(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ベースと、TFT層及びOLED層を含む機能層領域と、前記ベースと前記機能層領域との間に位置して前記機能層領域を支持するフレキシブルフィルムと、前記フレキシブルフィルムと前記ベースとの間に位置して前記ベースに固着しているリリース層とを備える積層構造体を用意する工程、及び
前記ベースを透過する紫外レーザ光で前記リリース層を照射して前記リリース層から前記フレキシブルフィルムを剥離する工程と、
を含み、
前記リリース層はアルミニウム及びシリコンの合金から形成されている、フレキシブルOLEDデバイスの製造方法。
前記リリース層から前記フレキシブルフィルムを剥離した後、前記ベースから前記リリース層を除去して回収する工程を含む、請求項1から7のいずれかに記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ガラスベースからフレキシブル基板を剥離するレーザリフトオフ(Laser Lift Off: LLO)を行うため、ガラスベースとフレキシブル基板との間にリリース層を設ける場合と設けない場合とがある。
【0024】
リリース層を設けない場合、製造コストは低減されるが、剥離の歩留りが低下する。より詳細には、剥離のためのレーザ光(剥離光)を照射したときにアッシュと呼ばれる非常に除去しにくいスス状の残留物がガラスベース及びフレキシブル基板の双方の表面に形成されるという問題がある。このことは、レーザリフトオフ工程後にフレキシブル基板に貼り付けられる支持フィルムなどの密着力を低下させ、また、ガラスベースの再利用を妨げる。また、適切に剥離できるレーザ光の照射条件範囲が狭いという問題がある。これに対して、リリース層を設けた場合は、アッシュの生成が低減され、また、レーザ光照射条件範囲も比較的広くなるので、剥離歩留りが向上する。リリース層は、典型的には、アモルファスシリコンから形成されるが、高融点金属(Mo、Cr、W、Ti等)からも形成され得る。
【0025】
従来、フレキシブル基板は、ポリイミドに代表される樹脂材料から形成されてきた。このような樹脂材料は紫外線を吸収するため、剥離光照射がTFT素子及びOLED素子に及ぼす影響は特に検討する必要がないと考えられてきた。しかしながら、本発明者の検討によると、フレキシブル基板の厚さが5μm〜15μm程度と非常に薄くなると、紫外線を十分に吸収しないことがあり、剥離工程で使用する紫外線レーザ光がTFT素子及びOLED素子を劣化させる可能性のあることがわかった。この問題は、アモルファスシリコンから形成されたリリース層を設けた場合でも発生した。アモルファスシリコンは紫外線を透過し得るからである。しかし、高融点金属からリリース層を形成した場合、高融点金属は紫外線を吸収、もしくは反射して透過しないため、剥離光照射がTFT素子及びOLED素子に及ぼす影響を阻止できる。しかしながら、高融点金属を用いてリリース層を形成することは、製造コストの著しい増加を招く。
【0026】
リリース層の材料としてアモルファスシリコンまたは高融点金属が用いられる理由は、その高い融点にある。すなわち、剥離光照射による発熱によってリリース層が溶融されないようにするため、リリース層は、高融点材料から形成するべきであると考えられてきた。
【0027】
しかしながら、本発明者の検討によれば、融点が低いアルミニウムとシリコンの合金からリリース層を形成した場合でも、剥離光照射によってリリース層が溶融しないことがわかった。これは、主成分であるアルミニウムの比熱・溶融潜熱が大きく、熱伝導に優れているためである。その結果、剥離光照射によってリリース層が局所的に加熱されても、発生した熱が速やかに周囲に伝導し、リリース層の破壊を避けることができる。後述するように、アルミニウムとシリコンの合金は、シリコンの存在によって線膨張係数が純アルミニウムよりも低下するという特徴を有している。一般に金属の線膨張係数はガラスの線膨張係数よりも大きい。特にアルミニウムは高融点金属であるモリブデンなどに比べて線膨張係数が大きい。リリース層とガラスベースとの間で熱膨張係数の差が大きすぎると、内部応力または歪に起因してリリース層の一部がガラスベースから剥離してしまうという問題が生じ得る。アルミニウムとシリコンの合金の熱膨張係数は、シリコン含有比率に応じて広い範囲で調整され得る。また、アルミニウム合金の堆積条件を調整することにより、堆積された膜の内部応力を高融点金属膜の内部応力(例えば400GPa)に比べて大幅に低減することができる。このため、アルミニウムとシリコンの合金を用いることにより、リリース層の剥離という問題を解決することができる。更に、高融点金属よりも安価なアルミニウムとシリコンの合金をリリース層として使用できることは、様々な利点をもたらす。例えば、高融点金属材料はリサイクルが困難であり、リリース層が付着したガラスベースごと、産業廃棄物として埋め立て廃棄する必要がある。これに対して、アルミニウムとシリコンの合金は酸などの薬液により容易に溶解・除去することができるため、リサイクル性が向上する。従って、リリース層を用いたとしても、製造コストを全体として低減することが可能になる。
【0028】
以下、図面を参照しながら、本開示によるフレキシブルOLEDデバイスの製造方法及び製造装置の実施形態を説明する。以下の説明において、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。本発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面及び以下の説明を提供する。これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図しない。
【0029】
<積層構造体>
図1A及び
図1Bを参照する。本実施形態におけるフレキシブルOLEDデバイスの製造方法では、まず、
図1A及び
図1Bに例示される積層構造体100を用意する。
図1Aは、積層構造体100の平面図であり、
図1Bは、
図1Aに示される積層構造体100のB−B線断面図である。
図1A及び
図1Bには、参考のため、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸を有するXYZ座標系が示されている。
【0030】
本実施形態における積層構造体100は、ベース(マザー基板またはキャリア)10と、TFT層20A及びOLED層20Bを含む機能層領域20と、ベース10と機能層領域20との間に位置して機能層領域20を支持するフレキシブルフィルム30と、フレキシブルフィルム30とベース10との間に位置してベース10に固着しているリリース層12とを備えている。リリース層12はアルミニウム及びシリコンの合金から形成されている。この積層構造体100は、更に、複数の機能層領域20を覆う保護シート50と、複数の機能層領域20と保護シート50との間において、機能層領域20の全体を覆うガスバリア膜40とを備えている。積層構造体100は、バッファ層などの図示されていない他の層を有していてもよい。
【0031】
ベース10の典型例は、剛性を有するガラスベースである。フレキシブルフィルム30の典型例は、可撓性を有する合成樹脂フィルムである。以下、「フレキシブルフィルム」を単に「樹脂膜」と称する。リリース層12と、リリース層12を支持しているベース10とを含む構造物を、全体として、フレキシブルOLEDデバイスの「支持基板」と称する。支持基板は、リリース層12を覆う他の膜(例えばフレキシブルフィルム)を更に備えていてもよい。
【0032】
本実施形態における積層構造体100の第1の表面100aはベース10によって規定され、第2の表面100bは保護シート50によって規定されている。ベース10及び保護シート50は、製造工程中に一時的に用いられる部材であり、最終的なフレキシブルOLEDデバイスを構成する要素ではない。
【0033】
図示されている樹脂膜30は、複数の機能層領域20をそれぞれ支持している複数のフレキシブル基板領域30dと、個々のフレキシブル基板領域30dを囲む中間領域30iとを含む。フレキシブル基板領域30dと中間領域30iは、連続した1枚の樹脂膜30の異なる部分にすぎず、物理的に区別される必要はない。言い換えると、樹脂膜30のうち、各機能層領域20の真下に位置している部分がフレキシブル基板領域30dであり、その他の部分が中間領域30iである。
【0034】
複数の機能層領域20のそれぞれは、最終的にフレキシブルOLEDデバイスのパネルを構成する。言い換えると、積層構造体100は、分割前の複数のフレキシブルOLEDデバイスを1枚のベース10が支持している構造を有している。各機能層領域20は、例えば厚さ(Z軸方向サイズ)が数十μm、長さ(X軸方向サイズ)が12cm程度、幅(Y軸方向サイズ)が7cm程度のサイズを持つ形状を有している。これらのサイズは、必要な表示画面の大きさに応じて任意の大きさに設定され得る。各機能層領域20のXY平面内における形状は、図示されている例において、長方形であるが、これに限定されない。各機能層領域20のXY平面内における形状は、正方形、多角形、または、輪郭に曲線を含む形状を有していてもよい。
【0035】
図1Aに示されるように、フレキシブル基板領域30dは、フレキシブルOLEDデバイスの配置に対応して、行及び列状に、二次元的に配列されている。中間領域30iは、直交する複数のストライプから構成され、格子パターンを形成している。ストライプの幅は、例えば1〜4mm程度である。樹脂膜30のフレキシブル基板領域30dは、最終製品の形態において、個々のフレキシブルOLEDデバイスの「フレキシブル基板」として機能する。これに対して、樹脂膜30の中間領域30iは、最終製品を構成する要素ではない。
【0036】
本開示の実施形態において、積層構造体100の構成は、図示されている例に限定されない。1枚のベース10に支持されている機能層領域20の個数(OLEDデバイスの個数)は、複数である必要はなく、単数であってもよい。機能層領域20が単数である場合、樹脂膜30の中間領域30iは、1個の機能層領域20の周りを囲む単純なフレームパターンを形成する。
【0037】
なお、各図面に記載されている各要素のサイズまたは比率は、わかりやすさの観点から決定されており、実際のサイズまたは比率を必ずしも反映していない。
【0038】
支持基板
図2A及び
図2Bを参照して、本開示の実施形態における支持基板の製造方法を説明する。
図2A及び
図2Bは、本開示の実施形態における支持基板200の製造方法を示す工程断面図である。
【0039】
まず、
図2Aに示すように、ベース10を用意する。ベース10は、プロセス用のキャリア基板であり、その厚さは、例えば0.3〜0.7mm程度であり得る。ベース10は、典型的にはガラスから形成される。ベース10は、後の工程で照射する剥離光を透過することが求められる。
【0040】
次に、
図2Bに示すように、ベース10上にリリース層12を形成する。リリース層12は、アルミニウム及びシリコンの合金から形成されている。合金に含まれるシリコンの重量比率は、4%以上20%以下である。このような重量比率でシリコンを含有することにより、リリース層12の線膨張係数は、純アルミニウムの線膨張係数(23.6ppm/K)よりも低下する。また、前述したように、アルミニウム合金のシリコン含有率及び堆積条件を調整することにより、リリース層12の内部応力の絶対値を10MPa以下に低減しつつ、リリース層12の線膨張係数を樹脂膜30の線膨張係数の30%以上500%以下の範囲に入れることができる。合金に含まれるシリコンの重量比率が10%以上15%以下である場合、更にアルミニウム及びシリコンの合金の中で最も線膨張係数が小さくなり、また、耐熱性、耐摩耗性に優れている。このため、リリース層12を形成したベース10の再利用がしやすくなるという利点がある。樹脂膜30とリリース層12との界面には、紫外線レーザを吸収して発熱したリリース層12によって熱歪が発生し得る。樹脂膜30とリリース層12との間で線膨張係数の値に大きな差異(例えば10倍以上の差異)があると、樹脂膜30に大きな歪が発生してしまい、樹脂膜30と機能層領域20との間に挿入された下層バリア膜にクラックを発生させる可能性もある。この観点からすると、リリース12の線膨張係数は、ベース10の線膨張係数に近ければよいというわけではない。アルミニウムとシリコンの合金は、樹脂膜30及びベース10の両方に対して適切な範囲の線膨張係数を有していると言える。
【0041】
本実施形態では、TFT層20A、樹脂膜30、リリース層12、及びベース10の線膨張係数(室温)は、それぞれ、例えば、2〜5ppm/K、数十ppm/K、19〜23ppm/K、及び3〜5ppm/Kである。また、TFT層20Aと樹脂膜30との間に後述する下層ガスバリア膜を設ける場合、下層ガスバリア膜の線膨張係数は、例えば、2〜5ppm/K程度である。なお、樹脂膜30の材料である透明ポリイミドの線膨張係数は、約25ppm/Kであり、ポリエチレンテレフタレート(PET)の線膨張係数は、約60ppm/Kである。本発明者の検討によると、リリース層の線膨張係数は、ベース10の線膨張係数と樹脂膜30の線膨張係数との間、もしくはベース10の線膨張係数以上樹脂膜30の線膨張係数の5倍以下(例えば15〜23ppm/K、より具体的な例では15〜20ppm/K)にあることが望ましい。
【0042】
リリース層12の厚さは、100nm以上5000nm以下であり得る。リリース層12の形成方法の典型例はスパッタ法であるが、リリース層12はめっき法によって形成され得る。めっき法を用いると、μmオーダの厚さを有するリリース層12を実現できる。また、リリース層12を構成している合金の主成分はアルミニウムであるため、合金の熱伝導率は十分に高く、数μm程度の厚膜であっても、剥離を行うことが可能になる。
【0043】
スパッタ法を用いてリリース層12を形成する場合、シリコンを含有するアルミニウムターゲットをスパッタすることによってベース10上に合金を堆積する。
【0044】
なお、後述するレーザリフトオフ工程によってリリース層12から樹脂膜30を剥離した後、ベース10からリリース層12を除去して回収する工程を行ってもよい。
【0045】
なお、リリース層12に使用するアルミニウム合金の主成分は、融点が低いアルミニウムである。この材料は比熱・溶融潜熱が大きく熱伝導が良いため、局所加熱が生じにくい。言い換えると、アルミニウム合金は、高融点金属に比べて融点が低い材料であるにもかかわらず、リリース層12に剥離光を照射した際にリリース層12の溶融が発生しない。更に、剥離光の照射によって発熱するとき、剥離光強度の空間的分布に非一様性が生じても、熱が周囲に伝導しやすいために、剥離不良は生じにくい。より具体的には、ベース10の裏面にダストが付着したり、傷が形成されたりしている場合、ベース10の裏面からリリース層12に剥離光を入射させると、ダストの影または傷によって生じる回折・反射などにより、リリース層12上における剥離光強度に局所的な低下が生じる可能性がある。光化学反応による発熱を利用して樹脂膜30の剥離を行うとき、このような剥離光強度の局所的な不足が生じると、その位置で剥離が実現せず、剥離不良の問題が発生する。しかし、本実施形態におけるリリース層12は、剥離光を吸収して発熱及び伝熱を行うため、剥離光強度の局所的な不足による上記の問題が回避され得る。
【0046】
以下、積層構造体100の構成及び製造方法をより詳しく説明する。
【0047】
まず、
図3Aを参照する。
図3Aは、表面に樹脂膜30が形成された支持基板200を示す断面図である。
【0048】
本実施形態における樹脂膜30は、例えば厚さ5μm以上20μm以下、例えば10μm程度のポリイミド膜である。ポリイミド膜は、前駆体であるポリアミド酸またはポリイミド溶液から形成され得る。ポリアミド酸の膜を支持基板200におけるリリース層12の表面に形成した後に熱イミド化を行ってもよいし、ポリイミドを溶融または有機溶媒に溶解したポリイミド溶液からリリース層12の表面に膜を形成してもよい。ポリイミド溶液は、公知のポリイミドを任意の有機溶媒に溶解して得ることができる。ポリイミド溶液をベース10の表面に塗布した後、乾燥することによってポリイミド膜が形成され得る。
【0049】
ポリイミド膜は、ボトムエミッション型のフレキシブルディスプレイの場合、可視光領域の全体で高い透過率を実現することが好ましい。ポリイミド膜の透明度は、例えばJIS K7105−1981に従った全光線透過率によって表現され得る。全光線透過率は80%以上、または85%以上に設定され得る。一方、トップエミッション型のフレキシブルディスプレイの場合には透過率の影響は受けない。
【0050】
樹脂膜30は、ポリイミド以外の合成樹脂から形成された膜であってもよい。ただし、本開示の実施形態では、薄膜トランジスタを形成する工程において、例えば350℃以上の熱処理を行うため、この熱処理によって劣化しない材料から樹脂膜30は形成される。
【0051】
樹脂膜30は、複数の合成樹脂膜の積層体であってもよい。本実施形態のある態様では、フレキシブルディスプレイの構造物をベース10から剥離するとき、ベース10を透過する紫外線レーザ光(波長:300〜360nm)を樹脂膜30に照射するLLOが行われる。レーザ光を吸収して発熱するリリース層12がベース10と樹脂膜30との間に配置されているため、紫外線レーザ光の照射により、リリース層12と樹脂膜30の界面で樹脂膜30の一部(層状部分)が気化して樹脂膜30を、リリース層12、すなわち支持基板200から容易に剥離することができる。リリース層12があると、アッシュの生成が抑制されるという効果も得られる。
【0052】
本開示の実施形態におけるリリース層12はアルミニウムを主成分とする金属の性質を有するため、リリース層12の紫外線レーザ光に対する透過率は極めて低い。このため、リフトオフ工程でリリース層12は紫外線遮蔽層として機能する。その結果、紫外線レーザ光がベース10から機能層領域20に入射してTFT層20A及びOLED層20Bの特性を劣化させることが回避または抑制される。
【0053】
一般に、透明度の高い樹脂膜30であっても、紫外線はほとんど吸収されると考えられてきた。しかしながら、フレキシブルOLEDデバイスに使用される樹脂膜30は極めて薄い層であるため、金属材料から形成されたリリース層12が存在しないと、機能層領域20にまで紫外線レーザ光が入射する。紫外線レーザ光は、TFT層20A及びOLED層20Bの特性だけではなく、封止構造を構成する有機膜及び無機膜の封止性能を劣化させる可能性もある。更には、現在、広く利用されている樹脂膜30は黄褐色または茶褐色のポリイミド材料から形成されているため、紫外線レーザ光の透過が機能層領域の特性劣化を引き起こし得るとは認識されていない。このような透明度の低いポリイミド材料は、紫外線レーザ光を強く吸収するからである。しかしながら、本発明者の検討によると、透明度の低い樹脂膜30であっても、その厚さが例えば5〜20μm程度しかなければ、紫外線レーザ光は機能層領域20にまで達し得ることがわかった。したがって、本開示の実施形態に係る方法は、透明度が高くて紫外線を透過しやすい材料から形成された樹脂膜(フレキシブル基板)を備えるOLEDデバイスだけではなく、透明度が低くて薄い樹脂膜30(厚さ:5〜20μm程度)を備えるOLEDデバイスの製造に好適に用いられる。
【0054】
なお、紫外線を透過する透明度の高いポリイミド及びPETは、透明度の低いポリイミドに比べて耐熱性が低い。しかしながら、本発明者の検討によると、アルミニウム及びシリコンからなる合金から形成されたリリース層12は、前述したとおり、比熱・溶融潜熱が大きく熱伝導が良いために紫外線照射による発熱がリリース層12を介して速やかに伝熱し、透明度の高いポリイミド及びPETなどの耐熱性が低い樹脂膜であってもダメージを与えることなく、良好に剥離できることがわかった。言い換えると、リリース層12は高融点金属から形成されている必要はなく、アルミニウムを主成分とするような非高融点金属材料から形成されていても、LLOが可能であることがわかった。
【0055】
リリース層12を形成することは、製造コストの上昇を招き得るが、高融点金属と異なり、アルミニウム合金は薬液により容易に溶解させることができるため、回収及びリサイクルが可能である。このため、リリース層を採用しても製造コストの増加は低く抑えることができる。
【0056】
<研磨処理>
樹脂膜30の表面30x上にパーティクルまたは凸部などの研磨対象(ターゲット)が存在する場合、研磨装置によってターゲットを研磨し平坦化してもよい。パーティクルなどの異物の検出は、例えばイメージセンサによって取得した画像を処理することによって可能である。研磨処理後、樹脂膜30の表面30xに対する平坦化処理を行ってもよい。平坦化処理は、平坦性を向上させる膜(平坦化膜)を樹脂膜30の表面30xに形成する工程を含む。平坦化膜は樹脂から形成されている必要はない。
【0057】
<下層ガスバリア膜>
次に、樹脂膜30上にガスバリア膜(不図示)を形成してもよい。ガスバリア膜は、種々の構造を有し得る。ガスバリア膜の例は、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜などの膜である。ガスバリア膜の他の例は、有機材料層及び無機材料層が積層された多層膜であり得る。このガスバリア膜は、機能層領域20を覆う後述のガスバリア膜から区別するため、「下層ガスバリア膜」と呼んでもよい。また、機能層領域20を覆うガスバリア膜は、「上層ガスバリア膜」と呼ぶことができる。下層ガスバリア膜は、例えばSi
3N
4から形成され得る。Si
3N
4の線膨張係数は約3ppm/Kである。本開示のある実施形態によれば、リリース層12の熱膨張係数がベース10の線膨張係数と樹脂膜30の線膨張係数との間にあるため、Si
3N
4から形成された下層ガスバリア層にクラックが生じる問題を回避できる。
【0058】
<機能層領域>
次に、TFT層20A及びOLED層20Bなどを含む機能層領域20、ならびに上層ガスバリア膜40を形成する工程を説明する。
【0059】
まず、
図3Bに示されるように、複数の機能層領域20をベース10上に形成する。ベース10と機能層領域20との間には、ベース10に固着しているリリース層12及び樹脂膜30が位置している。
【0060】
機能層領域20は、より詳細には、下層に位置するTFT層20Aと、上層に位置するOLED層20Bとを含んでいる。TFT層20A及びOLED層20Bは、公知の方法によって順次形成される。TFT層20Aは、アクティブマトリクスを実現するTFTアレイの回路を含む。OLED層20Bは、各々が独立して駆動され得るOLED素子のアレイを含む。TFT層20Aの厚さは例えば4μmであり、OLED層20Bの厚さは例えば1μmである。
【0061】
図4は、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイにおけるサブ画素の基本的な等価回路図である。ディスプレイの1個の画素は、例えばR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)などの異なる色のサブ画素によって構成され得る。
図4に示される例は、選択用TFT素子Tr1、駆動用TFT素子Tr2、保持容量CH、及びOLED素子ELを有している。選択用TFT素子Tr1は、データラインDLと選択ラインSLとに接続されている。データラインDLは、表示されるべき映像を規定するデータ信号を運ぶ配線である。データラインDLは選択用TFT素子Tr1を介して駆動用TFT素子Tr2のゲートに電気的に接続される。選択ラインSLは、選択用TFT素子Tr1のオン/オフを制御する信号を運ぶ配線である。駆動用TFT素子Tr2は、パワーラインPLとOLED素子ELとの間の導通状態を制御する。駆動用TFT素子Tr2がオンすれば、OLED素子ELを介してパワーラインPLから接地ラインGLに電流が流れる。この電流がOLED素子ELを発光させる。選択用TFT素子Tr1がオフしても、保持容量CHにより、駆動用TFT素子Tr2のオン状態は維持される。
【0062】
TFT層20Aは、選択用TFT素子Tr1、駆動用TFT素子Tr2、データラインDL、及び選択ラインSLなどを含む。OLED層20BはOLED素子ELを含む。OLED層20Bが形成される前、TFT層20Aの上面は、TFTアレイ及び各種配線を覆う層間絶縁膜によって平坦化されている。OLED層20Bを支持し、OLED層20Bのアクティブマトリクス駆動を実現する構造体は、「バックプレーン」と称される。
【0063】
図4に示される回路要素及び配線の一部は、TFT層20A及びOLED層20Bのいずれかに含まれ得る。また、
図4に示されている配線は、不図示のドライバ回路に接続される。
【0064】
本開示の実施形態において、TFT層20A及びOLED層20Bの具体的な構成は多様であり得る。これらの構成は、本開示の内容を制限しない。TFT層20Aに含まれるTFT素子の構成は、ボトムゲート型であってもよいし、トップゲート型であってもよい。また、OLED層20Bに含まれるOLED素子の発光は、ボトムエミション型であってもよいし、トップエミション型であってもよい。OLED素子の具体的構成も任意である。
【0065】
TFT素子を構成する半導体層の材料は、例えば、結晶質のシリコン、非晶質のシリコン、酸化物半導体を含む。本開示の実施形態では、TFT素子の性能を高めるために、TFT層20Aを形成する工程の一部が350℃以上の熱処理工程を含む。
【0066】
<上層ガスバリア膜>
上記の機能層領域20を形成した後、
図3Cに示されるように、機能層領域20の全体をガスバリア膜(上層ガスバリア膜)40によって覆う。上層ガスバリア膜40の典型例は、無機材料層と有機材料層とが積層された多層膜である。なお、上層ガスバリア膜40と機能層領域20との間、または上層ガスバリア膜40の更に上層に、粘着膜、タッチスクリーンを構成する他の機能層、偏光膜などの要素が配置されていてもよい。上層ガスバリア膜40の形成は、薄膜封止(Thin Film Encapsulation:TFE)技術によって行うことができる。封止信頼性の観点から、薄膜封止構造のWVTR(Water Vapor Transmission Rate)は、典型的には1×10
-4g/m
2/day以下であることが求められている。本開示の実施形態によれば、この基準を達成している。上層ガスバリア膜40の厚さは例えば1.5μm以下である。
【0067】
図5は、上層ガスバリア膜40が形成された段階における積層構造体100の上面側を模式的に示す斜視図である。1個の積層構造体100は、ベース10に支持された複数のOLEDデバイス1000を含んでいる。
図5に示される例において、1個の積層構造体100は、
図1Aに示される例よりも多くの機能層領域20を含んでいる。前述したように、1枚のベース10に支持される機能層領域20の個数は任意である。
【0068】
<保護シート>
次に
図3Dを参照する。
図3Dに示されるように、積層構造体100の上面に保護シート50を張り付ける。保護シート50は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリ塩化ビニル(PVC)などの材料から形成され得る。前述したように、保護シート50の典型例は、離型剤の塗布層を表面に有するラミネート構造を有している。保護シート50の厚さは、例えば50μm以上150μm以下であり得る。
【0069】
こうして作製された積層構造体100を用意した後、前述の製造装置(剥離装置220)を用いて本開示による製造方法を実行することができる。
【0070】
本開示の製造方法に用いられ得る積層構造体100は、
図1A及び
図1Bに示される例に限定されない。保護シート50は、樹脂膜30の全体を覆い、樹脂膜30よりも外側に拡がっていてもよい。あるいは、保護シート50は、樹脂膜30の全体を覆い、かつ、ベース10よりも外側に拡がっていてもよい。後述するように、積層構造体100からベース10が隔離された後、積層構造体100は、剛性を有しないフレキシブルな薄いシート状の構造物になる。保護シート50は、ベース10の剥離を行う工程、及び、剥離後の工程において、機能層領域20が外部の装置または器具などに衝突したり、接触したりしたとき、機能層領域20を衝撃及び摩擦などから保護する役割を果たす。保護シート50は、最終的に積層構造体100から剥がし取られるため、保護シート50の典型例は、接着力が比較的小さな接着層(離型剤の塗布層)を表面に有するラミネート構造を有している。積層構造体100のより詳細な説明は、後述する。
【0071】
<OLEDデバイスの分割>
本実施形態のフレキシブルOLEDデバイスの製造方法では、積層構造体100を用意する工程を実行した後、樹脂膜30の中間領域30iと複数のフレキシブル基板領域30dのそれぞれとを分割する工程を行う。分割を行う工程は、LLO工程の前に行う必要はなく、LLO工程の後に行ってもよい。
【0072】
分割は、レーザビームまたはダイシングソーによって隣接するOLEDデバイスの中央部を切断することによって行うことができる。本実施形態では、積層構造体のベース10以外の部分を切断し、ベース10は切断しない。しかし、ベース10を切断して個々のOLEDデバイスと各OLEDデバイスを支持するベース部分とを備える部分積層構造に分割してもよい。
【0073】
以下、レーザビームの照射によってベース10以外の積層構造を切断する工程を説明する。切断のためのレーザビームの照射位置は、個々のフレキシブル基板領域30dの外周に沿っている。
【0074】
図6A及び
図6Bは、それぞれ、樹脂膜30の中間領域30iと複数のフレキシブル基板領域30dのそれぞれとを分割する位置を模式的に示す断面図及び平面図である。切断のためのレーザビームの照射位置は、個々のフレキシブル基板領域30dの外周に沿っている。
図6A及び
図6Bにおいて、矢印または破線で示される照射位置(切断位置)CTを切断用のレーザビームで照射し、積層構造体100のうちでベース10以外の部分を複数のOLEDデバイス1000とその他の不要部分とに切断する。切断により、個々のOLEDデバイス1000と、その周囲との間に数十μmから数百μmの隙間が形成される。このような切断は、前述したように、レーザビームの照射に代えて、ダイシングソーによって行うことも可能である。切断後も、OLEDデバイス1000及びその他の不要部分は、ベース10に固着されている。
【0075】
図6Bに示されているように、積層構造体100における「不要部分」の平面レイアウトは、樹脂膜30の中間領域30iの平面レイアウトに整合している。図示されている例において、この「不要部分」は、開口部を有する1枚の連続したシート状構造物である。しかし、本開示の実施形態は、この例に限定されない。切断用レーザビームの照射位置CTは、「不要部分」を複数の部分に分けるように設定されていてもよい。なお、「不要部分」であるシート状構造物は、樹脂膜30の中間領域30iのみならず、中間領域30i上に存在する積層物(例えばガスバリア膜40及び保護シート50)の切断された部分を含んでいる。
【0076】
レーザビームによって切断を行う場合、レーザビームの波長は、赤外、可視光、紫外のいずれの領域にあってもよい。ベース10に及ぶ切断の影響を小さくすると言う観点からは、波長が緑から紫外域に含まれるレーザビームが望ましい。例えば、Nd:YAGレーザ装置によれば、2次高調波(波長532nm)、または3次高調波(波長343nmまたは355nm)を利用して切断を行うことができる。その場合、レーザ出力を1〜3ワットに調整して毎秒500mm程度の速度で走査すれば、ベース10に損傷を与えることなく、ベース10に支持されている積層物をOLEDデバイスと不要部分とに切断(分割)することができる。
【0077】
本開示の実施形態によれば、上記の切断を行うタイミングが従来技術に比べて早い。樹脂膜30がベース10に固着した状態で切断が実行されるため、隣接するOLEDデバイス1000の間隔が狭くても、高い正確度及び精度で切断の位置合わせが可能になる。このため、隣接するOLEDデバイス1000の間隔を短縮して、最終的に不要になる無駄な部分を少なくできる。
【0078】
<剥離光照射>
図7Aは、不図示の製造装置(剥離装置)におけるステージ212が積層構造体100を支持する直前の状態を模式的に示す図である。本実施形態におけるステージ212は、吸着のための多数の孔を表面に有する吸着ステージである。吸着ステージの構成は、この例に限定されず、積層構造体を支持する静電チャックまたは他の固定装置を備えていてもよい。積層構造体100は、積層構造体100の第2の表面100bがステージ212の表面212Sに対向するように配置され、ステージ212に密着している。
【0079】
図7Bは、ステージ212が積層構造体100を支持している状態を模式的に示す図である。ステージ212と積層構造体100との配置関係は、図示される例に限定されない。例えば、積層構造体100の上下が反転し、ステージ212が積層構造体100の下方に位置していてもよい。
【0080】
図7Bに示される例において、積層構造体100は、ステージ212の表面212Sに接しており、ステージ212は積層構造体100を吸着している。
【0081】
次に、
図7Cに示されるように、樹脂膜30の複数のフレキシブル基板領域30dとベース10との間に位置するリリース層12をレーザ光(剥離光)216で照射する。
図7Cは、図の紙面に垂直な方向に延びるライン状に成形された剥離光216によってベース10の側からリリース層12を照射している状態を模式的に示す図である。リリース層12は、紫外線レーザ光を吸収して短時間に加熱される。樹脂膜30の一部は、リリース層12と樹脂膜30との界面において、リリース層12からの熱によって気化または分解(消失)する。剥離光216でリリース層12をスキャンすることにより、樹脂膜30のリリース層12、言い換えると支持基板200に対する固着の程度を低下させる。剥離光216の波長は、典型的には紫外域にある。ベース10の光吸収率は、例えば波長が343〜355nmの領域では10%程度だが、308nmでは30〜60%に上昇し得る。
【0082】
以下、本実施形態における剥離光の照射を詳しく説明する。
【0083】
本実施形態における剥離装置は、剥離光216を出射するラインビーム光源を備えている。ラインビーム光源は、レーザ装置と、レーザ装置から出射されたレーザ光をラインビーム状に成形する光学系とを備えている。
【0084】
図8Aは、剥離装置220のラインビーム光源214から出射されたラインビーム(剥離光216)で積層構造体100を照射する様子を模式的に示す斜視図である。わかりやすさのため、ステージ212、積層構造体100、及びラインビーム光源214は、図のZ軸方向に離れた状態で図示されている。剥離光216の照射時、積層構造体100の第2の表面100bはステージ212に接している。
【0085】
図8Bは、剥離光216の照射時におけるステージ212の位置を模式的に示している。
図8Bには表れていないが、積層構造体100はステージ212によって支持されている。
【0086】
剥離光216を放射するレーザ装置の例は、エキシマレーザなどのガスレーザ装置、YAGレーザなどの固体レーザ装置、半導体レーザ装置、及び、その他のレーザ装置を含む。XeClのエキシマレーザ装置によれば、波長308nmのレーザ光が得られる。ネオジウム(Nd)がドープされたイットリウム・四酸化バナジウム(YVO
4)、またはイッテルビウム(Yb)がドープされたYVO
4をレーザ発振媒体として使用する場合は、レーザ発振媒体から放射されるレーザ光(基本波)の波長が約1000nmであるため、波長変換素子によって340〜360nmの波長を有するレーザ光(第3次高調波)に変換してから使用され得る。
【0087】
アッシュの生成を抑制するという観点からは、波長が340〜360nmのレーザ光よりも、エキシマレーザ装置による波長308nmのレーザ光を利用することが、より有効である。また、リリース層12の存在は、アッシュ生成の抑制に顕著な効果を発揮する。
【0088】
剥離光216の照射は、例えば50〜400mJ/cm
2のエネルギ照射密度で実行され得る。熱伝導が良いアルミニウムとシリコンの合金からなるリリース層を用いることで、エネルギ照射密度の下限を大きく広げることができる。なお、ラインビーム状の剥離光216は、ベース10を横切るサイズ、すなわちベースの1辺の長さを超えるライン長さ(長軸寸法、
図8BのY軸方向サイズ)を有する。ライン長さは、例えば750mm以上であり得る。一方、剥離光216のライン幅(短軸寸法、
図8BのX軸方向サイズ)は、例えば0.2mm程度であり得る。これらの寸法は、樹脂膜30とベース10との界面における照射領域のサイズである。剥離光216は、パルス状または連続波として照射され得る。パルス状の照射は、例えば毎秒200回程度の周波数で行われ得る。
【0089】
剥離光216の照射位置は、ベース10に対して相対的に移動し、剥離光216のスキャンが実行される。剥離装置220内において、剥離光を出射する光源214及び光学装置(不図示)が固定され、積層構造体100が移動してもよいし、その逆であってもよい。本実施形態では、ステージ212が
図8Bに示される位置から
図8Cに示される位置に移動する間、剥離光216の照射が行われる。すなわち、X軸方向に沿ったステージ212の移動により、剥離光216のスキャンが実行される。
【0090】
<リフトオフ>
図9Aは、剥離光の照射後、積層構造体100がステージ212に接触している状態を記載している。この状態を維持したまま、ステージ212からベース10までの距離を拡大する。このとき、本実施形態におけるステージ212は積層構造体100のOLEDデバイス部分を吸着している。
【0091】
不図示の駆動装置がベース10を保持してベース10の全体を矢印の方向に移動させることにより、剥離(リフトオフ)が実行される。ベース10は、不図示の吸着ステージによって吸着した状態で吸着ステージとともに移動し得る。ベース10の移動の方向は、積層構造体100の第1の表面100aに垂直である必要はなく、傾斜していてもよい。ベース10の移動は直線運動である必要はなく、回転運動であってもよい。また、ベース10が不図示の保持装置または他のステージによって固定され、ステージ212が図の上方に移動してもよい。
【0092】
図9Bは、こうして分離された積層構造体100の第1部分110と第2部分120とを示す断面図である。積層構造体100の第1部分110は、ステージ212に接触した複数のOLEDデバイス1000を含む。各OLEDデバイス1000は、機能層領域20と、樹脂膜30の複数のフレキシブル基板領域30dとを有している。これに対して、積層構造体100の第2部分120は、ベース10とリリース層12とを有している。
【0093】
ステージ212に支持された個々のOLEDデバイス1000は、相互に切断された関係にあるため、同時または順次に、ステージ212から容易に取り外され得る。
【0094】
上記の実施形態では、LLO工程の前に各OLEDデバイス1000の切断分離を行ったが、LLO工程の後に各OLEDデバイス1000の切断分離を行ってもよい。また、各OLEDデバイス1000の切断分離は、ベース10を対応する部分に分割することを含んでいてもよい。
【0095】
本開示の実施形態によれば、紫外線を透過する透明度の高いポリイミド及びPETから形成されたフレキシブルフィルムを用いる場合、あるいは透明度は低いが薄く(厚さが5〜20μm)紫外線を透過し得るフレキシブルフィルムを用いる場合でも、紫外線による機能層領域の特性劣化、及びガスバリア層の性能劣化を抑制することができる。また、高融点金属と異なり、アルミニウム合金の回収及びリサイクルが容易であるため、リリース層を採用することの製造コストの増加も低く抑えることができる。
本開示のフレキシブルOLEDデバイスの製造方法によれば、ベース(10)と、TFT層及びOLED層を含む機能層領域(20)とベースと機能層領域との間に位置して機能層領域を支持するフレキシブルフィルム(30)と、フレキシブルフィルムとベースとの間に位置してベースに固着しているリリース層(12)とを備える積層構造体(100)を用意する。ベースを透過する剥離光(216)でリリース層を照射してリリース層からフレキシブルフィルムを剥離する。リリース層はアルミニウム及びシリコンの合金から形成されている。