特許第6588198号(P6588198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588198
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/58 20060101AFI20191001BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20191001BHJP
   B68G 7/05 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   B60N2/58
   A47C31/02 A
   B68G7/05 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-227150(P2014-227150)
(22)【出願日】2014年11月7日
(65)【公開番号】特開2016-88382(P2016-88382A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年8月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】戸畑 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】牧田 直之
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−102352(JP,U)
【文献】 特開2010−005104(JP,A)
【文献】 特開平09−020164(JP,A)
【文献】 実開昭61−196697(JP,U)
【文献】 実開平06−013695(JP,U)
【文献】 実開昭60−017199(JP,U)
【文献】 特開2014−019178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/58− 2/60
A47C 31/02−31/06
B68G 7/05− 7/054
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの座面部となるシートクッションと、
前記シートクッションの背側に設けられ、シートの背もたれ部となるシートバックと、を有する車両用シートであって、
前記シートクッションおよび前記シートバックのうち、少なくとも一方において、その表皮材の端部に少なくとも1つ以上の突起部が設けられた係合部材を備え、
前記係合部材は、軟質樹脂であるエラストマーにより形成される帯状のベース部と、前記突起部からなり、
前記車両用シートのシートフレームに設けられた溝或いは開口に前記係合部材の前記突起部を嵌合することにより、前記表皮材を前記シートフレームに係合し、
前記係合部材は、曲線形状を含むシートフレームの端末の形状に沿って装着されることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記突起部は、エラストマーにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記帯状のベース部のエラストマーは、シリコンゴムであることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記突起部は、炭素繊維強化プラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレンのいずれかにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用シートなどの車両用シートは、シート表皮に縫い付けた樹脂製フックをシートフレームに引掛けることで、シート表皮と板金すなわちシートフレームとを組み付けている。
【0003】
シート表皮は、その生地によりファブリックと呼ばれる布系のものとレザーと呼ばれる革系のものの二種類に大別される。ファブリックには編み物系のものと織物系のものがあり、レザーには本革や合成皮革などがある。
【0004】
本技術分野の背景技術として、例えば、特開2008−253336号公報(特許文献1)がある。特許文献1には「背凭シートに対して起立させた頭部支持状態と、該頭部支持状態から傾倒して格納状態とすることが可能なヘッドレストにおいて、前記背凭シートの上部に装着される少なくとも脚部を有する支持部材と、前記支持部材の脚部を挿通する挿通部を備え、前記支持部材を挟み込む前後カバー部材と、袋状に形成され、前記前後カバー部材を覆う表皮材と、前記前後カバー部材の挿通部に嵌合して該挿通部の周縁に位置する表皮材を挟持する左右の表皮止めカバー部材と、前記表皮材と前記前後カバー部材との間に注入される発泡樹脂により前記表皮材及び前記前後カバー部材と一体成形されるパッド材と、を備え、前記前後カバー部材には、左右の前記挿通部を連通する開口部が形成され、該開口部に位置する前記表皮材の端末部は、前記開口部に木目込まれてなることを特徴とするヘッドレスト」が開示されている。
【0005】
上記特許文献1のヘッドレストによれば、ヘッドレストの表皮端末部の抜けを防止することができるとしている。
【0006】
また、特許第5345761号公報(特許文献2)には「背凭シートに対して起立させた頭部支持状態と、該頭部支持状態から傾倒して格納状態とすることが可能なヘッドレストにおいて、前記背凭シートの上部に装着される少なくとも脚部を有する支持部材と、前記支持部材の脚部を挿通する挿通部を備え、前記支持部材を挟み込む前後カバー部材と、袋状に形成され、前記前後カバー部材を覆う表皮材と、前記前後カバー部材の挿通部を閉口して前記表皮材の開口側の端末部を挟持する表皮止めカバー部材と、前記表皮材と前記前後カバー部材との間に注入される発泡樹脂により前記表皮材及び前記前後カバー部材と一体成形されるパッド材と、を備え、前記表皮止めカバー部材は、略板状の本体部と、前記支持部材の脚部を挿通する筒状部と、該筒状部に形成された複数の係合爪とを有し、該係合爪を前記挿通部の周縁に係合させることにより、前記表皮材の端末部が前記前後カバー部材の底面と前記表皮止めカバー部材の前記本体部の上面との間でそれぞれの面により挟み込まれ、前記表皮止めカバー部材には少なくとも2つの前記筒状部が形成され、前記筒状部の互いに対向する側に切欠きが形成されていることを特徴とするヘッドレスト」が開示されている。
【0007】
上記特許文献2のヘッドレストによれば、ヘッドレストのカバー構造を単純化することができ、生産作業効率を向上することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−253336号公報
【特許文献2】特許第5345761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、自動車用シートなどの車両用シートにおいては、シート表皮に縫い付けた樹脂製フックをシートフレームに引掛けることで、シート表皮とシートフレームとを組み付けているが、シートフレームに樹脂製フックを引掛ける際に樹脂製フックの引掛り部をシートフレームを乗り越えさせてから引掛ける必要があるため、その作業が非常に困難である。
【0010】
また、シート表皮の樹脂製フックは硬質であるため、シートフレームの引掛け部は曲線形状にすることが出来ず、直線形状にする必要がある。
【0011】
また、上記作業において、シートフレームの端末に樹脂製フックを引掛けるため、シートフレーム内部に指が入り、作業者が怪我をする恐れもある。
【0012】
特に、乗員の座面部となるシートクッションや背凭れ部となるシートバックは、着座時に常に乗員の荷重が掛かるため、シート表皮に張りを持たせる必要があり、上記のようなシート表皮の組み付け作業が困難である。
【0013】
また、上述のように、シート表皮にはファブリックやレザーが用いられるが、レザーは伸長性が低く、シート表皮の組み付け作業はさらに難しくなる。
【0014】
上記特許文献1および特許文献2は、いずれもヘッドレストのカバーに関するものであり、上記のようなシートクッションやシートバックのように、乗員の荷重に十分耐える得る表皮の張りを維持するのは困難である。
【0015】
そこで、本発明の目的は、車両用シートにおいて、シートクッション或いはシートバックの表皮のシートフレームへの組み付けが容易なシート表皮のフック部材およびシートフレーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、シートの座面部となるシートクッションと、前記シートクッションの背側に設けられ、シートの背もたれ部となるシートバックと、を有する車両用シートであって、前記シートクッションおよび前記シートバックのうち、少なくとも一方において、その表皮材の端部に少なくとも1つ以上の突起部が設けられた係合部材を備え、前記係合部材は、軟質樹脂であるエラストマーにより形成される帯状のベース部と、前記突起部からなり、前記車両用シートのシートフレームに設けられた溝或いは開口に前記係合部材の前記突起部を嵌合することにより、前記表皮材を前記シートフレームに係合し、前記係合部材は、曲線形状を含むシートフレームの端末の形状に沿って装着されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車両用シートにおいて、シートクッション或いはシートバックの表皮のシートフレームへの組み付け作業が容易になる。
【0018】
また、本発明によれば、車両用シートのシートフレームにおいて、シート表皮との係合部の形状を自由に設計することができる。
【0019】
また、本発明によれば、車両用シートのシートクッション或いはシートバックの表皮のシートフレームへの組み付け作業時における作業者の安全性を向上することができる。
【0020】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一般的な車両用シートの全体概要を示す図である。
図2】従来の車両用シートにおけるシート表皮のフックとシートフレームの端末を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る車両用シートにおけるシート表皮のフックとシートフレームの端末を示す図である。
図4A】本発明の一実施形態に係る車両用シートのシートフレームの一部平面を示す図である。
図4B】本発明の一実施形態に係る車両用シートのシート表皮のフックの一部断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0023】
図1に、一般的な車両用シートの全体概要を示す。車両用シートは、図1に示すように、その主な部位として、シートの座面部となるシートクッション1、シートクッション1の背側に設けられ、シートの背もたれ部となるシートバック3、乗員の頭部および頸部を保護するヘッドレスト4などを有している。シートクッション1の両脇には、座面部のサイド部分のサポートとなるサイドサポート2が設けられている。また、シートは、スライドレール5を介して車体に取り付けられており、車体に対する前後位置を変えることができる。
【0024】
図2に、従来の車両用シートのシートクッション2の両サイド部分すなわちサイドサポート2の断面図を示す。図2は、図1におけるA−A’断面を示している。
【0025】
図2に示すように、シートの骨格となるシートフレーム8は、その端部が折り返し形状になっており、シート表皮すなわちシートカバー(トリムカバー)6の端部に設けられた樹脂製フック9をシートフレーム8の折り返した端部に引掛けることにより、シートフレームにシート表皮を装着している。
【0026】
従来の車両用シートにおいては、この樹脂製フック9にポリエチレンやポリプロピレンなどの硬質樹脂が用いられている。
【0027】
シートフレーム8とシートカバー(トリムカバー)6の間には、シートのクッション材となるクッションパッド7が設けられている。このクッションパッド7は、シートフレーム8上に配置され、シートカバー(トリムカバー)6により覆われるような構造となっている。
【0028】
車両用シートの製造工程において、シート表皮すなわちシートカバー(トリムカバー)6の端部に縫い付けられた樹脂製フック9を引っ張りながら、シートフレーム8の折り返しを付けた端部に引掛けることにより、シート表皮と板金すなわちシートフレーム8を組み付けている。
【0029】
このシート表皮とシートフレームを組み付ける際に、樹脂製フック9の引掛かり部をシートフレーム8を乗り越えて引掛ける必要があり、その作業が困難である。
【0030】
また、シート表皮が本革や合成皮革などのレザーである場合、シート表皮自体の伸張性が低く伸び難いため、上記の作業はさらに困難となる。
【0031】
特に冬季は気温が低いため、シート表皮が伸び難くなり、さらに作業が難しくなる。
【0032】
また、上記の組み付け作業を行う際、シートフレーム8の端末に樹脂製フック9を引掛けるために、作業者はシートフレームの内部(内側)に指を入れる必要があり、シートフレームによる切創や指の挟み込みなど、怪我をする恐れがある。
【0033】
また、上述のように、樹脂製フック9は硬質樹脂により形成されているため、シートフレーム8の引掛け部は直線形状にする必要があり、曲線形状にすることができないなど、シートフレーム形状の設計に制約がある。
【0034】
図3に、本実施例における車両用シートのシート表皮のフックとシートフレームの端末の構造を示す。図3に示すように、本実施例における車両用シートは、シート表皮すなわちシートカバー(トリムカバー)6の端部に樹脂製フック11が設けられている。樹脂製フック11は、例えば、シートカバー(トリムカバー)6の端部に縫い付けることにより設けられる。
【0035】
樹脂製フック11には、図3に示すように、突起部12が少なくとも1つ以上設けられている。ここで、この樹脂製フック11は、ベース部材となる帯状の部分と突起部12を含む全体が軟質樹脂により形成されている。この軟質樹脂には、例えば、シリコンゴムのようなエラストマーを用いる。
【0036】
樹脂製フック11に設けられた突起部12は、シートフレーム8に設けられた開口(穴)10に嵌合される。シートフレーム8の開口(穴)10は、樹脂製フック11の突起部12に対応する位置に突起部12と同じ個数が設けられている。
【0037】
図4Aは、シートフレーム8の端末部の平面図を示している。シートフレーム8には、少なくとも1つ以上の開口(穴)10が設けられており、シート表皮の端部に設けられた樹脂製フック11の突起部12と嵌合する。
【0038】
図4Bは、シートカバー(トリムカバー)6の端部およびその端部に設けられた樹脂製フック11の断面を示している。図4Bは、図3におけるB−B’断面を示している。シート表皮であるシートカバー(トリムカバー)6の端部に、例えば縫合により、樹脂製フック11が設けられている。樹脂製フック11には、突起部12が設けられている。
【0039】
なお、図3における突起部12はその断面形状が矩形若しくは菱形状に設けられているが、図4Bのように矢形状であってもよい。この突起部12の形状は、シートフレーム8の開口(穴)10に突起部12が嵌合した後、嵌合した突起部12がシートフレーム8の開口(穴)10から容易に外れないような形状とする必要がある。
【0040】
以上説明したように、本実施例におけるシート表皮のフックとシートフレームの端末の構造によれば、シート表皮とシートフレームを組み付ける際に、従来のように、シート表皮の引掛かり部をシートフレームを乗り越えて引掛ける必要がなく、樹脂製フック11の突起部12をシートフレーム8の開口(穴)10に嵌合することによりシート表皮をシートフレームに容易に装着することができる。
【0041】
また、上記の組み付け作業を行う際、作業者はシートフレームの内部(内側)に指を入れる必要がなくなり、作業性および安全性を向上することができる。
【0042】
また、樹脂製フック11は、ベース部材となる帯状の部分と突起部12を含む全体が軟質樹脂により形成されているため、シートフレームの端末の形状に沿って、樹脂製フック11を装着できるため、シートフレーム8の形状を直線形状に限定する必要がなく、例えば、波型のような曲線形状にすることができる。つまり、シートフレーム8の形状設計の自由度を向上することができる。
【0043】
なお、本実施例において、樹脂製フック11をベース部材となる帯状の部分と突起部12を含む全体がシリコンゴムなどの軟質樹脂により形成されている例を示したが、ベース部材となる帯状の部分をシリコンゴムのような軟質樹脂で形成し、突起部12を炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon−Fiber−Reinforced−Plastic)やポリエチレン、ポリプロピレンのような硬質樹脂で形成することもできる。
【0044】
これにより、樹脂製フック11をシートフレームの端末の形状に沿って装着できるのに加え、突起部12を硬質樹脂で形成することにより、突起部12の耐久性が向上し、シートフレーム8の開口(穴)10と突起部12の嵌合(係合)の強度を向上することができる。
【0045】
また、本実施例において、シートフレーム8に開口(穴)10を設け、その開口(穴)10に樹脂製フック11の突起部12を嵌合する例を示したが、開口(穴)に替えて、引掛かり部を有する溝を設けてもよい。
【0046】
溝の引掛かり部と樹脂製フック11の突起部12が引掛かることにより、開口(穴)の場合と同様に、容易にシート表皮をシートフレームに装着することができる。
【0047】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…シートクッション、2…サイドサポート、3…シートバック、4…ヘッドレスト、5…スライドレール、6…シートカバー(トリムカバー)、7…クッションパッド、8…シートフレーム、9,11…樹脂製フック、10…開口(穴)、12…突起部。
図1
図2
図3
図4A
図4B