特許第6588100号(P6588100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588100
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】ポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20191001BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   C08G73/10
   C08J5/18CFG
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-542018(P2017-542018)
(86)(22)【出願日】2016年2月11日
(65)【公表番号】特表2018-508625(P2018-508625A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】KR2016001378
(87)【国際公開番号】WO2016129926
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2017年8月10日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0020954
(32)【優先日】2015年2月11日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0015471
(32)【優先日】2016年2月11日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジョン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ハク ギ
【審査官】 中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−511296(JP,A)
【文献】 特開2007−091828(JP,A)
【文献】 特開2012−077285(JP,A)
【文献】 特開2007−099951(JP,A)
【文献】 特開昭64−006025(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/148441(WO,A1)
【文献】 特開2012−040836(JP,A)
【文献】 特開2000−198844(JP,A)
【文献】 特表2015−516031(JP,A)
【文献】 特開2016−128555(JP,A)
【文献】 特開平09−258043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73/00−73/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表わされ、9,9−ビス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)フルオレン(FFDA)と、2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)とが重合された第1ブロックと、
下記化学式2で表わされ、9,9−ビス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)フルオレン(FFDA)と、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とが重合された第2ブロックとを含む、ポリイミドフィルム。
<化学式1>


<化学式2>


前記化学式1および2中、Xはモル分率を意味し、範囲は0.6≦X≦0.9であり、
前記ポリイミドフィルムは、
フィルム厚さ10〜20μmを基準に、黄色度が2.0以下であり、
熱機械分析法(TMA−Method)によって、50〜250℃で2回繰り返し測定の作動(Run)を行い、1番目の作動(Run)で残留応力を完全に除去した後、2番目の作動(Run)による実測定値として得られた線形熱膨張係数(CTE)が、60ppm/℃以下であり、
TE(Transverse Electric)−TM(Transverse magnetic)で定義される複屈折(Δn)が、0.01以下である。
【請求項2】
前記ポリイミドフィルムは550nmで測定した平均光透過率が88%以上であることを特徴とする、請求項に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムを含む映像表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミック酸、それから製造されたポリイミド樹脂、および無色透明なポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリイミド(PI)フィルムは、ポリイミド樹脂をフィルム化したものであり、ポリイミド樹脂は、芳香族ジアンヒドリドと、芳香族ジアミンまたは芳香族ジイソシアネートとを溶液重合して、ポリアミック酸誘導体を製造した後、高温で閉環脱水させてイミド化することにより製造される高耐熱樹脂をいう。ポリイミド樹脂を製造するために使用される芳香族ジアンヒドリドとしては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)またはビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)などが挙げられ、芳香族ジアミンとしては、オキシジアニリン(ODA)、p−フェニレンジアミン(p−PDA)、m−フェニレンジアミン(m−PDA)、メチレンジアニリン(MDA)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(HFDA)などが代表的に挙げられる。
【0003】
ポリイミド樹脂は、不溶、不融の超高耐熱性樹脂であって、耐熱酸化性、耐熱特性、耐放射線性、低温特性、耐薬品性などに優れた特性を持っており、自動車材料、航空素材、宇宙船素材などの耐熱先端素材、および絶縁コーティング剤、絶縁膜、半導体、TFT−LCDの電極保護膜などの電子材料といった広範囲な分野に用いられており、最近では、光ファイバーや液晶配向膜などの表示材料、および、導電性フィラーをフィルム内に含有するか表面にコーティングして透明電極フィルムなどにも用いられている。
【0004】
しかし、ポリイミドフィルムは、高い芳香環密度により褐色または黄色に着色されており、可視光線領域における透過度が低く、黄色系の色を示すので、光透過率が低いか複屈折率が大きいことから、光学部材として使用されるには困難な点があった。かかる点を解決するために、単量体および溶剤を高純度に精製して重合を行う方法が試みられたが、透過率の改善は大きくなかった。
【0005】
米国特許第5,053,480号には、芳香族ジアンヒドリドの代わりに脂環式ジアンヒドリド成分を使用する方法が記載されているのであるが、精製方法に比べると、溶液状にするかフィルム化した場合に透明度および色相の改善があったものの、やはり透過度の改善には限界があって、高い透過度は満足させなかった。さらに、熱的および機械的特性の低下をもたらす結果を示した。特に、黄色を改善したポリイミドフィルムの場合、Tg(ガラス転移温度)値が低くなるため、300℃以上の高温を必要とする分野で使用するのは困難であった。
【0006】
また、米国特許第4,595,548号、同第4,603,061号、同第4,645,824号、同第4,895,972号、同第5,218,083号、同第5,093,453号、同第5,218,077号、同第5,367,046号、同第5,338,826号、同第5,986,036号、同第6,232,428号、および韓国特許公開公報第2003−0009437号は、−O−、−SO2−、CH2−などの連結基と、p位ではなくm位で連結された屈曲構造の単量体、または、−CF3などの置換基を有する芳香族ジアンヒドリドと芳香族ジアミン単量体を用いて、熱的特性が大きく低下しない限度内で透過度および色相の透明度を向上させた新規構造のポリイミドを製造したという報告がある。しかし、機械的特性、黄変度および可視光線透過度は、半導体絶縁膜、TFT−LCD(TFT液晶表示装置)の絶縁膜、電極保護膜、フレキシブルディスプレイ用基材層として使用するには足りない結果を示した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明により、究極的には、従来のポリイミドフィルムが持つ優れた特性を維持しながら、黄色度と光学的等方性が改善されたポリイミドフィルムを提供しようとするとともに、これを製造するためのポリアミック酸およびそのイミド化物であるポリイミド樹脂を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の好適な第1実施形態は、ジアミンとジアンヒドリドとの重合反応物であって、前記ジアミンは9,9−ビス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)フルオレン(FFDA)を含み、前記ジアンヒドリドは2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)および3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を含む、ポリアミック酸である。
【0009】
第1実施形態に係る2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)は、ジアンヒドリドの総モル量に対して、0.4以上、乃至1.0未満のモル比率で含まれるものであってもよい。
【0010】
また、本発明の好適な第2実施形態および第3実施形態は、それぞれ、下記化学式1で表わされ、9,9−ビス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)フルオレン(FFDA)と2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)とが重合された第1ブロックと、下記化学式2で表わされ、9,9−ビス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)フルオレン(FFDA)と3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とが重合された第2ブロックとを含む、ポリイミド樹脂およびフィルムである。
【0011】
<化学式1>
【0012】
<化学式2>
【0013】
前記化学式1および2中、Xはモル分率を意味し、範囲は0.4<X<1.0である。
【0014】
前記ポリイミド樹脂およびフィルムは、熱変形解析法(熱機械分析法;TMA−Method)によって50〜250℃で2回繰り返し測定した線形熱膨張係数(CTE)が60ppm/℃以下であり得る。特に、フィルムの場合は、フィルム厚さ10〜20μmを基準に、黄色度が2.0以下であり、550nmで測定した平均光透過率が88%以上であり、TE(Transverse Electric)−TM(Transverse magnetic)で定義される複屈折(Δn)が0.01以下であり得る。
【0015】
さらに、本発明の好適な第4実施形態は、第3実施形態のポリイミドフィルムを含む映像表示素子である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るポリイミド樹脂またはフィルムは、膜形成の後、機械的特性および耐熱性に優れ、特に無色透明で光学的等方性に優れるため、フレキシブルディスプレイの基板または保護層として有用に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、映像表示素子の基板、保護層などとして製造されたときに、優れた熱安定性および熱膨張率を有し、特に光学特性および光学的等方性に優れた特性を有するようにするために、ジアンヒドリド系モノマーと、フルオレン骨格を有するジアミン系モノマーとを用いて重合するものである。より具体的には、本発明によれば、ジアミンとジアンヒドリドとの重合反応物であって、前記ジアミンとしては9,9−ビス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)フルオレン(FFDA)を含み、前記ジアンヒドリドとしては2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)および3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を含む、ポリアミック酸を提供することができる。
【0018】
この際、前記2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物 (6FDA)は、ジアンヒドリドの総モル量に対して、0.4以上、乃至1.0未満、好ましくは0.6以上、乃至、0.9以下のモル比率で含まれるものであり、残部としては3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、および、前記6FDAおよびBPDAを除くジアンヒドリドを含むか、或いは前記3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)のみを残量で含むことができる。
【0019】
前記6FDAのモル比率が0.4未満である場合には、相対的にBPDAのモル比が増加するので、後で、ポリアミック酸を製膜してフィルムに製造する場合、フィルムの耐熱性は補完することができるものの、フィルムの複屈折率を大幅に改善することができないので好ましくない。
【0020】
本発明では、前記ジアンヒドリドとジアミンを1:1の当量比にして、反応温度−10〜80℃、反応時間2〜48時間の間、窒素またはアルゴンの雰囲気中で重合してポリアミック酸を製造することができる。
【0021】
前記ジアンヒドリドとジアミンとの重合反応のための溶媒(重合用溶媒)としては、ポリアミック酸を溶解する溶媒であれば特に限定されない。公知の反応溶媒として、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、およびジエチルアセテートの中から選ばれた一つ以上の極性溶媒を使用する。この他にも、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムなどの低沸点溶液、または、γ−ブチロラクトンなどの低吸収性溶媒を使用することができる。この他にも、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムなどの低沸点溶液、または、γ−ブチロラクトンなどの低吸収性溶媒を使用することができる。
【0022】
前記溶媒の含有量については特に限定されないが、適切なポリアミック酸溶液の分子量と粘度を得るために、重合用溶媒(第1溶媒)の含有量は、全ポリアミック酸溶液に対して、50〜95重量%が好ましく、さらに好ましくは70〜90重量%である。
【0023】
本発明によれば、前記単量体を重合することにより得られたポリアミック酸は、公知のイミド化法を適切に選択してイミド化することができ、その一例としては、熱イミド化法、化学イミド化法、または熱イミド化法と化学イミド化法との組み合わせを適用することができる。
【0024】
前記化学イミド化法は、ポリアミック酸に、無水酢酸などの酸無水物で代表される脱水剤、およびイソキノリン、β−ピコリン、ピリジンなどの3級アミン類などで代表されるイミド化触媒を投入する方法であり、熱イミド化法は、ポリアミック酸を40乃至300℃の温度範囲で徐々に昇温させ、1〜8時間加熱する方法である。また、化学イミド化法に熱イミド化法を併用することができ、加熱条件は、ポリアミック酸溶液の種類、フィルムの厚さなどによって変動しうる。
【0025】
本発明では、ポリアミド−イミドフィルムを製造する一例として、熱イミド化法と化学イミド化法とが併用された複合イミド化法を適用することができる。これをより具体的に説明すると、ポリアミック酸溶液に脱水剤およびイミド化触媒を投入して支持体上にキャスティングした後、80〜200℃、好ましくは100〜180℃で加熱して、脱水剤およびイミド化触媒を活性化し、部分的に硬化および乾燥させた後、200〜400℃で5〜400秒間加熱することにより、ポリイミドフィルムを得ることができる。
【0026】
また、本発明では、次のとおりポリイミドフィルムを製造することもできる。すなわち、得られたポリアミック酸溶液をイミド化した後、イミド化した溶液を第2溶媒に投入し、沈殿、濾過および乾燥させてポリイミド樹脂の固形分を得てから、得られたポリイミド樹脂固形分を第1溶媒に溶解させた、ポリイミド溶液を用いて製膜工程によって得ることもできる。
【0027】
前記第1溶媒は、ポリアミック酸溶液の重合の際に使用した溶媒と同じ溶媒を使用することができ、前記第2溶媒は、ポリアミック酸樹脂の固形分を得るために、第1溶媒よりも極性が低いものを使用するのであり、具体的には水、アルコール類、エーテル類およびケトン類の中から選ばれた1種以上であってもよい。ここで、前記第2溶媒の含有量は、特に限定されるものではないが、ポリアミック酸溶液の重量に対して5〜20重量倍であることが好ましい。
【0028】
支持体に塗布されたフィルムは、乾燥空気および熱処理によって支持体上でゲル化される。塗布されたフィルムのゲル化温度条件は100〜250℃が好ましく、支持体としては、ガラス、アルミ箔、循環ステンレスベルト、ステンレスドラムなどを使用することができる。ゲル化に必要な処理時間は、温度、支持体の種類、塗布されたポリアミック酸溶液の量、触媒の混合条件によって異なり、一定の時間に限定されていないが、好ましくは5分〜30分の範囲である。
【0029】
ゲル化されたフィルムは、支持体から剥して熱処理して乾燥およびイミド化を完了させるのであり、熱処理時の温度は100〜500℃とし、処理時間は1分〜30分とすることが好ましい。熱処理を済ませたフィルムは、一定の張力下でさらに熱処理して、製膜にて発生したフィルム内部の残留応力を除去することが好ましく、熱履歴および残留応力を解消することにより、より安定した熱的特性を得ることができる。特に、最後の熱処理を実施しない場合、フィルム内の収縮しようとする残留応力が熱膨張を減少させるので、熱膨張係数の値は著しく低下する可能性がある。ここで、張力および温度条件は、互いに相関関係を持つので、温度に応じて張力条件は異なりうるが、温度は300〜500℃が好ましく、熱処理時間は1分〜3時間が好ましく、熱処理を済ませたフィルムの残留揮発成分は5%以下であり、好ましくは3%以下である。
【0030】
こうして得られるポリイミドフィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、10〜250μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜100μmである。
【0031】
ここで、本発明によって得られたポリイミド樹脂またはフィルムの場合、分子構造が下記化学式1で表わされ、9,9−ビス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)フルオレン(FFDA)と2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)とが重合された第1ブロックと、下記化学式2で表わされ、9,9−ビス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)フルオレン(FFDA)と3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とが重合された第2ブロックとを含むことが好ましい。
【0032】
<化学式1>
【0033】
<化学式2>
【0034】
前記化学式1および2中、Xはモル分率を意味し、範囲は0.4<X<1.0であり、優れた光学特性および光学的等方性を得るために、前記化学式1のモル分率は、全体の総モルに対して0.5<X<0.8であることが、より好ましい。前記化学式2のモル比率が0.6以上であれば、フィルムの耐熱性は補完することができるものの、フィルムの複屈折率を改善することはできない。
【0035】
本発明において、前記ポリイミド樹脂およびフィルムは、熱変形解析法(熱機械分析法;TMA−Method)によって、50〜250℃で2回繰り返し測定した線形熱膨張係数(CTE)が、60ppm/℃以下であり得る。特に、フィルムの場合は、フィルム厚さ10〜20μmを基準に、黄色度が2.0以下であり、550nmで測定した平均光透過率が88%以上であり、TE(Transverse Electric)−TM(Transverse magnetic)で定義される複屈折(Δn)が0.01以下であるので、ディスプレイの基板またはディスプレイ保護層として使用することができる。
【実施例】
【0036】
これにより、本発明のポリイミドフィルムをフレキシブルディスプレイなどの映像表示素子用基板に適用することにより、機械的特性および耐熱性に優れるうえに、低い複屈折特性を有する無色透明な基板を得ることができる。
【0037】
<実施例>
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0038】
実施例1
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた500mLの反応器に窒素を通過させながら、ジメチルアセトアミド(DMAc)384.316gを加え入れた後、FFDA 49.972g(0.13mol)を溶解した。その後、BPDA 15.299g(0.052mol)を入れて5時間反応させ、6FDA 34.652g(0.078mol)を入れた。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反応させた。その結果として、固形分の濃度が20重量%であり、粘度(Brookfield粘度計(RVDV−II+P)を、25℃で6番または7番スピンドルを用いて50rpmで2回測定して平均値を測定)が150ポアズ(poise)であるポリアミック酸溶液を得た。反応が終了した後、得られた溶液をステンレス板に塗布した後、10〜20μmにキャスティングし、80℃の熱風で20分、120℃で20分、300℃で等温10分間、熱風によって乾燥させた後、徐々に冷却し、板から分離して厚さ(Anritsu Electronic Micrometerで測定、誤差範囲±0.5%以下)12μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0039】
実施例2
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた500mlの反応器に窒素を通過させながら、ジメチルアセトアミド(DMAc)407.493gを加え入れた後、FFDA 49.972g(0.13mol)を溶解した。その後、BPDA 11.475g(0.039mol)を入れて5時間反応させ、6FDA 40.427g(0.091mol)を入れた。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反応させた。その結果、固形分の濃度が20重量%であり、粘度が127poiseであるポリアミック酸溶液を得た。しかる後に、実施例1と同様にして厚さ10μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0040】
実施例3
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた500mlの反応器に窒素を通過させながら、ジメチルアセトアミド(DMAc)384.349gを加え入れた後、FFDA 46.128g(0.12mol)を溶解した。その後、BPDA 7.061g(0.024mol)を入れて5時間反応させ、6FDA 42.648g(0.096mol)を入れた。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反応させた。その結果、固形分の濃度が20重量%であり、粘度が112poiseであるポリアミック酸溶液を得た。しかる後に、実施例1と同様にして厚さ12μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0041】
実施例4
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた500mlの反応器に窒素を通過させながら、ジメチルアセトアミド(DMAc)390.551gを加え入れた後、FFDA 46.128g(0.12mol)を溶解した。その後、BPDA 3.531g(0.012mol)を入れて5時間反応させ、6FDA 47.979g(0.108mol)を入れた。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反応させた。その結果、固形分の濃度が20重量%であり、粘度が172poiseであるポリアミック酸溶液を得た。しかる後に、実施例1と同様にして厚さ15μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0042】
比較例1
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた500mlの反応器に窒素を通過させながら、ジメチルアセトアミド(DMAc)380.027gを加え入れた後、FFDA 53.816g(0.14mol)を溶解した。その後、BPDA 41.191g(0.14mol)を入れ、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反応させた。その結果、固形分の濃度が20重量%であり、粘度が112poiseであるポリアミック酸溶液を得た。しかる後に、実施例1と同様にして厚さ12μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0043】
比較例2
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた500mlの反応器に窒素を通過させながら、ジメチルアセトアミド(DMAc)397.752gを加え入れた後、FFDA 46.128g(0.12mol)を溶解した。その後、6FDA 53.310g(0.12mol)を入れ、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反応させた。その結果、固形分の濃度が20重量%であり、粘度が148poiseであるポリアミック酸溶液を得た。しかる後に、実施例1と同様にして厚さ19μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0044】
比較例3
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた500mlの反応器に窒素を通過させながら、ジメチルアセトアミド(DMAc)380.998gを加え入れた後、FDA 45.299g(0.13mol)を溶解した。その後、BPDA 15.299g(0.052mol)を入れて5時間反応させ、6FDA 34.652g(0.078mol)を入れた。続いて、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反応させた。その結果、固形分の濃度が20重量%であり、粘度が357poiseであるポリアミック酸溶液を得た。しかる後に、実施例1と同様にして厚さ17μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0045】
比較例4
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた500mlの反応器に窒素を通過させながら、ジメチルアセトアミド(DMAc)396.601gを加え入れた後、FDA 45.299g(0.13mol)を溶解した。その後、BPDA 7.650g(0.026mol)を入れて5時間反応させ、6FDA 46.202g(0.104mol)を入れた。続いて、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反応させた。その結果、固形分の濃度が20重量%であり、粘度が320poiseであるポリアミック酸溶液を得た。しかる後に、実施例1と同様にして厚さ14μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0046】
比較例5
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた500mlの反応器に窒素を通過させながら、ジメチルアセトアミド(DMAc)394.502gを加え入れた後、TFDB 44.832g(0.14mol)を溶解した。その後、BPDA 16.476g(0.056mol)を入れて5時間反応させ、6FDA 37.317g(0.084mol)を入れた。続いて、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反応させた。その結果、固形分の濃度が17重量%であり、粘度が480poiseであるポリアミック酸溶液を得た。しかる後に、実施例1と同様にして厚さ14μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0047】
比較例6
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた500mlの反応器に窒素を通過させながら、ジメチルアセトアミド(DMAc)396.616gを加え入れた後、TFDB 43.231g(0.135mol)を溶解した。その後、BPDA 7.944g(0.027mol)を入れて5時間反応させ、6FDA 47.979g(0.108mol)を入れた。続いて、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反応させた。その結果、固形分の濃度が17重量%であり、粘度が352poiseであるポリアミック酸溶液を得た。しかる後に、実施例1と同様にして厚さ20μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0048】
これらの実施例および比較例で製造されたポリイミドフィルムの物性を下記の方法で評価し、その結果を下記表1および表2に示した。
【0049】
<測定例>
(1)平均透過度:実施例で製造されたフィルムについて、UV分光計(コニカミノルタ製、CM−3700d)を用いて550nmでの透過度を3回測定し、平均値(平均透過度)を計算した。
【0050】
(2)黄色度(Yellow Index、Y.I.):UV分光計(コニカミノルタ製、CM−3700d)を用いて、380〜780nmでの黄色度をASTM E313規格で測定した。
【0051】
(3)熱膨張係数(CTE)の測定:TMA(TA Instrument社製、Q400)を用い、熱機械分析法(TMA−Method)によって2回にわたって、50〜250℃での線形熱膨張係数を測定した。試験片の大きさは4mm×24mm、荷重は0.02N、昇温速度は10℃/minとした。ここで、フィルムを製膜して熱処理することによりフィルム内に残留応力が残っている可能性があるため、1番目の作動(Run)で残留応力を完全に除去した後、2番目の値を実測定値として提示した。
【0052】
(4)複屈折測定:複屈折分析器(プリズムカプラー(Prism Coupler)、Sairon SPA4000)を用い、532nmでTE(Transverse Electric)モード、及びTM(Transverse magnetic)モードで、それぞれ3回測定し、平均値を求めた。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
表1および表2に示すように、実施例1〜4のポリイミドフィルムは、比較例1〜2のフィルムと比較して、同じレベルで無色透明でありながら、より低い複屈折率を有することが分かった。特に比較例2と比較しては、線形熱膨張係数により表される耐熱特性が10%以上改善されたことが分かった。ただし、6FDAに対するBPDAのモル分率が増えるほど、上記の組成で、耐熱特性は改善されるものの、複屈折率は低下するおそれがあるので、6FDAの比率がアンヒドリドの総モル比に対して0.4以上乃至1.0未満の範囲を持つようにすることが好ましいことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、ポリアミック酸、それから製造されたポリイミド樹脂および無色透明なポリイミドフィルムに関するものであって、映像表示素子に適用可能であり、ディスプレイの基板またはディスプレイ保護層として使用することができる。