特許第6588081号(P6588081)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6588081プロテクタエレメントが設けられた少なくとも1つの擦過防護ゾーンを備えた布製の衣服およびこのような衣服を製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588081
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】プロテクタエレメントが設けられた少なくとも1つの擦過防護ゾーンを備えた布製の衣服およびこのような衣服を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/015 20060101AFI20191001BHJP
   A63B 71/08 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   A41D13/015
   A63B71/08 Z
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-504175(P2017-504175)
(86)(22)【出願日】2015年7月24日
(65)【公表番号】特表2017-523319(P2017-523319A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(86)【国際出願番号】EP2015067072
(87)【国際公開番号】WO2016012619
(87)【国際公開日】20160128
【審査請求日】2018年5月29日
(31)【優先権主張番号】102014010868.6
(32)【優先日】2014年7月25日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】202014005975.6
(32)【優先日】2014年7月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504303687
【氏名又は名称】エクス−テクノロジー スイス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】X−Technology Swiss GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ボード ランベアツ
【審査官】 姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04810559(US,A)
【文献】 実開昭60−181319(JP,U)
【文献】 実開昭62−051113(JP,U)
【文献】 特開2000−328328(JP,A)
【文献】 特開2014−111380(JP,A)
【文献】 特開2005−027898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/015
A63B 71/08
A41D 19/00
A41D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテクタエレメント(12,13)が設けられた少なくとも1つの擦過防護ゾーン(111,112,113,114,121,122,123)を備え、該擦過防護ゾーン(111,112,113,114,121,122,123)において、複数のプロテクタエレメント(12,13)が互いに間隔を空けて布製のベース(11)に取り付けられており、前記プロテクタエレメント(12,13)は、耐摩耗性の粒子が包埋されたポリママトリックスから成る、布製の衣服(10,110,120)であって、
前記擦過防護ゾーン(111,112,113,114,121,122,123)において、前記布製のベース(11)は少なくとも20%伸長可能な編物から形成されており、
前記プロテクタエレメント(12,13)は瘤形に形成され、広幅の底面で前記布製のベース(11)に固着し、かつ外方に向かって先細になっており、
前記プロテクタエレメント(12,13)の、頂部と前記底面との間で測定される高さが、前記底面における面直径の0.1倍〜0.5倍であり、
前記布製のベースと、該布製のベースにおける互いに隣接するプロテクタエレメントの間の中心から延びそれぞれ接線方向で1つのプロテクタエレメントに接触している接線との間の角度として定義される滑り角が、45°未満であり、
種々異なったサイズのプロテクタエレメント(12,13)が取り付けられており、2列の比較的大きなプロテクタエレメント(12)の間に、少なくとも1列の比較的小さなプロテクタエレメント(13)が配置されている
ことを特徴とする、布製の衣服。
【請求項2】
前記プロテクタエレメント(12,13)は、球欠形状またはレンズ形状である、請求項1記載の衣服。
【請求項3】
前記プロテクタエレメントは、炭化ホウ素と硬化可能なポリマ添加剤とから成る、請求項1または2記載の衣服。
【請求項4】
前記比較的大きなプロテクタエレメント(12)相互の間隔は、前記布製のベース(11)が伸長される着用状態では、前記比較的大きなプロテクタエレメント(12)の底面における平均的な直径の少なくとも1.0倍であり、予備伸長した状態では、前記底面における平均的な直径の最大で3.0倍である、請求項1から3までのいずれか1項記載の衣服。
【請求項5】
前記ベース(11)における前記プロテクタエレメント(12,13)の直径は、2mm〜6mmである、請求項1から4までのいずれか1項記載の衣服。
【請求項6】
前記ベース(11)における前記比較的大きなプロテクタエレメント(12)の直径は、4mm〜6mmであり、前記ベース(11)における前記比較的小さなプロテクタエレメント(13)の直径は、2mm〜4mmである、請求項1から5までのいずれか1項記載の衣服。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の、プロテクタエレメント(101)が設けられた少なくとも1つの擦過防護ゾーン(111,112,113,114,121,122,123)を備えた布製の衣服(100,110,120)を製造する方法であって、
1)布製の支持層を準備し、
2)ペースト状の硬化可能な被覆材料(5)を準備し、
3)前記プロテクタエレメント(101)を形成するために、前記支持層の表面にそれぞれ1個分の複数の前記被覆材料(5)を塗布し、このときそれぞれ1個分の前記被覆材料(5)を、該それぞれ1個分の被覆材料が互いにオーバラップしないように、かつ前記支持層の表面の一部だけしか前記被覆材料(5)によって覆われないように、前記表面に配置し、
4)前記被覆材料(5)を硬化させて、前記支持層の上に複数の硬いプロテクタエレメント(101)を形成する
というステップを少なくとも含む方法において、
a)前記布製の支持層は伸長可能であり、かつ該布製の支持層を、両側が開放した布製のチューブ(1)として準備し、前記被覆材料(5)の塗布前に、支持エレメント(2)を前記チューブ(1)内に導入し、前記支持エレメント(2)によって前記チューブ(1)を予め伸長させ、予定されている擦過防護ゾーンにおいて折り目なしに緊張させるステップと、
b)前記プロテクタエレメント(101)を形成するために複数の凹面状の成形キャビティ(11,21)を有する、少なくとも1つの成形エレメント(10,20)を使用し、前記成形キャビティ(11,21)をペースト状の被覆材(5)によって満たし、前記成形エレメント(10,20)の、前記成形キャビティ(11,21)の開口を備えた表面(12,22)を、前記支持エレメント(2)によって支持された前記チューブ(1)に載置するステップと、
c)前記被覆材(5)を硬化させるステップと、
d)前記成形エレメント(10,20)を前記布製のチューブ(1)から取り外すステップと、
を含むことを特徴とする、布製の衣服を製造する方法。
【請求項8】
前記ステップb)において、
b1)平らな成形プレート(10)を成形エレメントとして使用し、薄い掻取り補助プレート(14)を前記成形プレート(10)上に載置するステップであって、前記掻取り補助プレート(14)の厚さは、前記成形キャビティ(11)の深さの1/5未満であり、前記掻取り補助プレート(14)は開口(15)を備えていて、該開口(15)の孔形状は、前記成形プレート(10)の前記表面(12)における、前記成形キャビティ(11)の開口横断面に合致している、ステップと、
b2)前記掻取り補助プレート(14)の前記開口を通して、前記成形プレート(10)の前記成形キャビティ(11)内に前記ペースト状の被覆材料(5)を注入するステップと、
b3)前記掻取り補助プレート(14)の表面を掻き取るステップと、
b4)前記掻取り補助プレート(14)を前記成形プレート(10)から取り外すステップと、
b5)前記成形プレート(10)の、前記成形キャビティ(11)の前記開口が設けられている前記表面(12)を、前記チューブ(1)上に載置するステップと、
をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
1つの掻取り補助プレート(14)によって覆われていて前記成形キャビティ(11)が被覆材(5)によって満たされている2つの成形プレート(10)を同時に使用し、前記両成形プレート(10)を、前記支持プレート(2)によって支持された前記チューブ(1)の互いに反対に位置している側に載置する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ステップb)において、
b1)プロテクタエレメント(101)を形成するために、複数の凹面状の成形キャビティ(21)を有する少なくとも1つの成形エレメント(20)を準備するステップであって、前記成形キャビティ(21)は、それぞれ1つの広幅の底面を、布製の支持層に向けられた表面(22)に有し、かつ反対側に位置する表面(24)に細い開口(23)を有している、ステップと、
b2)前記成形エレメント(20)の、前記成形キャビティ(21)の前記広幅の底面が設けられた前記表面(22)を、前記支持エレメントによって支持された前記チューブ(1)上に載置するステップと、
b3)前記ペースト状の被覆材料(5)を、前記成形エレメント(20)の前記細い開口(23)を通して前記成形キャビティ(21)内に注入するステップと、
b4)前記成形キャビティ(21)の前記細い開口(23)を備えた前記表面(24)を掻き取るステップと、
をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記布製の支持層を立体の編物によって形成し、かつ前記チューブ(1)は丸編みチューブである、請求項7から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記成形エレメント(10,20)における少なくとも前記成形キャビティ(11,21)に、前記ペースト状の被覆材(5)を装入する前に、離型剤(13)を塗布する、請求項7から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記チューブ(1)は、少なくとも20%〜40%の伸長可能性を有している、請求項7から12までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテクタエレメントが設けられた少なくとも1つの擦過防護ゾーンを備え、請求項1の前段部に記載の特徴を有する布製の衣服に関する。
【0002】
さらに本発明は、請求項の前段部の特徴を有する、このような布製の衣服を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
オートバイ衣服の分野では、例えば独国特許出願公開第10014025号明細書に開示されているように、組み込まれたプロテクタを有する防護衣服が益々定着している。これらのプロテクタは、脊椎の骨折を回避するために転倒時に脊椎を支持するのに役立つ。このようなプロテクタは、擦過傷に対する防護のためには単に条件付きでしか適していない。それというのは、転倒時に危険にさらされる身体部分は、ライダーの可動性を制限することなしには、中実なプロテクタエレメントによってカバーすることができないからである。
【0004】
ライダー、サイクリストまたはローラスケータの転倒時に、走路への直接的な衝突を原因とした怪我のリスクは僅かである。2輪運転者またはスケータは、走路に対して比較的高い速度を出しており、ひいては大きな運動エネルギを有しているので、転倒時には鋭角を成して走路に衝突し、そしてかなり長い区間にわたって走路表面上を滑り、その後で摩擦力によって制動を掛けられる。
【0005】
重度の擦過傷を生じさせる直接の機械的な影響の他に、この段階においては熱の発生も考慮しなくてはならない。時速60kmの走行速度では、重さ80kgの運転者は、約11kJの運動エネルギを有する。従って、アスファルトまたはコンクリート上での転倒後の約3〜4秒の滑り時間では、停止するまでに1秒当たり約3000Wが特に熱に変換される。
【0006】
しかしながら、露出した身体箇所が擦過防護エレメントによって十分に保護されている限り、転倒者が走路表面上をコントロールされて滑走することが、さらに重度の怪我を回避する最も確実な可能性である。しかしながら、滑り動作がブロックされたり走路と人間衣服との間の摩擦値が極めて高くなったりすると、激しくごろごろと転がることがあり、これにより重度の怪我が発生することになる。このような現象は、まさに例えばサイクリストが自身の自転車からまだ離れていないような場合に生じる。逆に摩擦値があまりに低いと、転倒後の滑走距離が極めて長くなり、転倒者が例えば走路縁部を越えて走路縁部に沿ったガードレール内に滑って進入するおそれがある。
【0007】
国実用新案第202011051635号明細書に記載されているプロテクタエレメントが設けられた衣服では、危険にさらされる身体部分を大面積で覆う比較的大きな面状のプロテクタエレメントの代わりに、特に身体における立体的な形状をもカバーするために、互いに相補し合う複数の小さなプロテクタエレメントが、互いに小さな間隔を空けて配置されている。この場合、擦過傷に対する防護が提供されるのみならず、切り傷および火の影響に対する防護も提供されるようになっている。従って、防護ゾーンにおける布製の面はほとんどプロテクタエレメントによって覆われていて、極めて細い中間空間だけがそのまま残っている。モータを備えた2輪の運転者に関しては、多分に常の走行風によって、熱および汗を残りの覆われていないゾーンに十分に排出することができる。走行時、サイクリング時またはローラスケート時における温度調整および湿度調整のために、覆われていない残りの面部分は極めて僅かである。また、これらのスポーツ形式において危険にさらされるすべてのゾーンを防護することが望まれる場合には、防護被覆層の重量も極めて大きくなる。最後に、プロテクタエレメントはその外側に比較的鋭い縁部を有しているという問題がある。これによって、確かにプロテクタエレメントの間の間隙を小さくして、切り傷および火傷に対する効果的な防護を提供することができる。しかしながら、このような縁部は地面の凹凸において止まり、これによってときには、怪我のおそれを高めることになる。
【0008】
国際公開第2013/053587号に開示された、防護機能を備えた布では、硬化可能なポリマとその中に包埋された耐摩耗性の粒子とから成る混合物が、織布に点状に装着されている。このように構成された瘤形のプロテクタエレメントは、分配されて取り付けられているので、その間の面領域は覆われていないままであり、織布の通気性は、僅かしか制限されない。ポリマは塗布後に上側の織布層に進入するようになっているので、硬化によって固着が達成される。しかしながら、転倒後の滑り段階における接触熱に対する防護効果は制限される。なぜならば、織布はいずれにせよ薄く、比較的深い所に位置する織布層にまで達するプロテクタエレメントによって、断熱に対しては極めて薄い残留層しか機能することができないからである。
【0009】
着用時に織布に折り目が形成されていると、転倒時に折り目が走路表面とその下に位置するプロテクタエレメントとの間に位置してしまうことがある。これによって、防護衣服が裂け、皮膚が剥き出しになって保護されない状態になるおそれが生じる。織布の僅かな伸長可能性と織布内における僅かな固着深さとに基づいて、プロテクタエレメントが織布から裂けて外れることもある。さらに、単純に穿孔されたステンシルを用いて、ペースト状のポリマ混合物から、均一に配置されかつ均一に成形された複数のプロテクタエレメントを形成することは、困難であることが分かっている。
冒頭に述べた形式の衣服は、米国特許第4810559号明細書に開示されている。ここでは小さなプロテクタエレメントが設けられており、これらのプロテクタエレメントは、織布の片側または両側に固着されている。しかしながら単純な形状によって、転倒者が走路上を滑る場合に小さな滑り角が得られることを、常に保証することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ゆえに、本発明の第1の課題は、冒頭に述べた形式の、プロテクタエレメントが設けられた少なくとも1つの擦過防護ゾーンを備えた布製の衣服を改良して、完全な停止までの全滑走距離にわたって皮膚を擦過傷に対して効果的に保護するのみならず、衣服の擦過防護ゾーンにおける表面と道路のアスファルト表面またはコンクリート表面との間の組合せにおいて特定の摩擦値、つまり走路上における人間の確定された滑走を可能にしかつ二次的なごろごろと転がる(Ueberschlag)ことを回避するような摩擦値が生じるようにもすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を備えた、プロテクタエレメントが設けられた少なくとも1つの擦過防護ゾーンを備えた衣服によって、解決される。
【0012】
本発明にとって重要なことは、布の弾性とプロテクタエレメントの硬度、形状および配置形態との相互作用である。
【0013】
本発明との関連において「滑り角」と呼ばれる値は、個々のプロテクタエレメントが走路凹凸または異物に当接した場合に、個々のプロテクタエレメントに対して力ベクトルがどのように作用するかを示す尺度である。この「滑り角」は、本発明では、プロテクタエレメントを支持する布地の外側面と、布製のベースにおける互いに隣接するプロテクタエレメントの間の中心から延びそれぞれ接線方向で好ましくは球欠形状に成形されたプロテクタエレメントに接触する接線と、の間の角度として定義される。
【0014】
滑り角はまた、プロテクタエレメントの間に露出している布地の領域が布製のベースの表面と接触するまでに、平らな走路上のプロテクタエレメントを走路表面に対してどれだけの角度傾けて当て付けることができるかを示す尺度でもある。
【0015】
衣服における本来の滑り角は、身体における着用時に、プロテクタエレメントが設けられている布製の面状物の伸長に基づいて減少する。編物の選択は特に有利である。それというのは、運動選手をさらに保護するために、特別な処理に基づいて布製の面状物の顕著な伸長を可能にする、大きな抗張力の繊維を使用することができるからである。つまり、伸長はまず糸ループの伸びによって得られ、繊維の材料弾性による伸びが一番ではない。このことは、編み上げられた布の最大の伸長、例えば最大100%が可能になるまで、上方に向かっての伸長領域が制限されるということをも意味する。これによって、プロテクタエレメントが過度に大きく互いに離反する方向に引っ張られ、かつ露出している面領域が過度に大きくなることが阻止される。
【0016】
さらに、編物における比較的大きな繊維間隔および糸間隔は、装着されたプロテクタエレメントの固着可能性をより良好にする。
【0017】
本発明に係る衣服は、名目の衣類サイズに関してアンダサイズを有しているので、着用時に布製のベース体は既に最初に少なくとも20%予備伸長する。これによって、衣服は身体にスキンタイトに接触し、ドーム形のプロテクタエレメントは皮膚表面に沿って正確に設けられる。そして折り目も回避される。折り目が生じていると、転倒時に地面に引っ掛かったままになり、防護衣服を切り裂くような起点が形成されることになる。
【0018】
予備伸長の他に、布製の面状物を、高負荷を加えて少なくともさらに20%追加的に伸長させることが可能である。
【0019】
大きな予備伸長によって、プロテクタエレメント相互の間隔は増大し、滑り角は小さくなる。転倒時に織布が追加的にさらに伸長すると、滑り角はさらになお小さくなる。
【0020】
衣服の着用者が、特に2輪のレースにおいて通常の高い速度で転倒すると、着用者は、道路に向かって垂直に倒れるのではなく、その慣性に基づいて鋭角を成して走路に衝突する。まさにダウンヒル走行時には、高い速度とさらに追加的な荒れ地傾斜が存在しているので、比較的小さな衝突角度(Aufprallwinkel)が得られる。走路表面への身体の衝突後に、重度の怪我を回避するためには、衣服の外側面と走路表面との間に定義される摩擦値によって、転倒者が制動されて停止することが必要であるが、この停止は、ごろごろと転がることを回避するために過度に急激であってはならない。
【0021】
本発明に係る衣服によって防護される人間は、理想的には、好ましくは球欠形状のプロテクタエレメントの頂部だけが走路表面に接触するように走路上を滑る。
【0022】
特に炭化ホウ素から製造されたプロテクタエレメントの高い硬度に基づいて、摩耗は僅かであり、転倒後の停止領域においてプロテクタエレメントは確かにその高さを減じられてはいるが、布製のベースに到るまで完全に摩耗することはあり得ない。同時に、球欠形状のプロテクタエレメントは、その体積に関して比較的大きな表面積を有しているので、発生する摩擦熱を、既にその発生箇所において放出することができる。編物内への熱伝達は、編み上げられた布製の下地の熱伝導率が低いことに基づいてゆっくりとしか行われない。
【0023】
さらに、編物は織布に比べて明らかにより厚く形成することができ、しかもこのとき通気性および温度調節が損なわれることはない。
【0024】
しかしながらまた、従来技術とは異なり本発明によれば、平らな走路表面におけるいわば理想的な転倒経過ではない場合でも、上に述べた防護効果が得られる。むしろ実地においては、亀裂が走路を横切っていたり、または転倒者と走路との間に挟み込まれ得る砂や砂利のような異物が走路上にあったりすることを考慮しなくてはならない。
【0025】
しかしながら、本発明に係る衣服では、プロテクタエレメントが走路における歪みまたは亀裂に衝突すると、その平らでかつ球欠形状の形に基づいて、小さな滑り角との関連において、多くの場合には問題なく障害物を越えて滑ることができる。それにもかかわらず、幾つかのプロテクタエレメントが障害物に引っ掛かるような場合には、布製のベースにおける伸長余力が関与し、この伸長余力は、弾性的な伸長の可能性に基づいて、転倒者のさらなる滑り過程を少なくとも急には終了させない。たとえプロテクタエレメントのライン全体が走路亀裂に嵌まり込んだとしても、人間は、ごろごろと転がるような動作が直接生じるようには制動されない。布製の下地の弾性との関連において使用されている繊維の高い抗張性によって、人間はまず一定区間はさらに滑り、このとき布の局部は緊張させられる。このとき多くの場合、ブロックされたプロテクタエレメントを離脱させるためおよびその出発位置に戻すために、十分な戻し力がある。しかしながら、最悪の場合に幾つかのプロテクタエレメントが破壊されても、少なくともこの破壊に、上に述べたごろごろと転がる動作が生じうる、突然の制動動作が結び付くことはない。幾つかのプロテクタエレメントが失われた場合でも、転倒者はさらに滑ることができ、このとき多数の残りのプロテクタエレメントによって、なおも十分に防護される。
【0026】
そのためには、比較的大きな高さを有する2列のプロテクタエレメントの間に、比較的小さな高さを有する少なくとも1列のプロテクタエレメントを配置することが好ましい。このような態様では、最初に大きなプロテクタエレメントが走路表面と接触する。人間は極めて小さな衣服サイズを選択しているので、衣服の部分が局部的に強く湾曲している場合、および/または予荷重が既に極めて大きい場合には、大きなプロテクタエレメントの間に露出して位置している布製の領域は、比較的小さなプロテクタエレメントの少なくとも1つの追加的な列によって、追加的に保護される。比較的大きなプロテクタエレメントが引き千切れた場合に、比較的低くかつ比較的小さなプロテクタエレメントは損傷しないままであり、転倒段階の残りに対する保護を提供する。
【0027】
サイズのバリエーションは、極めて強く露出していて僅かな筋肉組織しか存在しない身体領域を強く保護し、かつ比較的深い皮膚層に到るまでの擦過傷をいずれにせよ回避するようになっていてもよい。このような身体領域としては、骨盤、肩関節、肩胛骨および肘関節が挙げられる。
【0028】
プロテクタエレメントを不規則な異方性の形で配置すること、つまりプロテクタエレメントの格子形状の配置形態を意識的に回避すること、または少なくとも局部的なサブパターンを擦過防護ゾーン全体にわたって繰り返さないことが、特に有利であると判明している。布地における亀裂縁は、これによって回避される。
【0029】
最終的に、プロテクタエレメントの配置時における適合は、当該衣服が使用されるスポーツ形式に基づいて行うことができる。ロードレース選手の場合には、他の身体部分が当て嵌まり、スタートフィールドにおいて転倒するマラソンランナまたは凍結したまたは凍ってざらざらの雪面上で転倒するスキーヤの場合よりも、転倒時に摩擦によって大きな運動エネルギを消滅させる必要がある。従って本発明による別の課題は、プロテクタエレメントが設けられた少なくとも1つの擦過防護ゾーンを備えた布製の衣服の製造を改善しかつ容易にすることである。
【0030】
この課題は、本発明によれば、請求項の特徴部に記載の、プロテクタエレメントが設けられた少なくとも1つの擦過防護ゾーンを備えた布製の衣服を製造する方法によって解決される。
【0031】
本発明にとって重要なことはまず、チューブ形状をした伸長可能な布製の支持層を使用することである。
【0032】
予備伸長によって製造は容易になる。それというのは、支持層は、特に支持プレートのような挿入された支持エレメントによって緊張し、支持エレメントにしっかりと接触し、さらなる加工時におけるずれが回避されるからである。さらにプロテクタエレメントは、後におけるその使用時に位置すべきように取り付けることができる。なぜならば、本発明によれば、布製の支持層の、少なくとも20%の高い伸長可能性が存在するからである。これによって形成された衣服は、この衣服が、製造中の支持手段上の密着と同様に着用者に密着している場合にしか、その防護機能を満たさない。これに対応して、衣服は、既製服サイズに応じて比較的小さくまたは比較的大きなアンダサイズで製造される。つまり予備伸長された支持層において、プロテクタエレメントの所望のパターンを、互いに所望の間隔をもって生じさせることができる。支持エレメントの取出し後に、支持層は本来の寸法に収縮し、このときプロテクタエレメント相互の間隔は減少する。
【0033】
編物製品の使用には、完成した衣服において、100%に到るまでの大きな伸長寸法を生じさせることができるという利点がある。これによって衣服は、いずれにせよ折り目なしに身体に接触する。編物製品は、さらに高い通気性を提供し、織布に比べて著しく大きな層厚さを有している。これによって、断熱性が決定的に改善され、プロテクタエレメントの固着が織布に比べてより深い層において可能であり、しかもこのとき摩擦によって生じる接触熱に対する防護が不都合に低下することはない。布製の支持層はこの場合丸編みチューブである。
【0034】
丸編みチューブの形の編物の使用は、これによって完成した衣服における防護されない縫い目領域を回避すること、および擦過防護ゾーンを身体領域の全周に形成することができることに基づき、好適である。本発明によれば、そのために好ましくは支持プレートが丸編みチューブに挿入され、これによって、プロテクタエレメントを製造することができる上側の表面と露出した下側の表面とが形成される。また、支持プレートを取り外して丸編みチューブを新たにその中に位置決めすることによって、丸編みチューブを区間毎に処理することも可能である。
【0035】
確定された円錐形または球欠形状の幾何学形状を有する複数のプロテクタエレメントを製造するために、本発明によれば、複数の凹面状の成形キャビティを有する成形エレメントを使用する。成形エレメントとしては、平らな成形プレートが特に適している。しかしながらまた、成形ローラも使用することができる。
【0036】
本発明に係る方法の第1の変化形態では、好ましくは、複数の凹面状の成形キャビティを有する成形プレートが使用され、成形キャビティは、それぞれ1つの広幅の底面を、布製の支持層に向けられた表面に有し、かつ反対側に位置する表面に先細の開口を有している。成形プレートは、成形キャビティの、広幅の開口を備えた表面で、支持プレートによって支持された丸編みチューブに、もしくは他の伸長可能な布製の支持層に載置される。次に、ペースト状の被覆材料が、成形プレートの細い開口を通して下方に向かって成形キャビティ内に押し込まれ、成形プレートは、細い開口を備えた表面において掻き取られる。このようにして成形キャビティを完全に満たすことができ、かつ同時に、成形プレートの下に位置する編物内にまで押被覆材をし込むことができる。
【0037】
成形キャビティの小さな上側の開口においてしか、被覆材は空気接触せず、かつそこにおいてしか小さな窪み箇所(Einfallstelle)は生じ得ない。成形キャビティの表面における開口は、極めて細く保たれるので、単純に穿孔されたスクリーンの場合とは異なり、掻取り動作によって、理想的な幾何学的な半球形状からの僅かな変位しか生じない。
【0038】
本発明に係る方法の別の好適な変化態様では、同様に、複数の凹面状の成形キャビティを備えた成形エレメントとして成形プレートが使用されるが、成形キャビティは、表面に別の開口を有していない。むしろ、成形プレートは開口を上に向けて位置決めされ、そして充填される。片側においてのみ開放しているこのような成形キャビティが、焼き型のように簡単にペースト状の被覆材によって満たされ、かつ表面を掻き取られると、それぞれの成形キャビティの底部に窪み箇所が形成されることになる。成形プレートをひっくり返してチューブに載置した後、ペースト状の被覆材と編物との表面的な結合が、下方に向かって沈む被覆材に基づいてしか行われ得ない。そして、被覆材に対して圧力を加えることができないので、被覆材を布製の層内に進入させることができるようにするために、被覆材の粘性を低下させなくてはならない。しかしながら、このようにすると、まだ硬化していない分量(Portion)の形状安定性が損なわれることになり、その結果、硬化したプロテクタエレメントの形状が均一ではなくなり、所望の幾何学形状に対応しなくなってしまう。さらに、掻取り動作によって、被覆材は、成形キャビティを取り囲む縁部近傍領域へと引き摺られることになる。
【0039】
この方法変化態様による本発明に係る方法の特殊性は、各成形キャビティに所望のように過剰の被覆材を準備することだけであり、これによって、丸編みチューブに成形プレートを載置した時または逆に成形プレートに丸編みチューブを載置した時に、この過剰の被覆材は、例えば編物のような布の中に押し込まれ、そこにおけるプロテクタエレメントの確実な固着のために役立つ。この過剰分は、極めて確定された形で、成形キャビティ内への被覆材料の充填前に薄い掻取り補助プレートを成形プレートに載置することによって準備され、この掻取り補助プレートの厚さは、特に成形キャビティの深さの1/5未満であり、掻取り補助プレートには開口が設けられている。掻取り補助プレートの開口形状は、成形プレートの表面における成形キャビティの開口横断面に合致している。この掻取り補助プレートと一緒に、成形キャビティへの充填が行われる。過剰の被覆材は、載置された掻取り補助プレートの表面を掻き取ることによって除去される。次いで、掻取り補助プレートは注意深く、つまり可能な限り成形プレートに対して正確に垂直な方向で取り外される。ペースト状に調節された被覆材料は、今や掻取り補助プレートの厚さ分だけ、本来の成形プレートの表面の上に盛り上がっている。この盛上がりが、上記した過剰の被覆材を形成する。
【0040】
別の好適な効果は、掻取り補助プレートの引上げによって生じる。それというのは、掻取り補助プレートにおける開口の細い縁部に被覆材が固着することに基づいて、掻取り補助プレートの引上げ時に特に過剰の被覆材の縁部が一緒に引き上げられ、中心にホッパ形状が形成されるからである。つまり、相応に硬くかつ流れないように調節された被覆材において、ほぼ角の尖った縁部が形成され、これによって布製の支持材料への圧着後および硬化後においても、このようにして製造されたプロテクタエレメントは、極めて確定された角の尖った輪郭を底部に有する。またプロテクタエレメントの残りの球面形状は、成形キャビティによって設定された形状に完全に相当している。それというのは、成形プレートとの丸編みチューブの結合時に、過剰の被覆材は織布内に押し込まれ、これによって同時に、被覆材への圧力も生ぜしめられ、その結果、成形キャビティの画定部に被覆材が完全に接触するからである。
【0041】
被覆材は、次いで硬化する。これは、被覆材の化学的な特性に応じて熱処理によって行うことができる。しかしながら、例えばUV光の照射や、2成分混合物の使用による化学的な硬化等によっても、行うことができる。
【0042】
好ましくは、成形エレメントと特に丸編みチューブのような布製の支持層とから成る複合体を、硬化炉内に入れることによって硬化が行われる。その後で、成形プレートは布製の支持層から取り外される。プロテクタエレメントを備えた布地は、今や公知のように、さらに加工されて衣服を形成する。
【0043】
成形キャビティからのプロテクタエレメントの脱離を容易にするために、成形キャビティは、好ましくは既に成形プレートの準備時に離型剤によって処理される。
【0044】
掻取り補助プレートを使用する、本発明に係る方法の第2の好適な態様は、粘性の高いペースト状の被覆材料を調節することを可能にする。それというのは、この態様では、被覆材料は、細い開口を通して押し出される必要がなく、広幅の開口側から成形キャビティ内に押し込むことができるからである。これによって、重力の短時間の影響時にも成形材が流れることはない。つまり、成形プレートをひっくり返して、開口を下に向けて載置することができる。これによって、支持プレート上に支持された、丸編みチューブのような布地に、2つの成形プレートを用いて、同時に上側面と下側面とを処理することができる。
【0045】
特に炭化ホウ素と硬化可能なポリマベース材料とから製造されたプロテクタエレメントの大きな硬度に基づいて、摩耗は僅かとなり、転倒後の走路領域において、プロテクタエレメントは確かにその高さを減じられるが、布製のベースに達するまで完全に摩耗するようなことはない。同時に、球欠形状のプロテクタエレメントは、その体積に比べて比較的大きな表面積を有しているので、相応の摩擦熱を部分的に既にその発生箇所において放出することができる。
【0046】
特に編み上げられた布製の下地では熱伝導率が低いので、内部への熱伝達はゆっくりとしか行われない。
【0047】
次に図面を参照しながら本発明を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】擦過防護ゾーンを備えた衣服を示す斜視図である。
図2】布製の支持層の準備を示す斜視図である。
図3図3aは、第1実施形態による成形プレートを下から見た斜視図、図3bは、図3aに示した成形プレートの断面図、図3cは、掻取り補助プレートを示す斜視図である。
図4図4a〜図4fはそれぞれ、プロテクタエレメントの製造の異なった段階を示す断面図である。
図5図5aは、第2実施形態による成形プレートを斜め下から見た斜視図、図5bは第2実施形態による成形プレートを斜め上から見た斜視図、図5cは、図5a、図5bに示した成形プレートの断面図である。
図6図6a〜図6cはそれぞれ、プロテクタエレメントの製造の異なった段階を示す断面図である。
図7図3bに示した成形プレートの1実施形態を示す図である。
図8図8a、図8bは、従来技術による、プロテクタエレメントを備えた衣服の断面図である。
図9図9aは、本発明に係る衣服の伸長していない状態を示す斜視図、図9bは、本発明に係る衣服の伸長した状態を示す断面図である。
図10図10a〜図10dはそれぞれ、転倒時に生じる経過における本発明に係る衣服の作用原理を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1には、ロードバイクレース用の2部分から成るスーツ100が示されている。第1の衣服は、上側部分110として形成されている。特に危険にさらされる領域は、ここでは肩と胴の側部とに位置している。肩領域には、特に大きなプロテクタエレメント101を備えた擦過防護ゾーン111が形成されている。腕に沿って、平均サイズのプロテクタエレメントを備えた第2の擦過防護ゾーン112が設けられている。自転車走行時にあまり危険にさらされない腕裏側および腕内側における第3の擦過防護ゾーン113には、比較的小さなプロテクタエレメントが取り付けられている。背領域および腰領域にも擦過防護ゾーン114が形成されている。
【0050】
上側部分110はズボン120によって補足され、このズボン120には、特に臀部の領域に到るまでの脚外側に、同様に擦過防護ゾーン121,122,123が形成されている。
【0051】
これによって、両衣服110,120の組合せにおいて、下腿の領域から膝および上腿の外側、骨盤および臀部を介して、肩に向かって身体背側に到るまでの、連続した擦過防護ゾーンが延在している。
【0052】
これに対して身体前側は、ほぼ擦過防護ゾーンなしに保たれていてよい。それというのは、自転車走行時には、正確に前方を向いて転倒することはほぼ起こり得ず、転倒時における典型的な姿勢に基づいて、むしろ一方または他方の体側側に向かって側方への傾倒が生じるからである。
【0053】
図8aには、従来技術のように構成された、プロテクタエレメント2を備えた衣服1が、断面側面図で示されている。互いに隣接するプロテクタエレメント2の間の間隙3は小さいので、ほぼ90°であるいわゆる滑り角βは、極めて大きい。理想例では、このように保護された衣服1もまた走路表面4の上を滑り、擦過傷に対する保護を提供する。
【0054】
しかしながら、実際例では、走路表面4は粗面であり、図8bに示すような凹凸(Verwerfung)または亀裂を有している。従来技術から公知の衣服1は、このような場合、そのプロテクタエレメント2の縁部が粗面先端に引っ掛かったままになり、その結果プロテクタエレメント2の裂断または急激な停止を生じさせる。
【0055】
図9aには、本発明のように構成された衣服10の一部が、つまり布部分(textiler Abschnitt)11が伸長していない状態で示されている。この布部分11は、x,xで示された一方の方向においても、それに対して垂直に延びるy座標の方向においても、複数のプロテクタエレメント12を備えている。図示の実施形態において規則的な格子に配置された比較的大きなプロテクタエレメント12の他に、中心に追加的に比較的小さなプロテクタエレメント13が配置されている。比較的大きなプロテクタエレメント12は、3〜6mmの直径Dを有している。比較的小さなプロテクタエレメント13は、2〜4mmの直径dを有している。伸長していない状態において、直径Dの約2倍に相当する格子間隔xが設けられている。プロテクタエレメント12は同時に、直径Dの0.5〜0.1倍に相当する高さHを有している。このようにして、同様なプロテクタエレメント12の間の中心から延びプロテクタエレメント12に接触する接線が生じる。この角度は滑り角αと呼ばれ、この滑り角αは、少なくとも45°未満であり、好ましくは30°以下である。
【0056】
図9bには、もう一度織布部分(Gewebeabschnitt)11が伸長した状態で示されている。ここでは、プロテクタエレメント12の格子間隔x’は少なくとも20%増大されている。プロテクタエレメント12自体の幾何学形状が変化しないことによって、滑り角α’は伸長に基づいて低下し、その結果、衣服の着用時における予荷重のみによって角度は減少し、ひいては粗面先端および異物における滑りが改善される。
【0057】
図10a〜図10cには、図1aおよび図1bに示した従来技術の図示に似た、滑り過程が示されている。下には走路4が示されており、その上には、左から右に向かって行われる滑り運動時における、プロテクタエレメント12,13を備えた衣服10が示されている。少なくとも2つの異なったサイズクラスのプロテクタエレメント12,13を備えた衣服10の好適な実施形態が示されている。
【0058】
図10aは、再び理想化された仮定に相当し、この仮定では、転倒者は、プロテクタエレメント12,13に対するサイズ関係において滑らかな走路表面上を滑る。この場合には、単に、走路4と比較的高いプロテクタエレメント12との間の接触面における摩耗だけが問題になる。幾つかのプロテクタエレメント12が、その極めて高い硬度にもかかわらず、比較的長い滑走距離において摩耗したとしても、比較的小さなプロテクタエレメント13によって追加的な保護が得られる。
【0059】
図10bには、実際の状況により強く近付けた図が示されている。身体表面の湾曲に基づいて、個々のプロテクタエレメントはより強く浮き出しているので、プロテクタエレメントの間に露出している布地領域も、走路表面にほぼ押し付けられる。そのために、好適な実施形態ではさらに、比較的小さなサイズのプロテクタエレメント13の別の列が役立つ。プロテクタエレメント12の小さな滑り角および球欠形状に基づいて、図10bに示した図では、真ん中のエレメントは小石16の上を、かつ走路の凹凸を越えて滑り、このとき布製のベースが走路と接触することはない。
【0060】
図10cには、角の尖った亀裂5を有する走路が示されている。真ん中のプロテクタエレメント12は、亀裂の縁部で引き留められる。図10dの詳細図が示すように、この場合には、布製のベース11に存在する残留弾性に基づいて、マーキングされた領域において織布11の過度の伸長が発生し、これによって本来の格子間隔は値x’に増大する。しかしながら、プロテクタエレメント12は、その平らでかつドーム形の構成に基づいて、亀裂5内には深く進入せず、さらに滑る転倒者と、弾性の織布11によって引き起こされる戻り作用によって、最終的に出発位置に戻される。
【0061】
プロテクタエレメント101を製造するために、丸編みチューブ1として形成された布製の支持層が使用される。丸編みチューブ1は公知の形式で製造される。例えば図1に示したズボン120を形成するためには、丸編みチューブ1の幅は、着用者の上半身周囲に合わせられる。チューブの下側部分を後で切り取ることによって、脚を形成することができる。
【0062】
図2に示すように、平らに置かれた丸編みチューブ1内に支持プレート2が挿入され、これによって硬い支持が得られ、丸編みチューブ1を簡単に固定することができる。丸編みチューブ1と支持プレート2とから成るユニット全体を単に固定することだけが必要であり、布地をなんらかのその他の形式で緊張させる必要はない。支持プレート2は、熱の作用下において安定したままにするために、金属またはその他の耐熱性材料から成ることが望ましい。
【0063】
図1に示した衣服110,120に複数の比較的小さなプロテクタエレメント101を形成するために、図3aに略示された成形プレート10が使用される。図面を明瞭にするために、ここにおいても以下の図面におけるように、表面12には、僅かな数の成形キャビティ11だけがさらに拡大された形で示されている。実際には、成形キャビティ11の直径は約2〜6mmである。成形キャビティ11の深さは、直径の約半分に相当する。
【0064】
キャビティ11を均一に格子形状に配置することも、単に例であると理解すべきである。それというのは、比較的長い亀裂ラインを回避するためには、プロテクタエレメントを衣服に不規則に異方性に分配配置することが好適であると判明しているからである。
【0065】
さらに、比較的大きな底面直径を有するキャビティの配置形態の中に、比較的小さなキャビティが設けられていてもよい。小さなプロテクタエレメントを組み合わせることによって、まさに、局部的に強く過度に伸長された織布(Gewebe)または編物(Gestrick)が比較大きなプロテクタエレメントの間に露出してしまうような場合に、追加的な保護が提供される。
【0066】
図3bにおける成形プレート10の断面図が示すように、成形キャビティ11は単に表面12に向かって開放されている。成形プレート10は、好ましくは、熱の作用下において十分な安定性を有しかつ手による製造時にも僅かな重量に基づいて取扱いが良好な、アルミニウムから成っている。
【0067】
成形プレート10の表面12は、図7から分かるように、成形キャビティ11の縁隆起部26に到るまでフライス加工されて下げられている。このとき切削降下部の深さは、図3cに詳しく記載された掻取り補助プレートの厚さに相当する。掻取り補助プレートの装着によって、表面12は、縁隆起部26と平らになり、同一平面を成す。
【0068】
図3cには、開口15を有する掻取り補助プレート14が示されている。開口15のサイズおよび配置形態は、成形プレート10における成形キャビティ11の開口に対応している。
【0069】
本発明に係る製造方法の第1実施形態について、図4a〜図4fに示す経時的な図を用いて説明する。
【0070】
図4aにおいて、成形プレート10は既に準備されていて、このとき成形キャビティ11は離型剤13によって処理されている。さらに掻取り補助プレート14が表面12に載置されている。左側の成形キャビティ11には、ドクタ4を用いて被覆材5が既に塗り込まれている。
【0071】
図4bでは、すべての成形キャビティ11が被覆材5によって満たされている。過剰の被覆材5は、ドクタ4を用いて除去される。
【0072】
次いで図4cに示すように、掻取り補助プレート14が上方に向かって成形プレート10から取り外される。
【0073】
相応に準備された成形プレート10は、今や、図4dに示すように裏返され、開口を下に向けて丸編みチューブ1上に載置される。丸編みチューブ1に成形プレート10を押し付けることによって、被覆材5は編物内に押し込まれる。
【0074】
図4eは、熱処理による被覆材5の硬化を示す。編物内に押し込まれた被覆材5は、これによって編物に離脱不能にかつ堅固に結合される。
【0075】
硬化後には、図4fに示すように、単に成形プレート10を丸編みチューブ1から取り外すことだけが必要である。被覆材5は硬いプロテクタエレメント101として布製のベース層に留まる。製造を終了するためには、次いでさらに支持プレート2を取り出すだけでよい。次に丸編みチューブ1は、公知のように衣服10へとさらに加工される。
【0076】
図5aには、成形キャビティ21を有する別の成形プレート20が示されており、これらの成形キャビティ21は、凹面状に、特に球欠形状に形成されていて、その広幅の底面が第1の表面22に向かって開放している。成形キャビティ21はその湾曲部の上側領域に、別の細い開口23を有している。成形プレート20の図示の実施形態においても、図面を見易くするために、僅かな数の拡大された成形キャビティだけが示されている。
【0077】
図5bには、細い開口23を備えた、成形プレート20の反対側に位置する表面24が示されている。
【0078】
図5cに示した断面図から、成形キャビティ21の位置が明らかである。開口23によって、半球の、破線で示した理想形状からの幾分の相違が生じる。
【0079】
次に、成形プレート20を使用する、本発明に係る製造方法の第2実施形態について、図6a〜図6cに示す経時的な図を用いて説明する。
【0080】
図6aにおいて、成形プレート20は既に、支持プレート2によって支持された丸編みチューブ1の上に載置されている。成形キャビティ21は、離型剤25によって予め処理されている。被覆材5は、ドクタ4を用いて成形キャビティ21内に塗り込まれる。つまり、表面24を起点として、成形キャビティ21の表面のそれぞれの細い開口23を通して塗り込まれる。
【0081】
図6bに示すように、すべての成形キャビティ21が満たされ、過剰の被覆材5は、ドクタ4によって除去される。次いで、丸編みチューブ1と成形プレート20とから成るユニットを例えば硬化炉に導入することによって、被覆材5を硬化させることができる。
【0082】
図6cに示すように、成形プレート20は硬化後に取り外され、その結果、この実施形態でも、成形キャビティ21毎のそれぞれ硬化した被覆材5は、プロテクタエレメント101として丸編みチューブ1に留まる。
【0083】
本発明の態様は、上に述べた好ましい実施形態に制限されるものではない。基本的に異なった形式の態様においても、上に述べた解決策を使用する多数の様々な変化形態が可能である。例えば、縁隆起部26は、種々様々に形成することができる。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9a
図9b
図10a
図10b
図10c
図10d