(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記各シール部材は、前記プラグ本体の下面に設けられており、前記ストレッチチューブの開口周縁部に当接することを特徴とする請求項1に記載の原子炉再循環ポンプ用プラグ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る原子炉再循環ポンプ用プラグの実施形態について図面を参照して説明する。各実施形態において、同様の部分には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
【0010】
(第一実施形態)
初めに、原子炉再循環ポンプ用プラグ10(
図2,
図3参照、以下、プラグ10という)が装着される原子炉再循環ポンプ1について
図1を参照して説明する。
原子炉再循環ポンプ1は、
図1に示すように、原子炉圧力容器2の下部に設置されている。原子炉再循環ポンプ1は、原子炉圧力容器2の周方向に所定の間隔を空けて複数設置されている(不図示)。原子炉再循環ポンプ1によって原子炉圧力容器2の水が強制循環させられ、図示しない炉心が冷却される。
【0011】
原子炉再循環ポンプ1は、ポンプ部1aとモータ部1bとを備えている。ポンプ部1aは、上部のディフューザ4内に配置されるインペラ3aを備える。インペラ3aは、インペラシャフト3cを介してモータ部1bにより駆動される。デフューザ4は、インペラ3aを同心で包囲している。
ディフューザ4内には、
図2に示すように、ストレッチチューブ5の開口部5aが開口している。原子炉再循環ポンプ1の点検時には、後記するように、開口部5aをプラグ10で閉塞することにより、原子炉圧力容器2内の水が抜けるのを阻止している。
【0012】
モータ部1bは、
図1に示すように、モータケーシング6内に、図示しないロータと、ステータ6aとが収容されて構成されている。モータケーシング6の上部6bは、原子炉圧力容器2に挿入されている。
【0013】
次に、プラントの定期点検時の原子炉再循環ポンプ1およびプラグ10の詳細について説明する。
定期点検時には、インペラシャフト3c(
図1参照、以下同じ)とモータ部1bの点検がなされるため、
図2に示すように、インペラシャフト3cは取り外された状態にする。なお、インペラシャフト3cの取り外しは、
図3に示すように、原子炉建屋50のオペレーションフロア51に設置される燃料取替機52を用いて行われる(取り外しの様子は不図示)。なお、インペラシャフト3cを外しても、原子炉再循環ポンプ1の下端部は、
図2に示すように、カバー部材6cで塞がれているため、水抜けを生じることがない。原子炉圧力容器2は、
図3に示すように、原子炉建屋50の構造体54に支持されている。
【0014】
インペラシャフト3cの取り外し後、原子炉再循環ポンプ1の上部のディフューザ4内に、プラグ10を暫定的に装着する。プラグ10は、
図3に示すように、燃料取替機52のホイストワイヤ53に吊り下げて原子炉圧力容器2内に下降される。そして、約30m下に設置されている原子炉再循環ポンプ1のディフューザ4内(
図2参照)に挿入される。ホイストワイヤ53の下端には、把持装置53aが取り付けられている。把持装置53aのチャック部53bでプラグ10を把持している。
【0015】
次に、プラグ10の構成について、
図4(a)(b)を参照して説明する。プラグ10は、プラグ本体11と、把持部12と、を備えている。プラグ本体11は、略円柱状を呈しており、原子炉再循環ポンプ1の上部のディフューザ4内に挿入可能である。ディフューザ4内には、前記したように、ストレッチチューブ5の開口部5aが開口しており、プラグ本体11は、開口部5aの開口周縁部4aに着座可能である。プラグ本体11の下面11aには、環状のシール部材として大小2つのOリング13,14が同心円状に取り付けられている。Oリング13,14は、プラグ本体11の下面11aに設けられた図示しない蟻溝等に嵌め込まれて位置決めされており、下面11aから脱落不能となっている。
【0016】
図4(b)に示すように、プラグ10を装着することによって、2つのOリング13,14が、開口周縁部4aに当接する(圧着される)ようになっている。これにより、ストレッチチューブ5の開口部5aが閉塞される。
【0017】
2つのOリング13,14は、同じ材料からなるものを採用してもよいし、異なる材料からなるものを採用してもよい。Oリング13,14は、例えば、エチレンプロピレンゴムやクロロプレンゴム等の材料からなるものを採用することができる。エチレンプロピレンゴムは、耐放射線性に優れている。また、クロロプレンゴムは、耐水性に優れている。
なお、Oリング13,14の断面形状は、円形のものに限られることはなく、シール性を維持できるものであれば、楕円形状、三角形状、多角形状等、種々の形状のものを採用することができる。
【0018】
把持部12は、
図4(a)に示すように、把持装置53a(
図3参照)のチャック部53bで把持される部分である。チャック部53bで把持部12を把持し、燃料取替機52(
図3参照)のホイストワイヤ53(
図3参照)を下降させることで、原子炉再循環ポンプ1にプラグ10を装着することができる。また、原子炉再循環ポンプ1の点検後にホイストワイヤ53を上昇させることで、原子炉再循環ポンプ1からプラグ10を取り外すことができる。
【0019】
以上説明した本実施形態のプラグ10によれば、プラグ10の装着によって、ディフューザ4の底面(開口周縁部4a)に対して2つのOリング13,14が当接する構造(二重のシール構造)であるので、構造を複雑化することなくシール性の向上を図ることができる。
【0020】
また、各Oリング13,14は、プラグ本体11の下面11aに設けられており、ストレッチチューブ5の開口周縁となる開口周縁部4aに当接するので、プラグ本体11の自重を利用して開口部5aを好適に閉塞することができる。したがって、構造を複雑化することなくシール性の向上を図ることができる。
【0021】
また、各Oリング13,14を異なる材料で構成することにより、Oリング13,14による機能性の向上、例えば、材料の特性を利用して、耐放射線性の向上や耐水性の向上を図ることができる。
また、Oリング13,14の弾力性を相互に異ならせてもよい。
【0022】
(第二実施形態)
図5,
図6を参照して第二実施形態の原子炉再循環ポンプ用プラグについて説明する。本実施形態が前記第1実施形態と異なるところは、プラグ10Aのプラグ本体11の下面11aに、下方へ向けて突出する突部15を設けた点にある。
【0023】
図5,
図6(a)(b)に示すように、本実施形態の原子炉再循環ポンプ1は、ストレッチチューブ5の開口部5aが面取りされて傾斜面5eを備えたテーパ状に形成されている。
突部15は、ストレッチチューブ5の傾斜面5eに対応する傾斜面15eを備えたテーパ状に形成されている。これにより、突部15は円錐台状を呈している。
【0024】
プラグ本体11の平らな下面11aには、
図6(a)に示すように、大径のOリング13が配置されている。また、突部15の傾斜面15eには、小径のOリング14が配置されている。各Oリング13,14とも、図示しない蟻溝に嵌め入れられて位置決めされ、脱落不能となっている。
【0025】
図6(b)に示すように、プラグ10Aをディフューザ4内に装着すると、Oリング13が開口部5aの周縁部となる開口周縁部4aに当接するとともに、Oリング14が開口部5aの傾斜面5eに当接する。つまり、プラグ10Aの装着によって、平らな開口周縁部4aとこれに連続する傾斜面5eとの二箇所(二つの面)で2つのOリング13,14が当接する構造(二重のシール構造)となっている。
【0026】
以上説明した本実施形態のプラグ10Aによれば、プラグ10Aの装着によって、ディフューザ4の底面(開口周縁部4a)と開口部5aの傾斜面5eとに対して2つのOリング13,14が当接する構造(二重のシール構造)であるので、構造を複雑化することなくシール性の向上を図ることができる。
また、突部15が開口部5aの内側に挿入されて係合するので、ディフューザ4に対するプラグ10Aの径方向の収まりがよく、シール性を好適に維持することができる。
【0027】
なお、Oリング13,14の両方を突部15の傾斜面15eに対して配置してもよいし、Oリング13やOリング14の数を増やして、傾斜面15aや下面11aに配置してもよい。
また、下面11aと傾斜面15eとの隅部(角部)にシール部材13,14を配置してもよい。
【0028】
(第三実施形態)
図7,
図8を参照して第三実施形態の原子炉再循環ポンプ用プラグについて説明する。本実施形態が前記第一,第二実施形態と異なるところは、プラグ10Bの装着時に自動的に膨出してシール作用をなすシール部材18を設けた点にある。
【0029】
プラグ10Bは、
図7(b)に示すように、プラグ本体11Bと把持部12とを備えている。プラグ本体11Bは、有底筒状のシリンダケース16と、シリンダケース16の内部16aに軸方向摺動可能に配置されるピストン17と、を備えている。
【0030】
シリンダケース16の外面には、シール部材18が周状に配置されている。シール部材18は、断面半円状を呈してシリンダケース16の外面に取り付けられており、内側に気体としての空気が導入される空間部を有している。このシール部材18の空間部は、シリンダケース16の壁内に形成された導入孔18aを通じてシリンダケース16の内部16aに連通している(
図7(a)(b)参照)。シール部材18は、導入孔18aを通じて空間部に空気が導入されることで、径方向外側に膨出可能である。シール部材18は、膨出した状態で、
図9(a)に示すように、ディフューザ4の対向する内面4eに周状に当接するようになっている。
【0031】
シリンダケース16の内面には、
図7(b)に示すように、凹部16bが形成されている。また、シリンダケース16の上部には、貫通孔16fが形成されている。貫通孔16fには把持部12の連結部12aが挿通されている。
【0032】
シリンダケース16の下面16cは平らに形成されている。下面16cには、第一実施形態と同様に、図示しない蟻溝にを介してOリング13,14が位置決めされて脱落不能に取り付けられている(
図7(c)参照)。
【0033】
ピストン17は、円柱状を呈しており、Oリング17aを介してシリンダケース16の内部16aに気密状態(液密状態)で収容されている。ピストン17の外周部には、径方向外側に向けて付勢されたばね部材17bが取り付けられている。ばね部材17bは、シリンダケース16の凹部16bに付勢力をもって係合可能である。ばね部材17bは、凹部16bに係合することで、ピストン17がこの位置よりも下方に自重によって下降しないように保持する役割をなす。
【0034】
ピストン17の上端部には、棒状の連結部12aを介して把持部12が連結されている(
図7(a)参照)。連結部12aは、シリンダケース16の貫通孔12fに対して若干の隙間を有して挿通されている。
【0035】
次に、プラグ10Bの作用について説明する。
図8(a)に示すように、前記実施形態と同様に、チャック部53bで把持部12を把持し、燃料取替機52(
図3参照)のホイストワイヤ53(
図3参照)を下降させることで、プラグ10Bをディフューザ4内に挿入する。このとき、シリンダケース16はピストン17を介して吊り下げられるので、ピストン17は、シリンダケース16の内部16aにおいて上端部に位置している。
【0036】
図8(b)に示すように、ディフューザ4内にプラグ10Bが装着されたら、チャック部53bによるチャックを解除する。そうすると、
図9(a)に示すように、ピストン17が自重で下降する。この下降でピストン17で仕切られるシリンダケース16の内部16aの容積が減少し、内部16aの空気が導入孔18aを通じてシール部材18の空間部に導入される。これにより、シール部材18が径方向外側に向けて膨出し、ディフューザ4の内面4eに当接する。したがって、ディフューザ4とプラグ10Bとの間が径方向にシールされる。
【0037】
なお、プラグ10Bを取り外す場合には、
図9(b)に示すように、把持部12をチャック部53bで把持して燃料取替機52により上方へ持ち上げる。そうすると、ピストン17が上昇してシール部材18の空間部から導入孔18aを通じてシリンダケース16内に空気が戻される。これにより、シール部材18によるシールが解除され、プラグ10Bが取り外される。
【0038】
以上説明した本実施形態のプラグ10Bによれば、プラグ10Bの装着によって、ディフューザ4の底面(開口周縁部4a)に対して2つのOリング13,14が当接するとともに、ディフューザ4の内面4eに対して、シール部材18が当接する。したがって、三重のシール構造によりストレッチチューブ5の開口部5aを閉塞することができる。したがって、例えば、燃料取替機52(
図3参照)から気体を導入してシール部材18を膨出させるような構造とする場合に比べて、簡単な構造によりシール性の向上を図ることができる。
【0039】
本実施形態においても、Oリング13,14の数は適宜設定することができる。また、Oリング13,14のいずれか一方と、シール部材18とを
設ける構成としもよい。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、前記した各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、、前記第二実施形態の突部15を第三実施形態のプラグ本体11Bに対して設けてる等、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。