(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<トマト加工品>
本発明の実施に係るケチャップ(以下、「本ケチャップ」という。)の製造において、トマト加工品とは、加工されたトマトであり、例示すると、ダイストマト、トマト搾汁、トマト濃縮汁、トマトパルプ等である。
【0016】
トマト搾汁とは、トマトを破砕して搾汁し或いは裏ごしし、皮や種子等を除去して得られるトマト搾汁、及び、これを濃縮したトマト濃縮汁を希釈還元したものを意味する。トマト搾汁は、トマト加工品品質表示基準(平成23年9月30日消費者庁告示第10号)で指定されたトマトジュースを含む概念であり、トマト濃縮汁は、トマト加工品品質表示基準で指定されたトマトピューレ、トマトペースト及び濃縮トマト等を含む概念である。これらは、さらに他の成分(例えば、少量の食塩や香辛料、食品添加物等)を含有していてもよい。
【0017】
また、本明細書において、トマト搾汁、及びトマト濃縮汁とは、除パルプトマト汁を含む概念であり、除パルプトマト汁とは、トマト搾汁に含まれる水不溶性固形分(トマトパルプ)の一部又は全部を除去したもの、及びこれを濃縮したもの、トマト濃縮汁に含まれる水不溶性固形分(トマトパルプ)の一部又は全部を除去したもの、及びこれらを濃縮又は希釈還元したものである。
【0018】
本明細書において、トマトパルプとは、トマト搾汁、又はトマト濃縮汁から、固液分離を行う方法により、水溶性成分の一部又は全部を除去することで得られたものである。当該固液分離の方法は、既知の方法で構わないが、遠心分離による方法であることが好ましい。
【0019】
<ホットブレイク処理とコールドブレイク処理>
トマト加工品を製造する上で、トマトを破砕した後、搾汁前に、予熱工程を経る。その目的は、トマト組織を破壊軟化させ、搾汁を容易にするためである。この工程には、ホットブレイク処理とコールドブレイク処理がある。ホットブレイク処理は破砕後、予熱工程において70℃以上に加熱するか、トマトそのままを加熱後破砕することによって、トマト細胞破壊と同時に働くペクチナーゼによる、トマト中ペクチンの分解を抑制するため、酵素失活を行う方法である。コールドブレイク処理は、破砕後加熱しないか、しても70℃未満の比較的低温で行なう方法であって、トマト中のペクチナーゼが働き、ペクチンが分解される。上記作用により、ホットブレイク処理されたトマト加工品は、粘度が高く、離しょうが少ないという特徴がある。一方、コールドブレイク処理されたトマト加工品は、粘度が低く、離しょうが多いという特徴がある。
【0020】
本明細書において、ホットブレイク処理工程を経て製造されたトマト加工品のことを、「ホットブレイクトマト加工品」、又は「HBトマト加工品」という。同様に、コールドブレイク処理工程を経て製造されたトマト加工品のことを、「コールドブレイクトマト加工品」、又は「CBトマト加工品」という。前記「トマト加工品」の部分を「トマト搾汁」、「トマト濃縮汁」、「除パルプトマト汁」、「トマトペースト」、「トマトピューレ」、又は「トマトパルプ」と置き換えて表現した場合も同様の意味とする。
【0021】
<除パルプトマト汁の製造方法>
本発明に係る除パルプトマト汁の製造方法を主に構成するのは、除パルプ工程、殺菌工程、及び冷却工程である。好ましくは、除パルプ工程の前にpH調整工程を有することである。また好ましくは、除パルプ工程の後に濃縮工程を有することである。
【0022】
<除パルプ>
除パルプは、対象物(例えば、トマト加工品など)に含まれる不溶性固形部(パルプ)の一部又は全部を除去することである。その目的は、トマト加工品の粘度を低くするためである。一般的なトマト加工品のpHは、3.8〜4.2程度である。本発明において使用されるトマト加工品は、pHが4.35以上、好ましくは、4.41以上のものである。除パルプ時のトマト加工品のBrixは、特に限定されないが、除パルプのしやすさや、除パルプトマト汁中のリコピン濃度を高める観点から、Brix15.0以下であることが好ましい。より好ましくは、Brix10.0以下、さらに好ましくは、Brix4.0以上6.0以下である。水による希釈によりBrixが低くなりすぎると、容量が大きくなりすぎて、ハンドリングが悪くなる。
【0023】
<pH調整>
pH調整は、除パルプトマト汁の製造において原料となるトマト加工品を、所望のpHとなるように調整することである。その目的は、除パルプトマト汁のリコピン濃度を高めるためである。調整後のトマト加工品のpHは、4.35以上、好ましくは4.41以上である。より好ましくは、5.0以上、さらに好ましくは6.0以上8.0以下である。
【0024】
<濃縮>
濃縮は、除パルプトマト汁を濃縮することである。その目的は、除パルプトマト汁の容量を少なくしてハンドリングをよくすること、及び製品に使用する際に、多くの量を配合しやすくすることを可能とすること等である。その方法は公知の方法であれば特に限定されず、加熱蒸発濃縮、膜濃縮、凍結濃縮、及び乾燥等である。
【0025】
<トマト加工品のリコピン濃度>
本発明の実施の形態に係るトマト加工品のリコピン濃度は、市場に流通しているものであれば特に限定されないが、ホットブレイクトマトペースト、又はピューレの1.0Brix当たりのリコピン濃度は、1.8mg/100g以上2.6mg/100g未満であることが好ましい。より好ましくは、2.0mg/100g以上2.4mg/100g未満である。また、コールドブレイクトマトペースト、又はピューレの1.0Brix当たりのリコピン濃度は、1.8mg/100g以上2.6mg/100g未満であることが好ましい。より好ましくは、2.0mg/100g以上2.4mg/100g未満である。
【0026】
<トマト量>
本発明の実施の形態に係るトマト量とは、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合における、トマト加工品の重量である。具体的には、100kgのケチャップにおいてBrix27.0のトマト加工品が10kg使用されていた場合、10kg×27.0/4.5=60kgより、トマト量で60kgが100kgのケチャップに含まれることとする。
【0027】
ケチャップに含まれる除パルプトマト汁由来のトマト量[A](kg/100kg)、及びケチャップに含まれるトマトペースト又はトマトピューレ由来のトマト量[B](kg/100kg)は特に限定されないが、[A]と[B]の関係が250≦[A]+[B]≦500であることが好ましい。より好ましくは、300≦[A]+[B]≦500、さらに好ましくは、400≦[A]+[B]≦450である。[A]+[B]の値が250より小さい場合、リコピン量が25mg/100g以下となり得る。また、[A]+[B]の値が大きくなりすぎると、粘度が高くなりすぎる傾向がある。
【0028】
また、[A]と[B]の関係が0.20≦[A]/([A]+[B])≦0.50であることが好ましい。[A]/([A]+[B])は、ケチャップに含まれる全トマト量の内の、除パルプトマト汁由来のトマト量を表し、この値が0.20より小さい場合、粘度が高くなりすぎる傾向にあり、0.50より大きい場合、粘度が低くなりすぎる、又は離しょうが大きくなる傾向にある。[A]と[B]のより好ましい関係は、0.30≦[A]/([A]+[B])≦0.50であり、さらに好ましくは、0.40≦[A]/([A]+[B])≦0.50である。
【0029】
<野菜又は果物の加工品>
野菜加工品とは、加工された野菜(トマトを除く。)である。その原料を例示すると、タマネギ、ニンジン、セロリ等である。これらのうち一種または二種以上は、組み合わせて調合される。
【0030】
<調味料>
調味料とは、原料であって、料理の味を調えるものである。調味料を例示すると、砂糖、食酢、しょうゆ、ウスターソース、塩、うま味調味料、酵母エキス、畜肉エキス、野菜エキス等である。
【0031】
<糖類>
本ケチャップに含有されるのは、糖類である。糖類は、ケチャップに甘味を付与する原料である。糖類を例示すると、砂糖、ブドウ糖、ブドウ糖果糖液糖、等である。
【0032】
<食酢>
本ケチャップに含有されるのは、食酢である。食酢は、ケチャップに酸味を付与する原料である。食酢を例示すると、合成酢、及び穀物酢、果実酢等の醸造酢、等である。
【0033】
<香辛料>
香辛料とは、調味料であって、辛味又は香気を付与するものをいう。香辛料を例示すると、ニンニク、コショウ、シナモン、ナツメグ、サフラン、パセリ、ローズマリー、オレガノ、山椒等、又はこれらの抽出物である。
【0034】
<食品添加物>
本発明が排除しないのは、食品添加物の使用である。当該食品添加物を例示すると、甘味料、酸味料、核酸類、香辛料抽出物、着色料、pH調整剤、酸化防止剤、保存料、乳化剤、栄養強化剤、増粘剤等である。もっとも、不自然な甘味を回避するため、高甘味度甘味料(例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア等)及び糖アルコールは、極力、使用しない。また、本発明の具現化にあたり、その他の食品添加物の使用を極力控えるのが好ましい。
【0035】
<本ケチャップの製造方法>
本ケチャップの製造方法(以下、「本製法」という。)を主に構成するのは、調合工程、均質化工程、殺菌工程、充填工程、密封工程、冷却工程である。これらの工程の一般的な説明のために本願明細書が取り込むのは、「地域資源活用 食品加工総覧 第7巻 加工品編(社団法人 農山漁村文化協会 発行)」の内容である。
【0036】
<調整>
調整は、後述する調合工程において、調合する原材料の量を適切な量となるように調えることである。その目的は、本ケチャップの呈味、性状、色調、栄養成分濃度、リコピンその他機能性成分濃度等を目標のものとするためである。当該調整は、調合工程の前、又は調合工程と同時に行われる。
【0037】
<調合>
調合工程は、複数の原材料を調合することで、ケチャップの基となる混合物質を製造する工程である。本ケチャップ製造における調合工程では、少なくとも、コールドブレイクトマト加工品が調合される。コールドブレイクトマト加工品を調合する目的は、ケチャップのリコピン濃度の高濃度化と粘度の適正化である。より好ましくは、上記コールドブレイクトマト加工品に加えて、ホットブレイクトマト加工品も調合する。ホットブレイクトマト加工品を調合する目的は、ケチャップの粘度適正化と離しょう抑制である。上記に加え、必要に応じて調合される原材料は、野菜加工品、調味料、香辛料である。
【0038】
<pH調整剤>
本実施の形態に係るpH調整剤は、pHを上げるために使用されるものであり、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム(重曹ともいう)、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム等である。使いやすさの観点から、炭酸水素ナトリウムが好ましい。
【0039】
<均質化>
ケチャップは、必要に応じて均質化される。ケチャップを均質化する目的は、ケチャップの粒子を均一化し、滑らかな性状を得ることである。均質化する方法は、公知の方法で良く、均質化は複数回行っても良い。均質化を行う機器は、例えば、ホモジナイザー等である。ホモジナイザーを用いる際の圧力は、0〜300kgf/uであることが好ましい。
【0040】
<殺菌、充填、冷却>
以上に加えて、本製法が適宜採用するのは、殺菌、充填及び冷却である。殺菌方法は、公知の方法で良く、例えば、プレート式殺菌、チューブラー式殺菌方法等がある。冷却方法は、公知の方法で良い。充填方法は、公知の方法でよい。ケチャップが充填される(詰められる)容器は、公知の物で良く、例示すると、瓶、ポリエチレン製容器等である。
【0041】
<本実施の形態に係るケチャップの概要>
本実施の形態に係るケチャップ(以下、「本ケチャップ」という。)が実現するのは、リコピンの高濃度化と、粘度の上昇抑制の両立である。さらには、好ましくは離しょうの減少である。その具体的な方法は、除パルプトマト汁を調合することである。当該除パルプトマト汁は、原料として用いられるトマト加工品の、Brix5.0のときのpHが4.41以上のものである。好ましくは、前記トマト加工品は、pH調整されたものである。
【0042】
<ケチャップ>
本ケチャップとは、トマト加工品を主な原料として用い、これに糖類、食酢、及び食塩、を加えて必要により加水して調整した物であって、必要に応じて、香辛料、その他調味料、タマネギ、ニンニク等を加えてもよい。また他の野菜又は果物の加工品、食品添加物などを加えてもよい。本ケチャップの中には、トマト加工品品質表示基準(平成23年9月30日消費者庁告示第10号)において定められる、トマトケチャップ、トマトソース、チリソース、が含まれる。好ましくは、本ケチャップはトマト加工品品質表示基準(平成23年9月30日消費者庁告示第10号)において定められるトマトケチャップ、又はトマトソースである。
【0043】
<糖度(Brix)>
本ケチャップのBrixは、特に限定されないが、好ましくは、30.0以上40.0以下である。また、Brixの測定方法は、公知の方法でよい。測定手段を例示すると、光学屈折率計(NAR−3T ATAGO社製)である。
【0044】
<リコピン濃度>
本発明の実施の形態に係る、リコピンとは、化学式C
40H
50で表されるカロテノイドの一種である。自然界には、トマトやスイカ、ニンジン等に多く含まれている。リコピンを工業的に濃縮や精製したリコピン製剤も市場において販売されている。一般的なケチャップにおいては、リコピンは10mg/100gから20mg/100g程度含まれている。本実施の形態におけるケチャップにおいて、リコピン濃度は25mg/100g以上50mg/100gであることが好ましい。より好ましくは30mg/100g以上40mg/100g以下である。食品添加物不使用の観点から、本実施の形態におけるケチャップは、食品添加物としてリコピンを使用しないことが好ましい。
【0045】
<粘度>
本ケチャップの粘度は、特に限定されないが、B型粘度で10,000〜20,000mPa・s程度であることが好ましい。これより粘度が低いと、調味料としての保形性が悪くなり、これより粘度が高いと、重たい呈味となる。一般に市場にトマトソース、トマトケチャップとして販売されているケチャップの粘度もこの程度である。B型粘度の測定方法は、公知の方法で良い。測定手段を例示すると、TVB−10型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、20℃、回転数を12rpmとし、開始後60秒後の条件である。
【0046】
<離しょう>
ケチャップは調味料であるために一定期間保管することが考えられるが、保管中の経時変化によって、「離しょう」が生じる。離しょうとは、固形分から分離した漿液のことであるが、見た目や、使用に影響を与える。そのため、「離しょう」はケチャップを作る上で留意すべき事項である。
【0047】
本発明の実施の形態に係る、離しょうとは、ケチャップの固形分からの分離した漿液のことである。本実施の形態において、固形分からの漿液分離を量化する方法として、ブロッター試験紙を使った漿液分離評価法を参照した。(Gould W.A.他, 1992,Tomato Production Processing & Technology, 第3版, CTI Publications)。ブロッター試験紙の中心に5.0gのケチャップを秤量した。10分後、ケチャップの外周部分から、試験紙に水が滲み出した外周部分までの距離(mm)を測定した。低い値は漿液分離の程度が低いことを示す。
【0048】
本発明の実施の形態に係るケチャップの離しょうは、トマト加工品としてトマトペースト又はトマトピューレのみで作製し、一般のケチャップにおけるリコピン濃度(24mg/100g以下)となるよう作製したときと比較して、少なくなることが好ましい。
【実施例】
【0049】
本発明に係るケチャップを具現化したのは、試験例1、及び3である。これらの実施例によって、本発明に係る特許請求の範囲が限定されるものではない。
【0050】
<トマト加工品>
本実施例で用いたトマト加工品は、HBペースト、CBペースト、酵素処理ピューレ、CB除パルプトマト汁である。
【0051】
HBペーストは、市販の中国産のトマトペーストであり、ホットブレイク処理工程を経て製造されたものである。
【0052】
CBペーストは、市販の中国産トマトペーストであり、コールドブレイク処理工程を経て製造された以外は、前記HBペーストと同様の工程で製造されたものである。
【0053】
酵素処理ピューレは、前記HBペーストをセルラーゼXL−531(ナガセケムテックス社製)により酵素処理を行ったトマトピューレである。当該酵素処理の条件は、前記HBペーストを水でBrix15.0に希釈した後、セルラーゼXL−531を0.3重量%となるよう添加し、50℃で、2h酵素処理を行い、95℃で10min加熱失活させたものである。酵素処理前のpHは、4.23、酵素処理後のpHは、4.15であった。
【0054】
CB除パルプトマト汁aは、前記CBペーストを水でBrix5.0まで希釈し、遠心分離処理によりパルプ部を除去して上清部を採取したものである。遠心分離処理の条件は、3,000×g、3minであった。当該CB除パルプトマト汁aをエバポレーターにて濃縮したものをCB除パルプトマト汁Aとした。
【0055】
CB除パルプトマト汁bは、前記CBペーストを水でBrix5.0まで希釈し、重曹でpH4.35に調整、さらに遠心分離処理によりパルプ部を除去して上清部を採取したものである。遠心分離処理の条件は、3,000×g、3minであった。
【0056】
CB除パルプトマト汁cは、前記CBペーストを水でBrix5.0まで希釈し、遠心分離処理によりパルプ部を除去して上清部を採取したものである。遠心分離処理の条件は、3,000×g、3minであった。当該CB除パルプトマト汁aをエバポレーターにて濃縮したものをCB除パルプトマト汁Cとした。
【0057】
CB除パルプトマト汁dは、前記CBペーストを水でBrix5.0まで希釈し、重曹でpH5.0に調整、さらに遠心分離処理によりパルプ部を除去して上清部を採取したものである。遠心分離処理の条件は、3,000×g、3minであった。
【0058】
CB除パルプトマト汁eは、前記CBペーストを水でBrix5.0まで希釈し、重曹でpH6.0に調整、さらに遠心分離処理によりパルプ部を除去して上清部を採取したものである。遠心分離処理の条件は、3,000×g、3minであった。
【0059】
これらトマト加工品のBrix、pH,及びリコピン濃度は、表1、及び表2に記載のとおりである。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
<リコピン濃度の測定>
本測定で採用したリコピンの測定方法は、HPLC法である。試料は公知の方法に基づいて、溶媒抽出を行い、フィルター濾過したものを検体とした。詳細な測定条件は、以下のとおりである。
【0063】
<HPLC装置構成>
オートサンプラー :SIL−10ADvp(SHIMADZU)
ポンプ :LC−10ADvp(SHIMADZU)
カラムオーブン :CTO−10Avp(SHIMADZU)
検出器 :SPD−10AVvp(SHIMADZU)
<測定条件>
カラム :ODS(REVERSE−PHASE C18)
(化学物質評価研究機構 L−Column
4.6mm×150mm)
移動相 :アセトニトリル:メタノール:テトラヒドロフラン混液
(55:40:5(v/v)
(α−トコフェロール50ppm含有)
流速 :1.5mL/min
検出波長 :453nm
カラム温度 :40℃
試料注入量 :10μL
分析時間 :20min
<B型粘度の測定>
TVB−10型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、回転数を12rpmとし、開始後60秒後の条件で、粘度を測定した。使用したローターはM4で、測定時の温度は20℃であった。
【0064】
<糖度(Brix)の測定>
本測定で採用した糖度(Brix)の測定器は、デジタル屈折計RX5000i(ATAGO社製)である。測定時の品温は、20℃であった。
【0065】
<離しょうの測定>
No.65のろ紙(ADVANTEC社製)の中心に5.0gのケチャップを秤量した。10分後、ケチャップの外周部分から、試験紙に水が滲み出した外周部分までの距離(mm)を測定した。測定は4方向において行い、4数字の平均をもって測定値とした。
【0066】
<トマト量>
トマト量は、トマト加工品をBrix4.5に調整した場合における、トマト加工品の重量とした。ケチャップに含まれる、除パルプトマト汁由来のトマト量を[A](kg/100kg)とし、トマトペースト又はトマトピューレ由来のトマト量を[B](kg/100kg)とした。
【0067】
<比較例1、及び2>
比較例1、及び2では、調合工程において、前記HBペースト、食塩、砂糖、醸造酢、及び香辛料を、表3に示す分量で調合し、95℃で10min加熱殺菌した。
【0068】
<試験例1>
試験例1では、調合工程において、前記HBペースト、前記酵素処理ピューレ、食塩、砂糖、醸造酢、及び香辛料を、表3に示す分量で調合し、95℃で10min加熱殺菌した。
【0069】
<試験例2>
試験例2では、調合工程において、前記HBペースト、前記CB除パルプトマト汁A、食塩、砂糖、醸造酢、及び香辛料を、表3に示す分量で調合し、95℃で10min加熱殺菌した。
【0070】
<試験例3>
試験例3では、調合工程において、前記HBペースト、前記CB除パルプトマト汁C、食塩、砂糖、醸造酢、及び香辛料を、表3に示す分量で調合し、95℃で10min加熱殺菌した。
【0071】
<リコピン濃度評価>
本試験の試験例2及び試験例3において、リコピン濃度を25mg/100g以上にするために、使用する除パルプトマト汁の量が、少なくてすむ方の区分を、リコピン濃度評価「○」とした。
【0072】
<粘度評価>
本試験において、比較例2と比較してB型粘度の値が低下した区分について、粘度評価「○」とした。また、比較例2と比較してB型粘度の値が低下し、かつ、比較例1と比較してB型粘度の値が同等(数値で10%以内の増加)の区分について、粘度評価「◎」とした。それ以外の区分について、粘度評価「×」とした。
【0073】
<離しょう評価>
本試験において、比較例1と比較して離しょうが増加した区分について、離しょう評価「×」とした。一方、比較例1と比較して離しょうが低下した区分について、離しょう評価「○」とした。
【0074】
【表3】
【0075】
<まとめ>
以上の試験結果を考慮した結果、リコピン濃度を上げるために、単純にトマトペースト含量を増加させると、粘度が大きく上昇することがわかった。粘度上昇を抑制するため、トマトペーストの一部を酵素処理により粘度低下させたものは、リコピン濃度を高めつつ、粘度上昇の抑制を行うことができた。さらに粘度上昇を抑制するためにCB除パルプトマト汁を用いた場合、粘度の上昇は抑制されるが、リコピン濃度が十分に高まらなかった。一方、CB除パルプトマト汁製造する際、除パルプ前のpHが高いことで、除パルプトマト汁のリコピン濃度を高めることができることがわかった。そして、これを用いることで、高リコピン濃度で、粘度の上昇を抑制したケチャップを作製することができることがわかった。除パルプ前のトマト加工品のpHは高くなるにつれて、除パルプトマト汁のリコピン濃度も高くなることがわかった。
【解決手段】本願発明者が鋭意検討して見出したのは、pHが高い除パルプトマト汁を調合することである。より詳しくは、当該除パルプトマト汁製造における、除パルプ工程時のトマト加工品のpHが4.35以上であり、当該除パルプトマト汁と、トマトペースト、又はトマトピューレを調合することである。