【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を備えた、プロテクタエレメントが設けられた少なくとも1つの擦過防護ゾーンを備えた衣服によって、解決される。
【0012】
本発明にとって重要なことは、布の弾性とプロテクタエレメントの硬度、形状および配置形態との相互作用である。
【0013】
本発明との関連において「滑り角」と呼ばれる値は、個々のプロテクタエレメントが走路凹凸または異物に当接した場合に、個々のプロテクタエレメントに対して力ベクトルがどのように作用するかを示す尺度である。この「滑り角」は、本発明では、プロテクタエレメントを支持する布地の外側面と、布製のベースにおける互いに隣接するプロテクタエレメントの間の中心から延びそれぞれ接線方向で好ましくは球欠形状に成形されたプロテクタエレメントに接触する接線と、の間の角度として定義される。
【0014】
滑り角はまた、プロテクタエレメントの間に露出している布地の領域が布製のベースの表面と接触するまでに、平らな走路上のプロテクタエレメントを走路表面に対してどれだけの角度傾けて当て付けることができるかを示す尺度でもある。
【0015】
衣服における本来の滑り角は、身体における着用時に、プロテクタエレメントが設けられている布製の面状物の伸長に基づいて減少する。編物の選択は特に有利である。それというのは、運動選手をさらに保護するために、特別な処理に基づいて布製の面状物の顕著な伸長を可能にする、大きな抗張力の繊維を使用することができるからである。つまり、伸長はまず糸ループの伸びによって得られ、繊維の材料弾性による伸びが一番ではない。このことは、編み上げられた布の最大の伸長、例えば最大100%が可能になるまで、上方に向かっての伸長領域が制限されるということをも意味する。これによって、プロテクタエレメントが過度に大きく互いに離反する方向に引っ張られ、かつ露出している面領域が過度に大きくなることが阻止される。
【0016】
さらに、編物における比較的大きな繊維間隔および糸間隔は、装着されたプロテクタエレメントの固着可能性をより良好にする。
【0017】
本発明に係る衣服は、名目の衣類サイズに関してアンダサイズを有しているので、着用時に布製のベース体は既に最初に少なくとも20%予備伸長する。これによって、衣服は身体にスキンタイトに接触し、ドーム形のプロテクタエレメントは皮膚表面に沿って正確に設けられる。そして折り目も回避される。折り目が生じていると、転倒時に地面に引っ掛かったままになり、防護衣服を切り裂くような起点が形成されることになる。
【0018】
予備伸長の他に、布製の面状物を、高負荷を加えて少なくともさらに20%追加的に伸長させることが可能である。
【0019】
大きな予備伸長によって、プロテクタエレメント相互の間隔は増大し、滑り角は小さくなる。転倒時に織布が追加的にさらに伸長すると、滑り角はさらになお小さくなる。
【0020】
衣服の着用者が、特に2輪のレースにおいて通常の高い速度で転倒すると、着用者は、道路に向かって垂直に倒れるのではなく、その慣性に基づいて鋭角を成して走路に衝突する。まさにダウンヒル走行時には、高い速度とさらに追加的な荒れ地傾斜が存在しているので、比較的小さな衝突角度(Aufprallwinkel)が得られる。走路表面への身体の衝突後に、重度の怪我を回避するためには、衣服の外側面と走路表面との間に定義される摩擦値によって、転倒者が制動されて停止することが必要であるが、この停止は、ごろごろと転がることを回避するために過度に急激であってはならない。
【0021】
本発明に係る衣服によって防護される人間は、理想的には、好ましくは球欠形状のプロテクタエレメントの頂部だけが走路表面に接触するように走路上を滑る。
【0022】
特に炭化ホウ素から製造されたプロテクタエレメントの高い硬度に基づいて、摩耗は僅かであり、転倒後の停止領域においてプロテクタエレメントは確かにその高さを減じられてはいるが、布製のベースに到るまで完全に摩耗することはあり得ない。同時に、球欠形状のプロテクタエレメントは、その体積に関して比較的大きな表面積を有しているので、発生する摩擦熱を、既にその発生箇所において放出することができる。編物内への熱伝達は、編み上げられた布製の下地の熱伝導率が低いことに基づいてゆっくりとしか行われない。
【0023】
さらに、編物は織布に比べて明らかにより厚く形成することができ、しかもこのとき通気性および温度調節が損なわれることはない。
【0024】
しかしながらまた、従来技術とは異なり本発明によれば、平らな走路表面におけるいわば理想的な転倒経過ではない場合でも、上に述べた防護効果が得られる。むしろ実地においては、亀裂が走路を横切っていたり、または転倒者と走路との間に挟み込まれ得る砂や砂利のような異物が走路上にあったりすることを考慮しなくてはならない。
【0025】
しかしながら、本発明に係る衣服では、プロテクタエレメントが走路における歪みまたは亀裂に衝突すると、その平らでかつ球欠形状の形に基づいて、小さな滑り角との関連において、多くの場合には問題なく障害物を越えて滑ることができる。それにもかかわらず、幾つかのプロテクタエレメントが障害物に引っ掛かるような場合には、布製のベースにおける伸長余力が関与し、この伸長余力は、弾性的な伸長の可能性に基づいて、転倒者のさらなる滑り過程を少なくとも急には終了させない。たとえプロテクタエレメントのライン全体が走路亀裂に嵌まり込んだとしても、人間は、ごろごろと転がるような動作が直接生じるようには制動されない。布製の下地の弾性との関連において使用されている繊維の高い抗張性によって、人間はまず一定区間はさらに滑り、このとき布の局部は緊張させられる。このとき多くの場合、ブロックされたプロテクタエレメントを離脱させるためおよびその出発位置に戻すために、十分な戻し力がある。しかしながら、最悪の場合に幾つかのプロテクタエレメントが破壊されても、少なくともこの破壊に、上に述べたごろごろと転がる動作が生じうる、突然の制動動作が結び付くことはない。幾つかのプロテクタエレメントが失われた場合でも、転倒者はさらに滑ることができ、このとき多数の残りのプロテクタエレメントによって、なおも十分に防護される。
【0026】
そのためには、比較的大きな高さを有する2列のプロテクタエレメントの間に、比較的小さな高さを有する少なくとも1列のプロテクタエレメントを配置することが好ましい。このような態様では、最初に大きなプロテクタエレメントが走路表面と接触する。人間は極めて小さな衣服サイズを選択しているので、衣服の部分が局部的に強く湾曲している場合、および/または予荷重が既に極めて大きい場合には、大きなプロテクタエレメントの間に露出して位置している布製の領域は、比較的小さなプロテクタエレメントの少なくとも1つの追加的な列によって、追加的に保護される。比較的大きなプロテクタエレメントが引き千切れた場合に、比較的低くかつ比較的小さなプロテクタエレメントは損傷しないままであり、転倒段階の残りに対する保護を提供する。
【0027】
サイズのバリエーションは、極めて強く露出していて僅かな筋肉組織しか存在しない身体領域を強く保護し、かつ比較的深い皮膚層に到るまでの擦過傷をいずれにせよ回避するようになっていてもよい。このような身体領域としては、骨盤、肩関節、肩胛骨および肘関節が挙げられる。
【0028】
プロテクタエレメントを不規則な異方性の形で配置すること、つまりプロテクタエレメントの格子形状の配置形態を意識的に回避すること、または少なくとも局部的なサブパターンを擦過防護ゾーン全体にわたって繰り返さないことが、特に有利であると判明している。布地における亀裂縁は、これによって回避される。
【0029】
最終的に、プロテクタエレメントの配置時における適合は、当該衣服が使用されるスポーツ形式に基づいて行うことができる。ロードレース選手の場合には、他の身体部分が当て嵌まり、スタートフィールドにおいて転倒するマラソンランナまたは凍結したまたは凍ってざらざらの雪面上で転倒するスキーヤの場合よりも、転倒時に摩擦によって大きな運動エネルギを消滅させる必要がある。従って本発明による別の課題は、プロテクタエレメントが設けられた少なくとも1つの擦過防護ゾーンを備えた布製の衣服の製造を改善しかつ容易にすることである。
【0030】
この課題は、本発明によれば、請求項
7の特徴部に記載の、プロテクタエレメントが設けられた少なくとも1つの擦過防護ゾーンを備えた布製の衣服を製造する方法によって解決される。
【0031】
本発明にとって重要なことはまず、チューブ形状をした伸長可能な布製の支持層を使用することである。
【0032】
予備伸長によって製造は容易になる。それというのは、支持層は、特に支持プレートのような挿入された支持エレメントによって緊張し、支持エレメントにしっかりと接触し、さらなる加工時におけるずれが回避されるからである。さらにプロテクタエレメントは、後におけるその使用時に位置すべきように取り付けることができる。なぜならば、本発明によれば、布製の支持層の、少なくとも20%の高い伸長可能性が存在するからである。これによって形成された衣服は、この衣服が、製造中の支持手段上の密着と同様に着用者に密着している場合にしか、その防護機能を満たさない。これに対応して、衣服は、既製服サイズに応じて比較的小さくまたは比較的大きなアンダサイズで製造される。つまり予備伸長された支持層において、プロテクタエレメントの所望のパターンを、互いに所望の間隔をもって生じさせることができる。支持エレメントの取出し後に、支持層は本来の寸法に収縮し、このときプロテクタエレメント相互の間隔は減少する。
【0033】
編物製品の使用には、完成した衣服において、100%に到るまでの大きな伸長寸法を生じさせることができるという利点がある。これによって衣服は、いずれにせよ折り目なしに身体に接触する。編物製品は、さらに高い通気性を提供し、織布に比べて著しく大きな層厚さを有している。これによって、断熱性が決定的に改善され、プロテクタエレメントの固着が織布に比べてより深い層において可能であり、しかもこのとき摩擦によって生じる接触熱に対する防護が不都合に低下することはない。布製の支持層はこの場合丸編みチューブである。
【0034】
丸編みチューブの形の編物の使用は、これによって完成した衣服における防護されない縫い目領域を回避すること、および擦過防護ゾーンを身体領域の全周に形成することができることに基づき、好適である。本発明によれば、そのために好ましくは支持プレートが丸編みチューブに挿入され、これによって、プロテクタエレメントを製造することができる上側の表面と露出した下側の表面とが形成される。また、支持プレートを取り外して丸編みチューブを新たにその中に位置決めすることによって、丸編みチューブを区間毎に処理することも可能である。
【0035】
確定された円錐形または球欠形状の幾何学形状を有する複数のプロテクタエレメントを製造するために、本発明によれば、複数の凹面状の成形キャビティを有する成形エレメントを使用する。成形エレメントとしては、平らな成形プレートが特に適している。しかしながらまた、成形ローラも使用することができる。
【0036】
本発明に係る方法の第1の変化形態では、好ましくは、複数の凹面状の成形キャビティを有する成形プレートが使用され、成形キャビティは、それぞれ1つの広幅の底面を、布製の支持層に向けられた表面に有し、かつ反対側に位置する表面に先細の開口を有している。成形プレートは、成形キャビティの、広幅の開口を備えた表面で、支持プレートによって支持された丸編みチューブに、もしくは他の伸長可能な布製の支持層に載置される。次に、ペースト状の被覆材料が、成形プレートの細い開口を通して下方に向かって成形キャビティ内に押し込まれ、成形プレートは、細い開口を備えた表面において掻き取られる。このようにして成形キャビティを完全に満たすことができ、かつ同時に、成形プレートの下に位置する編物内にまで押被覆材をし込むことができる。
【0037】
成形キャビティの小さな上側の開口においてしか、被覆材は空気接触せず、かつそこにおいてしか小さな窪み箇所(Einfallstelle)は生じ得ない。成形キャビティの表面における開口は、極めて細く保たれるので、単純に穿孔されたスクリーンの場合とは異なり、掻取り動作によって、理想的な幾何学的な半球形状からの僅かな変位しか生じない。
【0038】
本発明に係る方法の別の好適な変化態様では、同様に、複数の凹面状の成形キャビティを備えた成形エレメントとして成形プレートが使用されるが、成形キャビティは、表面に別の開口を有していない。むしろ、成形プレートは開口を上に向けて位置決めされ、そして充填される。片側においてのみ開放しているこのような成形キャビティが、焼き型のように簡単にペースト状の被覆材によって満たされ、かつ表面を掻き取られると、それぞれの成形キャビティの底部に窪み箇所が形成されることになる。成形プレートをひっくり返してチューブに載置した後、ペースト状の被覆材と編物との表面的な結合が、下方に向かって沈む被覆材に基づいてしか行われ得ない。そして、被覆材に対して圧力を加えることができないので、被覆材を布製の層内に進入させることができるようにするために、被覆材の粘性を低下させなくてはならない。しかしながら、このようにすると、まだ硬化していない分量(Portion)の形状安定性が損なわれることになり、その結果、硬化したプロテクタエレメントの形状が均一ではなくなり、所望の幾何学形状に対応しなくなってしまう。さらに、掻取り動作によって、被覆材は、成形キャビティを取り囲む縁部近傍領域へと引き摺られることになる。
【0039】
この方法変化態様による本発明に係る方法の特殊性は、各成形キャビティに所望のように過剰の被覆材を準備することだけであり、これによって、丸編みチューブに成形プレートを載置した時または逆に成形プレートに丸編みチューブを載置した時に、この過剰の被覆材は、例えば編物のような布の中に押し込まれ、そこにおけるプロテクタエレメントの確実な固着のために役立つ。この過剰分は、極めて確定された形で、成形キャビティ内への被覆材料の充填前に薄い掻取り補助プレートを成形プレートに載置することによって準備され、この掻取り補助プレートの厚さは、特に成形キャビティの深さの1/5未満であり、掻取り補助プレートには開口が設けられている。掻取り補助プレートの開口形状は、成形プレートの表面における成形キャビティの開口横断面に合致している。この掻取り補助プレートと一緒に、成形キャビティへの充填が行われる。過剰の被覆材は、載置された掻取り補助プレートの表面を掻き取ることによって除去される。次いで、掻取り補助プレートは注意深く、つまり可能な限り成形プレートに対して正確に垂直な方向で取り外される。ペースト状に調節された被覆材料は、今や掻取り補助プレートの厚さ分だけ、本来の成形プレートの表面の上に盛り上がっている。この盛上がりが、上記した過剰の被覆材を形成する。
【0040】
別の好適な効果は、掻取り補助プレートの引上げによって生じる。それというのは、掻取り補助プレートにおける開口の細い縁部に被覆材が固着することに基づいて、掻取り補助プレートの引上げ時に特に過剰の被覆材の縁部が一緒に引き上げられ、中心にホッパ形状が形成されるからである。つまり、相応に硬くかつ流れないように調節された被覆材において、ほぼ角の尖った縁部が形成され、これによって布製の支持材料への圧着後および硬化後においても、このようにして製造されたプロテクタエレメントは、極めて確定された角の尖った輪郭を底部に有する。またプロテクタエレメントの残りの球面形状は、成形キャビティによって設定された形状に完全に相当している。それというのは、成形プレートとの丸編みチューブの結合時に、過剰の被覆材は織布内に押し込まれ、これによって同時に、被覆材への圧力も生ぜしめられ、その結果、成形キャビティの画定部に被覆材が完全に接触するからである。
【0041】
被覆材は、次いで硬化する。これは、被覆材の化学的な特性に応じて熱処理によって行うことができる。しかしながら、例えばUV光の照射や、2成分混合物の使用による化学的な硬化等によっても、行うことができる。
【0042】
好ましくは、成形エレメントと特に丸編みチューブのような布製の支持層とから成る複合体を、硬化炉内に入れることによって硬化が行われる。その後で、成形プレートは布製の支持層から取り外される。プロテクタエレメントを備えた布地は、今や公知のように、さらに加工されて衣服を形成する。
【0043】
成形キャビティからのプロテクタエレメントの脱離を容易にするために、成形キャビティは、好ましくは既に成形プレートの準備時に離型剤によって処理される。
【0044】
掻取り補助プレートを使用する、本発明に係る方法の第2の好適な態様は、粘性の高いペースト状の被覆材料を調節することを可能にする。それというのは、この態様では、被覆材料は、細い開口を通して押し出される必要がなく、広幅の開口側から成形キャビティ内に押し込むことができるからである。これによって、重力の短時間の影響時にも成形材が流れることはない。つまり、成形プレートをひっくり返して、開口を下に向けて載置することができる。これによって、支持プレート上に支持された、丸編みチューブのような布地に、2つの成形プレートを用いて、同時に上側面と下側面とを処理することができる。
【0045】
特に炭化ホウ素と硬化可能なポリマベース材料とから製造されたプロテクタエレメントの大きな硬度に基づいて、摩耗は僅かとなり、転倒後の走路領域において、プロテクタエレメントは確かにその高さを減じられるが、布製のベースに達するまで完全に摩耗するようなことはない。同時に、球欠形状のプロテクタエレメントは、その体積に比べて比較的大きな表面積を有しているので、相応の摩擦熱を部分的に既にその発生箇所において放出することができる。
【0046】
特に編み上げられた布製の下地では熱伝導率が低いので、内部への熱伝達はゆっくりとしか行われない。
【0047】
次に図面を参照しながら本発明を詳説する。