(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記サーペンタインバネは、前記第1機械共鳴構造の各試験質量の前記振動が、前記試験質量を支持する対応する前記サーペンタンバネに向かう方向および離れる方向に交互に変化するように構成されている、ことを特徴とする請求項5に記載のマイクロ電気機械的トランスデューサ。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本願発明のいくつかの実施形態が、例示として、添付する図面を参照して以下で説明される。
【
図1】
図1は、電気的パワーを供給するための、機械的振動エネルギーハーベスティングまたはスキャベンジングの使用を概略的に示す。
【
図2】
図2は、単純な振動駆動ジェネレータの一般的モデルの略示図である。
【
図3】
図3は、ひとつ以上の比較的低周波の横共鳴器が、比較的高周波の横共鳴器へ振動エネルギーを結合するように配置されている、本願発明の実施形態に従うエネルギーハーベスティングデバイスのブロック図である。
【
図4】
図4は、3つの低周波横共鳴器を含む、
図3に示すエネルギーハーベスティングデバイスのブロック図である。
【
図5】
図5は、比較的低周波の横共鳴器が、デバイスの低動作周波数範囲の帯域幅を増加させるべく、互いに対して結合された、
図4に示すエネルギーハーベスティングデバイスのブロック図である。
【
図6】
図6は、
図4のエネルギーハーベスティングデバイスの実施形態のコンピュータ生成モデルの画像である。
【
図7】
図7は、共鳴器試験質量を支持するサーペンタインバネを詳細に示す、
図6の比較的低周波の横共鳴器のひとつのコンピュータ生成モデルの画像である。
【
図8】
図8は、共鳴器試験質量を支持する細長いバネを詳細に示す、
図6の高周波横共鳴器のコンピュータ生成モデルを示す。
【
図9A】
図9Aは、
図6のエネルギーハーベスターを製造するプロセス中の、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)ウエハ(付加的な堆積層を含む)の略示断面図のセットを示す。
【
図9B】
図9Bは、
図6のエネルギーハーベスターを製造するプロセス中の、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)ウエハ(付加的な堆積層を含む)の略示断面図のセットを示す。
【
図9C】
図9Cは、
図6のエネルギーハーベスターを製造するプロセス中の、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)ウエハ(付加的な堆積層を含む)の略示断面図のセットを示す。
【
図9D】
図9Dは、
図6のエネルギーハーベスターを製造するプロセス中の、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)ウエハ(付加的な堆積層を含む)の略示断面図のセットを示す。
【
図10】
図10は、
図6に示す横共鳴構造を製造するのに使用されるフォトマスクの画像である。
【
図11】
図11は、高周波横共鳴器の可変コンデンサを形成する、かみ合いフィンガー電極のひとつを詳細に示す、
図8の高周波横共鳴器の製造例の一部の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図12】
図12は、約2μmの横方向間クリアランスを有する、かみ合いフィンガー電極の拡大図を示す走査電子顕微鏡画像である。
【
図13】
図13は、
図7の低周波構造のメッシュ3次元有限要素解析(FEA)モデルを示すコンピュータ生成画像である。
【
図14】
図14は、391.7Hzの周波数での、
図7および13の低周波構造の基本共鳴モデルを示すコンピュータ生成画像である。
【
図15】
図15は、309.5Hzの周波数での、第2の低周波構造の基本共鳴モデルを示すコンピュータ生成画像である。
【
図16】
図16は、230.2Hzの周波数での、第3の低周波構造の基本共鳴モデルを示すコンピュータ生成画像である。
【
図17】
図17は、974Hzの測定共鳴周波数で、さまざまな方法を使ってシミュレーションされ、および、実験的に測定された、かみ合いフィンガー電極を横切って印加されるピークツーピーク(pp)の交流電流(AC)電圧と、高周波横共鳴器の横変位の関係を示すグラフである。
【
図18】
図18は、1976Hzの測定共鳴周波数(周波数2倍効果による、構造体の基本および固有振動数の半分である)で、さまざまな方法を使ってシミュレーションされ、および、実験的に測定された、かみ合いフィンガー電極を横切って印加されるピークツーピーク(pp)の交流電流(AC)電圧と、高周波横共鳴器の横変位の関係を示すグラフである。
【
図19】
図19は、FEAシミュレーション用に使用された高周波横共鳴器の3次元固体モデルの平面図である。
【
図20】
図20は、3.46kHzの周波数で、高周波構造の第1横共鳴モードを示すコンピュータ生成画像である。
【
図21】
図21は、ひとつ以上の電気的負荷(典型的にひとつ以上の環境センサ、無線送信機、および、他のマイクロ電子コンポーネントを含む)に電力を付勢するためのエネルギーハーベスティングデバイスの典型的なアプリケーションを示すブロック図である。
【
図22】
図22は、機械的振動から電気的エネルギーを生成するための可変コンデンサを有する対応する高周波機械共鳴器を駆動するためのそれぞれ異なる共鳴周波数を有する3つの相互接続された低周波機械共鳴器を含む、本願発明に従う、マイクロ製造されたエネルギーハーベスターアセンブリの走査電子顕微鏡画像である。
【
図23】
図23は、セラミックパッケージ内にマウントされたエネルギーハーベスターアセンブリを含み、エネルギーハーベスターアセンブリと、セラミックパッケージの結合ピンとの間に電気的に接続された配線を含む、一体化されたダイの写真である。
【
図24】
図24は、ストロボ撮影およびマイクロシステムアナライザーを使って振動動作の画像を撮像しながら、
図22の高周波機械共鳴器の振動を駆動するべく、電気的駆動信号を使用するように構成されたテスト装置のブロック図である。
【
図25】
図25は、機械共鳴器を振動へ機械的に駆動するための電動シェイカー、および、機械共鳴器の振動の画像を撮像するためのマイクロシステムアナライザーを使って、
図22の個別の機械共鳴器の周波数応答を測定するためのテスト装置のブロック図である。
【
図26】
図26は、3.3kHzの周波数でシャープな共鳴を示す、一体駆動電極を横切って電気信号を印加することにより駆動される高周波機械共鳴器の周波数応答を示すボードプロットである。
【
図27A】
図27Aは、低周波機械共鳴器の周波数応答を示すボードプロットを含む。
【
図27B】
図27Bは、他の低周波機械共鳴器の周波数応答を示す他のボードプロットを含む。
【
図27C】
図27Cは、他の低周波機械共鳴器の周波数応答を示す他のボードプロットを含む。
【
図28A】
図28Aは、スイッチオフ状態の、電動シェイカーへ結合されたスティンガーロッドにマウントされたエネルギーハーベストアセンブリによって生成される出力を示すオシロスコープスクリーン画像である。
【
図28B】
図28Bは、電力増幅器を通じて電動シェイカーに印加された300Hzで3.0Vpp信号によって駆動される、電動シェイカーへ結合されたスティンガーロッドにマウントされたエネルギーハーベストアセンブリによって生成される出力を示すオシロスコープスクリーン画像である。
【
図29】
図29は、機械共鳴器の振動を駆動するのに使用される電動シェイカーおよびスティンガーを示す写真であり、挿入図は、スティンガーにマウントされたエネルギーハーベスティングアセンブリの拡大図を示し、顕微鏡対物レンズを使ってマイクロシステムアナライザーによって撮像されたものである。
【
図30】
図30は、電動シェイカーの外部の機械的振動の周波数と、エネルギーハーベスティングアセンブリによって生成される電気的パワー出力との関係を示すグラフである。
【
図31】
図31は、負荷抵抗値と、エネルギーハーベスティングアセンブリによって生成される電気パワー出力との関係を示すグラフである。
【
図32】
図32は、高周波共鳴器のかみ合いフィンガー電極に印加されるDCバイアスと、エネルギーハーベスティングアセンブリによって生成される電気パワー出力との関係を示すグラフである。
【
図33】
図33は、電動シェイカーの機械的振動からエネルギーハーベスティングアセンブリによって生成される電気的エネルギーを使って、発光ダイオード(LED)を付勢するのに使用されるエネルギーハーベスティングアセンブリを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、負荷および/またはエネルギー格納デバイス106に電気的エネルギーを与えるために、振動ソース104からの機械的振動の形式で周囲または環境エネルギーを獲得するエネルギーハーベスターまたはエネルギースカベンジャー102の使用を示す略示図である。したがって、このデバイスは、機械エネルギーを電気エネルギーに変換するため(概して、逆も同様)、電気機械的トランスデューサである。本願発明の実施形態は、環境調査の目的で、昆虫に取り付けられる電気回路を付勢するべく昆虫の運動エネルギーの一部を獲得するために、生きた昆虫に取り付けられたミクロ電気機械システム(MEMS)構造の文脈で説明される。しかし、ここで説明するデバイスおよび構造は、広範囲の振動ソースおよび振動周波数から、電気エネルギーおよび/または信号を生成するのに広く使用可能であり、より広範囲の使用可能性が存在することは当業者の知るところである。
【0028】
ここで説明する実施形態の文脈において、説明するエネルギーハーベスティングデバイスまたはアセンブリは、デバイスまたは構造が取り付けられた蜂の飛行および他の身体的動作から生じる機械的振動から電気的パワーを生成するように構成される。説明されるエネルギーハーベスターは、数平方ミリメートルの物理的寸法、数ミリメートル立方の体積を有し、それゆえ、蜂または他の生きた昆虫に取り付けるのに適している。ここで説明する電気機械的トランスデューサは、所望のアプリケーションの要求に応じて、異なる長さスケールの非常にさまざまな異なる構成で与えられることは当業者の知るところである。
【0029】
ここでは詳細に説明しないが、生成された電気エネルギーは、ひとつ以上の他のミクロンスケールのコンデンサ内に格納可能であり、引き続き、低パワー無線送信機および/または受信機のような集積回路および/または低パワーMEMSセンサを動作するのに十分な数百マイクロワット、または、ミリワット以下までの電気的パワーを与えるのに利用される。付加的に、ここで説明されるエネルギーハーベスティングデバイスは、メンテナンス不要な自立パワーシステムを与える微小バッテリーおよび/または顕微鏡ソーラーセルと関連して使用されてもよい。
【0030】
したがって、ここで説明するエネルギーハーベスティングデバイスは、メンテナンスがいらない、自立タイプのシステムを与えるのに使用され、アクセスが困難および/または厳しい環境において動作するマイクロシステムを付勢するのに特に有用である。ここで説明するエネルギーハーベスティングデバイス/構造は、マイクロバッテリーおよびマイクロ燃料セルのような他のハーベスティングデバイスに比べ、寿命が長く、安定性が高く、かつ、環境への影響がより少ないことが期待される。
【0031】
図2は、電気的機械振動エネルギーハーベスターの一般的な動作原理を示す。単純に置かれると、外部振動202によって生成される運動エネルギーの一部が、ひとつ以上の可変コンデンサの形式のダンピングコンポーネント208に結合され、かつ、バネ結合204されたイナーシャまたは試験質量206を通じて、電気エネルギーに変換される。MEMESコンデンサは製造が比較的単純であり、概して、他の形式の電気機械的トランスデューサ(ピエゾ電気および電磁気トランスデューサなど)に比べより小さい物理的寸法を有しているため、可変コンデンサを通じた静電変換が、ここで説明するエネルギーハーベスターとして選択されている。
【0032】
静電変換はマイクロエレクトロニクスとの一体化を容易にする(すなわち、オンチップ・インテグレーション)が、変換プロセスを生じさせるための電圧バイアスが必要となる。この困難性は、最初にコンデンサを充電することによって、または、電荷充電材料を採用することにより解決可能である。
【0033】
さまざまなコンデンサが、2つの動作モードのいずれかにおける振動から電気的パワーを生成することができる。コンデンサの電荷が制限されると、振動によって生じるコンデンサプレート間の間隔が変化することでキャパシタンスが変化する際に、コンデンサを横切る電圧が増加する。逆に、コンデンサを横切る電圧が制限されると、振動によるキャパシタンスが変化する際に、コンデンサへまたはコンデンサから電荷が流れる。上述した実施形態において、電圧制限モードは2つの別個の電圧ソースを要求するため、電荷制限動作モードが選択された。その詳細は、S. Meninger、 J. O. Mur-Miranda、 R. Amirtharajah、 A. P. Chandrakasan、および、 J. H. Langによる “Vibration-to-Electric Energy Conversion”と題する論文 IEEE Transactions on Very Large Scale Integration (VLSI) Systems, Vol. 9, No.1, February 2001, pp. 64 - 76に記載されている。
【0034】
図2のモデルに戻って、イナーシャ質量206に取り付けられたMEMS可変コンデンサのキャパシタンスは、所与の時刻における外部振動y(t)202によって駆動されるハウジング210に対するイナーシャ質量206の変位z(t)によって決定される。生成された変位およびその固有振動数は、静電近似に基づいた等価電力量を計算して測定可能である。その近似式は、P. D. Mitcheson、 T. C. Green、 E. M. Yeatman、および、A. S. Holmesによる “Architectures for Vibration-Driven Micropower Generators”と題する論文 IEEE/ASME Journal of Microelectromechanical Systems, Vol. 13, No. 3, pp. 429 - 440, 2004に、以下のように記載されている。
【数1】
ここで、Y
0、ω、mおよびxは、それぞれ、ソース動作振幅(m)、駆動周波数(Hz、振動ソースの駆動周波数は、デバイスの固有振動数と理想的には同じであるべきである)、デバイス質量(kg)、および、イナーシャ質量変位(m)である。したがって、電力P
resは、ω
c=1に設定した状態での共鳴で生成される(ω
c=(ω/ω
n)、ここで、ω
nは一体型ドライブの微小共鳴器の固有振動数(Hz)である)。
【0035】
上述した実施形態において、エネルギーハーベスティングデバイスは、細長または互いにかみ合うフィンガー電極のセットによって構成された一体型ドライブ形式のMEMS可変コンデンサを有し、ひとつのセットは固定され、残りは共鳴器の一部であり、フィンガー電極の2つのセット間の面オーバーラップの度合い(ひいては、キャパシタンスおよび電圧)は、それがマウントされている固定基板に対する共鳴器の変位によって決定されるように構成されている。
【0036】
変換効率を増加させるために、横共鳴器の変位は実際に可能なコンデンサの限界と同じ大きさであるべきである。これは、共鳴構造の振動の共鳴周波数が、機械的振動周波数であるかそれに近くなければならないことを意味する。
【0037】
しかし、この要求は、比較的広範囲の外部振動周波数から電気的パワーを生成することを目的とする状況においては困難をもたらす。例えば、セイヨウオオマルハナバチ(Bombus terrestris)のような活発なマルハナバチの振動からパワーを生成することが目的であるこのケースにおいて、これらの信号は、約2kHzまでの高調波を有する、約100Hzから400Hzの比較的広範囲の基本周波数によって特徴づけられる。
【0038】
広帯域の環境振動によってもたらされるこの困難性を解決するために、ここで説明するエネルギーハーベスターは、環境振動の周波数範囲にまとめて対応するそれぞれ異なる共鳴周波数を有する複数の共鳴器を含むことによって、広い周波数範囲内で効率的に周波数を吸収するように構成されている。
【0039】
しかし、静電変換の効率は、コンデンサプレートの相対的変位に周波数の3乗に比例するというさらなる困難が存在し、そのことは、エネルギーハーベスターを駆動する外部振動の周波数が比較的小さいところの本願発明のような状況において、低いエネルギー変換効率を生じさせるということを意味する。
【0040】
外部振動の周波数が比較的低いところの状況において、静電変換の周波数依存性によってもたらされるこの困難を解決するために、説明したエネルギーハーベスターは、比較的高い横振動基本共鳴周波数を有するさらなる共鳴器を含む。この付加的な共鳴器をひとつ以上の比較的低い周波数の共鳴器と機械的に結合することによって、比較的低い周波数の共鳴器の振動は、付加的な共鳴器によってより高い周波数まで効率的にアップコンバートされる。高周波共鳴器の一部としてひとつ以上の可変キャパシタトランスデューサを含むことにより、エネルギー変換効率は大きく強化される。
【0041】
説明したエネルギーハーベスターまたはスカベンジャー、またはトランスデューサは、説明の都合上デバイスまたは構造として説明したが、その構成に鑑み、本願発明の上述した実施形態を構造体のアセンブリとして言及してもよいと考える。しかし、これらの用語は、特にことわらない限り、本明細書において相互に置換可能であると考えるべきである。
【0042】
図3は、本願発明に従う、エネルギーハーベスティングデバイス300の全体の構成を示す略示図である。各デバイスまたはアセンブリ300は、ひとつ以上の第1機械共鳴構造302および第2機械共鳴構造304を有する。
【0043】
当業者が理解するように、一般的に、機械的構造は、少なくとも一つの機械共鳴周波数を有し、典型的に高調波または複数の最低または基本共鳴周波数を含む複数の共鳴周波数を有する。説明の都合上、用語“共鳴周波数”およびその異形語は、特に断らない限り、本明細書において構造の基本または最低周波数共鳴モードに言及していると理解すべきである。特に、説明した機械共鳴構造の文脈において、用語“共鳴周波数”は、概して、構造の基本または最低周波数振動共鳴モードの周波数(概して、最大の変位を与える共鳴モードに対応している)に言及していると理解されるべきである。
【0044】
一つ以上の第1機械共鳴構造302は、それぞれ基本横振動共鳴周波数f
L1、f
L2、・・・f
LNを有する(それゆえ、ここでは横共鳴器とも言及される)。すなわち、さまざまな実施形態において、ひとつの第1機械共鳴構造302のみ、したがって、単一の基本共鳴周波数が存在してもよい。または代替的に、複数の第1機械共鳴構造302が存在してもよいが、すべては同じ基本振動共鳴周波数である(すなわち、f
L1=f
L2=・・・=f
L(N―1)=f
LN)。しかしながら、エネルギーハーベスターが、広帯域の振動周波数からパワーを生成するように構成されている上述した実施形態において、上述したエネルギーハーベスター300は、それぞれ異なる基本共鳴周波数を有する複数の第1機械共鳴構造302を含む。他の実施形態において、共鳴周波数の多くの異なる組みあわせが可能であることは当業者の知るところである。
【0045】
外部環境から第1機械共鳴構造302に結合された機械的振動は、第1機械共鳴構造302に、
図3において水平矢印306で表すような横方向の振動を生じさせる。これらの機械的振動がひとつ以上の第1機械共鳴構造302にその共鳴モードでの振動を生じさせる場合、第1および第2の機械共鳴構造302、304の相対的な空間位置は、共鳴している第1機械共鳴構造302の最大変位(
図3において左方向に向かう)を第2機械共鳴構造304と機械的に結合または係合させ、第2機械共鳴構造304に矢印308で表すような横方向振動を生じさせるように構成される。
【0046】
第2機械共鳴構造304は、第1機械共鳴構造302の任意およびすべての共鳴周波数より実質的に大きい基本振動共鳴周波数を有するように構成されている。結果的に、第1機械共鳴構造302の振動を、第2機械共鳴構造304に結合することは、第1機械共鳴構造302の比較的低い基本共鳴周波数を、第2機械共鳴構造304の比較的高い基本共鳴周波数にアップコンバートする効果を有する。第2機械共鳴構造304は、第2機械共鳴構造304の振動から電気的パワーを生成するように構成されたひとつ以上の電気機械的トランスデューサコンポーネントを有する。
【0047】
ひとつ以上の外部振動周波数に対応するひとつ以上の基本振動共鳴周波数を有するように、ひとつ以上の第1機械共鳴構造302を構成することにより、外部振動から第1機械共鳴構造302の運動エネルギーに変換する効率は増加する。付加的に、比較的低い基本共鳴周波数を、第2機械共鳴構造304の比較的高い基本共鳴周波数にアップコンバートすることにより、運動エネルギーから電気エネルギーへの変換効率も増加する。
【0048】
図4は、蜂により生成される機械的振動の測定周波数範囲をほぼ包含する、約200、300、および、400Hzのそれぞれ異なる振動共鳴周波数f
L1、f
L2、および、f
L3を有する3つの第1機械共鳴構造402、404、406を有するエネルギーハーベスター400の実施形態のブロック図である。
【0049】
図5に示す代替的実施形態において、3つの第1機械共鳴構造502、504、506は、結合バネ508によって互いに結合されている。それは、第1機械共鳴構造502、504、506の集合、ひいては、エネルギーハーベスターの全体の周波数応答範囲を広くする効果を有する。
【0050】
図6は、より単純な構成の
図4の実施形態のエネルギーハーベスター400を示し、それは、3つの第1機械共鳴構造(ここで、低周波数共鳴高構造または共鳴器とも呼ぶ)602、604、606の各々が、試験質量608の両側で対向する一対のサーペンタインバネ610によって基板上(図示せず)で吊り下げられた浮遊試験質量608の形式をとる。よって各サーペンタインバネ610の一端は、対応する試験質量608に取り付けられ、一方サーペンタインバネ610の反対端は、共鳴構造を基板にアンカーする対応するアンカーブロック612に取り付けられている。
【0051】
図6および7の両方向矢印によって表されるように、各低周波機械共鳴構造の主要な振動モードは、試験質量608を基板上に支持する対応するサーペンタインバネ610の方向およびそれから離れる方向の試験質量608の振動である。この横振動モードにおいて、低周波共鳴器602、604、606は、それぞれ異なる基本共鳴周波数を有する。概して、この一般的形式の所与の共鳴器の基本共鳴周波数は、試験質量608に適当な質量を選択することによって、および、対応するサーペンタインバネ610の適切な構成およびこれらのコンポーネント608、610が作成されている材料を選択することによって、所望の周波数に調整可能である。
図6に示す実施形態において、異なる基本共鳴周波数は、同じサーペンタインバネ構造を使用して、3つの低周波共鳴器602、604、606の試験質量608に対してそれぞれ異なる質量を選択することによって決定される。
【0052】
図6、7、10、13、14、15および16に示す実施形態において、各サーペンタインバネは長方形断面の細長い10個の平行ビームの5回転によって形成される。これらの細長いビームの連続対の各々の隣接端部は、対応するショートジョイントビームによって相互に接続されている。当業者が理解するように、他の実施形態において他のバネ構成(例えば、異なる回転数を有する類似のバネを含む)もまた使用可能である。一般に、より多くの回転を加えることは、このバネの剛性を減少させ、したがって、対応する振動の基本周波数を低下させる。
【0053】
図6を参照して、低周波共鳴器602、604、606の各々は、高周波共鳴構造800の方向へ、その試験質量608を伸ばす一対のアーム614も有する。
図8に詳細に示すように、第2または高周波共鳴構造800は、試験質量802のそれぞれのコーナー付近に取り付けられた4本の細長い支持アーム804によって基板(図示せず)上に吊り下げられた浮遊試験質量802を有する。この構成により、高周波共鳴構造800の主要振動モードは、低周波共鳴器602、604、606に平行で、かつ、細長い支持部材またはアーム804の長手軸に直角である横信号モードである。
【0054】
これらの細長い支持部材またはアーム804は、高周波共鳴構造800の試験質量802をその釣り合い位置に戻すためのバネとして作用する。低周波共鳴器602、604、606のサーペンタインバネ610に対して、支持アーム804の直線の細長い構成は、低周波共鳴構造602、604、606のサーペンタインバネ610より実質的に硬く、その結果、実質的により高い横信号基本共鳴周波数を有する高周波共鳴構造800が生成される。以下に示す実施形態において、その基本共鳴周波数は、約3.5kHzまたは、低周波共鳴器602、604、606のものより大きいオーダーである。
【0055】
機械電気的トランスデューサとして機能する高周波共鳴構造800のために、横振動試験質量802の運動エネルギーは、各々が、相互に離隔された、かみ合いフィンガー電極のセットの形式の、当業者に周知の形状の4つの可変コンデンサ806によって電気エネルギーに変換される。
【0056】
図6のエネルギーハーベスティング構造は、高アスペクト比のマスクまたは、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウエハの深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)を含む、当業者に周知の標準的なMEMS製造方法を使って製造される。
【0057】
DRIEは、ここで説明する共鳴構造を形成するための好適なプロセス技術である。なぜなら、それは、非常に高アスペクト比構造を形成することが可能であるからである。以下で説明する実施形態において、SOIウエハの表面シリコン層の全厚を通じて伸長する、幅が2μmで深さが20μm(対応するアスペクト比が10である)の深くかつ狭いトレンチを形成するのにDRIEが使用される。この厚さ構造は概して本願発明の実施形態の説明の文脈において好適に使用される。なぜなら、説明する構造の質量およびキャパシタンスは両方ともその厚さに比例し、これらのパラメータの増加は、エネルギーハーベスターによって生成される電気的エネルギーの対応する増加をもたらすからである。可変コンデンサとして厚いかみ合いフィンガー電極の使用は、検出キャパシタンスが、デバイスの寄生容量より非常に大きいことを保証する。
【0058】
上述したエネルギーハーベスターの変換効率をさらに増加させるために、その物理的なフットプリントまたは容積は、質量およびキャパシタンスに対応する増加を与えるように増加可能である。付加的に、シリコンが比較的密度が小さいことを考慮すると、試験質量が最初にシリコンから製造されるところの実施形態において、増加する製造の複雑さを犠牲にしても全試験質量を増加させるために、より大きい密度材料の質量が取り付けられるか、または、シリコン試験質量上に堆積される。
【0059】
一般に、ここで説明するような高アスペクト比の微小構造は、フットプリント面積および全体積の所与の寸法的制約のために、低周波共鳴器であるように容易に設計可能である。所与の共鳴構造の固有振動数または基本共鳴周波数は、その支持ビーム/バネの長さおよびその試験質量を増加(または減少)させることにより、増加(または減少)可能である。しかし、このような長さおよび質量の増加は、共鳴構造の、ひいては、装置全体のフットプリント面積および/または全容積を増加させる。結果として、エネルギーハーベスターを、できるだけ小さく(および/またはある状況においてできるだけ軽く)すること(ここで説明するような、エネルギーハーバスターが生きた昆虫に取り付けられるように構成される場合など)は、競争的価値がある。一方には小フットプリントおよび容積(および/または質量)を小さくすることの要求があり、他方には高パワー出力の要求があって、それらの間にトレードオフの関係が存在する。
【0060】
このトレードオフを考慮して、小さい面積および容積(典型的には数mm2および数mm3)を占有した状態で、できるだけ高い出力を達成するために、以下で説明するエネルギーハーベスティングマイクロデバイスは、A. Ongkodjojo、およびF. E. H. Tayによる “Global Optimization and Design for Microelectromechanical Systems Devices Based on Simulated Annealing”と題する論文 Journal of Micromechanics and Microengineering, Vol. 12, pp. 878 - 897, 2002 (“Ongkodjojo”)に記載されている最適化方法を使って設計された。
【0061】
デザインおよび最適化
表1は、エネルギーハーベスターが取り付けられた蜂の物理的活動によって生成される機械的振動から電気的パワーを生成するためのエネルギーハーベスターの重要性能条件を要約したものである。概して、エネルギーハーベスターの設計は、その全体的アーキテクチャー、昆虫のボディ上でのエネルギーハーベスターの位置、エネルギーハーベスター全体のサイズ、ハーベスターの共鳴周波数と外部振動からの駆動周波数との間の対応、および、その質量、バネ(支持ビーム)、最大変位、および、低ダンピングファクタ(高品質ファクタ)との関連で共鳴器の機械的構造に依存する。
【0062】
上述したように、各低周波共鳴器の固有振動数と、エネルギーハーベスターの全体サイズとの間の設計トレードオフのため、提案される構成は、デバイスのサイズ制約を満足しつつ、アプリケーションの要求を達成するべく最適化される。また、生成される変位とソース動作振幅との間の比は、0.1より大きくなければならない(P. D. Mitcheson、 T. C. Green、 E. M. Yeatman、および A. S. Holmesによる “Architectures for Vibration-Driven Micropower Generators”と題する論文 IEEE/ASME Journal of Microelectromechanical Systems, Vol. 13, No. 3, pp. 429 - 440, 2004 (“Mitcheson”)参照)。
【0063】
【表1】
*)振動からのパワー生成と同等量が、Mitchesonによって与えられる静電近似を使って測定した変位から計算された。
+)共鳴周波数が振動ソースの駆動周波数と一致したとき、振動ベースの環境発電デバイスが最大エネルギーを生成する。もっとも通常の環境振動は、300Hz以下であり、機械による振動ソースは約2.5kHzである(Mitchesonを参照)。
【0064】
バネ剛性は、エネルギーハーベスターの重要な設計パラメータのひとつである。高周波共鳴器のバネ定数は、支持細長ビームの総数、ビームの構成、ビーム同士の直列または並列接続を考慮して、以下の式2によって与えられる。
【数2】
ここで、E、h、w
bおよびI
bは、それぞれ、シリコン材料の弾性率(Pa)、ビームの厚さ(m)、ビーム幅(m)、および、ビーム長(m)を示す。
【0065】
また、各低周波共鳴器のバネ定数は以下の式3によって与えられる。
【数3】
ここで、N
bは、単一のサーペンタインビームを形成するためのビーム総数である。サーペンタインビームは、可動プレート(試験質量608)の両端およびアンカー612に取り付けられている。このバネ定数は、式2の高周波共鳴バネのバネ定数より非常に小さく、より低い固有振動数を生じさせる。
【0066】
特に、全デバイス面積(ひいては、試験質量608)に対する制約を考慮して、減少したバネ剛性は、より低い固有振動数を与え、それは、以下の式4で示すレイリーの方法を使って得られる。
【数4】
ここで、m
p、m
bおよびm
iは、それぞれプレートの質量(kg)、ビームの質量(kg)およびトラスの質量(kg)である。
【0067】
フリンジング電場効果を考慮し、印加電圧によって生成される静電力から生じる変位は、以下の式5によって略示される。
【数5】
ここで、α、N、ε
0、Vおよびg
cは、それぞれ、フリンジング電場定数、共鳴器の可動部品に取り付けられた櫛形駆動フィンガーの総数、空気の誘電率(8.854×10
−12F/m)、印加電圧(ボルト)、および、櫛形駆動フィンガー間のギャップ(m)を示す。
【0068】
代替的に、最大線形変位は、マイクロ構造に印加された機械的力をバネ定数によって割り算することにより計算可能である。このシナリオにおいて、低周波共鳴器の最大変位は、その大きさおよび周波数に関して振動の外部ソースによって主に引き起こされる。高周波共鳴器の最大変位は、低周波共鳴器によってその上に及ぼされる機械的力によって主に決定される。共鳴器の最大変位を制限するために、変位制限ストップ620が与えられる。
【0069】
上述した式および一般的な装置構成に基づいて、高周波共鳴器800、および、3つの低周波共鳴器602、604、606の設計パラメータは、共鳴器がシリコンから形成されていることを仮定して、Ongkodjojoに記載されているグローバルオプティマイゼーション法を使って最適化された。高周波共鳴器800の生成された最適化設計パラメータは表2に要約されている。
【0070】
表2は、周波数アップコンバータおよび自己調節メカニズムを使って、エネルギーハーベスティングアプリケーションのために、静電マイクロ電力ジェネレータを有する高周波機械共鳴器の設計および最適化結果を示す。最適化設計の主な目的は、(1)変位および出力パワーを最大化することにより印加電圧を増加すること、(2)床占有面積(フットプリント)または装置面積を有意に減少させること、(3)低周波範囲内の固有振動数を減少させること、(4)デバイスのキャパシタンスを増加させるべく多くの数の櫛形駆動フィンガーを与えることである。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
*)キャビティは、品質係数または振動の減衰を改善するべく真空にすることが可能である。
【0071】
それぞれの共鳴周波数に調整された、3つの低周波共鳴器の最適化された設計パラメータが表3に要約されている。
【0072】
表3は、環境低周波振動内の特定のそれぞれ調節された共鳴周波数を与えるべく、それぞれのサーペンタインビーム構成を有する低周波マイクロ共鳴器(マイクロアクチュエータ)の設計および最適化結果を示す。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【表3-10】
*)キャビティは、品質係数または振動の減衰を改善するべく真空にすることが可能である。
【0073】
上で与えられた最適化設計パラメータを使って、最適化されたエネルギーハーベスターが製造可能となる。上述したように、ハーベスターは、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウエハから最も普通に製造されたものであり、当業者に周知の標準的なボッシュ法に基づく表面マイクロマシニングプロセスを使って、SOIウエハのシリコン層から共鳴器およびコンデンサを形成する。
【0074】
図9は、エネルギーハーベスターを製造するためのプロセス中のSOIウエハ902(付加的な表面堆積層を有する)の断面側面図を略示したものである。開始材料は、厚さ350μmのシリコン基板またはウエハ908上に厚さ4μmのSiO
2層906が埋設され、その上に堆積された厚さ20μmのシリコンウエハ(デバイス層)904からなるSOIウエハ902である。シリコン層904および下層のウエハ基板908は、両方とも<100>の結晶方位を有し、0.001〜0.005Ω・cmの範囲の抵抗率を有するn型シリコンである。
図9Aに示すように、洗浄後に、標準的なフォトリソグラフィーを使って、フォトレジスト910のパターンレイヤーをシリコンウエハ904上に形成する。所望の実施形態において、フォトレジスト910のレイヤーは、後続のエッチングプロセスの間に下層シリコン層904を保護するために、少なくとも〜1.5μmの厚さを有する。
【0075】
表2および3に示す最適化設計パラメータがシリコン層の厚さ40μmを含むので、パラメータは、製造されたエネルギーハーベスティングアセンブリにおいて20μmより薄いシリコン層の使用を考慮するよう正しく調節された。
図10は、最適化パラメータを使って設計されたクロムフォトマスクの画像である。このフォトマスクは、フォトレジストレイヤー910をパターン化するのに使用され、それはその後上述した共鳴器およびコンデンサを形成するためにシリコン層904の選択領域のエッチングを可能にするエッチングマスクとして使用される。
【0076】
図9Bに示すように、シリコン層904の露出した領域を下層酸化物層906までエッチングするために、深掘り反応性イオンエッチングプロセス(DRIE)が使用される。生成された微細加工構造(すなわち、試験質量608、802および対応するバネ)は、下層酸化物906の対応する部分をHF(フッ酸)で除去することによって部分的にリリースされ、
図9Cに示す構造が生成される。当業者が理解するように、試験質量608、802内に形成されたエッチングホールは、シリコン基板908から試験質量608、802をリリースするために、HFエッチング液がシリコン層の下の酸化層まで容易にアクセスできるようにする。最後に、薄膜のエレクトレット材料(この場合、0.1μmのSIO
2層)914が、化学的気相成長(CVD)、プラズマ化学気相成長(PECVD)、低圧化学気相成長(LPCVD)、熱成長、RFスパッタリング、または、スピンコーティングなどの標準的なプロセスを使って、構造体上に形成される。所望の実施形態において、エレクトレット材料914はSiO
2である。しかし、他の実施形態において、パリレン−Cおよび高性能パーフルオロ化ポリマーエレクトレットCYTOPのような材料を含む他のエレクトレット材料がより良い電気的特性を与えるように代替的に使用可能であることは当業者の知るところである。
【0077】
いずれの場合も、エレクトレット材料914は、静電的に充電される必要がある。所望の実施形態において、エレクトレット材料914は、Q. Fu および Y. Suzukiによる “MEMS Vibration Electret Energy Harvester with Combined Electrodes”と題する論文 IEEE Proc. MEMS 2014, San Francisco, USA, pp. 409 - 412に説明される軟X線充電プロセスを使って充電される。しかし、他の実施形態において、例えばコロナ充電を含む代替的な充電方法が使用可能であることは当業者の知るところである。
【0078】
図11は、高周波共鳴器800の可変コンデンサ806の4セットの一つを示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図12は、可変コンデンサ806のかみ合いフィンガー電極の間隔を示す拡大した走査電子顕微鏡写真である。この実施形態において、各突起フィンガー電極の幅は、9.96μmであり、受設チャネルの幅は14.2μmであると測定され、その結果、それぞれの間のギャップは、ほんの2μmのワイド幅しかない。他の実施形態(図示せず)において、各突起フィンガー電極の幅は、ほんの2μmのワイド幅であり、対応する6μmのワイド幅の受設チャネルのエッジまで、各側面において同じ2μmのワイド幅のギャップを有する。
【0079】
試験質量802の面内横振動は、各電極ペアの間のオーバーラップの度合いを増減し、それに応じて、それらの間のキャパシタンスを増減する。
図8に示すように、それは、試験質量802に取り付けられた櫛形駆動フィンガー806と、高周波共鳴構造800の固定部品810に取り付けられた櫛形駆動フィンガー806との間のキャパシタンスに対応する。
【0080】
可変コンデンサが高周波共鳴器800の一体コンポーネントであるため、可変コンデンサに電圧を印加し、かつ、高周波共鳴器800の生成される横振動を測定することによって、高周波共鳴器を逆に動作させることが可能である。したがって、DCオフセットの無くピーク電圧が21VのAC正弦波電圧が
図11に示す高周波共鳴器の可変コンデンサに印加され、生成された横振動は、SUSS MicroTec PM 5 プローブ装置を使って捕捉されかつ解析された。高周波横共鳴構造800は、純粋なAC電圧駆動のため、1.976kHzの固有振動数の半分に等しい974kHzの印加AC信号周波数で基本共鳴することが測定された(W. C-K. Tang,による“Electrostatic comb-drive for resonant sensor and actuator applications”と題する論文 Ph.D Thesis University of California, Berkeley, 1990 (“Tang”)に記載されているように)。
【0081】
表4は、生成された測定共鳴周波数および解析仮定モデルを要約したものであり、実験と解析結果とがよく一致していることが示している。
【0082】
解析結果に基づいて、高周波共鳴器800の固有振動数は2.14kHzである。固有振動数は、印加電圧が存在しない状態での共鳴周波数である。しかし、共鳴周波数は、表3に示すように、印加電圧を増加させるにしたがい減少し、この効果はバネ軟化効果と当業者に呼ばれている。結果的に、測定した共鳴周波数は、常に、理論的な固有振動数より低い。
【0083】
表4は、高周波共鳴器800の共鳴周波数であり、解析モデルの結果と、実験結果とを示す。
【表4】
*)高周波共鳴器800の第1共鳴周波数は、Tangに記載された周波数2倍効果に従い、装置の固有振動数を2で割って計算された(fres = fn/2、 fn = 2.14 kHz)。印加電圧がないと、高周波共鳴器800は1.976kHzの固有振動数を有し、印加AC駆動信号により、固有振動数の半分である974Hzの他の共鳴周波数を有する(周波数2倍効果)。
【0084】
3つの低周波共鳴器602、604、606に関して、その横振動の挙動は、例えばANSYS または COMSOL Multiphysics(商標)のような標準的な有限要素解析(FEA)を使ってシミュレーション可能である。
図13は、第1の低周波共鳴器のメッシュモデルのコンピュータ生成画像であり、
図14、15、および、16は、COMSOL Multiphysics(商標)FEA ソフトウエアパッケージのモード解析(固有周波数または固有値解法)によって計算された、その3つの最低周波数共鳴における3つの共鳴器の挙動のシミュレーション結果を示す。
図13のメッシュモデルは、20μmの厚さの構造体に対して154,435個の四面体エレメント、ビームに対してより高いメッシュレベル(微細メッシュ)、その他に対しては通常のメッシュレベルを有する。
【0085】
図14に示す第1の低周波共鳴器の第1の3つの共鳴モードは、154,435個の四面体エレメントおよび84,236個の三角形エレメントからなる3次元メッシュモデルを使って、それぞれ、391.7Hz、1,281.6Hz、1,427.6Hzで生じる。
【0086】
図15に示す第2の低周波共鳴器の第1の3つの共鳴モードは、202,979個の四面体エレメントおよび108,846個の三角形エレメントからなる3次元メッシュモデルを使って、それぞれ、309.5Hz、1,025.8Hz、1,129.9Hzで生じる。
【0087】
最後に、
図16は、455,085個の四面体エレメントおよび197,935個の三角形エレメントからなるモデルを使って計算された、230.2Hzの周波数での第3の低周波共鳴器の第1共鳴モードを示す。
【0088】
表5は、上で解析的に説明したようなFEAによって計算された、3つの共鳴構造の各々の固有振動数または最低共鳴周波数を要約したものであり、2つの異なる計算方法が各々の場合において5%以内の違いで良好に一致していることを示す。
【0089】
表5は、3つの低周波横共鳴器の解析モデル結果とFEA結果との間で、共鳴周波数を比較したものである。
【表5】
【0090】
変位と印加電圧
図17は、高周波共鳴器800の横変位を、可変コンデンサに印加するAC電圧の振幅の関数として示したグラフである。フリンジング電場効果およびバネ軟化効果を考慮して、974Hzの測定共鳴横振動周波数において、横変位が測定されかつ解析的に計算されている。これらの条件のもとで、測定結果は、32Vまでの印加電圧振幅から生成される9.8μmまでの横変位を示している。
【0091】
これらの変位は、支持ビーム804の長さの約10%である、〜3μmの変位までの印加電圧振幅に対して線形的な依存性を有する。
図17はまた、実験結果と解析結果との間に良好な一致が存在することも示している。しかし、いくつかの差異も存在する。解析結果と比較すると、特に高い印加電圧において、上述したバネ軟化効果(負バネ定数)により、測定結果の方がより高いことに気づく。実験結果と解析結果との差は、主に、これらのバネ軟化効果、所望の設計と製造された構造の実際の寸法との間の幾何学的不一致および測定精度によるものであると考えられる。
【0092】
また、バネ軟化効果により、横変位は、高い共鳴周波数より、低い共鳴周波数における方がより大きくなる。
図18は、1.97kHz(
図17では974Hz)の第2共鳴モードである点を除いて、
図17に類似のグラフである。バネ軟化効果はより低い共鳴周波数に対して有意であるので、測定変位は、高周波横共鳴器の固有振動数とほぼ同じである、1.976kHzのより高い共鳴周波数で生成され、974Hzのより低い共鳴周波数に対するものより全体的に正確である。
【0093】
図17および
図18を比較することによって明確に示されるように、高い共鳴周波数では、同じ印加電圧に対してより小さい横変位を生成する。
図18において、2.5μmまでの横変位が32Vまでの印加電圧振幅に対して測定され、〜1.3μmまでの横変位に対して線形的な依存性を有する。
【0094】
図17および
図18に示すように、フリンジング電場効果およびバネ軟化効果が解析モデルに対して考慮されない場合、それらの間の差異は大きい。しかし、フリンジング電場効果が含まれる解析モデルの場合、その差異は実質的に減少する。また、フリンジング電場効果およびバネ軟化効果の両方が含まれる構造体の解析モデルの場合には、非常に優れた一致が得られる。
【0095】
図19は、上述した高周波マイクロ共鳴器800よりも高い基本共鳴周波数を有し、その結果、より高い出力を与える第2の高周波マイクロ共鳴器1900を示す。
【0096】
図20は、FEAによって計算されるよう、740,381個のドメインエレメント、332,576個の境界エレメント、および、153,090個のエッジエレメントからなる、3.56kHzの共鳴周波数(第1モード)での第2高周波横共鳴器1900のメッシュモデルを示す。より高い周波数モードは、18.2kHzおよび28.5kHzであると計算される。
【0097】
推定出力パワー
ここで説明するエネルギーハーベスティングデバイスは、充電されたコンデンサプレートの間隔内での振動を対応させることによって、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。所与の時刻でのMEMS可変コンデンサのキャパシタンスは、ハウジングに対する高周波共鳴器の試験質量の変位z(t)によって決定され、それは、入力振動信号y(t)によって間接的に生じる。生成された変位およびその固有振動数は、式(1)に従う静電近似に基づいて等価電力量を推定することで測定可能である。
【0098】
上述した横共鳴器の測定結果および計算結果に基づいて、エネルギーハーベスター1900の出力電力は39nWであると推定される(静電力による変位が9.8μm、共鳴周波数が974Hz(6.1198×10
3rad/sと等価)、3.3μmのソース動作振幅、および、1.049×10
−8kgの試験質量を使用した)。最大パワーは約99nWであると推定される。推定出力パワーは、ソース振動振幅の関数であることに注意すべきである(式(1)参照)。ソース動作振幅が0.1μmである場合、約1.2nWの最大パワーが得られる。
【0099】
また、固定された横寸法に対して(すなわち、所与のフォトマスクを使って)、出力パワーは、構造体の厚さ(垂直方向)または、そのアスペクト比に同等に依存する。例えば、上述した構造の横寸法を使用した場合、共鳴周波数が約2.9kHz、高周波共鳴器の最大変位が25μm、外部振動によるソース動作振幅が3.3μmの場合、アスペクト比100に対して最大出力パワーは約0.15mWであると推定される。したがって、このパワー推定は、さまざまなマイクロ構造が同じ横寸法を有すると仮定した場合、マイクロ構造のアスペクト比にも依存する。例えば、約47μWの出力パワーがアスペクト比20に対して推定される。
【0100】
最後に、
図21は、ここで説明するエネルギーハーベスティングアセンブリまたはデバイス用の典型的なアプリケーションを示すブロック図である。静電変換を使用するため、エネルギーハーベスティングデバイスの高周波共鳴器のコンデンサプレート上の電荷を維持するべくプリチャージ回路2102が使用される。外部の機械的振動に晒される際、低周波共鳴器は横振動モードに励起され、この振動エネルギーの一部が運動エネルギーに変換される。この運動エネルギーの一部が高周波共鳴器の横振動を駆動するべく、それを使用して効果的にアップコンバートされる。
【0101】
高周波共鳴器の静電変換エレメントは、高周波共鳴器の生成された運動エネルギーを、可変コンデンサのプレート間のオーバーラップを変化させることにより、電気エネルギーに変換する。エネルギーハーベスティングデバイスからの生成電気出力は、第1パワー調整回路に与えられ、それが電気的パワーを格納バッテリー2106に与えるか、または、ひとつ以上の電気的負荷2108に与える。後者は格納バッテリー2106によって付勢される場合、これは、以下の文献に記載される第2パワー調整回路2110を通じて実行される。E. O. TorresおよびG. A. Rincon-Moraによる “Electrostatic Energy Harvester and Li-Ion Charger Circuit for Micro-Scale Applications”と題する論文, Proc. 49th IEEE International Midwest Symposium on Circuits ad Systems, 2006 (MWSCAS’06), USA, pp. 65 - 69、 T. Pichonat、 C. Lethien、 D. Hourlier、 N. Tiercelin、 D. Troadec および P. A. Rollandによる “Towards the 3-D Microfabrication and Integration of a Complete Power Unit Used for Energy Autonomous Wireless System”と題する論文, ECS (Electrochemical Society) Transactions, Vol. 25, No. 35, pp. 11-21, 2010、および、A. Tabesh およびL. G. Frechetteによる “A Low-Power Stand-Alone Adaptive Circuit for Harvesting Energy From a Piezoelectric Micropower Generator”と題する論文, IEEE Transactions on Industrial Electronics, Vol. 56, No. 3, pp. 840 - 849, 2010.
【0102】
従来のエネルギーハーベスティング構造を比較すると、ここで説明するエネルギーハーベスティングデバイスおよび構造は、小さい物理的フットプリントおよび容積を有しているにも拘わらず、約400Hz以下の振動周波数から比較的高い出力パワーを生成することができる。複数の低周波共鳴器が使用される場合、これらの共鳴器の基本共鳴周波数は、所望の振動周波数と一致するように調整可能である。
【0103】
最後に、本願発明の実施形態は、エネルギーハーベスティングの関係で説明されてきたが、機械的振動を測定または特徴づけるためのような他の目的で代替的に使用することも可能であることは当業者の知るところである。例えば、ここで説明した電気機械的トランスデューサは、(エネルギーソースを与えるのとは反対に)環境振動を代表する出力信号を生成するためのセンサとして使用することも可能である。
【実施例】
【0104】
上述したエネルギーハーベスティングアセンブリの実施例を示すために、
図5に示す一般的形式のエネルギーハーベスティングアセンブリのウエハが上述したプロセスを使って製造された。
図22は、エネルギーハーベスティングアセンブリのひとつの走査電子顕微鏡画像であり、それぞれ異なる基本共鳴周波数を有し、連結バネ2208によって相互に結合された、3つの低周波機械共鳴構造2202、2204、2206を示している。3つの低周波機械共鳴構造2202、2204、2206の各々は、近くの高周波機械共鳴構造2212の方向に伸長する対応する対の駆動アーム2210を有する。エネルギーハーベスティングアセンブリ2200の全体のフットプリントは、3.4mm×2.5mmであり、共鳴構造の2202、2204、2206、2212の厚さは、〜20μmである。
【0105】
図22の左上隅の組み込み画像2214は、第2低周波機械共鳴構造2204のサーペンタインバネのひとつの拡大図を示す。
図22の右上隅の組み込み画像2216は、高周波機械共鳴構造2212のかみ合いフィンガーまたは櫛形駆動フィンガーのセットのひとつの拡大図を示す。
【0106】
ウエハは個々のダイを与えるようにダイシングされ、それぞれは、対応するエネルギーハーベスティングアセンブリを有し、単一化された各ダイ2302は、
図23に示すように対応するセラミックパッケージ2304内にマウントされた。櫛形駆動フィンガー電極からセラミックパッケージ2304の対応するピンまでの電気的接続を作成するために、ワイヤボンディングが使用された。続いて、各パッケージ2304は、ほこりおよび他の汚染物質からエネルギーハーベスティングアセンブリを保護するためにシールされた。
【0107】
以下で説明する測定の主な目的は、エネルギーハーベスティングアセンブリの各共鳴器の基本周波数を決定すること、および、静電マイクロジェネレータとしてのエネルギーハーベスティングアセンブリの性能をテストすることである。MEMSデバイスを振動動作に励起させるために、2つの方法(電気刺激および直接機械的刺激)が使用された。
【0108】
図24に示すような一つの試験装置において、ストロボ画像を有するレーザー振動計および、ビルトイン信号生成器(Micro-System Analyzer社のPolytec MSA-400)2402が高周波共鳴構造2212の電極に印加された電気信号を生成するために、および、ストロボ光学画像によって高周波共鳴構造2212の生成された機械的挙動を測定するために、使用された。生成画像は、対応する周波数応答のボードプロットを生成するべく記録され、かつ、処理された。
【0109】
図25に示すような他の試験装置において、エネルギーハーベスティングアセンブリ2200が、振動ソースとして作用する電動シェイカー2502によって刺激可能なように、エネルギーハーベスティングアセンブリ2200を含むセラミックパッケージ2304が電動シェイカー2502に結合されたスティンガーロッド上にマウントされた。電動シェイカー2502は、振動周波数および振幅を変化させることによって、生きた昆虫または蜂の振動特性を模倣するのに使用された。レーザー振動計2402は、3つの低周波機械共鳴構造2202、2204、2206および、高周波機械共鳴構造2212の各々の生成された機械的応答を画像化するのに使用された。生成された電気的パワーは、デジタルオシロスコープ2504を使って特徴付けられた。
【0110】
したがって、MEMSデバイスを振動動作に励起させ、かつ、その生成された変位を特徴づけるために、
図24および
図25の電気的および機械的刺激試験装置において、レーザー振動計2402が使用された。駆動信号、LED(発光ダイオード)ストロボフラッシュおよび、レーザー振動計のカメラ露出が、測定中に同期された。MEMS構造の周期的動作は、ナノ秒ストロボ照明ソースを使って、時間的に停止された。また、短光パルスが、間隔あたりのストロボショット数によって決定される刺激信号に対する正確な位相角度において、測定デバイスの位置を記録することができる。言い換えれば、各ミクロ構造の全体の振動サイクルは、小さい位相角度増分だけそのパルスのタイミングをシフトすることによって測定され、周波数ドメインおよび時間ドメインのプロットが生成される。
【0111】
エネルギーハーベスティングアセンブリの性能を試験しかつ特徴づけるために、このパッケージされたエネルギーハーベスティングアセンブリは、A. Ongkodjojo Ong および F. E. H. Tayによる、 “Motion characterizations of lateral micromachined sensor based on stroboscopic measurements”と題する論文 IEEE Sensors Journal, Vol. 7, No. 2, pp. 163-171, February 2007に記載の方法を使って評価された。要するに、測定方法は以下のように要約できる。(1)
図24および
図25に示すようなエネルギーハーベスティングアセンブリ2200とマイクロシステムアナライザー(MSA−400)2402との間の電気的接続を確立し、(2)測定セッティングおよびレンズキャリブレーション(測定モード、励起およびフラッシュ周波数、照明、コントラスト、デバイス駆動、および周波数範囲)を調節し、(3)画像記録および処理からなる測定を実行し、(4)画像処理およびコンピュータ処理からなる、パターンマッチング(サーチパターンおよび興味の領域)に基づいて評価処理を実行する。
【0112】
図25に示すように、かみ合いフィンガー電極を横切ってバイアス電圧(V
bias)を印加しながら、信号調整回路2506を直接通じて、各エネルギーハーベスティングアセンブリ2200の電力出力が測定された。バイアス電圧(V
bias)は、外部電源またはバッテリーから得られた。高周波機械共鳴構造2212の振動動作は、キャパシタンスの対応する変化(dCv/dt)を生じさせ、その結果コンデンサプレート上の電荷(dQ/dt)を生じさせ、信号調整回路2506および抵抗負荷を通じて流れる対応する電流I(t)を生成する。電圧降下は、その後、デジタルオシロスコープ2504(またはマルチメータ)を使って負荷抵抗(R
Load)を横切って測定される。
【0113】
A.測定共鳴周波数
以下の表6は、エネルギーハーベスティングアセンブリ2200に対する解析結果、FEA結果、および、実験結果を要約したものである。表6は、また、2次元シミュレーション以外で、それらの結果の間には5%以内の良好な一致が存在することを示す。差異は、単純化されたモデル、FEM&FEAの限定されたシミュレーション精度、マイクロ製造プロセスのマイナー変数(特に、DRIEエッチングプロセス中)、外部環境からの振動ノイズ、および、レーザー振動計2402の限定された測定精度の使用のおかげである。
【0114】
表6は、解析モデル、3次元(3D)有限要素モデル(FEM)&有限要素解析(FEA)、および、エネルギーハーベスティングアセンブリ2200の3つの低周波機械共鳴構造2202、2204、2206および高周波機械共鳴構造2212の各々に対する実験結果によって決定される共鳴周波数を比較したものである。
【表6】
(a)実験結果は、第1共鳴周波数に基づいて得られた。
(b)測定共鳴周波数は、同じ設計、構成、材料および微細製造プロセスを有する6個のエネルギーハーベスティングアセンブリに対して60回の測定を行ってその平均値に基づいたものである。測定不確実性は、Paulo A de Souza Jr および Gutemberg Hespanha Brasilによる “Assessing Uncertainties in a Simple and Cheap Experiment”と題する論文、 European Journal of Physics, 30 (2009), pp. 615 - 622 ("de Souza")に記載されたランダム測定技術および統計方法に基づいて11.55%である。
(c)シミュレーション結果は、3Dシミュレーションの計算コストおよび複雑さのために、2次元(2D)有限要素モデル(FEM)を使って得られた。
【0115】
図26は、印加したACおよびDC駆動信号の周波数の関数として、高周波共鳴構造2212の最大変位を示すグラフであり、3.3kHzの周波数で急峻な共鳴を示している。周波数応答の小さい振幅は、低駆動電圧(V
AC=V
DC=5V)のためであり、より高い印加電圧は、それに応じたより大きい変位を生じさせる。測定精度は、振動周期あたりのストロボショット数、および、各画像からの高品質な変位結果を生成するのに使用されるパターンマッチング(画像処理)に依存する。振動周期あたりのストロボショット数を増加させることで位相ステップサイズが減少し、撮像画像の数および測定精度が増加する。これらの測定は、振動周期あたり120回のストロボショットおよび7kHzまでの帯域周波数を使って為された。しかし、グラフに示すように、小さい動作部品は特に分子動揺から生じる機械的ノイズに特に敏感であるので、ブラウン運動に起因する小規模の振動ノイズがまだ存在する。ノイズは環境からも生じ、エネルギーハーベスティングアセンブリは、このノイズを削減するために真空下でシールされる。
【0116】
表6は、同じ実験セットアップ、セッティング、および環境を使って、実験が異なるマイクロ製造エネルギーハーベスティングアセンブリに対して何度も行われたので、メインのエネルギーハーベスターの測定共鳴周波数が有効かつ正確であることを示している。6個の個々にマイクロ製造されたエネルギーハーベスティングアセンブリ2200において、de Souzaに記載されたランダム測定技術および標準統計方法を使って、60回の個別の測定がなされた。ランダム技術および統計標準方法に基づいて、メインエネルギーハーベスターの測定共鳴周波数は、平均が3.5kHzであり、標準偏差が0.39であり、標準誤差が0.05であり、2%の器具の不確実性を含む全不確実性が11.55%である。したがって、不確実性は、主に、上述した要因によって生じる。
【0117】
図27は、表6に要約されたように、3つの低周波機械共鳴構造2202、2204、2206に対する有効性をさらに示す。
図27Aは、375Hzの第1共鳴周波数で生じる最大となる、第1の低周波機械共鳴構造2202の周波数スペクトルを示す。他に、425Hz、700Hzおよび775Hzのそれぞれの周波数で比較的大きい共鳴周波数が生じている。スティンガーロッドが取り付けられた電動シェイカーが振動ソースとして作用する場合、エネルギーハーベスティングアセンブリ2200の全体が振動した。また、低周波機械共鳴構造2202、2204、2206の支持バネは、高周波共鳴構造2212の支持ビーム2218に比べ外部の振動により敏感である。なぜなら、前者は、特に、低い剛性で設計されており(小さいバネ定数)、より高い変位または振動を生じさせるためである。バネ軟化効果は、高周波共鳴構造2212に対してよりも、低周波共鳴構造2202、2204、2206に対しての方がより有意である。グラフはまた、低周波機械共鳴構造2202、2204、2206が、低動作周波数範囲より高い周波数を有する外部振動に応答可能であることも示している。したがって、低周波機械共鳴構造2202、2204、2206に対する測定共鳴周波数は、
図27A、27B、27Cに示すように、それぞれ375Hz、325Hzおよび225Hzである。
【0118】
B.測定出力パワー
エネルギーハーベスティングアセンブリ2200からの出力信号を整流するための信号調整回路(すなわち、電圧倍増整流器またはフルブリッジ整流器)に加え、電動シェイカーおよび互換アンプを使って、エネルギーハーベスティングアセンブリ2200の電気的出力パワーは、300Hzの低機械的シミュレーション周波数、および、信号生成器からの3.0V
PPの駆動信号振幅に対して抵抗負荷を横切る電圧降下を測定することにより決定された。エネルギーハーベスティングアセンブリ2200に対して電気的バイアス電荷を与えるべく、DC電圧バイアスが櫛形駆動コンデンサプレートを横切って印加された。すべての出力パワー測定は、
図28Bに示すように、高い増加電圧レベル(シェイカーがONであったとき)から、
図28Aに示すように、初期の小さい出力レベル(シェイカーがOFFであったとき)を減算することによって得られた。測定手法に基づいて、出力パワーがオームの法則によって決定された。
【0119】
上述した共鳴周波数の測定と同様に、上述したランダム測定技術および標準統計方法を使用し、かつ、同じ実験セットアップ、セッティングおよび環境で、出力パワーが60回の個別の測定を行うことによって測定された。特に、測定は、3.0V
ppの正弦波信号の振幅を有する電動シェイカーの低周波(すなわち、300Hz)で実行され、それは、エネルギーハーベスティングアセンブリ2200へ振動を与えるためのシェイカーに接続されたパワーアンプを通じて信号生成器によって生成された。デジタルオシロスコープの最大有効数の測定(256)を使って取得した平均が、信号ノイズを最小化するためにすべての測定に対して採用された。
【0120】
上述した方法に基づいて、エネルギーハーベスティングアセンブリ2200の測定された出力パワーは、0.70の標準偏差、0.09の標準誤差、4%の装置不確定性を含む22%の全不確定性を伴って、平均で〜21mWであった。不確定性は、マイクロ製造プロセスの変動、スティンガーロッドを有する電動シェイカーの安定性、信号ノイズ、周囲環境からの環境ノイズ、および、実験中のデジタルオシロスコープの観測精度を含む測定精度による、エネルギーハーベスティングアセンブリ2200の製造装置間のマイナーな変化によって主に生じる。
【0121】
蜂または生きた昆虫の振動を模倣するために、電動シェイカーセットアップ2502を利用することにより、周波数の関数として実際のパワー生成が測定され、その結果データは、
図30に示されている。エネルギーハーベスティングアセンブリ2200が予想通りに動作することをさらに示すために、
図31、
図32には、それぞれ負荷抵抗および電圧バイアスの関数として出力パワーが示されている。
【0122】
図30は、マイクロ製造されたエネルギーハーベスティングマイクロデバイスが、興味ある低周波範囲においてより高い出力パワーで、期待どおりに動作することを示している。高周波機械共鳴構造2212が表6および
図26に示すように〜3kHzの共鳴周波数で動作しても、より低い周波数範囲の刺激が実際にはより高い振動振幅を予想通り生成している。よって、出力パワー性能は、エネルギーハーベスティングアセンブリ2200が、より低い振動周波数を〜3kHzのより高い共鳴周波数に変換する(すなわち、それは周波数アップコンバータとして作用する)ことを示している。言い換えれば、エネルギーハーベスティングアセンブリ2200は、
図30に示すように出力パワーを強化するために、構造振動のより低い振幅を、高周波共鳴構造2212のより高い共鳴器周波数(すなわち、〜3kHz)でより高い振幅に変換することができる。
【0123】
図31は、より高い出力パワーがより低い負荷抵抗において生成されることを示す。エネルギーハーベスティングアセンブリ2200は、上述した測定セットアップ、測定セッティングおよび環境に対して、〜4.4Wの最大出力パワーを1.6Ωの負荷抵抗に与えることできる。実際に、エネルギーハーベスティングアセンブリ2200は、1kΩの負荷抵抗に対して〜3.85mWの出力パワーを達成することが可能である。また、エネルギーハーベスティングアセンブリ2200は、100kΩの負荷抵抗に対して0.2μWの出力パワーを達成することができる。より低い抵抗は実際には、電荷の導電通路をより大きく開き、その結果、より高い生成電流および出力パワーが生成される。
図32は、出力パワーが、予想どおり、電圧バイアスの増加によって増加することを示す。電荷の総数は同じキャパシタンスに対して電圧バイアスに比例するので、より高い電圧バイアスは、より大きな電荷ソースを与える。よって、実験測定結果に基づいて、ここで説明したエネルギーハーベスティングアセンブリ2200は、電荷密度に応じて、同じ物理的な寸法の既存のエネルギーハーベスターよりも高い出力パワーを示す。
【0124】
最後に、エネルギーハーベスティングアセンブリ2200が高い出力パワーを生成することができたことをさらに示すために、300Hzで動作する電動シェイカーによって刺激されたエネルギーハーベスティングアセンブリ2200は、
図33に示すように、従来の赤色発光ダイオード(LED)を付勢するのに満足に使用された。
【0125】
本願発明の思想から離れることなく。多くの修正が可能であることは当業者の知るところである。