(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
噴射ノズルが過度に下方に向かって配置されると、噴射ノズルから噴射された混合流体が液だまり部の底面に衝突して水平方向への運動量を失うので、所定の噴流到達距離に達する前に混合流体が鉛直上方に流れることになる。この場合には、液だまり部における混合流体により酸化反応が促進される容積である酸化有効容積が、噴射ノズルから噴射された混合流体が本来発揮可能な酸化有効容積よりも小さくなる虞がある。酸化有効容積が小さいと、混合流体による酸化が不十分となり、液だまり部に貯留される洗浄液中に多くの反応生成物が酸化されずに残存してしまう虞がある。
【0009】
よって、噴射ノズルから噴射される混合流体による酸化が十分に行われるためには、噴射ノズルの適切な方向を見つけるとともに、上記適切な方向になるように噴射ノズルを配置する必要がある。しかし、噴射ノズルを、下方に傾斜させて、所定の方向を向くように配置しようとすると、吸収塔へ取り付ける際に、噴射ノズルの軸線が、鉛直面と水平面の夫々となす角度を細かく調整した上で、吸収塔に固定する必要があり、その分、取付け作業の時間が長くなる。
なお、特許文献1では、噴射ノズルが下方に傾斜して配置されるような図が開示されているが、噴射ノズルを吸収塔に取付ける具体的な方法や取付け構造に関して記載がない。また、特許文献1の明細書中には噴射ノズルの設置角度に関して具体的に言及する記載はない。
【0010】
上述した事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、噴射ノズルから噴射される混合流体により酸化反応が促進される容積である酸化有効容積が小さくなることを防止するために、噴射ノズルを、水平面から所定の角度傾けて吸収塔に取り付ける際、その作業を容易に行うことができる排ガス脱硫装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の少なくとも一実施形態にかかる排ガス脱硫装置は、
燃焼装置から排出される排ガスを脱硫するための排ガス脱硫装置であって、
内部に導入される上記排ガスに洗浄液を気液接触させるように構成される吸収塔であって、上記吸収塔の第1側壁および上記第1側壁に対面する第2側壁により少なくとも一部が画定される、上記洗浄液が貯留される液だまり部を内部に含む吸収塔と、
上記第1側壁に形成された挿通孔に先端が挿通される第1噴射ノズルであって、上記第1噴射ノズルの吐出口である第1吐出口から酸素を含む気体と上記洗浄液との混合流体を上記液だまり部に噴射するように構成される第1噴射ノズル、を含む気液混合装置と、を備え、
上記第1噴射ノズルは、
上記第1吐出口の中心軸に沿って延在し、且つ、上記第1吐出口が形成された筒状部と、
上記筒状部の外周から上記第1吐出口の上記中心軸に直交する方向に沿って突出して設けられる第1締結部と、を含み、
上記吸収塔は、
上記第1吐出口の上記中心軸の水平面からの傾斜角度をθとしたとき、水平面からの角度θだけ傾斜した方向に沿って、上記第1側壁に形成された上記挿通孔の周縁部から外側に突出して設けられる筒状突出部と、
上記筒状突出部の先端から上記筒状突出部の延在する方向に直交する方向に沿って突出して設けられ、上記第1締結部に締結装置により固定されるように構成される第2締結部と、をさらに含む。
【0012】
上記(1)の構成によれば、第1噴射ノズルは、吸収塔の第1側壁に形成された挿通孔に筒状部の第1吐出口を含む先端を挿通した状態で、第1締結部が吸収塔の第2締結部に締結装置により固定される。ここで、上記筒状部は、第1吐出口の中心軸に沿って延在している。吸収塔の筒状突出部は、第1吐出口の中心軸の水平面からの傾斜角度θと同じ角度だけ水平面から傾斜した方向に沿って延在している。つまり、吸収塔の筒状突出部は、第1噴射ノズルが設置された際の第1吐出口の中心軸と同じ方向に沿って延在する。第1噴射ノズルは、上記筒状部の延在する方向に直交する方向に沿って延在する第1締結部と、筒状突出部の延在する方向に直交する方向に沿って延在する第2締結部と、を締結装置により固定することで、第1吐出口の中心軸の水平面からの傾斜角度θをそのまま設置角度とすることができる。よって、上記の構成によれば、第1噴射ノズルの設置角度の調整作業をなくし、第1噴射ノズルの取付け作業を容易にすることができる。
【0013】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の排ガス脱硫装置において、上記第1噴射ノズルは、上記第1吐出口の上記中心軸の水平面からの傾斜角度をθとした際に、10°<θ<30°の条件を満たす。
【0014】
本発明者らの鋭意検討の結果、第1噴射ノズルの傾斜角度θが10°以下の場合には、第1噴射ノズルから噴射された混合流体に含まれる気体(気泡)が液だまり部から洗浄液を排出するためのポンプに巻き込まれるリスクが大きくなることが分かった。また、第1噴射ノズルの傾斜角度θが30°以上の場合には、第1噴射ノズルから噴射された混合流体が早期に液だまり部の底面に衝突するので、混合流体の到達距離が短くなり、第1噴射ノズルから噴射される混合流体により酸化反応が促進される容積である酸化有効容積が減少することが分かった。
上記(2)の構成によれば、第1噴射ノズルは、傾斜角度θが10°<θ<30°の条件を満たすので、上記酸化有効容積が本来発揮可能な酸化有効容積よりも小さくなることを防止することができ、且つ、液だまり部から洗浄液を排出するためのポンプに気体(気泡)が巻き込まれて、ポンプの性能が低下することを防止することができる。
【0015】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(2)の何れかに記載の排ガス脱硫装置において、上記吸収塔は、上記第1側壁と上記第2側壁とが離隔する方向に沿って延在し、且つ、上記液だまり部の一部を画定する第3側壁と、上記第3側壁に対面するとともに、上記第1側壁と上記第2側壁とが離隔する方向に沿って延在し、且つ、上記液だまり部の一部を画定する第4側壁と、をさらに含み、上記気液混合装置は、上記第3側壁に形成された挿通孔に先端が挿通される第2噴射ノズルであって、上記第2噴射ノズルの吐出口である第2吐出口から上記混合流体を上記液だまり部に噴射するように構成される第2噴射ノズルと、上記第4側壁に形成された挿通孔に先端が挿通される第3噴射ノズルであって、上記第3噴射ノズルの吐出口である第3吐出口から上記混合流体を上記液だまり部に噴射するように構成される第3噴射ノズルと、をさらに含む。
【0016】
上記(3)の構成によれば、気液混合装置は、第3側壁に形成された挿通孔に先端が挿通される第2噴射ノズルと、第4側壁に形成された挿通孔に先端が挿通される第3噴射ノズルと、をさらに含んでいる。このため、液だまり部における第1噴射ノズルから噴射される混合流体により酸化反応を促進できない領域について、第2噴射ノズルおよび第3噴射ノズルの夫々から噴射される混合流体により酸化反応を促進することができる。よって、上記の構成によれば、液だまり部における混合流体により酸化反応を促進できない領域を少なくすることができるので、混合流体による酸化が不十分となることを防止することができる。
【0017】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の排ガス脱硫装置において、上記第2噴射ノズルおよび上記第3噴射ノズルの夫々は、上記第1噴射ノズルとは異なる高さ位置に配置される。
【0018】
第2噴射ノズルおよび第3噴射ノズルの夫々は、上面視において、第1噴射ノズルが混合流体を噴射する方向に交差する方向に沿って混合流体を噴射するようになっている。仮に第2噴射ノズルおよび第3噴射ノズルの夫々が、第1噴射ノズルと同じ高さ位置に配置されると、第2噴射ノズルおよび第3噴射ノズルの夫々から噴射された混合流体が、第1噴射ノズルから噴射された混合流体の流れを阻害する虞がある。
上記(4)の構成によれば、第2噴射ノズルおよび第3噴射ノズルの夫々は、第1噴射ノズルとは異なる高さ位置に配置されるので、第2噴射ノズルおよび第3噴射ノズルの夫々から噴射された混合流体が、第1噴射ノズルから噴射された混合流体の流れを阻害することを防止することができる。また、第1噴射ノズルから噴射された混合流体の流れを阻害することを防止することで、上記酸化有効容積が小さくなることを防止することができる。
【0019】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)又は(4)に記載の排ガス脱硫装置において、上記第2噴射ノズルおよび上記第3噴射ノズルの夫々は、上記第1側壁から所定距離以上離れた位置に配置される。
【0020】
上記(5)の構成によれば、第2噴射ノズルおよび第3噴射ノズルの夫々は、第1側壁から所定距離以上離れた位置に配置されるので、第2噴射ノズルおよび第3噴射ノズルの夫々から噴射された混合流体が、第1噴射ノズルから噴射された混合流体の流れを阻害することを防止することができる。また、第1噴射ノズルから噴射された混合流体の流れを阻害することを防止することで、第1噴射ノズルから噴射される混合流体により酸化反応が促進される容積である酸化有効容積が小さくなることを防止することができる。
【0021】
(6)幾つかの実施形態では、上記(3)〜(5)の何れかに記載の排ガス脱硫装置において、上記第2噴射ノズルおよび上記第3噴射ノズルの夫々は、上記第2側壁から所定距離以上離れた位置に配置される。
【0022】
上記(6)の構成によれば、第2噴射ノズルおよび第3噴射ノズルの夫々は、第2側壁から所定距離以上離れた位置に配置されるので、第2噴射ノズルおよび第3噴射ノズルの夫々から噴射された混合流体が、第2側壁の洗浄液抜出口に到達することを防止することができる。よって、上記の構成によれば、液だまり部から洗浄液を排出するためのポンプに気体(気泡)が巻き込まれて、ポンプの性能が低下することを防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、噴射ノズルから噴射される混合流体により酸化反応が促進される容積である酸化有効容積が小さくなることを防止するために、噴射ノズルを、水平面から所定の角度傾けて吸収塔に取り付ける際、その作業を容易に行うことができる排ガス脱硫装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0026】
図1は、一実施形態にかかる排ガス脱硫装置の概略構成を示す断面図である。排ガス脱硫装置は、燃焼装置から排出される排ガスを脱硫するための装置である。上記燃焼装置としては、ディーゼルエンジン、ガスタービンエンジン又は蒸気タービンエンジンなどのエンジンやボイラなどが挙げられる。
図1に示されるように、排ガス脱硫装置1は、吸収塔2と、気液混合装置4と、を備える。
【0027】
吸収塔2は、内部に導入される排ガスに洗浄液を気液接触させるように構成される。図示される実施形態では、吸収塔2は、
図1に示されるように、内部に導入される排ガスに洗浄液を噴霧することで、排ガスと洗浄液とを気液接触させるように構成される気液接触部21A、および気液接触部よりも下方に位置し、気液接触部21Aで排ガス中のSOxを吸収した洗浄液が貯留される液だまり部21B、を内部に画定するように構成される。ここで、洗浄液としては、アルカリ剤を含む液体や海水などが挙げられる。また、アルカリ剤としては、CaCO
3、NaOH、Ca(OH)
2、NaHCO
3、Na
2CO
3などが挙げられ、高濃度に減容化されたアルカリを用いることもできる。
【0028】
より詳細には、吸収塔2は、
図1に示されるように、上述した気液接触部21Aおよび上述した液だまり部21Bを含む内部空間21を内部に画定する吸収塔本体部22と、吸収塔本体部22に排ガスを導入するための排ガス導入部23と、吸収塔本体部22から排ガスを排出するための排ガス排出部24と、を備える。
図1に示されるように、吸収塔本体部22と排ガス導入部23とが隣接する方向を第1方向、第1方向における排ガス導入部23側を一方側、第1方向における排ガス排出部24側を他方側、と定義する。
【0029】
図1に示されるように、吸収塔本体部22の上記第1方向における一方側の側壁である第1側壁25には、内部空間21(下方側内部空間21C)と連通する排ガス導入口251が形成されている。吸収塔本体部22の上記第1方向における他方側の側壁である第2側壁26には、排ガス導入口251よりも高い位置に、内部空間21(上方側内部空間21D)と連通する排ガス排出口261が形成されている。第1側壁25および第2側壁26の夫々は、上面視において第1方向に直交する第2方向に沿って延在するとともに、液だまり部21Bを含む内部空間21の少なくとも一部を画定している。
【0030】
燃焼装置(不図示)から排ガス導入部23に導入された排ガスは、排ガス導入部23を通過した後、排ガス導入口251を介して内部空間21(下方側内部空間21C)に導入される。内部空間21に導入された排ガスは、下方側内部空間21Cを一方側に位置する第1側壁25から他方側に位置する第2側壁26に向かって流れた後、内部空間21を上昇しながら流れていく。上方側内部空間21Dまで上昇した排ガスは、第1側壁25から第2側壁26に向かって流れた後、排ガス排出口261を介して排ガス排出部24に排出される。
【0031】
図1に示されるように、吸収塔本体部22の下方側内部空間21Cよりも上方、且つ、上方側内部空間21Dよりも下方に位置する気液接触部21Aには、内部空間21に上述した洗浄液を散布するための散布装置28が配置されている。散布装置28は、気液接触部21Aを通過する排ガスに対して洗浄液を散布し、排ガスと洗浄液とを気液接触させることで、排ガス中に含まれるSOx(SO
2を含む)を吸収除去するように構成される。
【0032】
散布装置28は、
図1に示されるように、吸収塔本体部22の内部空間21において上記第1方向に沿って延在する散水管281と、散水管281に設けられた複数の散水ノズル282と、を含む。散水ノズル282は、排ガスの流れ方向における下流側に向かって、すなわち、鉛直方向における上方に向かって、洗浄液を散布するように構成される。図示される実施形態では、散水ノズル282は、洗浄液を液柱状に噴射するようになっている。つまり、図示される吸収塔2は、液柱式の吸収塔である。
【0033】
なお、吸収塔2は、内部に導入される排ガスに洗浄液を気液接触させるように構成されていればよく、上述した液柱式に限定されない。例えば、吸収塔2は、内部空間21に気液接触を促進させるための充填材が充填される充填層を備えるグリッド式の吸収塔や、洗浄液を放射状に噴霧する散水ノズル282を備えるスプレー式の吸収塔などであってもよい。また、散水管281は、上面視において上記第1方向に直交する方向に沿って延在してもよい。また、散水ノズル282は、鉛直方向における下方に向かって、洗浄液を散布するように構成されていてもよい。
【0034】
気液接触部21Aを通過した排ガスには、水分が多く含まれる。気液接触部21Aよりも排ガスの流れ方向における下流側には、ミストエリミネータ27が配置されている。ミストエリミネータ27は、ミストエリミネータ27を通過する排ガスから水分を除去するように構成される。ミストエリミネータ27を通過した排ガスは、吸収塔2の外部に排出される。
【0035】
図示される実施形態では、ミストエリミネータ27は、排ガス排出部24に配置され、排ガス排出部24に排ガスの流れ方向における上流側と下流側とを隔てるように、鉛直方向に沿って延在している。なお、ミストエリミネータ27は、上方側内部空間21Dに配置されて、水平方向に沿って延在してもよい。また、ミストエリミネータ27は、多段構成であってもよい。
【0036】
液だまり部21Bは、内部空間21に導かれた排ガスに対して散布された散布済みの洗浄液が貯留されるように構成される。図示される実施形態では、液だまり部21Bは、下方側内部空間21Cの下方、且つ排ガス導入口251よりも低い位置に、液面が位置するように設けられる。液だまり部21Bに貯留される洗浄液には、排ガスから吸収したSOxにより生じた反応生成物が含まれる。ここで、反応生成物としては、SO
2が洗浄液に吸収されることで生成される亜硫酸塩などが挙げられる。
【0037】
図1に示されるように、第2側壁26には、鉛直方向における液だまり部21Bの底面211近傍の位置に、液だまり部21Bに貯留される洗浄液を外部に抜き出すための洗浄液抜出口262が開口している。洗浄液抜出口262は、液だまり部21Bに連通している。
【0038】
図示される実施形態では、排ガス脱硫装置1は、
図1に示されるように、液だまり部21Bに貯留された洗浄液を散布装置28に送るように構成される洗浄液循環ライン7と、吸収塔2の外部から液だまり部21Bに洗浄液を供給するように構成される洗浄液供給ライン8と、をさらに備える。
【0039】
洗浄液循環ライン7は、上述した洗浄液抜出口262および上述した散水管281を接続する少なくとも一つの配管71と、洗浄液循環ライン7の途中に設けられる、洗浄液抜出口262から散水管281に洗浄液を送るための洗浄液循環ポンプ72と、を含む。つまり、散布装置28から散布されて液だまり部21Bに貯留された洗浄液の少なくとも一部は、洗浄液循環ポンプ72により圧送されて、洗浄液循環ライン7を通り、散布装置28に送られる。
【0040】
洗浄液供給ライン8は、吸収塔2の外部に設けられる洗浄液貯留タンク81と、洗浄液貯留タンク81と液だまり部21Bとを接続する少なくとも一つの配管82と、を含む。洗浄液は、洗浄液貯留タンク81から液だまり部21Bに、洗浄液供給ライン8を通って送られる。
【0041】
気液混合装置4は、
図1に示されるように、例えば空気などの酸素を含む気体と洗浄液との混合流体MFを吸収塔2の液だまり部21Bに噴射するように構成される噴射ノズル5と、噴射ノズル5に洗浄液を送るように構成される洗浄液導入ライン41と、噴射ノズル5に酸素を含む気体を送るように構成される気体導入ライン42と、を含む。気液混合装置4は、噴射ノズル5から液だまり部21Bに混合流体MFを噴射し、液だまり部21Bに貯留される洗浄液に混合流体MFを行き渡らせることで、混合流体MFにより上記反応生成物を酸化させて、酸化生成物を生成する。酸化生成物としては、石膏などが挙げられる。
【0042】
図示される実施形態では、排ガス脱硫装置1は、
図1に示されるように、液だまり部21Bに貯留される酸化生成物(石膏など)を含む洗浄液を排出するように構成される洗浄液排出ライン9をさらに備える。
図1に示される実施形態では、洗浄液排出ライン9は、液だまり部21Bに接続される洗浄液循環ライン7を介して洗浄液を排出するように構成される。より詳細には、洗浄液排出ライン9は、洗浄液循環ライン7の分岐部73から分岐し、吸収塔2の外部に設けられる装置91に接続されており、洗浄液循環ライン7の分岐部73から装置91に酸化生成物を含む洗浄液を送るようになっている。装置91としては、酸化生成物を含む洗浄液から水分を脱水する脱水機(分離機)や洗浄液を一時的に貯留するための貯留タンクなどが挙げられる。
【0043】
図1に示される実施形態では、洗浄液導入ライン41は、分岐部73よりも洗浄液の流れ方向における下流側に位置する分岐部44で、洗浄液循環ライン7から分岐している。上述した洗浄液循環ポンプ72は、洗浄液の一部を洗浄液抜出口262から分岐部44を介して噴射ノズル5に送るようになっている。
【0044】
図示される実施形態では、気体導入ライン42は、噴射ノズル5に一端が接続され、他端が液だまり部21Bの液面よりも上方の位置で大気開放している。
【0045】
図2は、一実施形態における噴射ノズルの概略構成を示す断面図である。噴射ノズル5は、
図2に示されるように、第1筒状部52と、絞り部53と、第2筒状部54と、を含む。
【0046】
第1筒状部52は、
図2に示されるように、第1流路55を内部に画定する筒状に形成されている。第1筒状部52には、洗浄液を第1流路55に導入するための洗浄液導入口56、洗浄液導入口56から導入されて第1流路55を流れる洗浄液の流れ方向に対して直交する方向に沿って上記気体を第1流路55に導入するための気体導入口57および上述した吐出口51が形成されている。吐出口51は、洗浄液導入口56から導入された洗浄液と、気体導入口57から導入された気体と、の混合流体MFを吐出するために設けられている。
【0047】
図2に示される実施形態では、第1筒状部52は、吐出口51の中心軸CAの延在する方向に沿って長さ方向を有している。第1筒状部52の長さ方向における一端に上述した洗浄液導入口56が開口し、第1筒状部52の長さ方向における他端に気体導入口57が開口している。第1筒状部52の外周には、上述した気体導入口57が開口している。洗浄液導入ライン41から洗浄液導入口56を介して第1流路55内に送られた洗浄液は、第1流路55を中心軸CAの延在する方向に沿った方向に、洗浄液導入口56から吐出口51に向かって流れる。
【0048】
第2筒状部54は、
図2に示されるように、気体導入口57に連通する第2流路58を内部に画定するとともに、気体導入口57における気体の導入方向(洗浄液の流れ方向に対して直交する方向)に沿って延在し、気体を第2流路58に導入するための第2気体導入口59が形成されている。
【0049】
図2に示される実施形態では、第2筒状部54は、吐出口51の中心軸CAの延在する方向に直交する方向に沿って長さ方向を有している。第2筒状部54の長さ方向における一端は、第1筒状部52の外周に一体的に接続されている。つまり、第1筒状部52と第2筒状部54は、一体的に形成されている。第2筒状部54の長さ方向における他端に上述した第2気体導入口59が開口している。気体導入ライン42から第2気体導入口59を介して第2流路58内に送られた気体は、第2流路58を通った後、気体導入口57を介して第1流路55内に送られる。第1流路55内に送られた気体は、合流部60において洗浄液と合流する。
【0050】
絞り部53は、
図2に示されるように、合流部60よりも洗浄液の流れ方向における上流側に設けられている。絞り部53は、内部を洗浄液が流れるとともに、洗浄液の流れ方向における上流側および下流側に比べて、断面積が急激に縮小する縮流形成口61が開口している。絞り部53は、縮流形成口61により洗浄液を縮流することで、絞り部53よりも洗浄液の流れ方向における下流側に負圧領域62を発生させるように構成される。噴射ノズル5は、負圧領域62に生じる吸引力により、気体導入口57から気体を吸引する。なお、上記吸引力のみでは第1流路55に送られる気体の量が不足する場合には、第1流路55に気体を送るための不図示のポンプを気体導入ライン42に設け、該ポンプにより第1流路55に送られる気体の量を増量してもよい。
【0051】
図2に示される実施形態では、絞り部53は、第1筒状部52とは別体に構成されている。他の実施形態では、絞り部53は、第1筒状部52と一体的に形成されていてもよい。例えば、絞り部53は、第1筒状部52の第1流路55を区画する内周面から突出して設けられていてもよい。
【0052】
噴射ノズル5は、第1流路55を流れる洗浄液によって、第1流路55に送られた気体をせん断、微細化して混合流体MF(微細気泡を内部に含む洗浄液)を生成する。また、噴射ノズル5は、噴射ノズル5内で生成された混合流体MFを吐出口51から噴射するようになっている。吐出口51から液だまり部21Bに噴射された混合流体MFは、後述する
図3に示されるように、所定の噴流到達距離に達するまでは、吐出口51の中心軸CAの延在する方向に沿って流れる。この際、混合流体MFは、吐出口51から離れるにつれて徐々に幅が大きくなっている。所定の噴流到達距離まで達した混合流体MFは、水平方向への運動量を失い、気泡の浮力に従い鉛直上方に流れる。
【0053】
図3は、一実施形態における噴射ノズルの配置状態を説明するための説明図である。
図3に示されるように、上述した噴射ノズル5は、第1側壁25に形成された挿通孔252に、吐出口51(第1吐出口51A)が形成された第1筒状部52の先端が、第1側壁25の外側から挿通される第1噴射ノズル5Aを含む。
【0054】
上述したように、幾つかの実施形態にかかる排ガス脱硫装置1は、上述した液だまり部21Bを含む吸収塔2と、上述した第1噴射ノズル5Aを含む気液混合装置4と、を備える。第1噴射ノズル5Aは、
図3に示されるように、第1吐出口51Aの中心軸CAが水平面に対して下方に傾斜するように配置されている。
図3に示されるように、第1吐出口51Aの中心軸CAを延長させた仮想線ILと液だまり部21Bの底面211との交点をPと定義する。
【0055】
第1噴射ノズル5Aの第1吐出口51Aから液だまり部21Bに噴射された混合流体MFは、所定の噴流到達距離に達するまでは、第1吐出口51Aの中心軸CAを延長させた仮想線ILに沿って流れる。
【0056】
第1噴射ノズル5Aから噴射された混合流体MFは、第1吐出口51Aから交点Pまでの長さが噴流到達距離よりも長い場合には、液だまり部21Bの壁面に衝突せずに、水平方向への運動量を失うことがある。
【0057】
また、液だまり部21Bに貯留された洗浄液を散布装置28により散布する場合において、噴射ノズル5から噴射される混合流体MFによる洗浄液の酸化が不十分であると、散布装置28により散布される洗浄液による排ガスからのSOxの吸収効率が低下する虞がある。
【0058】
幾つかの実施形態では、
図3に示されるように、上述した第1噴射ノズル5Aは、上述した仮想線ILと液だまり部21Bの底面211とが交点Pで交差するように配置されている。ここで、第1噴射ノズル5Aから噴射された混合流体MFに含まれる気体G(気泡)が第2側壁26に開口する洗浄液抜出口262まで到達すると、液だまり部21Bから洗浄液を抜き出すためのポンプ(洗浄液循環ポンプ72)に気体G(気泡)が巻き込まれて、上記ポンプの性能が低下する虞がある。上記の構成によれば、上述した仮想線ILは、液だまり部21Bの底面211における交点Pの部分で交差するように延在する。つまり、仮想線ILは、第2側壁26に交差するように延在してはいない。このため、第1噴射ノズル5Aから噴射されて仮想線ILに沿って流れる混合流体MFは、液だまり部21Bの底面211を指向し、底面211に衝突した際に水平方向への運動量を失うので、混合流体MFが第2側壁26の洗浄液抜出口262に到達することを防止することができる。よって、上記の構成によれば、液だまり部21Bから洗浄液を抜き出すためのポンプ(洗浄液循環ポンプ72)に気体Gが巻き込まれて、上記ポンプの性能が低下することを防止することができる。
【0059】
幾つかの実施形態では、
図3に示されるように、上述した吸収塔2は、液だまり部21B(内部空間21)に配置される気泡抑制部材29をさらに含む。気泡抑制部材29は、
図3に示されるように、上記第1方向に直交する方向に沿って延在するとともに、第1吐出口51Aから第2側壁26までの距離の中間を示す中間線CLよりも第2側壁26側、且つ、第2側壁26よりも第1側壁25側に離れた位置に設けられる。気泡抑制部材29は、複数の貫通孔が開口した板状に形成され、第1側壁25側から第2側壁26側に気泡が流れるのを抑制するようになっている。図示される実施形態では、第1方向における第1吐出口51Aから気泡抑制部材29までの距離をL1とすると、距離L1は、0.7L≦L1≦0.9Lの条件を満たす。
【0060】
上記の構成によれば、第2側壁26から第1側壁25側に離れた位置に設けられる気泡抑制部材29により、第1噴射ノズル5Aから噴射された混合流体MFに含まれる気体G(気泡)が第2側壁26に開口する洗浄液抜出口262に到達することを防止することができる。
【0061】
図4は、噴射ノズルの設置角度毎に、潜水深さと、噴射ノズルの吐出口から噴流到達点までの水平距離と、の関係を示すグラフである。ここで、潜水深さZは、
図3に示されるように、液だまり部21Bの底面211から噴射ノズル5の吐出口51までの高さである。噴流到達点は、吐出口51の中心軸CAを延長させた仮想線ILと、液だまり部21Bの底面211を含む平面と、の交点Pである。また、噴射ノズル5の吐出口51から噴流到達点(交点P)までの水平距離をIとし、噴射ノズル5の設置角度、すなわち吐出口51の中心軸CAの水平面からの傾斜角度をθとする。
【0062】
一般的な吸収塔2では、吐出口51から第2側壁26までの長さLは、8m以上20m以下の範囲内である。このため、
図4では、上記長さLの上下限の半分である4m、10mに参考のために太い実線を引いている。
【0063】
図4に示されるように、噴射ノズル5の傾斜角度θを10°以下にすると、上記水平距離Iが長くなる。上記水平距離Iが長すぎると、噴射ノズル5から噴射された混合流体MFに含まれる気体G(気泡)が、噴射ノズル5の吐出口51に対面する側壁(第2側壁26)に開口する洗浄液抜出口262を通り、液だまり部21Bから洗浄液を抜き出すためのポンプ(洗浄液循環ポンプ72)に巻き込まれるリスクが大きくなる。
【0064】
噴射ノズル5の傾斜角度θを30°以上にすると、上記水平距離Iが短くなる。上記水平距離Iが短くなりすぎると、噴射ノズル5から噴射された混合流体MFが早期に液だまり部21Bの底面211に衝突するリスクが大きくなる。
【0065】
幾つかの実施形態では、上述した第1噴射ノズル5Aは、第1吐出口51Aの中心軸CAの水平面からの傾斜角度をθとした際に、10°<θ<30°の条件を満たす。
【0066】
本発明者らの鋭意検討の結果、第1噴射ノズル5Aの傾斜角度θが10°以下の場合には、第1噴射ノズル5Aから噴射された混合流体MFに含まれる気体G(気泡)が液だまり部21Bから洗浄液を抜き出すためのポンプ(洗浄液循環ポンプ72)に巻き込まれるリスクが大きくなることが分かった。また、第1噴射ノズル5Aの傾斜角度θが30°以上の場合には、第1噴射ノズル5Aから噴射された混合流体MFが早期に液だまり部21Bの底面211に衝突するので、混合流体MFの到達距離が短くなり、第1噴射ノズル5Aから噴射される混合流体MFにより酸化反応が促進される容積である酸化有効容積が減少することが分かった。
【0067】
上記の構成によれば、第1噴射ノズル5Aは、傾斜角度θが10°<θ<30°の条件を満たすので、上記酸化有効容積が本来発揮可能な酸化有効容積よりも小さくなることを防止することができ、且つ、液だまり部21Bから洗浄液を抜き出すためのポンプ(洗浄液循環ポンプ72)に気体G(気泡)が巻き込まれて、ポンプの性能が低下することを防止することができる。
【0068】
図5は、
図1に示す吸収塔の液だまり部と噴射ノズルを上方から視た状態を示す概略図である。幾つかの実施形態では、
図5に示されるように、吸収塔2は、第3側壁30と、第4側壁31と、をさらに含む。つまり、吸収塔本体部22の内部空間21の平面形状は、第1側壁25、第2側壁26、第3側壁30および第4側壁31によって画定される矩形状に形成されている。第3側壁30および第4側壁31の夫々は、上面視において、第1側壁25と第2側壁26とが離隔する方向(第1方向)に沿って延在し、液だまり部21Bを含む内部空間21の一部を画定する。第4側壁31は、上面視において、第3側壁30に対面し、且つ、第3側壁から第1方向に直交する方向である第2方向に離れた位置に設けられている。
【0069】
上述した第1噴射ノズル5Aは、吸収塔本体部22の第1側壁25に複数取り付けられている。複数の第1噴射ノズル5Aは、第2方向に互いに間隔を開けて配置されている。複数の第1噴射ノズル5Aから噴射される混合流体MFにより洗浄液の酸化反応が促進される領域を第1酸化有効領域EA1(酸化有効領域)とする。第1酸化有効領域EA1は、液だまり部21Bを上面視した際に、第1方向における最大長さLE1と、第2方向における最大幅WE1と、からなる領域である。
【0070】
第1方向における最大長さLE1は、第1噴射ノズル5Aから噴射される混合流体MFの噴流到達距離と同程度の長さであり、噴流到達距離と同じ長さとみなしてもよい。第2方向における最大幅WE1は、第1側壁25に取り付けられる第1噴射ノズル5Aの数により変動するものである。また、図示される実施形態では、第2方向における最大幅WE1は、第3側壁30から第4側壁31までの長さWと同じ長さである。
【0071】
図6は、他の一実施形態における吸収塔の液だまり部と噴射ノズルを上方から視た状態を示す概略図である。
図6に示されるように、第1側壁25から第2側壁26までの長さL0が、第1酸化有効領域EA1の最大長さLE1よりも長いと、第1酸化有効領域EA1よりも第2側壁26側に、第1噴射ノズル5Aから噴射される混合流体MFにより酸化反応が促進されない領域である酸化無効領域IAが形成される。酸化無効領域IAが広いと、その分だけ液だまり部21Bにおける酸化が不十分となる虞がある。
【0072】
幾つかの実施形態では、上述した噴射ノズル5は、第3側壁30に形成された挿通孔に、吐出口51(第2吐出口51B)が形成された第1筒状部52の先端が挿通される少なくとも一つの第2噴射ノズル5Bと、第4側壁31に形成された挿通孔に、吐出口51(第3吐出口51C)が形成された第1筒状部52の先端が挿通される少なくとも一つの第3噴射ノズル5Cと、をさらに含む。
【0073】
第2噴射ノズル5Bは、液だまり部21B内に位置する第2吐出口51Bから、混合流体MFを液だまり部21B内に噴射するように構成される。第2噴射ノズル5Bは、噴射した混合流体MFが第2方向に沿って第4側壁31側に流れるように指向されている。第3噴射ノズル5Cは、液だまり部21B内に位置する第3吐出口51Cから、混合流体MFを液だまり部21B内に噴射するように構成される。第3噴射ノズル5Cは、噴射した混合流体MFが第2方向に沿って第3側壁30側に流れるように指向されている。
【0074】
図示される実施形態では、第2噴射ノズル5Bは、第3側壁30の第1方向における気泡抑制部材29よりも第1側壁25側に複数取り付けられている。複数の第2噴射ノズル5Bは、第1方向に互いに間隔を開けて配置されている。また、第3噴射ノズル5Cは、第4側壁31の第1方向における気泡抑制部材29よりも第1側壁25側に複数取り付けられている。複数の第3噴射ノズル5Cは、第1方向に互いに間隔を開けて配置されている。
【0075】
複数の第2噴射ノズル5Bから噴射される混合流体MFにより洗浄液の酸化反応が促進される領域を第2酸化有効領域EA2(酸化有効領域)とする。第2酸化有効領域EA2は、液だまり部21Bを上面視した際に、第2方向における最大長さWE2と、第1方向における最大幅LE2と、からなる領域である。複数の第3噴射ノズル5Cから噴射される混合流体MFにより洗浄液の酸化反応が促進される領域を第3酸化有効領域EA3(酸化有効領域)とする。第3酸化有効領域EA3は、液だまり部21Bを上面視した際に、第2方向における最大長さWE3と、第1方向における最大幅LE3と、からなる領域である。
【0076】
第2酸化有効領域EA2の最大長さWE2、第3酸化有効領域EA3の最大長さWE3の夫々は、第2噴射ノズル5B、第3噴射ノズル5Cの夫々から噴射される混合流体MFの噴流到達距離と同程度の長さであり、噴流到達距離と同じ長さとみなしてもよい。第2酸化有効領域EA2の最大幅LE2、第3酸化有効領域EA3の最大幅LE3の夫々は、側壁(第3側壁30、第4側壁31)に取り付けられる噴射ノズル5の数により変動するものであるが、第1酸化有効領域EA1の最大長さLE1との和が、第1方向における第1吐出口51Aから気泡抑制部材29までの距離L1よりも短い。よって、混合流体MFが第2側壁26に到達しないようになっている。
【0077】
上記の構成によれば、上述した気液混合装置4の噴射ノズル5は、上述した第2噴射ノズル5Bと、上述した第3噴射ノズル5Cと、をさらに含んでいる。このため、液だまり部21Bにおける第1噴射ノズル5Aから噴射される混合流体MFにより酸化反応を促進できない領域(酸化無効領域IA)について、第2噴射ノズル5Bおよび第3噴射ノズル5Cの夫々から噴射される混合流体MFにより酸化反応を促進することができる。つまり、上述した酸化無効領域IA内に第2酸化有効領域EA2および第3酸化有効領域EA3が形成されるので、混合流体MFにより酸化反応を促進できない領域を小さくすることができる。よって、上記の構成によれば、液だまり部21Bにおける混合流体MFにより酸化反応を促進できない領域を少なくすることができるので、混合流体MFによる酸化が不十分となることを防止することができる。
【0078】
幾つかの実施形態では、
図6に示されるように、上述した第2噴射ノズル5Bおよび第3噴射ノズル5Cの夫々は、第1側壁25から所定距離L2以上離れた位置に配置される。所定距離L2は、第1酸化有効領域EA1の最大長さLE1よりも長い。この場合には、第2噴射ノズル5Bおよび第3噴射ノズル5Cの夫々は、第1側壁25から所定距離L2以上離れた位置に配置されるので、第2噴射ノズル5Bおよび第3噴射ノズル5Cの夫々から噴射された混合流体MFが、第1噴射ノズル5Aから噴射された混合流体MFの流れを阻害することを防止することができる。また、第1噴射ノズル5Aから噴射された混合流体MFの流れを阻害することを防止することで、第1噴射ノズル5Aから噴射される混合流体MFにより酸化反応が促進される容積である酸化有効容積が小さくなることを防止することができる。
【0079】
幾つかの実施形態では、
図6に示されるように、上述した第2噴射ノズル5Bおよび第3噴射ノズル5Cの夫々は、第2側壁26から所定距離L3以上離れた位置に配置される。所定距離L3は、第2側壁26から気泡抑制部材29までの長さよりも長い。この場合には、第2噴射ノズル5Bおよび第3噴射ノズル5Cの夫々は、第2側壁26から所定距離L3以上離れた位置に配置されるので、第2噴射ノズル5Bおよび第3噴射ノズル5Cの夫々から噴射された混合流体MFが、第2側壁26の洗浄液抜出口262に到達することを防止することができる。よって、上記の構成によれば、液だまり部21Bから洗浄液を抜き出すためのポンプ(洗浄液循環ポンプ72)に気体G(気泡)が巻き込まれて、ポンプの性能が低下することを防止することができる。
【0080】
図7は、
図6に示す噴射ノズルの夫々の配置状態を説明するための説明図である。
幾つかの実施形態では、
図7に示されるように、上述した第2噴射ノズル5Bおよび第3噴射ノズル5Cの夫々は、上述した第1噴射ノズル5Aとは異なる高さ位置に配置されている。図示される実施形態では、第2噴射ノズル5Bおよび第3噴射ノズル5Cの夫々は、第1噴射ノズル5Aよりも低い位置に配置されている。つまり、第2噴射ノズル5Bの潜水深さZ2、第3噴射ノズル5Cの潜水深さZ3の夫々は、第1噴射ノズル5Aの潜水深さZ1よりも短い。この場合には、第2噴射ノズル5Bの傾斜角度θ2、第3噴射ノズル5Cの傾斜角度θ3の夫々を、第1噴射ノズル5Aの傾斜角度θ1よりも小さくしてもよい。
【0081】
第2噴射ノズル5Bおよび第3噴射ノズル5Cの夫々は、上面視において、第1噴射ノズル5Aが混合流体MFを噴射する第1方向に交差する第2方向に沿って混合流体MFを噴射するようになっている。仮に第2噴射ノズル5Bおよび第3噴射ノズル5Cの夫々が、第1噴射ノズル5Aと同じ高さ位置に配置されると、第2噴射ノズル5Bおよび第3噴射ノズル5Cの夫々から噴射された混合流体MFが、第1噴射ノズル5Aから噴射された混合流体MFの流れを阻害する虞がある。
【0082】
上記の構成によれば、第2噴射ノズル5Bおよび第3噴射ノズル5Cの夫々は、第1噴射ノズル5Aとは異なる高さ位置に配置されるので、第2噴射ノズル5Bおよび第3噴射ノズル5Cの夫々から噴射された混合流体MFが、第1噴射ノズル5Aから噴射された混合流体MFの流れを阻害することを防止することができる。また、第1噴射ノズル5Aから噴射された混合流体MFの流れを阻害することを防止することで、酸化有効容積が小さくなることを防止することができる。
【0083】
図7に示される実施形態では、第2噴射ノズル5Bおよび第3噴射ノズル5Cの夫々は、第1噴射ノズル5Aよりも低い位置に配置されているが、他の実施形態では、第2噴射ノズル5Bおよび第3噴射ノズル5Cの夫々を第1噴射ノズル5Aよりも高い位置に配置してもよい。すなわち、第2噴射ノズル5Bの潜水深さZ2、第3噴射ノズル5Cの潜水深さZ3の夫々を、第1噴射ノズル5Aの潜水深さZ1よりも長くしてもよい。この場合には、第2噴射ノズル5Bの傾斜角度θ2、第3噴射ノズル5Cの傾斜角度θ3の夫々を、第1噴射ノズル5Aの傾斜角度θ1よりも大きくしてもよい。
【0084】
図8は、吸収塔における噴射ノズルが固定される部分近傍を概略的に示す部分断面図である。以下、
図8に基づいて、噴射ノズル5の取付方法を説明する。第1噴射ノズル5Aの取付方法を例に挙げて説明するが、第2噴射ノズル5Bや第3噴射ノズル5Cの取付方法も第1噴射ノズル5Aの取付方法と同様である。
【0085】
まず、第1側壁25を貫通するように形成された挿通孔252に、第1噴射ノズル5Aの吐出口51(第1吐出口51A)が形成された第1筒状部52の先端を挿通する。
【0086】
第1噴射ノズル5Aは、
図8に示されるように、第1筒状部52と、吐出口側締結部63(第1締結部)と、を含む。第1筒状部52は、第1吐出口51Aの中心軸CAに沿って延在しており、延在方向における一端に第1吐出口51Aが形成されている。吐出口側締結部63は、第1筒状部52の、第2筒状部54との接続部や合流部60よりも洗浄液の流れ方向における下流側であって、第1吐出口51Aより上流側の外周に設けられている。吐出口側締結部63は、第1筒状部52の上記外周から第1吐出口51Aの中心軸CAに直交する方向に沿って突出して設けられている。
【0087】
吸収塔2は、
図8に示されるように、筒状突出部32と、噴射ノズル用締結部33(第2締結部)と、を含む。筒状突出部32は、
図8に示されるように、第1吐出口51Aの中心軸CAの水平面からの傾斜角度をθとした際に、水平面から角度θだけ傾斜した方向に沿って、第1側壁25の挿通孔252の周縁部から外側に突出して設けられている。噴射ノズル用締結部33は、筒状突出部32の先端から筒状突出部32の延在する方向に直交する方向に沿って突出して設けられている。
【0088】
次に、第1側壁25に第1噴射ノズル5Aを固定する。第1噴射ノズル5Aの吐出口側締結部63は、吸収塔2の噴射ノズル用締結部33に締結装置66(66A)により固定される。図示される実施形態では、締結装置66Aは、ボルト67(67A)と、ナット68(68A)と、を含む。
【0089】
ボルト67(67A)は、少なくとも外周面の一部にねじ部が形成された軸部671と、軸部671の基端部において軸部671よりも大径に形成された頭部672と、を備える。吐出口側締結部63と噴射ノズル用締結部33には、筒状突出部32の延在する方向に沿ってボルト67Aの軸部671が挿通可能な貫通孔631、331が形成されている。ボルト67Aは、筒状突出部32の延在する方向における一方側から、吐出口側締結部63および噴射ノズル用締結部33に形成された貫通孔631、331に軸部671が挿通され、筒状突出部32の延在する方向における他方側に挿通した軸部671の先端が、ナット68Aに螺合することで、第1側壁25に第1噴射ノズル5Aを固定する。
【0090】
第1側壁25に第1噴射ノズル5Aを固定した後に、第1噴射ノズル5Aに気体導入ライン42を接続する。図示される実施形態では、第1噴射ノズル5Aは、
図8に示されるように、第2筒状部54の、第2気体導入口59が形成された端部の外周から突出して設けられる気体導入側締結部64をさらに含む。気体導入ライン42は、第2筒状部54の延在する方向に沿って延在する気体導入管47を含む。気体導入管47は、第2気体導入口59に連通する開口が形成された端部の外周から突出して設けられる気体下流側締結部48を備える。気体導入管47の気体下流側締結部48は、第1噴射ノズル5Aの気体導入側締結部64に締結装置66(66B)により固定される。
【0091】
図示される実施形態では、締結装置66Bは、ボルト67Aと同様の構成を備えるボルト67Bと、ナット68Aと同様の構成を備えるナット68Bと、を含む。ボルト67Bは、気体導入側締結部64および気体下流側締結部48に形成された貫通孔641、481に挿通された軸部671の先端にナット68Bが螺合することで、第1噴射ノズル5Aの第2筒状部54に気体導入管47を固定する。
【0092】
第1側壁25に第1噴射ノズル5Aを固定した後に、第1噴射ノズル5Aに洗浄液導入ライン41を接続する。洗浄液導入ライン41と第1噴射ノズル5Aとの接続は、気体導入ライン42と第1噴射ノズル5Aとの接続と同時に行ってもよいし、気体導入ライン42と第1噴射ノズル5Aとの接続よりも前や後に行ってもよい。
【0093】
第1噴射ノズル5Aは、
図3に示されるように、第1筒状部52の、洗浄液導入口56が形成された端部の外周から突出して設けられる洗浄液導入側締結部65をさらに含む。洗浄液導入ライン41は、第1筒状部52の延在する方向に沿って延在する洗浄液導入管45を含む。洗浄液導入管45は、
図3に示されるように、洗浄液導入口56との間に絞り部53を挟んで連通する開口451が形成された端部の外周から突出して設けられる洗浄液下流側締結部46を備える。
図8に示されるように、洗浄液導入管45の洗浄液下流側締結部46は、第1噴射ノズル5Aの洗浄液導入側締結部65に締結装置66Cにより固定される。
【0094】
図示される実施形態では、締結装置66Cは、ボルト67Aと同様の構成を備えるボルト67Cと、ナット68Aと同様の構成を備えるナット68Cと、を含む。ボルト67Cは、洗浄液導入側締結部65および洗浄液下流側締結部46に形成された貫通孔651、461に挿通された軸部671の先端にナット68Cが螺合することで、第1筒状部52と洗浄液導入管45との間に絞り部53を挟んだ状態で、第1噴射ノズル5Aの第1筒状部52に洗浄液導入管45を固定する。
【0095】
上述したように、幾つかの実施形態では、上述した第1噴射ノズル5Aは、上述した第1筒状部52と、上述した吐出口側締結部63(第1締結部)と、を含む。そして、上述した吸収塔2は、上述した筒状突出部32と、上述した噴射ノズル用締結部33(第2締結部)と、を含む。
【0096】
上記の構成によれば、第1噴射ノズル5Aは、吸収塔2の第1側壁25に形成された挿通孔252に第1筒状部52の第1吐出口51Aを含む先端を挿通した状態で、吐出口側締結部63が吸収塔2の噴射ノズル用締結部33に締結装置66(66A)により固定される。ここで、第1筒状部52は、第1吐出口51Aの中心軸CAに沿って延在している。吸収塔2の筒状突出部32は、第1吐出口51Aの中心軸CAの水平面からの傾斜角度θと同じ角度だけ水平面から傾斜した方向に沿って延在している。つまり、吸収塔2の筒状突出部32は、第1噴射ノズル5Aが設置された際の第1吐出口51Aの中心軸CAと同じ方向に沿って延在する。第1噴射ノズル5Aは、第1筒状部52の延在する方向に直交する方向に沿って延在する吐出口側締結部63と、筒状突出部32の延在する方向に直交する方向に沿って延在する噴射ノズル用締結部33と、を締結装置66(66A)により固定することで、第1吐出口51Aの中心軸CAの水平面からの傾斜角度θをそのまま設置角度とすることができる。よって、上記の構成によれば、第1噴射ノズル5Aの設置角度の調整作業をなくし、第1噴射ノズル5Aの取付け作業を容易にすることができる。
また、締結装置66(66A)による吐出口側締結部63と噴射ノズル用締結部33との固定を解除すれば、ただちに、第1噴射ノズル5Aを、吸収塔2の挿通孔252から取り外すことができるため、第1噴射ノズル5Aの点検、補修・交換作業などを容易に行うことができる。
【0097】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0098】
例えば、上述した幾つかの実施形態では、排ガス排出部24は、第1方向において、吸収塔本体部22を挟んで排ガス導入部23とは反対側に設けられていたが、排ガス導入部23と同じ側に設けられていてもよい。また、排ガス排出部24は、上面視において第1方向に直交する第2方向において、吸収塔本体部22に隣接するように設けられていてもよい。
【解決手段】排ガスに洗浄液を気液接触させるように構成され、洗浄液が貯留される液だまり部を内部に含む吸収塔と、吸収塔の第1側壁に形成された挿通孔に先端が挿通され、第1吐出口から酸素を含む気体と洗浄液との混合流体を液だまり部に噴射するように構成される第1噴射ノズルを含む気液混合装置とを備え、第1噴射ノズルは、筒状部と、筒状部の外周から第1吐出口の中心軸に直交する方向に突出して設けられる第1締結部とを含み、吸収塔は、第1吐出口の中心軸の水平面からの傾斜角度をθとしたとき、角度θだけ傾斜した方向に、挿通孔の周縁部から外側に突出して設けられる筒状突出部と、筒状突出部の先端から筒状突出部の延在する方向に直交する方向に突出して設けられる第2締結部とをさらに含む、排ガス脱硫装置。