【実施例1】
【0023】
図1に、一般的な車両用シートの全体概要を示す。車両用シートは、
図1に示すように、その主な部位として、シートの座面部となるシートクッション1、シートクッション1の背側に設けられ、シートの背もたれ部となるシートバック3、乗員の頭部および頸部を保護するヘッドレスト4などを有している。シートクッション1の両脇には、座面部のサイド部分のサポートとなるサイドサポート2が設けられている。また、シートは、スライドレール5を介して車体に取り付けられており、車体に対する前後位置を変えることができる。
【0024】
図2に、従来の車両用シートのシートクッション2の両サイド部分すなわちサイドサポート2の断面図を示す。
図2は、
図1におけるA−A’断面を示している。
【0025】
図2に示すように、シートの骨格となるシートフレーム8は、その端部が折り返し形状になっており、シート表皮すなわちシートカバー(トリムカバー)6の端部に設けられた樹脂製フック9をシートフレーム8の折り返した端部に引掛けることにより、シートフレームにシート表皮を装着している。
【0026】
従来の車両用シートにおいては、この樹脂製フック9にポリエチレンやポリプロピレンなどの硬質樹脂が用いられている。
【0027】
シートフレーム8とシートカバー(トリムカバー)6の間には、シートのクッション材となるクッションパッド7が設けられている。このクッションパッド7は、シートフレーム8上に配置され、シートカバー(トリムカバー)6により覆われるような構造となっている。
【0028】
車両用シートの製造工程において、シート表皮すなわちシートカバー(トリムカバー)6の端部に縫い付けられた樹脂製フック9を引っ張りながら、シートフレーム8の折り返しを付けた端部に引掛けることにより、シート表皮と板金すなわちシートフレーム8を組み付けている。
【0029】
このシート表皮とシートフレームを組み付ける際に、樹脂製フック9の引掛かり部をシートフレーム8を乗り越えて引掛ける必要があり、その作業が困難である。
【0030】
また、シート表皮が本革や合成皮革などのレザーである場合、シート表皮自体の伸張性が低く伸び難いため、上記の作業はさらに困難となる。
【0031】
特に冬季は気温が低いため、シート表皮が伸び難くなり、さらに作業が難しくなる。
【0032】
また、上記の組み付け作業を行う際、シートフレーム8の端末に樹脂製フック9を引掛けるために、作業者はシートフレームの内部(内側)に指を入れる必要があり、シートフレームによる切創や指の挟み込みなど、怪我をする恐れがある。
【0033】
また、上述のように、樹脂製フック9は硬質樹脂により形成されているため、シートフレーム8の引掛け部は直線形状にする必要があり、曲線形状にすることができないなど、シートフレーム形状の設計に制約がある。
【0034】
図3に、本実施例における車両用シートのシート表皮のフックとシートフレームの端末の構造を示す。
図3に示すように、本実施例における車両用シートは、シート表皮すなわちシートカバー(トリムカバー)6の端部に樹脂製フック11が設けられている。樹脂製フック11は、例えば、シートカバー(トリムカバー)6の端部に縫い付けることにより設けられる。
【0035】
樹脂製フック11には、
図3に示すように、突起部12が少なくとも1つ以上設けられている。ここで、この樹脂製フック11は、ベース部材となる帯状の部分と突起部12を含む全体が軟質樹脂により形成されている。この軟質樹脂には、例えば、シリコンゴムのようなエラストマーを用いる。
【0036】
樹脂製フック11に設けられた突起部12は、シートフレーム8に設けられた開口(穴)10に嵌合される。シートフレーム8の開口(穴)10は、樹脂製フック11の突起部12に対応する位置に突起部12と同じ個数が設けられている。
【0037】
図4Aは、シートフレーム8の端末部の平面図を示している。シートフレーム8には、少なくとも1つ以上の開口(穴)10が設けられており、シート表皮の端部に設けられた樹脂製フック11の突起部12と嵌合する。
【0038】
図4Bは、シートカバー(トリムカバー)6の端部およびその端部に設けられた樹脂製フック11の断面を示している。
図4Bは、
図3におけるB−B’断面を示している。シート表皮であるシートカバー(トリムカバー)6の端部に、例えば縫合により、樹脂製フック11が設けられている。樹脂製フック11には、突起部12が設けられている。
【0039】
なお、
図3における突起部12はその断面形状が矩形若しくは菱形状に設けられているが、
図4Bのように矢形状であってもよい。この突起部12の形状は、シートフレーム8の開口(穴)10に突起部12が嵌合した後、嵌合した突起部12がシートフレーム8の開口(穴)10から容易に外れないような形状とする必要がある。
【0040】
以上説明したように、本実施例におけるシート表皮のフックとシートフレームの端末の構造によれば、シート表皮とシートフレームを組み付ける際に、従来のように、シート表皮の引掛かり部をシートフレームを乗り越えて引掛ける必要がなく、樹脂製フック11の突起部12をシートフレーム8の開口(穴)10に嵌合することによりシート表皮をシートフレームに容易に装着することができる。
【0041】
また、上記の組み付け作業を行う際、作業者はシートフレームの内部(内側)に指を入れる必要がなくなり、作業性および安全性を向上することができる。
【0042】
また、樹脂製フック11は、ベース部材となる帯状の部分と突起部12を含む全体が軟質樹脂により形成されているため、シートフレームの端末の形状に沿って、樹脂製フック11を装着できるため、シートフレーム8の形状を直線形状に限定する必要がなく、例えば、波型のような曲線形状にすることができる。つまり、シートフレーム8の形状設計の自由度を向上することができる。
【0043】
なお、本実施例において、樹脂製フック11をベース部材となる帯状の部分と突起部12を含む全体がシリコンゴムなどの軟質樹脂により形成されている例を示したが、ベース部材となる帯状の部分をシリコンゴムのような軟質樹脂で形成し、突起部12を炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon−Fiber−Reinforced−Plastic)やポリエチレン、ポリプロピレンのような硬質樹脂で形成することもできる。
【0044】
これにより、樹脂製フック11をシートフレームの端末の形状に沿って装着できるのに加え、突起部12を硬質樹脂で形成することにより、突起部12の耐久性が向上し、シートフレーム8の開口(穴)10と突起部12の嵌合(係合)の強度を向上することができる。
【0045】
また、本実施例において、シートフレーム8に開口(穴)10を設け、その開口(穴)10に樹脂製フック11の突起部12を嵌合する例を示したが、開口(穴)に替えて、引掛かり部を有する溝を設けてもよい。
【0046】
溝の引掛かり部と樹脂製フック11の突起部12が引掛かることにより、開口(穴)の場合と同様に、容易にシート表皮をシートフレームに装着することができる。
【0047】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。