【実施例】
【0012】
(第1実施例)
図1を参照し、蒸発燃料処理装置20を備える燃料供給システム6について説明する。燃料供給システム6は、燃料タンク14内に貯留されている燃料をエンジン2に供給するためのメイン供給経路10と、燃料タンク14内で発生した蒸発燃料をエンジン2に供給するためのパージ供給経路22を備えている。
【0013】
メイン供給経路10には、燃料ポンプユニット16と、供給経路12と、インジェクタ4が設けられている。燃料ポンプユニット16は、燃料ポンプ、プレッシャレギュレータ、制御回路等を備えている。燃料ポンプユニット16は、ECU100(
図6参照)から供給される信号に応じて燃料ポンプを制御する。燃料ポンプは、燃料タンク14内の燃料を昇圧して吐出する。燃料ポンプから吐出される燃料は、プレッシャレギュレータで調圧され、燃料ポンプユニット16から供給経路12に供給される。供給経路12は、燃料ポンプユニット16とインジェクタ4に接続されている。供給経路12に供給された燃料は、供給経路12を通過してインジェクタ4に達する。インジェクタ4は、ECU100によって開度がコントロールされる弁(図示省略)を有している。インジェクタ4の弁が開かれると、供給経路12内の燃料が、エンジン2に接続されている吸気経路34に供給される。
【0014】
なお、吸気経路34は、エアクリーナ30に接続されている。エアクリーナ30は、吸気経路34に流入する空気の異物を除去するフィルタを備えている。エンジン2とエアクリーナ30との間には、吸気経路34内に、スロットルバルブ32が設けられている。スロットルバルブ32が開くと、エアクリーナ30からエンジン2に向けて吸気が行われる。スロットルバルブ32は、吸気経路34の開度を調整し、エンジン2に流入する空気量を調整する。スロットルバルブ32は、インジェクタ4より上流側(エアクリーナ30側)に設けられている。
【0015】
パージ供給経路22には、パージガスがキャニスタ19から吸気経路34に移動するときに通過するパージ経路22aと、パージ経路22aから分岐した分岐経路22bが設けられている。パージ供給経路22には、蒸発燃料処理装置20が設けられている。蒸発燃料処理装置20は、キャニスタ19と、パージ経路22aと、ポンプ52と、制御弁26と、分岐経路22bと、濃度センサ57と、空燃比(以下ではA/F)センサ80と、を備えている。燃料タンク14とキャニスタ19が、連通経路18によって接続されている。キャニスタ19,ポンプ52及び制御弁26は、パージ経路22a上に配置されている。パージ経路22aは、インジェクタ4とスロットルバルブ32の間で、吸気経路34に接続されている。分岐経路22bは、一端がポンプ52の上流でパージ経路22aに接続されており、他端がポンプ52の下流でパージ経路22aに接続されている。分岐経路22b上には、濃度センサ57が設けられている。なお、制御弁26は、ECU100によって制御される電磁弁であり、連通状態と遮断状態の切替えがECU100によってデューティ制御される弁である。制御弁26は、開閉時間を制御(連通状態と遮断状態の切替えタイミングを制御)することにより、蒸発燃料を含む気体(即ちパージガス)の流量を調整する。また、制御弁26は、開度が調整可能なステッピングモータ式制御弁であってもよい。
【0016】
図2に示すように、キャニスタ19は、大気ポート19a,パージポート19b及びタンクポート19cを備えている。大気ポート19aは、連通経路17を介して、エアフィルタ15に接続されている。パージポート19bは、パージ経路22aに接続されている。タンクポート19cは、連通経路18を介して、燃料タンク14に接続されている。キャニスタ19内に、活性炭19dが収容されている。活性炭19dに面するキャニスタ19の壁面のうちの、1つの壁面にポート19a,19b及び19cが設けられている。活性炭19dと、ポート19a,19b及び19cが設けられているキャニスタ19の内壁との間には、空間が存在する。ポート19a,19b及び19cが設けられている側のキャニスタ19の内壁に、第1仕切板19eと第2仕切板19fが固定されている。第1仕切板19eは、大気ポート19aとパージポート19bの間において、活性炭19dとキャニスタ19の内壁の間の空間を分離している。第1仕切板19eは、ポート19a,19b及び19cが設けられている側と反対側の空間まで伸びている。第2仕切板19fは、パージポート19bとタンクポート19cの間において、活性炭19dとキャニスタ19の内壁の間の空間を分離している。
【0017】
活性炭19dは、燃料タンク14から連通経路18,タンクポート19cを通じてキャニスタ19の内部に流入する気体から蒸発燃料を吸着する。蒸発燃料が吸着された後の気体は、大気ポート19a,連通経路17及びエアフィルタ15を通過して大気に放出される。キャニスタ19は、燃料タンク14内の蒸発燃料が大気に放出されることを防止することができる。活性炭19dで吸着された蒸発燃料は、パージポート19bよりパージ経路22aに供給される。第1仕切板19eは、大気ポート19aが接続されている空間と、パージポート19bが接続されている空間を分離している。第1仕切板19eは、蒸発燃料を含んだ気体が大気に放出されることを防止している。第2仕切板19fは、パージポート19bが接続されている空間と、タンクポート19cが接続されている空間を分離している。第2仕切板19fは、タンクポート19cからキャニスタ19に流入する気体が直接パージ経路22aに移動することを防止している。
【0018】
パージ経路22aは、キャニスタ19と吸気経路34を接続している。パージ経路22a上には、ポンプ52と制御弁26が設けられている。ポンプ52は、キャニスタ19と制御弁26の間に配置されており、吸気経路34にパージガスを圧送する。具体的には、ポンプ52は、パージ経路22aを通じてキャニスタ19内のパージガスを矢印60方向に引き込み、パージ経路22aを通じてパージガスを吸気経路34に向けて矢印66方向に押し出す。なお、エンジン2が駆動している場合、吸気経路34内は負圧である。そのため、キャニスタ19に吸着された蒸発燃料は、吸気経路34とキャニスタ19の圧力差によって吸気経路34に導入することもできる。しかしながら、パージ経路22aにポンプ52を配置することにより、吸気経路34内の圧力がパージガスを引き込むために十分でない圧力の場合(過給機(図示省略)による過給時の正圧、あるいは、負圧であるがその圧力の絶対値が小さい)であっても、キャニスタ19に吸着された蒸発燃料を吸気経路34に供給することができる。また、ポンプ52を配置することにより、吸気経路34に所望量の蒸発燃料を供給することができる。
【0019】
パージ経路22aには、分岐経路22bが接続されている。分岐経路22b上には、濃度センサ57が配置されている。より具体的には、分岐経路22bは、第1分岐管56と第2分岐管58を備えている。分岐経路22bの一端である第1分岐管56の一端は、ポンプ52の下流(吸気経路34側)に接続されている。分岐経路22bの他端である第2分岐管58の一端は、ポンプ52の上流(キャニスタ19側)に接続されている。第1分岐管56及び第2分岐管58の他端は、濃度センサ57に接続されている。濃度センサ57は、分岐経路22bを通過するバージガスの濃度を特定する。
【0020】
蒸発燃料処理装置20では、ポンプ52を駆動した状態で制御弁26が開かれると、パージガスが矢印66方向に移動し、吸気経路34に導入される。また、ポンプ52を駆動した状態で制御弁26が閉じられると、パージガスが矢印62方向に移動し、濃度センサ57で濃度が特定される。なお、濃度センサ57は、分岐経路22b上に設けられており、パージ経路22a上には設けられていない。そのため、蒸発燃料処理装置20は、パージ経路22aの抵抗が増大することが抑制され、吸気経路34に供給されるパージガスの量が制限されることを抑制することができる。なお、パージ経路22a及び分岐経路22bの内径等を調整することにより、吸気経路34にパージガスを供給しながら、濃度センサ57にもパージガスを供給することもできる。この場合、吸気経路34に供給されるパージガスの濃度をリアルタイムで特定することができる。
【0021】
濃度センサ57として、様々な種類のセンサを利用することができる。ここで、
図3から
図5を参照し、蒸発燃料処理装置20で利用可能な3種類の濃度センサ57を説明する。
図3は、ベンチュリ管72を内蔵した濃度センサ57aを示している。ベンチュリ管72の一方の端部72aが第1分岐管56に接続されている。ベンチュリ管72の他方の端部72cが第2分岐管58に接続されている。ベンチュリ管の端部72aと中央部(小径部)72bの間に差圧センサ70が接続されている。濃度センサ57aは、端部72aと中央部72bの圧力差を差圧センサ70で特定する。端部72aと中央部72bの差圧を特定すれば、ベルヌーイの式よりバージガスの密度(バージガス濃度)を算出することができる。
【0022】
図4は、オリフィス管74を内蔵した濃度センサ57bを示している。オリフィス管74の一端は第1分岐管56に接続され、他端は第2分岐管58に接続されている。オリフィス管74の中央に、開孔74aを有するオリフィス板74b(小径部)が設けられている。オリフィス板74bの上流側と下流側に、差圧センサ70が接続されている。濃度センサ57bは、オリフィス板74bの上流側と下流側の圧力差を差圧センサ70で特定し、バージガス濃度を算出する。
【0023】
図5は、毛細管式粘度計76を内蔵した濃度センサ57cを示している。毛細管式粘度計76の一端は第1分岐管56に接続され、他端は第2分岐管58に接続されている。毛細管式粘度計76の内部には、複数の毛細管76a(小径部)が配置されている。毛細管76aの上流側と下流側に、差圧センサ70が接続されている。濃度センサ57cは、毛細管76aの上流側と下流側の圧力差を差圧センサ70で特定し、毛細管式粘度計76を通過する流体(パージガス)の粘性を測定する。毛細管76aの上流側と下流側の差圧を特定すれば、ハーゲン・ポアズイユの式より、流体の粘性を算出することができる。パージガスの粘性は、パージガスの濃度と相関関係がある。そのため、パージガスの粘性を算出することにより、パージガスの濃度を特定することができる。
【0024】
以上、3種の濃度センサ57(57a〜57c)について説明したが、蒸発燃料処理装置20では、小径部を含む他の形態の濃度センサを用いることもできる。即ち、パージガスが通過することによって、パージガスの濃度(即ち密度あるいは粘性)によって通過前後で圧力が変化する小径部と、その圧力差を特定可能なセンサを有する形態の濃度センサを用いることができる。
【0025】
A/Fセンサ80は、エンジン2の排気経路36内に配置されている。A/Fセンサ80は、排気経路36を流れる排気ガスのA/Fに対応する信号をECU100に送信する。ECU100は、A/Fセンサ80の特定結果から吸気経路34内のA/Fを特定する。
【0026】
図6を参照し、パージガスを吸気経路34に供給する処理(以下では「パージ処理」と呼ぶ)のときのパージ供給経路22の動作について説明する。エンジン2が始動すると、ECU100の制御により、ポンプ52が駆動を開始し、制御弁26が開かれる。ECU100は、濃度センサ57で特定したパージガスの濃度に基づいて、ポンプ52の出力及び制御弁26の開度(またはデューティ比)を制御する。なお、ECU100は、スロットルバルブ32の開度も制御する。キャニスタ19には、燃料タンク14の蒸発燃料が吸着されている。ポンプ52が始動すると、キャニスタ19に吸着されていた蒸発燃料を含むパージガス及びエアクリーナ30を通過した空気が、エンジン2に導入される。
【0027】
図7から
図10を参照し、パージ処理中にパージガスの濃度が変化したときに、パージガスの供給量を調整する方法について説明する。濃度センサは、濃度センサ57a,57b及び57cの何れであってもよい。この方法では、吸気経路34にパージ処理を行う前に、パージ経路内に残存しているガス(前回のパージ処理を終了した際に残存しているパージガス)を掃気する(即ち吸気経路34に排出する)。なお、パージ通路内に残存しているガスを掃気すると、キャニスタ19に吸着されている蒸発燃料がパージ通路内に導入される。
図9及び
図10は、パージ処理を行うタイミングと、ポンプ52及び制御弁26のオン・オフ状態を示すタイミングチャートである。ポンプ52及び制御弁26は、ECU100の制御信号によってオン・オフ状態が制御される。
【0028】
タイミングt0は、車両が走行可能な状態になったタイミングを示している。例えば、エンジン2が始動した時がタイミングt0に相当する。タイミングt0では、パージ経路内にガスが残存しており、ECU100はパージ経路内のガスが掃気されていないことを記憶している。タイミングt0では、ECU100は、ガス掃気完了履歴がOFF状態であることを記憶している。タイミングt0では、ポンプ52及び制御弁26がオフしている。エンジン2が始動(S30)されると、ECU100は、制御弁26がオフの状態のままポンプ52を駆動する(S31:タイミングt1)。ECU100は、制御弁26をオフしたまま、タイミングt1からタイミングt2の間にガス濃度を測定する(S32)。具体的には、ECU100は、濃度センサ57の小径部を通過するパージガスの差圧と、ポンプ52の回転数から算出される流量と、を用いて、ガス濃度を算出する。なお、ポンプ52の回転数と流量との関係を表すデータベースが予め実験により特定され、ECU100内に格納されている。このデータベースは、製造時の複数のポンプ52から選択された1個又は数個のポンプ52を用いた実験によって特定されるため、複数のポンプ52の性能の個体差について考慮されていない。
【0029】
S32で特定したパージガス濃度C11が所定値より薄い場合(S33:YES)、S34に進み、ECU100は、ポンプ52をオンしたまま、制御弁26を所定時間オンする(タイミングt2〜t3)。これにより、パージ供給経路22内に滞留していたガス(前回パージ処理を終了した際に残存していたパージガス)を、パージ供給経路22内から掃気することができる。なお、ECU100は、制御弁26をオンする期間(タイミングt2〜t3)は、タイミングt1〜t2の間に特定したパージガス濃度C11に基づいて決定する。これにより、吸気経路34内に掃気されるパージガスにより、A/Fが大きく乱れることを抑制することができる。
【0030】
残存ガスの掃気が完了すると(即ち制御弁26をオンする期間が経過すると)、ECU100は、ガス掃気完了履歴をON状態にする(S35,タイミングt3)。ガス掃気完了履歴は、エンジン2が駆動している間ON状態に維持し続ける。また、残存ガスの掃気が完了した後、ECU100は、ポンプ52を駆動したまま、制御弁26をオフする(S36,タイミングt3)。その後、ECU100は、パージ経路内のパージガス濃度C12を特定する(S37)。パージガス濃度C12を特定した後、ECU100は、ポンプ52をオフする(S38,タイミングt4)。タイミングt3〜t4の間に特定したガス濃度C12の値は、ECU100がパージオン信号を出力するとき(実際にパージ処理を開始するとき:S39,タイミングt5)で用いる。すなわち、パージ処理を開始する際は、ガス濃度C12の値に基づき、制御弁26の開度、ポンプ52の出力等を決定する。
【0031】
なお、S33でパージ経路内のパージガスの濃度C11が所定値より濃い場合(S33:NO)、
図10に示すように、タイミングt2で制御弁26をオンしない(即ちS34をスキップする)。このとき、実際にはパージ経路内の掃気が終わっていないが、S35に進み、ガス掃気完了履歴をON状態にする。この場合、実際にパージ処理を開始するとき(タイミングt5)は、ガス濃度C12の値に基づき、制御弁26の開度、ポンプ52の出力等を決定する。パージ経路内のガス濃度(残存ガスの濃度)が濃い場合、そのガスを吸気経路34に掃気すると、A/Fがリッチになる傾向がある。その場合、排気ガス中に窒素酸化物が生じやすい傾向がある。そのため、パージ経路内の残存ガスの濃度が所定値より濃い場合、パージ経路内の掃気を行わず、ガス濃度C12に基づいて、制御弁26の開度、ポンプ52の出力等を決定する。これにより、A/Fが基準値になるように調整される。
【0032】
パージ処理中では、ECU100は、A/Fセンサ80で特定されるA/Fを用いてガス濃度を推定する。具体的には、パージ処理中のA/Fが基準値よりもリーンである場合、パージ処理が開始される前に測定されたガス濃度(例えばガス濃度C12、C13)から所定値を減算することによって、ガス濃度が推定される。一方、パージ処理中のA/Fが基準値よりもリッチである場合、パージ処理が開始される前に測定されたガス濃度(例えばガス濃度C12、C13)から所定値を加算することによって、ガス濃度が推定される。パージ処理中は、A/Fが基準値になるように、燃料噴射量、スロットルバルブ32の開度(即ち空気の量)およびパージガスの流量が調整されている。この状況でA/Fが基準値よりリーンである場合には、現在のガス濃度が燃料噴射量、スロットルバルブ32の開度およびパージガスの流量を決定したときのガス濃度よりも減少していると推定される。このため、現在のガス濃度に減算することによって新たなガス濃度を推定する。一方、A/Fが基準値はリッチである場合には、現在のガス濃度が燃料噴射量、スロットルバルブ32の開度およびパージガスの流量を決定したときのガス濃度よりも増加していると推定される。このため、現在のガス濃度に加算することによって新たなガス濃度を推定する。新たなガス濃度が推定されると、ECU100は、A/Fが基準値になるように、燃料噴射量、スロットルバルブ32の開度(即ち空気の量)およびパージガスの流量を調整する。
【0033】
図8は、
図9のタイミングt5以降のパージガスの供給量の調整方法を示している。タイミングt5でパージ処理が開始されると、タイミングt5〜t6の間、ポンプ52が駆動し、制御弁26がオン(開閉)し、吸気経路34にパージガスが供給される。ステップS40では、タイミングt5以降に、パージオフの信号が出力された否かを判定する。パージオフの信号が出力されると(S40:YES)、制御弁26をオフする(S41,タイミングt6)。タイミングt6では、ポンプ52の駆動を維持する(タイミングt6〜t7)。タイミングt6〜t7の間に、パージ経路内のガス濃度C13を特定する(S42)。ガス濃度C13を特定後、ポンプをオフする(S43,タイミングt7)。その後、パージオンの信号が出力されたときに(タイミングt8)、制御弁26をオンし、ポンプ52をオンする(S44)。
【0034】
タイミングt8〜t9の間、ガス濃度C13に基づいて、制御弁26の開度、ポンプ52の出力等を決定する。タイミングt9〜t11では、タイミングt6〜t8と同じ動作を行う。すなわち、パージがオフの状態(t9〜t11)で所定時間ポンプ52を駆動(t9〜t10)し、ガス濃度C14を特定する。
【0035】
上記方法は、パージオフ(制御弁閉)の状態でパージガスの濃度を特定し、そのガス濃度に基づいてパージオンのときの制御弁26の開度(デューティ比),ポンプ52の出力を制御する。パージ処理を開始するときにパージガスの濃度が既知であるので、より正確にパージガスの供給量を調整することができる。また、エンジン2が始動してパージ処理を開始するまでの間にパージ経路22a内を掃気するので、パージ処理が開始されるときには、キャニスタ19から供給されるパージガスの濃度を、パージ供給量によく反映させることができる。また、パージ経路22aを掃気する際も、掃気前にパージ経路22a内に残留しているパージガスの濃度を特定するので、掃気の際にA/Fが大きく乱れることも防止することができる。
【0036】
上述したように、パージ処理が実行されていない間、即ち、パージガスがパージ経路22aと分岐経路22bを循環している間では、濃度センサ57を用いてガス濃度を特定することができる。一方、パージ処理中では、A/Fセンサ80を用いて、ガス濃度を推定することができる。
【0037】
次いで、
図11を参照して、ポンプ52が正常に駆動しているか否かを判定する判定処理を説明する。ポンプ52は、ECU100によって制御されている。ECU100は、ポンプ52に供給される信号に応じてポンプ52の回転数を制御している。しかしながら、例えば、ポンプ52が劣化や断線等によって、ポンプ52が供給された信号に応じて正常に回転することができない場合がある。この場合、想定している流量のパージガスを供給することができなくなり、空燃比を適切に制御することが難しくなる。また、パージガスの密度(即ち濃度)に応じて、ポンプ52の回転数に対する流量も変化する。さらには、ポンプ52の寸法誤差等の個体差によって、ポンプ52の回転数に対する流量も異なる。判定処理では、ポンプ52の個体差やパージガスの密度等による流量のばらつきを示すばらつき係数を算出する。
【0038】
判定処理は、パージ処理が実行されている間に、パージ処理の途中で定期的に又は不定期に実行される。判定処理では、まず、ECU100がA/Fセンサ80の検出結果から推定されるガス濃度が安定したか否かを判断する(S102)。具体的には、パージ処理の実行中にA/Fセンサ80で特定されるA/Fが基準値で安定しているか否かを判断する。A/Fセンサ80によるガス濃度が安定すると(S102;YES)、ECU100は、制御弁26をオフにして、パージ経路22aと吸気経路34とを連通状態から非連通状態に切り替える(S104)。次いで、ECU100は、ポンプ52を所定の回転数で回転させるための信号をポンプ52に供給する(S106)。なお、ポンプ52が所定の回転数で回転させるための信号を既に受信している場合には、S106の処理はスキップされる。これにより、パージガスは、パージ経路22aと分岐経路22bを還流する(
図2の矢印62参照)。
【0039】
ポンプ52が正常に駆動する場合、ポンプ52は、所定の回転数±誤差値で回転する。誤差値は、ポンプ52の寸法誤差等のポンプ52毎に変化する許容範囲内の誤差である。次いで、ECU100は、A/Fセンサ80の検出結果を用いて得られるガス濃度と、ガス濃度とパージガスの密度との関係を示すデータベースを用いて、パージガスの密度を特定する(S108)。このデータベースは、ガス濃度の異なる複数のパージガスを用いた実験により予め作成され、ECU100に格納されている。
【0040】
次いで、ECU100は、濃度センサ57を用いて、パージガスの差圧を特定する(S110)。次いで、ECU100は、S108で特定された密度と、S110で特定された圧力差と、を用いて、パージガスの流量を推定する(S112)。具体的には、ECU100は、パージガスの密度とパージガスの圧力差とパージガスの流量との関係を示すデータベースを格納している。このデータベースは、ガス濃度(即ち密度)の異なる複数のパージガスを用いて、パージガスの流量を変化させる実験により予め作成され、ECU100に格納されている。ガス濃度が変化するとパージガスの密度が変化する。密度が高いほど、流量は多く、圧力差が大きいほど流量は多くなる。ECU100は、S108で特定された密度と、S110で特定された圧力差と、データベースから、パージガスの流量を推定する。
【0041】
次いで、ECU100は、S112で推定されたパージガスの流量を、ポンプ52が所定の回転数で駆動している場合の基準流量で除算して、ばらつき係数を算出する(S114)。基準流量は、例えば、ポンプ52を所定の回転数で駆動して、所定の濃度(即ち密度、例えば5%)のパージガスを流す場合の流量である。基準流量は、予め実験により特定され、ECU100に格納されている。
【0042】
次いで、ECU100は、ばらつき係数が予め決められた正常範囲(例えば0.5〜1.5)内であるか否かを判断する(S116)。正常範囲は、予めECU100に格納されている。ばらつき係数が正常範囲でないと判断される場合(S116;NO)、ポンプ52が正常に駆動していないことを示す信号を車両の表示装置に送信して(S118)、正常判定処理を終了する。この結果、表示装置は、ポンプ52が正常に駆動していないことを示す表示を行う。これにより、運転者は、ポンプ52が正常に駆動していないことを知ることができる。一方、ばらつき係数が正常範囲であると判断される場合(S116;YES)、S118をスキップして正常判定処理を終了する。ばらつき係数が正常範囲である場合、ポンプ52による流量のばらつきが許容範囲内であると判断される。なお、S116でYESと判断された場合、ECU100は、判定処理の終了後に、制御弁26をオンに切り替えてパージ処理を実行する。一方、S116でNOと判断された場合、ECU100は、ポンプ25を停止してパージ処理を実行しない。
【0043】
ECU100は、S114で算出されたばらつき係数を格納しておく。ECU100は、パージ処理を実行している間に、定期的に単位時間当たりのパージ流量を算出して、燃料噴射時間を調整する。このとき、ECU100は、ポンプ52の回転数から推定されるパージガスの流量にばらつき係数を乗算することによって、パージガスの推定流量を算出する。これにより、ポンプ52のばらつきやガス濃度によるばらつきを加味した流量を推定することができる。
【0044】
(第2実施例)
図12を参照して、第1実施例と異なる点を説明する。本実施例の蒸発燃料処理装置20では、ポンプ52は、キャニスタ19と分岐経路22bとの間のパージ経路22aに配置されている。さらに、分岐経路22bと並行するパージ経路22a上には、遮断弁200が配置されている。遮断弁200は、ECU100からの信号に応じて、パージ経路22aを開放する状態(オフ)と、閉塞する状態(オン)とに切り替わる。パージ処理中では、遮断弁200をパージ経路22aを開放する状態に維持することによって、パージガスを、濃度センサ57を介さずに吸気経路34に供給することができる。パージ処理中に、遮断弁200をオフからオンに切り替えて、パージ経路22aを閉塞する状態に切り替えられると、パージガスは、パージ経路22aから分岐経路22bを経由して、吸気経路34に供給される。このため、本実施例の蒸発燃料処理装置20では、パージ処理中に、濃度センサ57を用いて、ガス濃度を特定することができる。また、判定処理では、S104において、制御弁26をオフに切り替える代わりに、遮断弁200をオフからオンに切り替えることによって、制御弁26をオフに切り替えずに、判定処理を実行することができる。具体的には、
図11のS104の処理を実行する代わりに、遮断弁200をオフからオンに切り替える。
【0045】
(第3実施例)
図13を参照して、第1実施例と異なる点を説明する。本実施例の蒸発燃料処理装置20は、第2実施例と同様に、ポンプ52は、キャニスタ19と分岐経路22bとの間のパージ経路22aに配置されている。さらに、分岐経路22bとパージ経路22aとの分岐位置に、切替弁300が配置されている。切替弁300は、ポンプ52を、分岐経路22bと並行するパージ経路22cに連通する一方で分岐経路22bと遮断する第1状態と、分岐経路22bに連通する一方でパージ経路22cと遮断する第2状態と、に切り替わる。パージ処理中では、切替弁300を第1状態に維持することによって、パージガスを、濃度センサ57を介さずに吸気経路34に供給することができる。パージ処理中に、切替弁300を第1状態から第2状態に切り替えると、パージガスは、パージ経路22aから分岐経路22bを経由して、吸気経路34に供給される。このため、本実施例の蒸発燃料処理装置20では、パージ処理中に、濃度センサ57を用いて、ガス濃度を特定することができる。この構成では、第2実施例と同様に、判定処理では、S104において、制御弁26をオフに切り替える代わりに、切替弁300を第1状態から第2状態に切り替えることによって、ポンプ52が正常か否かを判定することができる。
【0046】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。