(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
蒸気によってタービンロータが回転することによって発電機を駆動させる蒸気タービンにおいて起動推移パターンに応じて行われる起動を支援する蒸気タービン起動支援システムであって、
複数種の前記起動推移パターンを記録する、起動推移パターン記録装置と、
前記蒸気を発生させるために消費される燃料の燃料単価、前記発電機の駆動で発電されて売却される電力の売電価格、前記タービンロータのロータ価格、前記燃料の燃料消費率、前記蒸気タービンの稼働率、前記タービンロータのロータ寿命制限値、および、前記発電機の駆動で出力される電力の出力目標値がパラメータとして入力される、パラメータ入力装置と、
前記パラメータ入力装置に入力された前記パラメータを記録する、パラメータ記録装置と、
前記タービンロータのロータ寿命に関する情報を記録する、ロータ寿命記録装置と、
前記パラメータ記録装置に記録されたパラメータ、および、前記ロータ寿命記録装置に記録されたロータ寿命に関する情報に基づいて、前記起動推移パターン記録装置に記録された複数種の起動推移パターンについて経済性評価を行う、経済性評価装置と、
前記経済性評価装置が経済性評価を行った結果を表示する、画面表示装置と、
を有する、
蒸気タービン起動支援システム。
前記経済性評価装置は、前記複数種の起動推移パターンのうち、前記蒸気タービンの起動を行ったときに前記ロータ寿命が前記ロータ寿命制限値よりも小さい起動推移パターンについて、前記経済性評価を行う、
請求項3に記載の蒸気タービン起動支援システム。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン発電プラントは、蒸気タービンを起動する際に消費する燃料の消費量を低減すると共に売電の機会が減少することを抑制するために、蒸気タービンを起動する起動時間を短縮することが求められている。しかし、起動時間の短縮化に伴って、タービンロータに発生する熱応力が大きくなると共に、タービンロータと車室との間の伸び差が熱膨張に起因して大きくなる。このため、蒸気タービンを起動する際には、タービンロータの熱応力、および、車室とタービンロータとの間の伸び差が規定値以下になるように、蒸気タービンの起動が制御される。
【0003】
図3Aは、関連技術に係る蒸気タービン発電プラントにおいて、蒸気タービンを起動する際にタービンロータの回転数ω(rpm)が推移する起動推移パターンを示している。また、
図3Bは、関連技術に係る蒸気タービン発電プラントにおいて、蒸気タービンを起動する際に負荷L(%)(発電出力)が推移する起動推移パターンを示している。
【0004】
図3Aおよび
図3Bでは、起動推移パターンとして、通常起動推移パターンPJ(破線)、最適起動推移パターンPS(実線)、および、急速起動推移パターンPK(一点鎖線)を例示している。そして、
図3Bでは、各起動推移パターンPJ,PS,PKに関する起動時間TJ,TS,TK(回転数ωの上昇を開始した時点(t=0)から負荷Lが定格負荷(100%)に上昇する時点までの時間)を示している。
図3Bに示すように、最適起動推移パターンPSにおいて起動時間TSは、通常起動推移パターンPJの起動時間TJよりも短く、急速起動推移パターンPKの起動時間TKは、最適起動推移パターンPSの起動時間TSよりも短い。
【0005】
最適起動推移パターンPSで起動を行う際には、所定の起動時間で発生する熱応力および伸び差が規定値以下になるように、制御弁の操作量が設定される。そして、急速起動推移パターンPKで起動を行う際には、タービンロータ12の寿命消費量に応じて求めた値以下に熱応力がなるように、制御弁の操作量が設定される(たとえば、特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1Aは、実施形態に係る蒸気タービン発電プラントの要部を模式的に示す図である。
【0014】
蒸気タービン発電プラント1は、
図1Aに示すように、蒸気タービン10、蒸気タービン起動支援システム20、および、蒸気タービン起動制御装置30を有する。
【0015】
蒸気タービン10は、車室11とタービンロータ12とを有する。蒸気タービン10は、車室11の内部にタービンロータ12が収容されており、タービンロータ12が軸受(図示省略)に回転自在に支持されている。車室11は、蒸気通路部13が内部に設けられており、蒸気通路部13においては、複数段のタービン段落(図示省略)がタービンロータ12の回転軸に沿った軸方向に配列されている。複数のタービン段落のそれぞれは、静翼翼列と動翼翼列とを含む。静翼翼列は、車室11の内周面において複数の静翼(ノズル翼)が回転方向に配列されており、動翼翼列は、タービンロータ12の外周面において、複数の動翼が回転方向に配列されている。
【0016】
蒸気タービン10においては、ボイラ(図示省略、排熱回収ボイラを含む)で生じた蒸気が主蒸気管L10を介して車室11の内部に作動流体として供給される。主蒸気管L10は、制御弁V10(蒸気加減弁)が設置されており、制御弁V10の開度が制御されることによって、主蒸気管L10を流れる蒸気の流量が調整される。制御弁V10の開度は、蒸気タービン起動制御装置30から出力された指令S30に応じて制御される。
【0017】
蒸気タービン10において、車室11の内部に作動流体として供給された蒸気は、複数のタービン段落のそれぞれにおいて順次仕事を行う。これにより、タービンロータ12が回転することによって、発電機14が駆動して発電が行われる。蒸気は、初段のタービン段落から最終段のタービン段落を流れた後に、車室11の排気口(図示省略)から復水器(図示省略)へ排出される。
【0018】
蒸気タービン起動支援システム20は、蒸気タービン10において起動推移パターンに応じて行われる起動を支援するために、起動推移パターンに関する情報S20を出力信号として蒸気タービン起動制御装置30に出力する。蒸気タービン起動支援システム20の詳細な構成については後述する。
【0019】
蒸気タービン起動制御装置30は、蒸気タービン10の起動を行う際には、起動推移パターンに関する情報S20が蒸気タービン起動支援システム20から入力される他に、蒸気タービン10の各部において検出された検出データが入力される。ここでは、主蒸気管L10を流れる蒸気(主蒸気)について、主蒸気圧力Pms、主蒸気温度Tms、主蒸気流量Flが検出され、その検出データが蒸気タービン起動制御装置30に入力される。また、車室11の温度について検出された車室温度Tc、初段のタービン段落のメタル部の温度について検出された第1段落メタル温度Tmet、タービンロータ12の温度について検出されたタービンロータ温度Tr、および、タービンロータ12の回転数について検出されたタービン回転数ωが、蒸気タービン起動制御装置30に検出データとして入力される。この他に、車室11とタービンロータ12との伸び差Ex、および、発電機14の負荷MW(発電出力)の検出データが、蒸気タービン起動制御装置30に入力される。
【0020】
そして、蒸気タービン起動制御装置30は、起動推移パターンに関する情報S20および各検出データに基づいて、制御弁V10の操作量に関する指令S30を出力信号として制御弁V10に出力する。これにより、蒸気タービン起動支援システム20から入力された起動推移パターンで蒸気タービン10の起動を行うように、制御弁V10の操作量が制御される。その結果、蒸気タービン10を起動する際に、タービンロータ12の熱応力、および、車室11とタービンロータ12との間の伸び差が規定値以下になる。
【0021】
なお、蒸気タービン起動制御装置30は、演算器(図示省略)とメモリ(図示省略)とを含み、メモリが記憶しているプログラムを用いて演算器が演算処理を行い、その演算処理の結果を出力するように構成されている。
【0022】
図1Bは、実施形態に係る蒸気タービン発電プラントにおいて、蒸気タービン起動支援システムの詳細を示すブロック図である。
起動推移パターン記録装置21は、メモリなどの記録装置を含み、複数種の起動推移パターンに関する情報を記録するように構成されている。起動推移パターン記録装置21は、複数種の起動推移パターンに関する情報について、複数の起動モードに分類して記録している。たとえば、起動モードは、蒸気タービン10の運転を停止した時点から経過した経過時間に応じて、ホット起動モード、ウォーム起動モード、および、コールド起動モードの3つが設定されており、起動推移パターン記録装置21は、複数種の起動推移パターンに関する情報を、その3つの起動モードに分類して記録する。
【0023】
図2は、実施形態に係る蒸気タービン起動支援システムにおいて、起動推移パターン記録装置に記録される複数種の起動推移パターンの一例を表で示す図である。
【0024】
図2に示すように、起動推移パターン記録装置21は、起動モードがコールド起動モードである場合、たとえば、通常起動推移パターン(「通常」と表記)、第1最適起動推移パターン(「最適1」)、第2最適起動推移パターン(「最適2」)、第1急速起動推移パターン(「急速1」)、および、第2急速起動推移パターン(「急速2」)を、起動推移パターンとして記録している。各起動推移パターンは、タービンロータ12の回転数の推移(
図3A参照)および負荷(発電出力)の推移(
図3B参照)に関する情報(回転数の昇速率、負荷の上昇率、ヒートソーク時間など)として記録される。この他に、各起動推移パターンは、
図2に示すように、1年間の起動回数と起動時間とLCFI(一回の起動でロータの寿命が消費される割合)とロータ寿命年数とロータ寿命減少年数とトータル起動回数(ロータの寿命が来るまでに起動可能な全ての回数)の各パラメータが関連付けて記録される。通常起動推移パターン、第1最適起動推移パターン、第2最適起動推移パターン、第1急速起動推移パターン、および、第2急速起動推移パターンは、起動時間が、順次、短くなっており、起動時間の短縮に伴って、LCFIが、順次、大きくなっている。
【0025】
そして、起動推移パターン記録装置21は、経済性評価装置27で経済性評価が行われる際には、その記録された複数種の起動推移パターンに関する情報S21aを出力信号として経済性評価装置27に出力する。また、起動推移パターン記録装置21は、その複数種の起動推移パターンに関する情報S21aを出力信号として画面表示装置28に出力する。
【0026】
この他に、起動推移パターン記録装置21は、起動推移パターン選択装置29が起動推移パターンを選択した情報S29が起動推移パターン選択装置29から入力されたときには、その選択された起動推移パターンに関する情報S21bを起動推移パターン選択装置29に出力する。
【0027】
起動推移パターン登録装置22は、キーボードなどのユーザインターフェイスを含み、起動推移パターンに関する情報をユーザが入力可能なように構成されている。起動推移パターン登録装置22は、起動推移パターンに関する情報が入力された際には、その入力された情報S22を出力信号として起動推移パターン記録装置21に出力する。
【0028】
たとえば、起動推移パターン記録装置21に記録されていない新規の起動推移パターンに関する情報を、ユーザが起動推移パターン登録装置22に入力する。この場合には、その入力された新規の起動推移パターンに関する情報S22を起動推移パターン登録装置22が起動推移パターン記録装置21に出力する。これにより、その新規な起動推移パターンに関する情報S22が起動推移パターン記録装置21に記録される。
【0029】
また、起動推移パターン記録装置21に既に記録されている起動推移パターンに関する情報について変更する情報を、ユーザが起動推移パターン登録装置22に入力する。この場合には、その入力された情報S22を起動推移パターン登録装置22が起動推移パターン記録装置21に出力する。これにより、既存の起動推移パターンに関する情報が起動推移パターン記録装置21において変更されて記録される。
【0030】
パラメータ入力装置23において、燃料単価入力装置231は、ボイラで蒸気を生成するために消費する燃料の燃料単価に関する情報が入力される。そして、燃料単価入力装置231は、その入力された燃料単価に関する情報S231を、出力信号としてパラメータ記録装置24に出力する。
【0031】
ここでは、燃料単価入力装置231は、キーボードなどのユーザインターフェイスにユーザが燃料単価に関する情報を入力するように構成されており、たとえば、燃料を購入したときの燃料単価がユーザによって入力される。この他に、燃料単価入力装置231は、インターネットなどのネットワークを経由して、燃料単価に関する情報を含むウェブサイトにアクセスし、その燃料単価に関するリアルタイムな情報をウェブサイトから自動的に入手するように構成されていてもよい。
【0032】
パラメータ入力装置23において、売電価格入力装置232は、発電機14の駆動で発電されて外部へ売却される電力の売電価格(売電単価)に関する情報が入力される。そして、売電価格入力装置232は、その入力された売電価格に関する情報S232を、出力信号としてパラメータ記録装置24に出力する。
【0033】
ここでは、売電価格入力装置232は、キーボードなどのユーザインターフェイスにユーザが売電価格に関する情報を入力するように構成されている。この他に、売電価格入力装置232は、インターネットなどのネットワークを経由して自動的に入手するように構成されていてもよい。
【0034】
パラメータ入力装置23において、ロータ価格入力装置233は、蒸気タービン10に設置されるタービンロータ12のロータ価格に関する情報が入力される。そして、ロータ価格入力装置233は、その入力されたロータ価格に関する情報S233を、出力信号としてパラメータ記録装置24に出力する。
【0035】
ここでは、ロータ価格入力装置233は、キーボードなどのユーザインターフェイスにユーザがロータ価格に関する情報を入力するように構成されている。具体的には、新規のタービンロータ12を設置するときのロータ価格が入力される。この他に、通貨膨張(インフレーション)を考慮して、新規のタービンロータ12を設置するときのロータ価格に所定の係数を積算した値がロータ価格として入力されてもよい。
【0036】
パラメータ入力装置23において、燃料消費率入力装置234は、ボイラで消費される燃料の燃料消費率に関する情報が入力される。そして、燃料消費率入力装置234は、その入力された燃料消費率に関する情報S234を、出力信号としてパラメータ記録装置24に出力する。
【0037】
ここでは、燃料消費率入力装置234は、キーボードなどのユーザインターフェイスにユーザが燃料消費率に関する情報を入力するように構成されている。具体的には、蒸気タービン10の運転回数が予め定めた値以下の初期段階では、燃料消費率の設計値が入力される。この一方で、蒸気タービン10の運転回数が予め定めた値よりも多くなった期間においては、たとえば、前回の起動で計測された燃料消費率の値が入力される。
【0038】
パラメータ入力装置23において、稼働率入力装置235は、蒸気タービン10の稼働率に関する情報が入力される。そして、稼働率入力装置235は、その入力された稼働率に関する情報S235を、出力信号としてパラメータ記録装置24に出力する。
【0039】
ここでは、稼働率入力装置235は、キーボードなどのユーザインターフェイスにユーザが稼働率に関する情報を入力するように構成されている。
【0040】
パラメータ入力装置23において、ロータ寿命制限値入力装置236は、蒸気タービン10に設置されるタービンロータ12のロータ寿命制限値に関する情報が入力される。そして、ロータ寿命制限値入力装置236は、その入力されたロータ寿命制限値に関する情報S236を、出力信号としてパラメータ記録装置24に出力する。
【0041】
ここでは、ロータ寿命制限値入力装置236は、キーボードなどのユーザインターフェイスにユーザがロータ寿命制限値に関する情報を入力するように構成されている。
【0042】
パラメータ入力装置23において、出力目標値入力装置237は、発電機14の駆動で出力される電力の出力目標値に関する情報が入力される。そして、出力目標値入力装置237は、その入力された出力目標値に関する情報S237を、出力信号としてパラメータ記録装置24に出力する。
【0043】
ここでは、出力目標値入力装置237は、キーボードなどのユーザインターフェイスにユーザが出力目標値に関する情報を入力するように構成されており、蒸気タービン10の起動が完了した後に発電機14が出力する電力の目標値がユーザによって入力される。
【0044】
パラメータ記録装置24は、メモリなどの記録装置を含み、パラメータ入力装置23の各部から各パラメータに関する情報S231〜S237が入力され、その情報S231〜S237を記録するように構成されている。
【0045】
また、パラメータ記録装置24は、経済性評価装置27で経済性評価が行われる際には、その記録された各パラメータに関する情報S24を出力信号として経済性評価装置27に出力する。また、パラメータ記録装置24は、その情報S24を画面表示装置28に出力する。
【0046】
ロータ寿命記録装置25は、メモリなどの記録装置を含み、タービンロータ12のロータ寿命に関する情報が入力され、その情報を記録するように構成されている。ここでは、ロータ寿命記録装置25は、蒸気タービン10の起動に起因してタービンロータ12の寿命が消費されたロータ寿命消費量が入力され、そのロータ寿命消費量を記録する。
【0047】
そして、ロータ寿命記録装置25は、経済性評価装置27で経済性評価が行われる際には、その記録されたロータ寿命に関する情報S25を出力信号として経済性評価装置27に出力する。
【0048】
また、ロータ寿命記録装置25は、蒸気タービン10の起動によってロータ寿命消費量が累積した累積値を、ロータ寿命に関する情報S25として画面表示装置28に出力する。
【0049】
この他に、ロータ寿命記録装置25は、演算器(比較器)を含み、ロータ寿命に関する情報として記録されたロータ寿命消費量の累積値と、ロータ寿命制限値入力装置236に入力されたロータ寿命制限値とに基づいて、複数種の起動推移パターンで蒸気タービン10の起動を行ったときにロータ寿命がロータ寿命制限値を超えるか否かを判断するように構成されていてもよい。この場合において、ロータ寿命がロータ寿命制限値を超える起動推移パターンがあると判断された場合には、ロータ寿命記録装置25は、その起動推移パターンについてロータ寿命がロータ寿命制限値を超える旨を画面表示装置28に出力する。
【0050】
起動モード選択装置26は、キーボードなどのユーザインターフェイスを含み、起動モードをユーザが選択可能なように構成されている。上述したように、蒸気タービン10の運転を停止した時点から経過した経過時間に応じて複数の起動モード(たとえば、ホット起動モード、ウォーム起動モード、コールド起動モード)が設定されており、起動モード選択装置26がユーザの指令に基づいて、その複数の起動モードから1つの起動モードを選択する。
【0051】
たとえば、経過時間が所定値よりも長く蒸気タービン10の温度が低いコールド状態であるときには、コールド起動モードが選択される。そして、経過時間がコールド起動モードの場合よりも短く蒸気タービン10の温度がコールド起動モードよりも高いウォーム状態であるときには、ウォーム起動モードが選択される。そして、経過時間がウォーム起動モードの場合よりも短く蒸気タービン10の温度がウォーム起動モードよりも高いホット状態であるときには、ホット起動モードが選択される。そして、起動モード選択装置26は、経済性評価装置27で経済性評価が行われる際に、上記のように選択した起動モードに関する情報S26を経済性評価装置27に出力する。
【0052】
なお、上記においては、ユーザのマニュアル操作に応じて起動モードの選択が行われる場合について説明したが、これに限らない。蒸気タービン10の運転を停止した時点から経過した時間に関する情報(図示省略)に基づいて、起動モード選択装置26が起動モードを自動的に選択するように構成されていてもよい。
【0053】
経済性評価装置27は、演算器を含み、パラメータ記録装置24に記録されたパラメータ、および、ロータ寿命記録装置25に記録されたロータ寿命に関する情報に基づいて、起動推移パターン記録装置21に記録された複数種の起動推移パターンについて経済性評価を行う。
【0054】
具体的には、経済性評価装置27は、起動推移パターン記録装置21から複数種の起動推移パターンに関する情報S21aが入力される。本情報S21aには、起動時間t
s、1回の起動当たりのロータ寿命消費量LCFI、計画時指定されたプラントの耐用年数に対して起動時間短縮によるロータ寿命減少量L
RD、トータル起動回数N
Cが含まれる。また、パラメータ記録装置24から各パラメータに関する情報S24が入力される。本情報S24には、燃料単価S
f(=S231)、売電価格S
e(=S232)、ロータ価格S
R(=S233)、燃料消費率m
f(=S234)、プラント稼働率A(=S235)、出力目標値P(=S237)を含む。この他に、経済性評価装置27は、ロータ寿命記録装置25からロータ寿命に関する情報S25が入力されると共に、起動モード選択装置26が選択した起動モードに関する情報S26とが入力される。
【0055】
そして、経済性評価装置27は、起動推移パターン記録装置21に記録された複数種の起動推移パターンから、起動モード選択装置26で選択された起動モードに応じた起動推移パターンを抽出する。さらに、経済性評価装置27は、上記のように抽出した起動推移パターンから、蒸気タービン10の起動後にロータ寿命消費量の累積値がロータ寿命制限値を超えないと判断される起動推移パターンを更に抽出する。
【0056】
そして、経済性評価装置27は、その抽出した起動推移パターンについて経済性評価を行う。つまり、本実施形態では、経済性評価装置27は、複数種の起動推移パターンのうち、蒸気タービン10の起動を行ったときにロータ寿命がロータ寿命制限値よりも小さい起動推移パターンについて、経済性評価を行う。
【0057】
経済性評価では、起動推移パターンに関する情報S21a、各パラメータに関する情報S24、および、ロータ寿命に関する情報S25を用いて、起動時経済パラメータを算出する。そして、経済性評価装置27は、その経済性評価を行った結果に関する情報S27を画面表示装置28に出力信号として出力する。
【0058】
経済性評価において、起動時経済パラメータCは、下記式(A)に示すように、燃料消費パラメータC
F、起動時の売電機会喪失パラメータC
U、ロータ寿命消費パラメータC
R、および、起動時間の短縮による経済効果パラメータRに基づいて算出される。
【0059】
C=C
F+C
U+C
R−R ・・・(A)
【0060】
燃料消費パラメータC
Fは、下記式(B)に示すように、起動時間t
s、燃料消費率m
f、および、燃料単価S
fに基づいて算出される。
【0061】
C
F=t
s×m
f×S
f ・・・(B)
【0062】
起動時の売電機会喪失パラメータC
Uは、下記式(C)に示すように、起動時間t
s、売電価格S
e、および、出力目標値Pに基づいて算出される。
【0064】
ロータ寿命消費パラメータC
Rは、下記式(D)に示すように、1回の起動当たりのロータ寿命消費量LCFI、ロータ価格S
R、計画時指定されたプラントの耐用年数に対して起動時間短縮によるロータ寿命減少量L
RD、プラント稼働率A、出力目標値P、売電価格S
e、および、トータル起動回数N
Cに基づいて算出される。
【0065】
C
R=(LCFI×S
R)+(L
RD×A×P×S
e)/N
C ・・・(D)
【0066】
起動時間の短縮による経済効果パラメータRは、下記式(E)に示すように、通常起動推移パターンに対して起動時間が短縮された時間Δt
RD、売電単価S
e、および、出力目標値Pに基づいて算出される。
【0067】
R=Δt
RD×S
e×P ・・・(E)
【0068】
なお、蒸気タービン10の起動後に全負荷運転でなく部分負荷運転を行うときには、起動時間は、起動推移パターンに関連して記録された負荷上昇率に基づいて、全負荷運転の場合の値から換算された値を用いる。
【0069】
画面表示装置28は、ディスプレイを含み、各部から入力される各情報S21a,S24,S25,S27を示す画像をディスプレイの画面に表示する。
【0070】
具体的には、画面表示装置28は、複数種の起動推移パターンに関する情報S21aを示す画像として、たとえば、
図2に示した表を画面に表示する。同様に、各パラメータに関する情報S24を示す画像として、たとえば、各パラメータの表(図示省略)を画面表示装置28が画面に表示する。
【0071】
また、画面表示装置28は、ロータ寿命に関する情報S25を示す画像として、たとえば、ロータ寿命消費量の累積値を画面に表示する。ロータ寿命消費量の累積値がロータ寿命制限値を超えるとロータ寿命記録装置25が判断したときには、ロータ寿命制限値を超える旨を画面表示装置28が画面に警報として表示する。
【0072】
この他に、画面表示装置28は、経済性評価を行った結果に関する情報S27を示す画像として、たとえば、経済性評価装置27が算出した起動時経済パラメータCを画面に表示する。
【0073】
起動推移パターン選択装置29は、キーボードなどのユーザインターフェイスを含み、複数種の起動推移パターンから一の起動推移パターンを選択するように構成されている。たとえば、経済性評価を行った結果に関する起動時経済パラメータCを示す画像をユーザが観察し、経済性評価で最も経済性に優れると判断された起動推移パターンで起動を行う指令をユーザが入力したときには、その起動推移パターンを選択する。これに対して、経済性評価において最も経済性に優れると判断された起動推移パターン以外の起動推移パターンで起動を行う指令をユーザが入力したときには、その起動推移パターンを選択する。
【0074】
そして、起動推移パターン選択装置29は、その起動推移パターンが選択されたことを示す情報S29を起動推移パターン記録装置21に出力信号として出力する。これにより、起動推移パターン記録装置21が、その選択された起動推移パターンに関する情報S21bを出力し、起動推移パターン選択装置29が、その起動推移パターンに関する情報S21bを受ける。そして、起動推移パターン選択装置29は、その起動推移パターンに関する情報S20を出力信号として蒸気タービン起動制御装置30に出力する。
【0075】
上記においては、ユーザのマニュアル操作に応じて起動推移パターンの選択が行われる場合について説明したが、これに限らない。経済性評価を行った結果に関する情報S27に基づいて、経済性評価で最も経済性に優れると判断された起動推移パターンを起動推移パターン選択装置29が自動的に選択するように構成されていてもよい。たとえば、蒸気タービン10の起動を的確に行うために、経済性評価装置27で算出された起動時経済パラメータの値が最も高い起動推移パターンを起動推移パターン選択装置29が選択するように構成されていてもよい。
【0076】
以上のように、本実施形態の蒸気タービン起動支援システム20においては、パラメータ記録装置24に記録されたパラメータ、および、ロータ寿命記録装置25に記録されたロータ寿命に関する情報に基づいて、起動推移パターン記録装置21に記録された複数種の起動推移パターンについて、経済性評価装置27が経済性評価を行う。そして、その経済性評価装置27が経済性評価を行った結果を画面表示装置28が表示する。このため、本実施形態では、複数種の起動推移パターンに関する経済性評価の結果をユーザが容易に把握可能であって、経済性評価で最も経済性に優れる起動推移パターンを容易に選択することができる。さらに、最も経済性に優れる起動推移パターンを蒸気タービン起動支援システム20が自動的に選択するように構成することで、起動の設定を効率的に行うことができる。
【0077】
本実施形態においては、起動推移パターン登録装置22を用いて、起動推移パターンに関する情報をユーザが追加および変更し、起動推移パターン記録装置21に記録されることができる。このため、売電計画に応じた起動推移パターンで、容易に起動を実行可能である。
【0078】
本実施形態においては、蒸気タービン10の起動に起因してタービンロータ12の寿命が消費されたロータ寿命消費量の累積値が、ロータ寿命に関する情報として、ロータ寿命記録装置25に記録される。そして、そのロータ寿命に関する情報を示す画像が、画面表示装置28で表示される。このため、本実施形態では、ユーザがタービンロータ12を交換する計画を容易に立てることができる。
【0079】
本実施形態においては、ロータ寿命消費量の累積値がロータ寿命制限値を超えると判断されたときには、ロータ寿命制限値を超える旨(図示省略)が画面表示装置28に警報として表示される。このため、本実施形態は、蒸気タービン10を起動するときの安全性を高めることができる。
【0080】
本実施形態においては、経済性評価装置27は、複数種の起動推移パターンのうち、蒸気タービン10の起動を行ったときにロータ寿命がロータ寿命制限値よりも小さい起動推移パターンについて、経済性評価装置27が経済性評価を行う。このため、本実施形態は、演算処理の迅速化を容易に実現可能である。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。