特許第6588097号(P6588097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6588097炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法、炭酸アパタイトを含有する多孔質体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588097
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法、炭酸アパタイトを含有する多孔質体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/10 20060101AFI20191001BHJP
   C04B 35/057 20060101ALI20191001BHJP
   C04B 41/80 20060101ALI20191001BHJP
   A61F 2/28 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   C04B38/10 L
   C04B35/057
   C04B41/80 B
   A61F2/28
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-537682(P2017-537682)
(86)(22)【出願日】2016年8月3日
(86)【国際出願番号】JP2016072844
(87)【国際公開番号】WO2017038360
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2018年1月23日
(31)【優先権主張番号】特願2015-171064(P2015-171064)
(32)【優先日】2015年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000181217
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】坂井 裕大
(72)【発明者】
【氏名】山中 克之
(72)【発明者】
【氏名】重光 勇介
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−117698(JP,A)
【文献】 特開2014−177363(JP,A)
【文献】 特開平10−036106(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/112856(WO,A1)
【文献】 特開2012−066952(JP,A)
【文献】 特開平08−268717(JP,A)
【文献】 特開2012−031041(JP,A)
【文献】 特表2008−537926(JP,A)
【文献】 松家茂樹ほか,炭酸カルシウムのリン酸化による炭酸アパタイト硬化体の調整,歯科材料・器械,日本,2003年 8月25日,Vol.22, No.5,p.406
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/00−38/10
C01B 25/32
C01F 11/18
C04B 35/057
C04B 35/447
C04B 41/80−41/91
A61F 2/28
A61L 27/00
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化カルシウムを含有する多孔質体の消化及び炭酸化を、気体状の水の存在下、かつ二酸化炭素含有ガスの気流下で行い、炭酸カルシウムを含有する多孔質体を得る消化炭酸化工程と、を有する炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法。
【請求項2】
水酸化カルシウム及び/は炭酸カルシウム、化学反応により硬化しうる有機物質と、溶媒を混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、
前記スラリーに気泡を導入する気泡導入工程と、
前記有機物質を化学反応させることにより前記スラリーを硬化させる硬化工程と、
前記硬化したスラリーを焼結し、酸化カルシウムを含有する多孔質体を得るスラリー焼結工程と、をさらに有する請求項1に記載の炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法を用いて、炭酸カルシウムを含有する多孔質体を製造する工程と、
前記炭酸カルシウムを含有する多孔質体をリン酸処理し、炭酸アパタイトを含有する多孔質体を得るリン酸化工程と、を有する炭酸アパタイトを含有する多孔質体の製造方法。
【請求項4】
前記炭酸アパタイトを含有する多孔質体は、骨補填材である、請求項3に記載の炭酸アパタイトを含有する多孔質体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法、炭酸アパタイトを含有する多孔質体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から骨補填材は、外傷等により生じた骨欠損の再建、または再生を行う場合や、インプラント治療の際に顎骨の厚みを増す場合等に用いられている。
【0003】
骨補填材の材料としてはハイドロキシアパタイト等が検討されてきた。
【0004】
ハイドロキシアパタイトを用いた骨補填材は骨伝導性、すなわち骨欠損部に補填した場合に、母床骨中に存在する骨を作る細胞を活性化して骨組織を新生し、骨補填材表面に骨が形成される能力を有している。
【0005】
ところで、骨補填材にはその特性として、上述した骨伝導性に加えて、骨と置換することが求められる。しかしながら、ハイドロキシアパタイトを用いた骨補填材の場合、骨芽細胞により骨が形成されるものの、破骨細胞により吸収されないため、骨と置換することができなかった。
【0006】
そこで、骨伝導性に加えて、骨と置換することができる骨補填材の材料として炭酸アパタイトが注目されている。
【0007】
炭酸アパタイトを用いた骨補填材の製造方法として、例えば特許文献1には、実質的に粉末を含まないカルシウム化合物のブロックと、リン酸塩を含有する溶液の少なくとも一方が炭酸基を含有しており、カルシウム化合物ブロックとリン酸塩溶液を接触させて炭酸アパタイトを生成させるが、焼結を行わないことを特徴とする炭酸アパタイトを主成分とする医療用骨補填材の製造方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献1には、炭酸アパタイトを主成分とする医療用骨補填材の製造方法の具体的な例も開示されている。開示された例によれば、まず、カルシウム化合物のブロックとして、水酸化カルシウムを円形金型を用いて圧縮成型し、得られた圧粉体について、相対湿度100%の二酸化炭素気流下で炭酸化を行い、炭酸カルシウムブロックを得る。そして、炭酸カルシウムブロックをリン酸水素二ナトリウムに浸漬して、炭酸カルシウムブロックと同形態のブロック体を得るとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】日本国特許第4854300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に具体的に開示された医療用骨補填材の製造方法においては、炭酸カルシウムブロック体を用いている。このため、炭酸カルシウムブロック体と同形態の、炭酸アパタイトのブロック体が得られることとなる。
【0011】
しかしながら、骨補填材は、多孔質体とすることにより、骨欠損部等に補填した際に骨補填材の内部に細胞や血管等が入り込み、より短期で好ましい骨再生が期待できる。このため、骨補填材としては、炭酸アパタイトを含有する多孔質体が求められており、係る炭酸アパタイトを含有する多孔質体を形成するため、炭酸カルシウムを含有する多孔質体が求められていた。
【0012】
本発明は上記従来技術が有する問題に鑑みてなされたものであって、本発明の一側面では、炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、酸化カルシウムを含有する多孔質体の消化及び炭酸化を、気体状の水の存在下、かつ二酸化炭素含有ガスの気流下で行い、炭酸カルシウムを含有する多孔質体を得る消化炭酸化工程と、を有する炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
[炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法]
本実施形態では炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法の一構成例について説明する。
【0016】
本実施形態の炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法は、酸化カルシウムを含有する多孔質体の消化、及び炭酸化を、水の存在下、かつ二酸化炭素含有ガスの気流下で行う消化炭酸化工程を有することができる。
【0017】
既述のように、骨補填材として、炭酸アパタイトを含有する多孔質体が求められており、係る炭酸アパタイトを含有する多孔質体を製造するため、炭酸カルシウムを含有する多孔質体が求められていた。そこで、本発明の発明者らは、炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法について、鋭意検討を行った。
【0018】
そこでまず、出発物質として水酸化カルシウムを用いて、水酸化カルシウムの多孔質体を形成した後、水酸化カルシウムの炭酸化反応(反応式:Ca(OH) + CO→CaCO + HO)により該水酸化カルシウムの多孔質体を炭酸化する方法について検討を行った。しかしながら、係る方法によれば、骨補填材として使用するために良好な気孔率及び均一な連通多孔を有する炭酸カルシウムを含有する多孔質体を形成することはできなかった。
【0019】
次に、出発物質として酸化カルシウムを用いて、酸化カルシウムの多孔質体を形成した後、該酸化カルシウムの多孔質体を水もしくは水を含む溶液に接触させ、もしくは浸漬し、酸化カルシウムの消化反応(反応式:CaO + HO → Ca(OH))により水酸化カルシウムの多孔質体を得るべく検討を行った。しかしながら、種々条件を検討したものの、脆性の水酸化カルシウムの多孔質構造が崩壊してしまい、酸化カルシウムの多孔質体の構造を維持した水酸化カルシウムの多孔質体を得ることはできなかった。これは消化反応が大きな発熱と体積膨張を伴うことが要因であると考えられた。
【0020】
そこでさらに検討を行ったところ、酸化カルシウムの多孔質体を形成した後、該酸化カルシウムの多孔質体を、消化反応(体積膨張を伴う)と、炭酸化反応(体積収縮を伴う)とを同時に進行させる反応方法により炭酸化することで、出発物質の酸化カルシウムを含有する多孔質体の構造を維持しながら、目的とする炭酸カルシウムを含有する多孔質体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0021】
このため、本実施形態の炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法は、上述の様に酸化カルシウムを含有する多孔質体の消化及び炭酸化(以下、「消化炭酸化」とも記載する。)を、水の存在下、かつ二酸化炭素を含む気流下で行う消化炭酸化工程を有することができる。
【0022】
消化炭酸化工程に供する酸化カルシウムを含有する多孔質体の組成や、気孔径、空隙率等については特に限定されるものではなく、得られる炭酸カルシウムを含有する多孔質体に要求される特性に応じて任意に選択することができる。ただし、酸化カルシウムを含有する多孔質体内の酸化カルシウムの含有率は高いことが好ましく、例えば90重量%以上であることが好ましく、99重量%以上であることがより好ましい。特に酸化カルシウムを含有する多孔質体としては、酸化カルシウムからなる多孔質体であることがさらに好ましい。ただし、この場合でも酸化カルシウムからなる多孔質体を調製する際に混入する不純物等の不可避成分が例えば1質量%未満含まれていてもよい。
【0023】
消化炭酸化工程における水の存在下とは、水の状態は問わず、炭酸化を行う酸化カルシウムを含有する多孔質体の周囲に水が存在していればよい。ただし、液体状の水のみが存在する環境下で消化炭酸化工程を行うと、すなわち例えば酸化カルシウムを含有する多孔質体を水に浸漬させると、消化反応のみが進行し、該多孔質体の構造が崩壊する恐れがある。
【0024】
このため、消化炭酸化工程では、消化反応と、炭酸化反応とが併存し、消化反応が急激に進行しないように水の存在条件を選択することが好ましい。具体的には、酸化カルシウムを含有する多孔質体の消化炭酸化は、気体状の水を含む環境下で実施することが好ましい。特に、酸化カルシウムを含有する多孔質体の消化炭酸化は高湿の環境下で、すなわち気体状の水が存在する環境下で実施することが好ましい。なお、高湿の環境下で酸化カルシウムを含有する多孔質体の消化炭酸化を行う際、気体状の水と、液体状の水とが併存していてもよい。
【0025】
具体的には例えば、相対湿度が60%以上の雰囲気下で消化炭酸化を行うことが好ましく、相対湿度が80%以上の雰囲気下で消化炭酸化を行うことがより好ましい。
【0026】
消化炭酸化工程において、酸化カルシウムを含有する多孔質体の消化炭酸化は、水の存在下であるとともに、二酸化炭素含有ガスの気流下で行うことができる。二酸化炭素含有ガスは二酸化炭素を含有していればよく、その具体的な組成は特に限定されるものではない。ただし、消化炭酸化工程において、酸化カルシウムを含有する多孔質体の消化炭酸化の反応速度を十分に速くするため、二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素濃度は例えば1vol%以上であることが好ましく、10vol%以上であることがより好ましい。
【0027】
二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素濃度の上限は特に限定されるものではなく、二酸化炭素含有ガスは二酸化炭素から構成されていてもよいことから、100vol%以下とすることができる。ただし、二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素濃度を20vol%よりも高くした場合でも、酸化カルシウムを含有する多孔質体の消化炭酸化反応の反応速度に大きな変化はないことから、20vol%以下とすることが好ましい。
【0028】
二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素以外のガスの成分は特に限定されるものではなく、任意のガスを含有することができる。例えば、二酸化炭素含有ガス中に含まれる二酸化炭素ガス以外の成分としては空気や、不活性ガス等が挙げられる。特に、酸化カルシウムを含有する多孔質体の消化炭酸化以外の反応が起きることを抑制することが求められる場合には、二酸化炭素含有ガス中に含まれる二酸化炭素ガス以外の成分は不活性ガスであることが好ましい。二酸化炭素含有ガス中に含まれる二酸化炭素ガス以外の成分が不活性ガスの場合、不活性ガスは、例えば窒素、アルゴン、ヘリウムから選択される一種類以上のガスであることが好ましい。
【0029】
消化炭酸化工程における、反応温度や、反応時間等の各種反応条件は特に限定されるものではない。ただし、反応温度が低すぎる場合には消化炭酸化の反応速度が遅くなる恐れがある。また、反応温度が高すぎる場合には、消化反応による体積膨張が急激に起こり、多孔質構造が崩壊しやすくなる、もしくは、消化炭酸化した酸化カルシウムを含有する多孔質体表面からの炭酸の離脱反応の割合が大きくなり、見かけの反応速度が低下する恐れもある。このため、反応温度は0℃以上250℃以下であることが好ましく、20℃以上50℃以下であることがより好ましい。なお、ここでの反応温度とは酸化カルシウムを含有する多孔質体周辺での温度を意味する。
【0030】
また、反応時間については消化炭酸化工程に供する酸化カルシウムを含有する多孔質体のサイズや気孔率、供給する二酸化炭素含有ガスの流速等に応じて、酸化カルシウムを含有する多孔質体の少なくとも表面について消化炭酸化を十分に進行できるように選択すればよく、特に限定されるものではない。
【0031】
本実施形態の炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法は、ここまで説明した消化炭酸化工程以外にもさらに任意の工程を有することもできる。以下にこれらの工程の例について説明する。
【0032】
上述の様に消化炭酸化工程は、水の存在下、かつ二酸化炭素含有ガスの気流下で実施することができる。係る消化炭酸化工程においては、少なくとも酸化カルシウムを含有する多孔質体の表面について消化炭酸化を行うことができるが、水や二酸化炭素含有ガスと直接接触しない、酸化カルシウムを含有する多孔質体の内部まで消化炭酸化が十分に進行しない場合もある。内部に酸化カルシウムが残存することは好ましくないので、消化反応については、完全に進行させることが好ましい。一方、炭酸化反応が不完全で、水酸化カルシウムが残存する場合、後述するリン酸化工程により水酸化カルシウムをハイドロキシアパタイトに変換可能であるため、炭酸化反応については不完全であってもよいが、完全に炭酸化させることがより好ましい。このように消化炭酸化反応の進行が不完全な場合、例えば消化炭酸化工程の終了後、消化炭酸化を実施した酸化カルシウムを含有する多孔質体を、炭酸水素ナトリウム水溶液に浸漬する浸漬工程を実施することできる。浸漬工程を実施することにより、酸化カルシウムを含有する多孔質体の内部まで完全に消化炭酸化することができ、好ましい。
【0033】
また、本実施形態の炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法は、さらに以下の工程を有することもできる。以下の各工程を実施することで、上述の消化炭酸化工程に供する酸化カルシウムを含有する多孔質体を作製することができる。
【0034】
水酸化カルシウム及び/または炭酸カルシウム、化学反応により硬化しうる有機物質、及び溶媒を混合してスラリーを調製するスラリー調製工程。
前記スラリーに気泡を導入する気泡導入工程。
前記有機物質を化学反応させることにより前記スラリーを硬化させる硬化工程。
硬化した前記スラリーを焼結し、酸化カルシウムを含有する多孔質体を得るスラリー焼結工程。
【0035】
以下に、各工程について説明する。
【0036】
スラリー調製工程では、水酸化カルシウム及び/または炭酸カルシウム、化学反応により硬化しうる有機物質、及び溶媒を混合することで、溶媒と混合した水酸化カルシウム及び/または炭酸カルシウム等を分散し、スラリーを調製できる。
【0037】
カルシウム源としては水酸化カルシウム及び/または炭酸カルシウムを用いることができる。すなわち、カルシウム源として水酸化カルシウムと、炭酸カルシウムとのいずれか一方のみを用いてもよく、両者を用いてもよい。なお、カルシウム源として水酸化カルシウム及び/または炭酸カルシウム以外のカルシウム化合物もあわせて用いることもでき、例えば酸化カルシウム等もあわせて用いることもできる。
【0038】
また、化学反応により硬化しうる有機物質の化学反応としては、例えば重合反応や架橋反応が挙げられる。そして、化学反応により硬化しうる有機物質としては特に限定されるものではなく、種々の化学反応により硬化しうる有機物質を用いることができ、例えばポリビニルアルコール、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリレート、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン等から選択された一種類以上を用いることができる。特に、アミノ基を含む線状、分枝状、ブロック状形態を有するポリマーは、カチオン性に富み、原料粉末の分散にも寄与して良好なスラリーを作製することができ、かつ後述する反応開始剤と併用して良好な硬化体を得ることができるため、より好ましく用いることができる。
【0039】
溶媒としては特に限定されるものではないが、例えば水を用いることができる。特に不純物の混入等を防ぐ観点から蒸留水を用いることが好ましい。
【0040】
スラリー調製工程においては、さらに各種添加剤を混合することもできる。添加剤としては、例えば分散剤、整泡剤、増粘剤等を用いることができる。
【0041】
気泡導入工程では、スラリー調製工程で作製したスラリーに気泡を導入することができる。すなわちスラリーを起泡することができる。
【0042】
気泡導入工程での気泡は、酸化カルシウムを含有する多孔質体、及び該酸化カルシウムを含有する多孔質体から形成する炭酸カルシウムを含有する多孔質体の気孔部を形成するために導入するものである。このため、目的とする炭酸カルシウムを含有する多孔質体の気孔部のサイズ、気孔率等に応じて気泡のサイズや、添加量を調整することが好ましい。
【0043】
スラリーに気泡を導入する方法は特に限定されるものではない。例えば、スラリーに起泡剤を混合、撹拌することで気泡を導入することができる。また、スラリー中に気体を供給し、気泡を導入することもできる。起泡剤の混合、撹拌と、スラリー中への気体の供給とを併用することもできる。
【0044】
気泡導入工程で起泡剤を用いる場合、起泡剤としては特に限定されるものではなく、陰イオン性、陽イオン性、両イオン性、ノニオン性の各種界面活性剤を用いることができる。ただし、化学反応により硬化しうる有機物質として、ポリアクリルアミド等のようにアミノ基を含む線状、分枝状、ブロック状形態のポリマーを用いた場合、陰イオン性界面活性剤を用いると、そのイオン性の違いから、イオンコンプレックスを形成し、起泡操作が困難になる場合がある。このため、アミノ基を含む線状、分枝状、ブロック状形態のポリマーを用いた場合、陰イオン界面活性剤以外の界面活性剤を用いることが好ましい。
【0045】
起泡剤としては例えばポリオキシエチレンラウリルエーテルや、硫酸トリエタノールアミン等を用いることが好ましい。
【0046】
硬化工程では、スラリーに反応開始剤を混合することで、化学反応により硬化しうる有機物質を化学反応させ、硬化させることができる。
【0047】
反応開始剤としては特に限定されるものではなく、スラリー調製工程で用いた化学反応により硬化しうる有機物質を化学反応させることができる物質を用いることができる。反応開始剤としては例えば架橋剤や重合開始剤が挙げられる。
【0048】
例えば、化学反応により硬化しうる有機物質として、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン等のような、アミノ基を有する有機物質を用いた場合には、架橋剤として、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グルセロールポリグリシジルエーテル、ポリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等のエポキシ基を2以上もつエポキシ化合物を好ましく用いることができる。
【0049】
なお硬化工程で、スラリーに反応開始剤を混合することで、ゲル状に硬化させることができる。このため、硬化工程を実施する前に、酸化カルシウムを含有する多孔質体や、酸化カルシウムを含有する多孔質体から得られる炭酸カルシウム多孔質体について要求される形状に対応した型を用意しておくことが好ましい。そして、硬化工程を実施する前に、スラリーを該用意した型に流し込み、係る型の中のスラリーに反応開始剤を混合し、硬化工程を実施することが好ましい。
【0050】
そして、硬化工程で硬化したスラリーを焼結し、酸化カルシウムを含有する多孔質体を得るスラリー焼結工程を実施することができる。
【0051】
硬化したスラリーを焼結することで、該スラリーに含まれていた化学反応により硬化しうる有機物質、溶媒等を燃焼させることで除去することができるとともに、該スラリーに含まれていた水酸化カルシウム及び/または炭酸カルシウムを酸化カルシウムとすることができる。スラリー焼結工程における焼結条件は特に限定されるものではないが、500℃以上1200℃以下の温度で加熱することが好ましい。これは、500℃未満では化学反応により硬化しうる有機物質、溶媒等の除去に時間がかかり、生産性が低くなる恐れがあるからである。また、1200℃よりも高い温度まで加熱しても上記反応の反応速度を向上させる効果はあまりないため1200℃以下とすることが好ましい。
【0052】
硬化したスラリーを加熱する際の雰囲気については特に限定されるものではなく、大気雰囲気や、真空雰囲気とすることができる。また、大気等の酸素含有ガスや、不活性ガス等の各種ガスの気流下において硬化したスラリーの加熱を実施してもよい。
【0053】
特に化学反応により硬化しうる有機物質、溶媒等の除去を促進する観点から、真空雰囲気下、または各種ガスの気流下において加熱を実施することが好ましい。
【0054】
加熱の時間は特に限定されるものではなく、硬化したスラリーのサイズ等に応じて任意に選択することができる。
【0055】
以上のスラリー調製工程、気泡導入工程、硬化工程、スラリー焼結工程を実施することにより、酸化カルシウムを含有する多孔質体を製造することができる。そして、得られた酸化カルシウムを含有する多孔質体は、既述の消化炭酸化工程に供することで、炭酸カルシウムを含有する多孔質体を製造することができる。
【0056】
本実施形態の炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法は、前述の工程に加え、さらに粉砕工程を含むことができる。粉砕工程は、硬化工程以降の硬化体を粉砕する工程であり、前述の硬化工程以降であれば、任意の時期に行うことができる。粉砕するサイズは特に限定されないが、消化炭酸化工程や、後述するリン酸化工程における収率や反応効率等を考慮すると、20cm×20cm×20cm以下が好ましく、5cm×5cm×5cm以下とすることがより好ましい。なお、粉砕工程(切断工程)においては、硬化体を粉砕することもできるが、所望の形状、サイズとなるようにカッター等により硬化体を切断することもできる。
【0057】
ここまで説明した、本実施形態の炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法により、炭酸カルシウムを含有する多孔質体を製造することができる。
【0058】
本実施形態の炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法によれば、酸化カルシウムを含有する多孔質体を形成後、水及び二酸化炭素を供給し、消化炭酸化するため、酸化カルシウムを含有する多孔質体の構造を維持した炭酸カルシウムを含有する多孔質体を製造することができる。
【0059】
また、本実施形態の炭酸カルシウムを含有する多孔質体は、気泡を導入して形成した泡沫状態のスラリーを硬化させた後、焼成して得られた酸化カルシウムを含有する多孔質体を消化炭酸化して形成している。このため、連通した球状の気孔を含むことができる。
[炭酸アパタイト多孔質体の製造方法]
次に、本実施形態の炭酸アパタイトを含有する多孔質体の製造方法の一構成例について以下に説明する。
【0060】
本実施形態の炭酸アパタイトを含有する多孔質体の製造方法は、既述の炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法で得られた炭酸カルシウムを含有する多孔質体を用いて炭酸アパタイトを含有する多孔質体を製造することができる。
【0061】
このため、本実施形態の炭酸アパタイトを含有する多孔質体の製造方法は、以下の工程を有することができる。
【0062】
酸化カルシウムを含有する多孔質体の消化、及び炭酸化を、水の存在下、かつ二酸化炭素含有ガスの気流下で行い炭酸カルシウムを含有する多孔質体を得る消化炭酸化工程。
【0063】
炭酸カルシウムを含有する多孔質体をリン酸処理することにより炭酸アパタイトを含有する多孔質体を得るリン酸化工程。
【0064】
消化炭酸化工程については、既述の炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法の場合と同様にして実施することができるため、ここでは説明を省略する。
【0065】
リン酸化工程では、炭酸カルシウムを含有する多孔質体をリン酸処理することで炭酸アパタイトを含有する多孔質体を得ることができる。
【0066】
リン酸処理は、例えば炭酸カルシウムを含有する多孔質体を、リン酸溶液またはリン酸塩含有溶液(以下、「リン酸塩含有溶液等」とも記載する)と接触させることにより実施できる。リン酸塩含有溶液等としては特に限定されるものではないが、例えば、リン酸、リン酸三アンモニウム、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウムアンモニウム、リン酸ナトリウム二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三マグネシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素マグネシウムリン酸三ジアセチル、リン酸ジフェニル、リン酸ジメチル、リン酸セルロース、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸テトラブチルアンモニウム、リン酸銅、リン酸トリエチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリストリメチルシリル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリメチル、リン酸グアニジン、リン酸コバルト等のリン酸またはリン酸塩の溶液を好ましく用いることができる。
【0067】
なお、リン酸塩含有溶液に含まれるリン酸塩は一種類に限定されるものではなく、二種類以上のリン酸塩を含有することもできる。また、リン酸溶液、リン酸塩溶液の溶媒は特に限定されるものではないが、例えば水を用いることができる。このため、リン酸溶液、リン酸塩含有溶液としては例えばリン酸水溶液、リン酸塩含有水溶液を用いることができる。
【0068】
炭酸カルシウムを含有する多孔質体を、リン酸塩含有溶液等と接触させる方法は特に限定されるものではなく、例えばリン酸塩含有溶液等に、炭酸カルシウムを含有する多孔質体を浸漬することにより実施できる。また、それ以外にも、リン酸塩含有溶液等を、スプレー等により、炭酸カルシウムを含有する多孔質体に塗布する方法等を用いることもできる。
【0069】
特に炭酸カルシウムを含有する多孔質体の表面全体に、リン酸塩含有溶液等を確実に接触させるため、炭酸カルシウムを含有する多孔質体を、リン酸塩含有溶液等に浸漬し、炭酸カルシウムを含有する多孔質体と、リン酸塩含有溶液等とを接触させることが好ましい。
【0070】
炭酸カルシウムを含有する多孔質体と、リン酸塩含有溶液等とを接触させる際の温度は特に限定されるものではないが、例えば50℃以上であることが好ましく、80℃以上であることが好ましい。
【0071】
これは、反応温度が高い方が、炭酸アパタイトを迅速に形成することができるためである。特に水熱反応を用いて、100℃以上として反応させた場合、多孔質体の内部までより確実に炭酸アパタイトを形成できるため好ましい。
【0072】
なお、リン酸化工程で形成する炭酸アパタイトとは、Ca10(PO(OH)で表されるハイドロキシアパタイトのリン酸基あるいは水酸基の一部あるいは全部が炭酸基に置換しているアパタイトを意味している。リン酸基が炭酸基に置換しているアパタイトをBタイプ炭酸アパタイト、水酸基が炭酸基に置換しているアパタイトをAタイプ炭酸アパタイトともいう。
【0073】
本実施形態の炭酸アパタイトを含有する多孔質体の製造方法は、ここまで説明した消化炭酸化工程、及びリン酸化工程以外にもさらに任意の工程を有することもできる。以下にこれらの工程の例について説明する。
【0074】
炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法で既述のように、消化炭酸化工程では少なくとも酸化カルシウムを含有する多孔質体の表面について消化炭酸化を行えるが、水や二酸化炭素含有ガスと直接接触しない、酸化カルシウムを含有する多孔質体の内部まで消化炭酸化が十分に進行しない場合もある。内部に酸化カルシウムが残存することは好ましくないので、消化反応については、完全に進行させることが好ましい。一方、炭酸化反応が不完全で、水酸化カルシウムが残存する場合、既述のリン酸化工程により水酸化カルシウムをハイドロキシアパタイトに変換可能であるため、炭酸化反応については不完全であってもよいが、完全に炭酸化させることがより好ましい。このように消化炭酸化反応の進行が不完全な場合、例えば消化炭酸化工程の終了後、リン酸化工程の実施前に、消化炭酸化を実施した酸化カルシウムを含有する多孔質体を、炭酸水素ナトリウム水溶液に浸漬する浸漬工程を実施できる。浸漬工程を実施することにより、酸化カルシウムを含有する多孔質体の内部まで完全に消化炭酸化することができ、好ましい。
【0075】
なお、骨補填材としては、少なくとも多孔質体の表面が炭酸アパタイトとなっていればよく、上述の浸漬工程は任意に実施することができる。
【0076】
また、本実施形態の炭酸アパタイトを含有する多孔質体の製造方法は、さらに以下の工程を有することもできる。以下の各工程を実施することで、上述の消化炭酸化工程に供する酸化カルシウムを含有する多孔質体を作製することができる。
【0077】
水酸化カルシウム及び/または炭酸カルシウム、化学反応により硬化しうる有機物質、及び溶媒を混合してスラリーを調製するスラリー調製工程。
前記スラリーに気泡を導入する気泡導入工程。
前記有機物質を化学反応させることにより前記スラリーを硬化させる硬化工程。
硬化した前記スラリーを焼結し、酸化カルシウムを含有する多孔質体を得るスラリー焼結工程。
【0078】
上述の各工程については、炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法で説明したものと同様にして実施することができるため、ここでは説明を省略する。
【0079】
ここまで説明した、本実施形態の炭酸アパタイトを含有する多孔質体の製造方法により、炭酸アパタイトを含有する多孔質体を製造することができる。
【0080】
本実施形態の炭酸アパタイトを含有する多孔質体の製造方法によれば、酸化カルシウムを含有する多孔質体を形成後、水の存在下、その表面に対して二酸化炭素を供給し、消化炭酸化するため、酸化カルシウムを含有する多孔質体の構造を維持した炭酸カルシウムを含有する多孔質体を製造できる。そして、得られた炭酸カルシウムを含有する多孔質体をリン酸化するため、酸化カルシウムを含有する多孔質体の構造を維持したリン酸カルシウムを含有する多孔質体を製造できる。よって、出発物質の酸化カルシウムの構造を制御することにより、様々な構造の炭酸カルシウムを含有する多孔質体及び炭酸アパタイトを含有する多孔質体の製造が可能となる。
【0081】
また、本実施形態のリン酸カルシウムを含有する多孔質体は、気泡を導入して形成した泡沫状態のスラリーを硬化させた後、焼成して得られた酸化カルシウムを含有する多孔質体を消化炭酸化して形成した炭酸カルシウムをリン酸化して得られている。このため、連通した球状の気孔を含むことができる。
【0082】
そして、本実施形態の炭酸アパタイトを含有する多孔質体の製造方法により得られた炭酸アパタイトを含有する多孔質体は、骨伝導性を有し、さらに骨と置換することができるため、骨補填材として好適に用いることができる。特に、係る炭酸アパタイトを含有する多孔質体は、多孔質体であるため、骨欠損部等に補填した際に骨補填材の内部に細胞や血管等が入り込み、より短期で好ましい骨再生が期待できる。
【実施例】
【0083】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって、なんら限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例では、炭酸カルシウムを含有する多孔質体、及び炭酸アパタイトを含有する多孔質体を作製した。
【0084】
まず、以下の手順により、炭酸カルシウムを含有する多孔質体を製造した。
【0085】
水酸化カルシウム粉末74重量部と、化学反応により硬化しうる有機物質であるポリエチレンイミン6重量部と、を溶媒である蒸留水80重量部に添加、混合し、スラリーを調製した(スラリー調製工程)。
【0086】
次に、得られたスラリーに起泡剤として、界面活性剤である、ポリオキシエチレンラウリルエーテル1重量部と、硫酸トリエタノールアミン1重量部とを添加し、さらに混合した。
【0087】
そして、起泡剤を添加、混合した後のスラリーに、ハンドミキサーを用いて気泡を導入し泡沫状態スラリーとした(気泡導入工程)。
【0088】
泡沫状態スラリーを10cm×10cm×5cmのポリエチレン製の型に流し込み、架橋剤として、ソルビトールポリグリシジルエーテルを2重量部添加し、撹拌することで硬化させ、ゲル状にした(硬化工程)。
【0089】
硬化させたスラリー塊を0.5cm角の立方体に切り出し(粉砕工程)、窒素雰囲気下、1200℃で3時間焼成することにより、焼結させ、酸化カルシウムを含有する多孔質体を得た(スラリー焼結工程)。なお、スラリー焼結工程後に得られた、酸化カルシウムを含有する多孔質体中の酸化カルシウム含有量を、粉末X線回折パターン(パナリティカル社製 型式:Empyrean)から分析したところ、99重量%以上であり、その他の成分が0.3重量%〜0.5重量%であることが確認できた。
【0090】
得られた酸化カルシウムを含有する多孔質体を、相対湿度100%、30℃に保たれたCOインキュベータ(池本理化工業社製 型式:MCO−18AIC)内に入れ、上記相対湿度、及び温度を保持したまま二酸化炭素含有ガスの気流下で7日間置くことで消化及び炭酸化を行った(消化炭酸化工程)。
【0091】
なお、二酸化炭素含有ガスとしては、二酸化炭素を10vol%含有し、残部が空気であるガスを用いた。
【0092】
消化炭酸化工程終了後、COインキュベータから消化炭酸化処理を行った酸化カルシウムを含有する多孔質体を取り出し、一部を切り出し、粉末X線回折パターン(パナリティカル社製 型式:Empyrean)、及びフーリエ変換赤外分光スペクトル(日本分光社製 型式:FT/IR−610)により評価を行った。その結果、出発物質の酸化カルシウムを含有する多孔質体の構造を維持した炭酸カルシウムを含有する多孔質体が得られていることを確認できた。
【0093】
次に、以下の手順により、得られた炭酸カルシウムを含有する多孔質体から、炭酸アパタイトを含有する多孔質体を製造した。
【0094】
炭酸カルシウムを含有する多孔質体を、60℃の1モル濃度のリン酸水素二ナトリウム水溶液に7日間浸漬することで、炭酸カルシウムを含有する多孔質体と、リン酸塩含有水溶液とを接触させ、リン酸処理を行った(リン酸化工程)。
【0095】
リン酸化工程後、乾燥させて得られた多孔質体について、粉末X線回折パターン、及びフーリエ変換赤外分光スペクトルにより評価を行った。その結果、出発物質の酸化カルシウムを含有する多孔質体の構造を維持した炭酸アパタイトを含有する多孔質体が得られていることを確認できた。
[比較例1]
実施例1と同様の方法で、スラリー焼結工程まで行い、酸化カルシウムを含有する多孔質体を得た。得られた酸化カルシウムを含有する多孔質体を1℃の水に浸漬し、消化反応により水酸化カルシウムを含有する多孔質体を得ることを試みた。(水酸化カルシウムを含有する多孔質体が得られれば、炭酸化することにより炭酸カルシウム多孔質体が得られる。)しかし、水に触れると酸化カルシウムを含有する多孔質体は激しく反応して崩壊し、目的とする炭酸カルシウム多孔質体を得ることはできなかった。
[比較例2]
実施例1と同様の方法で、スラリー焼結工程まで行い、酸化カルシウムを含有する多孔質体を得た。得られた酸化カルシウムを含有する多孔質体を1℃の炭酸水素ナトリウム水溶液に浸漬し、消化反応と炭酸化反応を同時に進行させ、炭酸カルシウム多孔質体を得ることを試みた。炭酸水素ナトリウム水溶液に触れると酸化カルシウムを含有する多孔質体は激しく反応して崩壊し、目的とする炭酸カルシウム多孔質体を得ることはできなかった。
【0096】
以上に炭酸カルシウムを含有する多孔質体の製造方法、炭酸アパタイトを含有する多孔質体の製造方法を、実施形態、実施例等で説明したが、本発明は上記実施形態、実施例等に限定されない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0097】
本出願は、2015年8月31日に日本国特許庁に出願された特願2015−171064号に基づく優先権を主張するものであり、特願2015−171064号の全内容を本国際出願に援用する。