(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一つの様態は、増粘剤、及び配列番号1の物質P(substance P)を含む、傷治癒用薬学組成物を提供する。
【0014】
本発明者らは増粘剤、及び物質P(substance P)を含む傷治癒用薬学組成物が商用化された傷治療剤に比べて、新生血管の生成効果と上皮の再生効果に優れ、成熟した肉芽組織をよく形成させ、コラーゲンの合成を向上させる効果を確認し、本発明を完成した。
【0015】
本発明の組成物において、前記物質P(substance P)は、配列番号1の「Arg-Pro-Lys-Pro-Gln-Gln-Phe-Phe-Gly-Leu-Met-NH-
2」アミノ酸からなる神経ペプチドを意味する。前記物質Pは脳脊髄などの中枢神経系及び腸管などの末梢に広く分布し、1次知覚神経から痛覚を伝達する役割を行うと知られている。
【0016】
本発明の薬学組成物に含まれる物質Pの濃度は、0.1〜100μg/mlであってもよく、具体的には3〜8μg/mlであってもよい。
【0017】
本発明の一実施例では、濃度が0.1〜100μg/mlである物質Pが陰性対照群に比べて、細胞増殖効果に優れることを証明し、特に3〜8μg/mlの範囲で細胞増殖効果に最も優れであることを証明した(
図1)。
【0018】
従って、前記物質Pの濃度が0.1〜100μg/mlである場合、細胞増殖効果に優れ、本発明の薬学の優秀な傷治癒効果を発揮させうることが分かった。
【0019】
本発明の組成物において、前記増粘剤は粘性を付与するために添加される添加剤を意味するもので、増粘剤または増粘安定剤ともいう。
【0020】
本発明の増粘剤は、具体的にカルボキシメチルセルロースナトリウム(sodium carboxymethylcellulose)またはヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethylcellulose)であってもよく、より具体的にはヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethylcellulose)であってもよい。
【0021】
前記増粘剤の含量は、本発明の組成物の総重量に対して1〜5重量%であってもよい。前記増粘剤の含量が組成物の総重量に対して1重量%以下である場合、薬学組成物の安定性に問題が起こることがあ
る。
【0022】
本発明の一実施例では、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムまたはヒドロキシエチルセルロースを含む薬学組成物が、物質P及び商用化された傷治療剤に比べて、傷のサイズを縮小させる効果に優れることを証明した(
図2a及び2b)。特に、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロースを含む薬学組成物の場合、他の種類の増粘剤を含む薬学組成物に比べて、傷のサイズを減少させる効果に優れることを証明した(
図2c)。
【0023】
従って、本発明の薬学組成物は、含まれる増粘剤の種類に応じて傷治癒効果が異なり、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムまたはヒドロキシエチルセルロースを含む場合、優秀な傷治癒効果を示すことができる。特に、増粘剤がヒドロキシエチルセルロースの場合、傷治癒用薬学組成物に適合しうる。
【0024】
本発明の薬学組成物は、単一製剤として使用してもよく、公認された傷の治療効果を有すると知られている薬物をさらに含んで複合製剤と製造して使用してもよく、薬学的に許容可能な担体または賦形剤を用いて製剤化することにより、単位容量形で製造されるか、多容量の容器内に入れて製造され得る。
【0025】
前記「薬学的に許容可能な担体」は、生物体を刺激することなく、注入される化合物の生物学的活性及び特性を阻害しない担体、賦形剤または希釈剤を意味することができ、具体的には、非自然的担体(non-naturally occuring carrier)でありうる。本発明において使用可能な前記担体の種類は特に限定されないが、当該技術分野で一般的に使用され、薬学的に許容可能な担体であれば、いずれのものであっても使用することができる。前記担体の非制限的な例としては、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノールなどを挙げることができる。これらは単独で使用したり、2種以上を混合して使用することができる。薬学的に許容可能な担体を含む前記組成物は、経口または非経口の様々な剤型でありうる。製剤化する場合には、通常使用している充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製される。
【0026】
具体的には、経口投与用の固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、これらの固形製剤は前記化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調剤することができる。また、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用することができる。経口用の液状製剤としては、懸濁剤、内溶液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、液体パラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを含むことができる。非経口投与用の製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤及び坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されてもよい。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用されてもよい。
【0027】
本発明の組成物は、前記薬学的に許容可能な担体の例として、抗酸化剤及び界面活性剤をさらに含むものであってもよい。具体的に、本発明の組成物は、抗酸化剤をさらに含むか、界面活性剤をさらに含むものであってもよく、より具体的に抗酸化剤及び界面活性剤をいずれも含むものであってもよい。
【0028】
本発明の組成物において、前記抗酸化剤は空気中の酸素による活性成分の酸化過程で生じる遊離基や過酸化物に作用して、酸化の連鎖反応を停止し、酸化の進行を防止して、活性成分の変質を防止する目的で添加される物質を意味する。
【0029】
本発明において、前記抗酸化剤は、物質Pを含む薬学組成物の傷治癒効果の変質を防止することができるため、傷治癒用組成物の有効成分として使用することができる。
【0030】
前記抗酸化剤は、当業界で使用することができる通常の抗酸化剤を制限なく使用することができるが、具体的に、ベータメルカプトエタノール(β-mercaptoethanol、β-ME)、グルタチオン(Glutathione、GSH)、アスコルビン酸(ascorbic acid )、ビタミンE、ベータカロチン、リコペン、コエンザイムQ10(coenzyme Q-10)、セレン、クロム、マグネシウム、タウリン(taurine)、ハイポタウリン(hypotaurine)またはトレハロース(trehalose)などを使用してもよいが、これに限定されるものではない。具体的に、本発明において、前記抗酸化剤は、チオ硫酸ナトリウム(sodium thiosulfate)であってもよい。
【0031】
前記抗酸化剤の含量は、薬学組成物の傷治癒効果の変質を防止することができる限り、特に制限されないが、本発明の組成物の総重量に対して0.01〜1重量%であってもよい。
【0032】
本発明の組成物において、前記界面活性剤は親油性の油成分を使用して均一な液組成を維持させる物質を意味する。
【0033】
前記界面活性剤は、薬剤学的に許容される陰イオン系、陽イオン系、非イオン系または両性界面活性剤などの薬学組成物の製造時に使用される一般的な界面活性剤であってもよい。具体的に、本発明において、前記界面活性剤はポリソルベート80(polysorbate 80)であってもよい。
【0034】
前記界面活性剤の含量は、本発明の組成物の総重量に対して0.001〜0.02重量%であってもよい。前記界面活性剤の含量が組成物の総重量に対して0.001重量%以下である場合、本発明の組成物の乳化力が低下し剤形の析出安定性が低くなることがあり、0.02重量%以上である場合、本発明の組成物の粘度があまりにも高くなったり、転相(phase inversion)などの問題が発生することがある。
【0035】
本発明でおける用語、「傷治癒」とは、皮膚細胞の損傷に起因する傷を治療や緩和することを意味し、前記治療は、本発明の薬学組成物を傷ができた個体に投与して傷の症状が好転するようにしたり、有利にするすべての行為を意味することができる。
【0036】
前記「個体」とは、傷が出来たり、傷ができる可能性があるヒトを含むすべての動物を意味することができる。前記動物はヒトだけではなく、同様の症状の治療を必要とする牛、馬、羊、豚、ヤギ、ラクダ、羚羊、犬、及び猫などの哺乳動物であってもよいが、これに限定されない。
【0037】
本発明の傷治癒用薬学組成物の一具体例は、物質P、チオ硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む組成物であってもよい。他の具体例は、物質P、チオ硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、及びヒドロキシエチルセルロースを含む組成物であってもよい。
【0038】
本発明の薬学組成物は、新生血管の生成、上皮の再生、肉芽組織の成熟、及びコラーゲンの合成を向上させることを特徴とするものであってもよい。
【0039】
具体的に、本発明の一実施例では、抗酸化剤、界面活性剤、増粘剤、及び物質P(substance P)を含む薬学組成物が商用化された傷の治療剤に比べて新生血管の増加効果に優れており(
図3)、上皮再生の効果に優れていること(
図5a及び5b)を証明した。特に、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロースを含む薬学組成物の場合、他の種類の増粘剤を含む薬学組成物に比べて、前記の効果に優れていることを証明した。
【0040】
また、本発明の一実施例では、抗酸化剤、界面活性剤、増粘剤、及び物質P(substance P)を含む薬学組成物が商用化された傷の治療剤に比べて成熟した肉芽組織を形成し(
図6)、コラーゲンの増加効果に優れていること(
図7)を証明した。特に、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロースを含む薬学組成物の場合、他の種類の増粘剤を含む薬学組成物に比べて、前記の効果がに優れることを証明した。
【0041】
本発明の他の一つの態様は、増粘剤、及び配列番号1の物質P(substance P)を含む、傷治癒用医薬部外品組成物を提供する。
【0042】
本発明で使用される用語、「増粘剤」、「物質P」、及び「傷治癒」は、前記で前述したことと同一である。
【0043】
本発明で使用される用語、「医薬部外品」は、人や動物の病気を治療、軽減、処置または予防する目的で使用される繊維、ゴム製品、またはこれに類似なもの、人体に対する作用が弱いか、人体に直接作用せず、器具または機械ではないものと、これと類似なものを意味する。また、感染型の予防のために殺菌、殺虫、及びこれらに類似な用途で使用される製剤のいずれかに該当する物品であって、人や動物の病気を診断、治療、軽減、処置または予防する目的で使用する物品のうち器具、機械または装置でないもの及び、人や動物の構造と機能に薬理学的影響を与える目的で使用する物品のうち器具、機械又は装置ではないものを除いた物品を意味することができる。また、前記医薬部外品は、個人衛生用品を含むことができる。前記個人衛生用品は消毒清潔剤、シャワーフォーム、カグリン(マウスウォッシュ)、ウェットティッシュ、洗剤石鹸、ハンドソープ、または軟膏剤であってもよいが、これに限定されない。具体的に、本発明の組成物において、前記医薬部外品は皮膚外用剤であってもよい。
【0044】
本発明に係る組成物を医薬部外品添加物として使用する場合、前記組成物をそのまま添加したり、他の医薬部外品または医薬部外品成分と共に使用することができ、通常の方法に従って適切に使用することができる。有効成分の混合量は、使用目的に応じて適切に決定することができる。
【0045】
本発明の他の一つの態様は、前記増粘剤、及び配列番号1の物質P(substance P)を含む、傷治癒用薬学組成物を傷が誘発された個体に投与する段階を含む、傷の治癒方法を提供する。
【0046】
本発明で使用される用語、「増粘剤」、「物質P」、及び「個体」は、前記で前述したことと同一である。
【0047】
本発明で使用される用語、「投与」は、ある適切な方法で患者に本発明の傷治癒用薬学組成物を導入することを意味し、前記組成物の投与経路は目的組織に到達することができる限り、いかなる一般的な経路を通じても投与することができる。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与されることができるが、これに限定されない。本発明の組成物が傷の治癒に効果がある特性上、前記組成物の投与経路は、皮膚に塗布して投与されうる。
【0048】
前記増粘剤、及び配列番号1の物質P(substance P)を含む、傷治癒用薬学組成物は、薬学的に有効な量で投与することができる。
【0049】
前記の「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受益/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、 有効容量レベルは個体の種類及び重症度、年齢、体重、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に使用された薬物を含む要素及びその他の医学分野でよく知られている要素により決定してもよい。例えば、前記薬学組成物は、それぞれ1日に0.0001〜1000mg/kgで、具体的には、0.001〜100mg/kgで投与してもよい。
【0050】
本発明の薬学組成物を毎日投与または間歇的に投与してもよく、1日当たりの投与回数は、1回または2〜3回に分けて投与することが可能である。2つの有効成分がそれぞれ単剤の場合の投与回数は、同じ回数であってもよく、異なる回数であってもよい。また、本発明の組成物は、傷の治癒のために単独、または他の薬物治療と併用して使用してもよい。前記要素をすべて考慮して、副作用のない、最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与することが重要であり、当業者によって容易に決定することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例を通じて本発明の構成及び効果をより詳しく説明する。しかし、これら実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【0052】
実施例1:物質Pの処理によるヒト皮膚繊維芽細胞の細胞増殖効果
MTTアッセイ法を通じて物質P(substance P、SP)の細胞増殖効果を分析した。
具体的には、96個の穴がある平板培養プレート(96-well plate)に3x10
4CFU/mlのヒト皮膚繊維芽細胞(human dermal fibroblast cell)の懸濁液100μlを入れ、24時間培養した。FGM培地(fluid thioglycollate medium;繊維芽細胞基本培地(fibroblast basal medium)、hFGF−B、インスリン、ウシ胎児血清(fetal bovine serum、FBS)、ゲンタマイシン(gentamicin)、及びアンホテリシンB(amphotericin-B)を含む)を除去した後、新しいFGM培地180μlを各ウェルに分注した後、リン酸緩衝溶液(phosphate buffered saline、PBS)で希釈した物質Pを濃度別(0.1、1、5、10、50及び100μg/ml)で20μlずつ接種した。
【0053】
一方、陰性対照群として20μlのリン酸緩衝溶液を使用した。接種後、37℃で48時間培養した後、培地、物質P及び陰性対照群を除去し、リン酸緩衝溶液で3回繰り返して洗浄した。90μlのFGM培地に10μlのMTT溶液(0.5mg/ml)を混合した後、各ウェルに処理して37℃で4時間反応させた。
【0054】
最終的にリン酸緩衝溶液で洗浄した後、150μlのイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)溶液で10分間攪拌して570nmで吸光度を測定した。
【0055】
その結果、物質Pは0.1〜100μg/mlのすべての濃度群で、ヒト皮膚繊維芽細胞の細胞増加率が増加することを確認した。具体的には、すべての濃度群で細胞増殖率が170%以上であった。特に、物質Pの濃度が5μg/mlである場合、細胞増殖率が200%以上であって、他の濃度群に比べて優れた細胞増殖効果を示すことを確認し、陰性対照群に比べて約2.2倍以上の増殖率を示すことを確認した(
図1)。
【0056】
したがって、物質Pは、細胞毒性を示さず、優れた細胞増殖効果を示し、傷治癒用薬学組成物として使用可能であることを確認した。
【0057】
実施例2:物質Pを含む、傷治癒の改善用の新規剤形の製造
前記実施例1でヒト皮膚繊維芽細胞の細胞増殖効果を有することを確認した物質Pに抗酸化剤、界面活性剤及び増粘剤を追加した新規な剤形を製造した。物質Pはペプチド合成技術であるFmocケミストリー(Fmoc-chemistry)を用いたソリッド/ソリューションステップ(Solid/Solution phase)を介して合成し、高速液体クロマトグラフィーを通じて精製し、最終的に純度85%以上のものを使用した。新規な剤形の中で増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを含む剤形は、下記表1の成分及び含量と同様に製造した。
【0058】
【表1】
【0059】
また、新規な剤形の中で増粘剤としてヒドロキシエチルセルロースを含む剤形は、表2の成分及び含量と同様に製造した。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例3:皮膚傷のマウスモデルで新規剤形の傷治癒効果
実施例3−1:皮膚傷のマウスモデルの製造及び新規剤形の投与
物質Pを含む新規剤形(SP+CMC剤形及びSP+HEC剤形)の傷治癒効果を比較するために、全層傷ができた皮膚傷のマウスモデルを製造した。陽性対照群には、商用化されている傷の治療剤であるマデカソルケア軟膏(東国製薬)及びEGF新肌軟膏(大熊製薬)を使用した。
【0062】
具体的には、7週齢のBALB/cマウス雌(ドゥヨルバイオテック)を一週間適応させた後、ケタミン(Ketamine)とロムプン(rompun)の混合液を腹腔内に投与して麻酔させた後、電気シェーバー及び除毛クリーム(ヴィート)を使用して背中部分の毛を除去した。ポビジンと70%エタノールを使用して表皮を除去する部分を消毒し、マウスの脊髄を避け下部臀部部位の両側に5mmバイオプシーパンチを用いて全層の傷をつけた。傷がマウスの表皮筋肉によって自然にすぼむことを防止するために、手術用の糸を用いて外径15mm、内径8mmのシリコンリングを傷の周辺に付着させた。
【0063】
その後、傷に陰性対照群としてリン酸緩衝溶液を投与し、陽性対照群としてマデカソルケア及びEGF新肌軟膏を投与し、実験群としては5μg/ml濃度の物質P、新規剤形であるSP+CMC剤形とSP+HEC剤形を投与した。具体的には、物質P及び新規剤形を5日間、1日1回ずつ全層傷に30μlずつ投与した。
【0064】
実施例3−2:皮膚傷のマウスモデルで新規剤形の傷サイズ縮小効果
前記実施例3−1のように、皮膚傷のマウスモデルに新規剤形を投与した後、縮小する傷のサイズを評価して傷サイズ縮小効果を比較した。具体的には、縮小した傷のサイズは、新規剤形の投与後0日、及び6日にそれぞれの傷写真を通じて分析した傷の面積サイズで計算した。傷の面積のサイズは、フォトショップ(登録商標)を使用して、定量化した。
【0065】
傷のサイズを肉眼で確認した結果、物質Pに比べて新規剤形による傷サイズの縮小効果が優秀であることを確認した。具体的に、新規な剤形(SP+CMC、及びSP+HEC)の投与後6日が経過したときの傷サイズは物質P(SP)を投与した場合に比べてサイズが小さくなったことを肉眼で確認した(
図2a)。また、傷の面積のサイズを定量化した結果、すべての新規剤形の傷サイズの縮小効果が優れていることが分かった。具体的に、物質Pの投与時に傷の面積は約40%以上と示されたものに比べて、新規剤形の処理時の傷の面積が約20%で、2倍以上の傷サイズの縮小効果を示すことを確認した。
【0066】
特に、傷のサイズを定量化した結果、新規剤形の中でも増粘剤としてヒドロキシエチルセルロースを使用する剤型(SP+HEC)の投与時の傷の面積は20%以下で示されることを確認した(
図2b)。これにより、物質Pを含む新規剤形(SP+CMC及びSP+HEC)は、物質P単独に比べて傷のサイズを縮小させる効果に優れることを確認した。
【0067】
さらに、新規剤形と陽性対照群の傷サイズ縮小効果を定量化した結果、新規剤形の中でSP+CMCはマデカソル軟膏に比べて優れた傷サイズの縮小効果を示し、EGF軟膏とは同様の効果を示すことを確認した。一方、SP+HECは、すべての陽性対照群に比べて優れた縮小効果を示すことを確認した(
図2c)。
【0068】
これにより、新規剤形が商用化された傷治療剤に比べて傷のサイズを縮小させる効果に優れることを確認した。特に、新規剤形の中でもSP+HEC剤形がSP+CMC剤形に比べて優れた効果を示すことを確認した。
【0069】
実施例3−3:皮膚傷のマウスモデルで新規剤形の新生血管の増加効果
前記実施例3−1のように、皮膚傷のマウスモデルに新規剤形を投与した後、新生血管の増加効果を比較した。具体的に、増加された新生血管は新規剤形の投与6日後の傷の皮膚組織を生検して皮膚組織上の血管新生の生成程度を写真を通して肉眼で確認した。
【0070】
その結果、物質Pに比べて新規剤形による新生血管の増加効果に優れることを確認した。具体的には、物質Pを投与した場合、傷のサイズが無処理群と比較して大きな差はなく、新生血管の形成も不備であった。その反面、新規剤形を投与した場合、傷のサイズが縮小するとともに、傷の周囲に多数の新生血管が形成されたことを確認した。特にSP+CMC製剤及びSP+HEC剤形は、傷治療剤の商用製品であるマデカソルケア及びEGF新肌軟膏に比べて傷の縮小効果と新生血管の増加効果に優れることを確認した(
図3)。
【0071】
実施例3−4:皮膚傷のマウスモデルで新規剤形の真皮再生効果
前記実施例3−1のように、皮膚傷のマウスモデルに新規剤形を投与した後、減少する真皮間の距離(Dermal gap、DG)を測定し、真皮の再生効果を確認した。具体的には、新規剤形の投与後6日後の傷の皮膚組織を生検して、10%ホルマリンで固定した後、ヘマトキシリン&エオシン(H&E)染色を行った。染色した後、真皮組織間の距離を測定して傷組織の真皮再生程度を確認した。
【0072】
真皮組織間の距離を定量化したグラフ及び組織写真を分析した結果、物質Pを含むすべての投与群で真皮の再生程度が同様に示されることを確認した。特に、新規剤形の中でもSP+ HEC剤形の真皮再生程度が最も優れることを確認した(
図4a、及び4b)。
【0073】
実施例3−5:皮膚傷のマウスモデルで新規剤形の上皮再生効果
前記実施例3−1のように、皮膚傷のマウスモデルに新規剤形を投与した後、減少する上皮間距離(Epidermal gap、EG)を測定し、上皮再生効果を確認した。具体的には、新規剤形の投与後6日後の傷の皮膚組織を生検して、10%ホルマリンで固定した後、ヘマトキシリン&エオシン(H&E)染色を行った。染色した後、上皮組織間の距離を測定して傷組織の上皮再生の程度を確認した。
【0074】
上皮組織間の距離を定量化したグラフ及び組織写真を分析した結果、物質Pを含むすべての投与群で上皮組織間の距離が対照群に比べて減少したことを確認した。具体的には、物質Pの投与時、上皮組織間の距離が約60%程度減少し、傷治療剤の商用製品であるマデカソルケア及びEGF新肌軟膏の投与時、上皮組織間の距離が60%以下に減少することを確認した。その反面、新規剤形の投与時、上皮組織間の距離が30%以下に減少し、商用製品に比べて上皮再生の効果が2倍以上優れることを確認した。さらに、SP+HEC剤形がSP+CMC剤形に比べて上皮再生効果に優れることを確認した(
図5a、及び5b)。
【0075】
実施例3−6:皮膚の傷のマウスモデルで新規剤形の肉芽組織成熟効果
前記実施例3−1のように、皮膚傷のマウスモデルに新規剤形を投与した後、傷組織上の肉芽組織の成熟度を確認した。具体的には、新規剤形の投与後6日後の傷の皮膚組織を生検して、10%ホルマリンで固定した後、ヘマトキシリン&エオシン(H&E)染色を行った。染色した後、肉芽組織の成熟度を確認した。
【0076】
その結果、陰性対照群に比べて陽性対照群であるマデカソルケア軟膏、EGF新肌軟膏投与群及び実験群である物質P、及び新規剤形がより稠密な肉芽組織を生成したことを確認した。特にSP+HEC剤形の場合、真皮組織をなす繊維芽細胞が成熟して安定化した平らな形状を形成することを確認した。これにより、SP+HEC剤形が最も成熟した肉芽組織を形成しうることを確認した(
図6)。
【0077】
実施例3−7:皮膚傷のマウスモデルで新規剤形のコラーゲン増加効果
前記実施例3−1のように、皮膚傷のマウスモデルに新規剤形を投与した後、コラーゲンの増加の程度を確認した。具体的には、新規剤形の投与後6日後の傷の皮膚組織を生検して、10%ホルマリンで固定した後、マッソントリクローム(Massons Trichrome)染色を行った。染色した後、傷組織上のコラーゲンの増加の程度を確認した。
【0078】
その結果、新規剤形の投与時、染色程度が物質Pに比べて強く現れコラーゲン増加効果に優れることを確認した。特に、SP+CMC剤形及びSP+HEC剤形は、傷治療剤の商用製品であるマデカソルケア及びEGF新肌軟膏に比べて染色程度が強く現れ、コラーゲン増加効果に優れることを確認した。さらに、SP+CMC剤形に比べてSP+HEC剤形のコラーゲン増加効果に優れることを確認した(
図7)。
【0079】
したがって、物質Pを含む本発明の新規剤形は、物質P単独、及び商用製品であるマデカソルケアとEGF新肌軟膏に比べて傷の治療効果に優れることを確認した。特に、新規剤形の中でも物質Pとヒドロキシエチルセルロースを含む剤形の傷の治療効果が最も優秀であることを確認した。
【0080】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形で実施されることができることを理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解するべきである。本発明の範囲は、前記の詳細な説明ではなく、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。