【実施例】
【0025】
本発明の計測装置に係る実施例を図面に基づいて説明する。以下の実施例では、本発明の計測装置の一例として、レーザドップラー血流計を挙げる。本発明の流体の一例として、血液を挙げる。
【0026】
<第1実施例>
第1実施例に係るレーザドップラー血流計について、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0027】
(構成)
第1実施例に係るレーザドップラー血流計の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、第1実施例に係るレーザドップラー血流計の構成を示すブロック図である。
【0028】
図1において、レーザドップラー血流計100は、照射部10、光電流変換部21、電流電圧変換部22、流量検出部23及び制御部30を備えて構成されている。本発明に係る「第1照射部」の一具体例としての、照射部10は、レーザ駆動装置11と、例えばレーザダイオード等の光源12とを有する。制御部30は、流量判定部31と、レーザ駆動装置11に係る目標値を設定するレーザパワー目標値設定部32とを有する。
【0029】
照射部10の光源12から出射されたレーザ光は、例えば人等の生体である被検体に照射される。被検体に照射されたレーザ光は、被検体の生体組織により散乱される。例えばフォトダイオード等である光電流検出部21は、散乱されたレーザ光のうち後方散乱光を含む反射光を受光して、受光した反射光の光量に応じた電流信号を出力する。電流電圧変換部22は、光電流検出部21から出力された電流信号を電圧信号に変換し、光検出信号として出力する。
【0030】
流量検出部23は、光検出信号に基づいて、被検体の血液の流量を示す流体情報に係る流量検出信号を出力する。尚、光検出信号に基づく流量の求め方については、例えば光検出信号に対して高速フーリエ変換等の周波数解析を行うことにより得られる平均周波数や1次モーメントから流量を求める方法等、既存の各種方法を適用可能であるので、その詳細についての説明は省略する。
【0031】
流量判定部31の比較機311は、流体情報により示される流量と、本発明に係る「第1所定値」の一具体例としての、閾値とを比較して比較結果を出力する。ここで、閾値は、固定値であってもよいし、可変値であってもよい。レーザパワー目標値設定部32は、比較機311からの比較結果に応じて、レーザ駆動装置11に係る目標値を設定する。
【0032】
具体的には、レーザパワー目標値設定部32は、流量が閾値より大きいという比較結果である場合、流量が比較的多い(言い換えれば、流速が比較的早い)ときに適切に流量を計測可能なパワーを示す値を、目標値として設定する。他方、レーザパワー目標値設定部32は、流量が閾値以下であるという比較結果である場合、レーザ光の現在のパワーよりも低いパワーを示す値を目標値として設定する。ここで、「現在のパワーよりも低いパワーを示す値」には、ゼロ(即ち、光源12の消灯)が含まれてよい。
【0033】
(制御処理)
制御部30による照射部10の制御処理について、
図2のフローチャートを参照して説明を加える。
【0034】
図2において、先ず、制御部30は、流量検出部23から出力された流量検出信号に基づいて、流量を取得する(ステップS101)。次に、制御部30は、流量が閾値以下であるか否かを判定する(上述した比較機311における流量と閾値との比較に相当)(ステップS102)。
【0035】
ステップS102の判定において、流量が閾値より大きいと判定された場合(ステップS102:No)、
図2に示す処理は終了される(この場合、現在のパワーでのレーザ光の照射が継続される)。その後、制御部30は、所定時間経過後に再びステップS101の処理を行う。従って、
図2に示す処理は、所定時間に応じた周期で繰り返し実行される。
【0036】
他方、ステップS102の判定において、流量が閾値以下であると判定された場合(ステップS102:Yes)、制御部30のレーザパワー目標値設定部32は、新たな目標値を設定して、レーザ光のパワーを低減する又はレーザ光の照射を停止させる(ステップS103)。尚、レーザ光のパワーが低減された又はレーザ光の照射が停止された場合、制御部30は、例えば画像表示部(図示せず)に警告を出す等して流量が低下したことをユーザーに知らせるように構成されることが望ましい。このように構成すれば、測定対象が、例えば人工透析機器の体外循環血液回路を構成するチューブ内を流れる血液である場合、流量回復措置やシステムのリスタート等を促すことができる。
【0037】
本実施例に係るレーザドップラー血流計100によれば、被検体の血液の流量が閾値以下となった場合に、レーザ光のパワーが低減される又はレーザ光の照射が停止される。このため、何らかの原因により血液の流量が低下した場合に、被検体の血液に想定以上のエネルギーがレーザ光により付与されることを防止することができる。他方で、被検体の血液の流量が閾値より大きい場合は、比較的強いパワーのレーザ光が照射されるので、血液の流量が比較的大きい場合であっても、適切に流量を計測することができる。
【0038】
尚、本実施例では、光検出信号に基づいて血液の流量が求められるが、流量に代えて又は加えて血液の流速が求められてよい。この場合、レーザパワー目標値設定部32は、比較機311による血液の流速と閾値との比較結果に応じて目標値を設定してよい。
【0039】
実施例に係る「光電流検出部21」は、本発明に係る「第1受光部」の一例である。実施例に係る「流量検出部23」は、本発明に係る「取得部」の一例である。実施例に係る「制御部30」は、本発明に係る「制御部」の一例である。
【0040】
(第1変形例)
流量判定部31は、多段の比較機により構成されてよい。この場合、多段の比較機に入力される閾値を互いに異ならせれば、レーザ光のパワーを血液の流量に応じて比較的柔軟に設定することができる。
【0041】
或いは、レーザパワー目標値設定部32が、流量判定部31の機能を兼ねるように構成されてよい。この場合、レーザパワー目標値設定部32のメモリ(図示せず)に、例えば
図3に示すような流量とパワーとの関係を規定するマップを予め格納すれば、レーザ光のパワーを血液の流量に応じて比較的柔軟に設定することができる。
【0042】
(第2変形例)
流量検出部23は、光検出信号に基づく平均周波数及び1次モーメント各々から血液の流量を求めるように構成されてよい。この場合、流量検出部23は、1次モーメントから求めた流量が、本発明に係る「第2所定値」の一具体例としての、所定値より小さいときには、該1次モーメントから求めた流量を示す流体情報に係る流量検出信号を出力する。他方、流量検出部23は、1次モーメントから求めた流量が、所定値より大きいときには、平均周波数から求めた流量を示す流体情報に係る流量検出信号を出力する。
【0043】
これは、流体の流量が比較的大きい(流速が速い)場合には、一次モーメントを利用するよりも、平均周波数を利用して流量又は流速を求めた方が精度が高く、流体の流量が比較的小さい(流速が遅い)場合には、平均周波数を利用して流量又は流速を求めるよりも、一次モーメントを利用して流量又は流速を求めた方が精度が高いという実験結果が得られているためである。
【0044】
(第3変形例)
上述の第1実施例では、流量が閾値以下であると判定された場合(ステップS102:Yes)には、制御部30のレーザパワー目標値設定部32は、新たな目標値を設定して、レーザ光のパワーを低減する又はレーザ光の照射を停止させる(ステップS103)こととした。これに代えて、制御部は、流量が閾値以下であると判定された場合には、間歇的にレーザ光を発光させるように制御するようにしてもよい。
【0045】
<第2実施例>
レーザドップラー血流計に係る第2実施例について
図4を参照して説明する。第2実施例では、照射部及び制御部の構成の一部が異なる以外は、上述した第1実施例と同様である。よって、第2実施例について、第1実施例と重複する説明を適宜省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ
図4を参照して説明する。
図4は、第2実施例に係るレーザドップラー血流計の構成を示すブロック図である。
【0046】
(構成)
図4において、レーザドップラー血流計200の照射部10aは、光源12から出射されたレーザ光を低減可能な減光素子13と、該減光素子13を駆動する減光素子駆動装置14とを有する。ここで、「レーザ光の低減」は、レーザ光の遮断も含む概念である。減光素子13には、例えば、液晶素子(液晶シャッタ)や機械的なシャッタを適用可能である。制御部30aは、減光素子13によるレーザ光の低減の程度を示す目標値を設定する減光素子目標値設定部33を有する。
【0047】
減光素子目標値設定部33は、比較機311からの比較結果に応じて、減光素子13に係る目標値を設定する。具体的には、減光素子目標値設定部33は、流量が閾値より大きいという比較結果である場合、レーザ光の現在の透過量(通過量)が維持される値を目標値として設定する。他方、減光素子目標値設定部33は、流量が閾値以下であるという比較結果である場合、レーザ光の現在の透過量(通過量)よりも低い透過量(通過量)を示す値を目標値として設定する。
【0048】
尚、本実施例では、レーザパワー目標値設定部32により設定される目標値は、典型的には、一定である(即ち、光源12から出射されるレーザ光のパワーは、典型的には、一定である)。
【0049】
本実施例に係るレーザドップラー血流計200によれば、被検体の血液の流量が閾値以下となった場合に、減光素子13により照射部10aから出射されるレーザ光が低減又は遮断される。このため、何らかの原因により血液の流量が低下した場合に、被検体の血液に想定以上のエネルギーがレーザ光により付与されることを防止することができる。他方で、被検体の血液の流量が閾値より大きい場合は、比較的強いパワーのレーザ光が照射されるので、血液の流量が比較的大きい場合であっても、適切に流量を計測することができる。
【0050】
尚、本実施例においても、上述した第1実施例に係る第1及び第2変形例と同様の構成を採ることができる。
【0051】
<第3実施例>
レーザドップラー血流計に係る第3実施例について
図5を参照して説明する。第3実施例では、照射部の構成の一部が異なること、被検体により散乱されたレーザ光の光量を計測する構成が追加されたこと以外は、上述した第1実施例と同様である。よって、第3実施例について、第1実施例と重複する説明を適宜省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ
図5を参照して説明する。
図5は、第3実施例に係るレーザドップラー血流計の構成を示すブロック図である。
【0052】
尚、被検体により散乱されたレーザ光は、例えば、前方散乱光を含む透過光又は後方散乱光を含む反射光等を意味する。
【0053】
(構成)
図5において、レーザドップラー血流計300は、照射部10b、光電流変換部21及び24、電流電圧変換部22及び25、流量検出部23、散乱光量検出部26並びに制御部30を備えて構成されている。
【0054】
照射部10bは、主に血液の流量を計測するためのレーザ光を出射する光源12と、該光源12を駆動するレーザ駆動装置11と、主に血液の透過率を計測するためのレーザ光を出射する光源16と、該光源16を駆動するレーザ駆動装置15とを有する。
【0055】
光電流検出部24は、光源16から出射されたレーザ光のうち被検体において散乱された散乱光を含む光を受光して、受光した光の光量に応じた電流信号を出力する。電流電圧変換部25は、光電流検出部24から出力された電流信号を電圧信号に変換し、光検出信号(
図5の“光検出信号2”参照)として出力する。散乱光量検出部26は、電流電圧変換部25から出力された光検出信号に基づいて、血液による散乱光量(言い換えれば、散乱光の強度)を示す散乱光量検出信号を出力する。尚、光検出信号に基づく散乱光量の求め方については、既存の各種方法を適用可能であるので、その詳細についての説明は省略する。
【0056】
散乱光検出信号は、例えば、図示しない濃度検出部に入力される。当該濃度検出部は、散乱光検出信号から、血液の濃度(ヘマトクリット値等)を検出(推定)する。
【0057】
レーザパワー目標値設定部32は、流量が閾値より大きいという比較結果である場合、流量が比較的多い(言い換えれば、流速が比較的早い)ときに適切に流量を計測可能なパワーを示す値を、レーザ駆動装置11に係る目標値として設定する。他方、レーザパワー目標値設定部32は、流量が閾値以下であるという比較結果である場合、レーザ光の現在のパワーよりも低いパワーを示す値を、レーザ駆動装置11に係る目標値として設定する。
【0058】
レーザパワー目標値設定部32は、比較機311における比較結果にかかわらず、レーザ駆動装置15に係る目標値は維持する。ここで、散乱光量検出信号を用いて血液の濃度を計測する場合、光源16から出射されるレーザ光のパワーが、流量又は流速を計測するために光源12から出射されるレーザ光のパワーに比べて著しく弱くても(例えば10分の1)、血液の濃度を精度良く計測することが可能である。このため、当該レーザドップラー血流計300では、光源16から出射されるレーザ光のパワーは、流量が閾値より大きい場合に光源12から出射されるレーザ光のパワーに比べて著しく低く設定されている。従って、流量が閾値以下である場合に、光源16から出射されるレーザ光の被検体への照射が継続されたとしても、問題はないと考えられる。
【0059】
本実施例に係るレーザドップラー血流計300によれば、被検体の血液の流量が閾値以下となった場合に、光源12から出射されるレーザ光のパワーが低減される又はレーザ光の照射が停止される。このため、何らかの原因により血液の流量が低下した場合に、被検体の血液に想定以上のエネルギーがレーザ光により付与されることを防止することができる。他方で、被検体の血液の流量が閾値より大きい場合は、比較的強いパワーのレーザ光が光源12から出射され被検体に照射されるので、血液の流量が比較的大きい場合であっても、適切に流量を計測することができる。
【0060】
本実施例では特に、光源16から出射されるレーザ光の被検体への照射は、血液の流量にかかわらず維持される。このため、レーザドップラー血流計300によれば、血液の透過率の計測を維持しつつ、血液の流量に応じて光源12から出射されるレーザ光のパワーを変更することができる。
【0061】
尚、本実施例においても、上述した第1実施例に係る第1及び第2変形例と同様の構成を採ることができる。
【0062】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う計測装置及び方法、コンピュータプログラム並びに方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。