特許第6588079号(P6588079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588079
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0525 20100101AFI20191001BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20191001BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20191001BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   H01M10/0525
   H01M4/36 C
   H01M4/36 D
   H01M4/587
   H01M4/62 Z
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-501918(P2017-501918)
(86)(22)【出願日】2016年2月18日
(86)【国際出願番号】JP2016000864
(87)【国際公開番号】WO2016136211
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2018年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-38191(P2015-38191)
(32)【優先日】2015年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】続木 康平
(72)【発明者】
【氏名】福井 厚史
【審査官】 式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−038534(JP,A)
【文献】 特開2007−335331(JP,A)
【文献】 特開2009−123463(JP,A)
【文献】 特開2008−016235(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/145846(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 4/00− 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板がセパレータを介して積層された構造を有する電極体を備えた非水電解質二次電池であって、
前記正極板は、正極活物質としてタングステンを含有するリチウム遷移金属酸化物を含み、かつ、リン酸化合物を含み、
前記負極板は、負極活物質として黒鉛系炭素材、及び前記黒鉛系炭素材に対して固着していない不定形/非晶質炭素材を含み、
前記不定形/非晶質炭素材の表面被膜に、タングステン又はタングステン化合物を含む、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記正極板は、さらにタングステン酸化物を含有する、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記タングステン酸化物は、WOである、請求項2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記不定形/非晶質炭素材は、前記黒鉛系炭素材に対して分散して存在する、請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記不定形/非晶質炭素材は、カーボンブラックである、請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記不定形/非晶質炭素材の含有率は、前記黒鉛系炭素材に対して0.5重量%以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記不定形/非晶質炭素材の二次粒子径は、1μm以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、電動工具等の動力用電源の用途を中心として、出力特性のさらなる向上が求められている。
【0003】
特許文献1には、正極活物質表面をW、Mo、Zr化合物及びリン酸化合物で被覆した正極を用いることにより、過充電時の安全性が向上することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、導電剤として黒鉛表面にカーボンブラックを固着させることで、負荷特性が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/128903号
【特許文献2】特開2003−346804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、非水電解質二次電池の出力特性を十分に改善することができない問題がある。
【0007】
本発明の目的は、従来以上に出力特性を改善させた非水電解質二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、正極板と負極板がセパレータを介して積層された構造を有する電極体を備えた非水電解質二次電池であって、前記正極板は、正極活物質としてタングステンを含有するリチウム遷移金属酸化物を含み、かつ、リン酸化合物を含み、前記負極板は、負極活物質として黒鉛系炭素材、及び前記黒鉛系炭素材に対して固着していない不定形/非晶質炭素材を含み、前記不定形/非晶質炭素材の表面被膜に、タングステン又はタングステン化合物を含むことを特徴とする。
【0009】
本願発明者等は、鋭意検討した結果、負極活物質として黒鉛系炭素材及び不定形/非晶質炭素材を含み、前記不定形/非晶質炭素材の表面被膜に、タングステン又はタングステン化合物の被膜を形成することで、充電時のLi吸蔵反応の反応過電圧を低下させることを見出した。タングステン又はタングステン化合物を含有する表面被膜を形成した不定形/非晶質炭素は、黒鉛系炭素に比較して貴な反応電位を有し、多配向の組織構造を有し、かつ、反応過電圧が低い被膜が形成されているため、Li吸蔵反応の反応に優れる。さらに、導電性に優れる黒鉛系炭素と併せることで、不定形/非晶質炭素の電子伝導性を保持することが可能である。電流は抵抗が低い部分に集中するため、負極ではタングステン又はタングステン化合物を含有する表面被膜が形成された不定形/非晶質炭素に電流が集中するようになるため、電池抵抗が低減される。
【0010】
充電時に正極活物質中のWが溶解し、負極に泳動して負極に析出し、タングステンまたはタングステン化合物の被膜が形成されるが、このとき、正極活物質としてWを含有する正極にリン酸化合物が共存していると、リン酸化合物の触媒作用により正極でのW及びタングステン酸化物の分解反応の速度が変化する。また、不定形/非晶質炭素材は、黒鉛系炭素材に比較して貴な反応電位をもつため、不定形/非書質炭素材の表面に優先的にタングステン又はタングステン化合物の被覆が形成される。
【0011】
ここで、「前記黒鉛系炭素材に対して固着していない不定形/非晶質炭素材」とは、化学的結合状態でなく電気的接続状態にあることを意味し、より具体的には、バインダー等により粒子間の接続が維持されている場合、水等のバインダーの溶剤によって黒鉛系炭素材と不定形/非晶質炭素材の接続を無くすことができる状態であり、水等の溶剤を電極に加えた後に乾燥させることで、黒鉛系炭素材と不定形/非晶質炭素材が分離した様子を電子顕微鏡により観察可能である状態のことを意味する。
【0012】
本発明の1つの実施形態では、前記不定形/非晶質炭素材は、前記黒鉛系炭素材に対して分散して存在する。
【0013】
本発明の他の実施形態では、前記不定形/非晶質炭素材は、カーボンブラックである。
【0014】
本発明のさらに他の実施形態では、前記不定形/非晶質炭素材の含有率は、前記黒鉛系炭素材に対して0.5重量%以上である。
【0015】
本発明のさらに他の実施形態では、前記不定形/非晶質炭素材の二次粒子径は、1μm以下である。
【0016】
本発明のさらに他の実施形態では、前記リチウム遷移金属酸化物の遷移金属に、少なくともNi,Co,Mnのいずれか1種を含む。
【0017】
本発明のさらに他の実施形態では、前記正極合剤層中にタングステン酸化物を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、非水電解質二次電池の抵抗を低減し、出力特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の負極の模式図である。
図2】実施形態の負極のSEM写真を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
本実施形態の非水電解質二次電池の基本的な構成は従来と同様であり、正極板と負極板がセパレータを介して巻回された巻回電極体を有しており、巻回電極体の最外周面は、セパレータにより覆われている。
【0022】
正極板はアルミニウム又はアルミニウム合金製の正極芯体の両表面に、幅方向の一方側の端部に長手方向に沿って芯体が帯状に露出した正極芯体露出部が両面に形成されるように正極合剤層が形成されている。
【0023】
また、負極板は、銅又は銅合金製の負極芯体の両表面に、幅方向の一方側の端部に長手方向に沿って芯体が帯状に露出した負極芯体露出部が両面に形成されるように、負極合剤層が形成されている。
【0024】
これらの正極板及び負極板をセパレータを介して巻回し、扁平状に成形することにより扁平状の巻回電極体が作製される。このとき、扁平状の巻回電極体の一方の端部に巻回された正極芯体露出部が形成され、他方の端部に巻回された負極芯体露出部が形成される。
【0025】
巻回された正極芯体露出部は、正極集電体を介して正極端子に電気的に接続される。他方、巻回された負極芯体露出部は、負極集電体を介して負極端子に電気的に接続される。正極集電体及び正極端子はアルミニウム又はアルミニウム合金製であることが好ましい。負極集電体及び負極端子は銅又は銅合金製であることが好ましい。正極端子は、絶縁部材を介して封口体に固定され、負極端子も絶縁部材を介して封口体に固定される。
【0026】
扁平状の巻回電極体は、樹脂製の絶縁シートにより覆われた状態で角形外装体内に収納される。封口体は、金属製の角形外装体の開口部に当接され、封口体と角形外装体との当接部がレーザ溶接される。
【0027】
封口体は電解液注液口を有し、この電解液注液口から非水電解液が注液され、その後ブラインドリベット等により電解液注液口が封止される。勿論、このような非水電解質二次電池は一例であり、他の構成、例えば非水電解液及び巻回電極体をラミネート外装体に挿入してなるラミネート型非水電解質二次電池としてもよい。
【0028】
次に、本実施形態における正極、負極、セパレータ及び非水電解質について説明する。
【0029】
<正極>
正極は、例えば金属箔等の正極集電体と、正極集電体上に形成された正極合剤層とで構成される。正極集電体には、アルミニウムなどの正極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合剤層は、正極活物質であるリチウム遷移金属酸化物の他に、タングステン酸化物及びリン酸化合物を含み、さらに導電剤、及び結着剤を含むことが好適である。正極は、例えば正極集電体上に正極活物質、結着剤等を含む正極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して正極合剤層を集電体の両面に形成することにより作製できる。
【0030】
正極活物質として、タングステン(W)が含有したリチウム遷移金属酸化物を含むものを用い、正極合剤層内にリン酸化合物(LiPO等)を含むものを用いる。さらに、正極合剤層内にタングステン酸化物が含有されているとより好ましい。
【0031】
リチウム遷移金属酸化物は、一般式Li1+x2+b(式中、x+a=1、−0.2<x≦0.2、−0.1≦b≦0.1、MはNi、Co、Mn、及びAlからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含む)で表される酸化物であることが好適である。またMは少なくともNiであることが好ましい。リチウム遷移金属酸化物は、Niに加えてコバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含有することが好適であり、またNi、Co、Mnに加えて、又は当該Mnの代わりにアルミニウム(Al)を含有することも好適である。
【0032】
上記M中のNiが占める割合は、好ましくは30mol%以上である。NiはNi3+の状態で含有されることが特に好ましい。Ni3+を含有するリチウム遷移金属酸化物としては、モル比がNi>Mnであるニッケルコバルトマンガン酸リチウムが挙げられ、Ni、Co、Mnのモル比が、例えば3:5:2、4:3:3、5:2:3、5:3:2、6:2:2、7:1:2、7:2:1、8:1:1である。ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムでは、Ni、Co、Alのモル比が、例えば80:15:5、85:12:3、90:7:3である。
【0033】
Ni、Co、Mn以外の元素としては、ジルコニウム(Zr)、等の遷移金属元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、第12〜第14族元素などが例示できる。具体的には、ホウ素(B)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、錫(Sn)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)等が例示できる。Zrは、例えばリチウム遷移金属酸化物の結晶構造を安定化させる機能を有する。
【0034】
リチウム遷移金属酸化物は、例えば一次粒子が凝集してなる二次粒子(超音波分散等により一次粒子に分離されない)である。リチウム遷移金属酸化物の粒径は、特に限定されないが、レーザ回析法により測定される体積平均粒径0.1μm〜20μmであることが好ましい。リチウム遷移金属酸化物の粒径が当該範囲内であれば、正極合剤層の良好なイオン伝導性と電子伝導性を両立し易くなる。また、電解液の保持性、拡散性等の観点から、リチウム遷移金属酸化物のBET法により測定される比表面積は大きいことが好ましい。
【0035】
リチウム遷移金属酸化物中のWの含有量は、リチウム遷移金属酸化物のLiを除く金属元素に対して、0.05mol%以上10mol%以下が好ましく、0.1mol%以上5mol%以下がより好ましく、0.2mol%以上3mol%以下が特に好ましい。
【0036】
Wは、リチウム遷移金属酸化物の合成時に、例えばNi、Co、Mn等を含有する複合酸化物と、水酸化リチウム等のリチウム化合物と、W又はタングステン酸化物等のタングステン化合物とを混合して焼成することにより当該酸化物中に含有させることができる。Wは、リチウム遷移金属酸化物中に固溶していることが好適である。リチウム遷移金属酸化物の合成時に、Ni、Co、Mn等を含有する複合酸化物等とWとを混合して焼成することにより、リチウム遷移金属酸化物中にWを固溶させることができる。また、Wは一次粒子の界面又は二次粒子の表面に、酸化物、又は金属の状態で析出しているものがあってもよい。
【0037】
正極合剤層中のリン酸化合物及びタングステン酸化物の含有量は、正極活物質の総重量に対して、0.01wt%以上5wt%以下が好ましく、0.05wt%以上4wt%以下がより好ましく、0.1wt%以上3wt%以下が特に好ましい。リン酸化合物及びタングステン酸化物の粒径は、正極活物質の粒径よりも小さいことが好ましく、例えば正極活物質の平均粒径の25%以下である。
【0038】
正極合剤層に混合されるリン酸化合物としては、例えばリン酸リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸コバルト、リン酸ニッケル、リン酸マンガン、リン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。これらのうち、リン酸リチウムを用いることが特に好ましい。正極合剤層に混合されるタングステン酸化物は、特に限定されないが、タングステンの酸化数が最も安定な6価となるWOが好ましい。
【0039】
リン酸化合物及びタングステン酸化物は、例えば正極活物質と機械的に混合して、活物質粒子の表面に付着させることができる。或いは、導電剤及び結着剤を混練して正極合剤スラリーを作製する工程において、リン酸化合物及びタングステン酸化物を添加することにより、これらを正極合剤層に混合してもよい。好ましくは、前者の方法を用いて、リン酸化合物及びタングステン酸化物を正極合剤層に添加する。これにより、活物質粒子の表面近傍に効率良くリン酸化合物及びタングステン酸化物を存在させることができる。
【0040】
リン酸化合物とタングステン酸化物が正極合剤層中に存在することで、タングステン化合物の一部が溶解する反応速度を調整し、負極に良好な形で表面被膜を形成させることが可能となる。
【0041】
導電剤は、正極合剤層の電気伝導性を高めるために用いられる。導電剤の例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
結着剤は、正極活物質及び導電剤間の良好な接触状態を維持し、且つ正極集電体表面に対する正極活物質等の結着性を高めるために用いられる。結着剤の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩(CMC−Na、CMC−K、CMC-NH等、また部分中和型の塩で あってもよい)、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
<負極>
負極は、例えば金属箔等からなる負極集電体と、当該集電体上に形成された負極合剤層とで構成される。負極集電体には、銅等の負極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合剤層は、負極活物質の他に、結着剤を含むことが好適である。負極は、例えば負極集電体上に負極活物質、結着剤等を含む負極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して負極合剤層を集電体の両面に形成することにより作製できる。
【0044】
負極活物質には、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できる、黒鉛系炭素材料と、不定形/非晶質炭素が含まれる。ここで、「不定形/非晶質炭素」とは、不定形炭素、あるいは非晶質炭素、あるいは不定形炭素と非晶質炭素の混合を意味する。
【0045】
黒鉛系炭素材料とは、グラファイト結晶構造の発達した炭素材のことであり、天然黒鉛、人造黒鉛等が挙げられる。これらは、鱗片形状でも良く、また球状に加工する球形化の処理を施されていても良い。人造黒鉛は石油、石炭ピッチ、コークス等を原料にしてアチソン炉や黒鉛ヒーター炉等で2000〜3000℃、もしくはそれ以上の熱処理を行うことで作製される。X線回折によるd(002)面間隔は0.338nm以下であることが好ましく、c軸方向の結晶の厚さ(Lc(002))は30〜1000nmが好ましい。
【0046】
また、ここでの不定形/非晶質炭素とは、グラファイト結晶構造が発達していない炭素材であって、アモルファスまたは微結晶で乱層構造な状態の炭素であり、より具体的にはX線回折によるd(002)面間隔が0.342nm以上であることを意味する。ハードカーボン(難黒鉛化炭素)、ソフトカーボン(易黒鉛化炭素)、カーボンブラック、カーボンファイバー、活性炭などが挙げられる。これらの製造方法は特に限定されない。例えば、樹脂または樹脂組成物を炭化処理することで得られ、フェノール系の熱硬化性樹脂やポリアクリロニトリルなどの熱可塑性樹脂、石油系または石炭系のタールやピッチなどを用いることができる。また、例えばカーボンブラックは、原料となる炭化水素を熱分解することにより得られ、熱分解法としては、サーマル法、アセチレン分解法等が挙げられる。不完全燃焼法としては、コンタクト法、ランプ・松煙法、ガスファーネス法、オイルファーネス法等が挙げられる。これらの製造方法により生成されるカーボンブラックの具体例としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック等がある。また、これらの不定形/非晶質炭素は、表面が更に別の非晶質や不定形の炭素で被覆されていても良い。
【0047】
黒鉛系炭素材料と不定形/非晶質炭素の混合比率は、特に限定されないが、Li吸蔵性に優れる不定形/非晶質炭素の割合が多いほうが好ましく、不定形/非晶質炭素の割合は活物質中の0.5wt%以上、より好ましくは、2wt%以上が好ましい。但し、不定形/非晶質炭素材が過剰になると、電子伝導性の低下が想定されるため、この点を考慮して上限を定めることが好ましい。
【0048】
不定形/非晶質炭素は、負極内に均一に分散されているほうが極板全体の電流密度分布の緩和につながり、低抵抗化できるため好ましい。
【0049】
ここで分散しているとは、負極の任意の部分をSEM等で観測する際に、ある箇所に不定形/非晶質炭素が集中して存在していないことであり、特定の箇所に集中している部分のことを凝集体と定義する。分散している状態は、一次粒子径に対して凝集体のサイズが過剰に大きくなく、不定形/非晶質炭素の一次粒子径と凝集体の二次粒子径の比が1:1〜100、より好ましくは1:1〜50となっていることが好ましい。不定形/非晶質炭素の一次粒子径が20〜50nm程度の場合、その二次粒子径は1μm以下であることが好ましい。
【0050】
分散方法は特に限定されないが、上記の炭素材と分散媒である水とを混合し、顔料分散等に通常用いられている分散機を使用することができる。例えば、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ等のメディアを加えるビーズミル、サンドミル、ボールミル、ディゾルバー、サンドグラインダー、ボールミル、アトライター、振動ミル等のメディア型分散機や、ニーダー、ローラーミル、石臼式ミル、石川式らいかい機、ホモジナイザー((エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」等)類)、湿式ジェットミル、超音波等が挙げられる。また、これらの分散手段を複数組み合わせてもよい。
【0051】
特に、親油性の高い炭素材料を水溶媒に分散させる際は、水溶性有機高分子を使用してもよく、例えば、カルボキシメチルセルロースなどに代表される化学修飾したセルロースなどが挙げられる。個々のカーボン粒子の表面に存在するカルボキシル基や水酸基が相互作用し、分散が容易になり、また分散状態での安定性を向上させることができる。
【0052】
また、必要に応じて公知の界面活性剤の化合物を添加してもよい。炭素材表面に電気的、化学的に吸着し、分散安定性を向上させることができる。このような界面活性剤としては例えば、アルキルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸型のアニオン性活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン系の活性剤が挙げられる。一方、これら界面活性剤は電子伝導性の抵抗成分とも成り得るため、沸点や昇華点が低く、乾燥等により揮発できることが好ましい。
【0053】
不定形/非晶質炭素の一次粒子径は、Liの拡散距離の観点から小さいことが好ましく、また、比表面積は、Li吸蔵反応に対する反応表面積が大きくなるため、大きいほうが好ましい。しかしながら、大きすぎると表面での過剰な反応が生じ抵抗の増加につながる。このため、不定形/非晶質炭素の比表面積は5m/g以上〜200m/g以下が好ましい。過剰な比表面積を低減させることからも、一次粒子径は20nm以上〜1000nm以下が好ましく、より好ましくは40nm以上〜100nm以下であり、粒子内に空洞が存在する中空構造でないことが好ましい。
【0054】
結着剤としては、正極の場合と同様にフッ素系樹脂、PAN、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を用いることができる。水系溶媒を用いて負極合剤スラリーを調製する場合は、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、CMC又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩(PAA−Na、PAA−K等、また部分中和型の
塩であってもよい)、ポリビニルアルコール(PVA)等を用いることが好ましい。
【0055】
<セパレータ>
セパレータには、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、セルロースなどが好適である。セパレータは、セルロース繊維層及びオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂繊維層を有する積層体であってもよい。
【0056】
<非水電解質>
電解質は、例えば非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む非水電解質である。非水電解質は、液体電解質(非水電解液)に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いることができる。また、プロパンスルトン等のスルホン基含有化合物を用いてもよい。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。
【0057】
上記エステル類としては、鎖状カルボン酸エルテルが例示できる。鎖状カルボン酸エステルは、特に限定されないが、好ましくは炭素数3〜5の鎖状カルボン酸エステルである。具体例としては、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等が挙げられる。
【0058】
上記エステル類(上記鎖状カルボン酸エステル以外)の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート(VC)等の環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステル、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)等の環状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0059】
上記エーテル類の例としては、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、1,8−シネオール、クラウンエーテル等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o−ジメトキシベンゼン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチル等の鎖状エーテル類などが挙げられる。
【0060】
上記ニトリル類の例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、n−ヘプタンニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル等が挙げられる。
【0061】
上記ハロゲン置換体としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等のフッ素化環状炭酸エステル、フッ素化鎖状炭酸エステル、フルオロプロピオン酸メチル(FMP)等のフッ素化鎖状カルボン酸エステル等が挙げられる。
【0062】
電解質塩は、リチウム塩であることが好ましい。リチウム塩の例としては、LiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiSCN、LiCFSO、LiC(CSO)、LiCFCO、Li(P(C)F)、Li(P(C)F)、LiPF6−x(C2n+1(1<x<6、nは1又は2)、LiB10Cl10、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、Li、Li(B(C))[リチウム−ビスオキサレートボレート(LiBOB)]、Li(B(C)F)等のホウ酸塩類、LiN(FSO、LiN(C2l+1SO)(C2m+1SO){l、mは1以上の整数}等のイミド塩類などが挙げられる。リチウム塩は、これらを1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。これらのうち、イオン伝導性、電気化学的安定性等の観点から、少なくともフッ素含有リチウム塩を用いることが好ましく、例えばLiPFを用いることが好ましい。特に高温環境下においても負極の表面に安定な皮膜を形成する点から、フッ素含有リチウム塩とオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩(例えば、LiBOB)とを併用することが好適である。リチウム塩の濃度は、非水溶媒1L当り0.8〜1.8molとすることが好ましい。特に高出力化のためには、1.2〜1.5molがより好ましい。
【0063】
本実施形態において、正極活物質に含有されるWの一部は、電池の充電中に溶解し、負極へ泳動して、負極の表面に析出する。この溶解・析出により負極表面活物質の表面に微小かつ均一にWまたはタングステン化合物を析出させる。負極内の不定形/非晶質炭素は、黒鉛系炭素に比較して貴な反応電位をもつため、不定形/非晶質炭素の存在領域において表面被膜の形成が優先的に生じる。このように、Wを含む表面被膜を負極内の不定形/非晶質炭素の上に形成させることで、充電時のLi吸蔵反応の反応過電圧を低下させることが可能となる。
【0064】
正極活物質としてWを含有する正極に、リン酸化合物とが共存していると、リン酸化合物の触媒作用によって正極でのWまたはタングステン化合物の分解反応の速度が変化する。このため、リン酸化合物とWまたはタングステン化合物が正極内に共存することで、負極で電解液およびLiイオンが分解し表面被膜が形成する際にWを含む表面被膜を負極活物質上に形成できる。
【0065】
また、初期の充電時、一定範囲の充電を行った後に高温条件で一定期間放置することで、負極の表面被膜を効果的に形成させることもできる。より具体的には、後述する電池の定格容量の40〜80%の充電を行い、45〜80℃の温度条件、10〜30時間の放置期間が好ましい。
【0066】
Wまたはタングステン化合物を含有する表面被膜を形成した不定形/非晶質炭素は、黒鉛系炭素に比較して貴な反応電位をもち、また多配向の組織構造を有し、かつ、反応過電圧が低い被膜が形成されているため、Li吸蔵反応の反応に優れる。さらに、導電性に優れる黒鉛系炭素を混合して、負極合剤とすることで、不定形/非晶質炭素の電子伝導性を保持することが可能となる。電流は抵抗が低い部分に集中するため、負極合剤内では、Wを含有する表面被膜を形成した不定形/非晶質炭素により電流が集中するようになるため、電池抵抗を低減することが可能となる。
【0067】
Wまたはタングステン化合物を含有する表面被膜を形成した不定形/非晶質炭素は、負極合剤内に多量にかつ負極面内方向に均一に存在するほうがLi吸蔵反応に優れる。このため、電子伝導性を維持しつつ、最も効果を発揮するためには、不定形/非晶質炭素の凝集を防ぎ、分散させるほうがよい。また、不定形/非晶質炭素の反応に関わる比表面積が大きいほうがよい。
【0068】
図1は、本実施形態における負極の模式図である。黒鉛系炭素材10の表面に不定形/非晶質炭素材12が分散して存在する。不定形/非晶質炭素材12は、黒鉛系炭素材10に対して固着していない状態で接触し、電気的接続状態にある。また、電池の充電中に溶解し負極へ泳動して、不定形/非晶質炭素材12の表面にタングステン化合物の被膜14が形成される。
【0069】
次に、実施例について説明する。
【実施例】
【0070】
<実験例1>
[正極活物質の作製]
NiSO、CoSO、及びMnSOを水溶液中で混合し、共沈させることで得たニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を焼成して、ニッケルコバルトマンガン複合酸化物を作製した。次に、当該複合酸化物と水酸化リチウムと、酸化タングステン(WO)とを、リチウムと、遷移金属全体であるニッケルコバルトマンガンと、タングステンとのモル比が1.2:1:0.005になるように、らいかい乳鉢を用いて混合した。この混合物を空気中で焼成した後、粉砕することにより、Wが含有したリチウム遷移金属酸化物に正極活物質を得た。得られた正極活物質をICPで元素分析したところ、遷移金属全体に対する各元素のモル比はNi:Co:Mn:W=47:27:26:0.5であった。
【0071】
[正極の作製]
上記正極活物質と、WOを活物質に対して0.5wt%、LiPOを活物質に対して1wt%混合し、これらの混合物と、カーボンブラックと、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、91:7:2の重量比で混合した。当該混合物に分散媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加して混練し、正極合剤スラリーを調製した。次に、正極集電体であるアルミニウム箔上に正極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させて、アルミニウム箔に正極合剤層を形成した。上記合剤層を形成した集電体を所定のサイズに切り出し、圧延して、アルミニウムタブを取り付け、正極とした。
【0072】
[負極の作製]
結着剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)とカーボンブラック(CB)と水とを石川式らいかい機により30分間混合し、CB分散液を作製した。次に、作製したCB分散液と、負極活物質である黒鉛粉末と、CMCと、スチレンブタジエンゴム(SBR)と水とを混合し負極合剤スラリーを調製した。この際、黒鉛およびCB、CMC、SBRのそれぞれの質量の比が98.9:0.7:0.4となるように調製した。また、黒鉛とCBとの質量比は93:7となるようにした。
【0073】
次いで、負極合剤スラリーを銅箔製の負極集電体に塗布、乾燥し負極合剤層を形成した。上記合剤材層を形成した集電体を所定のサイズに切り出し、圧延して、ニッケルタブを取り付け、負極とした。
【0074】
図2は、負極極板の表面のSEM(走査型電子顕微鏡)測定結果である。不定形/非晶質炭素材が負極極板全体に1μm以下のサイズで均一に分散していることがわかる。
【0075】
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、エチルエチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを、3:3:4の体積比で混合した。当該混合溶媒に、LiPFを1.2mol/Lの濃度となるように溶解させて非水電解液を調製した。
【0076】
[試験セルの作製]
巻回電極体の作製には、上記正極を1枚、上記負極を1枚、ポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを1枚用いた。まず、正極と負極とをセパレータを介して互いに絶縁した状態で対向させた。次に、円柱型の巻き芯を用いて、渦巻き状に巻回した。この際、正極集電タブ、及び負極集電タブは、共にそれぞれの電極内における最外周側に位置するように配置した。その後、巻き芯を引き抜いて巻回電極体を作製した。
【0077】
このようにして調製された非水電解液及び巻回電極体を、アルゴン雰囲気下のグローブボックス中にて、アルミニウム製のラミネート外装体に挿入し、ラミネート形非水電解質二次電池を作製して試験セルA1とした。
【0078】
<実験例2>
正極活物質にLiPOを混合しなかった以外は実験例1と同様にして試験セルB1を作製した。
【0079】
<実験例3>
正極活物質としてWOを混合させずに焼成を実施して、全遷移金属に対する各遷移金属の比率がNi:Co:Mn=35:35:30であるリチウム遷移金属酸化物を使用し、LiPO、WOを混合しなかった以外は実験例1と同様にして試験セルB2を作製した。
【0080】
<実験例4>
負極合剤スラリーを調製時にカーボンブラックを混合しなかった以外は、実験例1と同様にして試験セルB3を作製した。
【0081】
<実験例5>
負極合剤スラリーを調製時にカーボンブラックを混合しなかった以外は、実験例2と同様にして試験セルB4を作製した。
【0082】
<実験例6>
負極合剤スラリーを調製時にカーボンブラックを混合しなかった以外は、実験例3と同様にして試験セルB5を作製した。
【0083】
[不定形/非晶質炭素の分散度の評価]
試験セルA1に用いた負極を表面からSEMを用いて観察し、不定形/非晶質炭素のサイズを測定した。SEMによる粒子径の観察は、任意の10μm×8μmの領域を観察し、不定形/非晶質炭素の粒子径を測定した。この領域内の粒子の90%以上がある粒径以下の際、この粒径を二次粒子径とした。
【0084】
[出力特性の評価]
25℃の温度条件において、0.2I・t(Cレート)の電流密度で定格容量の60%となるように充電を行い、75℃で22時間放置した。その後、4.1Vまで定電流充電を行い、4.1Vの定電圧で電流密度が0.05I・t(Cレート)になるまで定電圧充電を行った。なお、25℃の温度条件において、0.2I・t(Cレート)の電流密度で2.5Vまで定電流放電を行ったときの放電容量を試験セルの定格容量とした。
【0085】
次に、定格容量の半分の容量まで0.2I・tの電流密度で充電し、その後、−30℃
とした後、0.2〜1.5I・tの電流密度で10秒間放電して、10秒後の電圧を測定した。
【0086】
測定された電圧をそれぞれの電流密度でプロットしてその値を傾きとして使用して抵抗値を算出した。
【0087】
また、B2の抵抗値を基準にしてA1とB1の抵抗低下率を、またB5の抵抗値を基準にしてB3とB4の抵抗低下率を、次式により算出した。
抵抗低下率=試験セルの抵抗値/試験セル(基準セル)の抵抗値
【0088】
結果を表1に示す。
【表1】
【0089】
表1から分かるように、実験例の試験セルA1(正極にW含有、WO混合、LiPO混合、負極にカーボンブラック((CB)添加)の場合は、対応する実験例の試験セルB1及びB2に比べて、優れた抵抗の低減が達成できていることがわかる。これは、正極にW化合物とリン酸化合物が存在することで、負極の不定形/非晶質炭素材上に低抵抗な被膜を形成することができ、電池の低温時の抵抗低減が達成できたと考えられる。以上より、試験セルA1では、出力特性が向上していることが確認された。
【0090】
また、実験例の試験セルB3〜B5は、負極に不定形/非晶質炭素が存在しないため、 不定形/非晶質炭素材上に低抵抗な被膜を形成することがなく、電池の低温時の抵抗低減
が十分に達成されていないことが確認された。
【0091】
<実験例7>
実験例1と同様にして試験セルを作製した。その後、25℃の温度条件において、0.2I・t(Cレート)の電流密度で定格容量の60%となるように充電を行い、75℃で22時間放置した。次に0.2I・t(Cレート)の電流密度で2.5Vまで定電流放電を行った。
【0092】
その後、セルを解体し、充放電を行った負極と、WOを混合しなかった以外は実験例1で使用した正極と同じ仕様で未充電の正極活物質を用いた正極を使用して、同様に試験セルC1を作製し、低温での抵抗測定を実施した。
【0093】
<実験例8>
解体前の正極として、W化合物、およびLiPOを混合していない正極を使用した
以外は実験例7と同様にして試験セルD1を作製して低温での抵抗測定を実施した。
【0094】
結果を表2に示す。
なお、D1の抵抗値を基準にしてC1の抵抗低下率を算出した。
【表2】
【0095】
表2から分かるように、初期の充電時にW化合物、リン酸化合物が共存した正極を使用しなければ、その後、正極にW化合物、リン酸化合物が共存した正極を使用しても電池の低抵抗化は達成できない。不定形/非晶質炭素材が存在する負極に表面被膜が形成されるのは主に初期の充電時とその後の高温放置処理であり、これらの処理を実施する際にW化合物、リン酸化合物が共存した正極を使用することで不定形/非晶質炭素材が存在する負極に低抵抗な表面被膜を形成させ、電池の低抵抗が達成できる。
【0096】
<実験例9>
カーボンブラックの混合量を黒鉛に対して0.5wt%としたこと以外は、実験例1と同様にして試験セルE1を作製した。
【0097】
<実験例10>
カーボンブラックの混合量を黒鉛に対して2wt%としたこと以外は、実験例1と同様にして試験セルE2を作製した。
【0098】
<実験例11>
CB分散液の作製時にらいかい時間を5分間とした以外は、実験例1と同様にして試験セルE3を作製した。
【0099】
<実験例12>
正極活物質にWOを混合しなかった以外は実験例1と同様にして試験セルE4を作製した。
【0100】
セルを試験して測定された抵抗を表3に示す。
なお、B3の抵抗値を基準にしてA1とE1〜E4の抵抗低下率を算出した。
【表3】
【0101】
表3から分かるように、不定形/非晶質炭素材はその混合量が多いほうがより低抵抗化を達成できることが分かる。
【0102】
また、不定形/非晶質炭素材の二次粒子径は均一に分散されているほうがより低抵抗化を達成できることが分かる。
【0103】
不定形/非晶質炭素材にタングステン又はタングステン化合物の被膜を形成することで、充電時のLi吸蔵反応の反応過電圧を低下させることができる。このため、不定形/非晶質炭素材の混合量が多く、また、不定形/非晶質炭素材の二次粒子径が小さく、負極内に均一に分散されているほうが、負極に流れる電流密度が均一に緩和され、より低抵抗化を達成できる。
【0104】
さらに、正極合剤内のタングステン化合物は活物質の焼成時にW混合し、且つ、焼成後にWOを混合することによって、より低抵抗化を達成できることが分かる。このことから、正極合剤内にWOが存在することで、充電時にWOの分解が生じ、負極の不定形/非晶質炭素材にタングステンまたはタングステン化合物の被膜の形成が促進されて、負極の低抵抗化を達成することができると考えられる。
【0105】
なお、添加するタングステン酸化物としては、WO以外にWでもよい。
【0106】
以上説明したように、本実施形態では、非水電解質二次電池の抵抗を低減させ、出力特性を向上させることが可能である。
【符号の説明】
【0107】
10 黒鉛系炭素材、12 不定形/非晶質炭素材、14 W含有被膜。
図1
図2