって測定されている。すなわち、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの裏面から開口部78を介して放射された赤外光を放射温度計120が受光して昇温中のウェハー温度を測定する。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、放射温度計120による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし800℃程度、好ましくは350℃ないし600℃程度とされる(本実施の形態では600℃)。
【0066】
また、第1実施形態においては、ハロゲン加熱部4とチャンバー6との間に不透明な円筒形状のルーバー21および径方向両端部が欠損した円環形状を有する遮光部材25を設け、ハロゲン加熱部4から保持部7に保持された半導体ウェハーWへと向かう光を一部遮光している。ここで、仮に、上記の遮光部材25の代わりに切り欠き29が設けられていない完全な円環形状の遮光部材251が設置されていた場合における遮光について説明する。
【0067】
図10は、円筒形状のルーバー21に完全な円環形状の遮光部材251を設けた全体外観を示す斜視図である。
図9に示した本実施形態の遮光部材25は、
図10の円環形状の遮光部材251の径方向両端部に切り欠き29を設けたものである。
図11は、
図10の構造における遮光を示す図である。上述したように、本実施形態では、円板形状の半導体ウェハーWの主面よりも広い領域に複数のハロゲンランプHLを配置しており、ルーバー21の外径は半導体ウェハーWの直径と同じである。従って、円筒形状のルーバー21より外側にもハロゲンランプHLが存在している。このため、
図11に示すように、ルーバー21よりも外側に設けられたハロゲンランプHLから半導体ウェハーWに向かう光の一部は不透明なルーバー21によって遮光される。
【0068】
また、円環形状の遮光部材251の中心軸はルーバー21の中心軸CXと一致し、かつ、遮光部材251の外径はルーバー21の内径よりも小さい。よって、ルーバー21の内壁面と遮光部材251の外周との間にはハロゲンランプHLから出射された光が透過可能な隙間が存在する。ハロゲンランプHLから出射されてルーバー21の内壁面と遮光部材251の外周との間に生じた当該隙間を透過した光は保持部7に保持された半導体ウェハーWの周縁部に照射される。これにより、ハロゲンランプHLからの光照射による半導体ウェハーWの周縁部の照度が相対的に高くなり、温度低下の生じ易い当該周縁部が強く加熱されることとなる。
【0069】
一方、不透明な円環形状の遮光部材251は、その外径が280mmで内径が260mmであるため、保持部7に保持された半導体ウェハーWの周縁部よりも若干内側の領域、すなわちルーバー21のみを設置した場合に現出する
図16の過熱領域99の下方に存在することとなる。従って、ハロゲンランプHLから出射されて半導体ウェハーWの周縁部よりも若干内側の過熱領域99に向かう光は遮光部材251によって遮光される。これにより、ルーバー21のみを設置した場合に現出する半導体ウェハーWの過熱領域99における照度が相対的に低くなり、過熱領域99の加熱が弱まることとなる。
【0070】
ところが、
図11に示すように、完全な円環形状の遮光部材251は、ルーバー21よりも外側に設けられたハロゲンランプHLから半導体ウェハーWに向かう光の一部がルーバー21によって遮光されることによって生じる半導体ウェハーWの影領域SAに照射されるべき光をも遮光する。すなわち、ルーバー21よりも内側に設けられたハロゲンランプHLから影領域SAに向かう光が遮光部材251によって遮光されるのである。なお、ルーバー21よりも外側に設けられたハロゲンランプHLからの光がルーバー21に遮光されることによって半導体ウェハーWに影領域SAが生じるか否かは、ハロゲンランプHL、ルーバー21および半導体ウェハーWの位置関係に依存している。本実施形態の位置関係では、ハロゲン加熱部4の下段外側のハロゲンランプHLからの光がルーバー21に遮光されることによって影領域SAが生じるものの、上段外側のハロゲンランプHLに起因した影領域SAは生じない。
【0071】
ハロゲンランプHLからの光が到達しにくい半導体ウェハーWの影領域SAは他の領域よりも温度が低い低温領域(コールドスポット)となる。このようなコールドスポットが生じると、フラッシュランプFLによるフラッシュ加熱時にも半導体ウェハーWの面内温度分布が不均一となり、半導体のデバイス特性の劣化や歩留まりの低下が懸念される。
【0072】
このため、本発明は、円環形状の遮光リング(遮光部材251)の径方向両端部に切り欠き29を形成したものを遮光部材25としている。
図12は、第1実施形態におけるルーバー21および遮光部材25による光路調整を示す図である。同図は、
図9の切り欠き29が形成された部位を側方から見た図である。
【0073】
図12に示すように、遮光部材25には切り欠き29が形成されているため、ルーバー21よりも内側に設けられたハロゲンランプHLから出射された光は切り欠き29を通過して半導体ウェハーWの影領域SAに到達する。すなわち、遮光部材25に切り欠き29を設けることにより、ルーバー21によってハロゲンランプHLから出射された光が遮光される半導体ウェハーWの影領域SAに光が到達するのである。その結果、影領域SAにおける照度が相対的に高くなり、影領域SAも他の領域と同様に加熱されることとなる。
【0074】
このようにして、ルーバー21および切り欠き29を有する遮光部材25の組み合わせによって、ハロゲンランプHLからの光照射時における半導体ウェハーWの面内温度分布の不均一を効果的に解消することができる。
【0075】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点にてフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLが半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0076】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに注入された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、熱処理装置1では、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
【0077】
第1実施形態では、ルーバー21および切り欠き29を有する遮光部材25の組み合わせによって、ハロゲン加熱部4による予備加熱段階での半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にしているため、フラッシュ光照射時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0078】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は放射温度計120によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、放射温度計120の測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
【0079】
第1実施形態においては、ハロゲン加熱部4とチャンバー6との間に不透明な円筒形状のルーバー21および円環形状の遮光リングに切り欠き29を形成した遮光部材25を設け、ハロゲン加熱部4から保持部7に保持された半導体ウェハーWへと向かう光の光路を調整している。既述したように、ルーバー21と完全な円環形状の遮光部材を設けた場合には、半導体ウェハーWにハロゲンランプHLからの光が到達しにくい影領域SAが発生し、面内温度分布が不均一となる傾向が認められる。そこで、完全な円環形状に切り欠き29を形成した遮光部材25を設け、ルーバー21よりも内側に設けられたハロゲンランプHLから出射された光を影領域SAにも到達させることによって、予備加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。その結果、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0080】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置の全体構成は概ね第1実施形態と同じである。また、第2実施形態における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。第2実施形態が第1実施形態と相違するのは、遮光部材に切り欠きに代えて透明部分を設けている点である。
【0081】
図13は、第2実施形態の遮光部材125の平面図である。第1実施形態の遮光部材25は円環形状の遮光リングに切り欠き29を形成したものであったが、第2実施形態の遮光部材125は円環形状の遮光リングの一部をハロゲンランプHLから出射される光に対して透明な部材にて形成したものである。すなわち、第2実施形態の遮光部材125は、円環平板形状のリングの一部を透明部122とするとともに、残部を不透明部121としたものである。透明部122は例えばハロゲンランプHLから出射される光を透過する透明石英で形成され、不透明部121は例えば第1実施形態と同様の不透明石英にて形成される。透明石英の透明部122と不透明石英の不透明部121とは溶接によって接合可能である。不透明部121と透明部122とを接合したものは完全な円環形状となる。その円環形状の径方向両端部の2箇所に透明部122が設けられている。換言すれば、第2実施形態の遮光部材125は、第1実施形態の遮光部材25の切り欠き29を透明石英に置き換えたものである。
【0082】
遮光部材125のサイズは第1実施形態と同じく、例えば外径280mm、内径260mm、厚さ2mmである。このような遮光部材125が円筒形状のルーバー21の上端に設けられたリングステージ24の上面に載置される。遮光部材125の形態を除く第2実施形態の残余の構成は第1実施形態と同じである。
【0083】
第2実施形態においてハロゲン加熱部4からの光照射によって半導体ウェハーWの予備加熱を行うときには、遮光部材125の一部が透明部122とされているため、ルーバー21よりも内側に設けられたハロゲンランプHLから出射された光は透明部122を透過して半導体ウェハーWの影領域SAに到達する。すなわち、遮光部材125に透明部122を設けることにより、ルーバー21によってハロゲンランプHLから出射された光が遮光される半導体ウェハーWの影領域SAに光が到達するのである。これにより、影領域SAにおける照度が相対的に高くなり、影領域SAも他の領域と同様に加熱されることとなって、予備加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。その結果、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0084】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の熱処理装置の全体構成は概ね第1実施形態と同じである。また、第3実施形態における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。第3実施形態が第1実施形態と相違するのは遮光部材の形状である。
【0085】
図14は、第3実施形態の遮光部材225の平面図である。第3実施形態の遮光部材225は、複数の遮光パーツによって構成されており、切り欠き229を形成した遮光リング221の内側に4個の板状の遮光片222を配置する。遮光部材225を構成する遮光リング221および4個の遮光片222は、ハロゲン加熱部4のハロゲンランプHLから出射される光に対して不透明な材質にて形成されており、例えば石英ガラスに微細な気泡を多数内包させた不透明石英にて形成されている。
【0086】
遮光リング221は、第1実施形態の遮光部材25と同様のものである。すなわち、遮光リング221は、円環形状の径方向両端部の2箇所に切り欠き229を形成した形状を有する。遮光リング221の外径は、円筒形状のルーバー21の内径よりも小さい。各遮光片222は、遮光リング221の内側に収まる程度の大きさの矩形の板状部材である。これらの遮光リング221および4個の遮光片222が円筒形状のルーバー21の上端に設けられたリングステージ24の上面に
図14に示すような配置形態で載置される。遮光部材225の形状を除く第3実施形態の残余の構成は第1実施形態と同じである。
【0087】
第3実施形態においてハロゲン加熱部4からの光照射によって半導体ウェハーWの予備加熱を行うときには、遮光部材225に切り欠き229が形成されているため、ルーバー21よりも内側に設けられたハロゲンランプHLから出射された光は切り欠き229を通過して半導体ウェハーWの影領域SAに到達する。すなわち、遮光部材225に切り欠き229を設けることにより、ルーバー21によってハロゲンランプHLから出射された光が遮光される半導体ウェハーWの影領域SAに光が到達するのである。これにより、影領域SAにおける照度が相対的に高くなり、影領域SAも他の領域と同様に加熱されることとなって、予備加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。その結果、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0088】
また、ルーバー21のみを設けてハロゲン加熱部4によって予備加熱を行ったときに、半導体ウェハーWの面内に
図16に示す形状の過熱領域99に加えてその内側にも過熱領域が現出する場合には、第3実施形態のように、遮光リング221に加えて遮光片222を配置することによってそれら過熱領域に向かう光を個別に遮光することができ、半導体ウェハーWの面内温度分布を効果的に均一にすることができる。
【0089】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態の熱処理装置の全体構成は概ね第1実施形態と同じである。また、第4実施形態における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。第4実施形態が第1実施形態と相違するのは遮光部材の形状である。
【0090】
図15は、第4実施形態の遮光部材325の平面図である。第4実施形態の遮光部材325は、複数の遮光パーツによって構成されており、切り欠き329を形成した平板四角枠形状の遮光フレーム321の内側に板状の遮光片322を配置する。遮光部材325を構成する遮光フレーム321および遮光片322は、ハロゲン加熱部4のハロゲンランプHLから出射される光に対して不透明な材質にて形成されており、例えば石英ガラスに微細な気泡を多数内包させた不透明石英にて形成されている。
【0091】
四角枠形状を有する遮光フレーム321の対角線の長さは、円筒形状のルーバー21の内径よりも小さい。遮光フレーム321は、四角形の4辺のうちの相対向する2辺の中央部に切り欠き329を形成した形状を有する。遮光片322は、遮光フレーム321の内側に収まる程度の大きさの円板形状部材である。これらの遮光フレーム321および遮光片322が円筒形状のルーバー21の上端に設けられたリングステージ24の上面に
図15に示すような配置形態で載置される。遮光部材325の形状を除く第4実施形態の残余の構成は第1実施形態と同じである。
【0092】
第4実施形態においてハロゲン加熱部4からの光照射によって半導体ウェハーWの予備加熱を行うときには、遮光部材325に切り欠き329が形成されているため、ルーバー21よりも内側に設けられたハロゲンランプHLから出射された光は切り欠き329を通過して半導体ウェハーWの影領域SAに到達する。すなわち、遮光部材325に切り欠き329を設けることにより、ルーバー21によってハロゲンランプHLから出射された光が遮光される半導体ウェハーWの影領域SAに光が到達するのである。これにより、影領域SAにおける照度が相対的に高くなり、影領域SAも他の領域と同様に加熱されることとなって、予備加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。その結果、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0093】
また、ルーバー21のみを設けてハロゲン加熱部4によって予備加熱を行ったときに、半導体ウェハーWの面内に
図16に示す形状の過熱領域99に加えてその内側にも過熱領域が現出する場合には、第4実施形態のように、遮光フレーム321に加えて遮光片322を配置することによってそれら過熱領域に向かう光を個別に遮光することができ、半導体ウェハーWの面内温度分布を効果的に均一にすることができる。
【0094】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態においては、遮光部材25,225,325および遮光部材125の不透明部121が石英ガラスに微細な気泡を多数内包させた不透明石英にて形成されていたが、これらの材質は不透明石英に限定されるものではない。例えば、遮光部材25,225,325および遮光部材125の不透明部121は、セラミックスや金属等、ハロゲン加熱部4のハロゲンランプHLから出射される光に対して不透明な材質にて形成されていれば良い。不透明な材質は、完全に不透明(透過率0%)である必要性は必ずしもなく、ハロゲンランプHLから出射される光に対して透過率15%以下であれば良い。
【0095】
また、ルーバー21と遮光部材25,125,225,325とは、ハロゲンランプHLから出射される光に対して不透明な材質であれば異なる材質にて形成されていても良い。さらに、第3実施形態においては、遮光リング221と複数個の遮光片222とが異なる材質にて形成されていても良い。この場合、ハロゲンランプHLから出射される光に対する複数個の遮光片222の透過率が相互に異なっていても良い。ルーバー21のみを設けて予備加熱を行ったときに、半導体ウェハーWの面内に生じる過熱領域の温度にばらつきがある場合には、過熱領域の温度に応じて複数個の遮光片222の透過率を異なる値とする方が好ましい。具体的には、他の領域よりも大きく温度が高くなる過熱領域に対応する遮光片222の透過率は低くし(透過率0%に近づける)、逆に他の領域よりも僅かに温度が高くなる過熱領域に対応する遮光片222の透過率は高くする。このようにすれば、より高精度に過熱領域の照度を調整して半導体ウェハーWの面内温度分布を効果的に均一にすることができる。なお、第3実施形態において、遮光リング221と複数個の遮光片222との透過率が異なっていても良いことは勿論である。
【0096】
同様に、第4実施形態においては、遮光フレーム321と遮光片322とが異なる材質にて形成されていても良い。この場合、ハロゲンランプHLから出射される光に対する遮光フレーム321と遮光片322との透過率が異なっていても良い。
【0097】
また、遮光部材の形状およびパーツ点数も第1実施形態から第4実施形態の例に限定されるものではない。例えば、遮光部材の形状は、円形の他、楕円形、星形、多角形などであっても良い。また、遮光部材のパーツ点数も適宜のものとすることができる。さらに、遮光部材のパーツ点数を複数とする場合には、半導体ウェハーWの面内における過熱領域の分布に応じて、遮光部材のパーツを対称に配置しても良いし、非対称に配置しても良い。
【0098】
また、第3実施形態の切り欠き229および第4実施形態の切り欠き329を第2実施形態と同様に透明部に置き換えるようにしても良い。要するに、遮光部材の一部を取り除く、または、透過率を高めて透明にすれば良い。
【0099】
また、上記各実施形態においては、ハロゲン加熱部4の下段外側のハロゲンランプHLからの光がルーバー21に遮光されることによって半導体ウェハーWに影領域SAが生じていたが、ハロゲンランプHL等の配置関係によっては上段外側のハロゲンランプHLによって影領域SAが生じることもある。この場合、上記実施形態にて切り欠き29等を形成した径とは直交する方向の径の両端部に切り欠きを形成する。このようしても、ルーバー21よりも内側に設けられたハロゲンランプHLから出射された光は切り欠きを通過して半導体ウェハーWの影領域SAに到達するため、上記実施形態と同様に半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。集約すれば、不透明な円筒形状のルーバー21によってハロゲン加熱部4から出射された光が遮光される半導体ウェハーWの影領域SAに光が到達するように遮光部材に切り欠き(または透明部)を形成する形態であれば良い。
【0100】
また、上記各実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、上段および下段に複数する配置する形態であれば任意の数とすることができる。
【0101】
また、本発明に係る熱処理装置によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。また、本発明に係る技術は、高誘電率ゲート絶縁膜(High-k膜)の熱処理、金属とシリコンとの接合、或いはポリシリコンの結晶化に適用するようにしても良い。
【0102】
また、本発明に係る熱処理技術は、フラッシュランプアニール装置に限定されるものではなく、ハロゲンランプを使用した枚葉式のランプアニール装置やCVD装置などのフラッシュランプ以外の熱源の装置にも適用することができる。特に、チャンバーの下方にハロゲンランプを配置し、半導体ウェハーの裏面から光照射を行って熱処理を行うバックサイドアニール装置に本発明に係る技術は好適に適用することができる。