特許第6588149号(P6588149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588149
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】燃料フィードポンプ
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/10 20060101AFI20191001BHJP
   F02M 37/08 20060101ALI20191001BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20191001BHJP
   H02K 7/08 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   F02M37/10 D
   F02M37/08 E
   H02K7/14 B
   H02K7/08 Z
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-501945(P2018-501945)
(86)(22)【出願日】2016年7月4日
(65)【公表番号】特表2018-522161(P2018-522161A)
(43)【公表日】2018年8月9日
(86)【国際出願番号】EP2016065687
(87)【国際公開番号】WO2017009082
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2018年3月8日
(31)【優先権主張番号】102015213420.2
(32)【優先日】2015年7月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーク フェルカー
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエウ シマラ リマ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ミュールハウゼン
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−528218(JP,A)
【文献】 特開平04−203287(JP,A)
【文献】 特開2005−204386(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0172776(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0151440(US,A1)
【文献】 特開2004−092484(JP,A)
【文献】 特開平04−203288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/10
F02M 37/08
H02K 7/08
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を圧送する燃料フィードポンプ(4,15)であって、
電動モータ(18)と、該電動モータ(18)によって駆動可能なポンプ羽根車とを備えており、該ポンプ羽根車は、ロータ(17)の回転運動がシャフト(16)を介して前記ポンプ羽根車に伝達されるように、前記シャフト(16)によって前記電動モータ(18)の前記ロータ(17)に結合されており、前記シャフト(16)は、前記ポンプ羽根車が配置されたポンプ段部(11)に対して、スラスト軸受(12)によって軸方向に、かつ/またはラジアル軸受(20)によって半径方向に支承されている、燃料フィードポンプ(4,15)において、
前記スラスト軸受(12)と前記ポンプ段部(11)との間には、電気絶縁部材(13)が配置されており、かつ/または前記ラジアル軸受(20)と前記ポンプ段部(11)との間には、電気絶縁部材が配置されており、
前記電気絶縁部材(13)は、前記スラスト軸受(12)と前記ポンプ段部(11)との間に、鍋状部材(13)によって形成されている、
ことを特徴とする、燃料フィードポンプ(4,15)。
【請求項2】
前記ラジアル軸受(20)が電気絶縁部材として構成されている、請求項1記載の燃料フィードポンプ(4,15)。
【請求項3】
前記スラスト軸受(12)は、球体(12)によって形成されており、該球体(12)は、前記鍋状材(13)内に配置されている、請求項1または2記載の燃料フィードポンプ(4,15)。
【請求項4】
前記電気絶縁部材(13)は、非導電性のコーティングによって形成されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の燃料フィードポンプ(4,15)。
【請求項5】
前記電気絶縁部材(13)のうちの少なくとも1つが、プラスチックおよび/またはセラミックから形成されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の燃料フィードポンプ(4,15)。
【請求項6】
前記電気絶縁部材(13,20)のうちの少なくとも1つが、熱可塑性材料から形成されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の燃料フィードポンプ(4,15)。
【請求項7】
前記シャフト(16)と前記ポンプ段部(11)との間に、非導電性のシール部材が配置されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の燃料フィードポンプ(4,15)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を圧送する燃料フィードポンプであって、電動モータと、電動モータによって駆動可能なポンプ羽根車とを備え、ポンプ羽根車は、ロータの回転運動がシャフトを介してポンプ羽根車に伝達されるように、シャフトによって電動モータのロータに結合されており、シャフトは、ポンプ羽根車が配置されたポンプ段部に対して、スラスト軸受によって軸方向に、かつ/またはラジアル軸受によって半径方向に支承されている、燃料フィードポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料フィードポンプには、圧送されるべき燃料が貫流するだけでなく、その周りを燃料が流れる。自動車で使用される燃料フィードポンプは、例えばポンプ羽根車によって形成された圧送段部の駆動に使用される電動モータを有している。静電気放電(ESD)に対する安全性を確保するために、燃料フィードポンプの導電性の部材を接地する必要がある。このことは、短絡の防止、ひいては燃料の発火を招くおそれのある火花の発生の防止に役立つ。さらに、燃料フィードポンプの機能性は、静電気放電の発生によって損なわれるおそれがある。接地させるべき部材には、特にポンプ段部と、燃料フィードポンプのハウジングと、電動モータのロータおよびステータが配置されたモータハウジングとが含まれている。
【0003】
それと同時に、圧送段部が配置された燃料フィードポンプのシャフトを電圧供給部の負極もしくは接地電位に短絡させ、ひいては同じように接地させることは、回避すべきである。このような短絡は、燃料フィードポンプの故障、またはシャフトまたはロータにおける、特にカーボンブラシ付近での望ましくない堆積物の発生を招くおそれがある。このことは、燃料フィードポンプの寿命に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
従来技術では、このような問題に対する考え得る解決策を示す種々様々な装置が公知である。したがって、十分な接地もしくは遮断を達成するために、付加的な抵抗を有する燃料フィードポンプが公知である。プラスチックから成るポンプ段部を有する燃料フィードポンプも公知であり、それによってシャフトの絶縁を達成することができる。さらに、モータハウジングを接地し、ひいてはシャフトを接地する燃料フィードポンプが公知である。
【0005】
従来技術のこのような装置の欠点は、特に、静電気放電に対する十分な安全性が得られないこと、またはモータハウジングの接地によってシャフトの接地も生じ、それによって電動モータ内部に堆積物が生じるおそれがあることである。ポンプ段部をプラスチック部材として構成すると、安定性が低下し、ひいては寿命が短くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の説明、課題、解決手段、利点
したがって、本発明の課題は、静電気放電に対して十分な安全性を有すると同時に、シャフトの、接地された部材に対する電気的遮断部を有する燃料フィードポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
燃料フィードポンプに関するこの課題は、請求項1に記載の特徴を有する燃料フィードポンプによって解決される。
【0008】
本発明の実施形態は、燃料を圧送する燃料フィードポンプであって、電動モータと、電動モータによって駆動可能なポンプ羽根車とを備え、ポンプ羽根車は、ロータの回転運動がシャフトを介してポンプ羽根車に伝達されるように、シャフトによって電動モータのロータに結合されており、シャフトは、ポンプ羽根車が配置されたポンプ段部に対して、スラスト軸受によって軸方向に、かつ/またはラジアル軸受によって半径方向に支承されており、スラスト軸受とポンプ段部との間には、電気絶縁部材が配置されており、かつ/またはラジアル軸受とポンプ段部との間には、電気絶縁部材が配置されている、燃料フィードポンプに関する。
【0009】
スラスト軸受とポンプ段部との間、かつ/またはラジアル軸受とポンプ段部との間に電気絶縁部材を配置することによって、シャフトの、ポンプ段部からの電気的絶縁、ひいては燃料フィードポンプのハウジングおよびモータハウジングからの電気的絶縁を生じさせることができる。このことは、シャフトの極性に基づくシャフト領域内での堆積物の発生を回避するために特に有利である。電気的絶縁によって、燃料フィードポンプのハウジング、モータハウジングおよびポンプ段部を電圧供給部の負極もしくは接地電位に接続することができ、ひいては上述の部材の接地を達成することができる。このことは、短絡および静電気放電を回避するのに有利である。
【0010】
モータハウジングは、例えば電動モータのステータによって形成してもよい。同様に、モータハウジングとして機能するケージ状の構造物を、ステータの周りに配置してもよい。電動モータを燃料フィードポンプのハウジング内に嵌め込むことによって、電動モータは、閉鎖された固有のハウジングがなくても、機械的障害の影響から十分に保護される。
【0011】
ラジアル軸受とポンプ段部との間のみならず、スラスト軸受とポンプ段部との間にも電気絶縁部材を配置することが好ましい。これによって、シャフトの広範囲の電気的絶縁を達成することができる。
【0012】
ラジアル軸受が電気絶縁部材として形成されていると特に有利である。付加的な絶縁部材を節減するために、ラジアル軸受は、支承の機能以外に電気的絶縁の機能も担うことができる。このために、ラジアル軸受を、特に好ましくは非導電性の材料から形成してもよい。例えば、軸受シェルをプラスチックまたは非導電性セラミックから形成してよい。ラジアル軸受は、非導電性のコーティングによって被覆されていてもよい。
【0013】
スラスト軸受とポンプ段部との間の電気絶縁部材を、鍋状(topffoermig)部材によって形成しても有利である。鍋状部材は、スラスト軸受の確実な嵌合を保証し、さらに絶縁部材の容易な取付けを可能にするために有利である。このために、絶縁部材を嵌込みまたは圧入可能な、正確な嵌合をもたらす凹部を、ポンプ段部の下側部分に設けてよい。
【0014】
ポンプ段部は、燃料フィードポンプのハウジングの下端を形成する、2つの部分から成るハウジングによって形成するのが好ましい。ポンプ段部内には、ポンプ羽根車が配置されている。さらに、ポンプ段部は、圧送されるべき流体を吸込および吐出するための付加的な開口部を有している。
【0015】
スラスト軸受は、球体によって形成されていて、この球体が、鍋状電気絶縁部材内に配置されているのも好ましい。シャフトを軸方向に支持かつ支承することができ、シャフトと球体との間には非常に小さな接触面しか生じないので、球体が有利である。球体を、既に絶縁部材が嵌め込まれた、ポンプ段部の凹部に圧入することができ、その結果、球体が固くポンプ段部に収容されるのが好ましい。代替的に、絶縁部材上を球体が摺動することも予想され得るので、それによってスラスト軸受は、最終的に、球体によっても、鍋状絶縁部材によっても形成される。
【0016】
さらに、電気絶縁部材は、非導電性のコーティングによって形成されていると有利である。スラスト軸受および/またはラジアル軸受の領域内のポンプ段部の非導電性のコーティングは、それによって同様に電気的絶縁も達成できるので有利である。コーティングは、例えばプラスチックまたはセラミックのような非導電性の材料によって形成されているのが好ましい。
【0017】
さらに、電気絶縁部材のうちの少なくとも1つがプラスチックおよび/またはセラミックから形成されていると有利である。この場合、電気絶縁部材のうちの少なくとも1つが熱可塑性材料から形成されていると特に有利である。
【0018】
さらに、シャフトとポンプ段部との間に非導電性のシール部材が配置されていると有利である。このシール部材は、例えばセラミックまたはゴム部材であってよい。
【0019】
本発明の有利な改良形態は、従属請求項および以下の図面の説明に記載されている。
【0020】
以下、図面を参照して実施形態に基づき本発明を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】燃料タンク内における燃料フィードポンプの配置を示す概略図である。
図2】ポンプ段部の下側部分の詳細図であり、特に鍋状絶縁部材と、スラスト軸受として働く球体とが示されている。
図3】燃料フィードポンプの断面図であり、非導電性のラジアル軸受が、シャフトとポンプ段部との間に配置されていて、非導電性の鍋状絶縁部材は、シャフトの、下方に向けられた軸方向端部領域と、ポンプ段部との間に配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、自動車(図示せず)内に設けられた燃料タンク1の概略図を示している。燃料タンク1には、燃料フィードユニット2が配置されており、この燃料フィードユニット2は、スワールポット3と、燃料フィードポンプ4と、フランジ5とから成る。フランジ5は、燃料フィードユニット2を燃料タンク1へ取り付けるのに使用される。スワールポット3は、燃料貯留部であり、そこから燃料が燃料フィードポンプ4によって内燃機関へ圧送される。スワールポット3は、結合部材6を介してフランジ5に結合されている。さらに、スワールポット3は、燃料タンク1の下壁に対して支持されている。
【0023】
燃料フィードポンプ4は、スワールポット3の内部に配置されており、導電体7を介して電圧源に接続されている。燃料フィードポンプ4および導電体7の両方は、燃料タンク1内の燃料によって取り囲まれている。したがって、安全な動作を保証するために、燃料と接触している金属部材の接地が必要である。
【0024】
図2は、ポンプ段部11の下側部分10の詳細図を示している。ポンプ段部11は、通常は2つの部分から成り、その内部にポンプ羽根車を収容する凹部を有している。さらに、ポンプ段部11は、付加的な開口部を有しており、その開口部を通して燃料をポンプ段部11へ、そしてポンプ段部から外へ圧送することができる。
【0025】
部分10は、球体12を有しており、この球体12は、その上方に配置されたシャフト(図2には図示せず)用の軸方向軸受座として使用される。球体12は、耐摩耗性材料から製造されているのが好ましい。球体12は、金属材料から形成されているのが好ましい。球体12は、鍋状部材13内に配置されており、この鍋状部材13によって、球体12は、部分10に対して離間している。鍋状部材13は、好ましくは非導電性の材料から形成されており、特に、球体12と、球体12に導電接続された、ポンプ羽根車が配置されたシャフト(図示せず)との電気的絶縁に役立つ。したがって、鍋状部材13は、電気絶縁部材を構成している。
【0026】
図3は、燃料フィードポンプ15の断面図を示している。燃料フィードポンプ15の中央には、シャフト16が配置されており、このシャフト16は、電動モータ18のロータ17に結合されていて、かつ燃料フィードポンプ15のハウジング19内に回転可能に支承されている。
【0027】
シャフト16は、一方では、ラジアル軸受20によって支承され、他方では、既に図2で示された球体12によって形成されたスラスト軸受によって支承されている。
【0028】
特に、燃料フィードポンプ15のハウジング19、ポンプ段部11、およびステータ22は、部材の接地を保証するために、電圧供給部の負極、または特に接地電位に接続されている。
【0029】
ラジアル軸受20は、ポンプ段部11の上側部分21に組み込まれており、好ましくは電気絶縁材料によって形成されている。このようにして、シャフト16とポンプ段部11との間の導電接続が妨げられる。代替的に、ラジアル軸受20とポンプ段部11、もしくは上側部分21との間に、電気絶縁層または電気絶縁部材が配置されていてもよい。
【0030】
非導電性のラジアル軸受20、またはラジアル軸受20とポンプ段部11との間にある絶縁部材と、電気絶縁材料から成る鍋状部材13との組み合わせによって、燃料フィードポンプ15の接地された部材に対するシャフト16の電気的絶縁が達成される。このことは、シャフト16において、特に電動モータ18のカーボンブラシ23領域内で、特に堆積物の発生を防止し、これによって燃料フィードポンプ15全体の寿命が改善される。
【0031】
図1図3に示す実施形態は、特に限定された特徴を有しておらず、本発明の思想を明確にするために役立つ。これと異なる多様な構造の造形や形状も、本発明に含まれる範囲内で、本発明の基本的思想から逸脱することなく実現することができる。図2および図3に示す実施形態は、例示的なものであり、例えばハウジングおよび/またはポンプ段部にプラスチックを使用するような、不適当な材料の選択によって燃料フィードポンプの寿命に悪影響を及ぼすことなく、シャフトの、燃料フィードポンプの電気的に接地された部材からの絶縁を達成させるという、特に有利な可能性を明確に示している。
図1
図2
図3