【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る風車翼の補修、補強又は付属部品の取り付け方法は、
少なくとも一層の強化繊維とUV硬化型樹脂とを含む補修部材が満たすべき、風車翼の母材に対する前記補修部材の接着強度の基準を決定するステップと、
前記風車翼における補修対象部位の損傷状況に基づいて、前記補修部材の平面視における寸法、前記補修部材における前記強化繊維の層数、又は、前記強化繊維の繊維延在方向の少なくとも一つを含む施工条件を決定するステップと、
決定された前記施工条件に従って、前記強化繊維及び前記UV硬化型樹脂を前記補修対象部位上に配置するステップと、
前記補修部材の前記母材に対する接着強度が前記基準を満たすように、前記強化繊維及び前記UV硬化型樹脂を前記補修対象部位上に配置した状態で前記UV硬化型樹脂を硬化させて前記補修部材を得るステップと、
を備える。
【0008】
上記(1)の方法によれば、補修部材が満たすべき、風車翼の母材に対する接着強度の基準が決定され、補修対象部位の損傷状況に基づいて施工条件が決定され、決定された施工条件に従って強化繊維及びUV(ultraviolet)硬化型樹脂が補修対象部位上に配置され、当該配置された状態で補修部材の母材に対する接着強度が上記基準を満たすようにUV硬化型樹脂を硬化させることで補修部材が得られる。つまり、風車翼の母材に対する補修部材の接着強度を予め確認して基準を決定し、この基準を満たすようにUV硬化型樹脂を硬化させるから、張り付けた後の補修部材の強度を判断することができる。これにより、必要強度を備えた補修部材を用いて低コストで補修等できるほか、例えば、貼付け後における風車翼の空力特性等への影響を必要最小限に抑えた補修部材で補修等することができる。
【0009】
(2)いくつかの実施形態では、上記(1)に記載の方法において、
前記硬化させるステップでは、少なくとも一種類のガラス繊維と前記UV硬化型樹脂とを含むプリプレグ材にUVを照射してもよい。
【0010】
上記(2)の方法によれば、プリプレグ材を用いることにより、現場でガラス強化繊維にUV硬化型樹脂を含浸させる必要がなく、作業期間を大幅に短縮することができる。また、プリプレグ材の構成を、風車翼の母材に応じて予め母材との接着強度の基準を満たすように設定したり選択したりすることができるため、工期の短縮化を図りつつ強度を満たした補修部材を得ることができる。
【0011】
(3)いくつかの実施形態では、上記(2)に記載の方法において、
前記プリプレグ材は遮光性を有する袋に内包され、
前記施工条件を決定するステップでは、前記補修、補強又は付属品取り付けの対象部位から、前記風車翼の母材における表面の被膜を除去して寸法を計測し、
前記配置するステップでは、計測された前記寸法に基づき、前記袋に収納された前記プリプレグ材を前記袋ごと裁断し、裁断された前記袋を取り除いた後に前記プリプレグ材を前記補修対象部位に密着させてもよい。
【0012】
上記(3)の方法によれば、補修、補強又は付属品取り付けの対象部位から、風車翼の母材における表面の被膜を除去することで、対象部位の寸法を正確に計測することができる。また、計測された寸法に基づき袋に収納されたプリプレグ材を裁断することで、対象部位に張り付けるプリプレグ材を、母材への接着強度の基準を満たすために必要な寸法に裁断することができる。さらに、遮光性を有する袋ごとプリプレグ材を裁断することで、母材に密着させる直前までプリプレグ材に光が照射されることを防止できるから、風車翼の母材における表面の形状により合致するようにプリプレグ材を密着させることができ、基準を満たす適切な接着強度を確保することができる。
【0013】
(4)いくつかの実施形態では、上記(2)又は(3)に記載の方法において、
硬化後の前記プリプレグ材の剥離強度が3MPa以上であることを確認するステップをさらに備えていてもよい。
【0014】
上記(4)の方法によれば、硬化後における剥離強度が3MPa以上であることを確認したプリプレグ材を用いて風車翼の補修、補強又は付属部品の取り付けを行うことができるから、上記接着強度の基準を満たすべく、各ステップにおける判断をより適切に行うことができる。
【0015】
(5)いくつかの実施形態では、上記(2)〜(4)の何れか一つに記載の方法において、
前記UV硬化型樹脂は、ビニルエステルまたはポリエステルと、前記ビニルエステルまたはポリエステルに含浸されたUV硬化剤とを含んでいてもよい。
【0016】
上記(5)の方法によれば、ビニルエステルまたはポリエステルと、これらに含浸されたUV硬化剤とを含むUV硬化型樹脂を含む補修部材を用いて、上記(1)〜(4)の何れか一つで述べた効果を享受することができる。
【0017】
(6)いくつかの実施形態では、上記(2)〜(5)の何れか一つに記載の方法において、
前記ガラス繊維は、前記繊維延在方向が一方向のUD、又は、各々が異なる方向に延在する少なくとも2層の繊維層を含むDBMのうち少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0018】
上記(6)の方法によれば、施工条件を決定するステップにおいて風車翼における補修対象部位の損傷状況に基づいて、強化繊維の繊維延在方向が一方向のUD(unidirection)又はDBM(double bias mat)の少なくとも一方を含むように決定したり、配置するステップにおいて上記施工条件に従って強化繊維及びUV硬化型樹脂を補修対象部位上に配置したりすることができる。また、UD又はDBMの少なくとも一方を含むガラス繊維とUV硬化型樹脂とで補修部材を形成することで、例えばFRP(fiber reinforced plastic)材等を含む風車翼の母材に対する補修、補強又は付属部品の取り付けを、母材とより一体化し得る補修部材で実現することができる。
【0019】
(7)いくつかの実施形態では、上記(2)〜(6)の何れか一つに記載の方法において、
前記配置するステップでは、両面に透明フィルムが貼付された前記プリプレグ材を用い、
前記硬化させるステップでは、前記プリプレグ材のうち前記風車翼の外皮との対向面と反対の面に前記透明フィルムが貼付された状態で前記UVを照射してもよい。
【0020】
上記(7)の方法によれば、風車翼の外皮に密着させたプリプレグ材の上面を透明フィルムで覆った状態でUVを照射できるから、プリプレグ材の乾燥、酸化、型崩れ又は異物の付着等を防止しながら樹脂を硬化させることができる。また、硬化後に透明フィルムを剥がすことで、補修作業中にプリプレグ材を容易に取り扱うことができる。
【0021】
(8)いくつかの実施形態では、上記(1)〜(7)の何れか一つに記載の方法において、
前記配置するステップの前に、不飽和ポリエステルおよびスチレンを主成分とし前記UV硬化型樹脂と結合するプライマを用いて前記母材を下地処理するステップをさらに備えていてもよい。
【0022】
上記(8)の方法によれば、プライマを用いて母材を下地処理することにより、補修部材と母材との接着性および接着強度を向上させることができる。
【0023】
(9)いくつかの実施形態では、上記(1)〜(8)の何れか一つに記載の方法において、
前記硬化させるステップでは、光源と、前記光源の光路上に配置された集光器具又は拡散器具とを含むUV集光型照射装置を用いてもよい。
【0024】
上記(9)の方法によれば、光源から照射されたUVを集光器具で集光したり拡散器具で拡散させたりすることができる。このように、UV集光型照射装置を用いることで、補修部材に対してより適切にUVを照射して硬化させることができる。
【0025】
(10)いくつかの実施形態では、上記(1)〜(9)の何れか一つに記載の方法において、
前記硬化させるステップでは、前記UV硬化型樹脂に波長が略380nm、光強度が150w/cm
2以上の前記UVを照射してもよい。
【0026】
上記(10)の方法によれば、波長が略380nm、光強度が150w/cm
2以上のUVによりUV硬化型樹脂を効率的に短時間で硬化させることができる。
【0027】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(9)の何れか一つに記載の方法において、
前記硬化させるステップでは、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、Black Light Blueランプ、ケミカルランプ、蛍光管型紫外線ランプ及びエキシマランプのうち何れか一の前記ランプを光源に含む前記UV集光型照射装置を用いてもよい。
【0028】
上記(11)の方法によれば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、Black Light Blueランプ、ケミカルランプ、蛍光管型紫外線ランプ及びエキシマランプのうち何れか一のランプを光源に含むUV集光型照射装置により、UV硬化型樹脂が硬化され、上記何れか一つの実施形態で述べた効果を享受することができる。
【0029】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(9)の何れか一つに記載の方法において、
前記硬化させるステップでは、前記光源としてのLEDから照射される前記UVを集光又は拡散するように構成されたレンズを含む前記UV集光型照射装置を用いてもよい。
【0030】
上記(12)の方法によれば、光源としてのLEDから照射されるUVを集光又は拡散するレンズを含むUV集光型照射装置により、UV硬化型樹脂が硬化され、上記何れか一つの実施形態で述べた効果を享受することができる。
【0031】
(13)いくつかの実施形態では、上記(1)〜(12)の何れか一つに記載の方法において、
硬化した前記UV硬化型樹脂の表面のうち前記風車翼の外皮との境界部の段差をサンディングし、少なくともサンディング後の前記表面に表面コーティング剤を塗布するまたは、シート材を貼り付ける手入れステップをさらに備えていてもよい。
【0032】
上記(13)の方法によれば、硬化後のUV硬化型樹脂の表面と風車翼の外皮との段差をサンディングで薄くすることができるとともに、当該サンディング後の表面を表面コーティング剤又はシート材により滑らかに仕上げることができる。
【0033】
(14)幾つかの実施形態では、上記(13)に記載の方法において、
前記手入れステップでは、前記段差が200μm以下になるように平滑化してもよい。
【0034】
上記(14)の方法によれば、補修部材と翼外皮との境界部を、段差がより薄くなるように平滑化することができる。
【0035】
(15)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(14)の何れか一つに記載の方法において、
前記配置するステップでは、転圧部材を用いて前記UV硬化型樹脂を前記補修対象部位に密着させてもよい。
【0036】
上記(15)の方法によれば、転圧部材を用いることにより、該転圧部材を用いない場合に比べてUV硬化型樹脂を風車翼の補修対象部位により効果的に密着させることができる。