(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588103
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】半導体素子用の受動冷却機能を備えた担体
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20191001BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20191001BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K3/46 N
H05K3/46 U
H05K3/46 T
H05K1/02 Q
H05K1/18 P
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-550110(P2017-550110)
(86)(22)【出願日】2016年3月1日
(65)【公表番号】特表2018-511178(P2018-511178A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】EP2016054321
(87)【国際公開番号】WO2016150662
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2017年9月25日
(31)【優先権主張番号】102015104641.5
(32)【優先日】2015年3月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
(73)【特許権者】
【識別番号】505420013
【氏名又は名称】アーテー・ウント・エス・オーストリア・テヒノロギー・ウント・ジュステームテッヒニク・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AT & S AUSTRIA TECHNOLOGIE & SYSTEMTECHNIK AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェイヒティンガー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ダーノフセク,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】リンナー,フランツ
(72)【発明者】
【氏名】フォッケンベルガー,クリスティアン
【審査官】
鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5572684(JP,B2)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0145328(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0010446(US,A1)
【文献】
国際公開第2012/111711(WO,A1)
【文献】
特開2014−131039(JP,A)
【文献】
特許第5423874(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 1/02
H05K 1/18
H01L 23/12
H01L 23/48
H01L 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子(3)用の受動冷却機能を備えた担体(2)であって、
上面(7)および下面(8)を備えた基体(6)と、前記基体(6)中に埋め込まれた少なくとも1つの電気素子(13、13a、13b)とを有し、
前記担体(2)は、前記基体(6)の前記上面(7)上の前記半導体素子(3)の下面から前記少なくとも1つの電気素子(13、13a、13b)の上面へと伸張する第1サーマルヴィア(14)を有し、
前記担体(2)は、前記少なくとも1つの電気素子(13、13a、13b)から前記基体(6)の前記下面(8)へと伸張する第2サーマルヴィア(15)を有し、
前記少なくとも1つの埋め込まれた電気素子(13、13a、13b)は、前記第1および前記第2サーマルヴィア(14、15)により電気的に接触されており、
前記第1サーマルヴィア(14)および前記第2サーマルヴィア(15)は、前記担体(2)および/または前記担体(2)上の前記半導体素子(3)の受動冷却に役立つ、担体。
【請求項2】
前記担体(2)は、前記基体(6)の前記上面(7)から前記基体(6)の前記下面(8)へと伸張する少なくとも1つのさらなるサーマルヴィア(19)を有する、請求項1に記載の担体(2)。
【請求項3】
前記さらなるサーマルヴィア(19)の直径は、前記第1サーマルヴィア(14)の直径よりも、かつ、前記第2サーマルヴィア(15)の直径よりも大きい、請求項2に記載の担体(2)。
【請求項4】
前記担体は、さらに、前記基体(6)中に埋め込まれていて、かつ前記基体(6)の前記上面(7)に平行な方向に伸びている金属構造部(24)を有し、
前記金属構造部(24)は、前記さらなるサーマルヴィア(19)に直接当接する、請求項2または3のいずれか1項に記載の担体(2)。
【請求項5】
前記基体(6)は多層構造を有し、かつ、
前記金属構造部(24)と前記少なくとも1つの埋め込まれた電気素子(13、13a、13b)とは、同じ層(11)中に配置されている、請求項4に記載の担体(2)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの埋め込まれた電気素子(13、13a、13b)は、バリスタ、ダイオード、NTCサーミスタ、PTCサーミスタ、セラミック製多層チップコンデンサ、多層インダクタンスまたは前記半導体素子(3)用の駆動回路である、請求項1から5のいずれか1項に記載の担体(2)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの埋め込まれた電気素子(13、13a、13b)は、能動電子部品例えば電子チップとりわけ半導体チップ、または受動電子部品例えばコンデンサ、抵抗、バリスタ、NTC、PTCもしくはインダクタンス、または埋め込まれたモジュールであり、
前記埋め込まれたモジュールとは、例えばDRAMもしくは任意のこれ以外のあらゆるメモリなどのデータメモリ、例えば高域フィルタ、低域フィルタもしくは帯域通過フィルタとして構成可能でありかつ例えば周波数フィルタとして機能可能であるフィルタ、例えば論理集積回路などの集積回路、例えばマイクロプロセッサなどの信号処理部品、電力管理部品、例えば光電子素子などの光電インタフェース素子、例えばDC/DCコンバータもしくはAC/DCコンバータなどの電圧変換器、例えばPZTセンサおよび/もしくはアクチュエータなどの電気機械変換器、例えばRFIDチップもしくはトランスポンダなどの電磁波用の送信および/もしくは受信ユニット、暗号化部品、容量部、インダクタンス、例えばトランジスタベースのスイッチなどのスイッチ、ならびに、これらおよび別の機能電子構成部品の組み合わせであり、
ならびに/または
前記埋め込まれた電気素子(13、13a、13b)は、微小電気機械システム(MEMS)、バッテリ、カメラもしくはアンテナを有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の担体(2)。
【請求項8】
前記基体(6)は、樹脂、とりわけビスマレイミドトリアジン樹脂、ガラス、とりわけガラス繊維、プリプレグ材料、ポリイミド、液晶ポリマー、シアン酸エステル、エポキシドベースのビルドアップフィルム、FR4材料、セラミックおよび金属酸化物からなる群からの少なくとも1つの材料を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の担体(2)。
【請求項9】
前記担体(2)の高さは500μm未満である、請求項1から8のいずれか1項に記載の担体(2)。
【請求項10】
前記担体(2)は、前記基体(6)の前記上面(7)から前記少なくとも1つの電気素子(13、13a、13b)へと伸張する第3サーマルヴィア(17)を有し、
前記担体(2)は、前記少なくとも1つの電気素子(13、13a、13b)から前記基体(6)の前記下面(8)へと伸張する第4サーマルヴィア(18)を有し、かつ、
前記少なくとも1つの埋め込まれた電気素子(13、13a、13b)は、前記第3および第4サーマルヴィア(17、18)によっても電気的に接触されている、請求項1から9のいずれか1項に記載の担体(2)。
【請求項11】
少なくとも1つの第2電気素子(13a)は、前記基体中(6)に埋め込まれていて、
前記担体(2)は、前記基体(6)の前記上面(7)から前記第2電気素子(13b)へと伸張する第5サーマルヴィア(22)を有し、
前記担体(2)は、前記第2電気素子(13b)から前記基体(6)の前記下面(8)へと伸張する第6サーマルヴィア(23)を有し、かつ、
前記埋め込まれた第2電気素子(13b)は、前記第5および前記第6サーマルヴィア(22、23)により電気的に接触されている、請求項1から10のいずれか1項に記載の担体(2)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の担体(2)と、前記担体(2)の前記上面(7)上に配置された半導体素子(3)とを有する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子用の担体、および、担体とこの担体上に配置された半導体素子とを有する装置に関する。
【0002】
この場合、半導体素子は、とりわけ発光ダイオードでありうる。
【背景技術】
【0003】
発光ダイオード用の担体の設計においては、発光効率、寿命および温度管理などの様々な観点が重要な役割を果たす。機能的および熱機械的な要件以外に、幾何学的な問題も解決されるべき問題として存在する。特に携帯型応用においては、例えば携帯電話のカメラフラッシュ中に統合される発光ダイオードにおいては、担体およびさらなる素子(例えば、離散型保護素子およびセンサなど)は、可能な限り必要な設置場所が小さく、可能な限り全高が小さくあるべきである。
【0004】
発光ダイオード用の担体についてのさらなる重要な要件は、発光ダイオードの光放射を可能な限り妨げることなく可能にし、その際とりわけ遮断を回避するという点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、半導体素子用の改良した担体であって、例えば良好な温度管理が可能である担体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本願請求項1に記載の対象物により達成される。
提案するのは、半導体素子用の受動冷却機能を備えた担体であって、これは、上面および下面を備えた基体と、この基体中に埋め込まれた少なくとも1つの電気素子とを有する担体である。この担体は、さらに、基体の上面から少なくとも1つの電気素子へと伸張する第1サーマルヴィアを有する。担体は、少なくとも1つの電気素子から基体の下面へと伸張する第2サーマルヴィアを有する。この少なくとも1つの埋め込まれた電気素子は、第1および第2サーマルヴィアにより電気的に接触されている。
【0007】
したがって、第1および第2サーマルヴィアは、担体中で2つの機能を満たす。これらにより、少なくとも1つの埋め込まれた素子の電気接触も、基体の熱抵抗の低減も可能になるが、この理由は、これらのサーマルヴィアが、その高い熱伝導性に基づいて、担体上に載置された半導体素子から放射された熱を迅速にかつ効果的に基体の上面から反らすのに適しているからである。
【0008】
したがって、これらのサーマルヴィアは、担体および/または半導体素子の受動冷却用に役立つ。受動冷却とは、この場合、「自由」対流のみに基づく電気または電子機器の冷却のことを称する。この際、廃熱は周囲の空気中に排出されうる。
【0009】
少なくとも1つの電気素子が担体中に埋め込まれていることにより、担体は、素子を上面上に載置しないことが可能で、その結果、全体として担体の高さを低く実現可能である。これにより、とりわけ携帯型の応用において必須となる全高の明らかな低減が可能になる。
【0010】
この担体は、半導体素子例えば発光ダイオードチップを、担体上に直接実装しうるのに適しうる。これは、例えばAuSn共晶接合またはAuSnリフロー法により行われうる。この際、半導体素子例えば発光ダイオードを基体の上面上に配置可能なように、この担体は構成されている。この担体は、1つまたは複数の半導体素子を収容可能である。
【0011】
「埋め込まれた」との概念は、この場合、この埋め込まれた電気素子が、全ての側で、基体の層ないしサーマルヴィアにより閉じ込められていることであると理解されるべきである。基体中には開口が形成されていて、この開口中で電気素子が閉じ込められている。この電気素子は、その上面で、その下面でおよびその側面で、基体の材料およびサーマルヴィアにより完全に閉じ込められている。
【0012】
ヴィアとは、貫通接触部(英語で、Vertical Interconnect Access、Via)のことを称するが、これにより、基体の様々な面間での垂直方向での電気連結が可能になる。ここで、「垂直」とは、基体の下面から基体の上面への方向を称する。ここでサーマルヴィアとは、熱伝導性が少なくとも250W/(m・K)と高く傑出している貫通接触部のことを称する。サーマルヴィアは、基体の上面から熱を反らすために機能する。サーマルヴィアは、銅もしくは銀を有しえ、または銅もしくは銀からなりうる。
【0013】
上述の担体は、半導体素子から放射された熱を効率的に反らすことに傑出しているが、これは、サーマルヴィアの熱抵抗が低いことによりもたらされる。これにより、半導体素子の寿命も改良可能である。代替としてまたはこれに補足して、サーマルヴィアを持たない比肩しうる担体についての半導体素子で可能であるよりも大きな電力で、半導体素子を作動させることが可能となるが、この理由は、より高い電力に基づいて追加的に発生させられる熱は、サーマルヴィアによってのみ反らしうるからである。
【0014】
さらに、担体は、基体の上面から基体の下面へと伸張する少なくとも1つのさらなるサーマルヴィアを有しうる。このさらなるサーマルヴィアは、埋め込まれた素子の接触には機能しない純粋なサーマルヴィアでありえる。この少なくとも1つのさらなるサーマルヴィアにより、基体の熱伝導性をさらに改良しうる。
【0015】
担体は、さらに、基体中に埋め込まれていてかつ基体の上面に平行な方向に伸びている金属構造部を有しうるが、この金属構造部は、さらなるサーマルヴィアに直接当接する。とりわけこの金属構造部は、さらなるサーマルヴィアと接しうる。この金属構造部は、複数のさらなるサーマルヴィアにも直接当接可能である。この金属構造部により、高い熱伝導性を備えたさらなる材料を基体中に入れ、その結果、基体全体の熱伝導性を高めることが可能である。とりわけ金属構造部は、基体の上面から熱を迅速に反らすのに寄与する。この金属構造部は、例えばブロックとしてまたは帯として形成可能である。
【0016】
基体は多層構造を有しえ、金属構造部と埋め込まれた電気素子とは、同じ層中に配置されている。
【0017】
埋め込まれた電気素子は、バリスタ、ダイオード、NTCサーミスタ、PTCサーミスタ、セラミック製多層チップコンデンサ、多層インダクタンスまたは少なくとも1つの半導体素子用の駆動回路でありえる。
【0018】
素子を埋め込むことは、高すぎる電圧を印加した場合に生じる損傷から半導体素子を保護するのに適しうる。この種のESD保護素子は、例えばバリスタまたはダイオードでありえる。
【0019】
素子を埋め込むことにより、半導体素子の規定の熱的結合が可能になりうる。とりわけNTCサーミスタおよびPTCサーミスタはこれに適している。これらは、半導体素子との相互接続をする際に、温度が高すぎることにより生じる半導体素子の損傷を防ぐことができる。
【0020】
埋め込まれた素子が、半導体素子を駆動するための駆動回路または制御回路であることも可能である。
【0021】
埋め込まれた電気素子は、とりわけ能動電子部品(例えば、電子チップとりわけ半導体チップ)、または、あらゆる任意の受動電子部品(例えば、コンデンサ、抵抗、バリスタ、NTC、PTCもしくはインダクタンス)でありうる。埋め込まれたモジュールないし部品の例は、例えばDRAM(または任意のこれ以外のあらゆるメモリ)などのデータメモリ、フィルタ(例えば、高域フィルタ、低域フィルタまたは帯域通過フィルタとして構成可能であり、かつ例えば周波数フィルタリングのために機能可能である)、集積回路(例えば、論理集積回路)、信号処理部品(例えば、マイクロプロセッサ)、電力管理部品、光電インタフェース素子(例えば、光電子素子)、電圧変換器(例えば、DC/DCコンバータまたはAC/DCコンバータ)、電気機械変換器(例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)センサおよび/またはアクチュエータ)、電磁波用の送信および/または受信ユニット(例えば、RFIDチップまたはトランスポンダ)、暗号化部品、容量部、インダクタンス、スイッチ(例えば、トランジスタベースのスイッチ)、ならびに、これらの部品とこれ以外の機能電子構成部品との組み合わせでありえる。この部品は、微小電気機械システム(MEMS)、バッテリ、カメラまたはアンテナをも有しうる。
【0022】
基体は、樹脂、とりわけビスマレイミドトリアジン樹脂、ガラス、とりわけガラス繊維、プリプレグ材料、ポリイミド、液晶ポリマー、シアン酸エステル、エポキシドベースのビルドアップフィルム、FR4材料、セラミックおよび金属酸化物からなる群からの少なくとも1つの材料を有しうる。FR4とは、エポキシド樹脂とガラス繊維織物とからなる複合材料のある分類のことを称する。樹脂・ガラス繊維ラミネートは、電圧耐性が高くかつ機械耐性が高い点が傑出している。さらに、これらの材料は、半導体素子の熱膨張係数に良好に適合された熱膨張係数を有し、その結果、熱機械的干渉を小さく保つことができる。
【0023】
担体の高さは500μm未満、好ましくはこの高さは350μm未満でありえ、とりわけこの担体の高さは200〜500μm、好ましくは200〜350μmでありえる。このように高さを低くすることは、電気素子を担体中に集積することにより可能になる。このようにして、担体上面上に配置されない素子を有する担体を構築可能である。しかし、さらなる電気素子がSMD素子(SMD=Surface Mounted Device(表面実装型デバイス))として表面上に配置されているように、担体を構成することも可能である。
【0024】
担体は、さらに基体の上面から電気素子へと伸張する第3サーマルヴィアを、かつ、電気素子から基体の下面へと伸張する第4サーマルヴィアを有しえる。この場合、この埋め込まれた電気素子は、第3および第4サーマルヴィアによっても電気的に接触されていることができる。
【0025】
さらに、第2電気素子は、基体中に埋め込まれていることができ、かつ、担体は、基体の上面から第2電気素子へと伸張する第5サーマルヴィアを有し、かつ、担体は、この電気素子から基体の下面へと伸張する第6サーマルヴィアを有し、かつ、この埋め込まれた電気素子は、第5および第6サーマルヴィアにより電気的に接触されている。したがって、担体は、複数の埋め込まれた電気素子を有しうる。例えば埋め込まれた第1素子は、ESD保護素子(例えば、バリスタまたはダイオード)でありえ、かつ、埋め込まれた第2素子は、温度センサまたは半導体素子の熱結合を制御するための素子、例えばPTCサーミスタまたはNTCサーミスタでありえ、この際、双方の素子が同じ半導体素子と相互接続可能である。半導体素子をPTCサーミスタと相互接続することにょり、半導体素子を過電流から保護することができる。半導体素子をNTCサーミスタと相互接続することにより、半導体素子を過熱から保護することができる。
【0026】
さらなる態様によれば、上述の担体と、担体の上面上に配置された半導体素子とを有する装置が提案される。
【0027】
半導体素子は、発光ダイオードでありえる。
以下に、本発明を図面に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図4】半導体素子用の担体の第3実施形態の透視図である。
【
図5】半導体素子用の担体の第3実施形態の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、装置1の第1実施形態を示す図である。装置1は、複数の半導体素子3用の担体2を有する。半導体素子3は、この場合それぞれ発光ダイオードである。担体2上に、3つの半導体素子3が配置されている。各半導体素子3上に、レンズとして形成された保護層4が配置されている。保護層4はシリコンを有する。さらに、保護層4はさらなるリン層5で被覆されている。
【0030】
担体2は、上面7と下面8とを備えた基体6を有する。半導体素子3を基体6の上面7上に固定可能、例えばはんだ付け可能なように、この担体2は構成されている。このために、基体6は、その上面7上に接触面9を有する。
【0031】
基体6は、多層構造を有する。この際、基体6は、少なくとも1つの下方層10と、少なくとも1つの中央層11と、少なくとも1つの上方層12とを有する。下方層10は、基体6の下面8を有する。上方層12は基体6の上面7を有する。中央層11は、下方層10と上方層12との間に配置されている。これらの層10、11、12のそれぞれは、ガラス繊維・樹脂混合物を有する。基体6の層10、11、12は、ガラス繊維の樹脂に対する混合割合がそれぞれ異なる。これらの層はFR4を有する。
【0032】
基体6の中央層11中には、電気素子13が埋め込まれている。この中央層11はガラス繊維・樹脂層中に開口を有し、この開口中に埋め込まれた電気素子13が配置されている。素子13は、側方で中央層11により限定されている。素子13の上方に上方層12が配置されていて、かつ、素子13の下方に下方層10が配置されている。したがって、素子13は、全ての側で、基体6の層10、11、12に取り囲まれている。
【0033】
素子13は、バリスタ、ダイオード、NTCサーミスタ、PTCサーミスタ、セラミック製多層チップコンデンサ(英語では、Multi Layer Ceramic Capacitor、MLCC)、多層インダクタンス(英語では、:Multi Layer Indu
ctor、ML−Inductor)または半導体素子3用の駆動回路でありえる。
【0034】
担体2は、さらに第1サーマルヴィア14を有するが、これが、基体6の上面7から電気素子13へと伸張している。この際、第1サーマルヴィア14は、電気素子13を、上面7上に配置されている接触面9と接触させる。
【0035】
さらに、担体2は第2サーマルヴィア15を有し、これが、電気素子13から基体6の下面8へと伸張している。この際、第2サーマルヴィア15は、素子13を、基体6の下面8上に配置されている電気接点16と接触させる。したがって、第1および第2サーマルヴィア14、15は、素子13の電気接触のために役立つ。
【0036】
さらに、担体2は、上面7から素子13へと伸張する第3サーマルヴィア17と、埋め込まれた電気素子13から下面8へと伸張する第4サーマルヴィア18とを有する。第3および第4サーマルヴィア17、18を介しても、埋め込まれた素子13は電気的に接触されている。
【0037】
第1〜第4サーマルヴィア14、15、17、18は、この担体2中で2つの機能を果たす。一方では、サーマルヴィアは埋め込まれた素子13の電気接触のために役立つ。他方、これらのサーマルヴィアは担体2の熱抵抗を低減させる。したがって、第1〜第4サーマルヴィア14、15、17、18は、半導体素子3で発生した熱を、迅速かつ効果的に基体6の上面7から反らすことができる。このようにしてサーマルヴィア14、15、17、18は、担体2および半導体素子3の受動冷却に役立つ。サーマルヴィア14、15、17、18は、このために、熱伝導性が高い材料を有する。サーマルヴィア14、15、17、18は、例えば銅または銀を有する。これらは、銅または銀からなることも可能である。双方の材料は、非常に高い熱伝導性により傑出している。純粋な銅の熱伝導性は、401W/(m・K)である。純粋な銀の熱伝導性は、429W/(m・K)である。
【0038】
さらに、担体2はさらなるサーマルヴィア19を有するが、このサーマルヴィアは、上面7から下面8へと伸張する。このさらなるサーマルヴィア19は、担体2の熱抵抗を低減するという目的にのみ機能し、すなわち、担体2および半導体素子3の受動冷却にのみ役立つ。このさらなるサーマルヴィア19は、これも同様に銅または銀を有する。さらなるサーマルヴィア19は、埋め込まれた素子13とは接触しない。
【0039】
さらなるサーマルヴィア19は、電気素子13と接触している第1〜第4サーマルヴィア14、15、17、18よりも直径が大きい。とりわけさらなるサーマルヴィア19の直径は、100〜200μmであり、好ましくは130〜170μmである。第1〜第4サーマルヴィア14、15、17、18の直径は、40〜100μm、好ましくは40〜70μmである。
【0040】
基体6の上面7は反射層20で被覆されている。この反射層は、半導体素子3から放射された光を反射し、これにより担体2の反射率を改良するのに適している。この反射層20には、ポリマーまたはガラスが充填されている。
【0041】
さらに担体2の上面7には、基体6中に埋め込まれていないSMD素子21(SMD=表面実装型デバイス)が配置されている。
【0042】
基体6中には、第2電気素子13aおよび第3電気素子13bが埋め込まれている。これらは、それぞれ基体の上面7上に配置された接触面9とサーマルヴィアを介して電気的に連結されている。例えば第2電気素子13aは、第5サーマルヴィア22を介して上面7と連結されている。
【0043】
さらに、第2および第3素子13a、13bは、サーマルヴィアを介して基体6の下面8上の電気接点16と電気的に連結されている。例えば第2素子13aは、第6サーマルヴィア23を介して下面8と連結されている。
【0044】
埋め込まれた第2および第3素子13a、13bは、埋め込まれた第1素子13と同様に構成可能で、相互接続可能である。第1素子13に関連して説明した特徴は、埋め込まれた第2および第3素子13a、13bにも当てはまる。
【0045】
図2および
図3は、半導体素子3と半導体素子3用の担体2とからなる装置1の第2実施形態を示すが、この場合、半導体素子3は発光ダイオードである。
図2は、装置1の垂直面に沿った断面を示し、かつ、
図3は水平方向の断面を示す。
【0046】
第2実施形態による装置1は、第1実施形態により説明をした装置1に実質的に相当する。しかし、この場合、担体2上には、唯一の半導体素子3用の接触面9のみが設けられている。さらにまさに1つの素子13が基体6中に埋め込まれている。
【0047】
埋め込まれた素子13は、熱伝導性が40W/(m・K)であるZnOPrを有しうる。基体6は、熱伝導性が0.62W/(m・K)であるFR4を有しうる。上述のように、逆にサーマルヴィア14、15、17、18、19の熱伝導性は、実質的により高くありえる。
【0048】
担体2の高さは、500μm未満であり、好ましくはこの高さは200〜350μmである。この種の担体2は、実質的に上面7上にSMD素子21が配置されている担体2よりも高さが低い。したがって、電気素子13を担体2中に埋め込むことにより、システムの全高を実質的に低減することが可能である。複数の素子13、13a、13bを、高さが500μm未満である担体中に埋め込むことも可能である。
【0049】
図3中では、さらなるサーマルヴィア19ならびに第1および第3サーマルヴィア14、17の配置を認識可能である。さらなるヴィア19は、埋め込まれた素子13の周りに配置されている。
図3は、これらのさらなるヴィア19が、熱伝導性を改良するように比較的大きな断面を有することを示す。第1および第3ヴィア14、17は、縦長の断面を有する。第2および第4ヴィア15、18も、この種の縦長の断面を有しうる。
【0050】
さらなるサーマルヴィア19の直径は150μmで、互いに対する最低間隔は、少なくとも200μmである。埋め込まれた素子13に対するさらなるヴィア19の最低間隔は、200μmである。さらなるヴィア19は、担体2の縁部からの間隔が、少なくとも125μmである。埋め込まれた素子13は、縁からの間隔が少なくとも380μmである。埋め込まれた素子13の高さは80〜200μmであり、基体6の全高は300μmである。第1〜第4ヴィア14、15、17、18は、それぞれ第1方向での広がりが60μmで、第1方向に対して垂直である第2方向での広がりが100μmである。基体6の下方層10および上方層12の厚さは、少なくとも50μmである。基体6の上面7および下面8上に配置された接触面9、16は、銅からなり、厚さは30+/−10μmである。これらは、基体6の側方の縁部から、少なくとも75μmの間隔をとっている。ここで挙げたサイズにより、とりわけ全高が小さくかつ熱伝導性が高いことで傑出している安定した担体2が可能になり、これにより、半導体素子3を高い電力で作動することが可能になる。
【0051】
図4および
図5は、半導体素子3用の担体2の第3実施形態の透視図である。より明瞭に図示するために、
図4中では、基体6および基体の上面7上に配置されている接触面9は図に記入されていない。
図5中では、基体6のみ記入されていない。
【0052】
第3実施形態による担体2は、金属構造部24を有し、この金属構造部は基体6中に埋め込まれている。この金属構造部24は、基体6の中央層11中に配置されていて、この中央層中に、埋め込まれた電気素子13も配置されている。金属構造部24は、それぞれ3つのさらなるサーマルヴィア19と連結されている。とりわけ、これらの金属構造部はさらなるサーマルヴィア19を直接取り囲み、これらに当接している。金属構造部24により、これらが接しているサーマルヴィア19の熱伝導性が改良する。
【0053】
図4および
図5は、それぞれブロックとして形成された金属構造部24を示す。金属構造部24が別の形状を有することも可能であり、例えば帯または窓であることも可能である。枠形状の窓の配置は、この場合、例えばその中央に開口を有し、かつ、基体6中に埋め込まれた金属素子13を取り囲みこの素子を開口中に配置するようにすることもできる。帯では、高さが非常に低く、例えば10μmよりも小さいことが可能である。高さとは、この場合、下面8から上面7への方向での広がりのことを称する。
【符号の説明】
【0054】
1 装置
2 担体
3 半導体素子
4 保護層
5 リン層
6 基体
7 上面
8 下面
9 接触面
10 下方層
11 中央層
12 上方層
13 電気素子
13a 電気素子
13b 電気素子
14 第1サーマルヴィア
15 第2サーマルヴィア
16 電気接点
17 第3サーマルヴィア
18 第4サーマルヴィア
19 さらなるサーマルヴィア
20 反射層
21 SMD素子
22 第5サーマルヴィア
23 第6サーマルヴィア
24 金属構造部