(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外縁形状の樹脂皮膜のピストン移動方向の長さが、前記スカート部のピストン周方向の端部でのピストン移動方向長さの全域に亘る程度に設定されている請求項1に記載のエンジンのピストン。
前記スカート部のピストン移動方向の端部に、前記スカート部の表面を落とし込んでなる凹入ポケット部が形成されている請求項1〜4の何れか一項に記載のエンジンのピストン。
前記スカート部の表面におけるピストンピンの軸心方向と交差する方向の部分に形成されている前記斑点状の樹脂皮膜は、ショットピーニング加工済みの前記ピストンの表面に形成されている請求項1〜5の何れか一項に記載のエンジンのピストン。
スラスト側の前記スカート部におけるクランク軸から遠い側の端部、及び/又は反スラスト側の前記スカート部におけるクランク軸に近い側の端部に、ピストン周方向に延びる周縁形状の樹脂皮膜が形成されている請求項1〜6の何れか一項に記載のエンジンのピストン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、樹脂皮膜が施されているピストンにおいて、さらなる鋭意研究により、凹部へのエンジンオイルの供給を改善することができる、エンジンのピストンを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、スカート部1の表面1aに樹脂皮膜2と凹部3とを備えたエンジンのピストンにおいて、
前記スカート部1の表面1aに斑点状の樹脂皮膜2aが分散配置され、隣り合う前記斑点状の樹脂皮膜2aどうしの間の前記スカート部1の表面1aと、前記隣り合う樹脂皮膜2a,2aとにより形成される凹部3で網目状溝4が形成され、
前記スカート部1におけるピストン周方向の端部には、ピストン移動方向6に延びる外縁形状の樹脂皮膜2bが形成され
、
前記外縁形状の樹脂皮膜2bは、前記外縁形状の樹脂皮膜2b及びこれと隣り合う前記斑点状の樹脂皮膜2aとの間にも前記網目状溝4が形成されるように、ピストン周方向で内向きの突起部10,28,22を有する状態に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のエンジンのピストンにおいて、
前記外縁形状の樹脂皮膜2bのピストン移動方向6の長さが、前記スカート部1のピストン周方向8の端部でのピストン移動方向6長さの全域に亘る程度に設定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のエンジンのピストンにおいて、
前記外縁形状の樹脂皮膜2bは、そのピストン移動方向6の中央部がピストン周方向8に突出する孕み出し形状に設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のエンジンのピストンにおいて、
前記斑点状の樹脂皮膜2aが六角形状又は/及び鼓形状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載のエンジンのピストンにおいて、
前記スカート部1のピストン移動方向6の端部に、前記スカート部1の表面1aを落とし込んでなる凹入ポケット部23が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載のエンジンのピストンにおいて、
前記スカート部1の表面1aにおけるピストンピンの軸心P方向と交差する方向の部分に形成されている前記斑点状の樹脂皮膜2aは、ショットピーニング加工済みの前記ピストン12の粗表面24に形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載のエンジンのピストンにおいて、
スラスト側12aの前記スカート部1におけるクランク軸から遠い側の端部、及び/又は反スラスト側12bの前記スカート部1におけるクランク軸に近い側の端部に、ピストン周方向8に延びる周縁形状の樹脂皮膜2cが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、スカート部の広域に亘って、エンジンオイルの保持領域を形成することができる。スカート部の表面に、斑点状の樹脂皮膜が分散配置され、斑点状の樹脂皮膜どうしの間に形成される凹部で網目状溝が形成されているので、スカート部の広域に亘って、エンジンオイルの保持領域を形成することができる。
スカート部の表面が複数個に分かれてテクスチャリングされることにより、エンジオイルのピストン移動方向通路を設けることができ、エンジンオイルを各部により有効に供給することができる。凹部によって網目状溝が形成されているので、ピストンの往復運動を利用して凹部にオイルを積極的に供給することができる。
【0016】
スカート部における樹脂皮膜のコーティングでなる網目状溝のピストン周方向の両端部が、外縁状の樹脂皮膜で閉塞又は狭められているから、スカート部に導入されたエンジンオイルがピストン周方向に逃げ難くなり、スカート部に(主に網目状溝に)オイルが保持され易くなる。
オイルをスカート部に効率良く保持できるので、オイルによる流体膜には正圧が発生し、摺動面を浮上させ、フリクション低減が図れ、従って、燃費低減の効果が期待できる。また、エンジンの耐焼き付き性も向上するようになる。特に、寒冷時でもオイル保持ができる利点もある。
その結果、樹脂皮膜が施されているピストンにおいて、さらなる鋭意研究により、凹部へのエンジンオイルの供給を改善することができる、エンジンのピストンを提供することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、外縁形状の樹脂皮膜のピストン移動方向の長さが、スカート部のピストン周方向の端部でのピストン移動方向長さの全域に亘る程度に設定されているから、スカート部に導入されたエンジンオイルがピストン周方向により逃げ難くなり、スカート部でのエンジンオイルの保持効果が強化される利点がある。
【0018】
請求項3の発明によれば、外縁形状の樹脂皮膜のピストン移動方向の中央部が、ピストン周方向に突出する孕み出し形状に設定されているから、ピストンの摺動移動に伴って、孕み出しによる傾斜辺がガイドとなって、エンジンオイルをピストン周方向でスカート部の中央部に寄せる作用が生じる。従って、ピストン移動に伴って、スカート部にあるエンジンオイルは、スカート部におけるシリンダとの当りの強い箇所に誘導でき、潤滑性能の向上に寄与できる利点が得られる。
【0019】
請求項4の発明によれば、斑点状の樹脂皮膜が六角形状に設定されていれば、ピストン上下移動により、エンジンオイルが良好に網目状溝に供給されて円滑な潤滑作用が得られる。
また、斑点状の樹脂皮膜が鼓形状に形成されていれば、ピストン移動に伴い、ピストン周方向で隣り合う斑点状の樹脂皮膜どうしの間の凹部を移動する潤滑油は、凹部の開口部から出て、ピストン移動方向で相隣る斑点状の樹脂皮膜の端部にぶつかって受止められたり、跳ね返されたりし、エンジンオイルの保持機能に優れる利点がある。
【0020】
請求項5の発明によれば、スカート部のピストン移動方向の端部に、スカート部の表面を落とし込んで形成されている凹入ポケット部には、オイルを溜めておくことができる。従って、スカート部のオイルポケットとして機能させることが可能になり、より一層潤滑性能向上に寄与できる利点がある。
【0021】
請求項6の発明によれば、スカート部の表面におけるピストンピンの軸心方向と交差する方向の部分に形成されている斑点状の樹脂皮膜は、ショットピーニング加工済み表面に形成されているから、通常の表面にコーティングされている斑点状の樹脂皮膜に比べて剥がれ難くなり、耐摩耗性向上に寄与できる効果がある。
【0022】
請求項7の発明によれば、周縁形状の樹脂皮膜は、スカート部の網目状溝のピストン移動方向端をピストン周方向に覆う連続壁として機能し、網目状溝に取り込んだオイルをピストン移動方向に逃がし難くし、従って、耐摩耗性向上に寄与できる効果がある。
この場合、周縁形状の樹脂皮膜は、スラスト側のスカート部においてはクランク軸から遠い側の端部に設け、反スラスト側のスカート部においてはクランク軸に近い側の端部に設けるのが、強くシリンダに押し付けられる箇所にエンジンオイルが保持され易くなって好都合である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明によるピストンの実施の形態を、立形ディーゼルエンジンのピストンについて、図面を参照しながら説明する。各図において、簡単のため、円筒面であるスカート部1の樹脂皮膜2は、いずれも展開した形状として描いてある。以下、潤滑油であるエンジンオイルは、単にオイルと略称する。
【0025】
立形ディーゼルエンジン及びそのピストンは、
図1に示すように、シリンダ14の上部にシリンダヘッド15が組み付けられており、ピストン12は、シリンダ14に内嵌され、ピストン12にコンロッド16を介してクランク軸17が連動連結されている。
シリンダヘッド15には、吸気弁18と排気弁19と燃料インジェクタ20が取り付けられている。
【0026】
図1及び
図2に示されるように、このピストン12は、ピストンリング13(
図2では図示省略)が装備されるピストンヘッド部12Aと、その下方のピストンロワー部12Bとを有している。ピストンロワー部12Bは、ピストンヘッド部12Aのような円筒形ではなく、ピストン移動方向6の方向視で円弧面を呈するスカート部1の一対と、それらの間のピン連結部12pとを備える異形部分である。スカート部1は、スラスト側12aと反スラスト側12bとのそれぞれに位置する状態に形成されている。
【0027】
スカート部1は、
図1,2に示されるように、ピストン移動方向6でクランク軸側の端縁が傾斜している周方向端部1A,1Aと、それらの間で、かつ、クランク軸側に突出した周方向中央部1Bとを有する形状に形成されている。つまり、スカート部1は、ピストン周方向8で中央に寄るに従って下方に延びる形状に設定されている。
図1は、ピストン12が下方に移動中の状態を描いたものである。なお、26は、ピストンリング13(
図1を参照)を装着するための周溝であり、27はオイル孔である。
【0028】
ピストン12のスカート部1の表面1aには、樹脂皮膜2と、樹脂皮膜2により形成される凹部3とを備えている。ピストン12本体の素材には、鋳鉄またはアルミ合金等の金属が用いられている。樹脂皮膜2には、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂が用いられている。樹脂皮膜2には、遷移金属酸化物、グラファイト等の無機固体潤滑剤が含まれている。
次に、スカート部1に施されている樹脂皮膜2や凹部3、或いは樹脂皮膜2のコーティングパターンなどについて説明する。
【0029】
〔実施形態1〕
図2(a),(b)に示されるように、スカート部1の表面1aに斑点状の樹脂皮膜2a(樹脂皮膜2の一例)が分散配置され、隣り合う斑点状の樹脂皮膜2aどうしの間のスカート部1の表面1aと、隣り合う斑点状の樹脂皮膜2a,2aとにより形成される凹部3により網目状溝4が形成されている。網目状溝4は、斑点状の樹脂皮膜2a,2aの間に形成され、その内底面は、斑点状の樹脂皮膜2aで覆われていないスカート部1の金属表面1aで形成されている。
【0030】
スカート部1に形成されている斑点状の樹脂皮膜2a及び凹部3は、ピストン12のスラスト側12aと反スラスト側12bとに存在している。スラスト側12aとは、爆発工程においてクランク軸17の回転方向とコンロッド16の傾斜とによりピストン12が下降する時に、爆発圧力でピストン12がシリンダ14に押し付けられる側を言い、反スラスト側12bはその反対側を言う。
【0031】
図2(a)に示されるように、斑点状の樹脂皮膜2aは六角形状(正六角)に形成されており、隣り合う斑点状の樹脂皮膜2a,2aが若干の隙間(=凹部3=網目状溝4)を空けて縦横に規則正しく配列する状態でピストン12の表面1aに形成されている。
従って、隣り合う斑点状の樹脂皮膜2a,2aは、ピストン移動方向6及びピストン周方向8には互いに重なる状態に配列されている。
図2(a)の例では、斑点状の樹脂皮膜2aはピストン移動方向6に、周方向端部1Aでは5個(又は6個)並び、周方向中央部1Bでは7個(又は6個)並んでいる。つまり、多数の亀の甲形状の樹脂皮膜2aが縦横に配列されている樹脂皮膜2のコーティングパターンである。
【0032】
斑点状の樹脂皮膜2aの複数が、スカート部1のピストン周方向8に所定間隔を置いて配置されて樹脂皮膜列5を形成しており、その樹脂皮膜列5の複数がピストン周方向に半ピッチずらしてピストン移動方向6に配列されており、それによって千鳥格子状に複数列配置されている。
樹脂皮膜列5の隣り合う斑点状の樹脂皮膜2a,2aどうしの間に形成される溝部分7(=凹部3)のピストン移動方向6側の両端開口部7a,7bは、ピストン移動方向6で隣り合う樹脂皮膜列5の斑点状の樹脂皮膜2a、詳しくは、斑点状の樹脂皮膜2aにおけるピストン周方向8の中心に対向する構成とされている。
【0033】
そして、
図2に示されるように、スカート部1におけるピストン周方向8の双方の端部(=周方向端部1Aの端部)には、ピストン移動方向6に延びる外縁形状の樹脂皮膜2bが形成されている。外縁形状の樹脂皮膜2bは、ピストン移動方向6に長い矩形の帯状部分9に、斑点状の樹脂皮膜2aの横半分部10をピストン移動方向6に一つ飛びで3つ足して一体化したような、ピストン移動方向6に長くて大きい樹脂皮膜2に形成されている。
【0034】
外縁形状の樹脂皮膜2bのピストン移動方向6の長さである縦長さLは、スカート部1のピストン周方向の端部でのピストン移動方向長さの全域に亘る程度に設定されている。詳しくは、縦長さLは、ピストン移動方向6に並ぶ5つの樹脂皮膜列5に亘る長さであって、周方向端部1Aの端部におけるピストン12の表面1aのピストン移動方向6の全長D〔
図2(a)参照〕より少し短い長さである。
【0035】
実施形態1によるピストン12においては、スカート部1の広域に亘って、オイルの保持領域を形成することができる。スカート部1の表面1aに、斑点状の樹脂皮膜2aの多数が分散配置され、斑点状の樹脂皮膜2aどうしの間に形成される凹部3で網目状溝4が形成されているので、スカート部1の広域に亘って、オイルの保持領域を形成することができる。
【0036】
スカート部1のピストン周方向8で隣り合う斑点状の樹脂皮膜2aどうしの間に形成される凹部3が、ピストン移動方向6で別の斑点状の樹脂皮膜2aと隣り合う状態に設定されているので、ピストン12の往復移動によって凹部3の両端開口部から流出するオイルがピストン移動方向6で隣の斑点状の樹脂皮膜2aに衝突し、凹部3からのエンジンオイルの流出が抑制され、網目状溝4のオイル保持機能を高めることができる。
【0037】
スカート部1の表面1aが複数個に分かれてテクスチャリングされることにより、オイルの上下方向(ピストン移動方向6)通路を設けることができ、オイルを各部により有効に供給することができる。ピストン移動方向6で隣り合う樹脂皮膜列5,5どうしをピストン周方向8に互いに位置ずれさせて千鳥格子状に配置してあるので、ピストン12の往復運動を利用して凹部3にオイルを積極的に供給することができる。
【0038】
そして、スカート部1における樹脂皮膜2,2a,2bのコーティングでなる網目状溝4のピストン周方向8の両端部が、外縁状の樹脂皮膜2bで閉鎖されているから、スカート部1に導入されたオイルがピストン周方向に逃げ難くなり、スカート部1に(主に網目状溝4に)オイルが保持され易くなる。スカート部1のピストン周方向8の両端部の剛性が大きい箇所である場合には、樹脂皮膜2をシリンダライナと接触させられる。
また、オイルをスカート部1に効率良く保持できるので、オイルによる流体膜には正圧が発生し、摺動面を浮上させ、フリクション低減が図れ、従って、燃費低減の効果が期待できる。また、エンジンの耐焼き付き性も向上するようになる。特に、寒冷時でもオイル保持ができる利点もある。
【0039】
〔実施形態2〕
樹脂皮膜2のピストン12の樹脂コーティングパターンは、
図3に示されるものでも良い。多数の斑点状の樹脂皮膜2aは、
図3(a),(b)に示されるように、鼓形状、詳しくは、ピストン移動方向6にやや長い鼓形状に形成されている。実施形態1のものと同様に、斑点状の樹脂皮膜2aがピストン周方向8に規則正しく並んで形成される樹脂皮膜列5の複数が、ピストン周方向に半ピッチずらしてピストン移動方向6に配列され、千鳥格子状に複数列配置されている。
【0040】
従って、
図3(b)に示されるように、樹脂皮膜列5の隣り合う斑点状の樹脂皮膜2a,2aどうしの間に形成される溝部分7(=凹部3)のピストン移動方向6側の両端開口部7a,7bが、ピストン移動方向6で隣り合う隣の樹脂皮膜列5の斑点状の樹脂皮膜2aに、詳しくは、その樹脂皮膜2aにおけるピストン周方向8の中心に対向する構成となっている。
そして、実施形態2のピストン12では、斑点状の樹脂皮膜2aのピストン移動方向6でのV字状端部における左右の端面11,11のなす挟角θは120度(又は120度±20度)に設定されている。なお、θの値は、60度≦θ<180度、とすることで効果が得られるが、より良い効果を狙うには「120度±20度」が良い。
【0041】
実施形態2によるピストン12においては、ピストン12の移動(昇降)に伴い、ピストン周方向8で隣り合う斑点状の樹脂皮膜2a,2aどうしの間の凹部3、即ち溝部分7を移動する潤滑油は開口部7aから出て、ピストン移動方向6で相隣る斑点状の樹脂皮膜2a端部にぶつかって受止められるとともに、一対の端面11,11により跳ね返される。
隣り合う斑点状の樹脂皮膜2aの端部どうしによりなる、ピストン周方向8に延びるギザギザ状の凹部は、潤滑油の保持機能に優れるオイル溜め溝に構成されている。
【0042】
図3(a),(b)に示されるように、スカート部1におけるピストン周方向8の端部に、ピストン移動方向6に延びる外縁形状の樹脂皮膜2bが形成されている。外縁形状の樹脂皮膜2bのピストン移動方向の長さLは、スカート部1のピストン周方向8の端部でのピストン移動方向6の長さDの全域に亘る程度に設定されている。
この場合の外縁形状の樹脂皮膜2bも、ピストン移動方向6で並ぶ複数列(10列)の樹脂皮膜列5のピストン周方向8で端の斑点状の樹脂皮膜2aを繋ぎ、かつ、斑点状の樹脂皮膜2aを包含したようなピストン周方向8で内向きの突起部28を有する縦長形状のものに形成されている。
【0043】
〔実施形態3〕
図4(a)に示されるように、
図2(a)のピストン12において、スカート部1の上端部に樹脂皮膜2のない部分を設けた構成のものでも良い。即ち、最上列の樹脂皮膜列5を、スカート部1の上端縁から少し(斑点状の樹脂皮膜2aの一つ分程度の上下幅)下方に離して設けたピストン12である。樹脂皮膜2の無いピストン周方向8に長い表面1aによる帯状裸面部21が形成されている。
【0044】
また、
図4(b)に示されるように、外縁形状の樹脂皮膜2bに、その帯状部分9を上方に延ばした延長帯部9aを設け、帯状裸面部21のピストン周方向8の両側がピストン周方向8に遮断されるように構成されたピストン12でも良い。
スカート部1の上端部に樹脂皮膜2の無い部分である帯状裸面部21を設けてあるので、網目状溝4など樹脂皮膜2の部分に帯状裸面部21からオイルが導入され易くなる。
図4(b)のように、ピストン周方向8に樹脂皮膜2の壁である延長帯部9aを有する帯状裸面部21を設ければ、オイルの樹脂皮膜2への取り込み易さがより良くなる。
【0045】
〔実施形態4〕
図5(a)に示されるように、スカート部1のピストン周方向8の両端部にある外縁形状の樹脂皮膜2bは、そのピストン移動方向6の中央部がピストン周方向8に、詳しくは、互いの存在方向である内向きに突出する孕み出し形状に設定されているピストン12でも良い。図示の外縁形状の樹脂皮膜2bは、上下対称で3箇所の角部が削られた略三角形に形成されており、隣接する斑点状の樹脂皮膜2aは、それぞれ外縁形状の樹脂皮膜2bとの間に隙間である凹部3が形成されるように、亀の甲の一部が削り取られたような形状とされている。
【0046】
前記の孕み出し形状の外縁形状の樹脂皮膜2bを有するピストン12では、
図5(b)に示されるように、上下摺動移動に伴って、上下の傾斜辺22,22がオイルをピストン周方向8でスカート部1の中央部に、即ち、シリンダ14(
図1参照)との当りの強い部分に誘導できる、という利点が得られる。網目状溝4の幅がピストン移動方向6の中央部にいくほど狭くなり、流路が絞られる構成である。
【0047】
〔実施形態5〕
図6(a)に示されるように、スカート部1のピストン移動方向6の端部に、スカート部1の表面1aを落とし込んでなる凹入ポケット部23が形成されているピストン12でも良い。凹入ポケット部23は、
図6(b)にも示されるように、スカート部1の周方向中央部1Bの下端部で樹脂皮膜2の圏外に、ピストン周方向8に長い状態で形成され、下側の凹み傾斜角度αが、上側の凹み傾斜角度βよりも大きい湾曲状の断面形状を呈している。
【0048】
凹入ポケット部23にはオイルを溜めておくことができるので、スカート部1のオイルポケットとして機能させることが可能である。凹入ポケット部23の傾斜角度をα>βとしてあるので、ピストン12が上昇移動するときに凹入ポケット部23へオイルを溜めやすく、下降移動するときに溜めたオイルをスカート部1に供給できる良さがある。図示は省略するが、凹入ポケット部23をスカート部1の上端部に設ける場合には、前述の角度設定を逆にしてα<βとするのが望ましい。
【0049】
〔実施形態6〕
図7(a)に示されるように、スカート部1の表面1aにおけるピストンピン(図示省略)の軸心P方向と交差する方向の部分に形成されている斑点状の樹脂皮膜2aは、ショットピーニング加工済みのピストン12の表面、即ち粗表面24に形成された構成のピストン12でも良い。詳しくは、スカート部1における仮想線で囲まれた部分、つまりは周方向中央部1Bの表面1aにショットピーニング加工による粗表面24が形成されている。
【0050】
ショットピーニング加工による粗表面24にコーティングされている斑点状の樹脂皮膜2aは、通常の表面1aにコーティングされている斑点状の樹脂皮膜2aに比べて剥がれ難くなり、耐摩耗性向上に寄与できる効果がある。
【0051】
〔実施形態7〕
図7(b)に示されるように、スカート部1の各周方向端部1Aにおける周方向中央部1B寄りの端部に、ピストン移動方向6に延びる条溝25が形成されているピストン12でも良い。各条溝25は、表面1aを凹ませてなる細長い縦溝である。条溝25の上端は、ピストンリング装着用の溝である周溝26の部位に形成されているオイル孔27に連なり、下端は、ピストン移動方向6の途中部位、詳しくは、周方向端部1Aの上下中央より若干下端に寄った位置まで延ばされている。
【0052】
この実施形態7のピストン12では、ピストン12の昇降移動に伴い、条溝25を通って樹脂皮膜2の部位へ積極的にオイルを供給させることが可能になる。従って、油膜切れがより生じ難くなり、燃費向上や騒音防止に寄与可能となる利点がある。
【0053】
〔実施形態8〕
図8(a)に示されるように、反スラスト側12bのスカート部1におけるクランク軸17(
図1参照)に近い側の端部に、ピストン周方向8に延びる周縁形状の樹脂皮膜2cが形成されているピストン12でも良い。また、
図8(b)に示されるように、スラスト側12aのスカート部1におけるクランク軸17(
図1参照)から遠い側の端部に、ピストン周方向8に延びる周縁形状の樹脂皮膜2cが形成されているピストン12でも良い。
【0054】
スカート部1の下端部に形成されている周縁形状の樹脂皮膜2cは、
図8(a)に示されるように、各周方向端部1Aの下端縁及び周方向中央部1Bの下端縁のそれぞれに沿う形状に形成されている。スカート部1の上端部に形成されている周縁形状の樹脂皮膜2cは、
図8(b)に示されるように、斑点状の樹脂皮膜2aに合致するギザギザ形状の下縁と、直線状の上縁とを有する形状に設定されている。各周縁形状の樹脂皮膜2cは、ピストン周方向8の長さが、スカート部1のピストン周方向8長さの全長に亘る程度のものに設定されている。
【0055】
図8(a)の周縁形状の樹脂皮膜2cは、スカート部1の網目状溝4の下端をピストン周方向に覆う下端連続壁としても機能し、網目状溝4に取り込んだオイルを下方に逃がし難くすることができる。また、
図8(b)の周縁形状の樹脂皮膜2cは、網目状溝4の上端をピストン周方向に覆う上端連続壁としても機能し、網目状溝4に取り込んだオイルを上方に逃がし難くすることができる。
【0056】
〔実施形態9〕
図9(a)に示されるように、下端の周溝26の部位に形成されているオイル孔27が、下方に延ばした孔形状とされたピストン12でも良い。径外側に上下に長い開口部を備えたオイル孔27は、スカート部1の上端部に亘っており、
図9(b)に示されるように、断面形状は、下側が凹湾曲状に広がる傾斜面27aに形成されている。
【0057】
下に長いオイル孔27により、そのオイル孔27から樹脂皮膜2の部位にオイル供給がされ易くなる効果が期待できる。また、オイル孔27における樹脂皮膜2側となる孔壁面が凹湾曲状の傾斜面27aとされているので、オイル孔27から樹脂皮膜2部位へのオイル供給が促進される利点もある。